IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 有限会社イノンの特許一覧

特許7043227水中用ストロボ装置及びその透光カバー部
<>
  • 特許-水中用ストロボ装置及びその透光カバー部 図1
  • 特許-水中用ストロボ装置及びその透光カバー部 図2
  • 特許-水中用ストロボ装置及びその透光カバー部 図3
  • 特許-水中用ストロボ装置及びその透光カバー部 図4
  • 特許-水中用ストロボ装置及びその透光カバー部 図5
  • 特許-水中用ストロボ装置及びその透光カバー部 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】水中用ストロボ装置及びその透光カバー部
(51)【国際特許分類】
   G03B 15/05 20210101AFI20220322BHJP
   G03B 15/02 20210101ALI20220322BHJP
   G03B 17/56 20210101ALI20220322BHJP
【FI】
G03B15/05
G03B15/02 Q
G03B15/02 S
G03B17/56 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017217601
(22)【出願日】2017-11-10
(65)【公開番号】P2019090853
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】595132061
【氏名又は名称】有限会社イノン
(74)【代理人】
【識別番号】100089026
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高明
(74)【代理人】
【識別番号】100091580
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 雅文
(72)【発明者】
【氏名】井上 彰英
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/157840(WO,A1)
【文献】実開昭55-032281(JP,U)
【文献】特開2014-110208(JP,A)
【文献】特表2008-542846(JP,A)
【文献】有限会社イノン,LEDライト「LF3100-EW」の発売について,有限会社イノンホームページ,日本,有限会社イノン,2017年09月14日,http://www.inon.co.jp/cgis/news/wforum_news.cgi?no=485&reno=no&oya=485&mode=msg_view&page=0&news=1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 15/05
G03B 15/02
G03B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部と、前記発光部が装着された筐体とを備え、フレキシブルアームを介して水中用カメラに連結された水中用ストロボ装置に使用され、前記筐体の前端部に固定され前記筐体の外方へ膨出形成されて前記発光部の前方を水密状態で被覆するように構成された水中用ストロボ装置の透光カバー部であって、
断面形状は全体円弧状に形成されると共に、
内周面部は、前記発光部の発光軸に直交する方向における前記筐体の幅寸法以下となる直径寸法を有する円の一部を形成する曲率の円弧状に形成され、
前記透光カバー部の内周面接線と、前記発光部から発せられて前記投光カバー部内の空気層を進む閃光とが成す角度が90度に近づくように形成されていることを特徴とする水中用ストロボ装置の透光カバー部。
【請求項2】
発光部と、前記発光部が装着された筐体とを備え、フレキシブルアームを介して水中用カメラに連結された水中用ストロボ装置に使用され、前記筐体の前端部に固定され前記筐体の外方へ膨出形成されて前記発光部の前方を水密状態で被覆するように構成された水中用ストロボ装置の透光カバー部であって、
断面形状は全体円弧状に形成されると共に、
内周面部は、前記発光部の発光軸に直交する方向における当該透光カバー部の環状取付部の最大寸法以下となる直径寸法を有する円の一部を形成する曲率の円弧状に形成され、
前記透光カバー部の内周面接線と、前記発光部から発せられて前記投光カバー部内の空気層を進む閃光とが成す角度が90度に近づくように形成されていることを特徴とする水中用ストロボ装置の透光カバー部。
【請求項3】
前記透光カバー部は、当該透光カバー部の内周面部に形成された複数の凹凸により構成される内周面プリズム部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水中用ストロボ装置の透光カバー部。
【請求項4】
前記内周面プリズム部は、六角形の凹部又は凸部が格子状に並ぶハニカム構造であることを特徴とする請求項3に記載の水中用ストロボ装置の透光カバー部。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の透光カバー部を備えた水中用ストロボ装置であって、
前記筐体の前端部に固定され、前記発光部の閃光の進路を変えるプリズム板とこのプリズム板を前記筐体の前端部から離間した状態で支えるプリズム支持脚とを有する離間プリズム部を備えることを特徴とする水中用ストロボ装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の透光カバー部を備えた水中用ストロボ装置であって、
前記透光カバー部の外側に配置され、前記発光部から発せられ前記透光カバー部を透過した閃光の拡散を部分的に遮るように前記閃光の照射方向に突出すると共に前記透光カバー部の外周方向に回動可能に設けられたフード部を備えることを特徴とする水中用ストロボ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中の被写体に閃光を照射し撮影画像を鮮明化する水中用ストロボ装置及びその透光カバー部に関する。
【背景技術】
【0002】
水中においては太陽光の赤色側の波長成分が青色側の波長成分よりも強く吸収されるため、水中で得た撮影画像は全体的に青みを帯びる。このため、水中撮影にあっては、被写体に強い閃光を照射し地上で得た撮影画像と同様に色彩豊かで魅力的な撮影画像の取得を可能にする水中用ストロボ装置が多用される(特許文献1)。
【0003】
水中用ストロボ装置は、特許文献1に示されるように内部に放電式の発光部を内蔵し、フレキシブルアームを介して水中用カメラと連結されて用いられるのが一般的である。
【0004】
フレキシブルアームは、折り曲げ可能に且つ水中用ストロボ装置を上下水平方向に回転可能に保持できるように構成されており、このフレキシブルアームを操作することにより、広い範囲を撮影する広角撮影や近い距離で被写体を撮影するマクロ撮影等、各種の撮影場面に柔軟に対応した適切な閃光照射が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-33074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、フレキシブルアームを操作することで水中用ストロボ装置の照射方向については自在に調節できるようになっているが、より広い範囲を鮮明に撮影できるように水中用ストロボ装置の照射範囲を拡大させたい、という要請がある。
【0007】
特に、水中撮影にあっては、陸上撮影と比べて手元の操作が難しいことや被写体が頻繁に動くことが多いことから、被写体に対する照射方向の適切な調節が陸上撮影よりも困難となりやすい。そのため、被写体に対してより適切に閃光を照射できるように水中用ストロボ装置の照射範囲を拡大させることが望まれている。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、より広い範囲を照射できる水中用ストロボ装置の透光カバー部及びこれを備えた水中用ストロボ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、発光部と、前記発光部が装着された筐体とを備え、フレキシブルアームを介して水中用カメラに連結された水中用ストロボ装置に使用され、前記筐体の前端部に固定され前記筐体の外方へ膨出形成されて前記発光部の前方を水密状態で被覆するように構成された水中用ストロボ装置用の透光カバー部であって、断面形状は全体円弧状に形成されると共に、内周面部は、前記発光部の発光軸に直交する方向における前記筐体の幅寸法以下となる直径寸法を有する円の一部を形成する曲率の円弧状に形成され、前記透光カバー部の内周面接線と、前記発光部から発せられて前記投光カバー部内の空気層を進む閃光とが成す角度が90度に近づくように形成されていることを特徴とする。
【0010】
「曲率」は、透光カバー部の内周面の任意位置の微小な円弧を一部とする円の中心から上記微小な円弧までの曲率半径の逆数として用いる。
【0011】
「筐体の幅寸法」は、発光部の発光軸に沿って筐体を見たときにその筐体が非円形である場合、発光軸と直交する方向における筐体の最大の寸法を採る。
【0012】
上述した課題を解決するため、請求項2に記載の発明は、発光部と、前記発光部が装着された筐体とを備え、フレキシブルアームを介して水中用カメラに連結された水中用ストロボ装置に使用され、前記筐体の前端部に固定され前記筐体の外方へ膨出形成されて前記発光部の前方を水密状態で被覆するように構成された水中用ストロボ装置用の透光カバー部であって、断面形状は全体円弧状に形成され、前記透光カバー部の内周面接線と、前記発光部から発せられて前記投光カバー部内の空気層を進む閃光とが成す角度が90度に近づくように形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の透光カバー部に関するものであり、前記透光カバー部は、当該透光カバー部の内周面部に形成された複数の凹凸により構成される内周面プリズム部を有することを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の内周面プリズム部に関するものであり、前記内周面プリズム部は、六角形の凹部又は凸部が格子状に並ぶハニカム構造であることを特徴とする。
【0015】
上述した課題を解決するため、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の透光カバー部を備えた水中用ストロボ装置であって、前記筐体の前端部に固定され、前記発光部の閃光の進路を変えるプリズム板とこのプリズム板を前記筐体の前端部から離間した状態で支えるプリズム支持脚とを有する離間プリズム部を備えることを特徴とする。
【0016】
上述した課題を解決するため、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の透光カバー部を備えた水中用ストロボ装置であって、前記透光カバー部の外側に配置され、前記発光部から発せられ前記透光カバー部を透過した閃光の拡散を部分的に遮るように前記閃光の照射方向に突出すると共に前記透光カバー部の外周方向に回動可能に設けられたフード部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
通常、内部の発光部を水密に被覆する透光カバー部の肉厚層(例えば、アクリル層)の屈折率は、透光カバー部の内側の空気層の屈折率よりも大きくなる。このため、略平坦に構成された従来の透光カバー部(例えば特許文献1)にあっては、発光部から発せられた閃光のうち透光カバー部の内周面接線と直交しない成分、特に透光カバー部の内周面の周縁部に向かって進む閃光の成分は、前記透光カバー部の内周面接線と、前記発光部から発せられて前記投光カバー部内の空気層を進む閃光とが成す角度が90度に近づくように形成されていることから、透光カバー部の内周面接線と成す角度に応じて発光軸に向かう屈折の角度が大きくなり、光の収斂によって照射範囲が狭小になりやすいものであった。
【0018】
ここで、請求項1に記載の透光カバー部は、断面形状が全体円弧状に形成されると共に、内周面部が前記発光部の発光軸に直交する方向における前記筐体の幅寸法以下となる直径寸法を有する円の一部を形成する曲率の円弧状に形成されており、従来の透光カバー部(例えば特許文献1)と比較して透光カバー部の曲率が大きく設定されている。このため、透光カバー部の内周面の周縁部に向かって進む閃光の成分についても、透光カバー部の内周面接線と成す角度の直交性を良好に確保しやすいものとなり、発光軸に向かう屈折の角度を抑えることが可能となる。その結果、請求項1に記載の透光カバー部にあっては、従来の透光カバー部よりも光の収斂を抑えることができ、照射範囲の拡大を図ることができる。
【0019】
また、請求項2に記載の透光カバー部は、断面形状が全体円弧状に形成されると共に、内周面部が前記発光部の発光軸に直交する方向における当該透光カバー部の環状取付部の最大寸法以下となる直径寸法を有する円の一部を形成する曲率の円弧状に形成されており、従来の透光カバー部(例えば特許文献1)と比較して透光カバー部の曲率が大きく設定されている。このため、透光カバー部の内周面の周縁部に向かって進む閃光の成分についても、前記透光カバー部の内周面接線と、前記発光部から発せられて前記投光カバー部内の空気層を進む閃光とが成す角度が90度に近づくように形成されていることから、透光カバー部の内周面接線と成す角度の直交性を良好に確保しやすいものとなり、発光軸に向かう屈折の角度を抑えることが可能となる。その結果、請求項2に記載の透光カバー部にあっては、従来の透光カバー部よりも光の収斂を抑えることができ、照射範囲の拡大を図ることができる。
【0020】
従って、請求項1又は請求項2に記載の透光カバー部によれば、従来の透光カバーと比較して、より広範囲に閃光が行きわたるようになり、より広い範囲を鮮明に撮影することが可能となる。
【0021】
その結果、陸上撮影と比べて手元の操作が難しく且つ被写体が頻繁に動くことの多い水中撮影においても、被写体に対してより適切な照射が可能となり、以って良好な撮影画像が得やすいものとなる。
【0022】
なお、例えば光を乱反射させて拡散させる有色の拡散板を透光カバー部の前方に又は透光カバー部に代えて用いると、発光部の閃光の吸収が生じ、照射範囲の拡大と共に照射の明るさが落ちてしまう傾向がある。これに対し、請求項1又は請求項2に記載の透光カバー部によれば、透光カバー部の形状によって光の収斂を抑えることができ、従って、閃光の吸収を抑えつつ照射範囲の拡大を図ることができる。
【0023】
また、請求項1又は請求項2に記載の透光カバー部は、従来の透光カバー部と比較して透光カバー部の曲率が大きく設定されているため、従来よりも透光カバー部の内側スペースや発光部から透光カバー部の内周面部までの距離を大きく確保しやすい。
【0024】
従って、請求項1又は請求項2に記載の透光カバー部によれば、透光カバー部から筐体の前端部に装着された発光部までの距離が従来よりも大きくなりやすく、発光部の閃光熱の影響による透光カバー部の変質を抑えやすいものとなる。従って、水中用ストロボ装置の所期の透光及び拡散の効果を維持しやすいものとなる。
【0025】
請求項3に記載の透光カバー部は、その内周面部に形成された複数の凹凸により構成された内周面プリズム部を有しているため、発光部から発せられた閃光は内周面プリズム部で進路が変更される。
【0026】
内周面プリズム部の凹凸により、発光部の閃光を特定の方向に集めたり円形状に拡散配光させることができ、撮影の目的や効果に応じた照射調節を行うことが可能となる。なお、凹凸の形状は、撮影の目的や効果に応じて設定することができる。
【0027】
従来、プリズム板と称される透光板を発光部の正面又は近傍に配置し、発光部の閃光を特定の方向に集めたり円形状に拡散配光させるなど、照射効果を操作している。
【0028】
請求項3に記載の透光カバー部によれば、プリズム板を別途設けることなく、透光カバー部の内周面の構造によってプリズム板の効果を得ることができるため、水中用ストロボ装置の構造の簡素化を図ることができる。
【0029】
また、内周面プリズム部は、透光カバー部の内周面部に設けられるため、水中用ストロボ装置の筐体側に固定されて用いられる従来のプリズム板と比較し、発光部の閃光熱の影響による変質を抑えることができる。従って、水中用ストロボ装置の所期の透光及び拡散の効果を維持しやすいものとなる。
【0030】
請求項4に記載の透光カバー部は、内周面プリズム部が格子状に並ぶ六角形のハニカム構造により構成されているため、プリズムの機能を担う凹凸を湾曲した円周面に沿って稠密格子状に配列しやすく、請求項1又は請求項2の水中用ストロボ装置の透光カバー部に内周面プリズム部を設けやすいものとなる。
【0031】
請求項5に記載の水中用ストロボ装置によれば、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
【0032】
請求項5に記載の水中用ストロボ装置によれば、プリズム板が筐体の前端部から離間した状態で支えられるため、発光部の閃光の熱の影響を受けにくく変質しにくいものとなる。従って、水中用ストロボ装置の所期の透光及び拡散の効果を維持しやすいものとなる。
【0033】
また、請求項5に記載の水中用ストロボ装置は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の透光カバー部を備え、従来の透光カバー部(例えば特許文献1)と比較して透光カバー部の曲率が大きく設定されているため、従来よりも透光カバー部の内側スペースや発光部から透光カバー部の内周面部までの距離を大きく確保しやすいものとなる。
【0034】
従って、請求項5に記載の水中用ストロボ装置によれば、プリズム板を筐体の前端部から従来よりも大きく離間した状態で支えることが可能となり、発光部の閃光熱の影響による変質を抑えやすいものとなる。従って、水中用ストロボ装置の所期の透光及び拡散の効果をより維持しやすいものとなる。
【0035】
請求項6に記載の水中用ストロボ装置によれば、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
【0036】
請求項6に記載の水中用ストロボ装置によれば、フード部を水中用カメラのレンズの方向に回転移動させ、透光カバー部を透過して水中用カメラに向かう閃光を遮ることができる。
【0037】
従って、水中用ストロボ装置から発せられ水中の浮遊粒子で反射し水中用カメラのレンズに入射する光の強度が低減し、撮影画像における水中の浮遊物に起因する目障りな白点の写り込みを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は第1実施形態の水中用ストロボ装置の使用例を示す図である。
図2図2は第1実施形態の水中用ストロボ装置の斜視図である。
図3図3は第1実施形態の水中用ストロボ装置の図1A-A線部分断面図である。
図4図4は第1実施形態の水中用ストロボ装置を構成している離間プリズム部の斜視図である。
図5図5は第1実施形態の水中用ストロボ装置を構成している透光カバー部の照射範囲を示す図である。
図6図6は第2実施形態の水中用ストロボ装置の断部分面図であり、図1A-A線部分断面図に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
添付図面を参照して、本発明に係る水中用ストロボ装置及びその透光カバー部を第1実施形態に基づき詳細に説明する。
【0040】
(第1実施形態)
水中用ストロ装置は、水中の被写体に閃光を照射し撮影画像を鮮明化する装置であり、図1に示すように、本実施形態の水中用ストロボ装置10は、キセノン管を有する発光部11、筐体12、透光カバー部20、離間プリズム部30、及びフード部40を備えており、フレキシブルアーム50を介して水中用カメラ60と連結されて用いられる。
【0041】
フレキシブルアーム50は、折り曲げ可能に且つ水中用ストロボ装置10を上下水平方向に回転可能に保持できるように構成されており、フレキシブルアーム50を操作することにより、広い範囲を撮影する広角撮影や近い距離で被写体を撮影するマクロ撮影等、各種の撮影場面に柔軟に対応した適切な閃光照射が可能となっている。
【0042】
なお、符号70は、信号ケーブルであり、水中用撮影カメラ60の内蔵フラッシュの設定情報を水中用ストロボ装置60に伝え、そのフラッシュ設定情報に基づいた水中用ストロボ装置10の閃光制御を可能にしている。
【0043】
<筐体>
水中用ストロボ装置10の筐体12は、図1に示すように、発光部11の制御回路などを水密に被覆する略円筒状の主筐体部13、主筐体部13から外方に張り出して主筐体部13と一体的に形成された略半円筒状のバッテリー筐体部14、及び主筐体部13の照射方向端側の開口部の周囲を被覆する筐体前端部15を有している。
【0044】
<透光カバー部>
図2図1に示す水中用ストロボ装置10を他の方向から見た斜視図である。
水中用ストロボ装置10の透光カバー部20は、主筐体部13の軸方向の外方へ向かって膨出形成されたアクリル樹脂で構成されており、図1に示す発光部11の前方を水密状態で被覆するように構成されている。
【0045】
図3は水中用ストロボ装置10の要部を示す図であり、図1のA-A線部分断面図である。
透光カバー部20の断面形状は、図3に示すように、全体円弧状に形成されており、また、その内周面部は、発光部11の発光軸22に直交する方向における主筐体部13の幅102の寸法以下となる直径101を有する仮想的な円25の一部を形成する曲率の円弧状に形成されている。
【0046】
透光カバー部20の端部は、図3に示すように、主筐体部13の前方側において主筐体部13に固定された第一環状取付部16に対して固定される。なお、第一環状取付部16と透光カバー部20とにより押圧挟持されたゴム製環状具18が介在しており、水密状態が維持されている。
【0047】
<離間プリズム部>
水中用ストロボ装置10は、図3に示すように、発光軸22の方向において発光部11と重なるように設けられた離間プリズム部30を備えている。
【0048】
図4は離間プリズム部30の斜視図である。離間プリズム部30は、筐体前端部15に固定され、プリズム板31とこのプリズム板31を筐体前端部15から離間した状態で支えるプリズム支持脚32とを有している。
【0049】
離間プリズム部30のプリズム板31は、略円盤状に形成されており、発光部11の閃光の進路を変えて円形状に拡散可能なプリズム構造を有している。なお、プリズム板31のプリズム構造は、格子状に凹凸が配置されたハニカム構造となっている。
【0050】
離間プリズム部30のプリズム支持脚32は、図3及び図4に示すように、プリズム板31を筐体前端部15から離間した状態で支えるように構成され、発光部11近傍において発光部11を跨ぐように固定される固定部34、34、及び固定部34から発光軸22に沿って発光部11から遠ざかるように延設されると共にプリズム板31を支える支柱部33、33を有している。
【0051】
<フード部>
図2に示すように、水中用ストロボ装置10のフード部40は、透光カバー部20の外側に配置されており、平面略半円形状に形成され、図1に示す発光部11から発せられ透光カバー部20を透過した閃光の拡散を部分的に遮るように閃光の照射方向に突出している。なお、フード部40は、黒色の合成樹脂により構成されている。
【0052】
また、フード部40は、図2に示すように、主筐体部13の前方端側に取り付けられた第一環状取付部16と回動可能に噛み合う第二環状取付部17に設けられ、透光カバー部20の外周方向に回動可能に設けられている。
【0053】
次に、第1実施形態の水中用ストロボ装置10の効果を説明する。
図5は本実施形態の水中用ストロボ装置10の照射範囲を示す図である。
【0054】
先ず、屈折率について、以下に例示する。
空気層:約1.00
アクリル樹脂層:約1.49
水層:約1.33
【0055】
水中用ストロボ装置10の透光カバー部20はアクリル樹脂で構成されている。このため、発光部11から発せられ空気層105を進む閃光のうち透光カバー部20の内周面接線108と直交しない成分は、上記の屈折率の違いによって透光カバー部20の内周面接線108と成す角度に応じて発光軸22に向かう屈折の角度が大きくなり、光の収斂によって照射範囲が狭小になる傾向がある。
【0056】
本実施形態の水中用ストロボ装置10を構成する透光カバー部20は、図3に示すように、外周面及び内周面が共に断面形状が全体円弧状に形成されている。また、透光カバー部20の内周面部は発光部11の発光軸22に直交する方向における主筐体部13の幅102の寸法以下となる直径101を有する円25の一部を形成する曲率の円弧状に形成されており、かつ、図5に示すように、従来の透光カバー部(例えば特許文献1)よりも透光カバー部の曲率が大きく設定されている。
【0057】
このため、図5に示すように、透光カバー部20の内周面周縁部に向かって空気層105を進む閃光81についても、略平坦な従来の透光カバー部(例えば特許文献1)と比較して、内周面接線108と成す角度θ1が90°に近づきやすいものとなる。
【0058】
従って、透光カバー部20に入射してそのアクリル樹脂層106を進む閃光に着目したとき、従来の透光カバー部と比較し、発光軸22に向かう屈折の角度θ2の縮小を抑えやすいものとなる。
【0059】
その結果、透光カバー部20にあっては、従来の透光カバー部よりも光の収斂を抑えることができ、照射範囲の拡大を図ることができる。
【0060】
図5の符号83は、透光カバー部20のアクリル樹脂層82を透過して水層107を進む閃光である。閃光83は、アクリル樹脂層106とその外側の水層107の屈折率の違により、発光軸22から離れる拡散方向にやや屈折する。
【0061】
アクリル樹脂層106の屈折率とその外側の水層107の屈折率の違いは、アクリル樹脂層106の屈折率とその内側の空気層105の屈折率の違いほど顕著ではない。このため、透光カバー部20による照射範囲の収斂抑制の作用は、アクリル樹脂層106及びその内側の空気層105の屈折率の差並びにアクリル樹脂層106の曲率が支配的となる。
【0062】
従って、水中用ストロボ装置10の透光カバー部20によれば、従来の透光カバー部20よりも曲率が大きく設定されているため、照射範囲の収斂抑制の作用が強く働き、より広範囲に閃光が行きわたるようになる。従って、水中用ストロボ装置10の透光カバー部20によれば、より広い範囲を鮮明に撮影することが可能となる。
【0063】
その結果、陸上撮影と比べて手元の操作が難しく且つ被写体が頻繁に動くことの多い水中撮影においても、被写体に対してより適切な照射が可能となり、以って良好な撮影画像が得やすいものとなる。
【0064】
なお、例えば光を乱反射させて拡散させる有色の拡散板を透光カバー部20の前方に又は透光カバー部20に代えて用いると、発光部11の光の吸収が生じ、照射範囲の拡大と共に照射の明るさが落ちてしまう傾向がある。
【0065】
この透光カバー部20によれば、透光カバー部20の形状によって閃光の収斂を抑えることができるため、閃光の吸収を抑えつつ照射範囲の拡大を図ることができる。
【0066】
また、透光カバー部20は、図5に示すように従来の透光カバー部27よりも曲率が大きく設定されているため、従来の透光カバー部27を用いた場合と比較して内側スペースを大きく確保しやすい。
【0067】
従って、透光カバー部20によれば、透光カバー部20から発光部11までの距離を従来よりも大きく確保しやすくなり、発光部11の閃光熱の影響による透光カバー部20の変質を抑えやすいものとなる。従って、水中用ストロボ装置10の所期の透光及び拡散の効果を維持しやすいものとなる。
【0068】
また水中用ストロボ装置10によれば、図3に示すようにプリズム板31が筐体前端部15から離間した状態で支えられるため、プリズム板31が発光部11の閃光の熱の影響を受けにくく変質しにくいものとなる。
【0069】
また、水中用ストロボ装置10によれば、図2に示すフード部40を図1に示すように水中用カメラ60の撮影レンズ61の方向に回転移動させ、透光カバー部20を透過して撮影レンズ61に向かう閃光を遮ることができる。
【0070】
従って、水中用ストロボ装置10から発せられ水中の浮遊粒子で反射し水中用カメラ60の撮影レンズ61に入射する光の強度が低減し、撮影画像における水中の浮遊物に起因する目障りな白点の写り込みを抑えることができる。
【0071】
(第2実施形態)
図6は第2実施形態の水中用ストロボ装置の断部分面図であり、図1のA-A線部分断面図に相当する図である。第1実施形態と同様の構成は同一符号を付して説明を省略する。
【0072】
第二実施形態の水中用ストロボ装置100は、図6に示すように、透光カバー部200の内周面部において、平面視六角形のハニカム状に形成され光の進路を変更しうる複数の凹凸部から成る内周面プリズム部202を有している。なお、図6のP部は、透光カバー部200の内周面部の一部を拡大した模式図である。
【0073】
なお、内周面プリズム部202は、閃光照射効果の設計に応じて、透光カバー部200の内周面部の全体に又は部分的に設けられる。
【0074】
次に、第2実施形態の水中用ストロボ装置100の効果を説明する。
本実施形態の水中用ストロボ装置100によれば、第1実施形態の水中用ストロボ装置10のようにプリズム板31を別途設けることなく、透光カバー部200の内周面部の構造によってプリズム板31の効果を得ることができ、水中用ストロボ装置の構造の簡素化を図ることができる。
【0075】
以上、本発明に係る水中用ストロボ装置及びその透光カバー部を第1実施形態及び第2実施形態に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施形態に限られるものではない。
【0076】
透光カバー部の内周面部は、主筐体部やバッテリー筐体部を併せた筐体全体の最大幅寸法以下となる直径を有する円の一部を形成する曲率の円弧状に形成されたものであればよい。
【0077】
また、透光カバー部は、発光部と、発光部が装着された筐体とを備えた水中用ストロボ装置に使用され、筐体の前端部に固定され筐体の外方へ膨出形成されて発光部の前方を水密状態で被覆するように構成された水中用ストロボ装置の透光カバー部であって、断面形状は全体円弧状に形成されると共に、内周面部は、発光部の発光軸に直交する方向における当該透光カバー部の環状取付部の最大寸法以下となる直径寸法を有する円の一部を形成する曲率の円弧状に形成されているものでもよい。
【0078】
また、内周面プリズム部は、例えば、フライアイレンズ、レンズアレイ、プリズムアレイなど、光路が変化する凹凸の構造であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の水中用ストロボ装置及びその透光カバー部は、水中の被写体に閃光を照射し撮影画像を鮮明化する閃光照射技術であり、広く産業上の可能性を有している。
【符号の説明】
【0080】
10、100…水中用ストロボ装置
11…発光部
12…筐体
13…主筐体部
14…バッテリー筐体部
15…筐体前端部
16…第一環状取付部
17…第二環状取付部
18…ゴム製環状具
20、200…透光カバー部
22…発光軸
30…離間プリズム部
31…プリズム板
32…プリズム支持脚
33…支柱部
34…固定部
40…フード部
50…フレキシブルアーム
60…水中用カメラ
70…信号ケーブル
81…透光カバー部の内側の空気層を進む閃光
82…透光カバー部のアクリル樹脂層を進む閃光
83…透光カバー部の外側の水層を進む閃光
101…直径
102…主筐体部の幅
105…空気層
106…アクリル樹脂層
107…水層
108…内周面接線
202…内周面プリズム部
図1
図2
図3
図4
図5
図6