(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】レーザ投射装置
(51)【国際特許分類】
H01S 5/02208 20210101AFI20220322BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20220322BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20220322BHJP
H01S 5/02255 20210101ALI20220322BHJP
H01S 5/40 20060101ALI20220322BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
H01S5/02208
G02B26/10 B
G02B27/02 Z
H01S5/02255
H01S5/40
H04N5/74 H
(21)【出願番号】P 2017063228
(22)【出願日】2017-03-28
【審査請求日】2020-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】506423051
【氏名又は名称】株式会社QDレーザ
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137615
【氏名又は名称】横山 照夫
(72)【発明者】
【氏名】神戸 聡
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誠
(72)【発明者】
【氏名】森野 誠治
(72)【発明者】
【氏名】武政 敬三
【審査官】大和田 有軌
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/001590(WO,A1)
【文献】特開2011-155320(JP,A)
【文献】特開2005-057020(JP,A)
【文献】実開昭59-037757(JP,U)
【文献】国際公開第2012/073330(WO,A1)
【文献】特開2011-008221(JP,A)
【文献】特開2016-194603(JP,A)
【文献】特開2016-191799(JP,A)
【文献】特開2015-111231(JP,A)
【文献】国際公開第2014/141918(WO,A1)
【文献】特開2014-021708(JP,A)
【文献】国際公開第2012/117495(WO,A1)
【文献】特開2012-078532(JP,A)
【文献】特開2011-066549(JP,A)
【文献】国際公開第2007/029675(WO,A1)
【文献】特開2001-330794(JP,A)
【文献】国際公開第2016/191709(WO,A1)
【文献】特開2018-165784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 - 5/50
G02B 26/10 - 30/60
G03B 21/00 - 21/30
H04N 5/64 - 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
つるを備えるメガネ形状のレーザ投射装置であって、
レーザモジュールと、
前記レーザモジュールから出射された第1レーザ光を走査する走査光学部材と、
前記走査光学部材で走査された前記第1レーザ光をユーザの網膜に投射して前記網膜に画像を投影する投射光学部材と、を備え、
前記レーザモジュールは、
各々の発光点が平面上に位置する3つ以上の複数のレーザ素子と、
前記複数のレーザ素子が組み付けられ、前記平面に交差する面であって前記複数のレーザ素子が出射するレーザ光が外部に出射される前面と、前記複数のレーザ素子が前記レーザ光を出射する方向である前記平面の面方向に平行な2つの側面と、を有し、前記平面に対して対称形状をした筐体と、
前記筐体に組み付けられ、前記複数のレーザ素子が発振する前記レーザ光を第1方向と第2方向に分光すると共に、前記第1方向に分光する前記第1レーザ光の光量が前記第2方向に分光する第2レーザ光の光量よりも小さい光学素子と、
前記筐体に組み付けられ、前記光学素子によって前記第2方向に分光された前記第2レーザ光を受光する受光素子と、を備え、
前記レーザモジュールは、前記筐体の前記2つの側面のいずれかで前記つるの取り付け部に固定されている、
レーザ投射装置。
【請求項2】
前記複数のレーザ素子それぞれにおける前記第1レーザ光は前記光学素子によって同軸上に合成される、請求項1記載のレーザ投射装置。
【請求項3】
前記複数のレーザ素子はそれぞれ異なる波長帯の前記レーザ光を発振し、
前記受光素子は前記複数のレーザ素子が発振する前記レーザ光の波長帯それぞれに感度を有する複数の受光領域を備える、請求項1または2記載のレーザ投射装置。
【請求項4】
前記複数のレーザ素子はそれぞれ異なる波長帯の前記レーザ光を発振し、
前記受光素子は前記複数のレーザ素子が発振する前記レーザ光の波長帯全てに感度を有する1つの受光領域を備える、請求項1または2記載のレーザ投射装置。
【請求項5】
前記複数のレーザ素子が発振する前記レーザ光はレンズを介さずに前記光学素子に入射する、請求項1から4のいずれか一項記載のレーザ投射装置。
【請求項6】
前記受光素子が
受光する前記第2レーザ光は発散光である、請求項1から5のいずれか一項記載のレーザ投射装置。
【請求項7】
前記投射光学部材は、前記網膜にビーム状の前記第1レーザ光を投射して前記網膜に前記画像を投影する、請求項1から6のいずれか一項記載のレーザ投射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ投射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ素子が発振したレーザ光を受光素子でモニタして、レーザ素子をフィードバック制御する技術が知られている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-134736号公報
【文献】特開2011-8221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザモジュールの用途によっては、レーザモジュールから出射されるレーザ光の光強度が小さいことが望まれている。そこで、レーザ素子から光強度の小さいレーザ光を発振させることが考えられるが、光強度の小さいレーザ光の発振には限界がある。
【0005】
また、レーザモジュールの小型化が進んでおり、これにより、レーザ素子をフィードバック制御するための受光素子も小型化している。受光素子の小型化が進むと受光面積が小さくなるため、例えばレーザ素子から光強度の小さいレーザ光が発振される場合では、レーザ光の検出精度の低下が懸念される。レーザ光の検出精度の低下は、レーザ素子のフィードバック制御の精度低下を招く恐れがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、光強度の小さいレーザ光の出射と受光素子の検出精度の低下抑制とを実現可能なレーザ投射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、つるを備えるメガネ形状のレーザ投射装置であって、レーザモジュールと、前記レーザモジュールから出射された第1レーザ光を走査する走査光学部材と、前記走査光学部材で走査された前記第1レーザ光をユーザの網膜に投射して前記網膜に画像を投影する投射光学部材と、を備え、前記レーザモジュールは、各々の発光点が平面上に位置する3つ以上の複数のレーザ素子と、前記複数のレーザ素子が組み付けられ、前記平面に交差する面であって前記複数のレーザ素子が出射するレーザ光が外部に出射される前面と、前記複数のレーザ素子が前記レーザ光を出射する方向である前記平面の面方向に平行な2つの側面と、を有し、前記平面に対して対称形状をした筐体と、前記筐体に組み付けられ、前記複数のレーザ素子が発振する前記レーザ光を第1方向と第2方向に分光すると共に、前記第1方向に分光する前記第1レーザ光の光量が前記第2方向に分光する第2レーザ光の光量よりも小さい光学素子と、前記筐体に組み付けられ、前記光学素子によって前記第2方向に分光された前記第2レーザ光を受光する受光素子と、を備え、前記レーザモジュールは、前記筐体の前記2つの側面のいずれかで前記つるの取り付け部に固定されている、レーザ投射装置である。
【0008】
上記構成において、前記複数のレーザ素子それぞれにおける前記第1レーザ光は前記光学素子によって同軸上に合成される構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記複数のレーザ素子はそれぞれ異なる波長帯の前記レーザ光を発振し、前記受光素子は前記複数のレーザ素子が発振する前記レーザ光の波長帯それぞれに感度を有する複数の受光領域を備える構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記複数のレーザ素子はそれぞれ異なる波長帯の前記レーザ光を発振し、前記受光素子は前記複数のレーザ素子が発振する前記レーザ光の波長帯全てに感度を有する1つの受光領域を備える構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記複数のレーザ素子が発振する前記レーザ光はレンズを介さずに前記光学素子に入射する構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記受光素子が受光する前記第2レーザ光は発散光である構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記投射光学部材は、前記網膜にビーム状の前記第1レーザ光を投射して前記網膜に前記画像を投影する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、光強度の小さいレーザ光の出射と受光素子の検出感度の低下抑制とを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施例1に係るレーザモジュールの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施例2に係る画像投影装置を上方から見た図である。
【
図3】
図3(a)は、レーザモジュールの前面図、
図3(b)は、
図3(a)をA方向から見た側面図、
図3(c)は、
図3(a)をB方向から見た側面図である。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)は、レーザモジュールの分解斜視図である。
【
図5】
図5は、筐体へのレーザ素子の組み付けを説明する斜視図である。
【
図6】
図6は、レーザモジュールから出射されるレーザ光の焦点を示す図である。
【
図7】
図7は、変形例に係るレーザモジュールの分解斜視図である。
【
図8】
図8(a)から
図8(d)は、受光素子の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、実施例1に係るレーザモジュールの構成を示す図である。
図1のように、実施例1のレーザモジュール100は、レーザ素子12と、ダイクロイックプリズム14と、受光素子20と、制御部21と、を備える。なお、制御部21は、レーザモジュール100に含まれずに、外部部品である場合でもよい。
【0019】
レーザ素子12は、例えば半導体レーザダイオードであり、レーザ光11を発振する。レーザ素子12が発振したレーザ光11は、レーザ光を透過及び反射する機能を持つ光学素子であるダイクロイックプリズム14に入射する。レーザ光11は、ダイクロイックプリズム14によって、ダイクロイックプリズム14を透過して第1方向に進むレーザ光(透過光)13と、ダイクロイックプリズム14で反射して第2方向に進むレーザ光(反射光)15と、に分光される。
【0020】
ダイクロイックプリズム14を透過したレーザ光13は、レーザモジュール100から外部へと出射される。ダイクロイックプリズム14で反射したレーザ光15は、受光素子20に放射される。受光素子20は、例えば半導体フォトダイオードなどの入射光を電流信号に変換する素子であり、レーザ光15を受光する位置に配置されている。
【0021】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサである。制御部21は、レーザ素子12に電気信号を入力することによって、レーザ素子12が発振するレーザ光11を制御する。また、受光素子20が光電変換によって出力する電流(モニタ値)は、制御部21に入力される。制御部21は、受光素子20のモニタ値に基づいてレーザ素子12をフィードバック制御する。
【0022】
レーザモジュール100が例えば網膜投射型画像投影装置などの光強度の小さいレーザ光を被投射体に投射するレーザ投射装置に用いられる場合、レーザモジュール100から光強度の小さいレーザ光13(例えばμWオーダーのレーザ光)が出射されることが望ましい。このため、レーザ素子12が発振するレーザ光11の光強度を小さくすることが考えられる。しかしながら、光強度の小さいレーザ光11の発振には限界(例えば数mW程度)があり、それよりも光強度が小さいレーザ光11を安定して発振することは難しい。
【0023】
また、レーザモジュール100の小型化が進んでおり、これにより、受光素子20も小型化している。受光素子20の小型化が進むとレーザ光15を受光する受光面積が小さくなる。このため、例えばレーザ素子12が数mWのような光強度の小さいレーザ光11を発振する場合では、受光素子20の受光量は例えば数十μWとなり、温度変化に伴う暗電流の変化や、外光などの影響によってレーザ光15の検出精度の低下が懸念される。レーザ光15の検出精度が低下すると、制御部21によるレーザ素子12のフィードバック制御が不安定になり、レーザ素子12から安定した光強度のレーザ光11を発振させることが難しくなる。
【0024】
そこで、実施例1では、レーザ光11をレーザ光13とレーザ光15に分光するダイクロイックプリズム14に、レーザ光13の光量がレーザ光15の光量よりも小さくなる分光特性を有するダイクロイックプリズムを用いる。例えば、レーザ光13の光量が15%、レーザ光15の光量が85%となるようにレーザ光11を分光するダイクロイックプリズム14を用いる。これにより、レーザ素子12が発振するレーザ光11よりも光量の小さいレーザ光13がレーザモジュール100から外部に出射されるため、レーザ素子12によるレーザ光11の安定発振を実現しつつ、外部に出射されるレーザ光13の光強度を小さくできる。また、レーザモジュール100の小型化が進んで受光素子20の受光面積が小さくなった場合でも、レーザ光11の半分以上の光量を有するレーザ光15が受光素子20に放射されるため、受光素子20で検出するレーザ光15の光量が増えて検出精度の低下を抑制できる。このように、実施例1によれば、光強度の小さいレーザ光13の出射と受光素子20の検出精度の低下抑制とを実現できる。
【0025】
実施例1では、レーザ光13の光量がレーザ光11の15%で、レーザ光15の光量がレーザ光11の85%である場合を例に示したが、この場合に限られる訳ではない。レーザモジュール100から外部に出射されるレーザ光の光強度を小さくする点から、レーザ光13の光量はレーザ光11の30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。また、受光素子20の検出精度を高める点から、レーザ光15の光量はレーザ光11の70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。
【0026】
なお、実施例1では、レーザ光を透過及び反射する光学素子としてダイクロイックプリズムの場合を例に説明したが、その他の光学素子、例えば板状のダイクロイックミラーや偏光ビームスプリッタなどの場合でもよい。また、光学素子は、レーザ光11をレーザ光13とレーザ光15に分光するとともに、レーザ光13とレーザ光15の光量比を異ならせる機能を合わせ持つ構成であるが、分光と光量比を異ならせる機能を別の部材で行ってもよい。すなわち、光学素子は、分光器と減光フィルタ(NDフィルタ)の2種の部材で構成し、分光器はレーザ光13とレーザ光15を、例えば1対1の光量比で分光し、その出力であるレーザ光13側にNDフィルタを設けて減光させることでも、同様の機能を実現することが可能となる。このように構成することによって、ダイクロイックプリズムなどの分光器ではその分光比を精密に設定しなくても、NDフィルタによって所望の光量を設定することができるので、分光と光量制御についての汎用性を高めることができる。
【実施例2】
【0027】
図2は、実施例2に係る画像投影装置を上方から見た図である。
図2のように、画像投影装置500は、レーザモジュール100a、レンズ60、ミラー62、走査ミラー64、投影ミラー66、画像入力部68、及び制御部70を備える。
【0028】
画像投影装置500はメガネ型である。メガネは1対のつる72と1対のレンズ74とを有する。1対のつる72それぞれに、レーザモジュール100a、レンズ60、ミラー62、及び走査ミラー64が設けられている。レーザモジュール100aは、1対のつる72それぞれの取り付け部78に取り付けられている。1対のレンズ74それぞれに、投影ミラー66が設けられている。画像入力部68及び制御部70は、例えばメガネに設けられずに外部装置(例えば携帯端末)に設けられていてもよいし、メガネのつる72に設けられていてもよい。
【0029】
画像入力部68には、図示しないカメラ及び/又は録画機器などから画像データが入力される。制御部70は、入力された画像データに基づいて、レーザモジュール100aからのレーザ光76の出射を制御する。このように、画像データはレーザモジュール100aによって画像光線であるレーザ光76に変換される。
【0030】
制御部70は、例えば制御回路であり、例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサでもよいし、専用回路であってもよい。カメラをユーザの視線方向に向けて画像投影装置500の適切な位置に設置すれば、このカメラで撮像した視線方向の画像をユーザの網膜82に投影させることができる。また、録画機器などから入力された画像を投影させたり、カメラ画像と録画機器などからの画像を制御部70でスーパーインポーズさせたりして、いわゆる仮想現実(AR:Augmented Reality)画像を投影させることもできる。
【0031】
レンズ60は、コリメートレンズと対物レンズの複合レンズであり、レーザモジュール100aから出射されたレーザ光76を発散光から僅かに収束する収束光に変換する。レンズ60は、レーザモジュール100aに一体となって組み付けられていてもよいし、レーザモジュール100aとは別部品となっていてもよい。
【0032】
ミラー62は、レンズ60を通過したレーザ光76を走査ミラー64に向かって反射させる。走査ミラー64は、レーザ光76を2次元方向に走査して、ユーザの網膜82に画像を投影するための投影光とする。走査ミラー64は、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラーであり、水平方向及び垂直方向の2次元方向にレーザ光76を走査する。なお、実施例2では、走査光学部材として走査ミラー64の場合を例に説明するが、走査光学部材はレーザ光を走査可能であればよく、例えば電気光学材料であるタンタル酸ニオブ酸リチウム(KTN)結晶など、その他のスキャナーであってもよい。
【0033】
走査ミラー64で走査されたレーザ光76は、メガネのレンズ74のユーザの眼球80側の面に設けられた投影ミラー66に入射する。投影ミラー66は、走査ミラー64で走査されたレーザ光76をユーザの網膜82に投射することにより、網膜82に画像を投影する。ユーザは網膜82に投射されたレーザ光76の残像効果によって画像を認識する。メガネの1対のつる72それぞれにレーザモジュール100aなどが設けられていることから、ユーザは両目で画像を認識することができる。
【0034】
投影ミラー66は、走査ミラー64で走査されたレーザ光76の収束位置が瞳孔84近傍となるように設計されている。投影ミラー66は、メガネのレンズ74と接している必要はなく、レーザ光76が瞳孔84を通って網膜82に投射できる位置にあればよい。また、用途によっては、投影ミラー66のみでレンズ74が設けられていなくてもよい。なお、実施例2では、投射光学部材として投影ミラー66の場合を例に説明するが、投射光学部材はレーザ光を網膜82などの被投射体へ投射可能であればよく、例えば回折格子やレンズであってもよい。投射光学部材としてレンズを用いる場合、集光しないミラーを配置し、このミラーの眼球80側にレンズを配置することで実現でき、また、レーザモジュール100a、走査ミラー64などの光学系の配置の仕方により、レンズのみで網膜82にレーザ光を投射する構成をとることも可能である。
【0035】
走査ミラー64で走査されたレーザ光76は、投影ミラー66の手前で集光し、発散光となって投影ミラー66に入射する。これにより、レーザ光76は、投影ミラー66の集光パワーによって角膜88に略平行光で入射し、水晶体86によって網膜82の近傍に集光される。
【0036】
図3(a)は、レーザモジュールの前面図、
図3(b)は、
図3(a)をA方向から見た側面図、
図3(c)は、
図3(a)をB方向から見た側面図である。
図3(a)から
図3(c)のように、レーザモジュール100aは、筐体10と、レーザ素子12a~12cと、ダイクロイックプリズム14a、14bと、ミラー16と、固定部18と、受光素子20a、20bと、を備える。筐体10の幅Wは例えば4mm程度であり、高さHは例えば11mm程度であり、奥行きDは例えば16mm程度である。
【0037】
筐体10は、アルミニウム合金やマグネシウム合金などの熱伝導率の高い金属で形成されている。筐体10は内側に空間22を有する枠体形状をしている。空間22は、一方の側面42から他方の側面44にかけて筐体10を幅方向に貫通して形成されている。筐体10の前面40には、空間22と外部とを連通し、レーザ素子12a~12cからのレーザ光が合成されて外部に出射される孔24が設けられている。
【0038】
レーザ素子12a~12cは、例えばTO-CANパッケージタイプの半導体レーザダイオードであり、筐体10に設けられた空間22に向かってレーザ光が発振するように筐体10に組み付けられている。レーザ素子12aは、筐体10の背面46に組み付けられていて、例えば赤色レーザ光を発振する。レーザ素子12bは、筐体10の上面48に組み付けられていて、例えば緑色レーザ光を発振する。レーザ素子12cは、筐体10の前面40で孔24よりも上側に組み付けられていて、例えば青色レーザ光を発振する。例えば、赤色レーザ光の波長は610nm~660nmであり、緑色レーザ光の波長は515nm~540nmであり、青色レーザ光の波長は440nm~460nmである。
【0039】
ダイクロイックプリズム14a、14bは、レーザ光を透過、反射、及び合成する機能を持つ光学素子であって、空間22内に位置して筐体10に組み付けられている。ダイクロイックプリズム14aには、レーザ素子12aから発振された例えば赤色レーザ光と、レーザ素子12bから発振された例えば緑色レーザ光とが、レンズを介さずに入射する。この時、レーザ素子12aから発振された例えば赤色レーザ光はダイクロイックプリズム14aで透過光と反射光に分光される。また、レーザ素子12bから発振された例えば緑色レーザ光はダイクロイックプリズム14aで透過光と反射光に分光される。ダイクロイックプリズム14aを透過した赤色レーザ光とダイクロイックプリズム14aで反射された緑色レーザ光は合成され、ダイクロイックプリズム14bを略全透過して、外部への出射を可能とする孔24へ放射される。レーザ素子12cから発振された例えば青色レーザ光はミラー16で略全反射し、レンズを介さずにダイクロイックプリズム14bへ入射し、透過光と反射光に分光される。ダイクロイックプリズム14bで反射された青色レーザ光は、ダイクロイックプリズム14aで合成された合成光と合成し、外部への出射を可能とする孔24へ放射される。一方、ダイクロイックプリズム14aを反射した赤色レーザ光と、ダイクロイックプリズム14aを透過した緑色レーザ光は、受光素子20aへ放射される。また、ダイクロイックプリズム14bを透過した青色レーザ光は、受光素子20bへ放射される。
【0040】
ダイクロイックプリズム14aの分光特性は、透過する赤色レーザ光よりも反射する赤色レーザ光の方が高光強度となるように構成され、かつ、反射する緑色レーザ光よりも透過する緑色レーザ光の方が高光強度となるように構成されている。すなわち、ダイクロイックプリズム14aは、レーザ素子12aが発振する赤色レーザ光を透過光(第1方向のレーザ光)と反射光(第2方向のレーザ光)に分光すると共に、透過光(第1方向のレーザ光)の光量を反射光(第2方向のレーザ光)の光量よりも小さくする。例えば、ダイクロイックプリズム14aの赤色レーザ光の分光特性は透過15%、反射85%である。また、ダイクロイックプリズム14aは、レーザ素子12bが発振する緑色レーザ光を透過光(第2方向のレーザ光)と反射光(第1方向のレーザ光)に分光すると共に、反射光(第1方向のレーザ光)の光量を透過光(第2方向のレーザ光)の光量よりも小さくする。例えば、ダイクロイックプリズム14aの緑色レーザ光の分光特性は反射15%、透過85%である。
【0041】
ダイクロイックプリズム14bの分光特性は、反射する青色レーザ光よりも透過する青色レーザ光の方が高光強度となるように構成されている。すなわち、ダイクロイックプリズム14bは、レーザ素子12cが発振する青色レーザ光を透過光(第2方向のレーザ光)と反射光(第1方向のレーザ光)に分光すると共に、反射光(第1方向のレーザ光)の光量を透過光(第2方向のレーザ光)の光量よりも小さくする。例えば、ダイクロイックプリズム14bの青色レーザ光の分光特性は反射15%、透過85%である。
【0042】
なお、レーザ光を透過、反射、及び合成する光学素子としてダイクロイックプリズムの場合を例に説明するが、その他の光学素子、例えば板状のダイクロイックミラーなどの場合でもよい。
【0043】
レーザ素子12a~12cが筐体10の内側に設けられた空間22に向かってレーザ光が発振するように筐体10に組み付けられ、ダイクロイックプリズム14a、14bが空間22内に位置して筐体10に組み付けられていることで、レーザモジュール100aを小型化することができる。レーザモジュール100aが小型化することで、メガネ型の画像投影装置500におけるメガネのつる72にレーザモジュール100aを取り付け易くなる。
【0044】
固定部18は、筐体10の1対の側面42、44それぞれに設けられている。固定部18は、筐体10の一方の側面42から他方の側面44にかけて筐体10を貫通する孔26を有する。レーザモジュール100aは、固定部18の孔26にネジなどを通すことで外部部品に固定される。固定部18は、周囲よりも一段高くなって形成されている。すなわち、筐体10の側面42に設けられた固定部18は側面42の固定部18以外の領域よりも一段高く形成され、筐体10の側面44に設けられた固定部18は側面44の固定部18以外の領域よりも一段高く形成されている。これにより、レーザモジュール100aを外部部品に固定すると、筐体10のうちの固定部18のみが外部部品に接するようになる。
【0045】
受光素子20a、20bは、例えば半導体フォトダイオードであり、筐体10の外側で筐体10の下面50に組み付けられている。受光素子20aは、ダイクロイックプリズム14aと筐体10を挟んだ位置に組み付けられ、レーザ素子12a及びレーザ素子12bで発振され、ダイクロイックプリズム14aで第2方向に分光されたレーザ光を受光する。受光素子20bは、ダイクロイックプリズム14bと筐体10を挟んだ位置に組み付けられ、レーザ素子12cで発振され、ダイクロイックプリズム14bで第2方向に分光されたレーザ光を受光する。受光素子20a、20bが光電変換によって出力する電流(モニタ値)は、制御部70に入力される。制御部70は、受光素子20a、20bのモニタ値に基づいてレーザ素子12a~12cをフィードバック制御する。
【0046】
図8(a)から
図8(d)は、受光素子の平面図である。
図8(a)は、受光素子20aの平面図、
図8(b)は、受光素子20bの平面図である。
図8(a)のように、受光素子20aは、赤色レーザ光の波長帯に感度を有して赤色レーザ光を受光する受光領域90と、緑色レーザ光の波長帯に感度を有して緑色レーザ光を受光する受光領域92と、を有して構成されている。
図8(b)のように、受光素子20bは、青色レーザ光の波長帯に感度を有して青色レーザ光を受光する受光領域94を有して構成されている。このとき、受光領域90~94はレーザ光の放射範囲を規定するものではなく、例えば
図8(a)の一点鎖線のように赤色レーザ光と緑色レーザ光の合成光が所定の範囲に放射される。
【0047】
なお、赤色レーザ光はダイクロイックプリズム14aを全透過し、緑色レーザ光はダイクロイックプリズム14aを全反射して合成され、ダイクロイックプリズム14bで透過光と反射光に分光される構成でもよい。この場合、ダイクロイックプリズム14bの分光特性は、透過する赤色レーザ光と緑色レーザ光の合成光よりも反射する合成光の方が高光強度となるように構成され、青色レーザ光は上記と同様に構成される。この場合、
図8(c)のように、受光素子20bは、赤色レーザ光の波長帯に感度を持つ受光領域90と、緑色レーザ光の波長帯に感度を持つ受光領域92と、青色レーザ光の波長帯に感度を持つ受光領域94とを有する構成とし、受光素子20aは不要となる。また、
図8(d)のように、受光素子20bは、赤色レーザ光、緑色レーザ光、及び青色レーザ光の全ての波長帯に感度を有して全てのレーザ光を受光する受光領域95を有する構成とし、かつ、赤色レーザ光、緑色レーザ光、及び青色レーザ光それぞれを時間的にずらして発光させ、それぞれのレーザ光が発光している時間内のみ受光素子20bでモニタすることで、受光素子20aは不要となる。
【0048】
レーザ素子12a~12c、ダイクロイックプリズム14a、14b、ミラー16、受光素子20a、20bは、筐体10の側面42、44の間に位置して筐体10に組み付けられている。
【0049】
図4(a)及び
図4(b)は、レーザモジュールの分解斜視図である。
図4(a)では、筐体10及び固定部18を示し、
図4(b)では、レーザ素子12a~12c、ダイクロイックプリズム14a、14b、ミラー16、及び受光素子20a、20bを示している。
図4(a)及び
図4(b)のように、レーザ素子12a~12cの発光点28によって形成される平面を平面30とする。なお、平面30が筐体10やダイクロイックプリズム14a、14bなどと交差する箇所も一点鎖線で示している。筐体10は平面30に対して対称形状をしている。筐体10の前面40、背面46、上面48、及び下面50は平面30に交差している。すなわち、筐体10の前面40、背面46、上面48、及び下面50の中心線は平面30に一致する。筐体10の側面42、44は、平面30の両側に位置していて、例えば平面30に平行な面となっている。筐体10の側面42、44に設けられた固定部18は平面30に対して対称に設けられている。ダイクロイックプリズム14a、14b、ミラー16、及び受光素子20a、20bは、平面30に対して対称形状となって筐体10に組み付けられている。
【0050】
すなわち、固定部18が設けられた側面42、44は、レーザ光の出射方向に平行であって、レーザ素子12a~12cの発光点28は、側面42、44から等距離で、側面42、44との間の中心に位置している。このため、
図2のように1対のつる72それぞれの取り付け部78にレーザモジュール100aが取り付けられた場合、一方のつる72にレーザモジュール100aの一方の側面42が取り付けられ、他方のつる72に他のレーザモジュール100aの他方の側面44が取り付けられるようになり、それぞれのレーザモジュール100aのレーザ素子12a~12cの発光点28は、それぞれの取り付け部78から等距離となっている。
【0051】
このように、筐体10はレーザ素子12a~12cの発光点28によって形成される平面30に対して対称形状をしている。固定部18は筐体10の側面42、44に平面30に対して対称に設けられている。これにより、レーザモジュール100aは、筐体10の側面42、44の両方において固定部18によって同様の光学レイアウトで外部部品に固定されることができる。したがって、レーザモジュール100aは、出射されるレーザ光の方向が投影ミラー66の方向のままで、メガネ型の画像投影装置500の1対のつる72のいずれにも固定することができる。また、レーザモジュール100aを筐体10の側面42、44のどちらの固定部18で外部部品に固定したとしても、筐体10は平面30に対して対称形状であり且つ固定部18は平面30に対して対称に設けられているため、同様の放熱性を得ることができる。なお、筐体10の対称形状及び固定部18の対称配置は、放熱性の点から完全に対称形状及び完全に対称配置である場合が好ましいが、製造誤差程度の放熱性に影響をほとんど与えない程度に形状や配置が異なる場合でもよい。
【0052】
レーザ素子12a~12cの発光点28によって形成される平面30は、側面42の固定部18までの距離と側面44の固定部18までの距離とが等しい。これにより、1対のつる72のうちの一方のつるの取り付け部78に筐体10の一方の側面42の固定部18を固定したときと、他方のつるの取り付け部78に筐体10の他方の側面44の固定部18を固定したときとで、レーザ素子12a~12cの発光点28の取り付け部78からの距離が同一になる。したがって、この構成により、レーザモジュール100aを、画像投影装置500の1対のつる72の双方に取り付けたときに、熱的にも、光学的にも左右対称に取り付けることができる。これにより、同一のレーザモジュール100aを、熱的、光学的な性能に与える影響を最小限にして、右目用、左目用どちらにも取り付けることができるようになる。また、画像投影装置500を、片目用の画像投影装置として、片方のつる72だけにレーザモジュール100aを取り付けてもよく、左右いずれのつる72に取り付ける場合においても、同様の固定方法と同様の放熱性を有し、同様の光学レイアウトを可能とすることで、製造コストを低減したレーザモジュール及びこのレーザモジュールを備えた画像投影装置を提供することが可能となる。
【0053】
また、固定部18が筐体10の側面42、44のうちの固定部18が設けられた領域以外の領域よりも高くなっていることで、レーザモジュール100aを固定部18によって外部部品に固定した場合、側面42、44のうちの固定部18のみが外部部品に接触することになる。このため、レーザモジュール100aを筐体10の側面42、44のどちらの固定部18で外部部品に固定したとしても、固定による光学的な歪みを最小限に抑えながら、同様の放熱性が得られ易くなる。
【0054】
また、
図4(b)のように、ダイクロイックプリズム14a、14b、ミラー16、及び受光素子20a、20bが平面30に対して対称形状となって筐体10に組み付けられていることで、レーザモジュール100aを筐体10の側面42、44のどちらの固定部18で外部部品に固定した場合でも同様の放熱性がより得られ易くなる。また、
図3(a)から
図3(c)のように、レーザ素子12a~12c、ダイクロイックプリズム14a、14b、ミラー16、及び受光素子20a、20bが筐体10の側面42、44の間に位置して筐体10に組み付けられていることで、ダイクロイックプリズム14a、14b、ミラー16、及び受光素子20a、20bを平面30に対して対称形状となるように容易に組み付けることができる。
【0055】
図5は、筐体へのレーザ素子の組み付けを説明する斜視図である。レーザ素子12a~12cを筐体10に組み付ける前に、筐体10にはダイクロイックプリズム14a、14b及びミラー16が組み付けられている。レーザ素子12a~12cは、筐体10に対してX軸方向(筐体10の幅方向)、Y軸方向(筐体10の高さ方向)、及びZ軸方向(筐体10の奥行き方向)に平行移動が可能、且つ、X軸、Y軸、及びZ軸に対して回転移動が可能となっている。レーザ素子12a~12cは、筐体10に組み付ける際、レーザ素子12a~12cで発振したレーザ光が、ダイクロイックプリズム14bの後段に配置されるレンズによって、レーザモジュール100aの外部で同じ位置に集光されるように、レーザ素子12a~12cをX軸、Y軸、及びZ軸に平行移動及び回転移動させて光軸及び焦点距離の調整を行い、図示しない接着剤で固定される。受光素子20a、20bは、筐体10の下面50に予め設計位置に固定されていても良いし、レーザ素子12a~12cを調整及び固定した後に、最適な位置に調整及び固定してもよい。受光素子20a、20bを調整及び固定する場合、受光素子20a、20bは、筐体10の下面50に対してX軸方向(筐体10の幅方向)、及びZ軸方向(筐体10の奥行き方向)に平行移動が可能となっており、受光素子はより最適な位置に調整することが可能となる。レーザ素子12a~12cで発振されるレーザ光の光強度は、受光素子20a、20bからの電流信号を受信した制御部70によって適切な光強度に制御される。
【0056】
図6は、レーザモジュールから出射されるレーザ光の焦点を示す図である。
図6のように、レーザ素子12a~12cをX軸、Y軸、及びZ軸に平行移動及び回転移動させて光軸合わせを行うことで、レーザ素子12a~12cで発振されたレーザ光は、ダイクロイックプリズム14a、14bによって同軸上に合成され、ダイクロイックプリズム14bの後段に配置されるレンズ60によってレーザモジュール100aの外部で同じ位置に集光されて1つの焦点32を形成する。焦点32は、
図2において、走査ミラー64の後段且つ投影ミラー66の前段でレーザ光76が集光する点に相当する。
【0057】
レーザ素子12a~12cから出射されたレーザ光の焦点位置が互いにずれると色再現性が低下して良質な画像を投影することが難しくなる。しかしながら、実施例2では、レーザ素子12a~12cから出射されてダイクロイックプリズム14a、14bを経由したレーザ光はレンズ60によって筐体10の外部で同じ位置に集光されるため、色再現性の低下が抑制されて良質な画像を投影することができる。
【0058】
実施例2によれば、画像投影装置500はレーザ素子12a~12cが発振するレーザ光を外部に出射する第1方向のレーザ光と受光素子20a、20bに入射する第2方向のレーザ光とに分光するダイクロイックプリズム14a、14bを有するレーザモジュール100aを備える。ダイクロイックプリズム14a、14bは、外部に出射する第1方向のレーザ光の光量が受光素子20a、20bに入射する第2方向のレーザ光の光量よりも小さくなる分光特性を有する。このため、実施例1と同じように、光強度の小さいレーザ光の出射と受光素子の検出感度の低下抑制とを実現できる。
【0059】
図6のように、レーザ素子12a、12bが発振し、ダイクロイックプリズム14aによって外部に出射する第1方向に分光されたレーザ光は、ダイクロイックプリズム14aによって同軸上に合成される。これにより、レーザ素子12a、12bが発振したレーザ光をレンズ60によって同じ位置に集光することを容易にでき、色再現性の低下が抑制された良質な画像を投影することができる。
【0060】
受光素子は、
図8(a)及び
図8(c)のように複数のレーザ素子それぞれが発振するレーザ光の波長帯それぞれに感度を有する複数の受光領域を備えていてもよいし、
図8(d)のように複数のレーザ素子それぞれが発振するレーザ光の全ての波長帯に感度を有する1つの受光領域を備えていてもよい。
図8(a)及び
図8(c)の場合、複数のレーザ素子それぞれに対応した複数の受光素子を搭載する場合に比べ、モジュールの小型化と部品点数削減によるモジュールのコストダウンを図ることができる。また、複数のレーザ素子の光量を同時にフィードバック制御することも可能である。一方、
図8(d)のように1つの受光領域で複数のレーザ素子それぞれが発振するレーザ光を受光する場合、複数のレーザ素子の光量を同時にフィードバック制御することは出来ないが、受光素子のモニタ回路の簡略化と部品点数の削減によるモジュールのコストダウンが期待できる。
【0061】
図6のように、レーザ素子12a~12cが発振するレーザ光はレンズを介さずにダイクロイックプリズム14a、14bに入射する。このように、レーザ素子12a~12cとダイクロイックプリズム14a、14bとの間にレンズが設けられていないことで、レーザモジュール100aを小型化することができる。すなわち、
図6のように、レンズはレンズ60の1つのみであるため、複数のレンズを使用したときの収差や色再現性の低下が抑制できると同時に、レーザモジュール100aの小型化を実現している。また、レーザ素子12a~12cとダイクロイックプリズム14a、14bとの間にレンズが設けられていない場合、受光素子20a、20bが受光するレーザ光は発散光である。レーザモジュール100aの小型化により受光素子20a、20bの受光面積が小さくなると、受光素子20a、20bが発散光のレーザ光を受光する場合には、受光するレーザ光の光量がより小さくなる。したがって、受光素子20a、20bが受光するレーザ光が発散光である場合には、上述したような、受光素子20a、20b側に分光されるレーザ光の光量を大きくするダイクロイックプリズム14a、14bを用いることが好ましい。
【0062】
図7は、変形例に係るレーザモジュールの分解斜視図である。
図7のように、変形例のレーザモジュール100bでは、筐体10の側面42、44に、レーザ素子12a~12cから出射されるレーザ光の反射を抑制するフィルム34が設けられている。フィルム34は、例えば誘電体材料を蒸着又はスパッタリングで積層したAR(Anti-Reflection)シートや、連続微細多孔質の樹脂を利用した光吸収シートなどで形成されている。その他の構成は、レーザモジュール100aと同じであるため説明を省略する。
【0063】
フィルム34が筐体10の側面42、44に設けられていてもよい。これにより、レーザ素子12a~12cから出射されるレーザ光の迷光を抑制することができる。また、外部からの光の入射も抑制できる。筐体10の側面42、44のいずれの固定部18で外部部品に固定した場合でも、放熱性や迷光の抑制が同程度となるように、フィルム34は筐体10の側面42、44に平面30に対して対称形状をして設けられていることが好ましい。
【0064】
なお、実施例2の画像投影装置500では、両方の眼に画像を投影する場合を例に示したが、片方の眼のみに画像を投影する場合でもよい。この場合、片方のつる72だけにレーザモジュール100aなどが取り付けられてもよい。また、レーザモジュール100aは、赤色、緑色、青色のレーザ光を発振するレーザ素子12a~12cを備える場合を例に示したが、その他の波長帯のレーザ光を発振する3つ以上の複数のレーザ素子を備える場合でもよい。
【0065】
実施例2では、レーザモジュールを備えたレーザ投射装置として網膜投射型の画像投影装置の場合を例に示したが、網膜投射型以外の画像投影装置や、画像投影装置以外の例えば弱い光によって励起される蛍光染料を検出するセンシング装置など、その他のレーザ投射装置の場合でもよい。
【0066】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0067】
10 筐体
11、13、15 レーザ光
12~12c レーザ素子
14~14b ダイクロイックプリズム
16 ミラー
18 固定部
20~20b 受光素子
21 制御部
22 空間
24、26 孔
28 発光点
30 平面
32 焦点
34 フィルム
40 前面
42、44 側面
46 背面
48 上面
50 下面
60 レンズ
62 ミラー
64 走査ミラー
66 投影ミラー
68 画像入力部
70 制御部
72 メガネのつる
74 メガネのレンズ
76 レーザ光
78 取り付け部
80 眼球
82 網膜
84 瞳孔
86 水晶体
88 角膜
90~95 受光領域
100~100b レーザモジュール
500 画像投影装置