(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】N-カルボキシ無水物の作製方法
(51)【国際特許分類】
C07D 265/06 20060101AFI20220318BHJP
【FI】
C07D265/06
(21)【出願番号】P 2021504231
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2019075981
(87)【国際公開番号】W WO2020064904
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-19
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391003864
【氏名又は名称】ロンザ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LONZA LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】イェンス・シュミット
(72)【発明者】
【氏名】カンディッド・ストッフェル
(72)【発明者】
【氏名】エルマー・ミリウス
【審査官】東 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-145871(JP,A)
【文献】特表2008-518032(JP,A)
【文献】国際公開第01/087858(WO,A1)
【文献】特開2007-063147(JP,A)
【文献】HIRSCHMANN,Ralph,J.Am.Chem.Soc.,1970年,93(11),2746-2754
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(II)の化合物:
【化1】
の作製方法であって、前記方法は、工程STEP1および工程STEP2を含み、
STEP2は、STEP1の後に行われ、
STEP1は、反応REAC1を含み、
前記反応REAC1において、式(I)の化合物は、溶媒SOLV1中でPHOSと反応し
て、式(II)の化合物を生成し、
【化2】
Rは、-H、-CH
3、-CH
2-SH、-CH
2-COOH、-(CH
2)
2-COOH、ベンジル、H、
【化3】
-CH(CH
3)-CH
2-CH
3、-(CH
2)
4-NH
2、-CH
2-CH
2-(CH
3)
2、-(CH
2)
2-S-CH
3、-CH
2-C(O)-NH
2
、-(CH
2)
2-C(O)-NH
2、-(CH
2)
3-NH-C(NH)-NH
2、-CH
2-OH、-CH(OH)-CH
3、-CH(CH
3)
2、
【化4】
-(CH2)
3-NH-C(O)-NH
2、および-(CH
2)
3-NH
2からなる群から選択され、
Rの任意の官能性残基は、ホスゲンと反応する能力を有し、適切な保護基PGにより保護され、
R1は、H、C
1-4アルキルおよびベンジルからなる群から選択され、
RおよびR1は、nが0の場合、場合により一緒になってピロリジン環を形成し、
nは、0または1であり、
PHOSは、ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、およびそれらの混合物から選択され、
SOLV1は、THF、2-Me-THF、ジオキサン、酢酸エチル、ジクロロメタン、モノグリム、ジグリム、トリグリム、シクロペンチルメチルエーテル、アセトニトリル、およびそれらの混合物からなる群から選択され、
STEP2において、SOLV1部分は、溶媒SOLV2へと交換され、
SOLV2は、ギ酸ヘキシル、酢酸ペンチル、プロピオン酸ブチル、酪酸プロピル、吉草酸エチル、カプロン酸メチル、ギ酸ペンチル、酢酸ブチル、プロピオン酸プロピル、酪酸エチル、吉草酸メチル、ギ酸ブチル、酢酸プロピル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、およびそれらの混合物からなる群から選択される、方法。
【請求項2】
式(I)の化合物が、天然アミノ酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(I)の化合物は、アルファAla、ベータAla、Cys、Asp、Glu、Phe、Gly、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、Trp、Tyr、シトルリンおよびオルニチンからなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
Rは、H、
【化5】
-(CH
2)
4-NH
2、-CH
3、および-(CH
2)
2-COOHからなる群から選択され
る、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
Rの官能性残基は、TfaまたはBzlからなる群から選択されるPGにより保護される、請求項
1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
R1は、H、メチル、エチルおよびベンジルからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
nが1つのとき、R1は、Hまたはメチルである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
nが、0である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
PHOSが、ホスゲンである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
SOLV1が、THF、2-Me-THF、アセトニトリル、またはそれらの混合物である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
SOLV2が、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、または酢酸ペンチルである、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、工程STEP3をさらに含み、
STEP3は、STEP2の後に行われ、
STEP3において、SOLV2部分は除去される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、工程STEP4をさらに含み、
STEP4は、STEP2の後、またはSTEP3の後に行われ、
STEP4において、STEP2からの混合物、またはSTEP3からの混合物はそれぞれ、溶媒SOLV4と混合され、
SOLV4は、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、MTBE、それらの任意の異性体、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
SOLV4は、ヘプタン、その任意の異性体、トルエン、またはそれらの混合物である、請求項15に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、工程STEP5をさらに含み、
STEP5は、STEP4の後に行われ、
STEP5において、STEP4からの混合物は、温度TEMP5に冷却され、
TEMP5は、-20~20℃である、請求項13または14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスゲンとアミノ酸を反応させることによる、N-カルボキシ無水物(NCA:N-carboxyanhydrides)の作製方法を開示するものである。
【背景技術】
【0002】
NCAはペプチド合成において産業利用されている。
【0003】
特許文献1は、N-カルボキシ無水物の作製方法を開示しており、当該方法では、アミノ酸は溶媒中でホスゲンと反応している。副産物として形成されるHClは、反応中にパージガスを反応混合物に通すことにより、反応混合物から除去される。
【0004】
特許文献1は、合計で3つの実施例を開示しているが、3つ全ての実施例において、反応混合物は反応後に濃縮されている。この濃縮工程によって、全ての溶媒と過剰量のホスゲンは除去される。1つ目の実施例では油状残留物が取得される。2つ目の実施例ではL-Glu-(OBzl)-OHの製造が解説されており、3つ目の実施例では残留物は結晶化する。この残留物を酢酸エチルに溶解させ、不溶性固形物がろ過により取り除かれる。次いでヘキサンの添加により生成物が結晶化され、ろ過により単離されて、洗浄および乾燥される。
【0005】
特許文献2は、ホスゲン、ジホスゲン、および/またはトリホスゲンと、対応するアミノ酸を溶媒中で反応させることによるNCAの作製方法を開示している。当該方法は、不飽和有機化合物の存在下で少なくとも部分的に反応が行われることを特徴としており、当該不飽和有機化合物は1つ以上のエチレン二重結合を有している。その少なくとも1つのエチレン二重結合の炭素のうちの1つは、ハロゲン原子以外の置換基により完全に置換されている。
【0006】
実施例2は、Alaのアルファアミノ酸の場合において、68.8%の収率であることを開示しており、本発明の実施例3における79.0%と比較される。
【0007】
Gluのアルファアミノ酸の場合で、実施例4は91.3%の収率を開示し、実施例5では92.6%の収率を開示しており、本発明の実施例3における93.5%と比較される。
【0008】
実施例3は、対応するNCAへのLysの転換を開示しており、2当量のアルファピネンが使用されている。
【0009】
特許文献2において必要とされるような1つ以上のエチレン二重結合を有する不飽和有機化合物の存在を必要としない、NCAの作製方法に対するニーズが存在していた。当該方法は高収率、高純度、および塩化物は低含量でNCAを提供するものとする。
【0010】
特許文献2において必要とされるような1つ以上のエチレン二重結合を有する不飽和有機化合物の存在を必要としないNCAの作製方法が見いだされ、当該方法は高収率、高純度および塩化物は低含量でNCAを提供する。
【0011】
本発明は、表1に要約されるように、特許文献1と比較して良好な収率を示している。
【表1】
【0012】
略語
% パーセントは、別段であることが述べられない限り、重量パーセント(wt%、w/w)である。
Bzl ベンジル、保護基
モノグリム 1,2-ジメトキシエタン
ジグリム 1-メトキシ-2-(2-メトキシエトキシ)エタン
トリグリム 1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン
eq 当量
MTBE メチルtertブチルエーテル
NCA N-カルボキシ無水物
TFA、Tfa トリフルオロアセチル、保護基、
THF テトラヒドロフラン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】WO2006/047703A2
【文献】US2002/0082431A1
【発明の概要】
【0014】
本発明の主題は、以下の式(II)の化合物の作製方法であり、
【化1】
当該方法は、以下の工程STEP1を含み、
STEP1は、反応REAC1を含み、この場合において以下の式(I)の化合物は、溶媒SOLV1中でPHOSと反応し、
【化2】
Rは、-H、-CH
3、-CH
2-SH、-CH
2-COOH、-(CH
2)
2-COOH、ベンジル、H、
【化3】
-CH(CH
3)-CH
2-CH
3、-(CH
2)
4-NH
2、-CH
2-CH
2-(CH
3)
2、-(CH
2)
2-S-CH
3、-CH
2-C(O)-NH
2、
【化4】
-(CH
2)
2-C(O)-NH
2、-(CH
2)
3-NH-C(NH)-NH
2、-CH
2-OH、-CH(OH)-CH
3、-CH(CH
3)
2、
【化5】
-(CH2)
3-NH-C(O)-NH
2、および-(CH
2)
3-NH
2からなる群から選択され、
Rの任意の官能性残基は、ホスゲンと反応する能力を有し、適切な保護基PGにより保護され、
R1は、H、C
1-4アルキルおよびベンジルからなる群から選択され、
nは、0または1であり、
PHOSは、ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、およびそれらの混合物から選択され、
SOLV1は、THF、2-Me-THF、ジオキサン、酢酸エチル、ジクロロメタン、モノグリム、ジグリム、トリグリム、シクロペンチルメチルエーテル、アセトニトリル、およびそれらの混合物からなる群から選択され、
【0015】
STEP2において、SOLV1部分は、35~87.5wt.%のSOLV1の除去により、溶媒SOLV2へと交換され、wt.%はSOLV1の重量に基づいており、
SOLV2は、SOLV1部分の除去の前、除去の間または除去の後に加えられることができ、
SOLV2は、以下からなる群から選択される:
ギ酸ヘキシル、酢酸ペンチル、プロピオン酸ブチル、酪酸プロピル、吉草酸エチル、カプロン酸メチル、ギ酸ペンチル、酢酸ブチル、プロピオン酸プロピル、酪酸エチル、吉草酸メチル、ギ酸ブチル、酢酸プロピル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、およびそれらの混合物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1つの実施形態では、REAC1は、1つ以上のエチレン二重結合を有する不飽和有機化合物の非存在下で行われ、その残りの分子は、媒体中に存在する化合物に対して不活性であり、その少なくとも1つのエチレン二重結合の炭素のうちの1つは、ハロゲン原子以外の置換基により完全に置換される。
【0017】
別の実施形態では、REAC1は、1つ以上のエチレン二重結合を有する不飽和有機化合物の非存在下で行われ、その少なくとも1つのエチレン二重結合の炭素のうちの1つは、ハロゲン原子以外の置換基により完全に置換される。
【0018】
別の実施形態では、REAC1は、1つ以上のエチレン二重結合を有する不飽和有機化合物の非存在下で行われ、その残りの分子は、媒体中に存在する化合物に対して不活性である。
【0019】
別の実施形態では、REAC1は、1つ以上のエチレン二重結合を有する不飽和有機化合物の非存在下で行われる。
【0020】
好ましくは、式(II)の化合物は、以下の式(II-L)の化合物であり、
【化6】
R、R1およびnは、本明細書ならびにそれらの全ての実施形態に規定されるとおりである。
【0021】
好ましくは、式(I)の化合物は、以下の式(I-L)の化合物であり、
【化7】
R、R1およびnは、本明細書ならびにそれらの全ての実施形態に規定されるとおりである。
【0022】
好ましくは、式(I)の化合物は、天然アミノ酸であり、より好ましくは式(I)の化合物は、アルファAla、ベータAla、Cys、Asp、Glu、Phe、Gly、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、Trp、Tyr、シトルリンおよびオルニチンからなる群から選択される。
【0023】
好ましくは、Rは、H、
【化8】
-(CH
2)
4-NH
2、-CH
3、および-(CH
2)
2-COOHからなる群から選択され、
より好ましくは、Rは、
【化9】
-(CH
2)
4-NH
2、-CH
3、および-(CH
2)
2-COOHからなる群から選択される。
【0024】
好ましくは、R1は、H、メチル、エチルおよびベンジルからなる群から選択される。より好ましくは、R1は、Hまたはメチルである。さらにより好ましくは、R1は、Hである。
【0025】
好ましくは、nが1のとき、R1は、Hまたはメチルであり、
より好ましくは、nが1のとき、R1は、Hである。
【0026】
好ましくは、nは、0である。
【0027】
ホスゲンとの反応に関して、Rの任意の官能性残基の保護に適したPGは当業者に公知である。例えば、Peter G.M.Wuts and Theodora W.Greene,“Greene’s protective groups in organic synthesis”、第四版、Wiley-Interscience,A.John Wiley & Sons,Inc.,2007,ISBN 978-0-471-69754-1、またはNorbert Sewald and Hans-Dieter Jakubke,”Peptides:Chemistry and biology”、第二版、改訂および最新版、Wiley-VCH Verlag GmbH,2009,ISBN 978-3-527-31867-4から当業者に公知である。
【0028】
様々なRの官能性残基の各々に対し、REAC後のRの任意の官能基からの望ましいPG切断機序に応じて、好ましいPGが存在していることも当業者に公知である。
【0029】
PGは、天然アルファアミノ酸の側鎖の任意の官能性残基の保護に普遍的に使用されている保護基が好ましい。
【0030】
Argのグアニジン基は、例えばニトロ、ウレタン(アシル)、アレーンスルホニルおよびトリチル型などのPGで保護され得る。
【0031】
他の適切なPGは、例えば、Z、Z(OMe)、Z(2-NO2)、Z(NO2)、Z(Cl)、Z(3,5-OMe)、Z(2-Br)、Ddz、Nvoc、Pz、Tmz、Bic、Bpoc、Azoc、iNoc、Boc、Cyoc、Tcboc、Adoc、Adpoc、Iboc、Fmoc、Mio-Fmoc、Dio-Fmoc、Tsoc、Msc、Nsc、Bspoc、Bsmoc、Mspoc、Alloc、Teoc、Tipseoc、Pipoc、Poc、PTnm、Epoc、Dts、Tsc、For、Tfa、Tos、oNbs、pNbs、dNbs、Bts、Nps、Dde、ivDde、Nde、Trt、Trt(2-Cl)、Bzl、(Bzl)2、Bzl(4-Me)、Me、Et、Nbz、Mob、2,4-Dmb、Pic、Tse、Pac、Pac(OMe)、tBu、Cy、1-Ada、2-Ada、Pf、Fm、TMSE、PTMSE、Dcpm、All、Dmba、BCMACM、Hmb、Hnb、SiMB、ニトロ、Mbs、Mts、Mtr、Pmc、Pbf、Ans、Btb、Npys、PTnm、Acm、Tmb、Dpm、Tacm、StBu、SMpys、Allocam、Xan、Dnp、Bom、Pdpm、Bum、Allom、Bzl、Dcb、Zte、Mtm、Pen、Hoc、Mbh、4,4’-ジメチルジフェニルメチル、4,4’-ジメトキシジフェニルメチル、4-メトキシベンジル、2,4-ジメトキシベンジル、2,4,6-トリメトキシベンジル、およびジフェニルメチルからなる群から選択される。PGに関するこれらの略語の意味は、Norbert Sewald and Hans-Dieter Jakubke,“Peptides:Chemistry and biology”,second,revised and updated edition,Wiley-VCH Verlag GmbH,2009,ISBN 978-3-527-31867-4に見出すことができ、これらPGのいずれが、Rの官能性残基の保護に適しているかについても見出すことができる。
【0032】
好ましくは、式(I)の化合物は、Tyr、Lys、アルファAla、ベータAla、N-メチルアラニン、およびGluからなる群から選択される。より好ましくは、式(I)の化合物は、Tyr、Lys、アルファAla、N-メチルアラニン、およびGluからなる群から選択される。好ましくは、Rの官能性残基は、TfaまたはBzlからなる群から選択されるPGにより保護される。そのため、各保護形態にある式(I)の化合物は、好ましくは、Tyr、Lys(Tfa)、アルファAla、ベータAla、N-メチルアラニン、およびGlu(Bzl)からなる群から選択される。より好ましくは、Tyr、Lys(Tfa)、アルファAla、N-メチルアラニン、およびGlu(Bzl)からなる群から選択される。
【0033】
好ましくは、PHOSは、ホスゲンである。
【0034】
好ましくは、REACにおけるPHOSのモル量は、1~5当量、より好ましくは1.1~4当量、さらにより好ましくは1.2~3.5当量、特に1.3~3当量のモル量の式(I)の化合物である。
【0035】
好ましくは、SOLV1は、THF、2-Me-THF、アセトニトリル、またはそれらの混合物であり、
好ましくは、SOLV1は、THFまたは2-Me-THFであり、
さらにより好ましくは、SOLV1は、THFである。
【0036】
好ましくは、SOLV1の重量は、式(I)の化合物の重量の2~40倍、より好ましくは3~30倍、さらにより好ましくは4~25倍である。
【0037】
好ましくは、REAC1は、温度TEMPREAC1で行われ、TEMPREAC1は、0~70℃、より好ましくは10~60℃、さらにより好ましくは15~55℃である。
【0038】
好ましくは、REAC1の反応時間TIMEREAC1は、10分~9時間、より好ましくは20分~7時間、さらにより好ましくは20分~6時間である。
【0039】
TIMEREAC1は、PHOSが式(I)の化合物と混合される時間TIMEMIX1、およびPHOSと式(I)の化合物の混合物が攪拌される時間TIMESTIRR1を含んでもよく、
TIMEMIX1は、好ましくは10分~4時間、より好ましくは30分~3時間、さらにより好ましくは1時間~3時間であり、
TIMESTIRR1は、好ましくは10分~5時間、より好ましくは20分~4時間、さらにより好ましくは20分~3時間である。
【0040】
SOLV2中のヘキシル残基、ペンチル残基、ブチル残基およびプロピル残基は、例えばn-、iso-、sec-、およびtert-異性体などの可能性のある異性体のいずれであってもよい。
【0041】
好ましくは、SOLV2は、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、または酢酸ペンチルであり、
より好ましくは、SOLV2は、酢酸ブチルであり、
さらにより好ましくは、SOLV2は、酢酸n-ブチルである。
【0042】
好ましくは、SOLV2は、SOLV1部分の除去の間、または除去の後に加えられる。
【0043】
さらにより好ましくは、SOLV2は、SOLV1部分の除去の後に加えられる。
【0044】
SOLV1部分が除去されるとき、好ましくは40~85wt%、より好ましくは45~85wt%が除去される。wt%は、SOLV1の重量に基づいている。
【0045】
SOLV2がSOLV1部分の除去後にのみ加えられるとき、そのSOLV1部分の除去後、およびSOLV2の添加前の反応混合物の体積は、好ましくは式(I)の化合物1g当たり、1~10ml、より好ましくは式(I)の化合物1グラム当たり、2~6mlである。
【0046】
好ましくは、SOLV2の重量は、式(I)の化合物の量の2~15倍、より好ましくは2~13倍、さらにより好ましくは2~12倍、特に3~11倍である。
【0047】
好ましくは、SOLV1をSOLV2に交換する間の温度TEMP2は、10~100℃、より好ましくは20~75℃、さらにより好ましくは30~60℃である。
【0048】
STEP2は、反応混合物のろ過FILT2を含んでもよく、当該ろ過は、SOLV2へのSOLV1の交換の前または後に行われてもよく、好ましくはSOLV2へのSOLV1の交換の後に行われる。
【0049】
好ましくは、FILT2は、0.1~10マイクロメーター、より好ましくは0.2~5マイクロメーター、さらにより好ましくは0.3~2マイクロメーターの孔サイズのフィルターを用いて行われる。
【0050】
FILT2の後、フィルターは、SOLV2で洗浄されてもよい。
【0051】
好ましくは、FILT2の後のフィルターの洗浄に使用されるSOLV2の重量は、式(I)の化合物の重量の0.5~7.5倍、より好ましくは0.75~5倍、さらにより好ましくは1~3倍である。
【0052】
好ましくは、当該方法は、工程STEP3をさらに含み、
STEP3は、STEP2の後に行われ、
STEP3において、SOLV2部分は除去される。
【0053】
好ましくは、SOLV2部分の除去後の反応混合物の体積は、式(I)の化合物1gあたり、1.5~15ml、より好ましくは式(I)の化合物1gあたり、1.5~10ml、さらにより好ましくは式(I)の化合物1gあたり、2~8mlである。
【0054】
好ましくは、当該方法は、工程STEP4をさらに含み、
STEP4は、STEP2の後、またはSTEP3の後に行われ、
STEP4において、STEP2からの混合物、またはSTEP3からの混合物はそれぞれ、溶媒SOLV4と混合され、
SOLV4は、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、MTBE、それらの任意の異性体、およびそれらの混合物からなる群から選択され、
好ましくは、SOLV4は、ヘプタン、その任意の異性体、トルエン、またはそれらの混合物であり、
より好ましくは、SOLV4は、ヘプタンの異性体混合物またはトルエンである。
【0055】
好ましくは、SOLV4は、STEP2からの混合物、またはSTEP3からの混合物にそれぞれ加えられる。
【0056】
好ましくは、SOLV4の重量は、式(I)の化合物の量の0.1~15倍、より好ましくは0.2~10倍、さらにより好ましくは0.2~5倍、特に0.3~4倍である。
【0057】
好ましくは、それぞれSTEP2からの混合物またはSTEP3からの混合物と、SOLV4を混合する間の温度TEMP4は、0~95℃、より好ましくは20~75℃、さらにより好ましくは30~60℃、特に35~55℃である。
【0058】
好ましくは、当該方法は、STEP3を含み、STEP4はSTEP3の後に行われる。
【0059】
好ましくは、当該方法は、工程STEP5をさらに含み、
STEP5は、STEP4の後に行われ、
STEP5において、STEP4からの混合物は、温度TEMP5に冷却され、
TEMP5は、-20~20℃、好ましくは-15~15℃、より好ましくは-10~10℃、さらにより好ましくは-5℃~5℃、特に-2.5~2.5℃、さらには特に-1~1℃である。
【0060】
好ましくは、STEP5における冷却の時間TIME5は、0.5分~10時間、より好ましくは1~5時間、さらにより好ましくは2~4時間である。
【0061】
好ましくは、STEP5は、冷却後の攪拌STIRR5を含む。
【0062】
好ましくは、STIRR5は、TEMP5で行われる。
【0063】
好ましくは、STIRR5の時間は、0.1~48時間、より好ましくは0.25~48時間、さらにより好ましくは0.5~24時間、特に0.5~20時間、さらには特に0.5~18時間である。
【0064】
1つの実施形態では、当該方法は、工程STEP1と工程STEP2を含み、
別の実施形態では、当該方法は、工程STEP1、工程STEP2、および工程STEP3を含み、
別の実施形態では、当該方法は、工程STEP1、工程STEP2、および工程STEP4を含み、
別の実施形態では、当該方法は、工程STEP1、工程STEP2、工程STEP3、および工程STEP4を含み、
別の実施形態では、当該方法は、工程STEP1、工程STEP2、工程STEP4、および工程STEP5を含含み、
別の実施形態では、当該方法は、工程STEP1、工程STEP2、工程STEP3、工程STEP4、および工程STEP5を含む。
【0065】
工程STEP1、工程STEP2、工程STEP3、工程STEP4または工程STEP5のいずれかの後、式(II)の化合物は、例えば蒸留、遠心分離、ろ過、洗浄および乾燥、好ましくはろ過、洗浄および乾燥などの当業者に公知の標準的な方法により単離され得る。洗浄は、好ましくはろ過の後で、SOLV4を用いて行われ得る。
【実施例】
【0066】
材料
L-チロシン Sichuan Tongsheng Amino acid Co.,Ltd、中国、四川省トーヤン
L-Lys(Tfa)-OH Shanghai Science Biotechnology Co.,Ltd、中国、上海カテイ区
L-Alanine Fagron BV、オランダ、ロッテルダム
L-Glu-(OBzl)-OH Sichuan Tongsheng Amino acid Co.,Ltd、中国、四川省トーヤン
ヘプタン ヘプタンの異性体混合物、例えばExon Mobil CorporationのEXXSOL(商標)HEPTANE
酢酸ブチル 本実施例で使用される酢酸ブチルは、別段の記載が無ければ酢酸n-ブチルとした。
【0067】
実施例1
N2雰囲気下、20.0g(0.110mol、1.00当量)のL-チロシンと、400gのTHFを、-15℃の冷却温度でかん流濃縮器を備えた500mLのリアクターに入れ、混合物を45℃に加熱した。15.3g(0.155mol、1.41当量)のホスゲンを、45℃で120分かけて加えた。懸濁液を、固形物がすべて溶解するまで45℃で攪拌し、およそ30分後に溶解した。蒸留により体積を100mLまで落とした。200gの酢酸ブチルを40~50℃で加えた。反応体積を蒸留により150mLに落とした。形成された懸濁液を3時間以内に0℃に冷却し、0℃で17時間攪拌した。懸濁液を真空下でろ過し、ろ過ケーキを25mLのヘプタンで洗浄した。固形物を真空下、50℃で乾燥させ、21.8g(95.9%)の白色生成物を得た。
【0068】
CO2滴定による分析 98.0% w/w
滴定による塩化物含量 426mg/kg
【0069】
実施例2
N2雰囲気下、45.0g(0.186mol、1.00当量)のL-Lys(TFA)-OHと391gのTHFを、-15℃の冷却温度でかん流濃縮器を備えた500mLのリアクターに入れ、混合物を20℃に加熱した。46.0g(0.465mol、2.50当量)のホスゲンを、20℃で120分かけて加えた。懸濁液を、30℃まで30分以内に加熱し、固形物がすべて溶解するまで攪拌し、およそ2時間20分後に溶解した。蒸留により体積を100mLまで落とした。150gの酢酸ブチルを35~40℃で加えた。溶液を0.5マイクロメーターのフィルターでろ過した。リアクターとフィルターを、50gの酢酸ブチルで洗浄した。1つにまとめた生成溶液を、蒸留により100mLにまで落とし、17gのヘプタンを40~50℃で加えた。形成された懸濁液を3時間以内に0℃に冷却し、0℃で1時間攪拌した。懸濁液を真空下でろ過し、ろ過ケーキを50mLのヘプタンで洗浄した。固形物を真空下、50℃で乾燥させ、43.1g(86.5%)の白色生成物を得た。
【0070】
CO2滴定による分析 98.6% w/w
滴定による塩化物含量 389mg/kg
【0071】
実施例3
N2雰囲気下、20.0g(0.224mol、1.00当量)のL-アラニンと、445gのTHFを、-15℃の冷却温度でかん流濃縮器を備えた500mLのリアクターに入れ、混合物を50℃に加熱した。55.0g(0.561mol、2.50当量)のホスゲンを、50℃で120分かけて加えた。懸濁液を、固形物がすべて溶解するまで攪拌し、およそ2時間後に溶解した。蒸留により体積を100mLまで落とした。214gの酢酸ブチルを35~40℃で加えた。溶液を、1マイクロメーターのフィルターでろ過した。リアクターとフィルターを、50gの酢酸ブチルで洗浄した。1つにまとめた生成溶液を、蒸留により100mLにまで落とし、75gのヘプタンを40~50℃で加えた。形成された懸濁液を3時間以内に0℃に冷却し、0℃で1時間攪拌した。懸濁液を真空下でろ過し、ろ過ケーキを25mLのヘプタンで洗浄した。固形物を真空下、50℃で乾燥させ、20.4g(79.0%)の白色生成物を得た。
【0072】
CO2滴定による分析 97.7% w/w
滴定による塩化物含量 620mg/kg
【0073】
実施例4
N2雰囲気下、45.0g(0.189mol、1.00当量)のL-Glu-(OBzl)-OHと、258gのTHFを、-15℃の冷却温度でかん流濃縮器を備えた500mLのリアクターに入れ、混合物を50℃に加熱した。28.0g(0.283mol、1.50当量)のホスゲンを、50℃で120分かけて加えた。懸濁液を、固形物がすべて溶解するまで攪拌し、およそ1時間後に溶解した。蒸留により体積を150mLまで落とした。175gの酢酸ブチルを35~40℃で加えた。溶液を、1マイクロメーターのフィルターでろ過した。リアクターとフィルターを、50gの酢酸ブチルで洗浄した。1つにまとめた生成溶液を、蒸留により200mLにまで落とし、150gのヘプタンを40~50℃で加えた。形成された懸濁液を3時間以内に0℃に冷却し、0℃で1時間攪拌した。懸濁液を真空下でろ過し、ろ過ケーキを50mLのヘプタンで洗浄した。固形物を真空下、50℃で乾燥させ、46.5g(93.5%)の白色生成物を得た。
【0074】
CO2滴定による分析 98.9% w/w
滴定による塩化物含量 262mg/kg
【0075】
実施例5
実施例4を、酢酸ブチルの代わりに酢酸イソ-プロピルを加えた点を除き、繰り返した。
【0076】
収率:91.5%。
【0077】
比較例1
実施例4を、酢酸ブチルの代わりに酢酸エチルを加えた点を除き、繰り返した。
【0078】
収率:87.5%。これは実施例4(酢酸ブチル)および実施例5(酢酸イソ-プロピル)の90%を超える収率よりも低い。さらに、WO2006/047703A2の実施例2の収率89.2%よりも低い。
【0079】
比較例2
WO2006/047703A2の実施例2を、酢酸エチルの代わりに酢酸ブチルを使用した点を除き、繰り返した。
【0080】
収率:32.3%。これは実施例4(酢酸ブチル)および実施例5(酢酸イソ-プロピル)の90%を超える収率よりもかなり低い。
【0081】
比較例3
WO2006/047703A2の実施例2を、酢酸エチルの代わりに酢酸イソ-プロピルを使用した点を除き、繰り返した。
【0082】
収率:42.6%。これは実施例4(酢酸ブチル)および実施例5(酢酸イソ-プロピル)の90%を超える収率よりもかなり低い。
【0083】
実施例6および7
表2に提示される差異を除き、実施例3が繰り返された。
【表2】