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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】パッキン
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20220322BHJP
   F02F 11/00 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
F16J15/10 T
F16J15/10 C
F02F11/00 P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017211098
(22)【出願日】2017-10-31
(65)【公開番号】P2019082232
(43)【公開日】2019-05-30
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000144810
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友和
(72)【発明者】
【氏名】小杉 泰裕
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-287664(JP,A)
【文献】特開2009-002477(JP,A)
【文献】特開2007-321922(JP,A)
【文献】特開2012-180933(JP,A)
【文献】特開2011-179588(JP,A)
【文献】特開2008-281110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F5/00
11/00
F16J15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に環状としてなると共に該長手方向を均一断面としたパッキンであって、
該パッキンは長手方向に直交する断面で見ると、頂面弧状部と底面側弧状部と両側の側面弧状部とのそれぞれ離間した4つの弧状部を有し、前記頂面弧状部の両端と両側の前記側面弧状部とは上部連結面とでそれぞれ接続され、前記底面側弧状部の両端と両側の前記側面弧状部とは下部連結面とでそれぞれ接続され、両側の前記側面弧状部間が最大幅を有し、前記頂面弧状部上の高さ方向における頂点と前記底面側弧状部の高さ方向における最底点との線分に対して該最底点の鉛直線とのなす角度が前記環状の外側又は内側に傾斜形成され、前記底面側弧状部は、幅方向中心側で水平線に近づく大きな曲率半径である広幅とした底面弧状部と該底面弧状部の両端に接続し且つ該底面弧状部よりも曲率半径の小さな底面端弧状部とからなり前記底面弧状部,前記頂面弧状部,前記側面弧状部のそれぞれの曲率半径をR1,R2,R3とすると、R3<R2≦R1とし、前記断面の前記幅方向において左右非対称に形成されてなることを特徴とするパッキン。
【請求項2】
請求項1に記載のパッキンにおいて、前記角度は前記環状の外側に傾斜形成されてなることを特徴とするパッキン。
【請求項3】
請求項1に記載のパッキンにおいて、前記角度は前記環状の内側に傾斜形成されてなることを特徴とするパッキン。
【請求項4】
請求項1,2又は3に記載のパッキンにおいて、両側の前記上部連結面及び両側の前記下部連結面は平坦状或いは凹面状をなすことを特徴とするパッキン。
【請求項5】
請求項1,2又は3に記載のパッキンにおいて、両側の前記下部連結面及び前記環状の内側の前記上部連結面は平坦状或いは凹面状をなし、前記頂面弧状部の前記環状の外側は、前記頂面弧状部より外側位置側に膨出形成されてなることを特徴とするパッキン。
【請求項6】
長手方向に環状としてなるパッキンであって、該パッキンは長手方向に直交する断面で見ると、頂面弧状部と底面側弧状部と両側の側面弧状部とを有し、前記頂面弧状部の両端と両側の前記側面弧状部とは上部連結面とでそれぞれ接続され、前記底面側弧状部の両端と両側の前記側面弧状部とは下部連結面とでそれぞれ接続され、両側の前記側面弧状部間が最大幅を有し、前記頂面弧状部上の高さ方向における頂点と前記底面側弧状部の高さ方向における最底点との線分に対して該最底点の鉛直線とのなす角度が前記環状の外側又は内側に傾斜形成されてなり、前記環状の長手方向の一部の前記角度が前記環状の外側に傾斜形成されると共に、前記環状の他の長手方向の一部の前記角度が前記環状の内側に傾斜形成されてなり前記底面弧状部,前記頂面弧状部,前記側面弧状部のそれぞれの曲率半径をR1,R2,R3とすると、R3<R2≦R1とし、前記断面の幅方向において左右非対称に形成されてなることを特徴とするパッキン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ,エンジン等の機器における密封性を要するハウジングで且つハウジング本体とカバー板との何れかの溝に設けられ、低い充填率でありながら溝からの脱落防止と倒れ防止ができ、耐久性及び信頼性に優れ、更には、金型の費用及び製品費用の低廉化が図れ、シール性能も均一且つ安定化できるパッキンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポンプ,エンジン等の機器のハウジングを構成するハウジング本体とカバー板において、密封性を必要とする部分ではOリング,シール材等の密封材が多く使用されている。この密封材は、前記ハウジング本体やカバー板等の構成部材の接合面の間を装着するために、ハウジング本体又はカバー板の何れか一方に溝が形成されて、該溝に密封材が挿入配置される構造としたものである。
【0003】
溝に挿入配置された密封材は、ハウジング本体とカバー板とを組み付ける作業時や、或いは別の工場等への輸送中に、溝から簡単に外れたり、脱落しないようにする目的のために、密封材に突起が形成されたものが存在し、溝に嵌め込んだ状態で、密封材が溝から脱落しない構造としたものが存在する。このような技術として代表的なものが、下記特許文献1に開示され、ハウジング本体の組付け作業時において密封材が溝から脱落することによる作業の非効率性という問題点は解決されている。なお、特許文献1では、密封材はガスケットと称されており、以下、特許文献1の説明ではガスケットを使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-80167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスケットの機器への装着については、さらに別の問題点が存在する。この問題点とは、溝にガスケットを装着する時に、溝に挿入配置されたガスケットの前記溝から突出する部分つまり、カバー板に密着する部分が、該カバー板にて押し付けられるときに、ガスケットの長手方向に直交する断面の頂部付近が内方又は外方に倒れてしまうこともある。
【0006】
そのために、ガスケットは密封性が損なわれるように変形してしまい所望の密封性能が得られないことも十分に有りうる。特許文献1では、このような問題点を解決するために、ガスケットが倒れるように形状変化するのを防止するために、ガスケット本体の幅方向両側にそれぞれ突設された倒れ防止用突起部と呼ばれる倒れを防止する突起を設けたことが記載されている。
【0007】
特許文献1において、倒れ防止用突起部は、ガスケット本体の幅方向両側の同一箇所、或いは外周面にのみ又は内周面にのみに設けたり、外周面および内周面のそれぞれに交互に設けられている。このように、ガスケットに倒れ防止用突起部が設けられることで、ガスケットの倒れによる不良な変形を防止することができる。
【0008】
しかし、ガスケットに倒れ防止用突起部が設けられることにより、ガスケットは倒れ防止用突起部の断面積が増加し、溝に挿入したときの溝に対するガスケットの充填率が増加することになる。つまり、ガスケットの断面積が溝の断面積に対して占める割合が高くなる。このように充填率が高くなると、ガスケットが溝からはみ出そうとする量が多くなる。このようになると、新たな問題が生じる。
【0009】
ガスケットが使用されるポンプ等の流体を扱う機器において、内部の流体の圧力は一般的にハウジングの内方から外方に向かって作用することが多い。つまり、ガスケットにはハウジングの内方から外方に向かう方向に圧力を受けるものである。
【0010】
しかしながら、エンジン,ポンプ,ミッション等の密封性を要する機器では、水分又はオイル等の流体を扱い又は制御するものである。そして、機器の作動中に内部の流体の圧力は増減することがある。特に、ポンプでは、流体の圧力が変化し、その増減における差が大きくなり易い。そのために、流体の一部がハウジング本体とカバー板との間の微小な隙間から浸入し、その圧力がガスケットにかかることになる。
【0011】
ガスケットにかかる流体の圧力は、多くの時間ではハウジングの内方から外方に向かって作用するものであり、ガスケットの長手方向に直交する断面で且つ圧力のかかる上方箇所は、多くの時間では外方に向かって押圧され、上方部分が倒れるように傾斜する。特許文献1のようにガスケットの充填率が高いと、ガスケットの一部が溝からハウジング本体とカバー板の僅かな隙間に食い込む恐れが生じる。そして、このようなことが繰り返して起こると、ガスケットが劣化し、良好な密封性が保持できなくなる。そこで、本発明が解決しようとする技術的課題は、以上に述べたガスケットにおける課題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、発明者は、前記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、長手方向に環状としてなると共に該長手方向を均一断面としたパッキンであって、該パッキンは長手方向に直交する断面で見ると、頂面弧状部と底面側弧状部と両側の側面弧状部とのそれぞれ離間した4つの弧状部を有し、前記頂面弧状部の両端と両側の前記側面弧状部とは上部連結面とでそれぞれ接続され、前記底面側弧状部の両端と両側の前記側面弧状部とは下部連結面とでそれぞれ接続され、両側の前記側面弧状部間が最大幅を有し、前記頂面弧状部上の高さ方向における頂点と前記底面側弧状部の高さ方向における最底点との線分に対して該最底点の鉛直線とのなす角度が前記環状の外側又は内側に傾斜形成され、前記底面側弧状部は、幅方向中心側で水平線に近づく大きな曲率半径である広幅とした底面弧状部と該底面弧状部の両端に接続し且つ該底面弧状部よりも曲率半径の小さな底面端弧状部とからなり前記底面弧状部,前記頂面弧状部,前記側面弧状部のそれぞれの曲率半径をR1,R2,R3とすると、R3<R2≦R1とし、前記断面の前記幅方向において左右非対称に形成されてなることを特徴とするパッキンとしたことにより、前記課題を解決した。
【0013】
請求項2の発明を、請求項1に記載のパッキンにおいて、前記角度は前記環状の外側に傾斜形成されてなることを特徴とするパッキンとしたことにより、上記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1に記載のパッキンにおいて、前記角度は前記環状の内側に傾斜形成されてなることを特徴とするパッキンとしたことにより、前記課題を解決した。
【0014】
請求項4の発明を、請求項1,2又は3に記載のパッキンにおいて、両側の前記上部連結面及び両側の前記下部連結面は平坦状或いは凹面状をなすことを特徴とするパッキンとしたことにより、上記課題を解決した。請求項5の発明を、請求項1,2又は3に記載のパッキンにおいて、両側の前記下部連結面及び前記環状の内側の前記上部連結面は平坦状或いは凹面状をなし、前記頂面弧状部の前記環状の外側は、前記頂面弧状部より外側位置側に膨出形成されてなることを特徴とするパッキンとしたことにより、前記課題を解決した。
【0016】
請求項6の発明を、長手方向に環状としてなるパッキンであって、該パッキンは長手方向に直交する断面で見ると、頂面弧状部と底面側弧状部と両側の側面弧状部とを有し、前記頂面弧状部の両端と両側の前記側面弧状部とは上部連結面とでそれぞれ接続され、前記底面側弧状部の両端と両側の前記側面弧状部とは下部連結面とでそれぞれ接続され、両側の前記側面弧状部間が最大幅を有し、前記頂面弧状部上の高さ方向における頂点と前記底面側弧状部の高さ方向における最底点との線分に対して該最底点の鉛直線とのなす角度が前記環状の外側又は内側に傾斜形成されてなり、前記環状の長手方向の一部の前記角度が前記環状の外側に傾斜形成されると共に、前記環状の他の長手方向の一部の前記角度が前記環状の内側に傾斜形成されてなり前記底面弧状部,前記頂面弧状部,前記側面弧状部のそれぞれの曲率半径をR1,R2,R3とすると、R3<R2≦R1とし、前記断面の幅方向において左右非対称に形成されてなることを特徴とするパッキンとしたことにより、前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明では、例えばエンジン,ポンプ,ミッション等で、且つ例えば水,オイル等が充填される密封性を必要とする機器のハウジングにおいて、本発明のパッキンは、該パッキンを挿入する溝に対し低い充填率で挿入することができ、特に、上下面を平坦では無く弧状部としたこと、特に、底面を弧状としたことで、パッキンの潰し時(パッキンの装着時)の発生面圧を高め、より一層シール性(密着性)を向上させることができる。これは接触面積が減るためである。
【0020】
さらに、パッキン全周を環状で均一断面としたことで、パッキンを製造するために複雑な金型形状にする必要が無く、金型の費用が低減できることで製品の費用も低減できる。さらに、パッキン全周が環状で均一断面のためシール性能(ゴムの緊迫力)も均一且つ安定化できる利点がある。このような断面形状としたことにより、パッキンの充填率を低くし、好ましくは全周に亘って90%以下にも容易にできる。さらに、簡単に説明すると、パッキン使用中の局所的な高圧発生によりパッキンの一部のみが外側にはみ出すとパッキンが切れてしまい、そこから漏れが発生する恐れがあるが、環状で均一断面としたことでその不都合も解消できる。
【0021】
また、請求項1の発明では、前記頂面弧状部上の高さ方向における頂点と前記底面側弧状部の高さ方向における最底点との線分に対して該最底点の鉛直線とのなす角度が前記環状の外側又は内側に傾斜形成されてなることで、環状の内側又は外側が圧力が高くなった場合にも良好に対応ができる。つまり、圧力起因の倒れ防止が良好にできる。さらに、上下方向の中間位置である両側の側面弧状部間が最大幅を有してなるために、溝からの外れ防止が良好にできる利点がある。さらに、請求項1の発明では、前記底面側弧状部は、幅方向中心側の広幅で曲率半径の大きな底面弧状部と該底面弧状部の両端に接続する曲率半径の小さな底面端弧状部角とからなることで、特に安定したシール性のパッキンを提供できる。 また請求項1においては、前記底面弧状部,前記頂面弧状部,前記側面弧状部のそれぞれの曲率半径をR1,R2,R3とすると、R3<R2≦R1であるために、底部では、パッキン設置時の着座姿勢を安定させることができ、パッキン設置時の倒れを防止し、シール機能を確保する。また、上面は底面より小さい又は同じ弧状部であるので倒れ防止にも良好である。さらに、前記側面弧状部の曲率半径が小さいためゴムの量を減らすことができる。
【0022】
請求項2の発明では、前記角度は前記環状の外側に傾斜形成されているために、内側の高い水圧・油圧によるパッキン上面の倒れを防止することができる。特に、内側が高圧発生の頻度が高い場合に外側に倒れにくくできる。内側の高い水圧・油圧によりパッキン上面が外側に倒れることを防止するため、予めパッキン上面を幅方向中央位置よりも外側に倒した形状とする。また、請求項3の発明では、請求項2とは逆に内側の低い水圧・油圧によるパッキン上面の倒れを防止することができる。
【0023】
請求項4の発明では、両側の前記上部連結面及び両側の前記下部連結面は平坦状或いは僅かに凹面状をなすことで、パッキン材料の使用量を低減させるのみならず、パッキンの充填率を低くすることができる。特に、凹面状をなすことで、ゴムの量を減らすことができ、充填率を低減できるため、ゴムの材料費も低減できる。
【0024】
請求項5の発明においては、両側の前記下部連結面及び内側の前記上部連結面は平坦状或いは凹面状をなし、前記頂面弧状部の外側は,より外側位置側に膨出形成されてなることを特徴とするパッキンとして構成されていることにより、環状の内側又は外側に、より圧力が高くなった場合であっても良好にシールできるパッキンを提供できるものである。つまり、環状の内側が、より高い水圧・油圧によるパッキン上面の倒れを防止することができる利点がある。
【0026】
請求項6の発明では、前記環状の長手方向の一部の前記角度が前記環状の外側に傾斜形成され、前記環状の長手方向の他の一部の前記角度が前記環状の内側に傾斜形成されてなるパッキンとしたことで、特に、環状のパッキンにおいて、その環状の一部において、内側が高圧になる領域が存在し、環状の他の一部において、内側が低圧になる領域が存在しているような場合に、外れ防止のみならず、倒れ防止機能も良好に対応できるパッキンを提供できる。
【0028】
さらに、パッキン全周を環状で均一断面としたことで、複雑な金型形状にする必要が無く、金型の費用が低減できることで製品の費用も低減できる。さらに、パッキン全周を環状で均一断面としたためシール機能(ゴムの緊迫力)も均一且つ安定化できる利点がある。このような断面形状としたことにより、パッキンの充填率を低くできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】(A)は本発明における第1実施形態のパッキンの平面図、(B)は(A)のX1-X1矢視,X2-X2矢視及びX3-X3矢視拡大断面図、(C)は(A)の一部拡大斜視図である。
図2】(A)は本発明における第1実施形態のパッキンの拡大断面図、(B)は第1実施形態のパッキンをハウジングの溝に挿入している初期状態の拡大断面図、(C)は(B)においてカバー板で押圧して溝に挿入途中の拡大断面図、(D)は(C)においてカバー板で押圧して溝に挿入完了した第1実施形態のパッキンの要部拡大断面図である。
図3】(A)は本発明における第2実施形態のパッキンの拡大断面図、(B)は第2実施形態のパッキンをハウジングの溝に挿入している初期状態の拡大断面図、(C)は(B)においてカバー板で押圧して溝に挿入途中の拡大断面図、(D)は(C)においてカバー板で押圧して溝に挿入完了した第2実施形態のパッキンの要部拡大断面図である。
図4】(A)は本発明における第1実施形態の変形例のパッキンの平面図、(B)は(A)のX4-X4矢視,X5-X5矢視及びX6-X6矢視拡大断面図、(C)は(A)の一部拡大斜視図である。
図5】(A)は本発明における第3実施形態のパッキンの拡大断面図、(B)は第3実施形態のパッキンをハウジングの溝に挿入している初期状態の拡大断面図、(C)は(B)においてカバー板で押圧して溝に挿入途中の拡大断面図、(D)は(C)においてカバー板で押圧して溝に挿入完了した第3実施形態のパッキンの要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明は第1実施形態,第2実施形態及び第3実施形態が存在する。その実施形態として共通する構成としてのパッキンAは、図1に示すように、無端且つ可撓性を有する環(ループ)形状としたものである。パッキンAは、ポンプ,エンジン,ミッション等の流体が通過する機器に装着されるものである。さらに、パッキンAの平面的な形状は、円弧形状,長方形状等の定形的な形状に限定されるものではなく、後述する機器のハウジングBにおける溝8の平面的な全体形状と略等しくなるように形成されるものである。
【0032】
具体的には、前記機器のハウジングBは、ハウジング本体6とカバー板7にて構成され、ハウジング本体6又はカバー板7の何れか一方にパッキンAが挿入される溝8が形成されている。以下の説明では、溝8はハウジング本体6側に形成されているものとして説明する。
【0033】
先ず、第1実施形態から説明する(図1及び図2参照)。長手方向に環状としてなると共に該長手方向を全周に亘って均一断面としたパッキンA1を備え、該パッキンA1は、主に、頂面弧状部1と底面側弧状部2と両側面弧状部3,3とを有し、前記頂面弧状部1の両側と前記両側面弧状部3,3とは上部連結面4,4とで接続されると共に、前記底面側弧状部2,2の両側と前記両側面弧状部3,3とは下部連結面5,5とでそれぞれ接続され、且つ前記両側面弧状部3,3間が最大幅を有している。なお、幅とは図の断面における左右方向を意味する。
【0034】
前記底面側弧状部2は断面で見ると、幅方向中心側の広幅の底面弧状部21と、該底面弧状部21の両端の底面端弧状部22,22とから構成されている。前記底面弧状部21の曲率半径は、水平線に近づくように大きく形成されている。前記底面端弧状部22の曲率半径は、かなり小径形成されており、左右側では、略同径に形成されているが、左側又は右側の底面端弧状部22が、他方側の底面端弧状部22よりも僅かに大きく形成されていても良い。
【0035】
また、前記底面弧状部21,前記底面端弧状部22の曲率半径を、それぞれR1,R4とすると、
なる式として構成されている。両側の前記上部連結面4,4及び両側の前記下部連結面5,5は平坦状或いは僅かに凹面状に形成されている。特に、凹面状に形成されることで、充填率の軽減化を図ることができる。さらには、材料の軽量化の目的も備えている。なお、「僅か」とは、約50μm~0.5mmを意味する。
【0036】
前記頂面弧状部1上の高さ方向における頂点P1と、前記底面側弧状部2の高さ方向における最底点P2との線分と、前記最底点P2の鉛直線hとのなす角度θが前記環状の外側位置になるように傾斜形成されている〔図1(B)及び図2(A)参照〕。ここで、パッキンAの長手方向とは、パッキンAを部分的に見た状態であり〔図1(A)X1―X1位置から(A)X3―X3位置まで参照〕、パッキンAを全体として見ると、その長手方向を周方向と称することもできる。
【0037】
特に、前記底面弧状部21,前記頂面弧状部1,両側の前記側面弧状部3,3のそれぞれの曲率半径をR1,R2,R3とすると、
なる式として構成されている。
【0038】
パッキンAは、ハウジングBにおけるハウジング本体6とカバー板7との間に装着され、ハウジングBの内部に圧力を発生させるインペラやロータ等の圧力発生部分を覆うもので、パッキンAの内周側は圧力発生部分に近接した部位である。従って、パッキンAの内周側は、ポンプ等の流体を扱うハウジングBでは、流体の圧力を受ける。
【0039】
パッキンA1の自由状態での高さをHとし、前記溝8の深さをDとすると、
パッキンAの頂面弧状部1が溝8の開口から僅かにはみ出す構成となっている。パッキンAの頂面弧状部1が溝8の開口上端面からはみ出する部分は、カバー板7によって押圧され〔図2(C)参照〕、押し潰されながらカバー板7に密着し、ハウジングBの密封状態を構成する〔図2(D)参照〕。
【0040】
パッキンAの両側の側面弧状部3,3の長手方向に直交する断面の自由状態での幅をTとし、前記溝8の幅方向の間隔をWとすると、
これは、パッキンAの溝8に対する脱落を防止するためである。
【0041】
ここで、溝8に対するパッキンAの充填率とは、溝8の長手方向に直交する断面積に対して、挿入されたパッキンAの長手方向に直交する断面積が実質的に占める割合のことをいう。充填率は、100%の場合では、溝8がパッキンAで完全に満たされる。したがって、充填率が100%未満では、パッキンAが挿入された溝8内において、パッキンAと溝8との間に空隙が生じるものである。充填率が低いということは、パッキンAと溝8との間に生じる空隙が多くなることである。
【0042】
したがって、充填率を可能な限り低くすることにより、パッキンAの溝8への挿入が容易にできる。また、パッキンAの溝8への挿入が完了し、ハウジング本体6にカバー板7が装着されるときに、パッキンAの一部が溝8からはみ出すことがなく、よってハウジング本体6とカバー板7との僅かな空隙部分にパッキンAの一部が食い込むことを防止でき、パッキンAの損傷を防止すると共に、密封性を高く維持することができる。
【0043】
本発明の第1実施形態についてのパッキンA1は、図1及び図2に示すように、環状の内側が高圧になるような機器に対応してのパッキンであったが、図4に示すように、図1(B)及び図2(A)に示す断面とは勝手反対(左右対象)に構成された場合も、前記第1実施形態の変形例のパッキンA1として存在する。該変形例の場合は、環状の内側が低圧になるような機器に対応できる。
【0044】
次に、本発明の第2実施形態について図3に基づいて説明する。長手方向に環状としてなると共に該長手方向を均一断面としたパッキンA2を備え、該パッキンA2は、主に、頂面弧状部1と底面側弧状部2と両側の側面弧状部3,3とを有し、前記底面側弧状部2の両側と両側の前記側面弧状部3,3とは下部連結面5,5とでそれぞれ接続され、且つ両側の前記側面弧状部3,3間が最大幅を有している点等は、第1実施形態(図1及び図2参照)のパッキンA1と同様である。
【0045】
さらに、前記頂面弧状部1上の高さ方向における頂点P1と前記底面側弧状部2の高さ方向における最底点P2との線分と該最底点P2の鉛直線hとのなす角度θが前記環状の外側又は内側に傾斜形成されてなることも、第1実施形態(図1及び図2参照)と同様である。
【0046】
特に、該第1実施形態(図1及び図2参照)と相違している箇所は、前記角度θが外側に傾斜形成された側の前記頂面弧状部1は,より外側位置側に膨出部11として形成されている〔図3(A)参照〕。このときには、該膨出部11に連続した上部連結面4はかなり短めに形成されている。図3(A)では、該上部連結面4及び前記下部連結面5は僅かに凹んで形成されているが、略平坦状に形成されることもある。なお、より凹んで形成された方がゴムの使用量を減らすことができる。
【0047】
前記角度θが外側に傾斜形成された側の前記頂面弧状部1は,より外側位置側に膨出部11として形成されていると、環状の内側に、より圧力が高くなった場合でも倒れを防止できるパッキンを提供できる。つまり、環状の内側が、より高い水圧・油圧であってもパッキン上面の倒れを防止することができる。
【0048】
また、本発明の第3実施形態について図5に基づいて説明する。長手方向に環状としてなると共に該長手方向を均一断面としたパッキンA3を備え、該パッキンA3は、頂面弧状部1と底面側弧状部2と両側の側面弧状部3,3とを有し、前記頂面弧状部1の両側と両側の前記側面弧状部3,3とは上部連結面4,4とでそれぞれ接続されている。
【0049】
さらに、前記底面側弧状部2は、幅方向中心側の広幅の底面弧状部21と、該底面弧状部21の両端の底面端弧状部22,22とから左右対称的に構成されている。前記底面側弧状部2の両端と両側の前記側面弧状部3,3とは下部連結面5,5とでそれぞれ接続され、且つ両側の前記側面弧状部3,3間が最大幅を有して構成されており、これらの構成は、第1実施形態、第2実施形態と略同様である。
【0050】
特に、第3実施形態が、第1実施形態(図1及び図2参照)及び第2実施形態(図3参照)と相違している箇所は、前記頂面弧状部1の頂点P1が前記底面側弧状部2の幅方向の中心位置の鉛直線h上に存在して構成されている。つまり、左右対称に構成されている。第1実施形態及び第2実施形態では、前記頂面弧状部1が角度θ傾斜形成され、左右非対称に形成されていることと大きな相違である。また、第3実施形態のパッキンAにおいて、両側の前記上部連結面4,4及び両側の前記下部連結面5,5は平坦状或いは僅かに凹面状に形成されている。この凹面状の形成は、僅かであるが充填率の軽減化を図れ、材料の軽量化も可能である。
【0051】
また、第2実施形態〔図3(A)参照〕、第3実施形態〔図5(A)参照〕でも、パッキンA2及びパッキンA3の自由状態での高さをHとし、前記溝8の深さをDとすると、
として形成され、パッキンAの両側の側面弧状部3,3の長手方向に直交する断面の自由状態での幅をTとし、前記溝8の間隔をWとすると、
として形成され、その作用及び効果は、第1実施形態〔図2(A)参照〕と同様である。
【符号の説明】
【0052】
A,A1,A2,A3…パッキン、1…頂面弧状部、11…膨出部、
2…底面側弧状部、21…底面弧状部、22…底面端弧状部、3…側面弧状部、
4…上部連結面、5…下部連結面、B…ハウジング、6…ハウジング本体、
7…カバー板、8…溝。
図1
図2
図3
図4
図5