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特許7043095位相変調層及び位相補償層を有する光学装置
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  • 特許-位相変調層及び位相補償層を有する光学装置 図1
  • 特許-位相変調層及び位相補償層を有する光学装置 図2a
  • 特許-位相変調層及び位相補償層を有する光学装置 図2b
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】位相変調層及び位相補償層を有する光学装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/60 20140101AFI20220322BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20220322BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20220322BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20220322BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20220322BHJP
   G03B 21/62 20140101ALI20220322BHJP
【FI】
G03B21/60
G02B27/01
G02B27/02 Z
G02B5/00 Z
G02B5/02 D
G03B21/62
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020507733
(86)(22)【出願日】2018-04-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 CN2018083714
(87)【国際公開番号】W WO2018196675
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2019-10-23
(31)【優先権主張番号】62/488,818
(32)【優先日】2017-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519379466
【氏名又は名称】シェンジェン フォトニック クリスタル テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN PHOTONIC CRYSTAL TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】Room 3, Chuangke C Area, 14th floor, Building 1, No.1, Tongsheng Community Industrial Park Road, Dalang Street, Longhua District Shenzhen, Guangdong 518109, CN
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ヨンジン
【審査官】小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06353489(US,B1)
【文献】特開2015-228010(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104298063(CN,A)
【文献】特開2016-012117(JP,A)
【文献】国際公開第2009/040975(WO,A1)
【文献】特開平03-068931(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0368906(US,A1)
【文献】特開2014-052555(JP,A)
【文献】特開平09-203980(JP,A)
【文献】特表2009-521010(JP,A)
【文献】特開2008-304881(JP,A)
【文献】国際公開第2015/186668(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/00-21/10
21/12-21/30
21/56-21/64
33/00-33/16
G02B 27/00-27/64
G02B 5/00-5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)ナノメートル又はマイクロメートルスケールの位相変調構造を有する第一光学構造と、
2)光を部分的に反射するとともに部分的に透過させる、部分的に透明かつ部分的に反射する層と、
3)前記第一光学構造により引き起こされるいかなる位相変調も実質的に補償する位相補償構造を有する第二光学構造と、を含み、
前記位相変調構造を有する光学構造は、散乱面のレリーフパターンであり、
前記部分的に透明かつ部分的に反射する層は、前記第一光学構造と前記第二光学構造との間に配置され、
前記第一光学構造と、前記部分的に透明かつ部分的に反射する層と、前記第二光学構造と、からなる構造は複数重複して多層構造とされる、光学装置。
【請求項2】
前記位相変調構造を有する光学構造は、光エネルギーの方向や分布をコントロールする疑似的にランダムな散乱面のレリーフパターンであることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記位相変調構造を有する光学構造は、マイクロコーナーキューブアレイであることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項4】
前記位相補償構造を有する第二光学構造は、前記光学構造が軟らかい又は液体の硬化性光学材料により積層される時に自動的に形成されることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項5】
前記部分的に透明かつ/又は部分的に反射する層は、投射された光の偏極を維持する、ことを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項6】
前記部分的に透明かつ/又は部分的に反射する層は、プロジェクターのコントラストを向上させるため、視聴者とは異なる方向に環境光を向け直す時にプロジェクターからの光のみを反射する、ことを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項7】
請求項2に記載の光学装置と、
視聴者の両目の実質的な近くに取り付けられる2つのプロジェクターと、を備え、前記2つのプロジェクターは両目に対してそれぞれ異なる2つのイメージを生成することにより完全透明基板の上に3Dイメージを生成する、裸眼用の3Dディスプレイシステム。
【請求項8】
前記位相変調構造はフレネルレンズアレイであることを特徴とする、請求項1に記載の光学装置。
【請求項9】
1)右目と左目の角距離よりも小さい光円すいに光を散乱させることを特徴とする請求項1に記載の光学装置と、
2)左右の目それぞれに対してイメージを表示することにより眼鏡を着用することなく見られる3Dイメージを生成する2つ以上のプロジェクターと、を含む3D光学ディスプレイ装置。
【請求項10】
レール又は螺旋軸上に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の光学装置と、3Dオブジェクトの異なる層でイメージを投影するプロジェクターとを含み、投影された前記イメージは前記レール又は前記螺旋軸の走査と同期することにより3Dイメージを生成する3D光学ディスプレイ装置。
【請求項11】
ナノメートル又はマイクロメートルスケールの位相変調構造を有し、散乱面のレリーフパターンであることを特徴とする第一光学基板を作製するステップ1と、光を部分的に反射するとともに部分的に透過させる部分的に透明かつ部分的に反射する層をコーティングするステップ2と、前記第一光学基板により引き起こされるいかなる位相変調も実質的に補償する位相補償構造を有する第二光学基板を作製するステップ3とを含む光学製造方法であって、
前記第一光学基板と、前記部分的に透明かつ部分的に反射する層と、前記第二光学基板と、からなる構造を、複数重複して多層構造とする、光学製造方法。
【請求項12】
前記ステップ3では、前記第一光学基板上に光学材料の液体又は変形可能な層を適用し、前記光学材料の液体又は変形可能な層は前記第一光学基板の屈折率に実質的に近い屈折率を有することを特徴とする請求項11に記載の光学製造方法。
【請求項13】
1)請求項1に記載の光学装置と、2)イメージを表示するプロジェクターと、3)車両に関する情報を表示するコントローラーとを備える車両用光学ディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学ディスプレイシステムに関し、特に、イメージを表示する透明光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透明(シースルー)ディスプレイは、ディスプレイ上の情報をユーザーに見せつつ、ユーザーがディスプレイを通して外景を見ることができるようにする電子ディスプレイである。多くの応用に必要とされるのは、拡張情報を実世界とオーバーラップさせられる鮮明な色彩の画像を表示する完全透明スクリーンである。これらの応用には、小売店における透明デジタルサイネージや、博物館や展示会におけるショーケースや、自動車のヘッドアップディスプレイ(HUD:Head Up Display)や、拡張現実(AR:Augmented Reality)ディスプレイシステムも含まれる。これまでにも、透明ディスプレイを実行するいくつかの方法はあった。これらの方法には、透明LCD/OLEDディスプレイ、部分的透明プロジェクションスクリーン、透明LEDディスプレイ等が含まれる。これらの方法はいずれも、表示画素の一部を利用してコンテンツを表示している間、表示画素の他の部分の透明な状態を維持するものであるが、不鮮明で透明度が低いので、応用が限られてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
より高い透明度とより鮮明な色彩を有する透明ディスプレイが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明においては、位相変調層、反射層及び位相補償層を含む光学装置を開示する。位相変調層は光学ガラスや光学ポリマー材料のような光学透明材料から作製される。位相変調層は、光エネルギーの方向を変更することによりその光をコントロールできる疑似的にランダムな表面を生成する。この位相変調層により光の方向がコントロールされるだけでなく、その光のエネルギー分布も所望のパターンに再分布される。反射層は、多層の誘導体コーティング、屈折率が実質的に異なる単層の光学材料、又は金属若しくは合金のコーティングであってもよい。
【0005】
光が前述の位相変調層上及び前述の反射層上に入射すると、光の一部は反射し、一部は透過する。反射した光はこの位相変調層により位相変調されるので、その光の方向及び分散は所望の反射方向及び反射/散乱パターンになるようコントロールされる。本発明の位相変調構造は、計算機合成ホログラム(CGH:Computer Generated Hologram)表面レリーフグレーティング、表面レリーフ光散乱パターン、バイナリオプティクス等によって生成される。CGHはホログラフィーの干渉パターンをデジタル的に生成する方法である。ホログラフィックイメージは、例えばホログラフィーの干渉パターンをデジタル的に計算し、適切なコヒーレント光源による後の照明のためにそのパターンをマスク上又はフィルム上にプリントすることにより生成される。位相変調のパターンは反射後の光の分布パターンを決定する。
【0006】
プロジェクターからの光が前述の位相変調層に入射すると、その光は視聴者の目に方向が向け直されて画像を生成する。一方、光が逆方向から入射すると、その光はこの位相変調層を通過した後、位相補償層を通過する。こうしてすべての位相変調が保障される。したがって、光は妨げられることなくすべての層を通過することから、プロジェクションフィルムは光に対して完全に透明であるといえる。
【発明の効果】
【0007】
プロジェクションフィルムはプロジェクターと共に使用されると、空中に浮いているような鮮明で光り輝く画像を作り出すことができる。スクリーンは完全に透明で光が外界から妨げられることはない。視聴者はプロジェクターからの鮮明な画像と外景を見ることができる。コンピューターにより生成された情報は実世界とオーバーラップされ、未来的な3Dホログラムのディスプレイ効果を生み出す。
【0008】
本発明においては、プロジェクターからの光を視聴者の目の方向に選択的に向け直し、その間は光の透過に影響を与えないプロジェクションフィルムを開示する。視聴者はスクリーンの後ろ側のオブジェクトを見ることができる。投影されたイメージは実世界のオブジェクトとオーバーラップすることにより拡張現実の効果が達成される。これにより、デジタルサイネージ広告や、博物館や展示会におけるショーケースや、自動車のHUDのような独特の応用が可能になる。
【0009】
本発明において開示されるプロジェクションフィルムは、そこに投射された光の偏極を維持できるので、3Dプロジェクションフィルムとして用いられる。
【0010】
本発明においては、プロジェクターからの光を視聴者の目の方向に選択的に向け直し、その間は環境光を視聴者とは異なる方向に向け直す、プロジェクションフィルムを開示する。これは環境光を排除するプロジェクションフィルムとして使用され、通常の環境光の下で投影されたイメージのコントラストを向上できる。
【0011】
プロジェクションフィルムのその他の実施例は、以下の詳細な説明や請求項により明らかにされる。本発明と本質的に同様の目的を遂行するのであれば、異なる位相調整パターンの設計のように、ここに開示されるコンセプトや具体的な実施例は変更可能であることを当業者は理解する。このような同等の構造はここに開示される発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第一実施例におけるプロジェクションフィルムの断面図である。
図2a】点光源からのCGHを示す図である。
図2b】CGHが点光源の光を特定方向へ反射することを示す図である。
図3】第二実施例におけるプロジェクションフィルムの断面図である。
図4】本発明の使用例を示す図である。
図5】コーナーキューブ位相変調構造を有する光学フィルムを示す図である。
図6】コーナーキューブ微細構造を有する光学フィルムを備えた3Dディスプレイを示す図である。
図7】3Dディスプレイの実施例におけるプロジェクションフィルムの断面図である。
図8】パッシブ偏光メガネを付属する光学フィルムを備える3Dディスプレイを示す図である。
図9】実施例におけるフレネルレンズの微細構造を示す図である。
図10】Z走査機構を利用したライトフィールド3Dディスプレイを示す図である。
図11】角度投影を利用したライトフィールド3Dディスプレイを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0013】
図1に示すように、本発明の第一実施例におけるプロジェクションフィルムは、1)ナノメートル又はマイクロメートルスケールの位相変調構造を有する第一光学構造1と、2)第一光学基板を補償するナノメートル又はマイクロメートルスケールの位相補償構造を有する第二光学構造2と、3)光を部分的に反射するとともに部分的に透過させる、第一子光学構造と第二光学構造の間にある、部分的に透明かつ部分的に反射する層11とを含む。別の実施例において、上述した構造を複数重複して多層構造が形成される(1及び2からi‐1及びiまで)。異なる光線(a、bからzまで、アルファベットは異なる光線を示しているにすぎず、光線の数量は26に限定されない)が異なる位置及び異なる角度で光学フィルムを通過する。
【0014】
光学において、光路長(OPL:Optical Path Length)又は光学距離は、システムを通過する光線の幾何学的長さ(L1、L2からLi)と、通過する媒体の屈折率(n)の積である(OPL=Li×n)。2つの経路の間の光路長の差は光路差(OPD:Optical Path Difference)と呼ばれることが多い。光路差は、光の位相を決定し、光が伝わる際の干渉や回析を制御するので重要である。第一光学構造と第二光学構造の間の光路長はOPD1である。第一光学構造及び第二光学構造は相反する光学位相を有するので、相互に補償し合う。フィルム全体を通過するすべての光線(aからz)の光路長の合計は定数Cである。
【0015】
【数1】
【0016】
Cは定数であり、OPDiは各光学構造の位相変調であり、iは1からiの異なる光学層を示す。
【0017】
用いられる前述の位相変調構造の光学製造方法には、光エッチング、光リソグラフィー、ナノプレス、ナノインプリント等が含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
第一実施例におけるナノメートル又はマイクロメートルスケールの位相構造は、散乱面レリーフ構造、グレーティング、及びCGHを含む異なるアプローチで実行されるが、これらのアプローチに限定されない。一実施例における表面レリーフ構造はホログラフィック記録されたマスターから複製可能である。これらの疑似的ランダムで非周期的な構造は、光のエネルギー方向を変えることにより光をコントロールできる。結果として、モアレの除去、カラーオーバーアングル、及び正確な角度のビーム制御といった効果がもたらされる。別の実施例においては、図2a及び図2bに示すように、位相変調層はCGH構造である。例えばCGH構造は、点光源のコンセプトに基づいた計算戦略により設計され、オブジェクトは図2aの自発光点で分解される。要素ホログラムは、各点光源ごとに算出され、最終的なホログラムはすべての要素ホログラムを重ね合わせることにより合成される。点光源からの光は特定の方向に反射する。
【0019】
本明細書の残りの内容を検討することにより、当業者はこれらの実施例やその他の実施例の特徴及び態様をより理解することになる。異なる分布角度で異なる方向に光を向け直すことができる異なる位相変調層があるが、これらの変更は開示された技術と方法論の範囲から逸脱するものではない。
【0020】
もう1つの実施例において本発明は、前述の第一光学構造及び第二光学構造の複数のユニットiをさらに含む。iの範囲は1から500である。第一光学構造と第二光学構造の間の光路差(OPD)はOPDjである。各ユニットiは特定の方向に特定の波長の光を反射させるように設計される。フルカラーディスプレイには赤、緑、青の3色が必要であるため、iは3よりも大きいことになる。異なるユニットからの異なる反射光線の光路差(OPD)は互いに強め合う関係である。
【0021】
すべての実施例において、すべての光学構造間の全体的な光路差は相当小さいため、前述の光学フィルムは、フィルム全体にわたって均一な光学経路を有している。この光学フィルムは通過する光に対して完全に透明であるため、通過する光を妨げる。このフィルムは透明なので、視聴者はスクリーンの向こう側のオブジェクトもはっきりと見ることができる。
【0022】
第二実施例では、図3が示すように、位相変調層31、部分反射層38及び位相補償層36が含まれる。入射光30が位相変調層31を通過する時、部分反射層38は反射光32を反射及び散乱させる。反射光32の方向及びプロファイルは位相変調プロファイルにより決定される。位相変調プロファイルは、特定の反射パターンを達成するように設計されることにより、応用の必要条件を満たす。
【0023】
一実施例において、位相変調は、表面に入射する光線が異なる方向に散乱して視野角を増大できるようにランダム化される。別の実施例において、表面レリーフ構造はホログラフィック記録されたマスターから複製が可能である。これらの疑似的ランダムで、非周期的な構造は、光のエネルギー方向を変更することにより光をコントロールできる。結果として、モアレの除去、カラーオーバーアングル、及び正確な角度のビーム制御といった効果がもたらされる。反射した光に対しては、基板がプロジェクションスクリーンとして作用する。
【0024】
一方、光34が層3を通過する時、その位相は変調される。その後、光34は位相変調層3を通過し、その位相変調は相当小さいレベルに補正される。したがって、透過光は平行透明基板を何の妨げもなしに通過するように光学装置を通過し、視聴者は何の妨げもない外景を目にする。
【0025】
反射層38は、多層の誘導体コーティング、屈折率が実質的に異なる単層の光学材料、又は金属若しくは合金のコーティングであってもよい。反射スペクトルは従来の多層光学設計ツールを使用して設計される。一実施例においては、層31と比べると、屈折率が実質的に異なる単層の透明光学材料が使用されている。別の実施例においては、特定の屈折率と光学的厚さを有する多層の透明誘導材料が層31として使用されている。レーザー光源を有するプロジェクターのように、赤、緑、青の狭い光帯域を有するプロジェクターにとって、反射スペクトルは、外界からの他の波長の光を通過させると同時に、プロジェクターからの波長でより多くの光を反射するように設計されている。このため、表示されるイメージの明るさと光学フィルムの透明度はいずれも最適化される。
【0026】
本発明の応用におけるさらに別の実施例では、位相構成構造は、位相変調構造と比べて実質的に似た屈折率(n)を有する液体又は硬化性の光学用樹脂を使用して自動的に形成される。この光学用樹脂が位相変調構造に塗布されて硬化すると、位相変調構造は自動的に補償される。
【0027】
図4が示すように、さらに別の実施例では、1)前の実施例で説明したプロジェクションフィルム40と、2)前述のプロジェクションフィルム40に画像43を投影するプロジェクター41とが備えられる。視聴者42は投影された画像と外景44を同時に見る。投影された画像43は外景44と関連するものでも、関連しないものでもよい。投影された画像43は外景440にさらなる情報を提供して拡張現実を生成する。
【0028】
反射光の方向及びプロファイルは位相変調プロファイルにより決定される。位相変調プロファイルは、特定の反射パターンを達成するように設計される。当業者にとっては、多くの位相変調プロファイルの設計が存在する。本発明のプロジェクションフィルムの別の実施例には、図5が示すように、1)ナノメートル又はマイクロメートルスケールの位相変調構造、すなわちコーナーキューブアレイ51を有する第一基板50と、2)光を部分的に元の入射方向54に反射するとともに部分的に通過させる、コーナーキューブアレイ51上の部分的に透明かつ部分的に反射する層と、3)第一基板50により引き起こされる位相差を実質的に補償する第二位相補償基板が含まれる。コーナーキューブアレイ51は入射光53を元の入射方向54に反射する。コーナーキューブアレイ51はまた光53をわずかに散乱させて視野角を増大する。散乱した入射光53の光円すいは、両目の角距離よりも小さくなるはずである。
【0029】
さらに別の実施例では、図6が示すように、視聴者の両目61に実質的に近い位置に取り付けられる2つのプロジェクター63がさらに備えられる。2つのプロジェクターは、2つの異なる目に対してそれぞれ2つの異なるイメージ64を生成し、これにより完全に透明な基板上に3Dイメージが生成される。さらに、各目に対して十分な大きさのアイボックスを生成するわずかな散乱構造が含まれる。かくして、裸眼用の3Dディスプレイシステムが実現される。
【0030】
本発明の応用の別の実施例には、図7が示すように、位相変調層71、部分反射層73及び位相補償層75が含まれる。入射光70がこの位相変調層71を通過する時、部分反射層73は反射光72を反射及び散乱させる。前述の部分反射層はこの反射光72の偏極を維持する。かくして光学フィルムが3Dプロジェクションディスプレイに使用できるようになる。視聴者はパッシブメガネを着用し、3Dプロジェクターによって投影された3Dイメージを見る。このようにしてパッシブ偏光メガネを付属する3Dディスプレイが実現される。
【0031】
簡略化された別の実施例では、図8が示すように、反射層81及び位相補償層82が含まれる。入射光83は反射層81により反射される。反射層81は反射光84の偏極を維持する。かくして、光学フィルムが3Dプロジェクションディスプレイに使用できるようになる。視聴者はパッシブ偏光3Dメガネを着用すれば、3Dプロジェクターによって投影された3Dイメージを見られる。
【0032】
別の実施例では、図9が示すように、前述の位相変調構造はフレネルレンズ90であり、プロジェクター91からの光は実質的平行方向92に分布する。さらに、視聴者にとって実質的に十分な視野角を作り出すわずかな散乱構造が含まれる。
【0033】
プロジェクションフィルムのさらに別の実施例では、図10が示すように、1)レール又は螺旋軸101上に取り付けられる光学装置100が備えられる。光学装置100としてのプロジェクション基板は1つの空間で前後に走査される。2)プロジェクター103は異なる層(105、107、109等)で3Dオブジェクトのイメージを投影し、それらのイメージは走査機構と同期する。当該空間における3Dオブジェクトの各層はその空間容積内で再現され、視聴者に対して3Dオブジェクトが再構成される。そして、視聴者はメガネなしで3Dオブジェクトを見ることができる。
【0034】
光学装置のさらに別の実施例では、図11が示すように、1)透明プロジェクション基板111と、2)複数のプロジェクター110(プロジェクターの数量は2つより多く、N1からN7で示される)とが備えられ、これらのプロジェクターは異なる角度(α1からα7)で3Dオブジェクトのイメージを投影し、当該空間におけるこの3Dオブジェクトのすべての異なる角度のイメージは、その空間内で再現され、視聴者に対して3Dオブジェクトが再構成される。そして、視聴者はメガネなしで3Dオブジェクトを見ることができる。概してプロジェクターの数量は2つより多く、通常プロジェクターが7台あれば良好な3D効果が生まれる。プロジェクターは多いほど3D効果が優れたものになる。
【0035】
本発明の応用の別の実施例では、1)請求項1に記載の光学装置と、2)イメージを表示するプロジェクターと、3)車両に関する情報を表示するコントローラーと備えられる。
【符号の説明】
【0036】
1 第一光学構造
2 第二光学構造
11 部分的に透明かつ部分的に反射する層
1、2~i‐1、i 多層構造
a~z 光線
L1、L2~Li 異なる経路の光線の幾何学的長さ
30 入射光
31 位相変調層
32 反射光
34 光
36 位相補償層
38 部分反射層
40 プロジェクションフィルム
41 プロジェクター
42 視聴者
43 画像
44 外景
50 第一基板
51 コーナーキューブアレイ
53 入射光
54 元の入射方向
61 両目
63 プロジェクター
64 イメージ
70 入射光
71 位相変調層
72 反射光
73 部分反射層
75 位相補償層
81 反射層
82 位相補償層
83 入射光
84 反射光
90 フレネルレンズ
91 プロジェクター
92 実質的平行方向
100 光学装置
101 レール又は螺旋軸
103 プロジェクター
105、107、109 層
110 複数のプロジェクター
111 透明プロジェクション基板
N1~N7 プロジェクター
α1~α7 角度

図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11