(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】新規な転写金型用入れ子の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/38 20060101AFI20220322BHJP
【FI】
B29C33/38
(21)【出願番号】P 2017225877
(22)【出願日】2017-11-24
【審査請求日】2020-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】591065549
【氏名又は名称】福岡県
(73)【特許権者】
【識別番号】390017710
【氏名又は名称】株式会社メイホー
(74)【代理人】
【識別番号】100139262
【氏名又は名称】中嶋 和昭
(72)【発明者】
【氏名】谷川 義博
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 善九
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-007326(JP,A)
【文献】特開2010-214624(JP,A)
【文献】特開平02-169207(JP,A)
【文献】国際公開第2015/093256(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/124449(WO,A1)
【文献】特開平03-216320(JP,A)
【文献】特開2009-138264(JP,A)
【文献】特開平01-113219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割面で開閉可能であり、閉じた状態で製品の表面形状の反転形状が転写されたキャビティを有する一対の転写金型用入れ子を製造する方法であって、
第1の金属素材からなり、前記製品の表面形状の少なくとも一部と同一の表面形状を有する原型が形成されたマスター型を形成する第1の工程と、
前記第1の金属素材よりも低温で軟化するアルミニウム合金からなる入れ子部材の少なくとも一部を、前記第1の金属素材は軟化せず、前記アルミニウム合金が軟化する240℃以上400℃以下の温度に加熱しながら前記マスター型に押圧し、前記原型の表面形状の反転形状を前記入れ子部材に転写後、前記原型の表面形状の反転形状が転写された前記入れ子部材の前記分割面の算術平均表面粗さが、0.1μm以上1μm以下となるように、前記マスター型を押圧した側の面を切削又は研削加工する第2の工程を有することを特徴とする転写金型用入れ子の製造方法。
【請求項2】
前記第2の工程において、前記入れ子部材の、前記マスター型に押圧される面及びその近傍を加熱することを特徴とする請求項1に記載の転写金型用入れ子の製造方法。
【請求項3】
前記第1の金属素材が金型用鋼材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の転写金型用入れ子の製造方法。
【請求項4】
前記
アルミニウム合金がアルミニウム合金A7075であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の転写金型用入れ子の製造方法。
【請求項5】
樹脂材料の射出成形用金型用の入れ子の製造方法であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の転写金型用入れ子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な形状及び構造を有する製品の製造に用いられる転写金型用入れ子を、容易かつ低コストで製造可能であり、かつ微細構造の転写精度に優れた転写金型用入れ子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯電話に代表されるように多くの電子機器やデジタル家電では、開発の方向性が高機能化、高精度化、及び小型化に向いている。そして、これらの製品が高精度化、小型化すれば、これらを構成している構成部品も高精度化、小型化、及び微細化する必要がある。一方、量産部品の製造には、一般に金型が使用されており、部品が高精度化、小型化、微細化すれば、金型も高精度化、小型化、微細化することが要求され、金型の製造においては品質の安定化、低価格化、納期短縮化を満足した上で、高精度化、小型化、微細化に対応することが要求される。
【0003】
ここで、小型化、微細化した部品を量産する場合、同時に数十~数百個の部品が製造できる複数個取り金型が使用される。このため、複数個取り金型を製造する場合、金型素材で構成された1つのブロック内に部品の反転形状を、工作機械(例えば、マシニングセンタ)を用いて複数個形成した後、熟練工が手磨きによる仕上げ加工を行なっている。このため、部品の反転形状が小型化、微細化すれば、工具形状の制約から反転形状の形状精度が低下し、更に仕上げ加工においては形状誤差、形状のばらつきという問題が生じる。そして、形状誤差、形状のばらつきが発生すると、金型品質の安定化、納期短縮化にも対応できないという問題が生じる。そこで、製造しようとする部品形状を有する原型を1つ正確に作製し、この原型を超塑性金属からなるブロックで上下から挟んで加圧して原型の形状をブロックに転写することで、金型品質が安定した(形状誤差、形状のばらつきのない)金型を短納期で製造する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、超塑性金属素材で構成されたブロックで原型を両側から挟み込んで反転形状が転写された分割金型を作製するため、製品上における分割位置の位置決めが非常に難しく、形状誤差及び形状ばらつきを防止して品質が安定した複数個取り金型を製造することが困難となる。
【0005】
特許文献2には、被成形品型に基づいたパーティング面形状を第1の転写型に転写する第1の工程と、上記第1の転写型に基づいてパーティング面形状を第2の転写型に転写する第2の工程と、上記第2の転写型のパーティング面形状に沿って配設される超塑性合金板を加熱下において第2の転写型に向かって加圧することにより塑性変形してパーティング面材を形成する第3の工程と、上記パーティング面材の背面に支持型を一体成形する第4の工程とから成ることを特徴とする成形用金型の製造方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の発明は、工程が煩雑である上に、大型の金型を製造するための技術であり、微細構造を有する物品製造用の金型の製造には適していない。
【0007】
特許文献3には、製品が高精度、小型化、微細化しても形状の誤差及びばらつきを防止した複数個取り転写金型を低価格かつ短納期で製造できる転写金型用入れ子の製造方法として、1200℃を超える高温で高い強度、硬度及び耐変形性を有するセラミックス等の素材を用いて、製品と同一形状の原型が形成されたマスター型を作製する第1工程と、1200℃以下の温度で軟化性を示す金型素材で構成され、前記マスター型の形状が転写される転写面から所定の距離を隔てた内部に、前記マスター型の反転形状を転写する際に排除される前記金型素材の収容が可能な空間部が形成された柱状の入れ子部材を前記転写面側で前記マスター型に対向させて加熱炉内に配置し、前記金型素材が軟化性を示す温度域まで前記入れ子部材を加熱して前記マスター型及び前記入れ子部材同士を押圧し該入れ子部材の転写面側に該マスター型の反転形状を転写する第2工程と、前記マスター型の反転形状が転写された前記入れ子部材を冷却して前記マスター型から離型する第3工程とを有することを特徴とすることを特徴とする転写金型用入れ子の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭52-7326号公報
【文献】特開平2-169207号公報
【文献】特開2010-214624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3に記載の発明においては、セラミックス等の高い強度を有するが脆い素材を用いて微細構造を有するマスター型を製造する際に、折損等が発生するおそれがあるという問題がある。また、マスター型の反転形状を金型素材に転写する際に、1200℃程度の高温に加熱する必要があるため、転写金型用入れ子の製造時におけるエネルギーコストが高くなるという問題がある。
【0010】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、微細な形状及び構造を有する製品の製造に用いられる転写金型用入れ子を、容易かつ低コストで製造可能であり、かつ微細構造の転写精度に優れた転写金型用入れ子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的に沿う本発明は、分割面で開閉可能であり、閉じた状態で製品の表面形状の反転形状が転写されたキャビティを有する一対の転写金型用入れ子を製造する方法であって、第1の金属素材からなり、前記製品の表面形状の少なくとも一部と同一の表面形状を有する原型が形成されたマスター型を形成する第1の工程と、前記第1の金属素材よりも低温で軟化するアルミニウム合金からなる入れ子部材の少なくとも一部を、前記第1の金属素材は軟化せず、前記アルミニウム合金が軟化する240℃以上400℃以下の温度に加熱しながら前記マスター型に押圧し、前記原型の表面形状の反転形状を前記入れ子部材に転写後、前記原型の表面形状の反転形状が転写された前記入れ子部材の前記分割面の算術平均表面粗さが、0.1μm以上1μm以下となるように、前記マスター型を押圧した側の面を切削又は研削加工する第2の工程を有することを特徴とする転写金型用入れ子の製造方法を提供することにより上記課題を解決するものである。
【0012】
本発明に係る転写金型用入れ子の製造方法において、前記第2の工程において、前記入れ子部材の、前記マスター型に押圧される面及びその近傍を加熱することが好ましい。
【0013】
本発明に係る転写金型用入れ子の製造方法において、前記第1の金属素材が金型用鋼材であってもよい。
【0015】
本発明に係る転写金型用入れ子の製造方法において、前記アルミニウム合金がアルミニウム合金A7075であることが好ましい。
【0017】
本発明に係る転写金型用入れ子の製造方法は、樹脂材料の射出成形用金型用の入れ子の製造方法であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る転写金型用入れ子の製造方法では、マスター型の形成に金型用鋼材等の金属素材(第1の金属素材)を用いることにより、セラミックス等の素材を用いる場合に比べ、マスター型の形成の際にマスター型が破損するおそれを小さくすることができる。特に、微細な形状及び構造を有するマスター型が必要な場合、破損のリスクを低減しつつ高い寸法精度でマスター型を形成できる。また、入れ子部材の素材として、マスター型の製作に用いる第1の金属素材よりも低温で軟化する第2の金属素材を用い、入れ子部材へのマスター型の反転形状の転写を、第1の金属素材は軟化せず、前記第2の金属素材が軟化する温度に入れ子部材の少なくとも一部を加熱することにより行うため、従来の方法よりもエネルギーコストを低減させつつ、高い転写精度で入れ子部材を製造することができる。
【0020】
第2の金属素材として、アルミニウム合金A7075等のアルミニウム合金を用いる場合、マスター型の入れ子部材への転写の際の入れ子部材の少なくとも一部の加熱温度を、240℃以上400℃以下という低温にすることができるため、転写金型用入れ子の製造コストを大幅に低減できる。更に、入れ子部材として金型用鋼材を用いる場合よりも、樹脂等の材料に対する離型性を向上できるため、例えば、直径又は幅が10μm以上100μm以下の微細形状を含む微細構造を有する樹脂製品の射出成形金型用の入れ子部材として、特に好適に用いることができる。
【0021】
更に、原型の表面形状の反転形状が転写された入れ子部材の分割面の算術平均表面粗さが0.1μm以上1μm以下となるように加工することにより、キャビティの内部の空気や溶融樹脂から発生するガスを排出するためのガスベントの設置が不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る転写金型用入れ子の製造方法により製造される一対の転写金型用入れ子の模式的な構造を示す概略断面図である。
【
図2】同転写金型用入れ子の製造方法の第1の工程において製造されるマスター型の模式的な構造を示す概略断面図である。
【
図3】同転写金型用入れ子の製造方法の第2の工程を示す模式図である。
【
図4】同転写金型用入れ子の製造方法の第2の工程を示す模式図である。
【
図5】同転写金型用入れ子の製造方法において、マスター型の反転形状が転写された入れ子部材を切削して、転写金型用入れ子を製造する工程を示す模式図である。
【
図6】マイクロニードルの射出成形用金型の製造に使用するマスター型の形状の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一の実施の形態に係る転写金型用入れ子の製造方法(以下、「転写金型用入れ子の製造方法」と略称する場合がある。)は、
図1から4に示すように、分割面11、11aで開閉可能であり、閉じた状態で製品の表面形状の反転形状が転写されたキャビティ14を有する一対の転写金型用入れ子(固定側入れ子12及び可動側入れ子13)を製造する方法であって、第1の金属素材からなり、製品の表面形状22の少なくとも一部と同一の表面形状を有する原型23、23aが形成されたマスター型21、21aを形成する第1の工程と、第1の金属素材よりも低温で軟化する第2の金属素材からなる入れ子部材31の少なくとも一部を、第1の金属素材は軟化せず、第2の金属素材が軟化する温度に加熱しながらマスター型21、21aに押圧し、原型23、23aの反転形状32、32aを入れ子部材31に転写する第2の工程を有している。
【0024】
以下、各工程について、より詳細に説明する。
【0025】
<第1の工程>
第1の工程では、第1の金属素材からなり、製品の表面形状22の少なくとも一部と同一の表面形状を有する原型23、23aが形成されたマスター型21、21aを形成する。マスター型21、21aを構成する第1の金属素材としては、切削加工等により、任意の寸法及び形状のマスター型を形成可能な任意の金属素材を用いることができるが、軟化温度が高く(例えば、400℃以上)、1mm以下、好ましくは数十μmの微細形状の加工に適用可能で、高い硬度を有する金属素材であることが好ましい。好ましい第1の金属素材の具体例としては、金型用鋼材が挙げられる。
【0026】
マスター型21、21aに形成される製品の表面形状22の少なくとも一部は、
図2に示すような、製品の表面形状22を分割面Dで2分割した一方の形状であってもよいが、後述する第2の工程において、加熱により軟化させた入れ子部材31をマスター型21、21aに押圧した際に、エッジ部分にRが生じ、原型23、23aの転写精度が低下するのを避けるため、
図2に示すように、製品の表面形状22を分割面Dで2分割した一方の形状に、所定の厚さの切削しろを付加した形状であってもよい。マスター型21、21aの形成は、フライス盤の任意の加工機械を用いた切削加工等の任意の方法及び装置により行うことができるが、1mm以下、好ましくは数十μmの微細形状の加工に適用可能な方法であることが好ましい。
【0027】
<第2の工程>
図3、4に示すように、第2の工程では、第1の金属素材よりも低温で軟化する第2の金属素材からなる入れ子部材31の少なくとも一部(
図3中の網かけ部分)、好ましくは、マスター型21、21aに押圧される面及びその近傍を、第1の金属素材は軟化せず、第2の金属素材が軟化する温度に加熱しながらマスター型21、21aに押圧し、原型23、23aの反転形状32、32aを入れ子部材31に転写する。
【0028】
入れ子部材31を構成する第2の金属素材としては、マスター型21、21aを構成する第1の金属素材よりも低い温度で軟化し、金型の入れ子部材として使用可能な硬度を有する任意の金属を用いることができる。第2の金属素材の好ましい例としては、アルミニウム合金A7075等のアルミニウム合金が挙げられる。アルミニウム合金A7075は、表面エネルギーの関係から(金型用鋼材の水滴接触角が約76°であるのに対し、アルミニウム合金A7075の水滴接触角は約98°である。)、樹脂に対する離型性が高くなるため、樹脂材料の射出成形用金型、特に微細形状を有する樹脂製品用の金型として、特に好ましい。
【0029】
反転形状の転写は、入れ子部材31をマスター型21、21aに押圧する面及びその近傍(
図3、4の網かけ部分)を、第1の金属素材は軟化せず、第2の金属素材が軟化する温度に加熱しながらマスター型21、21aに押圧することにより行われる。このとき、マスター型21、21aの少なくとも一部が同時に加熱されてもよい。入れ子部材31の加熱温度は、例えば、第2の金属素材がアルミニウム合金A7075である場合、240℃以上400℃以下であることが好ましく、300℃付近であることが特に好ましい。加熱は、任意の手段を用いて行うことができるが、局所的に加熱が可能であり、加熱温度の調節も容易な高周波加熱により行うことが好ましい。転写に要する時間は、加熱温度300℃、第2の金属素材がアルミニウム合金A7075である場合、1分から3分程度である。
【0030】
第2の工程において、加熱により軟化させた入れ子部材31をマスター型21、21aに押圧した際に、エッジ部分にRが生じ、原型23、23aの転写精度が低下するのを避けるため、
図2に示すように、製品の表面形状22を分割面Dで2分割した一方の形状に、所定の厚さの切削しろを付加した形状である場合、転写金型用入れ子(固定側入れ子12又は可動側入れ子13)を製造するためには、
図5に示すように、原型の反転形状32、32aが転写された後の入れ子部材31、31aのマスター型21、21aに押圧した側の表面を分割面D(11、11a)まで、切削又は研削する必要がある。切削又は研削は、任意の手段を用いて行うことができる。
【0031】
このようにして得られる一対の転写金型用入れ子である固定側入れ子12、可動側入れ子13は、例えば、樹脂製品の射出成形用金型の入れ子として用いることができる。1mm以下の微細構造を有する形状の転写が可能であるため、固定側入れ子12、可動側入れ子13は、直径100μm程度のマイクロニードル、LEDのパッケージ、スマートフォン用レンズ等の微細な構造を有する樹脂製品の射出成形用金型として好適に用いることができる。この場合において、分割面11又は11aの表面を鏡面仕上げせず、分割面11、11aで接合した固定側入れ子12及び可動側入れ子13の間に形成されるキャビティ14から、接合面11、11aの外周まで、樹脂は流入しないがガスが透過可能なガス流路が形成されるよう、接合面11、11aの算術平均表面粗さ(Ra)が、0.1μm以上1μm以下となるよう研削加工又は切削加工を行うか、キャビティ14から接合面11、11aの外周に至る溝(図示しない)を形成することにより、キャビティ14内部に存在する空気や、溶融した樹脂から発生したガスが排出されるため、従来の樹脂製品用射出成形金型のようにガスベントを形成する必要がなくなり、加工工程を簡略化できる。なお、算術平均表面粗さ(Ra)の測定は、任意の公知の方法及び装置用いて行うことができる。
【0032】
本実施の形態では、固定側入れ子及び可動側入れ子の双方を、本実施の形態に係る転写金型用入れ子の製造方法を用いて製造した場合について説明したが、いずれか一方のみを本実施の形態に係る製造方法で製造してもよい。また、製品形状が分割面に対し対称である場合には、単一のマスター型を用いて固定側入れ子及び可動側入れ子の双方を製造してもよい。
【実施例】
【0033】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
実施例1:転写金型用入れ子の製造
cBNラジアスエンドミルを用いた切削加工により、
図6に示すような形状を有する直径100μm、長さ1.2mmのマイクロニードル用のマスター型を、金型用鋼材(ELMAX(登録商標))からなるブロック上に形成した。次いで、アルミニウム合金A7075からなる入れ子部材の押圧面及びその近傍を、高周波加熱で300℃に加熱しながら、マスター型に所定時間押圧し、マスター型の反転形状を転写した。その後、分割面が露出するまで押圧面側を切削し、マスター型の反転形状が転写された一対の転写金型用入れ子を製造した。
【0034】
実施例2:マイクロニードルの形成
実施例1において製造した転写金型用入れ子を射出成形用金型ブロックにセットし、マイクロニードルの中空部に当たる位置に、マイクロニードルの内径に相当する直径を有する円筒状の中子を挿入し(中子として、可動側入れ子の中空部に当たる位置に、かまぼこ状の凸形状を形成してもよい。)、生分解性樹脂であるポリ乳酸を用いて射出成形を行った。高精度で微細形状が転写されたマイクロニードルが、バリの発生や離型時の折損を殆ど伴うことなく製造できることを確認した。従来の微細加工を用いてマイクロニードルの製造を行う場合に比べ、製造コストを大幅に低減できることを確認した。
【符号の説明】
【0035】
10 転写金型用入れ子
11、11a 分割面
12 固定側入れ子
13 可動側入れ子
14 キャビティ
21、21a マスター型
22 製品の表面形状
23、23a 原型
31 入れ子部材
32、32a 原型の反転形状
D 分割面