(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】ブリッジ、弦楽器
(51)【国際特許分類】
G10H 3/18 20060101AFI20220322BHJP
G10D 1/08 20060101ALI20220322BHJP
G10D 3/04 20200101ALI20220322BHJP
【FI】
G10H3/18 D
G10D1/08 100
G10D3/04
(21)【出願番号】P 2018011687
(22)【出願日】2018-01-26
【審査請求日】2020-11-20
(32)【優先日】2017-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000130329
【氏名又は名称】株式会社コルグ
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ダグラス マクドナルド
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム エリック カークランド
【審査官】大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-298791(JP,A)
【文献】特開昭53-083728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 3/18
G10D 1/08
G10D 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属からなる下側金属部分と、
サドルを受入れるスロットを有する木製トップ構成部分を主体とするアーチドトップ型の上側部分と、を含み、当該上側部分は、前記下側
金属部分の上面から当該上側部分の上面まで貫通するスロットを有し、
前記スロット内にあり、前記下側
金属部分上に取り付けられた
ピエゾ素子と、
前記
ピエゾ素子と係合し、弦楽器の少なくとも1つの弦を受入れるのために、前記上側部分の上面を通ってスロットから突き出る、前記スロット内にあるサドルとを含
み、
前記ピエゾ素子は、前記サドルの下に、前記サドルにかかる下向きの弦の圧力によって下側金属部分に対して均一に押されるように設置される、
ブリッジ。
【請求項2】
請求項
1に記載のブリッジであって、
前記金属がアルミニウムである、
ブリッジ。
【請求項3】
請求項1から請求項
2の何れかに記載のブリッジを含む弦楽器であって、
前記サドル上に当該弦楽器の1つ以上の弦が掛け渡してあり、前記ピックアップから当該弦楽器の外部への電気出力がある、
弦楽器。
【請求項4】
請求項
3に記載の弦楽器であって、
アーチドトップギターである、
弦楽器。
【請求項5】
サドルを受入れるスロットを有する木製トップ構成部分を主体とするアーチドトップ型の上側部分と、
機械加工、または鋳造された下側金属部分とを含み、
前記上側部分は、前記下側金属部分に取り付けられ、前記上側部分の前記スロットは、前記下側金属部分の上部平坦面を露出させるために前記木製トップ構成部分を完全に通過し、
一塊または分割されたサドルと、
前記サドルの下に、前記サドルにかかる下向きの弦の圧力によって下側金属部分に対して均一に押されるように設置されるピエゾ素子とを含み、
前記サドルを前記ピエゾ素子に押し付け、次に前記下側金属部分に押し付け、前記サドルと前記下側金属部分の間に前記ピエゾ素子を挟み込んだ状態である、
ブリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弦楽器用のピックアップを備えたブリッジ、ブリッジを備えた弦楽器に関係する。
【背景技術】
【0002】
弦楽器は、通常、張られた弦の振動によって特定のピッチの音を発生させる。たとえばギターで使用される1つの一般的な構成では、それぞれの弦がテールピース上の、弦のボールエンド部を固定するための穴または溝、弦を支えるブリッジ、そしてネック上の、フレットが配置された指板に沿ってヘッドの各弦の張力を調整する器具へ張られている。弦をフレットの1つに当てることによって、演奏者はブリッジと選択されたフレットとの間の弦の長さを決め、演奏されるべき音程を選択する。
【0003】
アコースティックギターでは、少なくとも部分的に中空であるギター本体の構造によってアシストされる弦は、その振動によって空気中で音を発生する。その音をマイクロフォンで検出して増幅することができる。エレクトリックギターでは、弦の振動は変換器によって電気信号に変換され、電気信号は増幅され、通常はスピーカによって音に変換される。最も一般的な変換器は電磁ピックアップであり、磁場内にて一般的には少なくとも部分的に金属である弦の振動がコイルに電流を誘導する。生成される電流の量は、生成される音に相関する。エレクトリックギターとアコースティックギターは、非常に異なったサウンドである。これは特定のサウンドが特定の音楽スタイルや特定のミュージシャンに適しているため重要になる。
【0004】
「ハイブリッド」ギターは、弦の振動がブリッジ内の圧電センサによって電気信号に変換されるギターである。圧電センサは、出力を生成する唯一の方法であってもよいし、電磁ピックアップ搭載のエレクトリックギターに加えて使用してもよいし、エレクトリックアコースティックギターに取り付けてもよい。ハイブリッドギターは、アコースティックギターと従来のエレクトリックギターの中間の音を出す傾向がある。
【0005】
ギターのボディの構造もまた音に影響を与える。フラットトップギターとアーチドトップギターは二つの良く知られたギターの構造である。フラットトップギターとアーチドトップギターの両方を構築する技術に精通している人に知られている伝統的な構造技術の機能として、アーチ構造はブリッジの上を通る弦によって加えられる下向きの力に耐えるのに十分であるので、アーチドトップギターの構造は一般的には2つの支持具のみで支持されているアーチ状また彫刻されたトッププレートを用いている。この構造は、強い初期の「アタック」を作り出す。アタックは、弦が爪弾かれたときの最初の過渡応答であり、弦の振動が急速に減衰する。このような特性は一般的なアーチドトップギターに短い持続時間(「サステイン」と呼ばれる弦が鳴っている時間)を持たせる。フラットトップギターの構造はギターのブリッジにおいて弦の引っ張りに耐えられるように、通常は相当に補強された平らなトッププレートを用いる。この構造は、一般的にはアーチドトップギターよりも初期のアタックが目立たない楽器となるが、かなりのサステインを持つ。よって、フラットトップギターの構造では、爪弾かれた音がアーチドトップ構造を持つものより弦の振動が長い時間持続する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多くの現代のギタリストは、アーチドトップギターの物理的および表面的な特徴に惹き付けられている。しかし、フラットトップギターに関連したサステインとフルレンジの周波数応答が不足しているため、ライブパフォーマンスやレコーディングには使用できていない。これらの問題は、既存のハイブリッドギターで混在している。典型的には、ハイブリッドギターのブリッジは、その上面にスロットを有する。ブリッジの上面は、弦が実際に配置される「サドル」である。ピエゾ素子(以下「ピックアップ」ともいう)は、スロットの底部、サドルの下に配置されている。しかしながら、その位置は、スロットの上面とサドルの下面間の一貫性のない接触をもたらし、ひいては弦からの振動の不均一な伝達をもたらす可能性がある。ギター愛好家には、音響的にも増幅して演奏したとき、フラットトップ・ギターのサウンドとレスポンスを持つアーチドトップギターの物理的特性を備えた楽器を持ちたいという要望がある。
【0007】
アーチドトップギターをフラットトップギターと同様に反応させようと試された一つの策は、全金属製のブリッジトップ部分を使用することだった。これ(全金属製のブリッジトップ部分の使用)は、ギターのトップ(トッププレート、天板、表面板)に接触し、指板の面に対して弦の高さを調整する機構構造を提供することが多い金属製のベース部分(ブリッジベース)を作る従来の方法と同等である。一般にはアーチドトップのブリッジの上部に使用される金属は、亜鉛、アルミニウムまたは真鍮である。全金属製のブリッジトップ部分を使用してもアーチドトップギターのレスポンスはフラットトップギターのレスポンスに似てくるような変化はない。結果として得られるギターは、一般的なフラット・アコースティック・ギターよりも音色的に温かみが少なく(低音に欠ける)なる傾向があるが、弾いた音のサステインは、典型的なフラット・アコースティック・ギターに見られるような長いサステインになるような明らかな改善は見られない。
【0008】
一般的なもう一つの改善策は、木製のブリッジトップ部分に長尺のピエゾピックアップをサドルの全長の下に設置し、フィルターとイコライザーを用いて電子的に周波数応答を変更する。しかしながら、これは満足できるものではなく、特にツーピース調整可能なブリッジを使用すると、ブリッジトップ部分は、通常、両端の調節可能な支柱によってベース部分に取り付けられ、その間は支えられていない。
【0009】
2つの支柱の間に吊り下げられた一般的な木製のブリッジトップ部分は、特にアコースティックスタイルのサドルを保持するためにスロットを開けたときにはたわみやすい。
これは2つの観点で問題を引き起こす。ブリッジトップ部分は、スロットが弦圧の下で曲がったりたわんだりして、ピエゾ素子は全ての弦を横切る均等な接触がなくなり、増幅されたときの各弦の異なる増幅出力および各弦の音の相違を生じる。たわみやすいブリッジは、また特定の振動周波数を吸収し、サステインを低減する可能性がある。
【0010】
サドルとスロットの底部との間に挟まれたピエゾピックアップ構成を増幅目的のために使用する場合、フラットトップ構造のアコースティックギターに似たサウンド特性をアーチドトップギターの音に与えるためにアーチドトップギターの音に音色的に寄与するハイブリッドギター・ブリッジ、および、各弦の出力レベルがより安定した(増幅されたときの各弦の増幅出力および音に一貫性がある)ハイブリッドギター・ブリッジが依然として必要となる。
本発明は、全金属製のブリッジトップ部分を使用した場合に比べ音色的に温かみがあり(低音における欠損が少ない)、木製のブリッジトップ部分に比べたわみが少ないブリッジ、そのブリッジを備えた弦楽器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様によれば、ブリッジは、第一の材料の下側部分と、下側部分の上面に固定された、第一の材料より密度が低く剛性の低い第二の材料の上側部分とを含み、当該上側部分は、下側部分の上面から当該上側部分の上面まで貫通するスロットを有し、スロット内にあり、下側部分上に取り付けられたピックアップと、ピックアップと係合し、弦楽器の少なくとも1つの弦を受入れるのために、上側部分の上面を通ってスロットから突き出る、スロット内にあるサドルとを含む。
上記の課題を解決するために、本発明の他の態様によれば、ブリッジは、サドルを受入れるスロットを有する木製トップ構成部分を主体とするアーチドトップ型の上側部分と、機械加工、または鋳造された下側金属部分とを含み、上側部分は、下側金属部分に取り付けられ、上側部分のスロットは、下側金属部分の上部平坦面を露出させるために木製トップ構成部分を完全に通過し、一塊または分割されたサドルと、サドルの下に、サドルにかかる下向きの弦の圧力によって下側金属部分に対して均一に押されるように設置されるピエゾ素子とを含み、サドルをピエゾ素子に押し付け、次に下側金属部分に押し付け、サドルと下側金属部分の間にピエゾ素子を挟み込んだ状態である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、全金属製のブリッジトップ部分を使用した場合に比べ音色的に温かみがあり(低音における欠損が少ない)、木製のブリッジトップ部分に比べたわみが少ないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4】
図4Aは第一実施形態に係るブリッジトップの正面図、
図4Bは第一実施形態に係るブリッジトップの平面図、
図4Cは
図4Aの線A-Aに沿ったブリッジトップを通る断面図。
【
図5】
図5Aは第一実施形態に係るブリッジのベースの正面図,
図5Bは第一実施形態に係るブリッジのベースの平面図,
図5Cは第一実施形態に係るブリッジのベースの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、同じ機能を持つ構成部や同じ処理を行うステップには同一の符号を記し、重複説明を省略する。
<第一実施形態のポイント>
【0015】
本実施形態に係るブリッジは、例えば、プラスチック、骨または他の同様の材料から作製されるサドルに対応するスロット状にされた木製の上側部分を含むアーチドトップスタイルのブリッジトップを含む。
言い換えると、ブリッジトップは、サドルを受入れるスロットを有する木製トップ構成部分を主体とするアーチドトップ型の上側部分を含む。ブリッジトップの木製の上側部分は、ネジ、ピンまたは他の接続構成部分で、機械加工または鋳造された下部の金属部分(以下、下側部分ともいう)に重ね合わせるかまたは貼り付けられる。ブリッジトップの上側部分は、下部の金属部分の上部の平坦な表面を露出させるために上側部分を完全に通過するスロットを含む。ピエゾ素子は、一塊のまたは分割されたサドル構成部分の下に設置される。サドルにかかる下向きの弦の圧力によってピエゾ素子が下部の金属部分に対して均一に押圧され、すべての弦に対して均一な応答を保証する。
【0016】
弦の圧力は、サドル構成部分をピエゾ素子に押し付け、次にブリッジトップの下部の金属部分に押し付ける。このような構造により、サドル構成部分と下部の金属部分の間にピエゾ素子を挟み込んだ状態となる。また、このような構造は、標準的な全木製アーチドトップギターブリッジ構造よりも効率的に弦のエネルギーの伝達を向上させる。本実施形態のブリッジの構造は、標準的な全木製アーチドトップブリッジ構造または一塊の金属ブリッジトップ部分の使用と比較した場合、爪弾いた音のより長い持続性とより広範な周波数応答をもたらす。その結果、ハイブリッドブリッジ構造を利用したアーチドトップギターは、一般的なフラットトップアコースティックギターにより似たような音色とサステイン特性を持ちながら、サドルと下部の金属部分との間にサンドイッチされたピエゾ素子との一貫性のある接触を保証し、弦から弦への均一な出力と応答をもたらす。
【0017】
本実施形態の下部の金属部分(アルミニウムブリッジ部分)は、剛性を付加し、ピエゾピックアップからの応答を均一にし、より多くの弦の自然な音色とサステインを可能にする。本実施形態の上側部分(木製頂部)は、木材が軽く多孔性の材料であることから、音の温かみを維持し、金属部分が与える可能性のある耳障りな音色を滑らかにするのに役立つ。
【0018】
本実施形態の独特の要素の組み合わせは、アーチドトップギターが一般的なフラットトップギターの音色およびサステイン特性をより正確にエミュレートする一方、ピエゾピックアップシステムが通常のアーチドトップギターブリッジで使用される場合に、一般的に見られる矛盾を解決することを可能にする。
【0019】
例えば、弦楽器用のブリッジは、第一の材料の下側部分と、下側部分の上面に固定された、第一の材料より密度が低く剛性が低い第二の材料の上側部分と、ピエゾ素子と、サドルとを含む。上側部分が、それを貫通するスロットを有する。例えば、スロットは、下側部分の上面から上側部分の上面まで貫通する。ピエゾ素子は、スロット内にあり下側部分上に取り付けられる。スロット内にあるサドルは、ピエゾ素子と有効に係合し、弦楽器の少なくとも1つの弦を受入れるのために、上側部分の上面を通ってスロットから突き出る。
【0020】
第一の材料は、金属、好ましくはアルミニウムであってもよく、第二の材料は木材であってもよい。
【0021】
スロット、サドル、およびピエゾ素子がブリッジの長手方向に延び、楽器の複数の弦に対応するため(楽器の複数の弦を受け入れるため)に、ブリッジは、細長いものとすることができ、弦は共通方向に延び、ブリッジの長手方向は弦の共通方向を横断する。
【0022】
ブリッジ下側部分は、ブリッジの2つの対向する端部で調整可能な支柱によってブリッジベース(
図5A,
図5B,
図5C参照)に取り付けられてもよい。
【0023】
例えば、弦楽器は言及したようなブリッジを備える。弦楽器の1つ以上の弦がサドル上に引き伸ばされ、ピエゾ素子からの電気出力が楽器の外部に供給される。
<第一実施形態>
【0024】
一般的には
図1で示されるギター10は、本体12と、フレット16を有するネック14と、ヘッドストック18で示される。本体12は、一般的には、刻まれた、または、形成されたアーチ状の天板20、平らなまたはアーチ状の背板(図示せず)、曲面22から成り、ネック14を固定する。天板20は、典型的には、2つのブレース(図示せず)で支えられている。一般的には図で示されたブリッジ40を介して弦30によって天板20に加えられる下方への圧力は、部分的にはブレースによって支持され、部分的には天板のアーチ構造によって支持される。本体12の構造は、従来のものであってもよく、簡潔にするため、これ以上の説明は省く。
【0025】
各弦30は、本体12の尾端34近くのテールピース32の固定部に取り付けられ、ブリッジ40を越えてネック14をヘッドストック18に向かって伸び、調律機の回転可能なペグ36に取り付けられる。それぞれの弦30の張力は、通常の方法においてペグ36の上または下に巻いた弦を個々のペグ36をまわすことよって、張力を強くしたり弱くしたりして、調整することができる。
【0026】
図2および
図3に示すように、ブリッジ40は、ブリッジトップ42およびブリッジベース44を有する。
図5A,
図5B,
図5Cに示すようにブリッジベース44は、各端部に1つずつ、ギター本体12に載置される2つの脚部46を有し、ブリッジベース44はまた、それがギター本体12と接触しないように凹状の中間部分48を含む。ブリッジベース44は平らな上面50を有し、
図3に示すように2つの支柱52はブリッジベース44の穴に螺合されている。2つのサムホイール54が支柱52に螺合され、ブリッジトップ42がサムホイール54上部にあるので、サムホイール54を回転させると、ブリッジトップ42は、ブリッジベース44から、弦30の張力に対向して持ち上げられたり、ブリッジベース44に向かって下降したりする。この調整により、ユーザは指板に対して弦30の高さを変えて、演奏者が弦30をフレット16に押しつけて音を鳴らす好みの圧力の量(「アクション」と呼ぶ)に設定することができる。
【0027】
ブリッジベース44の上面50の一端付近の穴56は、ブリッジトップ42からの電気出力線58をギターの本体12の中に通すためにある。
【0028】
ここで、
図4A~
図4Cに示すように、ブリッジトップ42は、少なくとも2つの部品、この実施形態ではアルミニウムである金属の下側部分またはサドルサポート60、および木材の上側部分またはキャップ62を備える。木材は、従来のアーチドトップギターブリッジの構造で使用されているローズウッドまたはエボニーであってもよいが、他の硬材でもかまわない。上側部分62は、その長さの大部分にわたって延びる細長い穴(以下、スロットともいう)64を有する。スロット64は、下側部分60から上側部分62の上面まで貫通している。ピエゾ素子66は、スロット64の底部にアルミニウムの下側部分60と接触して配置されている。ピエゾ素子66は、ハイブリッドギターのピエゾブリッジ用のピックアップのための商業的に入手可能なものであってもよく、簡潔にするためここでは説明を省略する。スロット64は、ピエゾ素子66をぴったり受けるように寸法決めされている。ピエゾ素子66は、ピエゾ素子の頂部を押す弦30の張力によってスロット内に保持され、接着剤または他の留め具は必要に応じて追加することができるが、通常は必要ではない。
【0029】
スロット64の一端には、ピエゾ素子66からの電気出力線58が貫通するように、下側部分60を貫通して形成された穴68がある。穴68は、できればブリッジベース44の穴56と位置合わせされているとよい。電気出力線58は、ギター本体12を介して外部のアンプに送られてもよいし、ギター本体12の中または上に取り付けられたプリアンプまたはコントロールに接続されてもよい。このような回路はすべて従来のものであるため、これ以上の説明は割愛する。
【0030】
サドル70は、スロット64内にあり、ピエゾ素子66の上に取り付けられている。サドル70は、弦30の張力によってその上に作用する下向きの圧力によって定位置に保持される。
図2に示すように、サドル70は、個々の弦30の溝72を有することができる。サドル70の端部74は、サドルをスロット64内に適切に機械的に配置できるように、
図3で示すように成形されている。これは、「コンペンセイテッドサドル」と呼ばれるものの共通の特徴であり、「コンペンセイテッドサドル」は、各弦ごとに、オクターブ調整(12フレットを押さえた時のピッチが、開放弦でのピッチに対してちょうど1オクターブ上の音”1200cent上の音”となるようにする)のため、ブリッジの弦の支え位置を指板またはテイルピース側にずらして調整することによって、弦の直径が異なることに起因するピッチのずれを解消する。
【0031】
アルミニウムからなる下側部分60によって提供される剛性は、ピエゾ素子66を支持し、それにより信頼性を向上させ、弦30からギター本体12へ、およびギター本体12からピエゾ素子66への振動の経路を提供する。より柔らかく、より軽い、木製の上側部分62の多くの吸収性材料は、より高い周波数を優先的に吸収することによって、暖かな音色にし、過激な倍音を滑らかにする。
【0032】
6弦ギターの例が図面に示されているが、当業者であれば、本出願の教示が他の弦楽器にどのように適用され得るかを理解するであろう。つまり、本実施形態のポイントを、6弦ギター(例えば、アーチドトップギター)以外の弦楽器に適用してもよい。
【0033】
ブリッジの下側部分60の材料としてアルミニウムが挙げられ、ブリッジの上側部分62の材料として硬質の木材が挙げられる。なぜなら、それらは十分よく理解されている機械的特性を有し、機械加工が容易であり、経済的であるからである。しかしながら、ブリッジの下側部分60については、鋼または黄銅のような他の金属を使用することができる。ブリッジの上側部分62については、他の適度に剛性のある材料および適度な吸収性材料が適切である可能性がある。
【0034】
本発明の原理の理解を促進する目的で、図面に示された好ましい実施形態が参照されており、これらの実施形態を説明するために特定の言語が使用されている。しかしながら、本発明の範囲の限定は、この特定の言語によって意図されておらず、本発明は、当業者に通常起こるであろうすべての実施形態を包含するものと解釈されるべきである。つまり、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。