(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】可搬型の測定器
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20220322BHJP
【FI】
G06F3/041 460
(21)【出願番号】P 2015195394
(22)【出願日】2015-09-30
【審査請求日】2018-08-29
【審判番号】
【審判請求日】2020-08-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示会 第63回電設工業展 JECA FAIR2015 開催日 平成27年 5月27日~5月29日 公開の形態 出品
(73)【特許権者】
【識別番号】000109598
【氏名又は名称】テンパール工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】河野 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】品田 邦明
(72)【発明者】
【氏名】水戸 誠治
【合議体】
【審判長】角田 慎治
【審判官】稲葉 和生
【審判官】▲高▼瀬 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-211000(JP,A)
【文献】特開2010-176299(JP,A)
【文献】特開平11-203025(JP,A)
【文献】特開2009-211918(JP,A)
【文献】特開2012-145478(JP,A)
【文献】特開2014-157523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/041, 3/048-3/0489
G01R31/00, 31/02-31/06, 31/12-31/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定条件を表示および設定する測定条件設定操作部と、
該測定条件設定操作部により設定された条件の測定を開始操作する測定開始操作部と、を備えた可搬型の測定器であって、
前記測定条件設定操作部は、測定条件を表示するとともに、表示部分で使用者の操作を受けるタッチパネルで構成される一方、
前記測定開始操作部は、測定開始操作待ちになったときにタッチパネルの表面に凹凸を形成させることによって構成される押釦スイッチであ
り、
測定開始操作待ちになったときに、前記タッチパネルの表面には、前記測定開始操作部の凹凸のみが形成され、
前記押釦スイッチを押圧したときにのみ測定を開始することを特徴とする可搬型の測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬型の測定器に関する。特に、測定器本体に、測定条件を設定する測定条件設定操作部と、測定を開始する測定開始操作部とが設けられた測定器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、電子機器の小型化、性能向上が著しい。携帯電話やスマートフォンに代表されるように、手持ちが可能なサイズでありながらパーソナルコンピュータと同等な性能を有するものが登場してきている。同様に、測定機器においても、性能を維持しつつ小型化が進んできており、オシロスコープをはじめ、電路における地絡を検出する装置や、テスターに代表されるマルチメーター(回路計)も機動性に優れた測定機器が増加している。
【0003】
このような測定機器には、各種の測定情報が、測定機器の外部から視認可能になるように表示パネルが備えられている。表示パネルは、本体の小型化と相まって、限られた表示面積のなかで、測定に必要な情報を表示する必要がある。また、測定に必要な操作を受け付けるために、タッチパネルを採用する場合がある。測定に必要な情報の表示に加えて、測定情報を入力することが可能になるため、本体の小型化が進むにつれて、多種の情報表示機能と測定操作機能とを集約させるために、タッチパネルが採用されることが多い。
【0004】
機器の手持ちや可搬が可能になると、該機器を利用し得る場所の自由度が増加する。即ち、必然的に機器を持ち歩く頻度が高くなる。このような状況下では、機器を持ち歩いたり運んでいる際に、タッチパネルに接触してしまい誤操作を引き起こしたり、ついうっかりして機器を落としてしまうことが想定される。
【0005】
なお、スマートフォンに代表されるような、筐体の前面に広範囲にタッチパネルが配置される機器にあっては、当該タッチパネルに近接して押釦式の操作用の押釦が設けられていることが多い。この押釦は、通常スマートフォンなどの動作状態を待機状態にリセットするか、または、スマートフォンの電源を入切する機能を兼ね備えているものであり、当該押釦を押圧操作してしまっても、誤って通話が開始されたり、誤ってメールを送信してしまう、という誤操作が引き起こされることはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の事情に鑑み、筐体の前面にタッチパネルが配置される可搬型の測定器において、機器の持ち運び時や測定時においても、誤って測定を開始してしまうことがなく、確実な測定操作を行うことができる可搬型の測定器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る可搬型の測定器は、上記課題を解決すべく構成されたもので、測定条件を表示および設定する測定条件設定操作部と、該測定条件設定操作部により設定された条件の測定を開始操作する測定開始操作部と、を備えた測定器であって、前記測定条件設定操作部は、測定条件を表示するとともに、表示部分で使用者の操作を受けるタッチパネルで構成される一方、前記測定開始操作部は、操作時に押圧される押圧部で使用者の操作を受ける押釦スイッチで構成されることを特徴とするものである。
【0009】
かかる構成によれば、
測定条件設定操作部をタッチパネルで構成する一方、測定開始操作部を押圧部を備えた押釦式スイッチで分離して構成したため、測定器の持ち運び時や測定時において、タッチパネルに接触することによって誤って測定が開始されることなく、押釦スイッチを押圧したときにのみ確実に測定を開始することができる。
【0010】
また、本発明に係る可搬型の測定器は、前記測定条件設定操作部及び前記測定開始操作部が前面側から操作可能に配置された筐体を備えて、前記測定開始操作部の押圧部は、前記タッチパネルの左側において、前記筐体の外部に露出するように配置されて、該筐体外部からの測定開始操作が可能となるように構成してもよい。
【0011】
かかる構成によれば、測定開始操作部の押圧部を、タッチパネルの左側に筐体の外部に露出するように配置したから、
測定器本体を保持する手と、測定器によって測定される測定対象物のほうの操作を行う手を使い分けることができ、例えば、右手によって測定対象物を操作し、左手によって測定器本体の保持と測定開始の操作を行うことができる。
【0012】
また、本発明に係る可搬型の測定器は、前記測定開始操作部は、前記測定条件設定操作部の一部において、測定開始操作待ちになったときにタッチパネルの表面に凹凸を形成させることによって構成される押釦スイッチであり、測定開始操作待ちになったときに、前記タッチパネルの表面には、前記測定開始操作部の凹凸のみが形成され、前記押釦スイッチを押圧したときにのみ測定を開始することを特徴として構成してもよい。
【0013】
かかる構成によれば、
タッチパネルに表示される表示部分で使用者の操作を受ける場合と比較して
測定開始操作待ちになったときにタッチパネルの表面に出現させるから、タッチパネルに誤って接触することによってタッチパネルが反応してしまい測定が開始されることがなく、タッチパネル上に形成された凹凸のある押釦スイッチを押圧したときにのみ確実に測定を開始することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上の如く、本発明は、筐体の前面にタッチパネルが配置される可搬型の測定機器において、機器の持ち運び時や測定時においても、誤って測定を開始してしまうことがなく、確実な測定操作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第一の実施の形態に係わる可搬型の測定機器のブロック図
【
図2】第一の実施の形態に係わる可搬型の測定機器の本体斜視図
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下,本発明の実施の形態について,図面を用いて説明する。
(第一の実施形態)
まず、本実施形態に係る可搬型の測定機の基本構成について、
図1のブロック図を用いて説明する。
【0017】
100は測定器本体、101は測定条件を表示および設定する測定条件設定操作部たる表示パネル、102は測定条件設定操作部により設定された条件の測定を開始操作する測定開始操作部たる測定開始押釦スイッチである。表示パネル101と測定開始釦102とは、それぞれ、表示パネル101が測定条件を表示するとともにその表示部分で使用者の操作を受けるタッチパネルによって構成され、測定開始押釦スイッチ102が、操作時に押圧される押圧部で使用者の操作を受ける押釦スイッチによって構成される。
【0018】
表示パネル101と測定開始釦102とは、それぞれマイコンからなる演算装置に接続されている。該演算装置は、記憶装置に記憶されたプログラム及びパラメータ値を読み出すとともに実行することにより、表示パネル101には各種の測定条件が表示される。実際に測定に用いる測定条件は、表示パネル101における測定条件の表示部分で使用者のタッチ操作を受けて、選択設定される。
【0019】
測定条件が選択設定された状態においては、演算装置は、選択設定された測定条件の開始操作待ちとなる。ここで、演算装置に接続された測定開始押釦スイッチ102が押圧されて使用者の操作を受けた場合には選択設定された測定条件に基いて測定が開始される。
【0020】
(可搬型の測定器の外観構成)
次に、本実施形態に係る可搬型の測定器の外観構成について、
図2を参酌して説明する。1は可搬型の測定器である。本体100は、直方体形状のケースと該ケースに嵌合するカバーとから構成される筐体で外郭が構成される。
【0021】
筐体の内部には測定に必要な電子機器を収納している。例えば、測定対象となる被測定物に電気的な接触を得るためのテスタリード用の配線を接続するための接続端子103、接続端子103から入力された電気的信号を演算処理するためのマイコン、マイコンによる演算結果を表示するための表示パネル101、測定を開始するための測定開始押釦スイッチ102、その他測定に必要な電子機器を配置した電子基板等を内部に収納している。
【0022】
また、本体100の両側面には、弾性体(エラストマー)からなる一対の緩衝部材201、202が取着配置される。
【0023】
本体100の外郭を構成する筐体には、表示パネル101と測定開始押釦スイッチ102とが該筐体の前面側から操作可能に配置される。
【0024】
ここで、測定開始押釦スイッチ102は、表示パネル101の本体100の前面に向かって左側に外部に露出するように配置される。
【0025】
これは、本測定器が可搬型であるが故の配置である。例えば、可搬型の測定器1は、使用者とともに測定場所に持ち運ばれて使用される。そして、測定時には、測定器本体を保持する手と、測定器によって測定される測定対象物のほうの操作を行う手を使い分けることができ、例えば、右手によって測定条件を選択設定するとともに測定対象物にプローブをあてがうなどの操作を行い、左手によって測定器本体の保持と測定開始の操作を行うことができる。
【0026】
(表示パネルの表示例)
図3には、表示パネル101における測定条件の表示の一例を示している。
この一例では、可搬型の測定器1の測定対象として漏電遮断器の動作確認を示している。漏電遮断器の動作が正常に行われるか否かを確認する測定である。
【0027】
漏電遮断器の動作確認測定としては、指定された感度電流以内で動作するか否か、また、指定された動作時間以内で動作するか否かを測定する。指定された条件内での動作を行わない場合には正常動作ではないと判断する必要がある。
【0028】
図3に示した表示パネル101における表示状態では、漏電遮断器の確認動作対象を定める測定項目設定釦101c、定格感度電流を定める感度電流設定釦101a、定格動作時間を定める動作時間設定釦101b、詳細な設定を行う詳細ボタン101d、定めた条件を決定する条件設定釦101eが選択可能な釦であり、また、可搬型の測定器の電池残量を示す電池残量表示101fが表示される。
【0029】
表示パネル101中央部の大きな数字(10.5mA)は漏電遮断器が動作した感度電流値を表し、中央部右寄りに縦に並んだ3つの数字は、それぞれ過去に測定した感度電流値と動作時間の履歴である。
【0030】
(第二の実施形態)
次に、第二の実施形態について
図4を用いて説明を行う。
【0031】
図4には、
図3における表示パネル101に、さらに、101gで示す測定開始押釦スイッチを設けた表示パネルを示している。下方の図は、表示パネルを側面からみたものであり、表示パネルの前面側に隆起した測定開始押釦スイッチ101gを形成している。
【0032】
測定開始押釦スイッチ101gは、タッチパネルの表面に凹凸を形成させることにより操作用の押釦を構成したものであり、この凹凸を出現又は消失させることで、測定開始操作待ちになったことを使用者が認識できるものである。
【0033】
表示パネル101上の凹凸は、タッチパネル上に物理的に凹凸を形成するための手段として、タッチパネル内面に液体が流れるよう形成されたチャネルに所定時に液体注入装置によって液体を注入し液体が注入された部分が圧力で膨張して前面側に凸状に隆起する一方、液体除去装置によって液体を除去し液体が除去された部分が負圧で収縮して前面側からみて凹状にへこむものである。チャネルを押釦上に形成することにより液体の注入、除去の加減により、
図4で示したような測定開始押釦スイッチ101gを構成している。
【0034】
この他、表示パネル101上に凹凸を形成するための手段として、タッチパネル内面に電解質を充填するとともに、電気的な経路を形成し、電圧の印加によって電解質が泳動による密度の変化を生じさせることにより表示パネル101上に凹凸を形成するよう構成してもよい。
【0035】
このように、タッチパネルに表示される表示部分で使用者の操作を受ける場合と比較して、タッチパネル表面に凹凸を出現又は消失させることにより形成される物理的な押釦を用いて使用者の操作を受けるから、タッチパネルに誤って接触することによってタッチパネルが反応してしまい測定が開始されることがなく、タッチパネル上に形成された凹凸のある押釦スイッチを押圧したときにのみ確実に測定を開始することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 可搬型の測定機器
100 本体
101 表示パネル
102 測定開始押釦スイッチ
103 接続端子
201 緩衝部材
202 緩衝部材