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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】眼疾患を処置するオリゴヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20220322BHJP
   A61K 31/712 20060101ALI20220322BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20220322BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220322BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220322BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220322BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/712
A61K31/7125
A61K48/00
A61P27/02
A61K35/76
C12N15/86 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019506546
(86)(22)【出願日】2017-04-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2017059830
(87)【国際公開番号】W WO2017186739
(87)【国際公開日】2017-11-02
【審査請求日】2020-04-22
(31)【優先権主張番号】1607141.7
(32)【優先日】2016-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517299054
【氏名又は名称】プロキューアール セラピューティクス ツー ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ファン ディエペン,ヘスター カタリナ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ヒー ラム
(72)【発明者】
【氏名】トュルネン,ヤンネ ユハ
【審査官】宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/005514(WO,A1)
【文献】VACHE C. et al.,Human Mutation,33(2011),p.104-108
【文献】LIQUORI A. et al.,Human Mutation,37(2015),p.184-193
【文献】SLIJKERMAN R. et al.,Exon-skipping as a therapeutic approach for treatment of retina degeneration in patients carrying the intronic USH2A c.7595-2144A>G mutation.,ARVO Ammual Meeting Abstract,Vol.57 (2016 Sep),<https://iovs.arvojournals.org/article.aspx?articleid=2560406>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/113
A61K 31/7105-31/7125
A61K 48/00
A61P 27/02
A61K 35/76
C12N 15/86
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトUSH2AプレmRNAからの偽エクソン40(PE40)のスキッピングを誘導することができるアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)であって、配列番号46または47の少なくとも18、19、20、21、22、23、または24個の連続するヌクレオチドに相補的な配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)。
【請求項2】
ヒトUSH2AプレmRNAからの偽エクソン40(PE40)のスキッピングを誘導することができるアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)であって、以下の配列群のいずれかから選択される配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON):
(i)配列番号3、5、7、19、24、25、26、34、35、36;および
(ii)配列番号21、27、28、29。
【請求項3】
USH2AmRNAにおけるPE40の出現が、USH2A遺伝子におけるc.7595-2144A>G変異に起因するものである、請求項1または2に記載のAON。
【請求項4】
2´-O-メチル、2´-O-エチル、または2´-O-プロピルなどの少なくとも1つの2´-O-アルキル修飾を含むオリゴリボヌクレオチド(RNAオリゴヌクレオチド)である、請求項1から3までのいずれか一項に記載のAON。
【請求項5】
前記AONにおけるすべてのヌクレオチドが2´-O-メチル修飾されている、請求項4に記載のAON。
【請求項6】
少なくとも1つのホスホロチオアート結合を有する、請求項1から5までのいずれか一項に記載のAON。
【請求項7】
すべての連続するヌクレオチドが、ホスホロチオアート結合によって相互連結している、請求項6に記載のAON。
【請求項8】
前記AONの発現に寄与する条件下に置かれた場合に、請求項1から3までのいずれか一項に記載のAONを発現するウイルスベクター。
【請求項9】
請求項1から7までのいずれか一項に記載のAON、または請求項8に記載のウイルスベクターおよび薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物であって、硝子体内投与のためのものである医薬組成物。
【請求項10】
硝子体内投与のためのものであり、1つの眼あたり0.05mg~5mg、好ましくは0.1~1mgの総AON、例えば1つの眼あたり約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0mgの総AONの範囲の量で投薬される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
医薬としての使用のための、請求項1から7までのいずれか一項に記載のAON、請求項8に記載のベクター、または請求項9もしくは10に記載の組成物。
【請求項12】
アッシャー症候群タイプIIなどのUSH2A関連疾患、または前記USH2AプレmRNAからのPE40のスキップを必要とする状態の処置、防止または遅延のための、請求項1から7までのいずれか一項に記載のAON、請求項8に記載のベクター、または請求項9もしくは10に記載の組成物。
【請求項13】
USH2A関連疾患、または前記USH2AプレmRNAからのPE40のスキップを必要とする状態の処置、防止または遅延のための医薬の調製における、請求項1から7までのいずれか一項に記載のAON、請求項8に記載のベクター、または請求項9もしくは10に記載の組成物の使用。
【請求項14】
細胞においてヒトUSH2AプレmRNAからPE40をスキップする、エクスビボまたはインビトロでの方法であって、前記細胞に、請求項1から7までのいずれか一項に記載のAON、請求項8に記載のベクター、または請求項9もしくは10に記載の組成物を投与すること;および、前記AONが前記ヒトUSH2AプレmRNAからのPE40のスキッピングを誘導し、引き起こし、または刺激することを可能にすることを含む方法。
【請求項15】
USH2A関連疾患、またはUSH2AプレmRNAからのPE40のスキップを必要とする状態の、それを患っている個体における処置のための方法に使用するための医薬組成物であって、
請求項1から7までのいずれか一項に記載のAON、請求項8に記載のベクター、または請求項9もしくは10に記載の組成物を含んでおり、
前記方法が、前記個体の細胞に、前記AON、前記ベクター、または前記組成物を投与すること、および、前記AONが前記ヒトUSH2AプレmRNAからのPE40のスキッピングを誘導し、引き起こし、または刺激することを可能にすることを含む、医薬組成物。
【請求項16】
前記USH2A関連疾患、または前記USH2AプレmRNAからのPE40のスキップを必要とする前記状態が、アッシャー症候群タイプIIである、請求項13に記載の使用
【請求項17】
前記USH2A関連疾患、または前記USH2AプレmRNAからのPE40のスキップを必要とする前記状態が、アッシャー症候群タイプIIである、請求項15に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学および免疫学の分野に関する。特に、本発明は、アッシャー症候群タイプIIおよび/またはUSH2A関連非症候性網膜変性の処置、防止および/または遅延のための新規なアンチセンスオリゴヌクレオチドに関する。
【背景技術】
【0002】
アッシャー症候群(USH)および非症候性網膜色素変性症(NSRP)は、網膜の変性疾患である。USHは、臨床的および遺伝的に不均一であり、ヒトにおける圧倒的に最も一般的なタイプの遺伝性盲聾である。USH患者における聴覚障害は、大部分が安定で先天的なものであり、補聴器または人工内耳によって部分的に補償することができる。NSRPはUSHよりも一般的であり、4,000人の個体あたり1人に生じる。USHおよびNSRPにおける光受容体細胞の変性は進行性であり、しばしば、30代および40代の間に完全な失明をもたらし、それによって治療的介入のための時間が残される。USH2A遺伝子における変異は、両方の障害における最も頻繁な原因である。変異の範囲は、72個すべてのUSH2Aエクソンおよびこれらに隣接するイントロン配列全体にわたって広がり、ナンセンスおよびミスセンス変異、欠失、重複、大きな再構成、およびスプライシングバリアントを含む。圧倒的に最も頻繁な変異エクソンはエクソン13であり、これは2つの創始者変異を含む(アッシャー症候群タイプII(USH2)患者におけるc.2299delG(p.E767SfsX21)およびNSRP患者におけるc.2276G>T(p.C759F))。エクソン50については、15個の病原性変異が報告されているが、それらのうち少なくとも8個は、明らかにタンパク質切断型である。USH2Aのイントロン40における最初の深部イントロン変異(c.7595-2144A>G)は、Vacheらによって報告された(2012. Hum Mutat 33:104-8)。この変異は、変異USH2A mRNAにおける152bpの異常なエクソンの包含を生じさせる隠れた高品質なスプライスドナー部位をイントロン40内に作り出し、翻訳の未成熟な終結をもたらす(国際公開第2016/005514号パンフレットの図1AおよびBを参照)。
【0003】
USHおよび他の網膜ジストロフィーは、長らく、不治の障害であると考えられてきた。しかし、遺伝子増強療法を使用するいくつかの第I/II相臨床試験は、RPE65およびMYO7A遺伝子における変異を有するLCA/RP/USH患者の選択された群において、有望な結果をもたらした。コード配列のサイズ(15,606bp)ならびにUSH2A遺伝子およびmRNAの選択的スプライシングは、それぞれ、遺伝子増強療法の妨げとなるが、それは、多くの利用可能なベクター(例えばアデノ随伴(AAV)およびレンチウイルスベクター)の運搬サイズが現在のところ限定的なためである。
【0004】
アンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)ベースの療法の広い臨床的可能性にもかかわらず、これは脊椎動物の眼においては頻繁には使用されていない。AONは小さな(16~25ヌクレオチド)ポリヌクレオチド分子であり、スプライシングに干渉することができるが、それはこれらの配列が、標的プレmRNA分子の配列に相補的だからである。AONと結合すると、プレmRNAの標的となる領域は、もはやスプライシング因子にとって利用可能ではなく、これは、AONの標的となるエクソンのスキッピングを生じさせる。治療的には、この方法論は2通りに使用することができる:a)隠れたスプライス部位が変異によって活性化される遺伝子の、正常なスプライシングをリダイレクトすること、およびb)mRNAのリーディングフレームが完全なままであり、(部分的に)機能的なタンパク質が作られるように、(タンパク質切断型)変異を運搬するエクソンをスキップすること。USH2A遺伝子については、72個のエクソンのうち28個が、転写産物の全体的なリーディングフレームを撹乱することなく、潜在的にスキップされ得る。両方のAONベースの方法が、重度の遺伝的障害を有する患者において成功裏に適用されている。Liquoriら(2016. Hum Mutat 37:184-193)は、USH2A遺伝子のmRNAにおいて、イントロン50におけるc.9959.4159A>G変異によって引き起こされる155bpの偽エクソン50(PE50)の包含を、AONが防ぐことができたことを示した。
【0005】
ヒトUSH2A遺伝子のエクソン40および41の間のイントロンに存在するc.7595-2144A>G変異によって引き起こされるUSHおよび/またはNSRPの防止、処置または遅延のための、便利な治療的戦略を提供することが本発明の目的である。この変異によって引き起こされ、偽エクソン40:PE40の包含をもたらすUSH2AプレmRNAの異常なスプライシングを、AONが阻害できることが、以前示唆され(Vache et al. 2012)、その後に実証された(国際公開第2016/005514号パンフレット)。注目すべきことに、より良好に機能し、さらなる有益な特性を有するさらに改善された選択肢の必要性が存在する。本発明の目的は、そのような選択肢を提供することである。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ヒトUSH2AプレmRNAからの偽エクソン40(PE40)のスキッピングを誘導することができるアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)に関し、ここで偽エクソンの包含は、USH2A遺伝子におけるc.7595-2144A>Gに起因し、ここで前記AONは、以下の配列群のいずれかから選択される配列を含む:(i)配列番号6、4、8、23、30、31、32、37;(ii)配列番号3、5、7、19、24、25、26、34、35、36;および(iii)配列番号21、27、28、29。本発明はまた、別の実施形態において、ヒトUSH2AプレmRNAからのPE40のスキッピングを誘導することができるAONに関し、ここで前記AONは、配列番号45、46または47の少なくとも18、19、20、21、22、23、または24個の連続するヌクレオチドに相補的な配列を含む。好ましい実施形態において、本発明のAONは、18~143ヌクレオチド、好ましくは18~40ヌクレオチド、より好ましくは18~30ヌクレオチド、さらにより好ましくは18~24ヌクレオチドの長さを有し、最も好ましくは、配列番号6、3、4、5、7、8、19、21、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、34、35、36、および37からなる群から選択される配列からなり、好ましくは配列番号6、3、4、5、7、8、26、34、35、および37から選択され、より好ましくは配列番号6、3、4、5、7、8、26、および35から選択される。別の好ましい実施形態において、本発明に従うAONは、2’-O-メチル修飾リボース(RNA)、2’-O-エチル修飾リボース、2’-O-プロピル修飾リボース、および/またはハロゲン化誘導体などのこれらの修飾の置換誘導体などの、2’-O-アルキルホスホロチオアートアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。本発明のAON内の1つまたは複数のヌクレオチドは、2’-O-メトキシエチル修飾によって修飾されてよい。本発明はさらに、ここで特許請求された少なくとも2種のAONを含む1セットのAONに関する。別の実施形態において、本発明はまた、AONの発現に寄与する条件下に置かれた場合に、本発明に従うAONを発現するウイルスベクターに関する。さらに別の実施形態において、本発明は、本発明に従うAON、または本発明に従う1セットのAON、または本発明に従うウイルスベクター、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物に関する。本発明はさらに、USH2AプレmRNAのスプライシングの調節を必要とする、アッシャー症候群タイプIIなどのUSH2A関連疾患または状態の処置における使用のための、本発明に従うAON、セット、ベクターまたは組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、7種の代替的アンチセンスオリゴヌクレオチドの初期スクリーニングの逆転写酵素結果を示し、これは、PE40エクソンスキッピング効率について、本技術分野からの2種の既知のアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON1およびAON2:それぞれR1およびR2)および無関係な対照オリゴヌクレオチド(ctrl)との比較において、HEK293細胞におけるレポーター構築物を使用して代替的アンチセンスオリゴヌクレオチドを比較したものであり、USH2a-PE40-3、-5および-7の投与後に、シグナルの明瞭な増加を示している。下のパネルは、異なるAONの、PE40配列に関する概略位置を示す。
図2図2は、5’から3’までのPE40配列(太字および下線、2つの部分に分かれる)および本明細書で試験された異なるAONのための結合部位を示す。試験された各AONの配列番号はカッコ内に示し、名称は表1に示す。PE40配列の下流の最初のヌクレオチドはグアノシン(G)であり、これはc.7595-2144A>G変異を表す。AON1(1)およびAON2(2)についての位置は、PE40配列の直下に示す。斜体の配列は、PE40の上流および下流配列である。実施例において概説され、ここで特許請求された目的の3つの領域は、それぞれ、USH2a-PE40-3(配列番号19、太字)、USH2a-PE40-5(配列番号21、太字)およびUSH2a-PE40-7(配列番号23、太字)を取り囲む。
図3図3は、図1および2に示されたUSH2a-PE40-3、-5および-7に基づいた1セットのオリゴヌクレオチドのPE40スキップスクリーニングの逆転写酵素結果を示す。明らかに、AONであるUSH2a-PE40-8および-11(USH2a-PE40-3に基づく)ならびにUSH2a-PE40-17(USH2a-PE40-7に基づく)は、さらに増加した強度を示したが、このことは、本技術分野からの既知のオリゴヌクレオチドに対するさらなる改善を示唆している。
図4図4は、さらに1段階進め、USH2a-PE40-8、-11、および-17に基づいた1セットのオリゴヌクレオチドのPE40スキップスクリーニングの逆転写酵素結果を示す。ショートは、本来のものより短いものを意味する。5mCは、5-メチル-シトシンを意味する(表1も参照)。DAPは、2,6-ジアミノプリンを意味する。
図5図5は、実施例1において概説されているとおり、8種の異なるオリゴヌクレオチドによって処置されたUSH2患者の線維芽細胞における、野生型産物(各AONについて右側のバー)と比較したPE40を発現する液滴の数(各AONについて左側のバー)を表す棒グラフを示し、この数は、標準としての、かつ当業者によって頻繁に使用されるようなものとしてのGUSB遺伝子(ハウスキーピング遺伝子)からのベータ-グルクロニダーゼ発現について補正されている。
図6図6は、ヒトPBMCにおける示されたUSH2a-PE40 AONの免疫原性および免疫毒性評価の結果を示す。A.本明細書に開示されたオリゴヌクレオチド、または陽性対照であるLPS(100ng/ml)およびR848(1μM)によるヒトPBMCの24時間刺激後における培養上清中のサイトカイン濃度の変化倍率および有意水準を、生理食塩水処置されたヒトPBMCと比較して描写するヒートマップ。各マスは、測定された各サイトカインについての処置条件あたりの変化倍率を示す。B.本発明の4種の異なるUSH2a-PE40アンチセンスオリゴヌクレオチド、または陽性対照に対する24時間の曝露後、生理食塩水処置されたPBMCと比較した、レゾルフィン蛍光の変化倍率として表された、生きているPBMCの相対数。生細胞評価は、製造者のプロトコールを使用して、CellTiter-Blue(登録商標)キット(Promega)を使用して実施した。個別の生物学的反復すべてについて、変化倍率は、対応する三連の生理食塩水対照の幾何平均に対して、測定されたRFUを正規化することによって算出した。結果は、三連の変化倍率の平均±SEMとして、個別のドナーあたりで示され、その対応する生理食塩水対照の平均(点線)に対して正規化されている。多重補正(生理食塩水と比較した)についてのダネットの検定による反復測定一元配置分散分析を実施した。
図7図7は、USH2a-PE40-24による処置後のヘテロ接合性USH2患者から得た線維芽細胞から生成した眼杯中のUSH2AプレmRNAにおけるPE40スキッピングの結果を示す。左の4つのレーンは、健康なドナー由来の線維芽細胞から生成された眼杯における結果を示し、それに続く3つのレーンは、USH2患者の線維芽細胞からの眼杯による結果を示す。対照オリゴヌクレオチドは、USH2AプレmRNAに相補的でない無関係なオリゴヌクレオチドである。右側の陰性対照は、核酸物質を含まない。対照レーン5は2つの優勢なバンドを示し、上側のバンドはPE40配列を含むmRNAを表し、下側の太いバンドはPE40配列を欠くmRNAを表す。USH2a-PE40-24による処置は、上側のバンドが検出できなかったので、プレmRNAからのPE40の完全なスキッピングを生じさせる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の目的のために、用語「異常な偽エクソンの包含」「異常な偽エクソン40の包含」または「異常な152bpヌクレオチドの偽エクソンの包含」は同義であると考えられ、USH2A遺伝子の偽エクソン40(PE40)のmRNA内への包含、または、その一部もしくはその配列の90、91、92、93、94、95、96、97、98、99もしくは100%を構成する配列のUSH2A mRNA内への包含を意味すると考えられる。
【0009】
用語「エクソンスキッピング」は、本明細書において、エクソンスキッピングが起きなかったなら成熟mRNAにおいて存在するはずの特定のエクソンを含まない成熟mRNAの産生を、細胞内において誘導するか、生じさせるか、または増加させることと定義される。例えば、スプライシングの酵素的プロセスを可能にするために必要な(隠れた)スプライスドナーもしくは(隠れた)スプライスアクセプター配列などの配列に干渉することができる分子によって、または成熟mRNAに包含されるエクソンとして一続きのヌクレオチドを認識するために必要なエクソン包含シグナルに干渉することができる分子によって、前記成熟mRNAのプレmRNAを発現する細胞を提供することによってエクソンスキッピングは達成され;そのような分子は、本明細書において、エクソンスキッピング分子と呼ばれる。本発明において、エクソンスキッピングは、PE40をスキップすることに関する。
【0010】
用語「プレmRNA」は、プロセシングされていないかまたは部分的にプロセシングされた前駆体mRNAを意味し、これは例えば核において、転写によって細胞のDNA鋳型から合成される。
【0011】
用語「エクソン保持」は、スプライシング反応によるプレmRNAのプロセシングの間に、特定のエクソンのエクソンスキッピングが起こらなかった場合における、その特定のエクソンを含む成熟mRNAの細胞内における産生に関する。本発明に関して、野生型である場合にヒトUSH2A遺伝子からの成熟mRNAには通常存在しないPE40は、本明細書において詳細に議論されるc.7595-2144A>G変異の存在下において生じるように、特定の変異によってPE40がプレmRNAからスプライシングされない場合、ヒトUSH2A遺伝子からの成熟mRNAにおいて保持される。本発明の目的は、ヒトUSH2A mRNAにおけるPE40のエクソン保持を防止、抑制、または減少させ、それによってアッシャー症候群タイプIIを防止、遅延および/または処置することである。
【0012】
用語「アンチセンスオリゴヌクレオチド」(AON)は、プレmRNA分子、異種核RNA(hnRNA)またはmRNA分子における標的ヌクレオチド配列に実質的に相補的なヌクレオチド配列を意味すると理解される。本発明のオリゴヌクレオチドの標的配列が、本明細書に提供される。アンチセンス配列の相補性の程度(または実質的相補性)は、好ましくは、アンチセンス配列を含む分子が、生理的条件下で、RNA分子における標的ヌクレオチド配列と安定なハイブリッドを形成することができるというようなものである。用語「アンチセンスオリゴヌクレオチド」、その略語「AON」および用語「オリゴヌクレオチド」は、本明細書において交換可能に使用され、アンチセンス配列を含むオリゴヌクレオチドを意味すると理解される。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは一本鎖であり、好ましくはそれ自身または同じ種類の別のAONのいずれとも自己アニーリングしない。
【0013】
本発明の文脈において使用される用語「実質的に相補的」は、アンチセンス配列におけるいくつかのミスマッチが、機能性、すなわちPE40のスキッピングの誘導がなお許容可能である限り、許されることを示す。
【0014】
用語「偽エクソンスキッピング」は、本明細書において、偽エクソンスキッピングが起きなかったなら成熟mRNAにおいて存在するはずの特定のイントロン領域または偽エクソンを含まない成熟mRNAの産生を、細胞内において誘導するか、刺激するか、引き起こすか、強化するか、生じさせるかまたは増加させることと定義される。例えば、スプライシングの酵素的プロセスを可能にするために必要な(隠れた)スプライスドナーもしくは(隠れた)スプライスアクセプター配列などの配列に干渉することができる分子によって、または成熟mRNAに包含される偽エクソンとして一続きのヌクレオチドを認識するために必要な偽エクソン包含シグナルに干渉することができる分子によって、前記成熟mRNAのプレmRNAを発現する細胞を提供することによって偽エクソンスキッピングは達成され;そのような分子は、本明細書において、偽エクソンスキッピング分子と呼ばれる。
【0015】
好ましくは、相補性は90%~100%である。一般的に、これは20ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドにおける1個もしくは2個のミスマッチ、または40ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドにおける1、2、3もしくは4個のミスマッチ、または60ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドにおける1、2、3、4、5もしくは6個のミスマッチ等を可能にする。
【0016】
一実施形態において、本明細書において定義されるエクソンスキッピングAONは、特定された配列と結合する、および/またはそれに相補的な化合物であり得る。特定のヌクレオチド配列と結合するAONをスクリーニングする方法は、例えば、国際公開第2002/024906号パンフレット、米国特許第6,875,736号明細書および国際公開第2016/005514号パンフレットに開示されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。好ましくは異常な152ヌクレオチドのUSH2A偽エクソン40(PE40)の文脈における特定された配列への結合は、当業者に既知の技術によって評価してよい。好ましい技術は、EP1619249に記載されているようなゲル移動度シフトアッセイである。好ましい実施形態において、(偽)エクソンスキッピングAONは、標識された配列に対する前記分子の結合がゲル移動度シフトアッセイにおいて検出可能となるのと同じくらい速く結合すると言われる。
【0017】
本発明のすべての実施形態において「(偽)エクソンスキッピング分子」はAONである。本発明の目的のために、AONの設計がここで特に問題となる。好ましい方法において、以下の態様の少なくとも1つが、前記エクソンスキッピング分子を設計し、改善するために考慮されなければならない:(1)AONは、好ましくはCpGまたは一続きのCpGモチーフを含まない;ならびに(2)AONは許容可能なRNA結合動態および/または熱力学的特性を有する。オリゴヌクレオチドにおけるCpGまたは一続きのCpGモチーフの存在は、通常、前記オリゴヌクレオチドの増加した免疫原性を伴う。免疫原性は、動物モデルにおいて、CD4+および/またはCD8+細胞および/または炎症性単核球浸潤の存在を評価することによって評価してよい。これは、本発明のオリゴヌクレオチドによって処置されている動物の、またはヒトの血液において、当業者に既知の標準的な免疫アッセイを使用して、中和抗体および/または前記オリゴヌクレオチドを認識する抗体の存在を検出することによって評価してもよい。炎症反応、I型様インターフェロン産生、IL-12産生および/または免疫原性の増加は、標準的な免疫アッセイを使用して、中和抗体または前記オリゴヌクレオチドを認識する抗体の存在または増加する量を検出することによって評価してよい。
【0018】
本発明は、許容可能なRNA結合動態および/または熱力学的特性を有するAONに関する。RNA結合動態および/または熱力学的特性は、オリゴヌクレオチドの融解温度(Tm;基礎Tmおよびnearest neighborモデルを使用して一本鎖RNAについてオリゴヌクレオチド特性計算機(www.unc.edu/-cail/biotool/oligo/index.html)によって計算される)、および/またはAON-標的エクソン複合体の自由エネルギー(RNA structure バージョン4.5を使用する)によって少なくとも部分的に決定される。Tmが高すぎる場合、オリゴヌクレオチドは、より特異性が低いと予測される。許容可能なTmおよび自由エネルギーは、オリゴヌクレオチドの配列に依存する。したがって、これらのパラメーターのそれぞれについて好ましい範囲を示すことは困難である。許容可能なTmは35~70℃の範囲であってよく、許容可能な自由エネルギーは15~45kcal/molの範囲であってよい。
【0019】
好ましい実施形態において、リアルタイム定量RT-PCR分析によって測定された異常な152ヌクレオチドのUSH2A偽エクソン40スキッピングの割合が、少なくとも30%、または少なくとも35%、または少なくとも40%、または少なくとも45%、または少なくとも50%、または少なくとも55%、または少なくとも60%、または少なくとも65%、または少なくとも70%、または少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または100%である場合、AONは、異常な152ヌクレオチドのUSH2A偽エクソン40(国際公開第2016/005514号パンフレットにおける配列番号5)のスキッピングを誘導すると言われる。エクソンスキッピングおよび/またはエクソン保持を決定するための好ましいアッセイは、本明細書における実施例において記載される。
【0020】
好ましくは、本発明に従うAONは、PE40(本明細書における配列番号9)のヌクレオチド配列に相補的なもしくは実質的に相補的な配列、またはその一部であって、その(実質的な)相補性部分が、本発明に従うオリゴヌクレオチドの長さの少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、もしくはさらにより好ましくは少なくとも95%、もしくはさらにより好ましくは98%、もしくはさらにより好ましくは少なくとも99%、もしくはさらにより好ましくは100%であるようなものを含む。好ましくは、本発明に従うAONは、以下に示す配列番号9の一部に相補的な配列を含むかまたはそれからなる:
偽エクソン40;PE40
5’-CTTCCTCTCCAGAATCACACAAGTTAAAGGACCCTTCTGCAACAAGAGCAGCG
AATCTACTCAGCCAGAGCAGGAAGCTAATAAAATGTATGCTGGCTTTTAAGGGGGA
AACAAATCATGAAATTGAAATTGAACACCTCTCCTTTCCCAAG-3’(配列番号9)
【0021】
一例として、AONは、配列番号9の一部および付加的な隣接配列、特にPE40の3’末端におけるスプライス部位に相補的な配列を含んでよい。より好ましい実施形態において、前記AONの前記相補性部分の長さは、少なくとも18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、115、120、125、130、135、140、141、142または143ヌクレオチドのものである。付加的な隣接配列は、結合を修飾するため、またはAONの熱力学的特性を修飾するため、より好ましくは標的RNA結合親和性を修飾するために使用してよい。当業者は、そのため、相補性の領域におけるすべての塩基が、対向鎖における塩基と対を形成することができることが絶対に必要というわけではないことを知っている。例えば、AONを設計する場合、例えば、相補鎖における塩基と塩基対を形成しない残基を組み込もうとしてよい。細胞内環境下において、一続きのヌクレオチドが相補性部分とハイブリダイズすることが十分に可能である場合、ミスマッチはある程度許容されてよい。この文脈において、「十分」とは、好ましくはEP1619249の実施例1において記載されたようなゲル移動度シフトアッセイを使用して、AONの結合が検出可能であることを意味する。
【0022】
任意に、前記AONは、患者の線維芽細胞または網膜細胞へのトランスフェクションによってさらに試験してよい。標的となるエクソンのスキッピングは、RT-PCR(例えばEP1619249に記載されたようなもの)によって評価してよい。相補性領域は、好ましくは、組み合わされた場合に、これらがプレmRNAにおけるエクソンに特異的であるように設計される。そのような特異性は、種々の長さの相補性領域によって作り出されてよく、それはこれが、この系における他の(プレ)mRNA分子における実際の配列に依存するからである。AONが、1つまたは複数の他のプレmRNA分子ともハイブリダイズし得るリスクは、AONのサイズを増加させることによって減少する。相補性の領域においてミスマッチを含むが、プレmRNAにおける標的となる領域にハイブリダイズおよび/または結合する能力を保持しているAONを、本発明において使用できることは明らかである。しかし、好ましくは、少なくとも相補性部分はそのようなミスマッチを含まない。これは相補性部分にミスマッチを欠いているAONは、典型的には、1つまたは複数の相補性領域においてそのようなミスマッチを有しているAONよりも高い効率および高い特異性を有するためである。この系のスプライシング機構に干渉するプロセスの効率を増加させることにおいて、より高いハイブリダイゼーション強度(すなわち、対向鎖との相互作用の数が増加している)が好ましいと考えられる。好ましくは、相補性は90%~100%である。
【0023】
本発明の偽エクソンスキッピングAONは、好ましくは単離された形態である。本発明に従う好ましい偽エクソンスキッピングAONは、18~143ヌクレオチド、より好ましくは18~60、より好ましくは18~40ヌクレオチド、より好ましくは18~30ヌクレオチド、より好ましくは18~24ヌクレオチド、最も好ましくは18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、20ヌクレオチド、21ヌクレオチド、22ヌクレオチド、23ヌクレオチド、または24ヌクレオチドの長さを有する。別の好ましい実施形態において、本発明のAONは、18~143ヌクレオチド、より好ましくは18~40ヌクレオチド、より好ましくは18~30ヌクレオチド、より好ましくは18~20ヌクレオチドからなるか、または好ましくは18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、115、120、125、130、135、140、141、142もしくは143ヌクレオチドからなる。
【0024】
本発明のエクソンスキッピングAONは、ヌクレアーゼ耐性を増加するように、および/または標的配列のためのAONの親和性を増加するように修飾された1つまたは複数の残基を含むことが好ましい。したがって、好ましい実施形態において、AON配列は少なくとも1個のヌクレオチドアナログまたは等価体を含み、ここでヌクレオチドアナログまたは等価体は、修飾塩基、および/または修飾骨格、および/または非天然ヌクレオシド間結合、またはこれらの修飾の組み合わせを有する残基と定義される。
【0025】
好ましい実施形態において、ヌクレオチドアナログまたは等価体は、修飾骨格を含む。そのような骨格の例は、モルホリノ骨格、カルバマート骨格、シロキサン骨格、スルフィド、スルホキシドおよびスルホン骨格、ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格、メチレンホルムアセチル骨格、リボアセチル骨格、アルケン含有骨格、スルファマート、スルホナートおよびスルホンアミド骨格、メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格、ならびにアミド骨格によってもたらされる。ホスホロジアミダートモルホリノオリゴマーは、アンチセンス剤として以前研究された修飾骨格オリゴヌクレオチドである。モルホリノオリゴヌクレオチドは、DNAのデオキシリボース糖が6員環によって置き換えられ、ホスホジエステル結合がホスホロジアミダート結合によって置き換えられている、非荷電骨格を有する。モルホリノオリゴヌクレオチドは、酵素分解に耐性であり、RNaseHを活性化することによるのではなく、翻訳を停止するかまたはプレmRNAスプライシングに干渉することによって、アンチセンス剤として機能するように見える。モルホリノオリゴヌクレオチドは、細胞膜を物理的に破壊する方法によって組織培養細胞へと成功裏に送達されており、これらの方法のいくつかを比較する1つの研究は、スクレープローディング法が最も効率的な送達方法であることを見出した;しかし、モルホリノ骨格は非荷電であることから、陽イオン脂質は、細胞内へのモルホリノオリゴヌクレオチド取り込みの効果的なメディエーターではない。最近の報告はモルホリノオリゴヌクレオチドによる三重鎖形成を実証し、そして、非イオン骨格のために、これらの研究は、モルホリノオリゴヌクレオチドがマグネシウムの非存在下において三重鎖形成できたことを示した。例えば、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、ヘテロ原子およびアルキルもしくはシクロアルキル混合ヌクレオシド間結合、または1つもしくは複数の短鎖ヘテロ原子もしくは複素環ヌクレオシド間結合によって形成される結合のように、骨格中の残基間の結合はリン原子を含まないことがさらに好ましい。好ましいヌクレオチドアナログまたは等価体は、修飾ポリアミド骨格を有するペプチド核酸(PNA)を含む。PNAベースの分子は、塩基対認識の点において、DNA分子の真の模倣体である。PNAの骨格は、ペプチド結合によって結合したN-(2-アミノエチル)-グリシン単位から構成され、ここで核酸塩基は、メチレンカルボニル結合によって骨格に結合している。代替的な骨格は、一炭素延長ピロリジンPNAモノマーを含む。PNA分子の骨格は、荷電リン酸基を含まないことから、PNA-RNAハイブリッドは、通常、RNA-RNAまたはRNA-DNAハイブリッドのそれぞれよりも安定である。さらに好ましい骨格は、リボースまたはデオキシリボース糖が6員モルホリノ環によって置き換えられている、モルホリノヌクレオチドアナログまたは等価体を含む。最も好ましいヌクレオチドアナログまたは等価体は、リボースまたはデオキシリボース糖が6員モルホリノ環によって置き換えられ、隣接するモルホリノ環の間の陰イオンホスホジエステル結合が非イオンホスホロジアミダート結合によって置き換えられている、ホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー(PMO)を含む。またさらなる実施形態において、本発明のヌクレオチドアナログまたは等価体は、ホスホジエステル結合における非架橋酸素のうちの1つの置換を含む。この修飾は、塩基対形成をわずかに不安定化するが、ヌクレアーゼ分解に対する顕著な耐性を付与する。好ましいヌクレオチドアナログまたは等価体は、ホスホロチオアート、キラルホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、H-ホスホナート、3’-アルキレンホスホナートを含むメチルおよび他のアルキルホスホナート、5’-アルキレンホスホナートおよびキラルホスホナート、ホスフィナート、3’-アミノホスホルアミダートおよびアミノアルキルホスホルアミダートを含むホスホルアミダート、チオノホスホルアミダート、チオノアルキルホスホナート、チオノアルキルホスホトリエステル、セレノホスファートまたはボラノホスファートを含む。本発明のさらに好ましいヌクレオチドアナログまたは等価体は1つまたは複数の糖部分を含み、これは-OH;-F;置換または非置換の直鎖または分岐低級(C1~C10)アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリル、アリル、またはアラルキルであって、1つまたは複数のヘテロ原子によって中断され得るもの;O-、S-、またはN-アルキル;O-、S-、またはN-アルケニル;O-、S-またはN-アルキニル;O-、S-、またはN-アリル;O-アルキル-O-アルキル、-メトキシ、-アミノプロポキシ;メトキシエトキシ;ジメチルアミノオキシエトキシ;および-ジメチルアミノエトキシエトキシなど、2’、3’および/または5’位において一置換または二置換されている。糖部分はピラノースもしくはその誘導体、またはデオキシピラノースもしくはその誘導体、好ましくはリボースもしくはその誘導体、またはデオキシリボースもしくはその誘導体であり得る。好ましい誘導体化糖部分は、2’-炭素原子が、糖環の3’または4’炭素原子と結合し、それによって二環式糖部分を形成しているロックド核酸(LNA)を含む。好ましいLNAは、2’-O、4’-C-エチレン架橋核酸を含む。これらの置換は、ヌクレオチドアナログまたは等価体を、RNaseHおよびヌクレアーゼ耐性にし、標的RNAに対する親和性を増加する。別の実施形態において、本発明のヌクレオチドアナログまたは等価体は、1つまたは複数の塩基修飾または置換を含む。修飾塩基は、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチンならびに本技術分野において知られているかまたは知られることになるピリミジンおよびプリン塩基の他の-アザ、デアザ、-ヒドロキシ、-ハロ、-チオ、チオール、-アルキル、-アルケニル、-アルキニル、チオアルキル誘導体などの、合成および天然塩基を含む。当業者は、AONにおけるすべての位置が均一に修飾される必要はないことを理解している。さらに、上述したアナログまたは等価体の1つより多くが、単一のAON中に、またはAON内の単一の位置においてさえ組み込まれてよい。ある特定の実施形態において、本発明のAONは、少なくとも2つの異なるタイプのアナログまたは等価体を有する。
【0026】
本発明に従う好ましい偽エクソンスキッピングAONは、2’-O-メチル修飾リボース(RNA)、2’-O-エチル修飾リボース、2’-O-プロピル修飾リボース、および/またはハロゲン化誘導体などのこれらの修飾の置換誘導体などの、2’-OアルキルホスホロチオアートAONである。本発明に従う効果的なAONは、ホスホロチオアート骨格を含む2’-O-メチルリボースを含む。
【0027】
当業者はまた、USH2Aの異常な152ヌクレオチドの偽エクソンを効率的にスキッピングするために、異なるAONを組み合わせることができることを理解するであろう。好ましい実施形態において、少なくとも2、3、4、5または6種のAONの組み合わせ(またはセット)を、本発明の方法において使用する。
【0028】
AONは、細胞、好ましくは網膜細胞におけるAONの取り込みを強化する部分と結合することができる。そのような部分の例は、コレステロール、炭水化物、ビタミン、ビオチン、脂質、リン脂質、細胞透過性ペプチドであって、アンテナペディア、TAT、トランスポータン、およびオリゴアルギニン、ポリアルギニン、オリゴリジンまたはポリリジンなどの正に荷電したアミノ酸を含むがこれらに限定されない細胞透過性ペプチド、抗原結合ドメインであって、抗体、抗体のFab断片、またはラクダ科単一ドメイン抗原結合ドメインなどの一本鎖抗原結合ドメインによってもたらされるような抗原結合ドメインである。
【0029】
本発明に従うAONは、本技術分野において既知の適切な手段を使用して、間接的に投与されてよい。それは例えば、個体または前記個体の細胞、組織もしくは器官に対して、発現ベクターの形態で提供されてよく、ここで発現ベクターは、前記AONを含む転写産物をコードしている。発現ベクターは、好ましくは、細胞、組織、器官または個体内に、遺伝子送達ビヒクルを介して導入される。好ましい実施形態において、本明細書において同定されたエクソンスキッピング分子の発現または転写を駆動する発現カセットまたは転写カセットを含む、ウイルスベースの発現ベクターが提供される。したがって、本発明は、AONの発現に寄与する条件下に置かれた場合に、本発明に従うAONを発現するウイルスベクターを提供する。プラスミド由来AON発現またはアデノウイルスもしくはアデノ随伴ウイルスベースのベクターによってもたらされるウイルス発現によって、異常な152ヌクレオチドのUSH2A偽エクソンの高度に効率的なスキッピングを生じさせる必須配列に干渉することができるAONを含む細胞を提供することができる。発現は、U7プロモーターなどのポリメラーゼII-プロモーター(Pol II)、またはU6RNAプロモーターなどのポリメラーゼIII(Pol III)プロモーターによって駆動されてよい。好ましい送達ビヒクルは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)などのウイルスベクター、またはレンチウイルスベクター等などのレトロウイルスベクターであり、いずれも国際公開第2016/005514号パンフレットにおいて詳細に記載されたようなものである。また、細胞のヒトゲノムにおける標的化相同組換えおよび組込みのために使用可能なプラスミド、人工染色体、プラスミドは、本明細書に定義されるオリゴヌクレオチドの送達のために、適切に適用してよい。Pol-IIIプロモーターから転写が駆動され、および/または転写産物がU1もしくはU7転写産物と融合する形態であるベクターが本発明に好ましく、これは小さな転写産物の送達のために良好な結果をもたらす。適切な転写産物を設計することは、当業者の技能の範囲内にある。好ましくは、U1またはU7転写産物との融合転写産物の形態のPol-III駆動転写産物が好ましい。
【0030】
本発明に従うAONは、それ自体送達されてよい。しかし、AONは、ウイルスベクターによってコードされてもよい。典型的には、これは転写産物の一部において本発明に従うAONの配列を含むRNA転写産物の形態である。
【0031】
個体または前記個体の細胞、組織、器官に、本発明に従うAONを提供する手段における改善は、これまでに既に達成された進歩を考慮して予測される。そのような将来的な改善は、もちろん、本発明の方法を使用して、mRNAの再構築に対して、言及した効果を達成するために組み込まれてよい。本発明に従うAONは、個体、前記個体の細胞、組織または器官にそのまま送達することができる。本発明に従うAONを投与する場合、分子は、送達方法に適合する溶液中に溶解することが好ましい。網膜または内耳細胞には、水性溶液において、またはウイルスベクターもしくはナノ粒子によって(thorough)プラスミドを提供することによって、AON発現のためのプラスミドを提供することができ、これらはすべて、国際公開第2016/005514号パンフレットに詳細に記載されるとおりである。好ましくは、ウイルスベクターまたはナノ粒子は、網膜または内耳細胞に送達される。当業者は、既知の、および/または他の市販の代替的な賦形剤および送達系のいずれかを選択し、適応させて、本発明における使用のためにAONをパッケージングおよび送達し、それをUSH2A関連疾患または状態の防止、処置または遅延のために送達してよい。「USH2A関連疾患または状態の防止、処置または遅延」は、本明細書において、好ましくは、USH2A遺伝子における遺伝的欠陥によって引き起こされる部分的または完全な視覚障害または失明を防止し、休止させ、その進行を停止し、または好転させることに加えて、部分的または完全な聴覚障害または失聴を防止し、休止させ、その進行を停止し、または好転させることと定義される。
【0032】
好ましい実施形態において、本発明に従うAONは、組成物または医薬または組成物として製剤化され、これには少なくとも賦形剤、ならびに/または、送達のための標的化リガンドならびに/またはその、細胞への送達デバイスおよび/もしくはその細胞内送達を強化するための送達デバイスが含まれる。
【0033】
組成物が補助化合物などの付加的な構成成分を含む場合、組成物の各構成成分は、単一の組み合わせまたは組成物または調製物として製剤化されなくてよいことが理解されるべきである。どのタイプの製剤が、本明細書に定義された各構成成分に最も適切であるかを、当業者は、それらの本質に従って知るであろう。必要であれば、本発明に従うAONまたは本発明に従うAONを発現するベクター、好ましくは、ウイルスベクターは、薬学的に許容可能な担体を添加することによって、薬学的活性混合物へと組み込むことができる。
【0034】
したがって、本発明は、本発明に従うAON、または本発明に従うウイルスベクターおよび薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物、好ましくは医薬組成物も提供する。そのような組成物は、本発明に従う単一種のAONまたはウイルスベクターを含んでよいが、本発明に従う複数種の、別個のAONまたはウイルスベクターを含んでもよい。そのような医薬組成物は、担体、充填剤、保存剤、アジュバント、可溶化剤および/または希釈剤を含む、あらゆる薬学的に許容可能な賦形剤を含んでよい。
【0035】
好ましい投与経路は、眼内投与用の水性溶液または特に適合した製剤の硝子体内注射によるものである。EP2425814は、ペプチドまたは核酸薬剤の眼内(硝子体内)投与のために特に適合した水中油エマルジョンを開示している。このエマルジョンは、硝子体液よりも密度が低く、そのためエマルジョンは硝子体の上面に浮かび、注射された薬剤が視覚を損なうことを回避する。
【0036】
本発明に従う複数種の別個のAONが使用される場合、本明細書に定義された濃度または用量は、使用されるすべてのオリゴヌクレオチドの総濃度もしくは用量、または使用されるかもしくは添加される各エクソンスキッピング分子の濃度もしくは用量を意味してよい。したがって、一実施形態において、使用される本発明に従うAONの各量または総量が、0.01~20mg/kg、好ましくは0.05~20mg/kgの範囲の量で投薬される、組成物が提供される。適切な硝子体内用量は、1つの眼あたり、約0.05~約5mg、好ましくは約0.1~約1mgであり、例えば1つの眼あたり約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0mgであろう。
【0037】
本発明に従う好ましいAONは、個体のUSH2A関連疾患または状態の処置のためのものである。本発明のすべての実施形態において、用語「処置」は、USH2A関連疾患または状態の防止および/または遅延を含むと理解される。本発明に従うAONを使用して処置されてよい個体は、USH2A関連疾患または状態を有すると既に診断されたものであってよい。あるいは、本発明に従うAONを使用して処置されてよい個体は、USH2A関連疾患または状態を有するとまだ診断されていなくてよいが、その遺伝的背景を考慮して、将来的にUSH2A関連疾患または状態を発症する増加したリスクを有する個体であってよい。好ましい個体は人間である。好ましい実施形態において、USH2A関連疾患または状態は、アッシャー症候群タイプIIである。したがって、本発明はさらに、USH2AプレmRNAのスプライシングの調節を必要とするUSH2A関連疾患または状態を処置するための医薬としての使用のための、およびUSH2A関連疾患または状態の防止、処置または遅延のための医薬としての使用のための、本発明に従うAON、または本発明に従うウイルスベクター、または本発明に従う組成物を提供する。
【0038】
本発明はさらに、医薬の調製のための、USH2AプレmRNAのスプライシングの調節を必要とするUSH2A関連疾患または状態を処置する医薬の調製のための、およびUSH2A関連疾患または状態の防止、処置または遅延のための医薬の調製のための、本発明に従うAONの、または本発明に従うウイルスベクターの、または本発明に従う組成物の使用を提供する。したがって、さらなる態様において、医薬の調製のための、USH2AプレmRNAのスプライシングの調節を必要とする状態を処置する医薬の調製のための、およびUSH2A関連疾患または状態の防止、処置または遅延のための医薬の調製のための、本明細書に定義されたAON、ウイルスベクターまたは組成物の使用が提供される。本発明に従う使用における、または方法における処置は、少なくとも1回であるか、1週間、1カ月、数カ月、1年、2、3、4、5、6年またはそれより長く、例えば一生涯続く。本明細書に従う使用のための、本明細書に定義された各AONは、USH2A関連疾患または状態を既に患っているかまたはそれを発症するリスクがある個体の細胞、組織および/または器官にインビボ(in vivo)で直接投与するのに適していてよく、インビボ(in vivo)、エクスビボ(ex vivo)またはインビトロ(in vitro)で直接投与されてもよい。本発明のAON、組成物、化合物または補助化合物の投与頻度は、疾患の重症度、患者の年齢、患者における変異、AONの数(すなわち用量)、前記分子の製剤化、投与経路等々などのいくつかのパラメーターに依存してよい。頻度は、日毎、週毎、2週または3週または4週または5週またはより長い期間に少なくとも1回の間で変動してよい。
【0039】
本発明に従うAONの用量範囲は、好ましくは、厳密なプロトコール要件が存在する臨床試験(インビボ(in vivo)での使用)における用量漸増試験に基づいて設計される。本明細書に定義されたAONは、0.01~20mg/kg、好ましくは0.05~20mg/kgの範囲の用量で使用してよい。適切な硝子体内用量は、1つの眼あたり0.05mg~5mg、好ましくは0.1~1mgであり、例えば1つの眼あたり約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0mgであろう。好ましい実施形態において、0.1nM~1μMの範囲である本明細書に定義されたAONの濃度が使用される。好ましくは、この範囲は網膜細胞または網膜組織などの細胞モデルにおけるインビトロ(in vitro)での使用のためのものである。より好ましくは、使用される濃度は、1~400nM、さらにより好ましくは10~200nM、さらにより好ましくは50~100nMの範囲である。いくつかのAONが使用される場合、この濃度または用量は、AONの総濃度もしくは用量、または添加された各AONの濃度もしくは用量を意味してよい。好ましい実施形態において、本発明に従う分子のための送達ビヒクルとしての本明細書において先に記載されたウイルスベクター、好ましくは、AAVベクターは、1回の注射あたり1×109~1×1017個のウイルス粒子、より好ましくは1回の注射あたり1×1010~1×1012個のウイルス粒子の範囲の用量で投与される。上記で示したAONの濃度または用量の範囲は、インビボ(in vivo)、インビトロ(in vitro)またはエクスビボ(ex vivo)での使用のために好ましい濃度または用量である。使用するAON、処置する標的細胞、遺伝子標的およびその発現レベル、使用する培地ならびにトランスフェクションおよびインキュベーション条件に依存して、使用するAONの濃度または用量はさらに変動してよく、さらに最適化される必要があり得ることを、当業者は理解するであろう。
【0040】
本発明はさらに、細胞におけるUSH2AプレmRNAのスプライシングを調節する方法であって、細胞、好ましくは網膜細胞を、本発明に従うAON、または本発明に従うウイルスベクター、または本発明に従う組成物と接触させることを含む方法を提供する。この態様の特徴は、好ましくは本明細書において先に定義されたものである。細胞を、本発明に従うAON、または本発明に従うウイルスベクター、または本発明に従う組成物と接触させることは、当業者に既知のあらゆる方法によって実施してよい。本明細書に記載されたAON、ウイルスベクターおよび組成物の送達方法の使用が含まれる。接触は直接的または間接的であってよく、インビボ(in vivo)、エクスビボ(ex vivo)またはインビトロ(in vitro)であってよい。
【0041】
本発明はさらに、それを必要とする個体のUSH2AプレmRNAのスプライシングの調節を必要とするUSH2A関連疾患または状態(例えばアッシャー症候群タイプII)の処置のための方法を提供し、前記方法は、前記個体の細胞、好ましくは網膜細胞を、本発明に従うAON、または本発明に従うウイルスベクター、または本発明に従う組成物と接触させることを含む。この態様の特徴は、好ましくは本明細書において先に定義されたものである。細胞、好ましくは網膜細胞を、本発明に従うAON、または本発明に従うウイルスベクター、または本発明に従う組成物と接触させることは、当業者に既知のあらゆる方法によって実施してよい。本明細書に記載されたAON、ウイルスベクターおよび組成物の送達方法の使用が含まれる。接触は直接的または間接的であってよく、インビボ(in vivo)、エクスビボ(ex vivo)またはインビトロ(in vitro)であってよい。好ましいUSH2A関連疾患または状態は、アッシャー症候群タイプIIである。特に示されない限り、本明細書に記載された各実施形態は、本明細書に記載された別の実施形態と組み合わせてよい。
【0042】
本発明は、配列番号6、3、4、5、7、8、19、21、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、34、35、36、および37からなる群から選択される、好ましくは配列番号6、3、4、5、7、8、26、34、35、および37から選択される、より好ましくは配列番号6、3、4、5、7、8、26、および35から選択される配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)に関する。本発明のAONは、USH2AプレmRNAにおける偽エクソン40(PE40)のスキッピングを誘導し、刺激し、または強化することができ、ここでPE40の包含は、USH2患者において頻繁に見出されるc.7595-2144A>Gに起因するか、またはそれによって引き起こされる。AONは無作為に選択されるものではなく、USH2a-PE40-3、-5および-7と名付けられた3種の新規なAONにそれぞれ基づいた3つの「誘導体群」を、以下のように形成することが理解されるべきであり、このことは実施例において、ならびに図1~5および表1においてさらに詳述される:
- USH2a-PE40-3(配列番号19)に基づくAONは、配列番号3、5、7、24、25、26、34、35、および36のAONであり、USH2a-PE40-8(配列番号3)、USH2a-PE40-11(配列番号26)、USH2a-PE40-20(配列番号5)、USH2a-PE40-22(配列番号35)およびUSH2a-PE40-28(配列番号7)が最良に機能する(図4および5を参照)。
- USH2a-PE40-5(配列番号21)に基づくAONは、配列番号27、28、および29のAONである。
- USH2a-PE40-7(配列番号23)に基づくAONは、配列番号4、6、8、30、31、32、および37のAONであり、USH2a-PE40-17(配列番号4)、USH2a-PE40-24(配列番号6)およびUSH2a-PE40-29(配列番号8)が最良に機能し(図4および5を参照)、ここでUSH2a-PE40-17および-24は、すべての他のAONの機能を凌駕しさえする。
【0043】
配列番号6、4、8、23、30、31、32、37の非常に効果的なAONに存在する重複する配列は、5’-AGAUGAUCUCUUA-3’(配列番号42)であり、ここでシトシンは、5-メチル-シトシン(5mC)によって置き換えられてよい。
【0044】
配列番号3、5、7、19、24、25、26、34、35、36の非常に効果的なAONに存在する重複する配列は、5’-CGCUGC-3’(配列番号43)であり、ここでシトシンは、5-メチル-シトシン(5mC)によって置き換えられてよい。
【0045】
配列番号21、27、28、29の非常に効果的なAONに存在する重複する配列は、5’-AUUUCAAUUUCAUGAUUU-3’(配列番号44)であり、ここでシトシンは、5-メチル-シトシン(5mC)によって置き換えられてよい。
【0046】
したがって、本発明はまた、配列番号42、43および44からなる群から選択される配列を含むAONに関する。
【0047】
配列番号6、4、8、23、30、31、32、37の非常に効果的なAONの標的領域であって、PE40配列の3’末端におけるスプライシング境界を含むものは、5’-UCCCAAGGUAAGAGAUCAUCUUUAAGAAAAGG-3’(配列番号45)である。
【0048】
配列番号3、5、7、19、24、25、26、34、35、36の非常に効果的なAONの標的領域は、5’-UCUGCAACAAGAGCAGCGAAUCUACUCAGC-3’(配列番号46)である。
【0049】
配列番号21、27、28、29の非常に効果的なAONの標的領域は、5’-GGAAACAAAUCAUGAAAUUGAAAUUGAACA-3’(配列番号47)である。
【0050】
配列番号45、46および47のいずれかの配列を標的とする最も短いAONは、18ヌクレオチド長であった(USH2a-PE40-23(配列番号36)。したがって、本発明はまた、ヒトUSH2AプレmRNAからの偽エクソン40(PE40)のスキッピングを誘導することができるAONに関し、ここで前記AONは、配列番号45、46または47の少なくとも18、19、20、21、22、23、または24個の連続するヌクレオチドに相補的な配列を含む。
【0051】
本発明の別の実施形態において、本発明は、ヒトUSH2AプレmRNAからのPE40のスキッピングを誘導し、引き起こし、刺激し、および/または強化することができるAONに関し、ここで前記AONは、以下の配列群のいずれかから選択される配列を含むかまたはそれからなる:(i)配列番号6、4、8、23、30、31、32、37;(ii)配列番号3、5、7、19、24、25、26、34、35、36;および(iii)配列番号21、27、28、29。好ましい実施形態において、前記AONは、以下の配列群のいずれかから選択される配列を含むかまたはそれからなる:(i)配列番号6、4、8;および(ii)配列番号3、5、7、26、35。非常に好ましい実施形態において、前記AONは、配列番号6および4から選択される配列を含むかまたはそれからなる。特定の態様において、USH2AプレmRNAにおけるPE40の保持(またはスプライシングが完了した後のmRNAにおけるPE40の存在)は、USH2A遺伝子におけるc.7595-2144A>G変異に起因するが、USH2A mRNAにおけるPE40の存在も引き起こす、USH2A遺伝子における他の(同定されたか、またはこれまでのところ未同定の)変異が存在することは除外できない。好ましくは、本発明のAONは、2’-O-メチル(2’-O-Me)、2’-O-エチル、または2’-O-プロピルなどの少なくとも1つの2’-Oアルキル修飾を含むオリゴリボヌクレオチド(RNAオリゴヌクレオチド)である。別の好ましい修飾は、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)である。好ましい一態様において、本発明のAONにおけるすべてのヌクレオチドは、2’-O-メチル修飾されている。好ましくは、本発明のAONは少なくとも1つのホスホロチオアート結合を有し、より好ましくは、本発明のAON内のすべての連続するヌクレオチドは、ホスホロチオアート結合によって相互連結されている。
【0052】
好ましい実施形態において、本発明のAONは、18~143ヌクレオチド、好ましくは18~40ヌクレオチド、より好ましくは18~30ヌクレオチド、さらにより好ましくは18~24ヌクレオチドの長さを有する。好ましい態様において、本発明に従うAONは、2’-O-メチル修飾リボース(RNA)、2’-O-エチル修飾リボース、2’-O-プロピル修飾リボース、および/またはハロゲン化誘導体などのこれらの修飾の置換誘導体などの、2’-Oアルキルホスホロチオアートアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。治療的効果を増加させるためには、本発明の複数種のAONを適用することが有用であり得る。よって、別の好ましい実施形態において、本発明は1セットのAONに関し、前記セットは、本発明に従う少なくとも2種のAONを含む。別の態様において、本発明は、AONの発現に寄与する条件下に置かれた場合に、本発明に従うAONを発現するウイルスベクターに関する。本発明はまた、本発明に従うAON、1セットのAON、またはウイルスベクター、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物に関する。好ましくは、前記医薬組成物は硝子体内投与のためのものであり、1つの眼あたり0.05mg~5mgの総AONの範囲の量で投薬される。より好ましくは、前記医薬組成物は硝子体内投与のためのものであり、1つの眼あたり0.1~1mgの総AONの範囲の量、例えば1つの眼あたり約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0mgの総AONで投薬される。さらに別の態様において、本発明は、医薬としての使用のための、好ましくは、USH2AプレmRNAのスプライシングの調節を必要とするUSH2A関連疾患または状態の処置または防止における使用のための、本発明に従うAON、本発明に従い、ここで特許請求される1セットのAON、本発明に従うベクター、または本発明に従う組成物に関する。さらに別の態様において、本発明は、USH2AプレmRNAのスプライシングの調節を必要とするUSH2A関連疾患または状態を処置するための医薬の調製における、本発明に従うAON、本発明に従う1セットのAON、本発明に従うベクター、または本発明に従う組成物の使用に関する。
【0053】
本発明はさらに、細胞におけるUSH2AプレmRNAのスプライシングを調節する方法に関し、前記方法は、前記細胞を、本発明に従うAON、本発明に従うセット、本発明に従うベクター、または本発明に従う組成物と接触させることを含む。前記細胞は、インビトロ(in vitro)細胞、エクスビボ(ex vivo)細胞またはインビボ(in vivo)細胞であってよい。前記方法において使用される前記細胞は、好ましくは、USH2A関連障害を患っているかまたはそのリスクがある(ヒト)対象の眼に存在するか、または(ヒト)対象から得られるであろう。よって、別の好ましい態様において、本発明は、アッシャー症候群タイプIIなどのUSH2AプレmRNAのスプライシングの調節を必要とするUSH2A関連疾患または状態の、それを患う個体における処置のための方法に関し、前記方法は、前記個体の細胞を、本発明に従うAON、本発明に従うセット、本発明に従うベクター、または本発明に従う組成物と接触させることを含む。
【0054】
さらに別の態様において、本発明は、本発明に従う偽エクソンスキッピングアンチセンスオリゴヌクレオチド、本発明に従う使用、または本発明に従う方法に関し、ここでUSH2Aのスプライシングの調節を必要とするUSH2A関連疾患または状態は、アッシャー症候群タイプIIである。最も好ましい態様において、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用することによってスキップされる偽エクソンは、本明細書に開示された偽エクソン40(PE40;配列番号9)である。
【0055】
本明細書において、およびその特許請求の範囲において、動詞「含む」およびその活用形は、その非限定的な意味において使用され、その単語に続く品詞が含まれることを意味するが、具体的に言及されていない品詞は除外されない。さらに、不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」による要素に対する言及は、唯一の要素が存在することを文脈が明瞭に要求していない限り、1つを超える要素が存在する可能性を除外するものではない。したがって、不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」は、通常は「少なくとも1つ」を意味する。単語「約」または「概ね」は、数値と共に使用される場合(例えば約10)、好ましくは、与えられたその値(10)よりも、その値の0.1%多いまたは少ない値であってよいことを意味する。本明細書に提供された配列情報は、誤って同定された塩基を含めることを必要とするほど狭く解釈されるべきでない。当業者は、そのように誤って同定された塩基を識別することができ、そのような誤りをどのようにして修正するかを知っている。本明細書に引用されたすべての特許文献および非特許文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0056】
[実施例1]
改善されたエクソンスキッピング特性を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの選択
イントロンUSH2A変異(c.7595-2144A>G)は、隠れたスプライスドナー部位を作り出し、これはUSH2A mRNA内への異常なエクソン(PE40)の包含を生じさせる(国際公開第2016/005514号パンフレットの図1ABを参照)。異常なエクソンに対するAONを添加することは、U1-およびU2 snRNP複合体、ならびにセリン-アルギニンリッチタンパク質などのスプライシングに必須な因子の結合を防止することによってこのエクソンの挿入を防止し、それによって正常なUSH2Aスプライシングおよびタンパク質合成を回復するであろう(国際公開第2016/005514号パンフレットの図1C)。AONは、スプライス部位に加えて、エクソン配列を標的とすることができる。AONがエクソンスキッピングを誘導する能力と、標的配列における予測されたSC35スプライス因子結合部位の存在との間には、正の相関が存在することが示唆されていた。高いエクソンスキッピング潜在能力を備えたAONを設計するために、異常なUSH2Aエクソン(152ヌクレオチドのエクソン配列に、15ヌクレオチドのイントロン配列を両側に加えたもの)を、ESE finder 3.0プログラムを使用して、エクソンスプライスエンハンサー結合モチーフについて精査した。異常なエクソン内に、それぞれ3つおよび2つのSC35結合モチーフを備えた2つの領域が予測された(データは示さず)。よって、SC35モチーフを備えたこれらの領域を包含するように2つのAONを設計し、AON1(配列番号1)およびAON2(配列番号2)と命名したが、これらはUSH2A mRNAに相補的である。AON1およびAON2エクソンスキッピング潜在能力は、国際公開第2016/005514号パンフレットにおいて研究された(そこにおける図2を参照)。
【0057】
この実施例において、さらにより強力なAONを同定し、生成し、使用することができたことが示され、これらは、以前試験されたAON1およびAON2よりもはるかに強力なエクソンスキッピング潜在能力を有するように見える。新規に試験されたすべてのオリゴヌクレオチドの概要を、表1に提供する。本明細書で使用したすべてのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、Eurogentec、MicroSynthまたはTrilinkから購入し、58℃のTmにより設計し、糖鎖における2’-O-メチル基およびホスホロチオアート(PS)骨格により修飾し、使用前に、リン酸緩衝生理食塩水中に溶解した。
【0058】
第一のスクリーニングステップにおいて、AONの効果を、スプライシングレポーター構築物であるpCI-Neo-USH2a-PE40(国際公開第2016/005514号パンフレット)を使用することによってアッセイした。この構築物は、500ヌクレオチドのイントロン配列に取り囲まれたPE40配列を含み、これはロドプシン遺伝子由来のエクソン3および5の間のイントロン中に挿入された。まず、レポータープラスミドをHEK293細胞にトランスフェクションし、その後、別個のAONトランスフェクションを行った。レポータープラスミドはトランスフェクション試薬としてMaxPEIを使用してトランスフェクトし、それに続くAONトランスフェクションは、Lipofectamine2000試薬(Life Technologies)を使用して実施した。24時間のインキュベーション後、細胞を回収して、ReliaPrep RNAミニプレップキット(Promega)を使用してRNAを抽出し、Maxima cDNA合成キット(Thermo、#EP0734)を使用してcDNAを調製した。PE40の、成熟mRNA内への包含は、隣接するロドプシンエクソン3および5に位置するプライマーによるRT-PCRによって分析した。
【0059】
図1は、HEK293細胞におけるレポーター構築物を使用して実施されたUSH2a-PE40-1~-7の初期スクリーニングを、対照オリゴヌクレオチドおよび国際公開第2016/005514号パンフレットからの2種の既知のAON(AON1およびAON2)と比較して示す。この初期スクリーニングにおいて、USH2a-PE40-1、-2、-4、および-6は、AON1およびAON2によって決定されたPE40エクソンスキッピング(それぞれこの図におけるR1およびR2として示される)に対する改善を示さなかった。しかし、驚くべきことに、USA2a-PE40-3、-5、および-7は、AON1およびAON2よりも顕著に有効であることが見出され、USH2a-PE40-7が最も有効であった。
【0060】
図2は、PE40の配列(RNAとして5’から3’まで)および本明細書で試験されたAONの相補性の位置を示す。USH2a-PE40-1(配列番号17)、USH2a-PE40-2(配列番号18)およびUSH2a-PE40-4(配列番号20)は、AON1(配列番号1)およびAON2(配列番号2)の位置と重複する。より効果的なUSH2a-PE40-3(配列番号19)、USH2a-PE40-5(配列番号21)およびUSH2a-PE40-7(配列番号23)の結合部位は、明らかに、AON1およびAON2とは異なる領域に位置し、推定ESEと(USH2a-PE40-3および-5)、ならびに下流のスプライス部位と(USH2a-PE40-7;図1の下側のパネルも参照)重複する。USH2a-PE40-6(配列番号22)のための結合部位もまた、AON1またはAON2が結合する領域の外側にあるが、USH2a-PE40-5(配列番号21)の結合部位と重複することが注目され、このことは、この領域に関する限りは、より強力な標的化領域がPE40配列の5’末端側に位置していることを示唆する。
【0061】
本技術分野のAONによって標的とされるものよりも効果的なPE40スキッピングのための「ホットスポット」に見える他の領域が、PE40配列内に存在することを明確に示した図1の初期実験に基づいて、さらなるセットのAONを、同定された3つの領域に基づき、また合成の容易性、取り込み、有効性および低下した免疫原性を改善するために設計した:AONは、より少ない内部二次構造を有するように短縮化されたか、またはシフトされた。AONは、結合親和性を強化することが知られた塩基変化:シトシンの代わりの5-メチル-シトシン(5mC)、およびアデニンの代わりの2,6-ジアミノプリン(DAP)を含めることによってさらに修飾された。表1を参照されたい。5mC修飾はまた、RNAおよびAONの免疫原性を低下させることへの関与が示唆されているので、AONの安全性を改善すると予測された。USH2a-PE40-8、-9、-10、および-11はUSH2a-PE40-3に基づいた。USH2a-PE40-12、-13、および-14は、USH2a-PE40-5に基づいた。USH2a-PE40-15、-16、-17、および-18は、USH2a-PE40-7に基づいた。USH2a-PE40-20および-21は、USH2a-PE40-8に基づいた。USH2a-PE40-22および-23は、USH2a-PE40-11に基づいた。USH2a-PE40-24、-25、-26、および-27は、USH2a-PE-40-17に基づいた。新規に設計された異なるAONの位置もまた、図2に提供される。さらなるAONによる結果は、図3および4に提供される。DAP修飾はより低い有効性をもたらしたことが示され(USH2a-PE40-26および-27を参照)、したがって、このアプローチは断念された。対照的に、5mC修飾されたAONは、概して、正常なシトシンを含む対応するAONと類似した有効性を有した。しかし、両方向における小さな差を観察することができる:5mC-修飾USH2a-PE40-21は、対応するUSH2a-PE40-8よりもわずかに有効性が低かった。USH2a-PE40-25は、本来のUSH2a-PE40-17よりもわずかに有効性が高いことが見出された。また、2ヌクレオチド分だけ短縮化された2種のAON(それぞれ-8および-17に対応するUSH2a-PE40-20および-24)は、それらのより長い本来の対応物と本質的に同じ効果を示した。より長い本来のAONよりも有効ではないものの、短縮化されたバージョンは、これらを合成することがより容易であり、潜在的により良好な取り込みを有し得るという事実に起因して、より優れていると考えられた。このことに基づいて、これらの実験からの最も効果的なAONは、短縮化オリゴヌクレオチドであるUSH2a-PE40-20および-24(それぞれ配列番号5および6)、ならびに5mC-修飾USH2a-PE40-22(配列番号35)およびUSH2a-PE40-25(配列番号37)であるように見える。
【0062】
【表1】
【0063】
USH2a-PE40-8、-17、-20、-24、-28および-29(配列番号3~8)を、エクソンスキッピング能力および免疫原性におけるそれらの有効性について、インビトロ(in vitro)でさらに試験した。オリゴヌクレオチドUSH2a-PE40-8、-20および-28のための標的ヌクレオチド配列(これとオリゴヌクレオチドが(部分的に)重複する)は、以下のとおりであり:5’-TCTGCAACAAGAGCAGCGAA-3’(配列番号10)、これはPE40内に位置する。オリゴヌクレオチドUSH2a-PE40-17、-24および-29のための標的ヌクレオチド配列(これとオリゴヌクレオチドが(部分的に)重複する)は、以下のとおりであり:5’-AG*TAAGAGATCATCTTTAAGAA-3’(配列番号11)、これはPE40に部分的に位置し(下線のAG)、その隣接領域は、c.7595-2144A>G変異を含んでいる(アスタリスクを伴う太字のグアノシン)。
【0064】
線維芽細胞は、USH2A c.7595-2144A>GおよびC.2391_2392del複合ヘテロ接合変異を保有しているUSH2患者から採取した。細胞は、37℃において、20%のFBSおよび1%のNaPyr(Sigma Life Sciences)を含むDMEM AQ培地中で維持した。細胞を、1.0×106個の細胞/ウェルの密度で播種した。AONは、Lipofectamine2000(Life Technologies、ロット:1699509)と、OptiMem(ロット:1697387)中で30分間にわたって複合体を形成し、次いで線維芽細胞に、100nMの濃度で添加した。インキュベーションをさらに24時間続けた。24時間のインキュベーション期間の終わりにおいて、4時間にわたってシクロヘキサミドで細胞を処置して、ナンセンス媒介mRNA崩壊を抑制した。24時間のインキュベーション後、細胞を回収して、ReliaPrep RNAミニプレップキット(Promega)を使用して、製造者のプロトコールを使用してRNAを抽出した。その後、表2のスキームを使用し、製造者のプロトコールに従って、Maxima cDNA合成キット(Thermo、#EP0734、ロット:00335736)を使用してcDNAを調製した。PE40および野生型cDNAのレベルは、表3のピペット操作スキームおよび表4のプライマーを適用して、液滴デジタルPCR(ddPCR)(QX2000液滴リーダー)を使用して決定した。データは、Quanta Life Softwareおよびエクセルによって分析した。当業者に既知の方法を使用して、GUSB(Applied Biosystems、ロット:P160210-006 E01)をハウスキーピング遺伝子として使用した。
【0065】
図5は、8種の異なるAONによって処置された患者の線維芽細胞における、GUSB発現レベルについて補正された、野生型に対するPE40を発現する液滴の数を、1つの未処置(NT)サンプルと共に示す。明らかに、特にAON1、AON2、この図5においてUSH-PE0-17およびUSH-PE40-24と略されたUSH2a-PE40-17(配列番号4)およびUSH2a-PE40-24(配列番号6)は、野生型レベルの出現を増強することにおいて最も有効であり、2種の既知のオリゴヌクレオチドAON1およびAON2の機能を凌駕するように見えたが、一方で他の4種のAONはより有効性が低かった。重要なことに、USH2a-PE40-17およびUSH2a-PE40-24は、PE40レベルを低下させることができたことがさらに観察され、その効果は、AON1およびAON2によっては観察されなかったが、これは、これら2種の新規な偽エクソンスキッピングアンチセンスオリゴヌクレオチド(USH2a-PE40-17およびUSH2a-PE40-24)が、この状況において、2種の既知のオリゴヌクレオチドよりもいっそう良好に機能することを示している。他の4種のオリゴヌクレオチド(USH2a-PE40-8、-20、-28、および-29)もまた、2種の既知のオリゴヌクレオチドであるAON1およびAON2と比較して、PE40レベルを低下させることができることがさらに注目されるが、このことは、これら4種のオリゴヌクレオチドもまた、本技術分野のオリゴヌクレオチドの機能を凌駕することを意味する。
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
[実施例2]
新規なアンチセンスオリゴヌクレオチドのインビトロ(in vitro)の毒性。
オリゴヌクレオチドは、脊椎動物の自然免疫系のいわゆるパターン認識受容体(PRR)の活性化を引き起こす潜在能力を有する(Bauer et al. 2008. Immunobiology 213:315-328)。PRR受容体の最もよく研究されたファミリーは、toll様受容体(TLR)である。TLRは、自然免疫系における主要な役割を果たすタンパク質のクラスである。これらは単独の、膜貫通型の、非触媒性受容体であり、微生物由来の構造的に保存された分子を認識するマクロファージおよび樹状細胞において通常発現する。異なるタイプの核酸によって活性化されるTLRは、エンドソーム上に位置するものである:TLR3は二本鎖RNAを認識し;TLR7/8は二本鎖および一本鎖RNAを認識する。
【0070】
これらの成分がPRRによって認識されると、特異的な「抗微生物」免疫応答が誘発される。TLR活性化は、活性化B細胞の核内因子カッパ軽鎖エンハンサー(NF-κB)、インターフェロン制御因子3(IRF-3)およびアクチベータータンパク質1(AP-1)の活性化を生じさせる(Kawasaki 2014. Front Immunol 25:461)。AP-1、IRF-3およびNF-κBの活性化は、炎症性サイトカイン、I型インターフェロンおよび自然免疫応答の他のメディエーターの産生を生じさせる。これらのプロセスは、炎症などの急速な宿主防御応答を誘発するだけでなく、抗原特異的な獲得免疫応答もプライミングし、統合する。
【0071】
初代ヒト末梢血単核細胞(PBMC)のインビトロ(in vitro)曝露を使用して、以前記載されたように(Lankveld 2010. Methods Mol Biol 598:401-423)、(全身性)薬剤特異的免疫応答および免疫毒性を評価した。PBMCを使用するインビトロ(in vitro)アッセイは、(炎症性)サイトカインの産生を、全身性免疫応答についてのサロゲートマーカーとして使用する確立された前臨床試験である。PBMCアッセイは、試験化合物の免疫原性およびアレルゲン性潜在能力の因子として、忍容性の予測を可能にするものであり、これらの化合物についての安全な用量範囲の推定を可能にし得る。
【0072】
USH2a PE40-20、USH2a PE40-24、USH2a PE40-28およびUSH2a PE40-29を研究するために、施設内で単離されたPBMCを使用したが、これは健康な血液バンクドナーのバフィーコートから得た。培養上清における主要な炎症促進性サイトカインの産生を、1および4μMの濃度のオリゴヌクレオチドによる24時間の刺激の後に評価した。さらに、オリゴヌクレオチドによる処置後のPBMCの生存能を、培養上清における蛍光レゾルフィンを測定することによって分析して、USH2a-PE40 AONの潜在的な細胞毒性効果を評価した。生細胞は、非蛍光レサズリンを蛍光レゾルフィンに変換する(O'Brien et al. 2000. Eur J Biochem 267:5421-5426)。
【0073】
100ng/mlの陽性対照LPS(TLR4アゴニスト)および1μMのR848(TLR7/8アゴニスト)によるヒトPBMCの刺激は、培養上清において、測定されたすべてのサイトカインMCP-1の顕著に増加した濃度をもたらした。さらに、R848による刺激は、類似したパターンのサイトカインを誘導したが、その程度はより低かった。本発明のオリゴヌクレオチドまたは陽性対照による刺激後の培養上清におけるサイトカイン濃度の、生理食塩水処置されたヒトPBMCと比較した有意水準を描写するヒートマップを、図6Aに示す。重要なことには、1および4μMの濃度の本発明のオリゴヌクレオチドによるヒトPBMCの刺激は、培養上清中の測定されたサイトカインのいずれにおいても、増加した濃度をもたらさなかったか、またはごく少量増加した濃度をもたらす。最後に、オリゴヌクレオチドによる処置後24時間で、細胞毒性の徴候はなかった(図6B)。
【0074】
[実施例3]
USH2患者から生成された眼杯におけるUSH2AプレmRNA中のPE40スキッピング
自明な理由のために、網膜は、USH2患者から得ることも、インビトロ(in vitro)での研究のために使用することもできない。そのような前臨床研究のための代替案として、そのような患者網膜材料を模したオルガノイドを生成することができ、これは本明細書において眼杯(optic cup)と呼ばれ、時には眼杯(eye cup)とも呼ばれる。複合ヘテロ接合性のUSH2A c.7595-2144A>G(p.Lys2532Thrfs*56)およびc.2299delG(p.Glu767Serfs*21)変異を有する、アッシャー症候群タイプII患者からの線維芽細胞を、眼杯生成のために使用した。Oct3/4、Sox2、Klf4およびc-Mycを発現する、ラドバウドUMC幹細胞技術センター(Radboud UMC Stem Cell Technology Center)によって寛大にも提供された4種のレンチウイルスを使用して、線維芽細胞を再プログラミングした。クローンはおよそ第6継代で凍結保存し、免疫細胞化学によって、多能性幹細胞マーカーであるSSEA-4、NANOG、TRA1-81およびOCT3/4の発現についてさらに分析した。全部で3つの個別のクローンを生成し、保存した。これらのクローンは、規定のすべての品質管理(幹細胞マーカーの活性化(RT-qPCR)ならびに幹細胞および多能性マーカー(IHC)の発現)に合格した(データは示さず)。iPSC系統は、以前記載されたように(Zhong et al 2014. Nature Comm 5:4047;1-12)眼杯へと培養した。iPSCは小塊へと分化させ、mTeSR1培地および10μMのブレビスタチン(Sigma)を含む懸濁液中で培養して、凝集塊形成を誘導した。凝集塊は、DMEM/F12、1%のN2サプリメント、1×最小必須培地-非必須アミノ酸、2μg/mlのヘパリン(Sigma)を含有する神経誘導培地に移した。凝集塊を、マトリゲルコートしたディッシュ上に播種した。培地は毎日交換した。4週間の分化後、神経網膜ドメインを手動で剥離し、2%のB27、1×NEAA、および1%の抗生物質-抗真菌物質を添加したDMEM/F12培地における懸濁液中で、摂氏37度の湿潤インキュベーターにおいて培養した。培地は1週間に2回交換した。インキュベーター内で、これらは次第に3次元の眼杯を形成した。iPSC由来眼杯の生成の成功後、これらは、USH2a-PE40-24によって、1カ月にわたって2μMおよび10μMで、AONを含む培地を1日おきに新しくすることによって処置した。成熟mRNA内へのPE40の包含を決定するために、隣接するエクソン39および42にそれぞれ位置するプライマー5’-GCTCTCCCAGATACCAACTCC-3’(配列番号40)および5’-GATTCACATGCCTGACCCTC-3’(配列番号41)によって、USH2A転写産物分析を実施した。提供されたプロトコールに従って、Nucleospin RNA II単離キット(MACHEREY-NAGEL、#740955.50、Duren-Germany)を使用して、iPSCおよび眼杯から総RNAを単離した。その後、SuperScript VILO逆転写酵素キット(ThermoFisher Scientific;カタログ#11755050;ロット#1718541)によるcDNA合成のために、0.5~1.0μgの総RNAを使用した。USH2A、LIN28A、OCT3/4、NANOGおよびSOX2を、その後、フォワードおよびリバースプライマーを使用して増幅した。参照としてハウスキーピング遺伝子であるGUSBを使用した。GoTaq(Promega A6001)を使用して、USH2A、LIN28A、OCT3/4、NANOG、SOX2およびGUSB cDNAを三連で、qPCR機器で増幅した。未処置眼杯は、野生型バンド(900bp)およびPE40配列を含むバンド(1052bp)を明らかにするが、これはゲルにおいて容易に識別される。
【0075】
図7に提供された結果は、両方の濃度(2μMおよび10μM)のオリゴヌクレオチドUSH2a-PE40-24(配列番号6)が、USH2患者の線維芽細胞から生成された眼杯に対して使用された場合に、PE40の完全なスキッピングを誘導するのに十分であったことを示す。PE40を含む転写産物を検出することができなかったからである。ctrlレーンにおける最終的な上部の非特異的な薄いバンドが何であるかは明らかでない。
【0076】
これらの結果から、アンチセンスオリゴヌクレオチド、この特定のケースにおいてはUSH2a-PE-40-24が、アッシャー症候群タイプIIを患う(ヘテロ接合性PE40)患者の網膜を模したオルガノイドにおいて、USH2AプレmRNAからPE40を効率的にスキップすることができると結論される。
本発明によれば、以下が提供される。
[1]
ヒトUSH2AプレmRNAからの偽エクソン40(PE40)のスキッピングを誘導することができるアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)であって、配列番号45、46または47の少なくとも18、19、20、21、22、23、または24個の連続するヌクレオチドに相補的な配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)。
[2]
ヒトUSH2AプレmRNAからの偽エクソン40(PE40)のスキッピングを誘導することができるアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)であって、以下の配列群のいずれかから選択される配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON):
(i)配列番号6、4、8、23、30、31、32、37;
(ii)配列番号3、5、7、19、24、25、26、34、35、36;および
(iii)配列番号21、27、28、29。
[3]
USH2AmRNAにおけるPE40の出現が、USH2A遺伝子におけるc.7595-2144A>G変異に起因するものである、上記[1]または[2]に記載のAON。
[4]
2´-O-メチル、2´-O-エチル、または2´-O-プロピルなどの少なくとも1つの2´-O-アルキル修飾を含むオリゴリボヌクレオチド(RNAオリゴヌクレオチド)である、上記[1]から[3]までのいずれかに記載のAON。
[5]
前記AONにおけるすべてのヌクレオチドが2´-O-メチル修飾されている、上記[4]に記載のAON。
[6]
少なくとも1つのホスホロチオアート結合を有する、上記[1]から[5]までのいずれかに記載のAON。
[7]
すべての連続するヌクレオチドが、ホスホロチオアート結合によって相互連結している、上記[6]に記載のAON。
[8]
前記AONの発現に寄与する条件下に置かれた場合に、上記[1]から[3]までのいずれかに記載のAONを発現するウイルスベクター。
[9]
上記[1]から[7]までのいずれかに記載のAON、または上記[8]に記載のウイルスベクターおよび薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物であって、硝子体内投与のためのものである医薬組成物。
[10]
硝子体内投与のためのものであり、1つの眼あたり0.05mg~5mg、好ましくは0.1~1mgの総AON、例えば1つの眼あたり約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0mgの総AONの範囲の量で投薬される、上記[9]に記載の医薬組成物。
[11]
医薬としての使用のための、上記[1]から[7]までのいずれかに記載のAON、上記[8]に記載のベクター、または上記[9]もしくは[10]に記載の組成物。
[12]
アッシャー症候群タイプIIなどのUSH2A関連疾患、またはUSH2AプレmRNAからのPE40のスキップを必要とする状態の処置、防止または遅延のための、上記[1]から[7]までのいずれかに記載のAON、上記[8]に記載のベクター、または上記[9]もしくは[10]に記載の組成物。
[13]
USH2A関連疾患、またはUSH2AプレmRNAからのPE40のスキップを必要とする状態の処置、防止または遅延のための医薬の調製における、上記[1]から[7]までのいずれかに記載のAON、上記[8]に記載のベクター、または上記[9]もしくは[10]に記載の組成物の使用。
[14]
細胞においてヒトUSH2AプレmRNAからPE40をスキップする方法であって、前記細胞に、上記[1]から[7]までのいずれかに記載のAON、上記[8]に記載のベクター、または上記[9]もしくは[10]に記載の組成物を投与すること;および、前記AONが前記ヒトUSH2AプレmRNAからのPE40のスキッピングを誘導し、引き起こし、または刺激することを可能にすることを含む方法。
[15]
USH2A関連疾患、またはUSH2AプレmRNAからのPE40のスキップを必要とする状態の、それを患っている個体における処置のための方法であって、前記個体の細胞に、上記[1]から[7]までのいずれかに記載のAON、上記[8]に記載のベクター、または上記[9]もしくは[10]に記載の組成物を投与すること、および、前記AONがヒトUSH2AプレmRNAからのPE40のスキッピングを誘導し、引き起こし、または刺激することを可能にすることを含む方法。
[16]
前記USH2A関連疾患、またはUSH2AプレmRNAからのPE40のスキップを必要とする前記状態が、アッシャー症候群タイプIIである、上記[13]に記載の使用、または上記[15]に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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