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特許7043212再帰反射シート及び再帰反射シートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】再帰反射シート及び再帰反射シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/124 20060101AFI20220322BHJP
【FI】
G02B5/124
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2017198717
(22)【出願日】2017-10-12
(65)【公開番号】P2019074565
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-09-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】塩見 敏明
(72)【発明者】
【氏名】蒋 晨陽
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-506623(JP,A)
【文献】国際公開第2012/029921(WO,A1)
【文献】特開平06-347621(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0013282(US,A1)
【文献】国際公開第2002/043952(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/147079(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00 - 5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に複数の再帰反射素子を有する再帰反射層と、
前記再帰反射素子に対向して設けられ、前記再帰反射素子側の面の少なくとも一部は樹脂からなる背面層と、
前記再帰反射素子と前記背面層との間において前記再帰反射素子と前記背面層とに接して配置され、表面の少なくとも一部が樹脂からなる複数の粒子と、
前記再帰反射素子と前記背面層との間に形成される空隙と、
を備える
ことを特徴とする再帰反射シート。
【請求項2】
前記再帰反射素子と前記背面層とが前記複数の粒子のうち少なくとも一部の前記粒子を介して接着される
ことを特徴とする請求項1に記載の再帰反射シート。
【請求項3】
前記粒子が樹脂からなる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の再帰反射シート。
【請求項4】
前記粒子が熱硬化性樹脂からなる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の再帰反射シート。
【請求項5】
前記再帰反射素子と前記背面層とが接着する接着部を有し、
平面視において、前記接着部は複数のカプセル部を囲うように連続して形成され、
前記複数のカプセル部において、前記空隙が形成される
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の再帰反射シート。
【請求項6】
前記接着部において、前記背面層と前記再帰反射素子との間に前記粒子と同じ材料からなるバインダ部が形成される
ことを特徴とする請求項5に記載の再帰反射シート。
【請求項7】
前記複数のカプセル部において、前記背面層の一部と前記再帰反射素子の一部とが接着される
ことを特徴とする請求項5または6に記載の再帰反射シート。
【請求項8】
前記粒子の屈折率は前記再帰反射素子の屈折率より小さい
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の再帰反射シート。
【請求項9】
一方の面に複数の再帰反射素子を有する再帰反射層と、前記再帰反射素子に対向して設けられ、前記再帰反射素子側の面の少なくとも一部が樹脂からなる背面層とを、表面の少なくとも一部が樹脂からなる複数の粒子が介在するように積層する積層工程と、
前記再帰反射素子と前記背面層との間に空隙が形成されるように前記再帰反射層と前記背面層とを熱圧着する圧着工程と、
を備え
前記圧着工程後において、前記複数の粒子が前記再帰反射素子と前記背面層とに接している
ことを特徴とする再帰反射シートの製造方法。
【請求項10】
前記圧着工程において、前記再帰反射素子と前記背面層とが前記複数の粒子のうち少なくとも一部の前記粒子を介して接着される
ことを特徴とする請求項9に記載の再帰反射シートの製造方法。
【請求項11】
前記粒子の全体が樹脂からなる
ことを特徴とする請求項10に記載の再帰反射シートの製造方法。
【請求項12】
前記粒子が熱硬化性樹脂からなる
ことを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の再帰反射シートの製造方法。
【請求項13】
前記圧着工程において、前記再帰反射素子と前記背面層とが接着する接着部を形成し、
平面視において、前記接着部は複数のカプセル部を囲うように連続して形成され、
前記複数のカプセル部において、前記空隙が形成される
ことを特徴とする請求項9から12のいずれか1項に記載の再帰反射シートの製造方法。
【請求項14】
前記圧着工程において、前記背面層と前記再帰反射素子との間に前記粒子が溶融することでなるバインダ部が形成される
ことを特徴とする請求項13に記載の再帰反射シートの製造方法。
【請求項15】
前記圧着工程において、前記複数のカプセル部の前記背面層の一部と前記再帰反射素子の一部とが接着される
ことを特徴とする請求項13または14に記載の再帰反射シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再帰反射シート及び当該再帰反射シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再帰反射シートは、入射した光を光源側に反射させることができる性質を有する。再帰反射シートは、このような性質を有するため、夜間や暗所において光が照射されたときに印刷物等の対象物を見やすくする等の目的で利用される。再帰反射シートは、例えば、交通標識、案内標識、車両用ナンバープレート、広告看板、車線分離標、視線誘導標等に利用されている。
【0003】
このような再帰反射シートとして、例えば下記特許文献1には、再帰反射性要素を含む光透過層と、光透過層の再帰反射性要素が形成される面側の表面に再帰反射性要素より小さい多数のくぼみが形成された樹脂背面層と、を備える再帰反射シートが開示されている。この再帰反射シートでは、樹脂背面層に形成されたくぼみと再帰反射性要素との間に形成される空隙に低屈折率気体が閉じ込められる。そして、この低屈折率気体と再帰反射性要素との屈折率差によって、光透過層側から入射して再帰反射性要素と空隙との界面に達した光を光透過層側に反射させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3123693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の再帰反射シートは、金属蒸着膜を用いていないため、明度を向上させることができる。明度に優れる再帰反射シートは、車両用ナンバープレート等の印刷物に用いたときに印刷部を目立たせることができる。しかし、上記特許文献1に開示されている再帰反射シートは、折り曲げたり凹凸加工を施したりして厚さ方向に圧力が加えられると、再帰反射性要素とくぼみとの間に形成される空隙が潰れる場合がある。このように空隙が潰れると、再帰反射性が低下する。従って、上記特許文献1に開示されている再帰反射シートは、曲げや凹凸を有する印刷物に用いられる場合、平らな物に用いられる場合に比べて、再帰反射性が劣る場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、厚さ方向に圧力が加えられる場合であっても再帰反射性の低下が抑制される再帰反射シート及び当該再帰反射シートの製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の再帰反射シートは、一方の面に複数の再帰反射素子を有する再帰反射層と、前記再帰反射素子に対向して設けられ、前記再帰反射素子側の面の少なくとも一部は樹脂からなる背面層と、前記再帰反射素子と前記背面層との間に配置され、表面の少なくとも一部が樹脂からなる複数の粒子と、前記再帰反射素子と前記背面層との間に形成される空隙と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記再帰反射シートでは、再帰反射素子と背面層とに挟まれて複数の粒子が固定される。また、背面層と再帰反射素子との間には空隙が形成され、当該空隙には空気等の気体が閉じ込められる。そして、この気体と再帰反射素子との屈折率差によって、再帰反射層側から入射した光を、再帰反射素子と空隙との界面で再帰反射層側に反射させることができる。また、上記再帰反射シートでは、厚さ方向の圧力が加えられたとしても、複数の粒子に支えられることで空隙が潰れることが抑制され得る。従って、上記再帰反射シートでは、厚さ方向に圧力が加えられる場合であっても再帰反射性の低下が抑制され得る。
【0009】
また、上記再帰反射シートでは、背面層のうち再帰反射素子側の面の少なくとも一部は樹脂からなり、複数の粒子の表面の少なくとも一部も樹脂からなることによって、背面層と複数の粒子とが強固に接着され得る。そのため、複数の粒子の位置がずれることが抑制され得る。
【0010】
また、前記再帰反射素子と前記背面層とが前記複数の粒子のうち少なくとも一部の前記粒子を介して接着されることが好ましい。
【0011】
このように複数の粒子を介して再帰反射素子と背面層とが接着されることによって、再帰反射素子と背面層とが強固に接着され得る。
【0012】
また、前記粒子が樹脂からなることが好ましい。
【0013】
粒子が樹脂からなることによって、背面層と粒子とがより強固に接着され得る。また、再帰反射素子と背面層とが粒子を介して接着される場合は、再帰反射素子と背面層とがより強固に接着され得る。
【0014】
また、前記粒子が熱硬化性樹脂からなることが好ましい。
【0015】
粒子が熱硬化性樹脂からなることによって、再帰反射シートに熱が加えられた場合に粒子の変形が抑制され得る。例えば、再帰反射シートがカーラインセンスプレートに用いられる場合、アスファルト等で反射された熱を受けることによって、再帰反射シートは加熱されて高温になり得る。このような場合であっても、粒子の変形が抑制され得る。
【0016】
また、前記再帰反射素子と前記背面層とが接着する接着部を有し、平面視において、前記接着部は複数のカプセル部を囲うように連続して形成され、前記複数のカプセル部において、前記空隙が形成されることが好ましい。
【0017】
再帰反射素子と背面層とが接着する接着部が複数のカプセル部を囲うように連続して形成されることによって、厚さ方向の圧力が加えられたとしても接着部に支えられることにより、複数のカプセル部において空隙が潰れることが抑制され得る。また、上記再帰反射シートでは、再帰反射素子と背面層とが接着する接着部が複数のカプセル部を囲うように連続して形成されるため、水や異物が触れる可能性のある屋外等の環境下で使用される場合において、複数のカプセル部に水や異物が侵入することが抑制され得る。従って、カプセル部において、再帰反射素子と複数の粒子との間に形成される空隙が水や異物によって埋められることが抑制され得る。このため、上記再帰反射シートでは、水や異物が触れる屋外等の環境下で使用される際の信頼性が向上され得る。
【0018】
また、前記接着部において、前記背面層と前記再帰反射素子との間に前記粒子と同じ材料からなるバインダ部が形成されることが好ましい。
【0019】
背面層と再帰反射層とを熱圧着させる場合において、背面層と再帰反射素子との間に複数の粒子が介在することによって、複数の粒子は融けてバインダ部となり得る。このように接着部において背面層と再帰反射素子との間に複数の粒子からなるバインダ部が形成されることによって、再帰反射素子と背面層との接着強度が高められ得る。
【0020】
また、前記複数のカプセル部において、前記背面層の一部と前記再帰反射素子の一部とが接着されることが好ましい。
【0021】
平面視において、再帰反射素子が背面層に接着する部位は、再帰反射素子が空隙に接する部位に比べて明るく見える。よって、接着部は、空隙が形成されるカプセル部に比べて明るく見える。ここで、上記のようにカプセル部においても背面層と再帰反射素子とが部分的に接着されることによって、接着部とカプセル部との明度差が低減され得る。よって、再帰反射シートの外観の均一性が向上され得る。また、背面層と再帰反射素子とが接着される部位が増大されることにより、再帰反射素子と背面層との接着強度が高められ得る。
【0022】
また、前記粒子の屈折率は前記再帰反射素子の屈折率より小さいことが好ましい。
【0023】
粒子の屈折率が再帰反射素子の屈折率より小さいことによって、再帰反射素子と粒子とが接する部位において、再帰反射素子側から入射する光は再帰反射素子と粒子との界面で再帰反射素子側に反射し易くなる。よって、再帰反射シートの再帰反射性が向上され得る。
【0024】
また、上記課題を解決するため、本発明の再帰反射シートの製造方法は、一方の面に複数の再帰反射素子を有する再帰反射層と、前記再帰反射素子に対向して設けられ、前記再帰反射素子側の面の少なくとも一部が樹脂からなる背面層とを、表面の少なくとも一部が樹脂からなる複数の粒子が介在するように積層する積層工程と、前記再帰反射素子と前記背面層との間に空隙が形成されるように前記再帰反射層と前記背面層とを熱圧着する圧着工程と、を備えることを特徴とする。
【0025】
上記再帰反射シートの製造方法によれば、再帰反射素子と背面層との間に複数の粒子が挟まれて背面層と再帰反射素子との間に空隙が形成された上記再帰反射シートが製造される。よって、上記のように厚さ方向に圧力が加えられる場合であっても再帰反射性の低下が抑制され得る再帰反射シートが製造される。また、背面層のうち再帰反射素子側の面の少なくとも一部は樹脂からなり、複数の粒子の表面の少なくとも一部も樹脂からなることによって、圧着工程にいて背面層と複数の粒子とが強固に接着され得る。そのため、複数の粒子の位置がずれることが抑制され得る。
【0026】
また、前記圧着工程において、前記再帰反射素子と前記背面層とが前記複数の粒子のうち少なくとも一部の前記粒子を介して接着されることが好ましい。
【0027】
このように複数の粒子を介して再帰反射素子と背面層とが接着されることによって、再帰反射素子と背面層とが強固に接着され得る。
【0028】
また、上記再帰反射シートの製造方法において、前記粒子の全体が樹脂からなることが好ましい。
【0029】
粒子の全体が樹脂からなることによって、圧着工程において、背面層と粒子とがより強固に接着され得る。また、再帰反射素子と背面層とが粒子を介して接着される場合は、再帰反射素子と背面層とがより強固に接着され得る。
【0030】
また、上記再帰反射シートの製造方法において、前記粒子が熱硬化性樹脂からなることが好ましい。
【0031】
粒子が熱硬化性樹脂からなることによって、圧着工程において加熱された粒子は硬化し、強度が高くなり得る。よって、上記再帰反射シートの製造方法によって製造される再帰反射シートは、厚さ方向に圧力が加えられる場合であっても空隙が潰れることがより抑制され、再帰反射性の低下がより抑制され得る。
【0032】
また、前記圧着工程において、前記再帰反射素子と前記背面層とが接着する接着部を形成し、平面視において、前記接着部は複数のカプセル部を囲うように連続して形成され、前記複数のカプセル部において、前記空隙が形成されることが好ましい。
【0033】
このように圧着工程において接着部とカプセル部とが形成されることによって、上記のように、複数のカプセル部において空隙が潰れることが抑制され得る再帰反射シートが製造される。また、当該再帰反射シートは、上記のように水や異物が触れる屋外等の環境下で使用される際の信頼性が向上され得る。
【0034】
また、前記圧着工程において、前記背面層と前記再帰反射素子との間に前記粒子からなるバインダ部が形成されることが好ましい。
【0035】
背面層と再帰反射素子との間に粒子が介在した状態で熱圧着されることによって、当該粒子が溶融し、背面層と再帰反射層との間に当該粒子からなるバインダ部が形成される。このように接着部において背面層と再帰反射素子との間にバインダ部が形成されることによって、再帰反射素子と背面層との接着強度が高められ得る。
【0036】
また、前記圧着工程において、前記複数のカプセル部の前記背面層の一部と前記再帰反射素子の一部とが接着されることが好ましい。
【0037】
このように複数のカプセル部において背面層の一部と再帰反射素子の一部とが接着されることによって、上記のように接着部とカプセル部との明度差が低減され、再帰反射素子と背面層との接着強度が高められ得る再帰反射シートが製造される。
【発明の効果】
【0038】
以上のように、本発明によれば、厚さ方向に圧力が加えられる場合であっても再帰反射性の低下が抑制される再帰反射シート及び当該再帰反射シートの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の実施形態に係る再帰反射シートの一部を概略的に示す平面図である。
図2図1に示す再帰反射シートのII-II線に沿った厚さ方向断面を概略的に示す図である。
図3図2に示す再帰反射シートの一部を拡大して示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る再帰反射シートの製造方法のフローチャートを示す図である。
図5】本発明の変形例に係る再帰反射シートについて、図2と同様の視点で示す断面図である。
図6】本発明の他の変形例に係る再帰反射シートについて、図2と同様の視点で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る再帰反射シートの好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0041】
図1は、実施形態に係る再帰反射シートの平面図を概略的に示す図である。図2は、図1に示す再帰反射シートのII-II線に沿った厚さ方向断面を概略的に示す図である。なお、図1図2及び以下に示す他の図のそれぞれにおいて、理解のし易さのため、各構成要素の大きさは誇張される等して正確に示されていない。また、図1図2及び以下に示す他の図のそれぞれにおいて、同様の構成のものについては参照符号が一つだけ付され、繰り返しとなる参照符号は省略されている。
【0042】
図2に示すように、本実施形態の再帰反射シート100は、表面保護層10、再帰反射層20、複数の粒子30、背面層40、粘着剤層50および剥離層60を備える。以下、再帰反射シート100に備えられるこれらの構成要素についてより詳細に説明する。
【0043】
表面保護層10は、再帰反射層20のうち再帰反射シート100の使用時に観察者側となる面F1を保護する層であり、再帰反射シート100の使用時において再帰反射シート100の最も外側となる層である。再帰反射シート100に優れた再帰反射性を備えさせる観点から、表面保護層10は、透明な樹脂層であることが好ましい。表面保護層10の全光線透過率は、例えば80%以上とされる。このような表面保護層10を構成する材料として、例えば、アクリル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種類が単独で用いられてもよく、複数種類が混合して用いられてもよい。表面保護層10に耐候性や加工性を備えさせる観点からは、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂が好ましい。さらに塗工適性や着色する際の着色剤の分散性等を考慮するとアクリル系樹脂が好ましい。なお、表面保護層10には、透明性を著しく損なわない範囲で、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、架橋剤、酸化防止剤、防カビ剤、着色剤等の様々な添加剤を適宜添加することができる。
【0044】
再帰反射層20は、板状の保持体部22と複数の再帰反射素子24とを有する。保持体部22の一方の面F1は表面保護層10で覆われ、保持体部22の他方の面F2には複数の再帰反射素子24が設けられている。複数の再帰反射素子24は、入射した光を再帰反射させるのに適した反射面を有している限り特に限定されるものではない。例えば、三角錐などの多面体状や所謂キューブコーナー形状の再帰反射素子24が最密充填状に配置される場合、再帰反射性が優れるので好ましい。
【0045】
再帰反射シート100に優れた再帰反射性を備えさせる観点から、再帰反射層20は、透明な樹脂層であることが好ましい。再帰反射層20を構成する材料として、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アイオノマー樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種類が単独で用いられてもよく、複数種類が混合して用いられてもよい。また、再帰反射層20の透明性や耐候性等を高める観点からは、再帰反射層20は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等からなることが好ましい。なお、再帰反射層20には、透明性を著しく損なわない範囲で、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、架橋剤、酸化防止剤、防カビ剤、着色剤等の様々な添加剤を適宜添加することができる。
【0046】
背面層40は、再帰反射層20の再帰反射素子24側の面に対向して設けられ、再帰反射素子24側の面の少なくとも一部が樹脂からなる層である。背面層40は、全体が樹脂からなることが好ましい。また、本実施形態の背面層40は、再帰反射素子24と接着する接着部42を有する。図1に示すように、平面視において、接着部42は複数のカプセル部46を囲うように連続して形成される。また、本実施形態の再帰反射シート100では、図2に示すように、複数のカプセル部46において、背面層40の一部と再帰反射素子24の一部とが接着される一部接着部44が形成される。接着部42は、平面視において所定の幅を有してカプセル部46を囲うように連続して形成されるのに対して、一部接着部44は断続的に形成される。
【0047】
平面視において、接着部42の幅w1は1000μm以下であることが好ましい。また、接着部42の幅w1とカプセル部46の幅w2との比w1/w2は0.7以上1.4以下であることが好ましい。接着部42の幅w1が小さくされることによって、接着部42とカプセル部46との明度差が低減され得る。また、接着部42の幅w1と接着部42で囲われるカプセル部46の幅w2との差がある程度小さくされることによって、接着部42とカプセル部46との明度差がより低減され得る。
【0048】
また、本実施形態の背面層40の再帰反射層20側とは反対側の面には、再帰反射シート100の厚さ方向において接着部42と重なる位置に、再帰反射層20側に凹んだ凹部48が形成される。凹部48は、後述するようにして再帰反射シート100が作製される際に背面層40が押圧されることによって形成される部位である。
【0049】
このような背面層40を構成する材料として、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アイオノマー樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種類が単独で用いられてもよく、複数種類が混合して用いられてもよい。また、背面層40の透明性や耐候性等を高める観点からは、背面層40は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等からなることが好ましい。なお、背面層40には、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、架橋剤、酸化防止剤、防カビ剤、着色剤等の様々な添加剤を適宜添加することができる。
【0050】
背面層40が所定の顔料を含むことによって、再帰反射シート100の明度や彩度を容易に向上させることができる。例えば、背面層40が酸化チタン等の白色顔料を含むことで、再帰反射シート100の明度を向上させることができる。
【0051】
また、背面層40は、上述した酸化チタン等の白色顔料以外の着色剤を含んでもよい。このような着色剤として、例えば、無機顔料、有機顔料、有機染料、パール顔料等を用いることができる。背面層40には、これらの着色剤のうち1種類が単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0052】
酸化チタン以外の上記無機顔料の例として、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、群青、コバルトブルー、弁柄、酸化クロム、鉄黒、カドミウムイエロー、チタンイエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、黄鉛、黄色酸化鉄、クロムオレンジ、カドミウムオレンジ、金粉、銀粉、銅粉、アルミニウム粉、ブロンズ粉等を挙げることができる。また、上記有機顔料及び有機染料の例として、アントラキノン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、キノフタロン系、キノイミン系、ペリレン系、ペリノン系、アゾ系、キノリン系、メチン系、インジゴ系、ナフトールイミド系などの有機化合物を挙げることができる。また、上記パール顔料の例として、酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス、魚鱗粉、塩基性炭酸鉛等を挙げることができる。
【0053】
従来の再帰反射シートに着色を施す場合、再帰反射層に着色剤が添加されたり、再帰反射層のうち光が入射する側の表面に印刷や着色された層が設けられたりしていた。このような従来の再帰反射シートでは、着色剤や印刷によって光が散乱されたり再帰反射層への光の入射が妨げられたりして、再帰反射層での光の反射が妨げられ、再帰反射性が低下することがあった。赤色や青色、緑色といった濃色の着色剤が用いられる場合、特にこの傾向が顕著である。一方、本実施形態の再帰反射シート100では、例えば再帰反射層20を透明にし、上記のように背面層40に着色剤を添加する場合、再帰反射層20への光の入射や再帰反射層20での光の反射を妨げる要素が従来に比べて減少するため、再帰反射性の低下が抑制され得る。
【0054】
複数の粒子30は、表面の少なくとも一部が樹脂からなり、図2に示すように再帰反射素子24と背面層40との間において再帰反射素子24と背面層40とに接して配置される。本実施形態の粒子30は、接着部42において、後述するように再帰反射シート100の製造過程において少なくとも一部が溶融し、バインダ部45とされる。すなわち、バインダ部45は、接着部42において背面層40と再帰反射素子24との間に配置されて粒子30と同じ材料からなる。一方、図3は、図2に示す再帰反射シートのうち破線で囲われたIIIの部分、すなわちカプセル部46の一部を拡大して示す図である。カプセル部46では、複数の粒子30が再帰反射素子24と背面層40との間に配置されることによって、複数の粒子30は再帰反射素子24と背面層40とに挟まれて位置が固定される。このように複数の粒子30が再帰反射素子24と背面層40とに挟まれることによって、背面層40と再帰反射素子24との間に空隙32が形成される。また、本実施形態の複数の粒子30の少なくとも一部は、再帰反射シート100の製造過程において表面の一部S1が再帰反射素子24に接着されるとともに表面の他の一部S2が背面層40に接着される。すなわち、再帰反射素子24と背面層40とが複数の粒子30のうち少なくとも一部の粒子30を介して接着される。また、本実施形態のカプセル部46の一部では、上記のように再帰反射素子24の一部と背面層40の一部とが接着されて一部接着部44が形成される。
【0055】
複数の粒子30は、それぞれ少なくとも表面の一部が樹脂からなる。また、それぞれの粒子30は表面の全体が樹脂からなることが好ましい。また、それぞれの粒子30を構成する材料は樹脂の割合が多いほど好ましく、それぞれの粒子30は表面だけでなく内部を含めた全体が樹脂からなることが好ましい。また、複数の粒子30を構成する樹脂として、熱硬化性樹脂が好ましい。複数の粒子30を構成する樹脂の具体例として、フェノール系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース誘導体等が挙げられる。
【0056】
粒子30が熱硬化性樹脂からなることによって、再帰反射シート100に熱が加えられた場合に粒子30の変形が抑制され得る。例えば、再帰反射シート100がカーラインセンスプレートに用いられる場合、アスファルト等で反射された熱を受けることによって、再帰反射シート100は加熱されて高温になり得る。このような場合であっても、粒子30の変形が抑制され得る。なお、複数の粒子30が熱硬化性樹脂からなる場合、カプセル部46に配置される複数の粒子の少なくとも一部は未硬化状態とされ得る。
【0057】
ただし、複数の粒子30を構成する樹脂は熱硬化性樹脂に限定されず、熱可塑性樹脂であってもよい。背面層40が熱可塑性樹脂からなる場合、複数の粒子30も熱可塑性樹脂からなることによって、背面層40と複数の粒子30がより強固に接着され得る。
【0058】
複数の粒子30が熱可塑性樹脂からなる場合、当該熱可塑性樹のガラス転移温度は背面層40を構成する樹脂のガラス転移温度よりも低いことが好ましい。後述するようにして再帰反射層20と背面層40とを熱圧着する際に、複数の粒子30を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度が背面層40を構成する樹脂のガラス転移温度より低いことによって、複数の粒子30が可塑化し易くなる。その結果、複数の粒子30を介して再帰反射層20と背面層40とが接着され易くなり得る。ただし、複数の粒子30を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、背面層40を構成する樹脂のガラス転移温度より高くてもよい。複数の粒子30を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度が背面層40を構成する樹脂のガラス転移温度より高い場合、再帰反射層20と背面層40とは、複数の粒子30を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度より高い温度で熱圧着されることが好ましい。
【0059】
また、複数の粒子30が熱可塑性樹脂からなる場合、当該熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、再帰反射シート100の使用時の温度より高いことが好ましい。再帰反射シート100の使用時に複数の粒子30が可塑化することが抑制され得る。
【0060】
また、粒子30は着色されていても良い。粒子30が着色されることによって、再帰反射シート100の明度や彩度を高めることができる。粒子30が着色される場合、粒子30の色は、背面層40の色と同系色であることが好ましい。例えば、背面層40が白色に着色される場合、粒子30の色は白や乳白色であることが好ましい。このように粒子30の色が背面層40の色と同系色であることによって、平面視において背面層40の色と粒子30の色との差が目立ち難くなり、再帰反射シート100の外観の均一性が向上され得る。
【0061】
また、粒子30が無色透明であることも好ましい。粒子30が無色透明であることによって、背面層40の色によらず粒子30が目立ち難くなり、再帰反射シート100の外観が向上され得る。
【0062】
また、粒子30は中空粒子であっても良い。「中空粒子」とは、外殻の内部に空洞が形成されている粒子をいう。なお、この空洞内は、真空であってもよく、気体が充填されていてもよい。
【0063】
粒子30の形状、大きさ、数は、背面層40と再帰反射素子24との間に空隙32が形成され得る範囲であれば、特に限定されない。ただし、複数の粒子30が球状であることが好ましい。
【0064】
粘着剤層50は、背面層40の再帰反射層20側とは反対側に設けられ、再帰反射シート100を使用する際に被着体に貼り付けられる層である。
【0065】
粘着剤層50を構成する材料として、例えば、感圧接着剤、感熱型接着剤、架橋型接着剤などから適宜選択することができる。感圧接着剤として、例えば、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ノニルアクリレートなどのアクリル酸エステルをアクリル酸、酢酸ビニルなどと共重合して得られるポリアクリル酸エステル感圧接着剤、シリコーン系樹脂感圧接着剤、ゴム系感圧接着剤等が挙げられる。感熱型接着剤として、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。粘着剤層50に優れた耐候性及び粘着性を備えさせる観点からは、アクリル系樹脂またはシリコーン系樹脂を用いることが好ましい。
【0066】
粘着剤層50が所定の顔料を含むことによって、再帰反射シート100の用途に応じて再帰反射シート100の明度や彩度を容易に向上させることができる。例えば、粘着剤層50が酸化チタン等の白色顔料を含むことで、再帰反射シート100の明度を向上させることができる。
【0067】
剥離層60は、粘着剤層50の背面層40側とは反対側に設けられる層である。再帰反射シート100の使用前に剥離層60が粘着剤層50を覆うことによって、粘着剤層50にゴミ等が付着したり、粘着剤層50が意図しない場所に付着したりすることが抑制される。一方、再帰反射シート100が使用されるときには、剥離層60は粘着剤層50から剥離される。
【0068】
このような剥離層60は、特に限定されないが、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム等で構成される。
【0069】
以上に説明した再帰反射シート100は、再帰反射層20、背面層40、複数の粒子30、及び空隙32を備える。本実施形態の再帰反射シート100では、再帰反射素子24と背面層40とに挟まれて複数の粒子30が固定される。また、背面層40と再帰反射素子24との間には空隙32が形成され、空隙32には空気等の気体が閉じ込められる。そして、この気体と再帰反射素子24との屈折率差によって、再帰反射層20側から入射した光を、図3に示す再帰反射素子24と空隙32との界面IFで再帰反射層20側に反射させることができる。また、本実施形態の再帰反射シート100では、厚さ方向の圧力が加えられたとしても、複数の粒子30に支えられることで空隙32が潰れることが抑制され得る。従って、本実施形態の再帰反射シート100では、厚さ方向に圧力が加えられる場合であっても再帰反射性の低下が抑制され得る。
【0070】
また、本実施形態の再帰反射シート100では、背面層40のうち再帰反射素子24側の面の少なくとも一部は樹脂からなり、複数の粒子30の表面の少なくとも一部も樹脂からなることによって、背面層40と複数の粒子30とが強固に接着され得る。そのため、複数の粒子30の位置がずれることが抑制され得る。
【0071】
また、本実施形態の再帰反射シート100では、再帰反射素子24と背面層40とが複数の粒子30のうち少なくとも一部の粒子30を介して接着される。このように複数の粒子30を介して再帰反射素子24と背面層40とが接着されることによって、再帰反射素子24と背面層40とが強固に接着され得る。
【0072】
また、粒子30の全体が樹脂からなる場合、背面層40と粒子30とがより強固に接着され得る。上記のように再帰反射素子24と背面層40とが粒子30を介して接着される場合は、再帰反射素子24と背面層40とがより強固に接着され得る。
【0073】
また、本実施形態の再帰反射シート100では、再帰反射素子24と背面層40とが接着する接着部42を有し、平面視において、接着部42は複数のカプセル部46を囲うように連続して形成され、複数のカプセル部46において、空隙32が形成される。接着部42が複数のカプセル部46を囲うように連続して形成されることによって、厚さ方向の圧力が加えられたとしても接着部42に支えられることにより、複数のカプセル部46において空隙32が潰れることが抑制され得る。また、本実施形態の再帰反射シート100では、再帰反射素子24と背面層40とが接着する接着部42が複数のカプセル部を囲うように連続して形成されるため、水や異物が触れる可能性のある屋外等の環境下で使用される場合において、複数のカプセル部46に水や異物が侵入することが抑制され得る。従って、カプセル部46において、再帰反射素子24と複数の粒子30との間に形成される空隙32が水や異物によって埋められることが抑制され得る。このため、本実施形態の再帰反射シート100では、水や異物が触れる屋外等の環境下で使用される際の信頼性が向上され得る。
【0074】
また、本実施形態の再帰反射シート100では、接着部42において、背面層40と再帰反射素子24との間に粒子30と同じ材料からなるバインダ部45が形成される。背面層40と再帰反射層20とを後述するように熱圧着させる場合において、背面層40と再帰反射素子24との間に複数の粒子30が介在することによって、複数の粒子30は融けてバインダ部45となり得る。このように接着部42において背面層40と再帰反射素子24との間にバインダ部45が形成されることによって、再帰反射素子24と背面層40との接着強度が高められ得る。
【0075】
また、本実施形態の再帰反射シート100では、複数のカプセル部46において、背面層40の一部と再帰反射素子24の一部とが接着される。平面視において、背面層40と再帰反射素子24とが接着する部位は、背面層40と再帰反射素子24との間に空隙32が形成される部位に比べて明るく見える。よって、背面層40と再帰反射素子24とが接着する部位と、背面層40と再帰反射素子24との間に空隙32が形成される部位とでは、明度差が生じる。ここで、上記のように接着部42で囲われるカプセル部46内においても背面層40と再帰反射素子24とが部分的に接着されることによって、接着部42とカプセル部46との明度差が低減され得る。よって、再帰反射シート100の外観の均一性が向上され得る。また、背面層40と再帰反射素子24とが接着される部位が増大されることにより、再帰反射素子24と背面層40との接着強度が高められ得る。
【0076】
また、再帰反射シート100では、複数の粒子30によって再帰反射に寄与する空隙32を形成するため、複数の粒子30の大きさ、形状、数および分布を調整することによって、再帰反射シート100の全体に亘って空隙32の大きさや分布を調整することが容易である。従って、再帰反射シート100では、再帰反射シート100の全体に亘って再帰反射性を均一に近づけたり、再帰反射シート100の再帰反射性の高さを調整したりすることが容易である。
【0077】
ここで、複数の粒子30の平均粒径daが再帰反射素子24の高さh以上である場合、再帰反射素子24と複数の粒子30との間に空隙32が形成され易くなり、再帰反射シート100の再帰反射性が高められ易くなる。一方、複数の粒子30の平均粒径daが再帰反射素子24の高さhより小さい場合、再帰反射素子24と背面層40との接着部42の面積を大きくすることが容易になり、再帰反射素子24と背面層40と接着強度が高められ易くなる。また、複数の粒子30の平均粒径daと再帰反射素子24の高さhとの比da/hが0.40以上1.25以下である場合、再帰反射素子24と複数の粒子30との間に適切な大きさの空隙32が形成されて再帰反射シート100の再帰反射性が高められ易くなる。それと同時に、再帰反射素子24と背面層40との接着部42の面積を大きくすることが容易になり、再帰反射素子24と背面層40と接着強度が高められ易くなる。
【0078】
また、複数の粒子30の数npと互いに隣り合う再帰反射素子24の間に形成される谷部26の数nvとの比np/nvが0.50以上5.00以下である場合、再帰反射素子24と複数の粒子30との間に適切な大きさの空隙32が形成されて再帰反射シート100の再帰反射性が高められ易くなる。また、比np/nvが0.50以上5.00以下であることによって、再帰反射素子24と背面層40との接着部42の面積を大きくすることが容易になり、再帰反射素子24と背面層40と接着強度が高められ易くなる。これらの観点から、比np/nvは、0.50以上2.00以下であることがより好ましい。
【0079】
また、複数の粒子30が球状であることによって、再帰反射素子24と複数の粒子30との間に適切な大きさの空隙32が形成され易くなり、再帰反射シート100の再帰反射性が高められ易くなる。
【0080】
また、粒子30が上記のように中空粒子である場合、再帰反射素子24と複数の粒子30との間に空隙32が形成されていることに加えて、粒子30自体が再帰反射素子24よりも屈折率が低い空洞を有する。すなわち、再帰反射素子24と背面層40との間において、再帰反射素子24よりも屈折率が低い空間の体積を大きくし得る。このため、再帰反射シート100の再帰反射性がより高められ得る。
【0081】
また、再帰反射素子24においてより効率良く再帰反射させる観点からは、再帰反射素子24を構成する材料の屈折率が背面層40を構成する材料の屈折率よりも大きいことが好ましい。再帰反射素子24を構成する材料の屈折率が背面層40を構成する材料の屈折率よりも大きいことによって、接着部42においても光を反射させることができる。また、同様の観点から、複数の粒子30の屈折率は、再帰反射素子24の屈折率より小さいことが好ましい。粒子30の屈折率が再帰反射素子24の屈折率より小さいことによって、再帰反射素子24と粒子30とが接する部位において、再帰反射素子24側から入射する光は再帰反射素子24と粒子30との界面で再帰反射素子24側に反射し易くなる。同様に、バインダ部45の屈折率は再帰反射素子24の屈折率より小さいことが好ましい。
【0082】
次に、本実施形態の再帰反射シート100の製造方法について説明する。図4は、本実施形態の再帰反射シート100の製造方法のフローチャートを示す図である。図4に示すように、本実施形態の再帰反射シートの製造方法は、積層工程P1、圧着工程P2、粘着剤層積層工程P3、剥離層積層工程P4、表面保護層積層工程P5を有する。
【0083】
<積層工程P1>
本工程は、再帰反射層20と背面層40とを複数の粒子が介在するように積層する工程である。まず、背面層40を用意し、背面層40が粘性を有する状態で背面層40の表面に複数の粒子30を分散させて配置する。その後、背面層40のうち複数の粒子30が配置された側の面と再帰反射層20とを重ねる。または、再帰反射層20の再帰反射素子24が形成された側の面に複数の粒子30を分散させて配置した後に背面層40を重ねる。
【0084】
<圧着工程P2>
本工程は、再帰反射素子24と背面層40との間に空隙32が形成されるように再帰反射層20と背面層40とを熱圧着する工程である。具体的には、再帰反射層20と背面層40とを重ねた状態で再帰反射層20を平らな面に載置し、背面層40側から熱を加えて押圧する。その結果、背面層40に凹部48が形成され、背面層40のうち凹部48とは反対側の面において、背面層40と再帰反射素子24とが熱圧着される。このようにして、接着部42が形成される。なお、本実施形態では、格子状の押圧部材を用いて上記のように背面層40を押圧することにより、図1に示すような格子状の接着部42が形成される。また、上記のように押圧する際、カプセル部46となる部位でも背面層40が再帰反射層20側にある程度押されるため、一部接着部44が形成される。
【0085】
上記のように背面層40側から押圧して再帰反射層20と背面層40とを熱圧着することによって、再帰反射層20の変形が抑制され、再帰反射シート100の再帰反射性への影響が低減され得る。
【0086】
また、本実施形態の圧着工程P2では、再帰反射素子24と背面層40とが複数の粒子30のうち少なくとも一部の粒子30を介して接着される。このように複数の粒子30を介して再帰反射素子24と背面層40とが接着されることによって、再帰反射素子24と背面層40とが強固に接着され得る。
【0087】
また、本実施形態の圧着工程P2では、背面層40と再帰反射素子24との間に粒子30からなるバインダ部45が形成される。背面層40と再帰反射素子24との間に粒子30が介在した状態で熱圧着されることによって、粒子30が溶融し、背面層40と再帰反射層20との間に粒子30からなるバインダ部45が形成される。このように接着部42において背面層40と再帰反射素子24との間にバインダ部45が形成されることによって、再帰反射素子24と背面層40との接着強度が高められ得る。
【0088】
また、本実施形態の圧着工程P2では、複数のカプセル部46において、背面層40の一部と再帰反射素子24の一部とが接着される。このように複数のカプセル部46において背面層40の一部と再帰反射素子24の一部とが接着されることによって、上記のように接着部42とカプセル部46との明度差が低減されるとともに、再帰反射素子24と背面層40との接着強度が高められ得る。
【0089】
<粘着剤層積層工程P3>
本工程は、背面層40のうち再帰反射層20側とは反対側の面に粘着剤層50を積層する工程である。具体的には、背面層40のうち再帰反射層20側とは反対側の面に粘着剤層50となる粘着剤を塗布する工程である。
【0090】
<剥離層積層工程P4>
本工程は、粘着剤層50のうち背面層40側とは反対側の面に剥離層60を積層する工程である。具体的には、剥離層60となる離型フィルムを用意し、当該離型フィルムと粘着剤層50とを貼り合わせる工程である。
【0091】
<表面保護層積層工程P5>
本工程は、再帰反射層20のうち背面層40側とは反対側の面に表面保護層10を積層する工程である。具体的には、再帰反射層20のうち再帰反射素子24が形成される側とは反対側の面に表面保護層10となる樹脂を塗工する工程である。
【0092】
なお、積層工程P1の後に圧着工程P2が行われればよく、他の工程の順序は特に限定されない。例えば、粘着剤層50及び剥離層60からなる積層体を作製した後に粘着剤層50を背面層40に積層してもよい。また、表面保護層10は、積層工程P1より前に再帰反射層20に積層されてもよく、圧着工程P2の後で他の層を積層する前に再帰反射層20に積層されてもよい。
【0093】
以上に説明した再帰反射シート100の製造方法は、積層工程P1及び圧着工程P2を備える。本実施形態の再帰反射シート100の製造方法によれば、再帰反射素子24と背面層40との間に複数の粒子30が挟まれて背面層40と再帰反射素子24との間に空隙32が形成された再帰反射シート100が製造される。よって、上記のように厚さ方向に圧力が加えられる場合であっても再帰反射性の低下が抑制され得る再帰反射シート100が製造される。また、背面層40のうち再帰反射素子24側の面の少なくとも一部は樹脂からなり、複数の粒子30の表面の少なくとも一部も樹脂からなることによって、圧着工程P2にいて背面層40と複数の粒子30とが強固に接着され得る。そのため、複数の粒子30の位置がずれることが抑制され得る。
【0094】
また、本実施形態の再帰反射シート100の製造方法では、粒子30の全体が樹脂からなる場合、圧着工程P2において、背面層40と粒子30とがより強固に接着され得る。また、再帰反射素子24と背面層40とが粒子30を介して接着される場合は、再帰反射素子24と背面層40とがより強固に接着され得る。
【0095】
また、本実施形態の再帰反射シート100の製造方法において、粒子30が熱硬化性樹脂からなる場合は、圧着工程P2において加熱された粒子30が硬化し、強度が高くなり得る。よって、再帰反射シート100は、厚さ方向に圧力が加えられる場合であっても再帰反射性の低下がより抑制され得る。
【0096】
以上、本発明について好適な実施形態を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0097】
例えば、上記実施形態では、表面保護層10を備える例を挙げて説明したが、表面保護層10は必須の構成ではない。
【0098】
また、上記実施形態では、粘着剤層50を備える例を挙げて説明したが、粘着剤層50は必須の構成ではない。例えば、背面層40が粘着剤からなる場合、粘着剤層50が設けられなくとも再帰反射シートを対象物に貼り付けることができるため、再帰反射シートの層構成を簡単にすることができ、再帰反射シートの生産コストの上昇を抑制することができる。
【0099】
また、上記実施形態では、平面視において接着部42が格子状に形成される例を挙げて説明した。すなわち、接着部42で囲われるカプセル部46が四角形である形態を例に挙げて説明した。しかし、本発明は当該形態に限定されず、接着部42で囲われるカプセル部46の平面視における形状は円形、楕円形、四角形以外の多角形等の如何なる形状であってもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、接着部42においてバインダ部45が形成される例を挙げて説明したが、本発明は当該形態に限定されない。図5は、本発明の変形例に係る再帰反射シートについて、図2と同様の視点で示す断面図である。図5に示す再帰反射シート101では、接着部42にバインダ部45が形成されていない。この場合、積層工程P1において、接着部42とされる部位には粒子30が配置されないように再帰反射層20と背面層40とが積層される。
【0101】
また、上記実施形態では、接着部42が形成される例を挙げて説明したが、本発明は当該形態に限定されない。図6は、本発明の他の変形例に係る再帰反射シートについて、図2と同様の視点で示す断面図である。図6に示す再帰反射シート102では、複数のカプセル部46及びカプセル部46を囲うように連続して形成される接着部42は形成されていない。このような再帰反射シート102は、圧着工程P2において背面層40側から全体的に熱を加えて押圧することにより製造され得る。再帰反射シート102では、上記実施形態と同様に、複数の粒子30を介して再帰反射素子24の一部と背面層40の一部とが断続的に接着され得る。また、再帰反射シート102では、上記実施形態と同様に、一部接着部44が形成されることによって再帰反射素子24の一部と背面層40の一部とが断続的に接着され得る。
【産業上の利用可能性】
【0102】
以上説明したように、本発明によれば、厚さ方向に圧力が加えられる場合であっても再帰反射性の低下が抑制される再帰反射シート及び当該再帰反射シートの製造方法が提供され、カーラインセンスプレートや広告等の分野においての利用することができる。
【符号の説明】
【0103】
10・・・表面保護層
20・・・再帰反射層
24・・・再帰反射素子
26・・・谷部
30・・・粒子
32・・・空隙
40・・・背面層
42・・・接着部
44・・・一部接着部
46・・・カプセル部
50・・・粘着剤層
60・・・剥離層
100,101,102・・・再帰反射シート
P1・・・積層工程
P2・・・圧着工程
P3・・・粘着剤層積層工程
P4・・・剥離層積層工程
P5・・・表面保護層積層工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6