(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】座席ユニット用の構造体、座席ユニット及びその取付け方法
(51)【国際特許分類】
B60N 2/005 20060101AFI20220322BHJP
B64D 11/06 20060101ALI20220322BHJP
B60N 2/68 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
B60N2/005
B64D11/06
B60N2/68
(21)【出願番号】P 2017073604
(22)【出願日】2017-04-03
【審査請求日】2020-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000132013
【氏名又は名称】株式会社ジャムコ
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 正路
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 道人
【審査官】田中 佑果
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-524542(JP,A)
【文献】特表2008-521703(JP,A)
【文献】特開2014-162479(JP,A)
【文献】特表2004-537459(JP,A)
【文献】特表2016-529148(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0163917(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
B64D 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部構造体及び前記下部構造体の上方に設置される上部シェルからなる座席ユニット用の構造体であって、
前記座席ユニット用の構造体は、前記座席ユニットの少なくとも一方向において、前記座席ユニットの最外殻を規定しており、
前記下部構造体は、樹脂または複合部材を用いて、背後の乗客の脚または荷物を収容可能である中空のボックス型に一体的に形成された座席土台であって、
前記下部構造体は、前記下部構造体の幅方向にわたって平板状に延在する底面部と、前記底面部の幅方向両端から前記上部シェルに向かって延在する一対の側壁部とを有し、前記底面部と前記側壁部の前後方向の長さは等しく、
前記底面部の後縁と、前記側壁部の後縁と、前記下部構造体の上壁部とにより開口が画成されており、
前記底面部において前記座席ユニットを移動体に接続固定している、座席ユニット用の構造体。
【請求項2】
前記下部構造体はモノコック構造であり、
前記一方向は、前記移動体の横幅方向である請求項1に記載の座席ユニット用の構造体。
【請求項3】
前記下部構造体
と、前記下部構造体の上壁部より上方にある前記上部シェルは一体に形成されている請求項1又は2に記載の座席ユニット用の構造体。
【請求項4】
前記座席ユニット用構造体には、その外周面に緩衝・装飾部材が含まれる請求項1乃至3のいずれか一項に記載の座席ユニット用の構造体。
【請求項5】
座席シートと、
前記座席シートを支持可能な、請求項1に記載の座席ユニット用の構造体からなる座席ユニットであって、
前記座席ユニット用の構造体は、前記座席ユニットの少なくとも一方向において最外殻を規定している座席ユニット。
【請求項6】
請求項1に記載の座席ユニット用の構造体を移動体に接続固定するステップと、
座席ユニットに必要な座席シートを前記座席ユニット用の構造体に設置するステップからなる
座席ユニットの取付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席ユニット用の構造体、座席ユニット及びその取付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の航空機設計においては、航空機構造の軽量化や座席配置の自由度の確保、座席ユニットをはじめとする機内設備の設置の簡便化が求められている。航空機構造の軽量化や座席配置の自由度の向上が達成できれば、その分、航空機が運べる乗客数を増加させることもでき、航空機の潜在的収益性を増大させることができる。
また、機内設備の設置の簡便化が図れれば、航空機製造に要する期間を短縮することができ、併せて製造コストを低減させることができる。
【0003】
特許文献1には、一体型の複合構造フレームと、この複合構造フレームに連結され、各乗客に一つずつ設けられた快適性フレームアセンブリとからなる座席アセンブリが記載されている。一体型の複合構造フレームを用いることにより、乗客席を、少ない数のパーツで、小型かつ軽量に作成することができる。しかも、航空機の座席に求められる安全上の構造的仕様を満たすことができる。
【0004】
この座席アセンブリを航空機に設置する際には、まず、複合構造フレームを航空機の機体に設置し、次に、快適性フレームアセンブリを複合構造フレーム上に配置するという二段階式の設置手順を取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
航空機の機内の座席間の通路幅について、安全上の理由から、法令によって規制がなされている。特許文献1に記載された二段階式設置手順では、複合構造フレームに対して、座席部品の一種であるヘッドレストや肘掛などの快適性フレームアセンブリを順次取り付けて座席ユニットを完成させ、機内に設置している。このため、作業者が航空機内で全ての座席部品を取付けた後に、取付け工事の最終点検者が座席間の通路幅を測定し、法定の通路幅を遵守しているか確認する必要がある。
【0007】
このような座席部品の取り付け方法及び通路幅の確認作業は、複合構造フレームを用いた場合に限らず、金属の柱状フレームを用いて組み立てられた座席ユニットの場合でも同様である。
【0008】
このため、座席部品について、作業者による取付けミスや部品の形状の不揃い等が発生した場合には、法定の通路幅を順守できないことがある。そのような場合には、再度、法定の通路幅を確保するために、座席部品を取り付け直すことになる。また、このような法定上の規制は窓側、機体中央の座席いずれも同じように存在する。この結果、航空機製造に要する期間は、機体に座席を取りつけた後にわかり、計画的な生産をたてられないため、製造コストが上昇する原因となっていた。
【0009】
そこで、本発明は、航空機に座席ユニットを取り付けた際に、座席部品の取り付け直しが発生しない、座席ユニット用の構造体、座席ユニット及びその取付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、代表的な本発明の座席ユニット用の構造体は、下部構造体及び前記下部構造体の上方に設置される上部シェルからなる座席ユニット用の構造体であって、前記座席ユニット用の構造体は、前記座席ユニットの少なくとも一方向において、前記座席ユニットの最外殻を規定しており、前記下部構造体は、樹脂または複合部材を用いて、背後の乗客の脚または荷物を収容可能である中空のボックス型に一体的に形成された座席土台であって、前記下部構造体は、前記下部構造体の幅方向にわたって平板状に延在する底面部と、前記底面部の幅方向両端から前記上部シェルに向かって延在する一対の側壁部とを有し、前記底面部と前記側壁部の前後方向の長さは等しく、前記底面部の後縁と、前記側壁部の後縁と、前記下部構造体の上壁部とにより開口が画成されており、前記底面部において前記座席ユニットを移動体に接続固定している。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、航空機に座席ユニットを取り付けた際に、工場での座席の製造時には寸法が担保されるので座席部品の取り付け直しが発生しない。このため、航空機製造に要する期間を短縮、及び計画通りに進めることができ、併せて製造コストを低減させることができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】第1の実施形態に係る座席ユニットの構造体の前方斜視図。
【
図5】第1の実施形態に係るシェル構造の前方斜視図。
【
図6】第1の実施形態に用いる座席シートの前方斜視図。
【
図7】第1の実施形態に係る座席ユニットの前方斜視図。
【
図8】第1の実施形態に係る座席土台の後方斜視図。
【
図9】第1の実施形態に係る座席土台の底部周辺の拡大図。
【
図10】第1の実施形態に係る座席土台間の間隔を説明するための図。
【
図11】第2の実施形態に係る座席ユニットの構造体の後方斜視図。
【
図12】第3の実施形態に係る装飾が施された座席ユニットの構造体の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、一般的な座席ユニットについて説明する。
図1は、航空機の客室に配設されるビジネスクラスやファーストクラス向けの座席ユニットを前方から見た斜視図である。座席ユニット1は、座席10をシェル20で囲む構造を有しており、この図には、さらに、乗客が使用する装備(読書灯360など)も描かれている。
【0014】
座席10は、下部シート110、上部シート120、ヘッドレスト130、及び、レッグレスト140を備える。下部シート110は着座部とも呼ばれ、上部シート120は背もたれ部とも呼ばれる。座席にはシートベルト150が取り付けられている。
【0015】
シェル20は、座席10の右側の右側シェル210、座席10の背面の背面側シェル220、及び、座席10の左側の左側シェル230を備える。
【0016】
座席ユニット1は、さらに様々な装備を有している。座席10の右側には、右側肘掛け部310が装備されている。座席10の左側には、左側肘掛け部320が装備されている。左側肘掛け部320には、開閉式の収納ボックス330が設けられている。オットマン340は、左側肘掛け部320の前方に配置されている。
【0017】
また、ヘッドレスト130と左側シェル230との間には、電装品のジャック350及び読書灯360が配設されている。
そして、これらの座席ユニットは、金属又は樹脂等からなる基本骨格の周囲に、上述したような様々な座席部品が取り付けられて完成している。
【0018】
航空機の機体には、
図2において断面形状を示すような座席トラックが、航空機の長手方向に沿って機体の床面に差し込まれている。
【0019】
図2に示すように座席トラック280は、航空機の機体の床下の構造材となる床下構造部286、床板を支える平坦部287、及び、座席トラック側の嵌め合い部288を備える。
【0020】
そして、座席ユニットは、基本骨格の脚部が
図3に示されるようなトラックフィッティング部材によって、座席トラックに固定されている。この際、従来は、座席ユニットの基本骨格の前後左右4箇所の脚部の下に、4つのトラックフィッティング部材が配設されており、2列の座席トラックと固定されている。
【0021】
図3はトラックフィッティング部材周辺の拡大図である。取付け具270は、フィッティングブラケットとも呼ばれ、座席トラック280に固定される。フィッティング側の嵌め合い部291が、座席トラック側の嵌め合い部288と固定される。
【0022】
トラックフィッティング部材290は、縦ばね292により下方向にプランジャ293押し付けて機体前後の荷重をとらせ、取付け具270と固定するためのボルト294及びナット295とが設けられる。また、左右一対のトラックフィッティングの間隔の距離の誤差を許容する遊びを設けた時のガタを防ぐための横ばね296が設けられている。
【0023】
このため、航空機の機体に固定された基本骨格に対して、様々な座席部品を取り付けることなる。つまり、
図1の例で示すと、座席ユニットの右側については、基本骨格から通路側の方向に対して、右側シェル210、右側肘掛け部310が取り付けられることとなる。
【0024】
その結果、基本骨格が設計どおりに航空機に固定された場合であっても、右側シェル210又は右側肘掛け部310の取り付けが設計どおりでなかった場合には、座席ユニット右側の通路幅が法定の通路幅を満たさない場合が発生していた。
【0025】
(第1の実施形態)
図4は、第1の実施形態に係る座席ユニット用の構造体を前方から見た斜視図である。この座席ユニット用の構造体(以下、「シェル20」ということがある)は、下部構造体及び上部シェルを合体したシェル構造となっており、座席ユニットの最外殻を規定している。また、この座席ユニット用の構造体は、最外殻の内側の領域に座席シートを支持可能としているとともに、その底面部において航空機の機体と固定されている。
【0026】
(構成)
図4において、シェル20は、座席ユニットの下部構造体である座席土台240の上方に、別部材として、右側シェル210、背面側シェル220、及び、左側シェル230からなる上部シェルを付加したものである。そしてシェル20は、座席土台240の底面部において航空機と接続固定されている。
【0027】
座席ユニットの下部構造体である座席土台240は、一体に形成された部材を用いて、中空のボックス型に形成されている。ここで、一体に形成された部材とは、具体的には、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンケトンなどの熱可塑性樹脂や、適切に可燃性を制御できる熱硬化性樹脂や、カーボングラファイトファイバー、ガラスファイバー、アラミドファイバーなどの複合材料から形成される部材であって、発泡体、ハニカム等の心材を含むことができる複合部材である。このような一体に形成された複合部材は、ボルトやナットなどの接続部品を用いることなく強固な立体形状を形成することができる。また、上記のような複合材料によって形成されていることから、既存の金属の構造部材に比べ、防錆処理をする箇所を大幅に低減することができる。
【0028】
また、中空のボックス構造は、筒型の構造形状を意味し、いわゆるモノコック構造となっている。このため、座席土台240は、座席、乗客、及び、乗客が使用する装備(読書灯360など)の荷重を支えることができる。
【0029】
座席土台240の中空領域242は、座席の前方から見た形が長方形であるが、台形等の四辺形であってもよい。また、座席土台240つまり座席下部構造体を構成する部材の厚さはおよそ10mm~15mmである。
【0030】
このような座席土台240では、機体側の座席トラックの位置によって位置の制約を受ける、1つの座席の足元を支持する柱状の支持体つまり脚部といった概念がない。このため、座席の上部構造の形状に関わらず様々な大きさ、形状の座席に対して共通の構造をとることができる。また、電気機器の取付け、これに伴う配線の配置についても、脚部の位置との制約を受けることがないため、設計の自由度の拡大や共通化を図ることができる。
【0031】
また、中空領域242には、仕切り部材250を配設することもできる。座席土台240は、中空のモノコック構造であるため、仕切り部材250(仕切り板と呼ぶこともある)は、乗客等の荷重を支える必要が無く、中空領域242内で自在に移動できる。
【0032】
座席ユニット用の構造体(シェル20)は、座席ユニットの最外殻を規定しており、同時に座席ユニットに隣接する通路の幅も規定することとなる。このため、通路幅の要件として、床に近い高さ付近における通路幅を広く設定する場合には、座席土台240の上に、右側シェル210、背面側シェル220、及び、左側シェル230からなる上部シェルが座席土台240からはみ出すことなく設計すればよい。例えば、
図4において、シェル20の最大幅寸法W及び最大奥行寸法Dは、座席土台240の最大幅寸法及び最大奥行寸法と一致する。
【0033】
一方、床に近いところの通路幅を広く設定する必要がない場合や上部シェルに膨らみ形状を持たせる場合には、上部シェルの最大幅寸法を座席土台240の最大幅寸法よりも大きく設定しても良い。しかし、この場合には、シェル20の最大幅寸法W及び最大奥行寸法Dは、座席土台240の最大幅寸法及び最大奥行寸法とは一致しないことに留意する必要がある。
【0034】
また、
図4に示した上部シェルは、ビジネスクラスやファーストクラスの場合の例を示しており、着座している乗客同士の視線が遮られるよう、プライバシー確保用のサイドシェルとして構成されている。一方、エコノミークラスの場合、図示しないが、右側シェル210及び左側シェル230は肘掛け程度の高さで設けられる。
【0035】
なお、「座席ユニットの最外殻を規定する」とは、水平面上の特定の一方向において、座席ユニットのすべての構成部材が座席ユニット用の構造体(シェル20)の内側領域に納まっている状態を意味している。
【0036】
図5は、第1の実施形態に係るシェル構造を斜め前方から見た斜視図であり、座席10を取付ける前の状態を示す。座席土台240の上に、座席10の上部シート120を支えるための上部シート用支持体160を配設する。また、上部シート用支持体の右隣には、コンソールと後席のレッグスペースを兼ねた収納ボックス330を配設する。
【0037】
さらに、座席土台240の上面であって、座席10が搭載される部分に、局部的な補強部材170を更に配設することも可能である。
【0038】
このように、シェル構造の内側に、収納ボックス330や補強部材170などを配設したとしても、これらはすべてシェル20の内側の領域に配置されている
【0039】
図6は、第1の実施形態に用いる座席シートの例を斜め前方から見た斜視図である。座席10は、乗客が着座する下部シート110、背中をもたせ掛ける上部シート120、背もたれの上部の枕状の部分であり、頭を乗せて首などを休ませるヘッドレスト130、及び、脚を乗せてふくらはぎ等の疲れを軽減させるレッグレスト140を備える。
【0040】
座席リクライニング機構180は、上部シート120を後方に傾けさせる機構である。フット・リクライニング機構190は、レッグレスト140を下部シート110の面近くまで持ち上げるように回転させる機構である。
【0041】
図7は、
図5を用いて説明したシェル20に、
図7を用いて説明した座席10を乗せた形態を斜め前方から見た斜視図である。
【0042】
ここで、座席ユニット1の奥行寸法は、レッグレスト140がシェル20から前方にはみ出すため、シェル20の最大奥行寸法Dよりも大きくなる。しかし、座席ユニット1の前方は乗客の脚を置くスペースであり、座席間の通路幅のように法令によって定められているものではないので、緊急時に避難できる程度の幅が確保できればよい。
【0043】
これに対し、座席ユニット1の幅寸法は、座席部品がすべてシェル20の幅方向の内側の領域に配置されているため、シェル20の最大幅寸法Wと変わらない。すなわち、航空機内で全ての座席部品をシェル20に設置した後であっても座席ユニット1の幅寸法は、シェル20の最大幅寸法Wで固定されており、座席部品を取り付けたことによって変化することがない。
【0044】
なお、
図7において、右側シェル210が窓側の側面である場合であっても、化粧用ミラーやサイドボードなどの装備もすべてシェル20の内側の領域に装着することができる。すなわち、その座席ユニットに座る人が利用する全ての取付け部材がシェル20内の少なくとも最外殻内側に収納可能である。
【0045】
図8は、第1の実施形態に係る座席ユニットの下部構造体である座席土台を斜め後方から見た斜視図である。シェル20は、後述する座席トラックを説明する便宜上、背面側シェル220を省略し、右側シェル210及び左側シェル230を図示している。
【0046】
第1の座席トラック282及び第2の座席トラック284は一対の座席トラックを構成し、航空機の機体の長手方向の床面に延在している。航空機では、座席ユニット1の底部(
図8では座席土台240の底部)が一対の座席トラックに固定されることによって、座席ユニット1が航空機の機体に取り付けられ、所定の動荷重試験に合格することが、乗客の安全を確保する上で必要である。
図8では、座席土台240は、航空機の機体の長手方向に対し、少し左側に向いて配設した状態を示している。このため、座席土台240は第1の座席トラック282及び第2の座席トラック284に正対しておらず、少し左側に向いている。
【0047】
座席土台240の底部には、3個の取付けブロックが配置されている(取付けブロックは点線で表示)。座席土台240は、3個の取付けブロックを介して、航空機の機体へ取り付けるための3個の取付け具に固定されている。座席土台240はモノコック構造であって、柱状の脚部を有しないため、取付けブロックが座席土台240の底部に設けられ、取付け具と座席土台240との接続を補強している。取付けブロックの材質は金属製などが望ましいが、補強用のブロックであればその材料は限定されない。
【0048】
図8では、座席土台240を3箇所で航空機の機体に取付けるため、第1の取付けブロック262が座席土台240の底部の前方に配置され、その後方に第2の取付けブロック264が配置されている。第3の取付けブロック266は、右側に配置されている。
【0049】
各取付けブロックの下には、座席トラックへの取付け具がそれぞれ配設されている(取付け具は実線で表示)。すなわち、第1の取付け具272は、第1の取付けブロック262の下に配設され、第1の座席トラック282に取付けられる。第2の取付け具274は、第2の取付けブロック264の下に配設され、第1の座席トラック282であって、第1の取付け具272から間隔を隔てた点に取付けられる。
【0050】
一方、第3の取付け具276は、第3の取付けブロック266の下に配設され、第2の座席トラック284であって、第1の取付け具272と第2の取付け具274との間に対応する部分に取り付けられる。望ましくは、第1の取付け具272と第2の取付け具274との間に対応する部分の略中央に取り付けられる。
【0051】
ちなみに、
図9は、第1の実施形態に係る座席土台240の底部周辺の拡大図である。座席土台240の底部は、中空領域242側の内面244と、反対側の外面246との間がハニカム構造248になっている。このハニカム構造248の中に、取付けブロック260が配設されている。取付けブロック260と取付け具270とはボルトとナット等によって固定されている。内面244及び外面246の材料は例えば樹脂と繊維による複合繊維である。ハニカム構造248の材料は例えば不燃性の紙とフェーノル樹脂による複合繊維である。
【0052】
取付けブロック260であって、下に取付け具270が配設される部分の厚さは、薄くなっている。座席土台240の底部であって、下に取付け具270が配設される部分の厚さも、同様に薄くなっている。座席土台240の底部及び取付けブロック260の一部をこのように薄く凹部247を設けることによって、座席土台240の底部の内面244を平坦に保つことができ、中空領域242内に、乗客の脚を入れたり、荷物を収納したりする際に便利である。
【0053】
このように3つの取付け具によって、座席土台240を一対の座席トラックに固定することによって、座席土台240を座席トラックに正対しない態様で取り付けることができる。これによって、機内の座席配置の自由度を格段に向上することができる。
【0054】
再度、
図8について説明する。第1の座席トラック282及び第2の座席トラック284は、航空機の機体の長手方向の床面に延在している。そして、座席トラック282及び284に対する座席土台240の傾き角度及び座席土台240の最大幅寸法Wを用いれば、座席トラック282及び284の垂直方向(つまり、航空機の長手方向に直行する横幅方向)に対しての座席土台240の占有幅の寸法を一義的に計算することができる。この最大占有寸法(以下、「修正寸法」という)をW’とする(不図示)。
【0055】
図10は、第1の実施形態に座席土台間の間隔を説明するための図である。座席土台240aの最大幅寸法Waから、
図8で説明した通り、座席トラック282a及び284aの垂直方向に対してどのくらいの最大占有寸法になるかを計算し、修正寸法Wa’(不図示)を求める。同様に、座席土台240bの最大幅寸法Wbから、修正寸法Wb’(不図示)を求める。
【0056】
次に、座席土台を取り付ける機体の構造設計書から、2つの座席土台の内側の座席トラック間(284aと282bとの間)の寸法W1を求める。そして、修正寸法Wa’及び修正寸法Wb’の測定方向が座席ユニットの最外殻を規定している方向に含まれていれば、このW1と、修正寸法Wa’(不図示)、Wb’(不図示)と、内側の座席トラック284a及び282bと固定される取付け具272b、274b及び276aとの位置関係から、2つの座席土台の間隔W2、つまり、2つの座席ユニット間の間隔を求めることができる。
【0057】
このW2が、該当する通路側の座席間の幅になり、法令で定められている寸法(例えば51cm)以上あればよい。このような計算作業を、航空機の機体の最前列の座席から最後尾の座席まで計算し、全ての通路側の座席間の幅が法定で定められている寸法以上であれば、問題が無いことになる。
【0058】
なお、法令上の規制は窓側との間隔には言及されないが、機体の構造設計書から、該当する座席トラックと、窓側との寸法を求めることによって、同様に適正な間隔を確保することができる。
【0059】
次に、第1の実施態様を実現するための製造プロセス及び航空機の機体への取り付けプロセスを説明する。第1の実施態様に用いられる座席ユニット用の構造体は、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンケトンなどの熱可塑性樹脂や、適切に可燃性を制御できる熱硬化性樹脂や、カーボングラファイトファイバー、ガラスファイバー、アラミドファイバーなどの複合材料から形成される部材に、必要に応じて、発泡体、ハニカム等の心材を組み合わせて、一体に形成する。
【0060】
そして、このような座席ユニットの航空機機体への取付けプロセスは、2種類の方法がある。一つは、座席ユニット用の構造体に、座席シートをはじめとする座席部品を装着し、ほぼ完成した座席ユニットを航空機の機体に取り付ける方法である。他の取り付け方法は、座席ユニットようの構造体を航空機の機体に取り付けた後に、座席シートをはじめとする座席部品を取り付ける方法である。
【0061】
(作用効果)
第1の実施形態によれば、座席ユニットの構造体(シェル20)は、座席土台240の底面部において航空機と接続固定されており、座席ユニットの最外殻を規定していることから、座席部品を取り付けても、これによって、通路側に横幅が増加することがない。このため、座席ユニットを航空機の機体に取り付ける前の段階で、通路幅を確定することが可能となる。また、座席ユニットの構造体を航空機に接続固定した後に、座席部品を取り付けたとしても、所定の通路幅が変化することはなく、座席部品取り付けをやり直すことがなくなる。
【0062】
また、座席ユニットと窓側との間隔についても、座席ユニット同士の場合と同様に、座席ユニットを航空機の機体に取り付ける前の段階で間隔を予め確定できるという効果を有する。
【0063】
さらに、第1の実施形態によれば、座席ユニットを座席トラックの位置に影響されること無く、大きな自由度をもって取り付けることができる。これに加えて、第1の実施形態では、座席ユニットが座席トラックに取り付けられる角度と、これによって確保できる通路幅を容易に確定することができるので、航空機の機内における座席配置の設計を容易に行うことができる。
【0064】
加えて、座席トラックの位置に関わらず、足元のスペースを広く確保でき、乗客は好きな所に脚を伸ばせるという効果を有する。
【0065】
さらに、航空機の製造プロセスにおいて、座席ユニット用の構造体の製造・設置工程と、座席シートをはじめとする座席部品の製造・設置工程を完全に分離し、別個の事業者が別個の工程で行うことが可能となる。また、航空機本体の機体メーカーが座席ユニットの構造体を開発して提供すれば、座席メーカーは座席土台に関わる試験証明を行うことが容易になり、開発期間の短縮に繋がるという効果も有する。
【0066】
(第2の実施形態)
次に、
図11を用いて第2の実施形態を説明する。
図11は、第1の実施形態で説明した、座席土台240と上部シェルが一体に成型した座席ユニットの構造体(シェル20)を示している。座席土台240と上部シェルを一体に成型した以外の点は第1の実施形態と同じである。
【0067】
(構成)
第2の実施形態においては、座席土台240及び上部シェルが共に一体成型され、一体でモノコック構造を実現している。最大幅寸法Wや、一体成型される部材に用いる複合材料などについても、第1の実施形態と同じである。
【0068】
(作用効果)
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を有し、さらに、座席土台240の最外殻と上部シェルの最外殻を合わせる作業が不要になるという効果を有する。
【0069】
加えて、座席土台と上部シェルとが一体となっていることから、座席全体の強度を向上させることができる。その上、取付け作業を簡略化できるという効果を有する。
【0070】
(第3の実施形態)
次に、
図12を用いて第3の実施形態を説明する。
図12は、装飾が施された座席ユニットの構造体(シェル20)を示す斜視図である。シェル20は、第1の実施形態で説明した、右側シェル210、背面側シェル220、及び、左側シェル230に加え、シェルの上面から両側面にかけて保護する保護カバー410と、シェルの端面を保護する端面カバー420を備える。つまり、座席ユニット用の構造体の外周面に緩衝・装飾部材(緩衝及び/又は装飾部材)が設けられている。
【0071】
保護カバー410は、乗客や客室乗務員が通路を歩く際に、シェル20に接触するため、ラバーやスポンジなど柔らかい素材で構成され、乗客や乗務員がシェル20を構成している硬質の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、カーボングラファイトなどの複合材料などに直接に接触しないよう保護している。また、端面カバー420は、食事を運ぶカートなどがシェル20を構成している硬質の材料に直接接触しないようにするためのものであり、右側シェル210のみならず左側シェル230の下端も覆っている。
【0072】
第3の実施形態の場合、右側シェル210及び左側シェル230に加え、保護カバー410及び端面カバー420が、座席ユニットから、座席ユニットの最大幅寸法最外殻を規定している。
【0073】
また、保護カバー410及び端面カバー420は、複合材料で一体形成されたシェル20に装飾を施すという機能も有している。あるいは、シェル20に直接ペイントを施しておき、透明な保護カバー410及び端面の装飾カバー420で覆ってもよい。
【0074】
また、背面側シェル220には、ディスプレイを設置してもよい。あるいは、後ろの座席に座っている人が使う物入れ、コンセント、化粧用の鏡などを配置してもよい。
【0075】
(作用効果)
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を有し、さらに、乗客や客室乗務員、カートなどがシェル20を構成している硬質の材料に直接に触れないようにするという効果を有する。
【0076】
加えて、保護カバー410及び端面カバー420の装飾を機内の座席で統一させることにより、各航空会社のブランド向上にも役立つという効果を有する。
【0077】
なお、本発明は上記した航空機の座席ユニットに適用した例で説明したが、本発明の対象は航空機に限定されるものではなく、航空機以外の様々な移動体の座席に適用されうるものであり、様々な変形例が含まれる。例えば、列車、長距離バス、および客船、フェリー、およびホーバー・クラフトを含む水上輸送機関のような他の形式の乗物や移動体にも適切に使用できる。
【0078】
また、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 座席ユニット
10 座席
20 シェル
110 下部シート
120 上部シート
130 ヘッドレスト
140 レッグレスト
150 シートベルト
160 上部シート用支持体
170 補強部材
180 座席リクライニング機構
190 フット・リクライニング機構
210 右側シェル
220 背面側シェル
230 左側シェル
240 座席土台
242 中空領域
244 内面
246 外面
247 凹部
248 ハニカム構造
250 仕切り部材
260 取付けブロック
262 第1の取付けブロック
264 第2の取付けブロック
266 第3の取付けブロック
270 取付け具
272 第1の取付け具
274 第2の取付け具
276 第3の取付け具
280 座席トラック
282 第1の座席トラック
284 第2の座席トラック
286 床下構造部
287 平坦部
288 座席トラック側の嵌め合い部
290 トラックフィッティング部材
291 フィッティング側の嵌め合い部
292 縦ばね
293 プランジャ
294 ボルト
295 ナット
296 横ばね
310 右側肘掛け部
320 左側肘掛け部
330 収納ボックス
340 オットマン
350 ジャック
360 読書灯
410 保護カバー
420 端面カバー