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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】自動車用コーティング剤
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/04 20060101AFI20220322BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20220322BHJP
   C09D 183/08 20060101ALI20220322BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20220322BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20220322BHJP
   C11D 3/43 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
C09D183/04
C09D5/02
C09D183/08
C11D3/37
C09K3/18 104
C11D3/43
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017242602
(22)【出願日】2017-12-19
(65)【公開番号】P2019108477
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】396015828
【氏名又は名称】アルファ化研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(72)【発明者】
【氏名】左右木 正巳
(72)【発明者】
【氏名】金子 大作
(72)【発明者】
【氏名】荘田 真幸
(72)【発明者】
【氏名】川原 浩一
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-287899(JP,A)
【文献】特開平10-165344(JP,A)
【文献】特開平11-092694(JP,A)
【文献】特開平11-116988(JP,A)
【文献】特開平11-050048(JP,A)
【文献】特開平10-273624(JP,A)
【文献】特開平10-273697(JP,A)
【文献】特開平11-080668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
C09K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンオイル及び/又は変性シリコーンオイルと、
疎水性有機溶剤と、
界面活性剤と
を含む水中油型エマルジョンであって、
シリコーンオイル及び/又は変性シリコーンオイルの含有量が0.1~3.5重量%であり、
疎水性有機溶剤の含有量が1重量%以上であり、
シリコーンオイル及び/又は変性シリコーンオイルの含有量と、疎水性有機溶剤の含有量の合計が2重量%以上であり、
不揮発性成分の含有量が4重量%以下であり、
車体表面に吹き付けて拭き取ることによって、車体に付着した汚れを除去し、かつ、車体表面にコーティング膜を形成するものであることを特徴とする自動車用コーティング剤。
【請求項2】
前記変性シリコーンオイルは、アミノ変性シリコーンオイルを含み、
該アミノ変性シリコーンオイルの少なくとも一部は、中和されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用コーティング剤。
【請求項3】
前記疎水性有機溶剤は、常圧での沸点が120~300℃であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動車用コーティング剤。
【請求項4】
粒子を含有しないことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の自動車用コーティング剤。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の自動車用コーティング剤を車体表面に吹き付けてクロスで拭き取ることによって、車体に付着した汚れを除去し、かつ、車体表面にコーティング膜を形成することを特徴とする自動車のコーティング方法。
【請求項6】
前記クロスは、マイクロファイバークロスであることを特徴とする請求項5に記載の自動車のコーティング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体表面にコーティング膜を形成する自動車用コーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
車体表面に吹き付けて拭き取ることにより、車体表面にコーティング膜を形成する自動車用コーティング剤が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-294892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の自動車用コーティング剤は、使用前に洗車をしておかないと、車体表面に付着した汚れの上にコーティング膜が形成されてしまい、外観が大きく損なわれる。また、拭き取る際に、車体表面に付着した砂塵によって車体表面に擦り傷が生じてしまう。このため、上記特許文献1の自動車用コーティング剤は、使用前に洗車が必須の工程となっている。
【0005】
本発明は係る現状に鑑みて為されたものであり、車体表面にコーティング膜を容易かつ適切に形成できる自動車用コーティング剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者は、上記課題を解決するために、鋭意検討を行った末に、シリコーンオイル等と疎水性有機溶剤とを一定量含む水性エマルションは、車体表面に擦り傷を設けることなく汚れを拭き取ることができ、なおかつ、拭き取った後の車体表面に適切なコーティング膜を形成できることを発見し、さらなる試行錯誤を重ねた結果、本発明を完成するに到った。
【0007】
本発明は、シリコーンオイル及び/又は変性シリコーンオイルと、疎水性有機溶剤と、界面活性剤とを含む水中油型エマルジョンであって、シリコーンオイル及び/又は変性シリコーンオイルの含有量が0.1~3.5重量%であり、疎水性有機溶剤の含有量が1重量%以上であり、シリコーンオイル及び/又は変性シリコーンオイルの含有量と、疎水性有機溶剤の含有量の合計が2重量%以上であり、不揮発性成分の含有量が4重量%以下であることを特徴とする自動車用コーティング剤である。
【0008】
発明者の研究によれば、本発明の自動車用コーティング剤を、洗車していない車体表面に吹き付けて、柔らかく、繊維の細かいマイクロファイバークロスで拭き取ると、車体表面に付着した汚れを、擦り傷を設けることなく容易に除去することができ、なおかつ、汚れを除去した後の車体表面にコーティング膜を形成できる。ここで形成されるコーティング膜は、シリコーンオイル及び/又は変性シリコーンオイル(以下、「シリコーンオイル類」と総称する。)によって構成されるものであり、十分な光沢と撥水性を有するものとなる。このように、本発明の自動車用コーティング剤は、未洗車の車体表面に吹き付けて拭き取るだけで、車体表面を適切にコーティングできるため、従来構成に比べて少ない手間で車体表面をコーティングできる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明の自動車用コーティング剤によれば、車体表面にコーティング膜を容易かつ適切に形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上述のように、本発明の自動車用コーティング剤は、シリコーンオイル及び/又は変性シリコーンオイルと、疎水性有機溶剤と、界面活性剤とを含む水中油型エマルジョンである。
【0011】
本発明に係るシリコーンオイルは、特に限定はされないが、好ましいものとして、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等などが挙げられる。とりわけ、本発明に係るシリコーンオイルとしては、撥水性に特に優れるジメチルシリコーンオイルとメチルフェニルシリコーンオイルが好適である。
【0012】
本発明に係る変性シリコーンオイルは、特に限定はされないが、好ましいものとして、アルキル変性シリコーンオイル、アルキル・アラルキル変性シリコーンオイル、アルキル・ポリエーテル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エルテル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイルなどが挙げられる。とりわけ、本発明に係る変性シリコーンオイルとしては、撥水性及び耐久性に優れるアミノ変性シリコーンオイルが好適であり、特に、中和されたアミノ変性シリコーンオイルが最適である。中和されたアミノ変性シリコーンオイルは、上に列挙した他のシリコーンオイル類に比べて、水に対して分散させ易く、安定で均質なエマルジョンを得ることができ、また、カチオンであるため車体表面に吸着され易く、コーティング膜の耐久性を向上させることができるためである。
【0013】
また、本発明に係るシリコーンオイル類は、粘度(25℃)が、50cSt以上であることが好ましい。粘度(25℃)が50cSt以上のものを用いた場合には、50cSt未満のものを用いた場合よりも、艶や撥水性、耐久性、潤滑性に優れた自動車用コーティング剤が得られるためである。
【0014】
本発明に係る疎水性有機溶剤は、特に限定はされないが、好ましいものとして、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、テトラリン、デカリン等の芳香族系溶剤オクタン、イソオクタン、デカン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、ウンデカン、テトラデカン、トリデカン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン等の飽和炭化水素系溶剤、コールタールナフサ、石油ナフサ、ミネラルスピリット、テレピン油、灯油等をはじめとした芳香族系、飽和炭化水素系、ナフテン系、イソパラフィン系、ノルマルパラフィン系の混合溶剤、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート(ブチルカルビトール)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類、モノプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、モノプロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、モノエチレングリコールモノヘキシルエーテル、モノエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリリコールエーテル類、酢酸イソペンチル、酢酸ブチル、酢酸ノルマルペンチル、乳酸ブチル等のエステル系溶剤類、オクチルアルコール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール類などが挙げられる。ここで、本発明の自動車用コーティング剤は、常圧での疎水性有機溶剤の沸点が120~300℃であることが望ましい。なお、疎水性有機溶剤が石油系有機溶剤の場合には、沸点は乾点を意味する。発明者の研究によれば、沸点120℃未満の場合は、疎水性有機溶剤が短時間で揮発してしまうため、吹き付けた後に手早く拭き取らないと、車体表面の汚れを除去し難く、また、均一なコーティング膜を形成し難くなる。一方で、沸点300℃以上の疎水性有機溶剤は、拭き残しの疎水性有機溶剤が揮発するまでの時間が極めて長くなるため、コーティング膜の乾燥に時間を要し、作業性が悪くなる。
【0015】
本発明に係る界面活性剤は、特に限定はされないが、好ましいものとして、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、その他のスルフォン酸塩、脂肪酸塩等のアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等のノニオン系界面活性剤、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミン オキサイド等の両性イオン系界面活性剤などが挙げられる。
【0016】
本発明の自動車用コーティング剤は、上記以外にも、水溶性溶剤、親水性溶剤、増粘剤、研磨性無機紛体微粒子、防腐剤、香料などを含むことができる。
【0017】
本発明の自動車用コーティング剤によれば、車体表面の汚れを、マイクロファイバークロスによって軽い力で容易に拭き取ることが可能となる。これは、低粘度の疎水性有機溶剤に、表面張力の低いシリコーンオイル類が溶解して乳化することで、疎水性有機溶剤のみのエマルジョンや、シリコーンオイル類のみのエマルジョンに比べて、親油性の塗膜が車体表面に素早く拡がって、車体表面に付着した汚れを速やかに溶かしたり、浮き上がらせたりするためと考えられる。このように、本発明では、拭取りの際に車体表面を強く擦りつける必要がなく、また、車体表面と砂塵の界面に素早く拡がったシリコーンオイル類が両者の界面で潤滑性を発揮することにより、車体表面に擦り傷が付きにくいと考えられる。
【0018】
発明者の研究によれば、自動車用コーティング剤におけるシリコーンオイル及び/又は変性シリコーンオイルの含有量が0.1重量%未満である場合には、拭取り後の車体表面に、目立つ擦り傷が視認される。これは、車体表面と砂塵の間のシリコーンオイル類の潤滑性が不足するためと考えられる。なお、シリコーンオイル類は、含有量が3.5重量%を超えると、拭き取り跡が目立ち、外観が悪くなるため、含有量は3.5重量%以下とすることが望ましい。また、シリコーンオイル類の含有量が3.5重量%以下であっても、不揮発成分が4重量%より大きい場合は、拭き取り難さが増して拭き取り跡が目立ち、外観が悪くなるため、不揮発成分の含有量は4重量%以下とすることが望ましい。
【0019】
発明者の研究によれば、疎水性有機溶剤の含有量が1重量%未満であると、マイクロファイバークロスを用いても、拭取りに要する力が比較的大きくなり、拭取り後の車体表面に、目立つ擦り傷が視認される。また、拭取り後の車体表面に汚れが残留し易くなる。これは、疎水性有機溶剤の含有量低下により、汚れの溶解力が低下したことによるものと考えられる。なお、本発明にあって、疎水性有機溶剤の含有量の上限は特に限定されず、水中油型エマルジョンを形成可能な範囲まで疎水性有機溶剤を含有させることが可能である。なお、疎水性有機溶剤を多量に含有すると環境負荷が大きくなるため、比較的少量にすることが望ましい。
【0020】
また、発明者の研究によれば、シリコーンオイル類の含有量が0.1重量%以上であり、かつ、疎水性有機溶剤の含有量が1重量%以上である場合でも、疎水性有機溶剤の含有量の合計が2重量%未満である場合には、マイクロファイバークロスを用いても、拭取りに要する力が比較的大きくなり、拭取り後の車体表面に擦り傷が視認されることがある。これは、シリコーンオイル類と疎水性有機溶剤とが、相乗作用により、汚れの拭き取り易さが実現されているためと考えられる。
【0021】
本発明の自動車用コーティング剤は、ディスパーサー、ディゾルバー等による高速撹拌によっての混合や、ホモジナイザー等の乳化装置による混合によって製造することができる。
【0022】
上述のように、本発明の自動車用コーティング剤は、車体表面に吹き付けて拭き取ることにより、車体に付着した汚れを除去するとともに、車体表面にコーティング膜を形成するものである。自動車用コーティング剤の吹き付け方法は特に限定されず、既存の噴霧器を用いて車体表面に吹き付ければよい。なお、一回に吹き付ける液量・面積は、短時間で拭取り可能な範囲とすることが望ましい。また、自動車用コーティング剤を拭き取る布は、マイクロファイバークロスが望ましい。マイクロファイバークロスよりも繊維が硬く、粗い布であるほど、拭取りの際に強い力を要するため、車体表面に擦り傷が付き易くなるためである。なお、本発明の自動車用コーティング剤は、自動車の車体表面(外装塗装)に使用するものであるが、内層塗装やガラスにも用いることができ、また、自動車以外に用いることも可能である。
【0023】
以下に、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例の構成に限定されるものでなく、本発明の趣旨を変更しない限りで適宜変更可能である。
【0024】
<実施例1>
KF-96-1000(信越化学製ジメチルシリコーンオイル粘度1000cTs)10重量部、エクソールD-100(エクソンモービル製ナフテン系溶剤)90重量部を混合し、液Aとする。エマルゲン109P(花王製)3重量部、レオドールSP-L10(花王製)3重量部を水100重量部で溶解し、液Bとする。液Aをホモニナイザーで撹拌しながら溶Bを30分かけて徐々に加え乳化させたのち、水800重量部を希釈液として加えて、自動車用コーティング剤を得た。
【0025】
<実施例2~14>
液A、液B、及び希釈液を表1の配合に替える他は、実施例1と同様にして実施例2~14の自動車用コーティング剤を得た。
【0026】
【表1】

TSF-433:メチルフェニルシリコーンオイル モメンティブ製
KF-96-1000:ジメチルシリコーンオイル 信越化学製 粘度1000cTs
TSF-4421:アルキル変性シリコーンオイル モメンティブ製
L-656:アミノ変性シリコーンオイル 旭化成ワッカーシリコーン製
BY-16-849:アミノ変性シリコーンオイル 東芝シリコーン製
エクソールD-100:ナフテン系混合溶剤 エクソンモービル製 乾点280℃
T-SOL-3040:脂肪族系混合溶剤 東燃ゼネラル石油製 乾点187℃
T-SOL-150:芳香族系混合溶剤 東燃ゼネラル石油製 乾点209℃
トルオール:沸点110℃
IPソルベント2835:イソパラフィン系混合溶剤 乾点353℃
エマール20C:ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム 花王製
エマルゲン109P:ポリオキシエチレンラウリルエーテル 花王製
レオドールSP-L10:ソルビタンラウレート 花王製
コータミン86P:ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド 花王製
【0027】
<比較例1~6>
液A、液B、及び希釈液を表2の配合に替える他は、実施例1と同様にして比較例1~6の自動車用コーティング剤を得た。
【0028】
【表2】
【0029】
<試験片>
30×30cmの鋼板に自動車補修用塗料を塗布したものを試験片として、各種の評価試験を行った。結果を表3,4に示す。
【0030】
【表3】
【0031】
【表4】
【0032】
<膜均一性評価>
実施例1~14及び比較例1~6の夫々を、試験片に吹き付け、マイクロファイバーで拭き取った。なお、試験片への吹き付けは、ポリエチレン製ハンドスプレー容器に充填して、トリガーを2回引くことによって行った(以下の全ての評価でも同様。)。そして、拭取後の各試験片について、拭き上げ跡の凹凸の有無を目視判定することにより、コーティング膜の均一性を以下の4段階で評価した。
◎:拭き上げ跡が認められない。
○:目立たない程度の拭き上げ跡が残る。
△:拭き上げ跡が少し目立つ。
×:拭き上げ跡がはっきりと残る。

表3,4に示すように、実施例1~14及び比較例1,3,5を用いた各試験片では、目立つ拭き上げ跡の凹凸は認められなかったが、比較例2,4,6を用いた各試験片では、目立つ拭き上げ跡が確認された。この結果は、車体に吹き付けて、マイクロファイバーで拭き取った時に、実施例1~14及び比較例1,3,5では、車体表面に均一なコーティング膜を形成することができ、比較例2,4,6では、均一なコーティング膜の形成が困難であり、外観が損なわれることを示唆している。なお、沸点の低い疎水性有機溶剤を用いた実施例13は、車体に吹き付けた後、短時間で疎水性有機溶剤が揮発してしまうため、拭取り作業を短時間で行わなくてはならなかった。また、沸点(乾点)の高い疎水性有機溶剤を用いた実施例14は、拭き残しの疎水性有機溶剤を揮発させてコーティング膜を乾燥させるのに時間がかかり、作業時間が長くなった。このように、実施例13,14は、他の実施例1~12と比べると作業性が劣っていた。
【0033】
<拭取時防傷性評価>
硅粉#200(ソブエクレー製)を水で20%に希釈し、試験片に吹き付け、乾燥させた。その後、乾燥後の試験片に対して、実施例1~14及び比較例1~6の夫々を、スプレーを用いて吹き付け、マイクロファイバーで拭き取った。そして、夫々の試験片を目視観察することにより、実施例1~14及び比較例1~6の夫々について、拭取時防傷性(拭取時の傷の発生し難さ)を、以下の4段階で評価した。
◎:傷の発生は認められなかった。
○:目立たない程度の傷だけが認められた。
△:目立つ傷が認められた。
×:目立つ傷が多数認められた。

表3,4に示すように、実施例1~14及び比較例2,4,6を用いた各試験片では、目立つ傷は認められなかったが、比較例1,3,5を用いた各試験片では、目立つ傷が確認された。この結果は、未洗車の車体に吹き付けて、マイクロファイバーで拭き取った時に、実施例1~14及び比較例2,4,6では、車体表面に目立つ傷を付けることなくコーティング膜を形成することができ、比較例1,3,5では、目立つ傷を付けずにコーティング膜を形成するのが困難であることを示唆している。
【0034】
<汚染除去性評価>
ブロンアスファルト10-20(昭和シェル石油)を評価用の汚染物質として、トルオールに溶解させた5%溶液を試験片に塗布、乾燥させた。その後、乾燥後の試験片に対して、実施例1~14及び比較例1~6の夫々を吹き付けて、マイクロファイバーで汚染物質の拭取りを試みた。そして、実施例1~14及び比較例1~6の夫々について、汚染除去性を以下の4段階で評価した。
◎:短時間で拭き取り可能であった。
○:時間を要したが拭き取り可能であった。
△:時間を要しても、拭き取れないものがあった
×:時間を要しても、抜き取れない箇所が多数存在した。

表3,4に示すように、比較例5以外を用いた各試験片では、汚染物質の全てを除去できたが、比較例5を用いた各試験片では、汚染物質の全てを除去することができなかった。この結果は、未洗車の車体に吹き付けて、マイクロファイバーで拭き取った時に、比較例5以外では、車体表面の汚れを取り除きつつ、車体表面にコーティング膜を形成することができることを示唆している。
【0035】
<撥水性評価>
実施例1~14及び比較例1~6の夫々を試験片に吹き付けて、マイクロファイバーで拭き取った。そして、夫々の試験片について、接触角計(東京精器、MT-100)を用いて接触角を測定することにより、撥水性を評価した。
表3,4に示すように、全ての試験片の接触角は100°以上であった。この結果は、実施例1~14及び比較例1~6のいずれを用いた場合でも、車体表面に十分な撥水性を有するコーティング膜を形成可能であることを示唆している。
【0036】
<膜耐久性評価>
上記撥水性評価で用いた各試験片を屋外に3ヶ月間放置し、水で洗浄して汚れを除去した後に、接触角を再測定することにより、実施例1~14及び比較例1~6の夫々について、コーティング膜の耐久性を評価した。
表3,4に示すように、全ての試験片の接触角は85°以上であった。この結果は、実施例1~14及び比較例1~6のいずれを用いた場合でも、車体表面に十分な撥水性を有するコーティング膜を、長期間に亘って維持できることを示唆している。また、アミノ変性シリコーンオイル及び有機酸を含有する実施例4~14は、アミノ変性シリコーン及び有機酸を含有していない実施例1~3に比べて、接触角の減少度合いが少なくなっており、中和されたアミノ変性シリコーンによって、コーティング膜の耐久性を向上できることが示唆された。