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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】病床管理業務支援システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 40/20 20180101AFI20220322BHJP
【FI】
G16H40/20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017230104
(22)【出願日】2017-11-30
(65)【公開番号】P2019101612
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-07-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年6月1日に、ニッセイ情報テクノロジー株式会社のウェブサイト(http://www.nissay-it.co.jp/solution/medi-sinus.html)にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】500104314
【氏名又は名称】ニッセイ情報テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101845
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100147784
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 享子
(72)【発明者】
【氏名】内田 元
(72)【発明者】
【氏名】小池 恒仁
(72)【発明者】
【氏名】西 綾子
【審査官】小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-246793(JP,A)
【文献】特開2001-350840(JP,A)
【文献】特開2014-186448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者IDに関連付けて、当該患者の氏名と生年月日と性別コードを含む患者基本情報を記憶する患者基本情報記憶手段と、
在院する1患者につき1レコード作成され、患者IDに関連付けて、病棟コードと病室コードと病床コードと診療科コードと主治医コードと主治医名と入院年月日を含む在院患者情報を記憶する在院患者情報記憶手段と、
各病棟に関するデータを管理するマスタであって、病棟コードに関連付けて、建物構造番号と病棟名と病棟/病床区分と病床数を含むデータを記憶する病棟マスタ記憶手段と、
診療科に関するデータを管理するマスタであって、診療科コードに関連付けて、診療科名と診療科名(略称)を含むデータを管理する診療科マスタ記憶手段と、
在院患者情報記憶手段に記憶されている在院患者情報と、在院患者情報に含まれる患者IDに基づいて患者基本情報記憶手段から取得した患者基本情報と、を取得し、取得した在院患者情報に含まれる診療科コード及び病棟コードに基づいて診療科マスタ記憶手段と病棟マスタ記憶手段とから診療科名及び病棟名を取得することによって、在院患者毎に、患者ID、患者名、年齢、病棟名、診療科名、主治医名を表示させると共に、当該患者の病状・診療状況と退院先確保状況とリハビリ状況とのそれぞれについて関係者のコメントを入力させるための入力欄を表示させる、表示処理手段と、を備えた、
電子端末からの指示を受けて、患者の転棟・退院時期の調整に必要な情報を提供するための転棟退院調整画面表示を表示する、病床管理業務支援システムであって、
一回の転棟予約につき1レコード作成され、患者IDと転棟決定オーダー番号に関連付けて、転棟予定年月日と病棟コードと病室コードと病床コードを含む転棟決定オーダー情報を記憶する転棟決定オーダー情報記憶手段と、
一回の退院予約につき1レコード作成され、患者IDと退院決定オーダー番号に関連付けて、退院予定年月日を含む退院決定オーダー情報を記憶する退院決定オーダー情報記憶手段と、をさらに備え、
上記表示処理手段は、転棟決定オーダー情報及び退院決定オーダー情報に含まれる患者IDと、在院患者情報記憶手段から取得した在院患者情報に含まれる患者IDとから、転棟予約又は退院予約がされた患者についてはその旨を表示し、残りの在院患者については未調整の旨を表示する、調整区分の欄をさらに表示させる、病床管理業務支援システム。
【請求項2】
患者IDに関連付けて、当該患者の氏名と生年月日と性別コードを含む患者基本情報を記憶する患者基本情報記憶手段と、
在院する1患者につき1レコード作成され、患者IDに関連付けて、病棟コードと病室コードと病床コードと診療科コードと主治医コードと主治医名と入院年月日を含む在院患者情報を記憶する在院患者情報記憶手段と、
各病棟に関するデータを管理するマスタであって、病棟コードに関連付けて、建物構造番号と病棟名と病棟/病床区分と病床数を含むデータを記憶する病棟マスタ記憶手段と、
診療科に関するデータを管理するマスタであって、診療科コードに関連付けて、診療科名と診療科名(略称)を含むデータを管理する診療科マスタ記憶手段と、
在院患者情報記憶手段に記憶されている在院患者情報と、在院患者情報に含まれる患者IDに基づいて患者基本情報記憶手段から取得した患者基本情報と、を取得し、取得した在院患者情報に含まれる診療科コード及び病棟コードに基づいて診療科マスタ記憶手段と病棟マスタ記憶手段とから診療科名及び病棟名を取得することによって、在院患者毎に、患者ID、患者名、年齢、病棟名、診療科名、主治医名を表示させると共に、当該患者の病状・診療状況と退院先確保状況とリハビリ状況とのそれぞれについて関係者のコメントを入力させるための入力欄を表示させる、表示処理手段と、を備えた、
電子端末からの指示を受けて、患者の転棟・退院時期の調整に必要な情報を提供するための転棟退院調整画面表示を表示する、病床管理業務支援システムであって、
1患者につき毎日1レコード作成され、患者ID、入院年月日、診療年月日、病棟コード、病室コード、病棟/病床区分、診療科コード、評価票、A評価、B評価、C評価、重症者判定フラグを含む看護必要度情報を記憶する看護必要度情報記憶手段をさらに備え、
上記表示処理手段は、在院患者情報から取得された患者IDに基づき、看護必要度情報から、当該患者IDに該当するレコードを取得し、当該レコードに含まれる診療年月日が当日年月日の前日であって重症者判定フラグが重症者であることを示す場合に、当該患者について重症者である旨を表示させ、または、当該患者の表示を除外条件の追加設定により自動的に除外する、病床管理業務支援システム。
【請求項3】
患者IDに関連付けて、当該患者の氏名と生年月日と性別コードを含む患者基本情報を記憶する患者基本情報記憶手段と、
在院する1患者につき1レコード作成され、患者IDに関連付けて、病棟コードと病室コードと病床コードと診療科コードと主治医コードと主治医名と入院年月日を含む在院患者情報を記憶する在院患者情報記憶手段と、
各病棟に関するデータを管理するマスタであって、病棟コードに関連付けて、建物構造番号と病棟名と病棟/病床区分と病床数を含むデータを記憶する病棟マスタ記憶手段と、
診療科に関するデータを管理するマスタであって、診療科コードに関連付けて、診療科名と診療科名(略称)を含むデータを管理する診療科マスタ記憶手段と、
在院患者情報記憶手段に記憶されている在院患者情報と、在院患者情報に含まれる患者IDに基づいて患者基本情報記憶手段から取得した患者基本情報と、を取得し、取得した在院患者情報に含まれる診療科コード及び病棟コードに基づいて診療科マスタ記憶手段と病棟マスタ記憶手段とから診療科名及び病棟名を取得することによって、在院患者毎に、患者ID、患者名、年齢、病棟名、診療科名、主治医名を表示させると共に、当該患者の病状・診療状況と退院先確保状況とリハビリ状況とのそれぞれについて関係者のコメントを入力させるための入力欄を表示させる、表示処理手段と、を備えた、
電子端末からの指示を受けて、患者の転棟・退院時期の調整に必要な情報を提供するための転棟退院調整画面表示を表示する、病床管理業務支援システムであって、
1回の手術予約につき1レコード作成され、患者ID、手術オーダー番号、手術予定年月日、手術実施年月日、手術名、入院依頼区分を含む手術情報を記憶する手術情報記憶手段をさらに備え、
上記表示処理手段は、在院患者情報から取得された患者IDに基づき、手術情報から当該患者IDに該当するレコードを取得し、当該レコードに含まれる手術予定年月日もしくは手術実施年月日にデータが入力され、それが当日年月日以降の日付の場合は、当該患者の表示を除外条件の追加設定により自動的に除外する、病床管理業務支援システム。
【請求項4】
患者IDに関連付けて、当該患者の氏名と生年月日と性別コードを含む患者基本情報を記憶する患者基本情報記憶手段と、
在院する1患者につき1レコード作成され、患者IDに関連付けて、病棟コードと病室コードと病床コードと診療科コードと主治医コードと主治医名と入院年月日を含む在院患者情報を記憶する在院患者情報記憶手段と、
各病棟に関するデータを管理するマスタであって、病棟コードに関連付けて、建物構造番号と病棟名と病棟/病床区分と病床数を含むデータを記憶する病棟マスタ記憶手段と、
診療科に関するデータを管理するマスタであって、診療科コードに関連付けて、診療科名と診療科名(略称)を含むデータを管理する診療科マスタ記憶手段と、
在院患者情報記憶手段に記憶されている在院患者情報と、在院患者情報に含まれる患者IDに基づいて患者基本情報記憶手段から取得した患者基本情報と、を取得し、取得した在院患者情報に含まれる診療科コード及び病棟コードに基づいて診療科マスタ記憶手段と病棟マスタ記憶手段とから診療科名及び病棟名を取得することによって、在院患者毎に、患者ID、患者名、年齢、病棟名、診療科名、主治医名を表示させると共に、当該患者の病状・診療状況と退院先確保状況とリハビリ状況とのそれぞれについて関係者のコメントを入力させるための入力欄と、在院患者情報に含まれる入院年月日と、転棟退院調整画面表示を表示する当日年月日とから、在院日数を計算して、患者毎に在院日数をさらに表示させる、表示処理手段と、を備えた、
電子端末からの指示を受けて、患者の転棟・退院時期の調整に必要な情報を提供するための転棟退院調整画面表示を表示する、病床管理業務支援システムであって、
1回の入院につき1レコード作成され、患者IDに関連づけて、入院年月日、SEQ(同日入退院再入院を管理する番号)、様式1入院年月日、主傷病名、入院契機傷病名、医療資源最投入傷病名、DPCコード、DPC名、包括区分(0:出来高、1:包括)、包括評価対象外(0:包括評価、1:包括評価対象外)、包括評価対象外理由、診療報酬改定適用年度、入院期間I点数、入院期間II点数、入院期間III点数、入院期間I日数、入院期間II日数、入院期間III日数、入院期間I満了年月日、入院期間II満了年月日、入院期間III満了年月日、の項目を含むDPC情報を記憶するDPC情報記憶手段をさらに備え、
上記表示処理手段は、在院患者情報に含まれる患者IDに基づいて、当該患者IDを含むDPC情報をDPC情報記憶手段から取得し、当該患者について、医療資源最投入傷病名と、入院期間II点数に病院機関別係数を乗じて計算した入院期間IIの点数と、入院期間II日数と在院日数とから計算した入院期間IIの残日数と、入院期間III点数に病院機関別係数を乗じて計算した入院期間IIIの点数と、入院期間III日数と在院日数とから計算した入院期間IIIの残日数と、をさらに表示させる、病床管理業務支援システム。
【請求項5】
一般病床等からの転棟先の病棟の入院基本料を管理するマスタであって、入院基本料コードに関連づけて、適用開始日時、適用終了日時、病棟/病床区分、入院基本料名称、点数、を含むデータを記憶する入院基本料マスタ記憶手段と、をさらに備え、
上記表示処理手段は、入院基本料マスタ記憶手段から包括ケア点数を取得することによって、地域包括ケア点数との差異を下記の計算方法に従って計算し、さらに表示させる、請求項4に記載の病床管理業務支援システム。
・在院日数が入院期間I以下の場合
包括ケア点数-(入院期間I点数×医療機関別係数)
・在院日数が入院期間II以下の場合
包括ケア点数-(入院期間II点数×医療機関別係数)
・在院日数が入院期間III以下の場合
包括ケア点数-(入院期間III点数×医療機関別係数)
・在院日数が上記に該当しない場合
包括ケア点数-(入院期間III点数×医療機関別係数)
【請求項6】
一般病床等からの転棟先の病棟の入院基本料を管理するマスタであって、入院基本料コードに関連づけて、適用開始日時、適用終了日時、病棟/病床区分、入院基本料名称、点数、を含むデータを記憶する入院基本料マスタ記憶手段と、をさらに備え、
上記表示処理手段は、入院基本料マスタ記憶手段から回復リハ点数を取得することによって、回復リハ点数との差異を下記の計算方法に従って計算し、さらに表示させる、請求項4に記載の病床管理業務支援システム。
・在院日数が入院期間I以下の場合
回復リハ点数-(入院期間I点数×医療機関別係数)
・在院日数が入院期間II以下の場合
回復リハ点数-(入院期間II点数×医療機関別係数)
・在院日数が入院期間III以下の場合
回復リハ点数-(入院期間III点数×医療機関別係数)
・在院日数が上記に該当しない場合
回復リハ点数-(入院期間III点数×医療機関別係数)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、病院等の医療機関において、病床管理者に病床管理に必要な情報を効率よく提供するための病床管理業務支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
病床管理とは、病院等の医療機関における入院患者のベッド(病床)を効果的、効率的に稼働させるために管理・調整を行うことをいう。病床管理は、病院の収入の多くの部分を占める入院収入に直結する重要な業務であり、主な業務としては、入院が必要となった患者のスムーズな受け入れのためのベッドの調整・確保、患者の転棟・転床の調整、退院の調整、予約入院のためのベッドの調整、等がある。
【0003】
ここで、病床管理に関する先行技術文献としては、以下に記載する特許文献1~特許文献4が存在する。
【0004】
特許文献1は、入院予約データに対して、複数のベッドに対する割当シミュレーションを様々な条件に基づいて効率的に実行するシステムを開示している。
【0005】
特許文献2は、従来の病床管理が、主として財務上の観点から病床の利用率を上げることに主眼が置かれたものであるのに対して、患者に対する診療サービスの安全性や質の維持・向上を図るために、患者の複数の属性又は複数のニーズに合致した病床条件を特定できる病床管理支援システムを開示している。
【0006】
特許文献3は、病棟ごとにすべての居室について各居室の入院患者の氏名を入院日数と共に一覧表示させ、一覧表示させた各居室の入院患者を一覧表示中で移動させ移動後の居室でデータ更新可能な入退院管理装置を開示している。
【0007】
特許文献4は、患者の症状を表す患者情報と、病棟内の施設と病床との配置関係を表すマップ情報から、患者の症状に応じた病床の情報を抽出する病床管理支援システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2009-163378
【文献】特開2012-146249
【文献】特開2013-246793
【文献】特開2014-041439
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
日本における医療・介護分野の問題に目を向けると、平成37年(2025年)には3人に一人が65歳以上(5人に一人が75歳以上)という超高齢化社会を迎えることになり、医療や介護の需要が増大するため、こうした医療需要に対応できる医療提供体制をめざし、国による医療制度改正が進められている。
【0010】
各医療機関における従来の一般病床と療養病床については、その医療機能を分化して、各病床機能を、高度急性期機能(急性期の患者に対し、状態の早期安定化に向けて、診療密度が特に高い医療を提供する機能、主な病床区分としてICU病棟、HCU病棟)、急性期機能(急性期の患者に対し、状態の早期安定化に向けて、医療を提供する機能、主な病床区分として一般病棟)、回復期機能(急性期を経過した患者の在宅復帰に向けた医療やリハビリテーションを提供する機能、主な病床区分として地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟)、慢性期機能(長期にわたり療養が必要な患者を入院させる機能、主な病床区分として療養病棟)に区分し、各医療機関が担っている医療機能(病棟単位)を都道府県に報告する病床機能報告制度が採用された。上記した病床区分では、上からの記載順に入院基本料が高→低となっているが、さらに、病床機能を見直し、急性期から回復期への転換が進められている。それぞれの病床区分については、医療機関の機能や設備、診療体制、入院患者に関する重症者割合・平均在院日数・在宅復帰率等の基準値が定められており、この施設基準に適合することにより診療報酬の加算を受けられることになっているが、その施設基準が、平成28年度の改正により、回復期の病棟を増やすことが病院経営に効果的になるように基準値が変更され、平成30年度の改正により、一般病棟がさらに厳しく評価される見込みになっている。
【0011】
上記した改正により、一般病棟では重症者を扱い、容体の回復により回復期・療養機能への移動が厳密化され、病院全体として、入院患者をどの病棟で扱うことが病院経営上でプラスとなるかを考慮することがより求められるようになる。
【0012】
しかしながら、患者を移動(転棟・退院)させる際には、病院側の都合だけでなく、患者都合も考慮して、総合的に判断しなければならない。それぞれの立場から考慮すべき事項につき、下記に列記する。
【0013】
<病院側>
a.入院収入単価
病院経営としては、患者に提供すべき医療サービスにより、最適な(より高い)診
療報酬を得るための努力をする必要があり、考慮すべき事項として以下の項目が挙
げられる。
・転棟のタイミング ・DPC点数/入院期間 ・転棟先の点数
・入退院数(一般病棟) ・病床稼働率(回復期病棟)
b.施設基準の維持
当該病院の医療提供体制に見合う施設基準を維持し、最適な(より高い)入院基本
料を得るための努力をする必要があり、少なくとも以下の項目を考慮する必要があ
る。
・平均在院日数 ・リハビリ平均単位 ・在宅復帰率
・重症者割合(重症度、医療・看護必要度の基準を満たす患者の割合)
【0014】
<患者側>
c.診療状況
患者の容体や診療の予定に関する医師・看護師の判断が求められる。少なくとも、
以下の項目が考慮される必要がある。
・検査予定/検査結果 ・手術予定/手術結果 ・リハビリ予定
・ADL(日常生活動作) ・感染症
【0015】
<病院側・患者側の双方>
d.移動先調整
患者を転棟・退院させる場合には、移動先を本人・家族の状況を含めて調整する
必要がある。少なくとも、以下の項目が考慮される必要がある。
・入院先/転棟先のベッド調整 ・病棟の負担度 ・看護師の配置
・患者本人の希望 ・家族の希望
e.関係者との合意
最適な判断ができているかを確認するためには、少なくとも以下の関係者との合意
が必要と考えられる。
・医事課 ・MSW(医療ソーシャルワーカー) ・リハビリ
・病棟師長 ・医師
【0016】
上記したように、最近の病床管理業務においては、病院側及び患者側の様々な事情を考慮した総合的な判断が求められる。一方、先に述べた特許文献1~特許文献4に開示されている技術は、入院予約に対してどのように病床を割り当てるか、あるいは、病棟ごとの病床の管理に主眼があり、このような総合的な判断が求められる病床管理業務に対する十分な解決手段を提供するものではない。また、電子カルテを中心に病院内のシステム化は進んでいるが、電子カルテのみでは、以下に記載するように病床管理についての機能が不足している。上記したa~eの事項について、具体的な問題点を以下に記載する。
【0017】
a.入院収入単価
・どのタイミングで転棟・退院すれば、入院収入単価を最大化できるか不明。
・医事課からDPC情報を取り寄せる必要有。
【0018】
b.施設基準の維持
・看護必要度や在宅復帰率を考慮しながら、病院全体で患者の移動を考える手段
がない。
・リハビリの介入状況や平均単位を確認する手段がない。
【0019】
c.診療状況
・電子カルテは患者単位で情報管理されており、複数の患者の情報収集に非常に
手間がかかる。
・カルテの記載箇所・方法が統一されておらず、どこを見ればよいか探すのに
苦労する。
【0020】
d.移動先調整
・入院先ベッドを調整する際に、他の病棟の負担度合いや空床がわかりづらい。
・退院先の調整状況は、ソーシャルワーカーから情報を取り寄せる必要がある。
【0021】
e.関係者との合意
・転棟・退院の判断に必要な情報を一元化できず、効率的に確認・判断出来ない。
・病院全体の利用状況を俯瞰して、最適な患者移動が行えているかを確認する
手段がない。
【0022】
本願発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、特に、最適な転棟/退院のタイミング決定に必要な患者の情報を自動的に抽出して把握しやすく表示し、さらに、そのタイミング決定に係る各関係者側の情報を共有できる機能を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明による病床管理業務支援システムは、電子端末からの指示を受けて、患者の転棟・退院時期の調整に必要な情報を提供するための転棟退院調整画面表示を表示する、病床管理業務支援システムであって、患者IDに関連付けて、当該患者の氏名と生年月日と性別コードを含む患者基本情報を記憶する患者基本情報記憶手段と、在院する1患者につき1レコード作成され、患者IDに関連付けて、病棟コードと病室コードと病床コードと診療科コードと主治医コードと主治医名と入院年月日を含む在院患者情報を記憶する在院患者情報記憶手段と、各病棟に関するデータを管理するマスタであって、病棟コードに関連付けて、建物構造番号と病棟名と病棟/病床区分と病床数を含むデータを記憶する病棟マスタ記憶手段と、診療科に関するデータを管理するマスタであって、診療科コードに関連付けて、診療科名と診療科名(略称)を含むデータを管理する診療科マスタ記憶手段と、在院患者情報記憶手段に記憶されている在院患者情報と、在院患者情報に含まれる患者IDに基づいて患者基本情報記憶手段から取得した患者基本情報と、を取得し、取得した在院患者情報に含まれる診療科コード及び病棟コードに基づいて診療科マスタ記憶手段と病棟マスタ記憶手段とから診療科名及び病棟名を取得することによって、在院患者毎に、患者ID、患者名、年齢、病棟名、診療科名、主治医名を表示させると共に、当該患者の病状・診療状況と退院先確保状況とリハビリ状況とのそれぞれについて関係者のコメントを入力させるための入力欄を表示させる、表示処理手段とを備えたことを特徴とする。
【0024】
上記の病床管理業務支援システムにおいて、上記表示処理手段は、在院患者情報に含まれる入院年月日と、転棟退院調整画面表示を表示する当日年月日とから、在院日数を計算して、患者毎に在院日数をさらに表示させる。
【0025】
上記の病床管理業務支援システムは、一回の転棟予約につき1レコード作成され、患者IDと転棟決定オーダー番号に関連付けて、転棟予定年月日と病棟コードと病室コードと病床コードを含む転棟決定オーダー情報を記憶する転棟決定オーダー情報記憶手段と、一回の退院予約につき1レコード作成され、患者IDと退院決定オーダー番号に関連付けて、退院予定年月日を含む退院決定オーダー情報を記憶する退院決定オーダー情報記憶手段と、をさらに備え、上記表示処理手段は、転棟決定オーダー情報及び退院決定オーダー情報に含まれる患者IDと、在院患者情報記憶手段から取得した在院患者情報に含まれる患者IDとから、転棟予約又は退院予約がされた患者については、その旨を表示し、残りの在院患者については未調整の旨を表示する、調整区分の欄をさらに表示させる。
【0026】
上記の病床管理業務支援システムは、1患者につき毎日1レコード作成され、患者ID、入院年月日、診療年月日、病棟コード、病室コード、病棟/病床区分、診療科コード、評価票、A評価、B評価、C評価、重症者判定フラグを含む看護必要度情報を記憶する看護必要度情報記憶手段をさらに備え、上記表示処理手段は、在院患者情報から取得された患者IDに基づき、看護必要度情報から、当該患者IDに該当するレコードを取得し、当該レコードに含まれる診療年月日が当日年月日の前日であって重症者判定フラグが重症者であることを示す場合に、当該患者について重症者である旨を表示させ、または、当該患者の表示を除外条件の追加設定により自動的に除外する。
【0027】
上記の病床管理業務支援システムは、1回の手術予約につき1レコード作成され、患者ID、手術オーダー番号、手術予定年月日、手術実施年月日、手術名、入院依頼区分を含む手術情報を記憶する手術情報記憶手段をさらに備え、上記表示処理手段は、在院患者情報から取得された患者IDに基づき、手術情報から当該患者IDに該当するレコードを取得し、当該レコードに含まれる手術予定年月日もしくは手術実施年月日にデータが入力され、それが当日年月日以降の日付の場合は、当該患者の表示を除外条件の追加設定により自動的に除外する。
【0028】
上記の病床管理業務支援システムは、1回の入院につき1レコード作成され、患者IDに関連づけて、入院年月日、SEQ(同日入退院再入院を管理する番号)、様式1入院年月日、主傷病名、入院契機傷病名、医療資源最投入傷病名、DPCコード、DPC名、包括区分(0:出来高、1:包括)、包括評価対象外(0:包括評価、1:包括評価対象外)、包括評価対象外理由、診療報酬改定適用年度、入院期間I点数、入院期間II点数、入院期間III点数、入院期間I日数、入院期間II日数、入院期間III日数、入院期間満了I年月日、入院期間II満了年月日、入院期間III満了年月日、の項目を含むDPC情報を記憶するDPC情報記憶手段をさらに備え、上記表示処理手段は、在院患者情報に含まれる患者IDに基づいて、当該患者IDを含むDPC情報をDPC情報記憶手段から取得し、当該患者について、医療資源最投入傷病名と、入院期間II点数に病院機関別係数を乗じて計算した入院期間IIの点数と、入院期間II日数と在院日数とから計算した入院期間IIの残日数と、入院期間III点数に病院機関別係数を乗じて計算した入院期間IIIの点数と、入院期間III日数と在院日数とから計算した入院期間IIIの残日数と、をさらに表示させる。
【0029】
上記の病床管理業務支援システムは、一般病床等からの転棟先の病棟の入院基本料を管理するマスタであって、入院基本料コードに関連づけて、適用開始日時、適用終了日時、病棟/病床区分、入院基本料名称、点数、を含むデータを記憶する入院基本料マスタ記憶手段と、をさらに備え、上記表示処理手段は、入院基本料マスタ記憶手段から包括ケア点数を取得することによって、地域包括ケア点数との差異を下記の計算方法に従って計算し、さらに表示させる。
【0030】
・在院日数が入院期間I以下の場合
包括ケア点数-(入院期間I点数×医療機関別係数)
・在院日数が入院期間II以下の場合
包括ケア点数-(入院期間II点数×医療機関別係数)
・在院日数が入院期間III以下の場合
包括ケア点数-(入院期間III点数×医療機関別係数)
・在院日数が上記に該当しない場合
包括ケア点数-(入院期間III点数×医療機関別係数)
【0031】
また、上記の病床管理業務支援システムは、一般病床等からの転棟先の病棟の入院基本料を管理するマスタであって、入院基本料コードに関連づけて、適用開始日時、適用終了日時、病棟/病床区分、入院基本料名称、点数、を含むデータを記憶する入院基本料マスタ記憶手段と、をさらに備え、上記表示処理手段は、入院基本料マスタ記憶手段から回復リハ点数を取得することによって、回復リハ点数との差異を下記の計算方法に従って計算し、さらに表示させる。
【0032】
・在院日数が入院期間I以下の場合
回復リハ点数-(入院期間I点数×医療機関別係数)
・在院日数が入院期間II以下の場合
回復リハ点数-(入院期間II点数×医療機関別係数)
・在院日数が入院期間III以下の場合
回復リハ点数-(入院期間III点数×医療機関別係数)
・在院日数が上記に該当しない場合
回復リハ点数-(入院期間III点数×医療機関別係数)
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、最適な転棟/退院のタイミング決定に必要な患者の情報を把握しやすく表示し、さらに、そのタイミング決定に係る各関係者側の情報を共有することにより、転棟・退院時期を適切に調整できる機能を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の実施の形態による転棟退院調整画面表示の一例を示す図である。
図2】本発明の実施の形態によるハードウェア構成及び処理の概要を示すブロック図である。
図3】病床管理業務支援データベース3及び病床管理業務支援用マスタ群5に含まれるデータの詳細を示すブロック図である。
図4】患者基本情報301のレコードの項目を示す図である。
図5】在院患者情報302のレコードの項目を示す図である。
図6】転棟決定オーダー情報304のレコードの項目を示す図である。
図7】退院決定オーダー情報305のレコードの項目を示す図である。
図8】看護必要度情報306のレコードの項目を示す図である。
図9】手術情報310のレコードの項目を示す図である。
図10】DPC情報313のレコードの項目を示す図である。
図11】病棟マスタ501のレコードの項目を示す図である。
図12】診療科マスタ505のレコードの項目を示す図である。
図13】入院基本料マスタ511が記録するレコードの項目を示す図である。
図14】転棟退院調整画面表示中に表示される患者の項目の概略を示す図である。
図15】転棟退院調整画面表示中に表示される患者の項目の概略を示す図である。
図16】リハビリ情報が記録するレコードの項目を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しながら、本発明による病床管理業務支援システム(以下、「本システム」という)の実施の形態について説明する。
【0036】
最初に、本システムの主たる機能である、転棟・退院時期を調整するために表示される画面の例について、図1を用いて説明する。
【0037】
図1は、本システムにより表示される、転棟・退院時期を調整するために表示される画面(この画面表示を、以下、「転棟退院調整画面表示」という)の1例である。この表示は、病床管理者及び関係者が、転棟・退院調整に必要な情報を見やすい形式で一覧できるものである。転棟退院候補の患者についての情報が、患者毎に行単位で表示されている。図1中、符号a1~a7で示す項目は、転棟・退院候補としての患者の情報を示す。符号b1~b4で示す項目は、DPC情報を扱う医療機関で表示可能な項目であり、診療報酬制度(収入面)からみた転棟/退院のタイミングを判断するために重要な情報を提供する項目である。符号c1~c3で示す項目は、転棟/退院決定に必要となる病状、退院先確保の状況、リハビリの情報に関して、各担当者が随時コメントや判定を書き込み可能な欄である。dで示す項目は、転棟退院候補の患者についての退院決定又は転棟決定に関する現状を表示する項目であり、図1の例では「未」(未調整を示す旨の表示)が表示されている(各符号で示す項目については、図14及び図15参照)。
【0038】
次に、本システムの一実施形態によるハードウェア構成及び処理の概要について、図2を用いて説明する。図2に示す病床管理業務支援サーバ1は、本システムにより提供される各機能の実行に関する処理を、コンピュータプログラム及びコンピュータハードウェアの連携により実行する。
【0039】
病床管理業務支援サーバ1は、当該医療機関の電子カルテシステム11からの電子カルテ情報、あるいはその他の形式による電子的な形式の患者情報及び医療情報を含む(例えば、医療事務・DPCシステム12等からのDPC情報等)病床管理業務に必要な情報を一定間隔で取得し、データの再編成・登録・更新等の処理を実行して、本システムにおける機能実行のために必要なファイル形式として、病床管理業務支援データベース3に保存する。なお、病床管理業務支援データベース3に保存するためのファイル形式に生成するための処理は、本システムで実行することは必須ではなく、他のシステムにより生成されたファイルを取得してもよい。
【0040】
病床管理業務支援サーバ1は、Webサーバとしても機能し、当該医療機関の電子端末4からイントラネット・インターネット等のネットワークを介してアクセスを受け、電子端末4からの転棟退院調整画面8の表示指示に従って、病床管理業務支援データベース3から必要な情報を抽出するとともに、病床管理業務支援用マスタ群5の必要な情報を取得し、双方から取得したデータに基づいて、転棟退院調整画面の表示に必要な病床管理情報6を生成し、病床管理情報6に基づいて表示用処理を実行して、転棟退院調整画面表示8を生成して、電子端末4に提供する。
【0041】
なお、図2において、病床管理業務支援サーバ1は、1つのブロックとして表現されているが、必ずしも単独のハードウェアに限定されることはなく、複数のサーバにより構成してもよい。
【0042】
図3は、図2に示した病床管理業務支援データベース3及び病床管理業務支援用マスタ群5に含まれるデータの詳細を示した図である。
【0043】
転棟退院調整画面表示8を表示するために、一定間隔で情報を取り込み、病床管理業務支援データベース3に記憶する必須の情報ファイルは、患者基本情報301、在院患者情報302、を含み、さらに、転棟決定オーダー情報304、退院決定オーダー情報305、看護必要度情報306、手術情報310、DPC情報313、などを保有することにより、転棟退院調整画面表示8に表示する項目を増やしたり、候補抽出のための除外条件を増やしたりすることができる。
【0044】
また、転棟退院調整画面表示8を表示するために、病床管理業務支援サーバ1が保有する病床管理業務支援用マスタ群5のうち、必須のマスタは、病棟マスタ501及び診療科マスタ505であり、さらに、入院基本料マスタ511などを保有することにより、転棟退院調整画面表示8に表示する項目を増やすことができる。
【0045】
次に、病床管理業務支援データベース3に記憶する各情報ファイルの詳細について説明する。図4図10は、各情報ファイルに記憶されるレコードの項目の内容を示す図である。なお、これらの図中、キーの欄に◎又は○が表示されている項目は必須の項目であり、◎はプライマリキーを示している。
【0046】
図4は、患者基本情報301のレコードの項目を示している。患者基本情報301は、1患者につき1レコード作成され、患者ID、患者カナ氏名、患者氏名(漢字)、患者生年月日、性別コード、の項目を含む。
【0047】
図5は、在院患者情報302のレコードの項目を示している。在院患者情報302は、在院する1患者につき1レコード作成され、患者ID、病棟コード、病室コード、病床コード、診療科コード、主治医コード、主治医名、入院年月日、救護区分名、の項目を含む。
【0048】
図6は、転棟決定オーダー情報304のレコードの項目を示している。転棟決定オーダー情報304は、一回の転棟予約につき1レコード作成され、患者ID、転棟決定オーダー番号、転棟決定年月日、転棟予定年月日、病棟コード、病室コード、病床コード、診療科コード、の項目を含む。
【0049】
図7は、退院決定オーダー情報305のレコードの項目を示している。退院決定オーダー情報305は、一回の退院予約につき1レコード作成され、患者ID、退院決定オーダー番号、退院決定年月日、退院予定年月日、の項目を含む。
【0050】
図8は、看護必要度情報306のレコードの項目を示している。看護必要度情報306は、「重症度、医療・看護必要度」評価に基づく、入院患者の日別の24時時点の評価結果を記録するものであり、退院日には、退院時の評価が記録される。看護必要度情報306は、1患者につき毎日1レコード作成され、患者ID、入院年月日、診療年月日、病棟コード、病室コード、病棟/病床区分(一般病棟、地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟、のいずれかを示す)、診療科コード、評価票、A評価、B評価、C評価、重症者判定フラグ(重症者以下であれば0、重症者であれば1)、の項目を含む。
【0051】
図9は、手術情報310のレコードの項目を示している。手術情報310は、1回の手術予約につき1レコード作成され、患者ID、手術オーダー番号、手術予定年月日、手術実施年月日、手術名、入院依頼区分、の項目を含む。
【0052】
図10は、DPC情報313のレコードの項目を示している。DPC情報313は、1回の入院につき1レコード作成され、患者ID、入院年月日、SEQ(同日入退院再入院を管理する番号)、退院年月日、様式1入院年月日、主傷病名、入院契機傷病名、医療資源最投入傷病名、DPCコード、DPC名、包括区分(0:出来高、1:包括)、包括評価対象外(0:包括評価、1:包括評価対象外)、包括評価対象外理由、診療報酬改定適用年度、入院期間I点数、入院期間II点数、入院期間III点数、入院期間I日数、入院期間II日数、入院期間III日数、入院期間満了I年月日、入院期間II満了年月日、入院期間III満了年月日、の項目を含む。
【0053】
次に、病床管理業務支援用マスタ群5のうち、必須のマスタの詳細について説明する。図11図13は、各マスタに記憶されるレコードの項目の内容を示す図である。なお、これらの図中、PKの欄に円で囲った数字が表示されている項目はプライマリキーを示している。また、Indexの欄に○で囲った数字が表示されている項目は検索の際にインデックスとなる項目である。
【0054】
図11は、病棟マスタ501が記録するレコードの項目を示している。病棟マスタ501は、病棟名や病床数等を管理するマスタであり、病棟コード、建物構造番号、病棟名、病棟名(略称)、病棟/病床区分(例えば、一般病棟、地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟、のいずれかを示すコード)、病床数、表示順、病床稼働率閾値(現在状況)、重症者閾値(現在状況)、病床稼働率閾値(月間累計)、重症者閾値(月間累計)、病棟病床詳細区分、などの項目を含む。
【0055】
図12は、診療科マスタ505が記録するレコードの項目を示している。診療科マスタ505は、診療科名などを管理するマスタであり、診療科コード、診療科名、診療科名(略称)、表示順、表示区分、有効区分、などの項目を含む。
【0056】
図13は、入院基本料マスタ511が記録するレコードの項目を示している。入院基本料マスタ511は、一般病床等からの転棟先の病棟の入院基本料を管理するマスタであり、入院基本料コード、適用開始日時、適用終了日時、病棟/病床区分、入院基本料名称、点数、などの項目を含む。
【0057】
次に、図3に示した病床管理情報6に含まれるデータが、病床管理業務支援データベース3に含まれる情報及び病床管理業務支援用マスタ群5に含まれるマスタからどのように生成されるか、またどのような処理がされて、転棟退院調整画面表示8を表示させるか、について説明する。なお、図14は、図1に示した転棟退院調整画面表示8の例において、患者毎に行単位で表示される情報の項目中、左半分に示される項目の概略を示したものである。また、図15は、図1に示した転棟退院調整画面表示8の例において、患者毎に行単位で表示される情報の項目中、右半分に示される項目の概略を示したものである。
【0058】
まず、図14中、a1~a7の符号で示す患者のデータの表示について説明する。転棟・退院候補の患者のデータは、在院患者情報302と、患者基本情報301と、から取得される。すなわち、在院患者情報302からは、患者ID、病棟コード、診療科コード、主治医コード、主治医名、が取得される。また、在院患者情報302から取得される患者IDに基づいて、患者基本情報301から、患者氏名、性別コード、患者生年月日が取得される。
【0059】
a1で示す病棟の表示は、病棟コードから、病棟マスタ501に記憶されている病棟名又はその略称を表示させる。a2で示す診療科の表示は、診療科コードから診療科マスタ505に記憶されている診療科名又はその略称を表示させる。a3で示す主治医の表示及びa4で示す患者IDは、在院患者情報302に記憶されているデータに従い表示させる。a5で示す患者名は、患者基本情報301に記憶されているデータに従い表示させる。a6で示す年齢の表示は、患者基本情報301に記憶されている患者生年月日と、最新の転棟退院調整画面表示8の表示日(以下、「当日年月日」という)とから計算して表示させる。a7で示す在院日数の表示は、在院患者情報302に記憶されている入院年月日と、当日年月日とから計算して表示させる。なお、患者基本情報301に含まれる性別コードに従い、患者名の色彩別表示(例えば、男性であれば青、女性であれば赤)を行うことができる。また、在院患者情報302に含まれる病棟コードに従って、転棟・退院候補の患者の情報を、病棟別にソートして表示する。
【0060】
次に、dで示す調整区分の表示について説明する。この項目では、取得された患者IDに基づき、転棟決定オーダー情報304及び退院決定オーダー情報305から、当該患者IDに該当するレコードがあれば取得し、該当する患者については、調整区分の表示に、転棟決定あるいは退院決定を表示させる。その他の患者については、調整区分の表示として、未調整を示す表示を行う。なお、あらかじめ設定により、転棟決定あるいは退院決定した患者については、転棟・退院候補から自動的に除外して、未調整の患者のみを表示させることができる。
【0061】
さらに、在院患者情報302から取得された患者IDに基づき、看護必要度情報306から、当該患者IDに該当するレコードを取得し、当該レコードに含まれる診療年月日が当日年月日の前日であって重症者判定フラグが重症者であることを示す場合に、当該患者について、重症者である表示をさらに行うことができる。同様に、取得された患者IDに基づき、手術情報310から、手術予定年月日及び手術実施年月日のデータを取得し、手術実施年月日にデータが入力されていれば手術実施及び日付の表示を、手術年月日にデータが入力されていない場合は、手術予定及びに日付の表示を、それぞれさらに行うことができる。
【0062】
重症者・手術予定ありの患者は、除外条件を追加設定することにより、転棟・退院候補から自動的に除外することができる。
【0063】
次に、図15中、c1~c4の符号で示す、関係者のコメント入力欄の表示について説明する。これらのコメント入力欄は、プログラム制御により表示される。c1で示す表示は、病状・診療状況に関するコメント入力欄であり、看護師長などの病床管理者によって入力される。c2で示す表示は、退院先確保の状況に関するコメント入力欄であり、ソーシャルワーカーなどによって入力される。c3で示す表示は、リハビリの状況に関するコメント入力欄であり、リハビリ担当者などによって入力される。これらのコメント入力欄と共に、それぞれ担当者及び判定の項目が設けられている。これらのコメントを入力する関係者をはじめ、本システムにアクセスする利用者は、あらかじめ本システムに利用者登録を行うことが前提となっているため、担当者の欄には、それぞれの担当者のログイン処理により、担当者の名前が表示される。また、判定の欄は、プルダウン表示により、設定されている項目を選択して入力させることができる。
【0064】
本システムは、利用者によるコメント入力の排他制御を、患者+コメント欄の種類の単位で行っているため、Webシステムでありながら、複数の利用者による一覧形式での複数患者への連続入力が可能であり、効率的な入力作業が可能となる。従って、複数関係者からの効率的な情報収集が可能となっている。
【0065】
なお、c4で示す「リハ平均」の値は、図3には含まれていないリハビリ情報を病床管理業務支援データベース3が含む場合に表示させることができる。図16に、リハビリ情報のレコードが記録する項目を説明する。リハビリ情報は、1回のリハビリ予約につき1レコード作成され、患者ID及びリハビリオーダー番号に関連付けて、リハビリ実施年月日、リハビリ名称、リハビリ単位、起算日の項目を含む。取得された患者IDに基づき、リハビリ情報から、当該患者IDに該当するレコード全てを取得し、当該レコードに含まれる実施年月日と、当日年月日とから、当日年月日の前日より7日間のリハビリ単位の合計を7で割ることにより計算し、1日あたりのリハビリ単位の平均を計算し、表示させる。なお、在院日数が7以下である場合には、当日年月日の前日までのリハビリ単位の合計を在院日数-1で割ることにより、1日あたりのリハビリ単位の平均を計算して表示させる。
【0066】
次に、図14中、b1~b4の符号で示す部分の表示について説明する。これらの表示部分は、病床管理業務支援データベース3が、DPC情報313及び入院基本料マスタ511を保持することにより表示が可能になるが、診療報酬制度(病院の収入面)からみた転棟/タイミングに関する判断に有用な情報である。
【0067】
在院患者情報302から取得された患者IDに基づき、DPC情報313から当該患者IDを含むレコードを取得する。b1の医療資源最投入傷病名は、DPC情報313のレコードに含まれる医療資源最投入傷病名を表示させる。b2、b3及びb4の表示のためには、DPC情報313の当該患者IDのレコードから、入院期間I日数、入院期間I点数、入院期間II日数、入院期間II点数、入院期間III日数、入院期間III点数のデータを取得し、入院基本料マスタ511から包括ケア点数を取得する。包括ケア点数は、入院基本料マスタ511より、当日年月日が適用開始日時と適用終了日時に含まれており、かつ、病棟/病床区分が地域包括ケア病棟となる条件に該当するレコードから点数を取得する。図14のb4では、地域包括ケア点数との差異が表示されているが、これは、一般病棟から地域包括ケア病棟への転棟の可能性を検討するための表示の例である。一般病棟から回復期リハビリテーション病棟への転棟の可能性を検討するための表示としては、b4に「回復リハ点数との差異」が表示される。回復期リハビリテーション病棟の点数を表示させる場合は、病棟/病床区分の指定を変更することにより、入院基本料マスタ511から、回復リハ点数を取得する。
【0068】
次に、入院期間I日数と在院日数(a7についての説明参照)との差を入院期間I残日数とする。また、入院期間I点数は、DPC情報313から取得した入院期間I点数に医療機関別係数を乗じて計算する。b2の入院期間IIに表示される残日数は、DPC情報313から取得した入院期間II日数と在院日数との差を計算して表示させる。入院期間IIに表示される点数は、DPC情報313から取得した入院期間II点数に医療機関別係数を乗じて計算する。b3の入院期間IIIに表示される残日数は、DPC情報313から取得した入院期間III日数と在院日数との差を計算して表示させる。入院期間IIIに表示される点数は、DPC情報313から取得した入院期間III点数に医療機関別係数を乗じて計算する。
【0069】
b4の地域包括ケア点数との差異の欄の表示は、在院日数により以下のように計算する。
・在院日数が入院期間I以下の場合
包括ケア点数-(入院期間I点数×医療機関別係数)
・在院日数が入院期間II以下の場合
包括ケア点数-(入院期間II点数×医療機関別係数)
・在院日数が入院期間III以下の場合
包括ケア点数-(入院期間III点数×医療機関別係数)
・その他(在院日数が入院期間IIIを超える場合など)
包括ケア点数-(入院期間III点数×医療機関別係数)
b4の項目に表示される数字が+であれば、病院の収入面からは、転棟や退院をした方が望ましいことになる。
【0070】
なお、b4の欄の表示が「回復リハ点数との差異」となる場合は、在院日数により以下のように計算する。
・在院日数が入院期間I以下の場合
回復リハ点数-(入院期間I点数×医療機関別係数)
・在院日数が入院期間II以下の場合
回復リハ点数-(入院期間II点数×医療機関別係数)
・在院日数が入院期間III以下の場合
回復リハ点数-(入院期間III点数×医療機関別係数)
・その他(在院日数が入院期間IIIを超える場合など)
回復リハ点数-(入院期間III点数×医療機関別係数)
b4の項目については、仮に1病院で一般病棟、地域包括ケア病棟、回復リハ病棟を有する場合には、一覧画面には、「地域包括ケア点数との差異」と「回復リハ点数との差異」の両方とも表示させる仕様となる。
【符号の説明】
【0071】
1 病床管理業務支援サーバ
3 病床管理業務支援データベース
4 電子端末
5 病床管理業務支援用マスタ群
6 病床管理情報
8 転棟退院調整画面表示
11 電子カルテシステム
12 医療事務・DPCシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16