IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社の特許一覧

特許7043155硬化性ポリオルガノシロキサン組成物及び電子部品
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】硬化性ポリオルガノシロキサン組成物及び電子部品
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20220322BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220322BHJP
   C08K 3/11 20180101ALI20220322BHJP
   C08K 5/378 20060101ALI20220322BHJP
   C09J 183/06 20060101ALI20220322BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K3/013
C08K3/11
C08K5/378
C09J183/06
C09J11/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021532972
(86)(22)【出願日】2021-06-01
(86)【国際出願番号】 JP2021020781
【審査請求日】2021-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2020095482
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000221111
【氏名又は名称】モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】飯田 勲
(72)【発明者】
【氏名】小野 和久
(72)【発明者】
【氏名】宮田 浩司
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-098163(JP,A)
【文献】特開2019-143074(JP,A)
【文献】特表2020-510713(JP,A)
【文献】特開2013-107984(JP,A)
【文献】特表2016-506992(JP,A)
【文献】特開2004-182758(JP,A)
【文献】特開2015-172177(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0264133(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 -101/14
C08K 3/00 - 13/08
C09J 1/00 - 5/10
C09J 9/00 -201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1分子中に2個以上の水酸基及び/又は加水分解性基を有するポリオルガノシロキサン;
(b)1分子中に2個以上の水酸基及び/又は加水分解性基を有するケイ素化合物又はその加水分解縮合物である架橋剤;
(c)前記(a)及び(b)の架橋反応を触媒し得る、縮合触媒;
(d)それ自体が蛍光を発しない顔料;及び
(e)UVトレーサー
を含む組成物であって、該組成物との色差(ΔE)が20以下である基材の接着用の、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項2】
(a)1分子中に2個以上のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン;
(b)1分子中に3個以上のケイ素原子に結合した水素原子を有するハイドロジェンポリオルガノシロキサンである架橋剤;
(c)前記(a)及び(b)の架橋反応を触媒し得る、白金化合物である硬化触媒;
(d)それ自体が蛍光を発しない顔料;及び
(e)UVトレーサー
を含む組成物であって、該組成物との色差(ΔE)が20以下である基材の接着用の、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項3】
1液型の組成物である、請求項1又は2記載の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項4】
(d)顔料が、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1~のいずれか一項記載の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項5】
(a)1分子中に2個以上の水酸基及び/又は加水分解性基を有するポリオルガノシロキサン;
(b)1分子中に2個以上の水酸基及び/又は加水分解性基を有するケイ素化合物又はその加水分解縮合物である架橋剤;
(c)前記(a)及び(b)の架橋反応を触媒し得る、縮合触媒;
(d)カーボンブラックを含む、それ自体が蛍光を発しない顔料;及び
(e)UVトレーサーを含む、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項6】
(a)1分子中に2個以上のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン;
(b)1分子中に3個以上のケイ素原子に結合した水素原子を有するハイドロジェンポリオルガノシロキサンである架橋剤;
(c)前記(a)及び(b)の架橋反応を触媒し得る、白金化合物である硬化触媒;
(d)カーボンブラックを含む、それ自体が蛍光を発しない顔料;及び
(e)UVトレーサーを含む、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項記載の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を提供する工程;
該組成物との色差(△E)が20以下である基材を提供する工程;
該基材に該組成物を適用する工程;及び
該基材に適用された該組成物に紫外線を照射する工程
を含む、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の基材への適用状態を確認する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に適用された状態の確認が容易な硬化性ポリオルガノシロキサン組成物に関する。また、該組成物の基材への適用状態の確認方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
室温で硬化してゴム状弾性体を生じる室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は従来より種々知られている。この組成物には、LCD(Liquid Crystal Display)等の電気・電子機器のコーティング材やポッティング材等の用途がある。この用途には、空気中の水分と接触することにより硬化反応を生起するタイプのもので、硬化時に金属類に対する腐食の小さいアルコールやアセトン等を放出するものが用いられる。そのような組成物は作業性が良好であるうえ、電極や配線の腐食のおそれが少なく、また、接着性等にも優れる。部品によっては遮光性、隠蔽性が要求されることがあるが、その場合でも顔料を添加することにより対応することができるため、一般に用いられている(例えば、特開2007-169356号公報)。また、ポリオルガノシロキサン組成物を用いた接着剤は、操作性、深部硬化性の観点から、組成物を主剤と硬化剤の2つに分けて、使用時に混合する2液型の形態もとられる。
【0003】
基材の接着においては、接着の強度、信頼性を確保するために、接着剤としてのポリオルガノシロキサン組成物が基材に対して均一に接着力を発揮する必要がある。主剤と硬化剤とからなる2液型の場合、均一な接着力を発揮するための前提として、基材に適用する前に主剤と硬化剤とが均一に混合されている必要があるため、混合状態の確認手段が検討されている(特開2019-143074号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-169356号公報
【文献】特開2019-143074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基材への適用状態が容易に確認できることは、接着力の不足等により不良品が発生するリスクを回避することに繋がり、電子部品等の部材の製造において有利に働く要素である。
特開2007-169356号公報のように、接着剤に顔料等を配合して着色することがあるが、一方で基材の種類はその色も含めて様々である。基材の種類によっては、シリコーン接着剤と基材が同系色になることもある。基材と接着剤が同系色の場合、可視光による判別では適用の状態が確認しづらいことがある。適用が均一に行われていることが確認できないと、基材との接着が不完全になる恐れがあり、製品の信頼性にも悪影響を与える。従来の接着剤では、基材と同色の接着剤を適用した場合、きちんと適用されているか確認が難しかった。時間をかけて目視で確認するか、もしくは違う色の接着剤を使うしかなかった。
特開2019-143074号公報の方法でも、混合状態を確認することはできても、均一に適用されているかどうかは判断されておらず、適用の状態を正しく評価することは困難であった。
【0006】
[発明の目的]
本発明は、着色されたシリコーン接着剤であって、同系色の基材に対して均一に適用されたかの確認が容易である接着剤、及び同接着剤を用いた適用状態の確認方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、それ自体が蛍光を発しない顔料とUVトレーサーを併用することで、同系色の基材に適用されたときであってもUVライト下で簡単に接着剤である組成物の適用状態が確認できることを見出した。すなわち本発明の主要な一態様は、(a)1分子中に硬化性官能基を2つ以上有するポリオルガノシロキサン;(b)前記(a)の硬化性官能基との反応性を有する架橋基を1分子中に2つ以上有する架橋剤;(c)前記(a)及び(b)の架橋反応を触媒し得る、硬化触媒;(d)それ自体が蛍光を発しない顔料;及び(e)UVトレーサーを含む、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物である。また本発明の別の一態様は、前記組成物を提供する工程;該組成物との色差(△E)が20以下である基材を提供する工程;該基材に該組成物を適用する工程;及び該基材に適用された該組成物に紫外線を照射する工程を含む、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の基材への適用状態を確認する方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、同系色の基材に対して均一に適用されたかの確認が容易である接着剤が提供される。また、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を接着剤とし、接着剤と同系色の基材への適用状態を確認する方法が提供される。
【0009】
[発明の詳細な説明]
以下、本発明の組成物について、項目毎に詳細に説明する。なお、本明細書において、数値範囲を示す波線「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0010】
本明細書において用いられる場合、「有機基」とは、炭素を含有する基を意味する。有機基の価数はnを任意の自然数として「n価の」と記載することにより示される。したがって、例えば「1価の有機基」とは、結合手を1つのみ有する、炭素を含有する基を意味する。結合手は、炭素以外の元素が有していてもよい。価数を特に明示しない場合でも、当業者であれば文脈から適した価数を把握することができる。
【0011】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」とは、炭素及び水素を含む基であって、分子から1個の水素原子を脱離させた基を意味する。かかる炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、1つ又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい、炭素原子数1~20の炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよく、飽和又は不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つ又はそれ以上の環構造を含んでいてもよい。尚、かかる炭化水素基は、その末端又は分子鎖中に、1つ又はそれ以上の窒素原子(N)、酸素原子(O)、硫黄原子(S)、ケイ素原子(Si)、アミド結合、スルホニル結合、シロキサン結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基等の、ヘテロ原子又はヘテロ原子を含む構造を有していてもよい。
【0012】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子;1個又はそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、5~10員の不飽和ヘテロシクリル基、C6-10アリール基及び5~10員のヘテロアリール基から選択される基が挙げられる。
【0013】
本明細書において、アルキル基及びフェニル基は、特記しない限り、非置換であっても、置換されていてもよい。かかる基の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の基が挙げられる。
【0014】
[硬化性ポリオルガノシロキサン組成物]
・成分(a)
本発明の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、成分(a)として、分子内に硬化性官能基を2つ以上有するポリオルガノシロキサンを少なくとも1種含む。成分(a)は、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物のベースポリマーとして機能する。ここで、「硬化性官能基」とは、硬化反応を起こすことが可能な官能基を指す。硬化反応の機構は特に制限されず、樹脂の硬化に一般的に用いられる方法を採用することができる。硬化反応としては特に、縮合反応又は付加反応が採用される。1分子中に含まれる各々の硬化性官能基は、同じ官能基であることが望ましいが、同種の硬化反応を起こす官能基であれば、異なる種類の官能基であっても同一分子内に混在することができる。硬化性官能基は、好ましくは成分(a)の分子主鎖の両末端に少なくとも1つずつ存在する。またここで、本明細書において、成分(a)の分子主鎖とは、成分(a)の分子中で相対的に最も長い結合鎖を表す。
【0015】
成分(a)の分子骨格は、シロキサン結合が主骨格であるものであれば、特に制限されない。シロキサン骨格が、2価の有機基により中断されていてもよい。ここで、シロキサン化合物の構造を説明するにおいては、シロキサン化合物の構造単位を以下のような略号によって記載することがある。以下、これらの構造単位をそれぞれ「M単位」「D単位」等ということがある。
M:-Si(CH1/2
:-SiH(CH1/2
Vi:-Si(CH=CH)(CH1/2
D:Si(CH2/2
:SiH(CH)O2/2
T:Si(CH)O3/2
Q:SiO4/2
以下、本明細書において、シロキサン化合物は、上記の構造単位を組み合わせて構築されるものであるが、上記構造単位のメチル基がフッ素のようなハロゲン、フェニル基のような炭化水素基等、他の基に置き換わったものを少なくとも部分的に含んでいてもよい。また、例えばD 2020と記した場合には、D単位が20個続いた後D単位が20個続くことを意図するものではなく、各々の単位は任意に配列していてもよいことが理解される。シロキサン化合物は、T単位又はQ単位により、3次元的に様々な構造を取ることができる。よって成分(a)は、直鎖状、分岐鎖状、環状、これらの構造の組合せ等任意の分子骨格をとることができる。成分(a)は、好ましくは、直鎖状の分子骨格を有する。
【0016】
本発明の一態様において、成分(a)としては、下記式(1):
(R3-pSi-O-(Si(R)(R2-rO)-SiR(R3-q・・・(1)
(式中、
は、それぞれ独立して、硬化性官能基であり、
Rは、それぞれ独立して、1価の有機基であり、
p及びqは、各々独立して、0、1又は2であり、
rは、それぞれ独立して、0、1又は2であり、
nは、23℃における粘度を0.01~50Pa・sとする数である)
で表される直鎖状ポリオルガノシロキサンが例示される。Rとしては、炭化水素基、特にアルキル基、アルケニル基、アリール基を有するものが好ましい。屈折率等の物性を制御する観点から、Rの少なくとも一部がフェニル基等のアリール基、ビニル基等のアルケニル基であってもよい。Rが全てメチルであるようなポリオルガノシロキサンが、入手の容易性から特に好ましく用いられる。硬化性官能基の位置に関しては、上記式(1)においてrが2であるポリオルガノシロキサン、すなわち、分子の両末端のみに硬化性官能基が少なくとも1つずつ存在する直鎖状ポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0017】
(縮合反応を起こす硬化性官能基)
成分(a)は、シロキサン樹脂の硬化反応に利用可能な官能基を1分子中に2つ以上有するものである。硬化反応のタイプにより分類すると、一つの態様において、上記成分(a)は、水酸基及び加水分解可能な基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基と結合したSi原子を2つ以上有するポリオルガノシロキサンであることができる。この場合、水酸基及び/又は加水分解可能な基が、前記式(1)の基Rに相当する硬化性官能基となる。
【0018】
「加水分解可能な基」とは、本明細書において用いられる場合、加水分解反応を受け得る基を意味し、すなわち、加水分解反応により、化合物の主骨格から脱離し得る基を意味する。加水分解可能な基の例としては、-OR’、-OCOR’、-O-N=CR’、-NR’、-NHR’、ハロゲン原子(これら式中、R’は、置換又は非置換の炭素原子数1~4のアルキル基を示す)等が挙げられ、好ましくは-OR’(即ち、アルコキシ基)である。R’の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基等の非置換アルキル基;クロロメチル基等の置換アルキル基が含まれる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。水酸基は、特に限定されないが、加水分解可能な基が加水分解して生じたものであってよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、これらの中では、塩素原子が好ましい。
【0019】
縮合反応を起こす硬化性官能基を有するポリオルガノシロキサンとしては、前記式(1)において、p及びqが0又は1であり、rが2であること、すなわち、分子末端のみに2つ又は3つずつ、計4つ又は6つの加水分解可能な基、特にアルコキシ基を有するものが好ましい。
縮合反応を起こすタイプの成分(a)として、以上の条件を満たす好ましい例としては、両末端がメチルジメトキシシリル基、又はトリメトキシシリル基で封鎖された直鎖状のポリオルガノシロキサン等が挙げられる。このような成分(a)として利用可能なポリオルガノシロキサンは、市販されているものを利用することができる。また、公知の反応により硬化性官能基を導入したポリオルガノシロキサンを用いてもよい。
【0020】
(付加反応を起こす硬化性官能基)
別の一態様では、上記成分(a)は、付加反応によって硬化する(メタ)アクリル基又はビニル基のような、脂肪族不飽和結合、特にアルケニル基を有する基と結合したSi原子を2つ以上有する化合物であることもできる。付加反応を起こす硬化性官能基としては、ビニル基であることがより好ましい。この場合、脂肪族不飽和基が、前記式(1)の基Rに相当する硬化性官能基となる。
【0021】
付加反応を起こす硬化性官能基を有するポリオルガノシロキサンとしては、前記式(1)において、p及びqが2であり、rが2であること、すなわち、分子末端のみに1つずつ、計2つの付加反応可能な基、特にビニル基を有するものが好ましい。
縮合反応を起こすタイプの成分(a)として、以上の条件を満たす好ましい例としては、両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖された直鎖状のポリオルガノシロキサン等が挙げられる。このような成分(a)として利用可能なポリオルガノシロキサンは、市販されているものを利用することができる。また、公知の反応により硬化性官能基を導入したポリオルガノシロキサンを用いてもよい。
【0022】
成分(a)の配合量は、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物が取り扱い可能な粘度の範囲になる量であれば、特に制限されない。成分(a)の量を基準として、以下個別に示す好ましい範囲内で、他の成分の配合量を適宜設定することができる。
【0023】
・成分(b)
本発明の硬化性組成物における架橋剤は、前記成分(a)が有する硬化性官能基との反応性を有する架橋基を1分子中に2つ以上有するものである(以下、単に「成分(b)」ということがある)。架橋剤を含むことにより、硬化性組成物から得られる硬化物の物性、例えば引張強度や弾性率が良好になる。成分(b)が有する架橋基としては、一般的にシリコーンの硬化反応に利用される反応に活性な官能基を用いることができ、前記成分(a)が有する反応性官能基に応じて決定される。例えば、前記成分(a)が有する反応性官能基が水酸基やアルコキシ基等縮合反応をすることができる官能基であるときは、架橋基としてケイ素に直接結合した水酸基又はアルコキシ基のような加水分解性基を採用することができる。前記成分(a)が有する反応性官能基がビニル基等付加反応をすることができる官能基であるときは、架橋基としてケイ素に直接結合した水素原子、即ちSi-H基を採用することができる。成分(b)が1分子あたりに有する架橋基の数は、成分(a)間に架橋構造を形成するため2つ以上であることが必要であるが、架橋反応により網目状構造をもたらすため、3個以上であることが好ましい。各々の架橋基は、同一のケイ素原子に結合していてもよいし、異なるケイ素原子に結合していてもよい。
【0024】
成分(b)は、1つだけケイ素を有する化合物、即ちシランの誘導体であってもよく、2つ以上のケイ素を有する化合物であってもよい。2つ以上のケイ素を有する化合物である場合、成分(b)は、各ケイ素原子が酸素で架橋されるシロキサン結合により連結した構造を有することが好ましい。2つ以上のケイ素原子を含む成分(b)の分子骨格は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。
【0025】
<<縮合型反応を起こす架橋剤>>
前記成分(a)が縮合型の反応を起こすポリオルガノシロキサンであるとき、成分(b)は、Si原子と結合した水酸基又は加水分解性基を少なくとも2個有する化合物(ただし、前記成分(a)に該当するものを除く)又はその部分加水分解縮合物である。加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基のようなアルコキシ基;2-メトキシエトキシ基、2-エトキシエトキシ基のような置換アルコキシ基;イソプロペノキシ基のようなエノキシ基、メチルエチルケトオキシム基のようなケトキシマト基、アセトキシ基等が例示され、互いに同一であっても異なっていてもよい。各々の加水分解性基は、同一のケイ素原子に結合していてもよいし、異なるケイ素原子に結合していてもよい。例えば、Si原子と結合した水酸基又は加水分解性基が、シロキサン結合で連結された構造を有する化合物を架橋剤として用いることもできる。加水分解性基以外の、ケイ素原子に結合する基は、各々独立して1価の有機基であることができる。1価の有機基は、対応するケイ素化合物を入手しやすいことから、炭化水素基が好ましく、特にメチル基、ビニル基、フェニル基であることが好ましい。
【0026】
より具体的な成分(b)としては例えば、式(2):
Si(OR4-a (2)
(式中、Rは、それぞれ独立して、置換又は非置換の1価の炭化水素基であり、Rは、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり、aは、0、1又は2である)
で表される有機ケイ素化合物又はその部分加水分解縮合物を挙げることができる。Rは、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。1価の有機基は、1価の炭素を含有する基を意味する。かかる1価の有機基としては、特に限定されないが、1価の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基は上記と同意義である。
【0027】
は、それぞれ独立して、炭素原子数1~12の置換又は非置換の1価の炭化水素基であることが好ましい。Rは、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基等のアルキニル基;及び、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子で置換した基(例えば、クロロメチル基、ブロモエチル基、クロロプロピル基、トリフルオロプロピル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基)等を挙げることができる。入手のしやすさと、優れた架橋反応速度が得られることから、Rとしては、メチル基又はビニル基が好ましい。
【0028】
は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基としては、特に限定されないが、1価の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基は上記と同意義である。Rとしては、CH-、C-、C-、CFCH-、CHCO-、CH=C(CH)-、CHCHC(CH)=N-、(CHN-、(CN-、CH=C(OC)-、(CHC=C(OC17)-、又は
【化1】

であることが好ましく、より好ましくは、CH-又はC-である。
【0029】
aは、1又は2であることが好ましい。
【0030】
成分(b)が有する架橋基は、上記式のように同じケイ素原子に結合していてもよいが、異なるケイ素原子に結合していてもよい。例えば、ケイ素に結合したOR基からなる構造が2つ、2価の有機基で連結されたような構造の化合物もまた、成分(b)として利用することができる。2価の有機基としては、シロキサン結合からなる2価の基の他、2価の炭化水素基であってもよい。2価の炭化水素基としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、ヘキサメチレン基等のアルキレン基;シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等のアリーレン基;これらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子等で置換した基;及びこれらの置換又は非置換のアルキレン基、アリーレン基の組合せが例示される。この中で、2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキサメチレン基、シクロヘキシレン基及びフェニレン基が好ましく、特にエチレン基、プロピレン基、ブチレン基及びフェニレン基が好ましい。
成分(b)としては、基Rを2つ以上有する環状のシロキサンであることもできる。この場合において、基Rは、シロキサン環を形成するケイ素原子に直接結合していてもよいし、していなくてもよい。環状のシロキサンは、環員数が6~10であることが好ましく、8であることがより好ましい。すなわち、Si-Oからなる単位が3~5つ、特に4つ含まれる環を形成していることが好ましい。
【0031】
好ましい態様において、成分(b)は、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン及び3-クロロプロピルトリメトキシシラン並びにそれらの部分加水分解縮合物のようなアルコキシ基含有化合物;テトラキス(2-エトキシエトキシ)シラン、メチルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニル(2-エトキシエトキシ)シラン及びフェニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン並びにそれらの部分加水分解縮合物のような置換アルコキシ基含有化合物;メチルトリプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、フェニルトリイソプロペノキシシラン、ジメチルジイソプロペノキシシラン及びメチルビニルジイソプロペノキシシラン並びにそれらの部分加水分解縮合物のようなエノキシ基含有化合物;メチルトリアセトキシシラン及びそれらの部分加水分解縮合物のようなアシルオキシ基含有化合物等が例示される。
【0032】
成分(b)としては、架橋性の点で、他の反応性官能基を有していないことが好ましいが、架橋基以外に反応性官能基を有していてもよい。そのような架橋剤は、架橋反応(縮合反応)に寄与するだけではなく、接着付与剤としても機能することができる。ここで、他の反応性官能基としては、第1級アミノ基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基、イソシアナト基等を挙げることができる。
【0033】
そのような、成分(a)との架橋基以外の反応性官能基を有する架橋剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、3-アミノプロピルトリアセトアミドシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-メチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、 N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ジメチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランのような置換又は非置換のアミノ基含有シラン;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランのようなエポキシ基含有シラン;3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルメチルジメトキシシランのようなイソシアナト基含有シラン;トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のトリス(3-トリアルコキシシリルプロピル)イソシアヌレートのようなイソシアヌレート化合物;シラトランの酸素が1つ炭素で置き換えられた、カルバシラトラン骨格を有するシラン化合物;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランのような(メタ)アクリロキシ基含有シラン;3-メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなメルカプト基含有シラン;及び第1級アミノ基含有シランとエポキシ基含有シランの混合物あるいは反応物が例示される。
【0034】
<<付加反応を起こす架橋剤>>
成分(a)がビニル基等の不飽和基を硬化性官能基として有しているときは、成分(b)の架橋基としては、Si-H結合が挙げられる。そのような架橋基を有する架橋剤としては、水素基を含有するシロキサンである、ハイドロジェンポリオルガノシロキサンが用いられる。ハイドロジェンポリオルガノシロキサンは、Si-H結合を有するシロキサン化合物であり、架橋剤となる成分である。ハイドロジェンポリオルガノシロキサンは、代表的には、下記式(3):
(R(RSiO(4-x-y)/2 (3)
(式中、
は、水素原子であり、
は、C1-6アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、好ましくはメチル)又はフェニル基であり;
xは、1又は2であり;
yは、0~2の整数であり、ただし、x+yは1~3である)
で示される単位を分子中に2個以上有する。
【0035】
ハイドロジェンポリオルガノシロキサンにおけるシロキサン骨格は、環状、分岐状、直鎖状のものが挙げられるが、好ましくは、環状又は直鎖状の骨格であり、より好ましくは、直鎖状の骨格である。ハイドロジェンポリオルガノシロキサンの主鎖は、直鎖状の骨格であることが好ましいが、置換基として分岐した構造を有するような骨格であってもよい。また、1分子に含まれるケイ素原子に結合した水素基(すなわち、Si-H結合と等価である)の数は少なくとも3個以上であることが必要であるが、1分子当たりの平均で5個以上であることが好ましく、8個以上であることがより好ましい。ハイドロジェンポリオルガノシロキサンにおけるその他の条件、水素基以外の有機基、結合位置、重合度、構造等については特に限定されないが、直鎖状の構造である場合は重合度が10~100、特に15~70の範囲であると、得られる組成物の取扱い性がより向上する傾向にあることから好ましい。用いることができるハイドロジェンポリオルガノシロキサンの具体例は、Si-H結合を有する単位(M又はD単位)を8個以上含み、重合度が15~70の範囲である、直鎖状の骨格を有するハイドロジェンポリオルガノシロキサンである。
【0036】
ハイドロジェンポリオルガノシロキサンの配合量は、前記成分(a)の硬化性官能基、特にビニル基のような不飽和基1個に対し、ケイ素原子に直接結合した水素原子が0.7~5.0個となる量であることが好ましい。0.7個より少ないと、硬化が十分な速度で進行しないことがあり、5.0個を超えると、硬化物が固くなりすぎ、また硬化後の物性にも悪影響を及ぼすことがある。硬化性官能基がビニル基である場合、分子内にビニル基を一つ有するポリオルガノシロキサンの量は、当該ハイドロジェンポリオルガノシロキサンの有するSi-H結合と不飽和結合、特にビニル基の物質量の比(H/Vi比)で調整することもできる。H/Vi比は、0.7~2.0の範囲であることが好ましく、0.8~1.5の範囲であることがより好ましい。H/Vi比を0.7以上とすることで、十分な速度での硬化を達成することができ、また過剰なブリーディングを抑制することもできる。また、H/Vi比を2.0以下とすることで、組成物の硬化を十分な量で達成し、硬度を適度に保つことができる。
【0037】
一の態様において、架橋剤(b)の分子量は、1,000以下であり、好ましくは600以下、より好ましくは250以下である。架橋剤の分子量の下限値は、90以上であってもよく、120以上であってもよい。
【0038】
成分(b)は、成分(a)の反応性官能基と対応している架橋基を有するものである限り1種のみを用いてもよいし、同種の反応を起こすことが可能なものであれば、2種以上を同時に用いてもよい。
【0039】
架橋剤(b)は、硬化性組成物中、成分(a)100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上含み得、具体的には0.3質量部以上含み得、30質量部以下含み得、具体的には20質量部以下、より具体的には10質量部以下含み得る。
【0040】
成分(a)に対する成分(b)の合計含有量は、架橋性の観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.3質量%以上であり、また、30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0041】
成分(b)は、硬化性組成物中、成分(a)の反応性官能基1モルに対して、例えば、架橋基を1モル以上含むことができ、具体的には、2モル以上含むことができる。成分(b)は、成分(a)の反応性官能基1モルに対して、例えば、架橋基を30モル以下含むことができ、具体的には20モル以下含むことができ、より具体的には10モル以下含むことができる。
【0042】
成分(b)は、成分(a)の反応性官能基1モルに対して、架橋基を、例えば1~30モルの範囲で含むことができ、具体的には、2~20モルの範囲含むことができる。
【0043】
・成分(c)
本発明の硬化性組成物における硬化触媒は、前記成分(a)と成分(b)との架橋反応を触媒しうる化合物である(以下、単に「成分(c)」ということがある)。前記成分(a)と成分(b)との架橋反応が縮合反応である場合は縮合触媒として知られているものを、前記成分(a)と成分(b)との架橋反応が付加反応である場合は付加硬化触媒を、それぞれ用いることができる。
【0044】
<<縮合触媒>>
成分(c)としての縮合触媒は、上記成分(a)と成分(b)との加水分解縮合を促進する成分である。縮合触媒としては、金属系触媒、有機酸系触媒、無機酸系触媒、塩基系触媒等を用いることができる。組成物の硬化速度の観点から、縮合触媒としては金属系触媒であることが好ましい。
【0045】
上記金属系触媒に含まれる金属原子としては、例えば、チタン、ジルコニウム、スズ等を挙げることができる。特に、有機スズ化合物又はアルコキシチタン類であることが好ましい。金属系触媒の一態様としては、配位子としてアルコキシド、好ましくは炭素原子数1~4、更に好ましくは炭素原子数1~3のアルコキシドを有する化合物を用いることができる。このような触媒を用いると、硬化性組成物に溶解又は分散しやすく、均一な縮合反応の促進に寄与し得る。
【0046】
好ましい金属系触媒としては、鉄オクトエート、マンガンオクトエート、亜鉛オクトエート、スズナフテート、スズカプリレート、スズオレートのようなカルボン酸金属塩;ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオレート、ジフェニルスズジアセテート、酸化ジブチルスズ、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルビス(トリエトキシシロキシ)スズ、ジオクチルスズジラウレート、ジメチルスズジネオデカノエートのような有機スズ化合物;テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラn-ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、1,3-プロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)のような有機チタン類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート、トリエトキシアルミニウム等の有機アルミニウム;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、テトラn-ブトキシジルコニウム、テトライソブトキシジルコニウム、トリブトキシジルコニウムアセチルアセトネート、トリブトキシジルコニウムステアレート等の有機ジルコニウム化合物が挙げられる。
【0047】
上記有機酸系触媒としては、例えば、カルボン酸、スルホン酸、リン酸を有する化合物を挙げることができ、具体的には、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トルエンゼンスルホン酸、アルキルリン酸等を挙げることができる。また、無機酸系触媒としては、例えば、塩酸、硫酸等を挙げることができる。
【0048】
上記塩基系触媒としては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン等のアミン化合物、ジメチルヒドロキシアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン、テトラメチルグアニジン、グアニジル基含有シランもしくはシロキサン等のグアニジル化合物が例示される。
【0049】
上記縮合触媒は、本発明の硬化性組成物中、成分(a)100質量部に対して、0.01~10.0質量部含まれることが好ましく、0.03~5.0質量部含まれることがより好ましい。
【0050】
上記縮合触媒は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を同時に用いてもよい。
【0051】
<<付加硬化型触媒>>
前記成分(a)及び(b)が付加反応により架橋反応を起こす組合せである場合には、硬化触媒として付加硬化型の触媒が用いられる。代表的な例として、白金触媒が挙げられる。白金触媒は、前記成分()の硬化性官能基と前記成分(b)の水素基を反応させ、硬化物を得るための硬化触媒である。この白金化合物としては、塩化白金酸、白金オレフィン錯体、白金ビニルシロキサン錯体、白金リン錯体、白金アルコール錯体、白金黒等が例示される。その配合量は、前記成分(a)に対し、白金元素として0.1~1000ppmとなる量である。0.1ppmより少ないと十分に硬化せず、また1000ppmを超えても特に硬化速度の向上は期待できない。また、用途によってはより長いポットライフを得るために、反応抑制剤の添加により、触媒の活性を抑制することができる。公知の白金族金属用の反応抑制剤として、2-メチル-3-ブチン-2-オール、1-エチニル-2-シクロヘキサノール等のアセチレンアルコール、マレイン酸ジアリルが挙げられる。
【0052】
・成分(d)
本発明の硬化性組成物には、着色剤としての顔料が含まれる(以下、単に「成分(d)」ということがある)。顔料は、本発明の硬化性組成物に含まれる他の成分と反応性を有さない、有色の無機物又は有機物で、一般に顔料として扱われているものであれば、公知のものを用いることができる。ここで「有色」とは、少なくとも一部の可視光線の吸収又は散乱が起こること、すなわち透明でないことを意味する。顔料は天然由来のものであってもよく、人工的に合成又は調製されたものであってもよい。ただし、顔料自体が蛍光を発しないものである。
【0053】
顔料の具体的な例としては、カーボンブラック(黒色)、酸化チタン、亜鉛華、鉛白、硫酸バリウム(白色)、鉛丹、酸化鉄(赤色)、黄鉛、亜鉛黄(黄色)、プルシアンブルー(青色)等が挙げられる。これらの顔料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いることもできる。顔料の種類は組成物が適用される基材とも関係するが、好ましくは、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄及びこれらの混合物からなる群より選択される。
【0054】
顔料は、組成物中に均一に混合することができる量であれば、含有量に特に制限はなく、顔料の濃度により組成物の色、特に明度を調節することもできる。本発明の硬化性組成物中、成分(a)100質量部に対して、0.01~10質量部含まれることが好ましく、0.1~5質量部含まれることがより好ましい。
【0055】
・成分(e)
本発明の硬化性組成物には、UVトレーサーが含まれる(以下、単に「成分(e)ということがある」)。UVトレーサーは、紫外線を吸収して蛍光を発する化合物である。UVトレーサーとしては、440nmより短い波長の光を吸収し、蛍光、特に青~紫色の蛍光を発する無色の化合物が好ましい。UVトレーサーとしては、例えば、2,5-チオフェンジイルビ(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾオキサゾール)のようなベンゾオキサゾール誘導体、スチルベン誘導体、イミダゾール誘導体、クマリン誘導体、ローダミンのようなフルオレセイン誘導体等の一般的に知られている化合物を使用し得る。具体的な市販品としては、BASF社製のTinopal OB等が挙げられる。
【0056】
成分(e)の添加量は、本発明の硬化性組成物中、成分(a)100質量部に対して、0.001~1質量部含まれることが好ましく、0.005~0.1質量部含まれることがより好ましい。添加量が成分(a)100質量部に対して0.001質量部より少なすぎると、紫外線を照射した場合の蛍光が十分でなく、適用状態の確認が困難となる場合がある。
【0057】
[硬化性ポリオルガノシロキサン組成物]
本発明の硬化性ポリオルガノシロキサンは、上記成分(a)ないし(e)を含有するものである。特に、硬化方法による分類により、湿気硬化型と付加硬化型とに分類することができる。
【0058】
(湿気硬化型のポリオルガノシロキサン組成物)
湿気(水分)により硬化するタイプのポリオルガノシロキサン組成物は、上記成分(a)として縮合反応を起こす硬化性官能基を有するポリオルガノシロキサンを、上記成分(b)としてSi原子と結合した水酸基又は加水分解性基を少なくとも2個有する化合物を、上記成分(c)として縮合触媒を、それぞれ有する組成物である。
特に、前記(a)が、1分子中に2個以上の水酸基及び/又はアルコキシ基を有するポリオルガノシロキサンであり、前記(b)が、式R Si(OR4-a(ここで、Rは、それぞれ独立して1価の有機基であり、Rは、それぞれ独立して水素原子又は1価の有機基であり、aは、0、1又は2である)で表されるシラン又はその加水分解縮合物であり、前記(c)が、縮合触媒である、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物が例として挙げられる。
【0059】
(付加硬化型のポリオルガノシロキサン組成物)
不飽和結合への付加反応により硬化するタイプのポリオルガノシロキサン組成物は、上記成分(a)として付加反応を起こす硬化性官能基を有するポリオルガノシロキサンを、上記成分(b)としてポリオルガノハイドロジェンシロキサンを、上記成分(c)として白金触媒を、それぞれ有する組成物である。
特に、前記(a)が、1分子中に2個以上のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンであり、前記(b)が、1分子中に3個以上のケイ素原子に結合した水素原子を有するハイドロジェンポリオルガノシロキサンであり、前記(c)が、白金化合物である、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物が例として挙げられる。
【0060】
本発明のポリオルガノシロキサン組成物は、各成分が均一に混合されており、基材への適用が可能な程度の流動性を有している限り、その性状に特段の制限はない。ポリオルガノシロキサン組成物の粘度は、主に成分(a)の粘度によって制御することができ、0.1~100Pa・sの範囲であることが、操作性の観点から好ましい。また、ポリオルガノシロキサン組成物は、各成分が全て混合された状態である1液型の組成物であることが好ましい。1液型の組成物においては、保存状態での硬化を防止するために、乾燥状態での保存をすることや反応抑制剤を添加することができ、その手法は当業者に公知である。
【0061】
本発明の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、その目的・硬化を損なうものでない限り、公知のその他の成分を配合することができる。添加剤として、難燃剤、充填材、接着付与剤、耐熱付与剤、希釈剤、有機溶剤等を適宜配合することができる。また、前記成分(a)に該当しないシロキサン樹脂を配合することもできる。そのような樹脂として、硬化性官能基を1つだけ有するポリオルガノシロキサン、ジメチルシロキサンのような硬化性官能基を有さないポリオルガノシロキサン等が挙げられる。これら樹脂のうち反応性を有さないような樹脂は、希釈剤として用いることができる。
【0062】
<充填剤>
硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、充填剤をさらに含んでもよい。充填剤としては、煙霧質シリカ、焼成シリカ、シリカエアロゲル、沈澱シリカ、珪藻土、粉砕シリカ、溶融シリカ、石英粉末、煙霧質酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム等の酸化物;これらの表面をトリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の疎水化剤で処理したもの;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛等の炭酸塩;アルミノケイ酸、ケイ酸カルシウム等のケイ酸塩;タルク;グラスウール、マイカ微粉末等の複合酸化物;カーボンブラック、銅粉、ニッケル粉等の導電性充填剤;ポリメチルシルセスキオキサン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等の合成樹脂粉末;アスベスト、ガラス繊維、有機繊維等の繊維質充填剤が例示される。これら充填剤は、塗布作業性と、硬化して得られるゴム状弾性体に必要な物性に応じて選択される。
【0063】
充填剤が粒子状の充填剤である場合、その平均粒子径は、分散性、硬化性組成物の流動性及び硬化物の高い機械的強度の観点から、100μm以下であることが好ましく、より好ましくは50μmであり、特に好ましくは10μm以下である。平均粒子径の測定値は、レーザー回折・散乱法により測定したメジアン径(d50)である。
【0064】
充填剤は、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物中、成分(a)100質量部に対して、例えば、200質量部以下含むことができ、具体的には、1~100質量部含むことができ、より具体的には、1~50質量部含むことができる。
【0065】
<接着付与剤>
硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、接着付与剤をさらに含んでもよい。接着付与剤は、組成物の硬化物の、ガラス、金属、プラスチック等の基材への密着性を向上させる成分である。前述の架橋剤における加水分解可能な基以外の官能基を有する化合物を、接着付与剤として用いることもできる。具体的には、アミノ基含有シラン、イソシアヌレート、カルバシラトラン化合物が挙げられる。さらに具体的な例として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0066】
接着付与剤は、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物中、成分(a)100質量部に対して、例えば、10質量部以下含むことができ、具体的には、0.01~10質量部含むことができ、より具体的には、0.1~5質量部含むことができる。
【0067】
<その他の樹脂>
硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、前記成分(a)及び(b)に該当しないシロキサン樹脂をさらに含んでもよい。そのような樹脂は、粘度を調整するための希釈剤としても用いることができる。そのようなシロキサン樹脂としては、下記式(4):
(R3-pSi-O-(SiRO)-SiR・・・(4)
(式中、R、R、p、nは、式(1)において定義したとおりである)
で示されるような、1つだけ硬化性官能基を有するシロキサンや、式(5):
Si-O-(SiRO)-SiR・・・(5)
(式中、R、nは、式(1)において定義したとおりである)
で示される、硬化性官能基を有さないシロキサンを用いることができる。このようなシロキサン樹脂を用いることで、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を硬化させたときの硬度を制御することや、組成物の粘度を制御することができ、取り扱い性や要求される物性に対して広く対応することができる。
【0068】
このような樹脂は、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物中、成分(a)100質量部に対して、例えば、50質量部以下含むことができ、具体的には、0.1~50質量部含むことができ、より具体的には、1~30質量部含むことができる。
【0069】
<溶剤>
硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、溶剤を含んでいてもよい。この場合、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、その用途、目的に応じて適当な溶剤に所望の濃度に溶解して使用し得る。上記溶剤の濃度は、例えば、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物100質量部に対して、80質量部以下であってもよく、50質量部以下であってもよく、30質量部以下であってもよく、20質量部以下であってもよい。硬化性組成物の粘度を調整する観点からは、溶剤を含むことが好ましい。溶剤を含むことにより、硬化性組成物の取り扱い性が良好になり得る。また、硬化性組成物から形成される硬化物の形状のコントロールが容易になり得、例えば厚みの大きな硬化物の形成が容易になり得る。
【0070】
本発明の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、顔料を有するため有色である。顔料の種類は前述のとおり特に制限されないが、適用される基材と同系色の顔料を含むように設計されていることができる。特に、組成物が適用される基材との色差(ΔE)が小さい顔料が組成物には含まれる。
【0071】
「色差」とは、2つの色の違いを色空間における距離として定量化したものであり、L表色系における色座標の距離により求められる。L表色系における、組成物と基材の色差(△E)は、基材のL表色系の各値をL(b)、a(b)、b(b)とし、組成物のL表色系の各値をL(c)、a(c)、b(c)値とした場合、次式:
△E={(L(b)-L(c))+(a(b)-a(c))+(b(b)-b(c))1/2
により求めることができる。ここで、Lは当該色の明度(0~100)、aは当該色の赤-緑間の位置(-128~+128)、bは当該色の黄色-青間の位置(-128~+128)をパラメーター化したものである。
【0072】
色差の定量方法は、当業者に公知であり、一般に入手可能な分光色差計、測色色差計を用いて定量することができる。
硬化性ポリオルガノシロキサン組成物と基材との色差(ΔE)は、20より大きくてもよいが、本発明の効果がより顕著に表れるため、20以下であることが好ましい。硬化性ポリオルガノシロキサン組成物及び基材の両者とも同じ顔料を用いており、顔料以外の成分が無色透明であり、かつ、顔料の濃度に大きな差がなければ、色差は20以下と推定することができる。あるいは、基材と組成物とで異なる顔料を用いていても、両者を接触させて並べたときに両者の境界を目視で判断することができないか困難である状態であれば、色差は20以下と推定することができる。
【0073】
[基材]
本発明の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物が適用される基材は、その材質に特に制限はない。基材としては、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、黄銅、ステンレス等の金属;エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂等のエンジニアリングプラスチック;ガラス等を使用することができる。また、必要に応じて、空隙の壁面等に対して常法に従ってプライマー処理を施してもよい。ただし、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物と同系色の基材とするために、顔料を混合させることが容易なプラスチック材料であることが好ましい。
【0074】
基材に硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を適用する方法は、当業者に公知の手法であるディップ法、刷毛塗り法、スプレー法、ディスペンス法等を用いることができる。また、組成物の適用厚さは、通常0.01~3mm、好ましくは0.05~2mmである。
【0075】
本発明の一態様は、
(A)前記硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を提供する工程;
(B)該組成物との色差(△E)が20以下である基材を提供する工程;
(C)該基材に該組成物を適用する工程;及び
(D)該基材に適用された該組成物に紫外線を照射する工程
を含む、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の基材への適用状態を確認する方法に関する。紫外線を照射する工程(D)によって、組成物の適用状態を目視により簡便に確認することができる。紫外線を照射する工程は、組成物表面に紫外線照射装置により波長280~440nm、好ましくは300~420nm、特に好ましくは340~400nmの紫外線を照射することからなる。紫外線照射装置は一般に利用可能であり、市販のブラックライトを用いてもよい。紫外線を照射することで組成物表面からの蛍光を観察することにより、基材への適用状態を目視により確認することができる。
【0076】
本発明に係る方法は、少なくとも上記工程(A)~(D)を含む方法であるが、工程(C)又は(D)の後に、組成物を硬化する工程を含んでいてもよい。組成物を硬化する方法は、組成物中の成分(a)及び(b)によって異なる方法が採用される。例えば成分(a)が加水分解可能な基を硬化性官能基として有するものである場合、組成物は空気中の水分によって硬化させることができる。この場合、典型的には室温(23℃)、相対湿度50%の環境下に1時間~72時間置くことにより、空気中の水分が加水分解反応を進行させ、組成物を硬化することができる。成分(a)が不飽和結合を含有する基を硬化性官能基として有するものである場合、組成物は室温~150℃に加熱することによって硬化させることができる。
【0077】
本発明の方法を利用して適用状態を確認した部材は、電気電子部品に有効に利用される。特に、顔料による着色が行われるのが常態である部分の部品として、遮光性、隠蔽性が求められる部品において有効であり、本発明の方法は、それらの製造に有利である。
【実施例
【0078】
本発明の組成物及び方法を、以下の実施例を通じてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0079】
[実施例1]黒色のポリオルガノシロキサン組成物
ベースポリマー(成分(a))としてのメチルジメトキシ末端ポリジメチルシロキサン(粘度20Pas)を100質量部、架橋剤(成分(b))としてのメチルトリメトキシシランを1.1質量部、接着付与剤を兼ねる架橋剤として3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.44質量部及びトリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート0.66質量部、触媒(成分(c))としてジブチルスズジラウレート0.38質量部、顔料(成分(d))としてカーボンブラック0.5質量部、UVトレーサー(成分(e))として2,5-チオフェンジイルビス(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾオキサゾール)を0.013質量部、更に充填材として煙霧質シリカ14質量部及び希釈剤としてジメチルシロキサン(粘度0.1Pas)18質量部を、プラネタリーミキサーを用いて混合し、均一な組成物として黒色のポリオルガノシロキサン組成物を得た。
【0080】
[比較例1]黒色のポリオルガノシロキサン組成物
UVトレーサーとしての2,5-チオフェンジイル ビス(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾオキサゾール)を加えなかったこと以外は実施例1と同様にして、黒色のポリオルガノシロキサン組成物を得た。
【0081】
[実施例2]白色のポリオルガノシロキサン組成物
顔料をカーボンブラックから二酸化チタン1.0質量部に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、白色のポリオルガノシロキサン組成物を得た。
【0082】
[比較例2]白色のポリオルガノシロキサン組成物
UVトレーサーとしての2,5-チオフェンジイル ビス(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾオキサゾール)を加えなかったこと以外は実施例2と同様にして、白色のポリオルガノシロキサン組成物を得た。実施例1、2及び比較例1、2における組成物の組成を表1に纏める。
【0083】
【表1】
【0084】
[実施例3、比較例3]
付加反応により硬化するタイプの組成物として、下記表2に示す配合の組成物を実施例1と同様に混合し、均一な組成物として灰色のポリオルガノシロキサン組成物を得た。比較例3は、UVトレーサーとしての2,5-チオフェンジイル ビス(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾオキサゾール)を加えなかったこと以外は実施例3と同じ配合である。
【0085】
【表2】
【0086】
[適用状態確認試験]
各実施例及び比較例の組成物を適用する基材として、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂(ポリプラスチック社製、黒色)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)樹脂(ポリプラスチック社製、白色)、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂(SABIC社製、灰色)を準備した。コニカミノルタ社製色彩色差計CR-400を用いて測定した各基材の色座標を、以下の表3に示す。
【0087】
【表3】
【0088】
実施例1及び比較例1で得た組成物をそれぞれ、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂(黒色)の基材上に、ステンレスのへらを用いて10mm×25mmの方形になるように適用した。適用した組成物を23℃、相対湿度50%の環境下に3日間置くことで組成物を硬化させた。ここで、基材と同様色彩色差計を用いて組成物の色座標を測定し、基材との色差を算出した。実施例及び比較例1~3の組成物の色座標及び適用基材との色差は、表4に纏めた。次いで、基材に対して室内照明(蛍光灯)及びUV光(波長375nm)を照射した。このとき、硬化物と基材との境界が目視により判断できるかどうかを、容易又は困難で評価した。
実施例2及び比較例2で得た組成物についてもそれぞれ、ポリブチレンテレフタラート(PBT)樹脂(白色)の基材上に適用し、実施例1についてと同様の試験を行った。
実施例3及び比較例3で得た組成物についてもそれぞれ、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂(灰色)の基材上に適用し、100℃、1時間オーブン中で硬化させ、実施例1についてと同様の試験を行った。それぞれの結果を表4に纏める。
【0089】
【表4】
【0090】
表2から明らかなように、本発明の組成物は、同系色の基材に適用した場合であっても、紫外光により容易に適用された箇所と適用状態を確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の組成物は、同系色の基材への適用状態を確認することが容易である、電気電子部品のシール材、コーティング剤として利用することができる。また、本発明の方法は、そのようなシール材又はコーティング剤を用いた電気電子部品の製造方法に組み込むことができ、簡便に利用可能なだけでなく、信頼性の高い部品の製造において有用である。特に、遮光性、隠蔽性が求められる部品において有用である。
【要約】
(a)1分子中に硬化性官能基を2つ以上有するポリオルガノシロキサン;(b)前記(a)の硬化性官能基との反応性を有する架橋基を1分子中に2つ以上有する架橋剤;(c)前記(a)及び(b)の架橋反応を触媒し得る、硬化触媒;(d)それ自体が蛍光を発しない顔料;及び(e)UVトレーサーを含む、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物である。同組成物は、同系色の基材に対して均一に適用されたかの確認が容易な接着剤となる。