(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】コンデンサ用ケース及びコンデンサ用ケース製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/12 20060101AFI20220322BHJP
H01G 2/10 20060101ALI20220322BHJP
H01G 11/14 20130101ALI20220322BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20220322BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20220322BHJP
H01G 9/00 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
H01G9/12 B
H01G2/10 C
H01G11/14
H01G11/78
H01G11/84
H01G9/00 290K
(21)【出願番号】P 2020012328
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2021-08-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592152129
【氏名又は名称】株式会社アプトデイト
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】金山 裕一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 順一
(72)【発明者】
【氏名】安生 徹男
【審査官】多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第203733634(CN,U)
【文献】特開2000-021692(JP,A)
【文献】特開2018-166023(JP,A)
【文献】特開平10-092397(JP,A)
【文献】実開昭53-133153(JP,U)
【文献】特開2011-204726(JP,A)
【文献】特開2000-040646(JP,A)
【文献】実開昭52-134047(JP,U)
【文献】実開昭60-022827(JP,U)
【文献】中国実用新案第204029610(CN,U)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0069962(KR,A)
【文献】特開2013-138042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/12
H01G 2/10
H01G 11/14
H01G 11/78
H01G 11/84
H01G 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状形状からなる筒状部と前記筒状部の一端を閉塞している底部とを有し、前記底部に防爆溝が形成されているコンデンサ用ケースであって、
前記防爆溝は、互いに結合している複数の溝からなり、
前記複数の溝を構成する溝のうち少なくとも1つの溝は、第1部分と、前記第1部分よりも前記溝が結合している側にあり深さが前記第1部分よりも深い第2部分とを含む深さ変化溝であ
り、
前記深さ変化溝においては、前記第2部分の最深部の幅が前記第1部分の最深部の幅よりも狭く、かつ、前記第1部分及び前記第2部分の最大幅が同じであり、
前記深さ変化溝は、深くなるほど幅が狭くなり、かつ、最深部に平坦部が存在する形状の溝からなり、
前記第1部分及び前記第2部分においては、深さに対して幅が狭くなる割合が同じであることを特徴とするコンデンサ用ケース。
【請求項2】
前記複数の溝を構成する溝のうち少なくとも2つの溝が前記深さ変化溝であり、
前記防爆溝においては、少なくとも2つの前記深さ変化溝が1点で結合していることを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ用ケース。
【請求項3】
前記第1部分における溝の深さ及び前記第2部分における溝の深さは、それぞれ一定であり、
前記深さ変化溝は、前記第1部分と前記第2部分との間に、深さが連続的に変化する第3部分をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のコンデンサ用ケース。
【請求項4】
請求項1に記載のコンデンサ用ケースを製造するためのコンデンサ用ケース製造方法であって、
前記コンデンサ用ケースの材料である板材を準備する板材準備工程と、
絞り加工により前記板材から前記コンデンサ用ケースにおける筒状部及び底部に相当する部分を形成する絞り加工工程と、
互いに結合している複数の溝からなる防爆溝であって、第1部分と、前記第1部分よりも前記溝が結合している側にあり深さが前記第1部分よりも深い第2部分とを含む深さ変化溝を少なくとも1つ有するものを、前記底部に相当する部分に形成する防爆溝形成工程とを含
み、
前記深さ変化溝においては、前記第2部分の最深部の幅が前記第1部分の最深部の幅よりも狭く、かつ、前記第1部分及び前記第2部分の最大幅が同じであり、
前記深さ変化溝は、深くなるほど幅が狭くなり、かつ、最深部に平坦部が存在する形状の溝からなり、
前記第1部分及び前記第2部分においては、深さに対して幅が狭くなる割合が同じであることを特徴とするコンデンサ用ケース製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ用ケース及びコンデンサ用ケース製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサ(キャパシタ)の技術分野においては、筒状形状からなる筒状部と筒状部の一端を閉塞している底部とを有するコンデンサ用ケースが広く用いられている。このようなコンデンサ用ケースにコンデンサ素子や電解液等を封入したものが製品としてのコンデンサである。
【0003】
ところで、電解コンデンサのように電解液を用いるコンデンサにおいては、実際の使用時に何らかの異常が発生した場合、ガスの発生や電解液の蒸発等によりコンデンサの内圧(コンデンサ用ケース内の圧力)が急激に上昇する場合がある。コンデンサの内圧上昇は、主に外的要因(例えば、配置ミスや電気回路の異常に起因する過電圧や逆電圧)によって発生する。
【0004】
内圧上昇によるコンデンサの爆発を防ぐため、コンデンサ用ケースに防爆弁(安全弁や圧力弁と呼称されることもある)を用いた防爆機構を設けることが多い。このようなコンデンサ用ケースとして、底部に加工がなされたコンデンサ用ケースが広く用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
図6は、従来のコンデンサ用ケース901を説明するために示す図である。
図6(a)はコンデンサ用ケース901の平面図であり、
図6(b)は
図6(a)のA-A断面図である。
【0006】
従来のコンデンサ用ケース901は、
図6に示すように、筒状部910と底部920とを有し、底部920に防爆溝930が形成されているコンデンサ用ケースである。防爆溝930は、互いに結合している3つの溝932からなる。防爆溝930が形成された箇所は他の箇所よりも強度が低くなるため、内圧上昇時には他の箇所よりも先に破断する。このため、従来のコンデンサ用ケース901によれば、コンデンサの内圧が上昇したときに底部920における防爆溝930付近の部分を防爆弁として作動させ、コンデンサの爆発を回避することが可能となる。なお、コンデンサ用ケース901は従来のコンデンサ用ケースの概念を説明するために例示するものであり、特定の製品等を示すものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のコンデンサ用ケースにおいては、防爆弁(防爆溝)の形状や設置状況等によっては、防爆弁が作動したときにコンデンサ内部から放出された電解液やガスが広範囲に飛散する場合があるという問題がある。コンデンサの性質上、電解液やガスは反応性(腐食性)が高い場合が多い。このため、電解液やガスが広範囲に飛散すると、コンデンサが設置されている機器の構成要素(特に電気回路)に多大な影響を及ぼす(例えば、腐食が発生する)可能性があり、品質管理上の問題となっていた。
【0009】
そこで、本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、従来のコンデンサ用ケースと比較して防爆弁作動時に電解液やガスが広範囲に飛散することを抑制可能なコンデンサ用ケース及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]本発明のコンデンサ用ケースは、筒状形状からなる筒状部と前記筒状部の一端を閉塞している底部とを有し、前記底部に防爆溝が形成されているコンデンサ用ケースであって、前記防爆溝は、互いに結合している複数の溝からなり、前記複数の溝を構成する溝のうち少なくとも1つの溝は、第1部分と、前記第1部分よりも前記溝が結合している側にあり深さが前記第1部分よりも深い第2部分とを含む深さ変化溝であることを特徴とする。
【0011】
[2]本発明のコンデンサ用ケースにおいては、前記複数の溝を構成する溝のうち少なくとも2つの溝が前記深さ変化溝であり、前記防爆溝においては、少なくとも2つの前記深さ変化溝が1点で結合していることが好ましい。
【0012】
[3]本発明のコンデンサ用ケースにおいては、前記第1部分における溝の深さ及び前記第2部分における溝の深さは、それぞれ一定であり、前記深さ変化溝は、前記第1部分と前記第2部分との間に、深さが連続的に変化する第3部分をさらに含むことが好ましい。
【0013】
[4]本発明のコンデンサ用ケースにおいては、前記深さ変化溝においては、前記第2部分の最深部の幅が前記第1部分の最深部の幅よりも狭いことが好ましい。
【0014】
[5]本発明のコンデンサ用ケースにおいては、前記深さ変化溝においては、前記第1部分及び前記第2部分の最大幅が同じであることが好ましい。
【0015】
[6]本発明のコンデンサ用ケースにおいては、前記深さ変化溝は、深くなるほど幅が狭くなり、かつ、最深部に平坦部が存在する形状の溝からなり、前記第1部分及び前記第2部分においては、深さに対して幅が狭くなる割合が同じであることが好ましい。
【0016】
[7]本発明のコンデンサ用ケース製造方法は、上記[1]に記載のコンデンサ用ケースを製造するためのコンデンサ用ケース製造方法であって、前記コンデンサ用ケースの材料である板材を準備する板材準備工程と、絞り加工により前記板材から前記コンデンサ用ケースにおける筒状部及び底部に相当する部分を形成する絞り加工工程と、互いに結合している複数の溝からなる防爆溝であって、第1部分と、前記第1部分よりも前記溝が結合している側にあり深さが前記第1部分よりも深い第2部分とを含む深さ変化溝を少なくとも1つ有するものを、前記底部に相当する部分に形成する防爆溝形成工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のコンデンサ用ケースによれば、深さ変化溝により底面に破断しやすい箇所と破断しにくい箇所とを形成することで、底部における優先的に防爆弁として作動する領域を小さくすることが可能となる。このため、本発明のコンデンサ用ケースは、従来のコンデンサ用ケースと比較して、防爆弁作動時に電解液やガスが広範囲に飛散することを抑制可能なコンデンサ用ケースとなる。また、本発明のコンデンサ用ケース製造方法は、本発明のコンデンサ用ケースを製造可能なコンデンサ用ケース製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係るコンデンサ用ケース1を説明するために示す図である。
【
図2】従来のコンデンサ用ケース901におけるコンデンサの内圧上昇時の動作を説明するために示す図である。
【
図3】実施形態に係るコンデンサ用ケース1におけるコンデンサの内圧上昇時の動作を説明するために示す図である。
【
図4】実施形態に係るコンデンサ用ケース製造方法のフローチャートである。
【
図5】実施形態に係るコンデンサ用ケース製造方法の工程図である。
【
図6】従来のコンデンサ用ケース901を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のコンデンサ用ケース及びコンデンサ用ケース製造方法について、図に示す実施形態に基づいて説明する。各図面は模式図であり、必ずしも実際の構造や構成を厳密に反映したものではない。以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明に必須であるとは限らない。
【0020】
[実施形態]
1.コンデンサ用ケース1
まず、コンデンサ用ケース1について説明する。
【0021】
図1は、実施形態に係るコンデンサ用ケース1を説明するために示す図である。
図1(a)はコンデンサ用ケース1の平面図(コンデンサ用ケース1を開口側から見た図)であり、
図1(b)は
図1(a)のA1-A1断面図であり、
図1(c)は
図1(a)においてB1で示す部分の拡大図であり、
図1(d)は
図1(b)においてB2で示す部分の拡大図であり、
図1(e)は溝32の第1部分32aにおける断面図であり、
図1(f)は溝32の第2部分32bにおける断面図である。
図1をはじめとする各図面においては、本発明との関係が薄い構成要素や構造については単純な形状で表示する。このような構成要素や構造としては、コンデンサ用ケース表面の樹脂被膜や筒状部における凹凸構造を例示することができる。
【0022】
実施形態に係るコンデンサ用ケース1は、
図1に示すように、筒状形状からなる筒状部10と筒状部10の一端を閉塞している底部20とを有する。コンデンサ用ケース1を構成する金属材料としては、公知の適切な金属材料、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金を用いることができる。
【0023】
コンデンサ用ケース1においては、底部20に防爆溝30が形成されている。防爆溝30は、互いに結合している複数の溝からなる。コンデンサ用ケース1においては、複数の溝を構成する溝32は放射状に3つ形成されており、それぞれの一端が底部20の平面視中心で結合している。防爆溝30は、コンデンサ用ケース1の内側(コンデンサ素子を入れる側)に形成されている。コンデンサ用ケース1においては主に底部20における溝32で区分された箇所を防爆弁として作動させることができる。そして、後述するように、コンデンサ用ケース1においては主に溝32の第2部分32bで区分された箇所(後述する
図3の符号C2参照。)を優先的に防爆弁として作動させることができる。
【0024】
なお、本明細書においては、複数の溝を構成するそれぞれの「溝」は、直線状の溝及び曲がり方の傾向が一定の曲線状の溝のことをいう。このため、枝分かれしているものや、ある点で急に曲がり方が変わるものは1つの溝としては扱わず、溝が結合したものとして扱う。一方、本明細書においては、「防爆溝」は上記溝が複数結合したもののことをいう。
【0025】
コンデンサ用ケース1における溝32は、第1部分32aと、第1部分32aよりも溝32が結合している側にあり深さが第1部分32aよりも深い第2部分32bとを含む深さ変化溝である。溝32は全て深さ変化溝であるため、防爆溝30においては、3つの深さ変化溝が1点で結合していることになる。
【0026】
第1部分32aにおける溝の深さ及び第2部分32bにおける溝の深さは、それぞれ一定である。また、深さ変化溝である溝32は、第1部分32aと第2部分32bとの間に、深さが連続的に変化する第3部分32cをさらに含む。
【0027】
深さ変化溝である溝32においては、第2部分32bの最深部の幅が第1部分32aの最深部の幅よりも狭い。また、深さ変化溝である溝32においては、第1部分32a及び第2部分32bの最大幅が同じである。さらに、深さ変化溝である溝32は、深くなるほど幅が狭くなり、かつ、最深部に平坦部が存在する形状の溝からなる(
図1(e)及び
図1(f)参照。)。第1部分32a及び第2部分32bにおいては、深さに対して幅が狭くなる割合が同じである。なお、「深くなるほど幅が狭くなり、かつ、最深部に平坦部が存在する形状の溝」は、「深さ方向に狭まり、断面が台形となる溝」ということもできる。溝32においては、全ての部分にわたって最も浅い箇所における幅が最大幅となる。
【0028】
なお、溝32においては、第3部分32cにおいても、第1部分32a及び第2部分32bと最大幅が同じであり、かつ、深さに対して幅が狭くなる割合が同じである。
【0029】
2.コンデンサの内圧上昇時(防爆弁作動時)の動作
ここで、実施形態に係るコンデンサ用ケース1におけるコンデンサの内圧上昇時の動作を、従来のコンデンサ用ケース901の場合と比較しながら説明する。
【0030】
図2は、従来のコンデンサ用ケース901におけるコンデンサの内圧上昇時の挙動を説明するために示す図である。
図2(a)はコンデンサ用ケース901の底面図(コンデンサ用ケース901を底部920側から見た図)であり、
図2(b)は
図2(a)のA2-A2断面図であり、
図2(c)は防爆弁が作動したときの断面図である。
図2及び
図3においては、視覚的なわかりやすさを重視するため、コンデンサ用ケース901及びコンデンサ用ケース1を
図6及び
図1とは異なる向きで図示する。
図2(c)においては、図面の見た目(特に防爆弁作動後の開口の大きさ)をわかりやすくするため、底部920の一部920cについては表示していない。
【0031】
図3は、実施形態に係るコンデンサ用ケース1におけるコンデンサの内圧上昇時の挙動を説明するために示す図である。
図3(a)はコンデンサ用ケース1の底面図(コンデンサ用ケース1を底部20側から見た図)であり、
図3(b)は
図3(a)のA3-A3断面図であり、
図3(c)は防爆弁が作動したときの断面図である。なお、
図3(c)においては、図面の見た目(特に防爆弁作動後の開口の大きさ)をわかりやすくするため、底部20の一部20cについては表示していない。
【0032】
従来のコンデンサ用ケース901における溝932は、全体にわたって深さが一定である。この場合、溝932が形成されている箇所の強度(底部920の肉厚)は全体にわたって同じになるため、コンデンサの内圧上昇時には溝932が形成されている箇所全体が破断することが多い。つまり、コンデンサ用ケース901においては、主に
図2(a)において符号C1で表示した領域における底部920の一部920a,920b,920cが防爆弁として作動するようになる(
図2(b)及び
図2(c)参照。)。
【0033】
一方、実施形態に係るコンデンサ用ケース1における溝32は、上記したように深さ変化溝である。この場合、溝32が形成されている箇所のうち第1部分32aに相当する箇所の強度は、第2部分32bに相当する箇所の強度よりも高くなる。このため、コンデンサの内圧上昇時には、溝32が形成されている箇所のうちまず第2部分32bに相当する箇所が破断する。つまり、コンデンサ用ケース1においては、主に底部20の
図3(a)において符号C2で表示した領域における底部20の一部20a,20b,20cが防爆弁として作動するようになる(
図3(b)及び
図3(c)参照。)。
【0034】
コンデンサ用ケース1においては、コンデンサ用ケース901の場合よりも主に防爆弁として作動する部分が少なくなり(
図2(a)及び
図3(a)参照。)、底部20の一部20a,20b,20cが防爆弁として作動しても、防爆弁作動後の開口を小さくすることができるようになる。開口を小さくすることで、電解液やガスの放出量を低減すること及び電解液やガスの放出方向を絞ることが可能となり、その結果、電解液やガスが広範囲に飛散することを抑制可能となる。
【0035】
なお、コンデンサ用ケース1においては、溝32の第2部分32bだけでは対応できないほどの内圧上昇が発生した場合であっても、第2部分32bに相当する箇所の破断に続いて第1部分32aに相当する箇所の破断が発生する。このため、コンデンサ用ケース1においては、防爆弁作動後の開口を小さくすることによる危険性の増加を抑えることができる。
【0036】
3.コンデンサ用ケース製造方法
次に、実施形態に係るコンデンサ用ケース製造方法について説明する。
【0037】
図4は、実施形態に係るコンデンサ用ケース製造方法のフローチャートである。
図5は、実施形態に係るコンデンサ用ケース製造方法の工程図である。
図5(a)~
図5(c)は各工程図である。なお、
図5においては、本発明とは関係が薄い構造や事項等(例えば、絞り加工工程S20の途中過程、絞り加工中の筒状部10の開口部辺縁の形状及び加工に用いる金型)については図示を省略する。
【0038】
実施形態に係るコンデンサ用ケース製造方法は、実施形態に係るコンデンサ用ケース1を製造するためのコンデンサ用ケース製造方法である。当該コンデンサ用ケース製造方法は、
図4に示すように、板材準備工程S10と、絞り加工工程S20と、防爆溝形成工程S30とを含む。以下、各工程について説明する。
【0039】
板材準備工程S10は、コンデンサ用ケース1の材料である板材1aを準備する工程である(
図5(a)参照。)。板材1aとしては、十分な可塑性を有し絞り加工が可能な金属材料からなるものを用いることができる。なお、ここでは1つの板材1aから1つのコンデンサ用ケース1を製造するように説明を行うが、実際に本発明のコンデンサ用ケース製造方法を実施する際には、1つの板材から複数のコンデンサ用ケースを同時に製造することとしてもよい。
【0040】
絞り加工工程S20は、絞り加工により板材1aからコンデンサ用ケース1における筒状部10及び底部20に相当する部分を形成する工程である。絞り加工工程S20における絞り加工は公知の絞り加工と同様とすることができるため、説明は省略する。絞り加工工程S20においては、防爆溝30が形成されていないこと以外はコンデンサ用ケース1と同様の形状からなるもの(
図5(b)参照。)を形成してもよいし、後の工程を実施したときに全体としてコンデンサ用ケース1となるもの(筒状部10及び底部20に相当する部分の形状が完成品のコンデンサ用ケース1とは異なるもの)を形成してもよい。
【0041】
防爆溝形成工程S30は、互いに結合している複数の溝からなる防爆溝30であって、第1部分32aと、第1部分32aよりも溝32が結合している側にあり深さが第1部分32aよりも深い第2部分32bとを含む深さ変化溝を少なくとも1つ有するもの(実施形態においては3つの溝32からなる防爆溝30)を、底部20に相当する部分に形成する工程である(
図5(c)参照。)。
【0042】
防爆溝30(溝32)は、金型を用いる加工(板金加工)、切削工具を用いる加工(機械加工)、放電加工、エッチング加工等、金属材料に溝を形成することが可能な任意の加工方法により形成することができる。
【0043】
少なくとも以上の工程を含むコンデンサ用ケース製造方法を実施することにより、コンデンサ用ケース1を製造することができる。当該コンデンサ用ケース製造方法は、上記以外の工程(例えば、コンデンサ用ケース1の最終形状を整える工程やコンデンサ用ケース1を洗浄する工程)を含んでいてもよい。
【0044】
以下、実施形態に係るコンデンサ用ケース1及びコンデンサ用ケース製造方法の効果を説明する。
【0045】
実施形態に係るコンデンサ用ケース1によれば、深さ変化溝(溝32)により底部20に破断しやすい箇所と破断しにくい箇所とを形成することで、優先的に防爆弁として作動する箇所を小さくすることが可能となる。このため、実施形態に係るコンデンサ用ケース1は、コンデンサの内圧が上昇したときに防爆弁を作動させてコンデンサ全体の爆発を回避することが可能となるという従来のコンデンサ用ケースと同様の効果を有し、かつ、従来のコンデンサ用ケースと比較して防爆弁作動時に電解液やガスが広範囲に飛散することを抑制可能なコンデンサ用ケースとなる。
【0046】
また、実施形態に係るコンデンサ用ケース1によれば、溝32が深さ変化溝であり、防爆溝30においては3つの深さ変化溝(溝32)が1点で結合しているため、底部20の一部20a,20b,20cが深さ変化溝の第2部分32bにより区分されるようになり、防爆弁作動後の開口の大きさや形状を制御しやすくすることが可能となる。
【0047】
また、実施形態に係るコンデンサ用ケース1によれば、第1部分32aにおける溝の深さ及び第2部分32bにおける溝の深さはそれぞれ一定であるため、防爆弁を安定して作動させることが可能となる。
【0048】
また、実施形態に係るコンデンサ用ケース1によれば、深さ変化溝(溝32)は第1部分32aと第2部分32bとの間に深さが連続的に変化する第3部分32cを含むため、底部20における第1部分32aに相当する箇所と第2部分32bに相当する箇所との間の強度差をなだらかにすることが可能となる。その結果、実施形態に係るコンデンサ用ケース1によれば、コンデンサの内圧上昇時に防爆弁の開き方が大きくなってしまうことや、著しく急激な内圧上昇が発生した場合における防爆弁の作動不良の発生を抑制可能となる。
【0049】
また、実施形態に係るコンデンサ用ケース1によれば、深さ変化溝(溝32)においては、第2部分32bの最深部の幅が第1部分32aの最深部の幅よりも狭いため、溝の深さを変化させることに伴う底部20の強度の不安定化を緩和することが可能となる。
【0050】
また、実施形態に係るコンデンサ用ケース1によれば、深さ変化溝(溝32)においては第1部分32a及び第2部分32bの最大幅が同じであるため、不良品かどうかの判別を容易なものとすることが可能となる。
【0051】
また、実施形態に係るコンデンサ用ケース1によれば、深さ変化溝(溝32)は深くなるほど幅が狭くなり、かつ、最深部に平坦部が存在する形状の溝からなり、第1部分32a及び第2部分32bにおいては深さに対して幅が狭くなる割合が同じであるため、深さ変化溝の形成(溝の深さの差異)に起因する底部20の強度の不安定化を抑制することが可能となる。
【0052】
実施形態に係るコンデンサ用ケース製造方法は、板材準備工程S10と、絞り加工工程S20と、防爆溝形成工程S30とを含むため、従来のコンデンサ用ケースと比較して防爆弁作動時に電解液やガスが広範囲に飛散することを抑制可能なコンデンサ用ケース1を製造することが可能となる。
【0053】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0054】
(1)上記実施形態において記載した構成要素の形状、数、位置等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0055】
(2)例えば、上記実施形態における溝32の形状、数、配置は例示であり、本発明における溝の第1部分及び第2部分のそれぞれの長さ、深さ、配置、断面形状は実施形態において説明したものに限られない。
【0056】
(3)本発明のコンデンサ用ケースにおいては、防爆溝は外側に形成されていてもよい。
【0057】
(4)本発明のコンデンサ用ケースにおいては、複数の溝(防爆溝)を構成する溝が深さ変化溝以外の溝(深さの変化がない溝)を含んでいてもよいし、2以上の形状の深さ変化溝を含んでいてもよい。また、溝が結合する点が2つ以上あってもよい。
【0058】
(5)本発明のコンデンサ用ケースにおいては、コンデンサの爆発防止に寄与するかどうかを問わず、本発明における防爆溝(実施形態で説明した防爆溝30)以外の溝が底部に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…コンデンサ用ケース、1a…板材、10…筒状部、20…底部、20a,20b,20c…底部の一部、30…防爆溝、32…溝、32a…第1部分、32b…第2部分、32c…第3部分