(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】モデル予測コントローラ及び推定器の機器点検のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20220322BHJP
【FI】
G05B23/02 Z
(21)【出願番号】P 2017563249
(86)(22)【出願日】2016-06-02
(86)【国際出願番号】 US2016035468
(87)【国際公開番号】W WO2016196762
(87)【国際公開日】2016-12-08
【審査請求日】2019-05-24
(32)【優先日】2015-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023685
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100162846
【氏名又は名称】大牧 綾子
(72)【発明者】
【氏名】カレッテ,ピエール・クリスティアン・マリー
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムソン,ジョン・マーティン
(72)【発明者】
【氏名】バリケット,ジーン
(72)【発明者】
【氏名】シュウ,ヘンジー
(72)【発明者】
【氏名】キャニー,ウィリアム・マシュー
【審査官】中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-030320(JP,A)
【文献】特開2011-253275(JP,A)
【文献】特開平03-238506(JP,A)
【文献】特開2013-149253(JP,A)
【文献】特表2013-543804(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0153437(US,A1)
【文献】特表2009-512951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 1/00- 7/04,11/00-13/04,
17/00-17/02,21/00-21/02,
23/00-23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器点検フラグを処理する方法であって:
2つ以上の機器構成要素の点検の要求を受信するステップと、
1つ以上の変数に対応する機器点検を含む要求の種類を判断するステップと、
前記1つ以上の変数に関連する1つ以上のフラグを設定するステップと、
前記1つ以上の変数を調整するステップと、
機器構成要素の保守のため前記機器構成要素の稼働状態を表すモデルのモデル構造を調整するステップであって、第1の機器構成要素は、前記第1の機器構成要素からの出力ストリームに関連
する変数であって、かつ第2の機器構成要素の入力として作用する変数に関連する、ステップと、
機器点検が完了したかどうかを判断するステップと、
前記1つ以上のフラグをリセットするステップと、
前記モデル構造を再調整して前記1つ以上の変数を伝達するステップと、
1つ以上の内部モデル予測値を調整するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記1つ以上の変数は、個別変数及び変数グループのうち少なくとも一方を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モデル構造を調整することは、モデル化係数をゼロに設定してプロセス関係式を除去すること、及びより高い次数の複素次モデル化プロセス関係式の係数を調整することのうち少なくとも一方を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記モデル構造の前記調整は、関連するプロセス出力変数(POV)プロセス測定値の校正、プロセスPOV推定値及び未来値予測、操作変数制御調整値の決定、実現可能な操作変数及び制御変数目標値の決定、及びプロセスの最適化のうち少なくとも1つに対応して少なくとも部分的に行なわれる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
視覚インジケータは、現在、機器点検モードになっている前記1つ以上の変数を特定する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記要求を推定器またはコントローラで受信する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
1つ以上の複素モデル化関係式を前記1つ以上の機器構成要素に関連付ける請求項1に記載の方法。
【請求項8】
システムであって:
情報を処理する1つ以上のプロセッサと、
前記1つ以上のプロセッサに通信可能に接続されるメモリと、
前記メモリに格納される命令を含む1つ以上のモジュールと、を備え、前記命令は、前記プロセッサにより実行されると、操作を実行するように動作することができ、前記操作は:
2つ以上の機器構成要素の点検の要求を受信すること、
1つ以上の変数に対応する機器点検を含む要求の種類を判断すること、
前記1つ以上の変数に関連する1つ以上のフラグを設定すること、
前記1つ以上の変数を調整すること、
前記機器構成要素の保守のため前記機器構成要素の稼働状態を表すモデルのモデル構造を調整することであって、第1の機器構成要素は、前記第1の機器構成要素からの出力ストリームに関連
する変数であって、かつ第2の機器構成要素の入力として作用する変数に関連する、調整すること、
機器点検が完了したかどうかを判断すること、
前記1つ以上のフラグをリセットすること、
前記モデル構造を再調整して前記1つ以上の変数を伝達すること、及び
1つ以上の内部モデル予測値を調整することを含むシステム。
【請求項9】
前記1つ以上の変数は、個別変数及び変数グループのうち少なくとも一方を含む請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記モデル構造を調整することは、モデル化係数をゼロに設定してプロセス関係式を除去すること、及びより高い次数の複素次モデル化プロセス関係式の係数を調整することのうち少なくとも一方を含む請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記モデル構造の前記調整は、関連するプロセス出力変数(POV)プロセス測定値の校正、プロセスPOV推定値及び未来値予測、操作変数制御調整値の決定、実現可能な操作変数及び制御変数目標値の決定、及びプロセスの最適化のうち少なくとも1つに対応して少なくとも部分的に行なわれる請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
視覚インジケータは、現在、機器点検モードになっている前記1つ以上の変数を特定する請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記要求を推定器またはコントローラで受信する請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
1つ以上の複素モデル化関係式を前記1つ以上の機器構成要素に関連付ける請求項8に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、機器点検を、機器点検フラグまたは機器点検セットを利用することにより行なうことに関するものであり、これにより、制御モデル設計者または推定モデル設計者は、処理機器モード変更の準備をすることができ、処理機器モード変更を行なうことができ、例えば機器を短期保守のために稼働停止させることができる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、機器点検フラグまたは機器点検セットを利用して、製造プロセス機器の運転モードの変更を表わす、例えば短期保守または一時的保守のための機器の稼働停止を表わす予測制御モデルまたは推定システムモデルを適正に管理する方法及びプロセスに関するものである。
【0003】
往々にして、個々の製造プロセス機器構成要素を、物理的保守のために、または他の目的のためにオフラインにする(稼働停止させる)必要がある、もしくは製造プロセス機器構成要素の電源を一時的に切る必要がある場合があった。例えば、エチレン熱分解炉を頻繁に非作動状態にして、または「解体して」炭素を除去する、コークス充填炉を解体して「金属を剥離する」、熱交換器を稼働停止させて「逆流洗浄する」。同様に、他の機器を作動状態にする、例えばエチレン熱分解炉を追加して処理能力を増大させる、または熱交換器を稼働させて冷却効果を高める。これまでのシステムでは、モデル化構成要素または機器構成要素のモードを変更する必要がある場合、モデル予測制御ソフトウェアまたはモデル推定ソフトウェアを非作動状態にして、もしくは特殊符号化し、メンテナンスして、これらの状態を管理する必要がある。多くの他のこのような例が、石油化学環境においてのみならず、他の環境において存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
処理機器のモードを変更する必要がある場合、外乱変数(DV)、操作変数(MV)、中間プロセス出力変数(POV)、及びこの技術分野の当業者に公知の他のシステム構成要素のような特定の変数について予測されるプロセスへの影響は、これらの変数の測定値、及びモデル予測値への影響を、機器状態変化量に基づいて調整する必要を伴うことにより、推定器またはコントローラが正しく動作し続けることができるようになる。例えば、中間処理機器構成要素を稼働停止させる場合、設計者は、設計者が予測するプロセス変数への影響が、下流の処理機器に関連する変数に伝わることがないように選択を行なう。例えば、2つの蒸留塔の間の熱交換器を稼働停止させて、熱交換器の温度測定値の変化により、下流の蒸留塔への給液に関連する測定値に影響が生じなくなるようにする。現在のモデル予測制御技術は、MV及びDVに対する影響を、関連する点検フラグを「オフ(OFF)」に設定することにより無くすことができるが、現時点では、中間POVへの影響を無くす方法を含んでいない。
【0005】
往々にして、所望の設計作業では、関連する処理機器のモードが変更される場合に、選択変数またはモデルの選択部分の中間POV測定値フィードバック及び予測値伝達を中止する。このように、これまでのモデル予測推定及び制御技術では、1つ以上のプロセス変数についてモデル化されるプロセスへの影響の変化を構造的に管理するためには、カスタムコード化が必要になり、複数モデルのメンテナンスまたはプログラムモデル化変更が頻繁に必要になる。このような必要が生じると、個々の解を符号化するために要する時間が長くなり、ソフトウェア及びモデルをメンテナンスする必要があり、適正な構成の選択に関わるオペレータまたはユーザによる誤りが生じるので、コストが嵩んでいた。これはまた、この方法に関連する柔軟性が欠如すると、発生する様々なプロ機器変更の制御アプリケーション及び/又は推定アプリケーションを非活性状態にする必要があったので非効率的であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、推定及び制御アプリケーション設計者が個別変数または変数グループを指定して(点検状態におけるように)、プロセスモデルに及ぼすこれらの変数の結果的な影響を構造的に正しく調整することができるような機器点検コンセプトを構築するシステム及び方法が本明細書において開示される。
【0007】
機器点検コンセプトの1つの実施形態では、1つ以上の機器構成要素の点検の要求を受信する。要求は、推定器またはコントローラもしくは推定器及びコントローラの任意の組み合わせで受信される。1つ以上の変数に対応する機器点検を含む要求の種類を判断する。1つの実施形態では、要求の種類は、個別変数に対応することができる。別の実施形態では、要求の種類は、変数グループに対応することができ、変数グループが集合を形成する。この変数グループ集合は、ユーザまたは設計者が具体的に設定して特定の条件を処理することができる。これらの変数に関連する1つ以上のフラグが設定される。次に、これらの変数は、モデル構造と併せて調整される。次に、機器点検が完了したかどうかが判断される。一旦、完了すると、1つ以上のフラグをリセットし、モデル構造を再調整して1つ以上の変数を伝達する。1つ以上の内部モデル予測値が更に調整される。機器点検フラグをリセットし、モデル構造を再調整して1つ以上の変数を伝達する。内部モデル予測値を次に、調整することができる。
【0008】
1つの実施形態では、モデル構造は、モデル化係数をゼロに設定してプロセス関係式を除去すること、及びより高い次数の複素次モデル化プロセス関係式の係数を調整することのうち少なくとも一方を含む。モデル構造は、予測目的、関連するプロセス出力変数(POV)プロセス測定値の校正、プロセスPOV推定値及び未来値予測、操作変数制御調整値の決定、実現可能な操作変数及び制御変数目標値の決定、及びプロセスの最適化のうち少なくとも1つに対応して少なくとも部分的に調整される。
【0009】
1つの実施形態では、視覚インジケータ、例えば表示を行なうインジケータを使用して、現在、機器点検モードになっている1つ以上の変数を特定することができる。すなわち、1つ以上の変数に関連する機器点検フラグを設定する。1つの実施形態では、点検状態変化量に含まれない1つ以上の入力変数を1つ以上の機器構成要素に関連付ける。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本実施形態及び本実施形態の利点に関する更に完全な理解は、以下の詳細な説明を添付の図面と併せて参照することにより得られ、これらの図面では、同様の参照番号は、同様の特徴を指している。
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の1つ以上の実施形態による例示的な情報ハンドリングシステムを示している。
【
図2】
図2は、モデル予測コントローラ及び推定器の機器点検変更処理を行なう本開示の1つ以上の実施形態によるフローチャートのフロー図である。
【
図3】
図3は、本開示の1つ以上の実施形態による例示的なシステムを示している。
【0012】
本開示は、様々な変形及び別の形態の影響を受け易いが、本開示の特定の例示的な実施形態は、これらの図面に示されており、本明細書において詳細に説明される。しかしながら、本明細書における特定の例示的な実施形態に関する記載は、本開示を本明細書において開示される特定の形態に限定するものではなく、本開示は、添付の特許請求の範囲により規定される通り、全ての変形物及び均等物を含むものとする。
【発明を実施するための形態】
【0013】
機器点検フラグをモデル予測推定器及びコントローラに使用する方法及びプロセスを導入して便利な方法を提供することにより、選択変数状態変化量が他のモデル関連変数の予測値に与える影響を変更する。1つの実施形態は、監視、品質制御、警報のような運転目的、またはこの技術分野の当業者に公知の任意の他の運転目的の処理機器、もしくはプロセスコントローラに関連する測定値を予測するような推定器を含むことができる。システムベイ(system bay)は、この技術分野の当業者に「オンライン(on-line)」として知られる、または「オフライン(off-line)」状態の設計計算に用いられるプロセス機器に直接接続される場合に使用することができる。推定器とは、計算を利用する予測アプリケーションを指し、予測アプリケーションは、この技術分野の当業者には、「ソフトセンサ」、「推計装置」、「予測推定器」、または他の用語として知られている処理機器に関連する実際の測定変数または潜在的な測定変数を推定するように設計される。コントローラとは、最先端プロセス制御(APC)を実行するように設計される多変数モデル予測制御(MPC)アプリケーションを指している。コントローラまたは推定プロセッサは、I/O通信、変数検証及び測定検証、推定及び予測、定常状態最適化、及び制御変動計算を含む多くの機能を搭載している。
【0014】
次に、これらの図面を参照するに、特定の例示的な実施形態の詳細が模式的に図示されている。これらの図面における同様の構成要素は、同様の参照番号で表わされ、類似の構成要素は、異なる小文字が添付された同様の参照番号で表わされる。
【0015】
本発明の1つ以上の実施形態では、情報ハンドリングシステムを利用して1つ以上の実施形態を実現することができる。このような実施形態は、使用されているプラットフォームに関係なく、ほぼ任意の種類の情報ハンドリングシステム上で実現することができる。本明細書において説明されるこれらの実施形態のうちの1つ以上の実施形態を実現するために使用されるこのような情報ハンドリングシステムハードウェアは、非一時的なコンピュータ可読媒体に格納される1つ以上の命令列、プログラミングスタンス列、またはコード列を実行するように構成されるプロセッサを含むことができる。例えば、
図1に示すように、情報ハンドリングシステム100は、1つ以上の中央処理装置(CPU)102、関連メモリ104(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、キャッシュメモリ、フラッシュメモリなど)、記憶装置106(例えば、ハードディスク、固体メモリ、コンパクトディスクドライブまたはデジタルビデオディスク(DVD)ドライブのような光ドライブ、フラッシュメモリスティックなど)、及び今日のコンピュータ(図示せず)に特有の多くの他の構成要素及び機能を含む。CPU102は、1つ以上のモジュールに由来するプログラム命令を実行するように機能し、プログラム命令は、メモリ104または記憶装置106もしくはこの技術分野の当業者に公知の任意の他のメモリのようなメモリ装置に格納される。CPU102は、本発明の1つ以上の実施形態から想到されるように、コントローラを実行するように構成することができる。CPU102は、汎用マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジック装置、コントローラ、ステートマシン、ゲートロジック、個別ハードウェア構成要素、人工ニューラルネットワーク、またはこの技術分野の当業者に公知であり、かつ本発明による他の操作データの計算を実行することができる任意の同様の適切なハードウェアとすることができる。情報ハンドリングシステム100は更に、キーボード、マウス、またはマイクロホンからの入力のような入力を送信及び/又は受信するI/Oインターフェース108を含むことができる。I/Oインターフェース108は更に、多次元(例えば、3次元)地球物理学データのような情報、1つ以上の読み取り値、設定、結果、変数に関連する1つ以上の値、任意の1つ以上のプロセス、システム、または外部構成要素からのフィードバック(または、この技術分野の当業者に公知の任意の他の種類のデータ)、またはモデル予測制御を行なうシステムに使用されるこの技術分野の当業者に公知の任意の他の情報を受信することができる。例えば、特定の実施形態では、I/Oインターフェース108は、品質制御、液位、圧力、温度、またはこの技術分野の当業者に公知の任意の他の読み取り値を、環境内の構成要素から受信することができる。更に、情報ハンドリングシステム100は、ディスプレイ114(例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ、または陰極線管(CRT)モニタ)のような出力手段を含むことができる。例えば、コントローラは、変数が「利用不可能である」または「利用可能である」として指定されているという通知をディスプレイ114に送信することができる。ディスプレイ114は、本発明の1つ以上の実施形態の任意の実施形態に必要な任意の種類のデータを表示するために必要な構成要素を備える。
【0016】
情報ハンドリングシステム100は、ネットワーク116(例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネットのようなワイドエリアネットワーク(WAN)、または任意の他の同様の種類のネットワーク)に、ネットワークインターフェース接続110を介して接続されて、センサ、測定値、読み取り値に由来するデータ、またはこの技術分野の当業者に公知の任意の他のデータを、本発明の任意の1つ以上の実施形態による要求に応じて受信することができる。この技術分野の当業者であれば、多くの異なる種類の情報ハンドリングシステムが存在し、前述の入力手段及び出力手段が他の形態を採ることができることを理解できるであろう。一般的に言うと、情報ハンドリングシステム100は、本発明の実施形態を実施するために必要な最小限の処理装置、入力装置、及び/又は出力装置を、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェア及びソフトウェアの任意の組み合わせであるかどうかに関係なく、少なくとも含む。
【0017】
情報ハンドリングシステム100のCPU102は更に、1つ以上のアプリケーション118を実行することができる。アプリケーション118は、1つ以上のプロセッサ(図示せず)、例えば推定器及びコントローラを含むことができる。コントローラとは、最先端プロセス制御(APU)を実行するように設計される多変数MPCアプリケーションを指している。推定器とは、計算で予測する予測アプリケーションを指し、予測アプリケーションは、測定値推定を行なうように設計される。CPU102のようなCPUは、命令を実行して、I/O通信、変数検証及び測定検証、推定及び予測、定常状態最適化、及び制御変動計算を含む多くの機能を実行することができる。アプリケーション118は、当該アプリケーション固有の推定機能を含むことができるが、CPU102を含む他の処理装置とのインターフェース及び連携に利用することができるパラメータを有する。例示的なパラメータは、推定値、最大推定値、最小推定値、及びこの技術分野の当業者に公知の他のパラメータを含むことができる。
【0018】
アプリケーション118に関連する任意の1つ以上のプロセッサ、コントローラ、及び推定器は更に、1つ以上の予測モデルまたは計算アルゴリズムに関連付けることができ、これらの予測モデルまたは計算アルゴリズムは、モデル自体またはアルゴリズム自体が入力変数及び出力変数のリストを含むことができ、更に調整設計及び他の設計、及び構成情報を含むことができる。
【0019】
本明細書及び特許請求の範囲では、「manipulated variable(操作変数)」(MV)という用語を使用して、アプリケーション118が操作することができる変数を指し、「controlled variable(制御変数)」(CV)という用語を使用して、最先端プロセスコントローラにより所定の値(設定値)に保持される必要がある、または所定の範囲(設定範囲)に保持される必要がある変数を指す。「disturbance variable(外乱変数)」(DV)という用語を使用して、コントローラまたは推定器に入力するMV以外の入力を指す。「intermediate variable(中間変数)」(IV)という用語を使用してプロセス出力変数(POV)を指し、プロセス出力変数の予測値を使用して、予測値に関連するPOV(これらのプロセス出力変数は通常、「下流の変数」であり、同じ時間応答またはより遅い時間応答を示す)の推定を向上させることができる。「variable sets(変数集合)」という表現を使用して、所定のモデルに使用されることにより定義される変数グループを指す。所定のモデルは、多くの変数集合を有することができ、任意の変数は、1つの変数集合のメンバー変数とすることができる。「optimizing a variable(変数を最適化する)」という表現を使用して、変数を最大化する、または最小化することを指し、変数を所定の値に保持することを指す。POVという用語は、プロセス入力の変化により変化する値を持つ変数を表わす。「real-time optimization(リアルタイム最適化)」という表現を使用して、変数値または処理パラメータの調整を行なって、経済的利益、信頼性、性能、または他の経営上の便益を実現することを指す。
【0020】
アプリケーション118の変数は、プロセスとのこれらの変数の構造的関係に基づいて細かく分類することができる。プロセス入力は、変数の値の変化を個別に利用してプロセス出力の変化を推定することができるような変数である。プロセス入力は、この技術分野の当業者には、MV(コントローラにより調整されることになる独立プロセス設定値)を含むものとして従来から知られている、またはDV(コントローラにより調整されず、かつMVの変化の影響を受けない独立プロセス設定値)として従来から知られている。POVは、製造プロセスの工学的現象(例えば、温度、圧力、及び組成)に直接関連する値を持つ実際のプロセス測定値または潜在的なプロセス測定値であり、この技術分野の当業者にプロセス入力の値により決定されるものとして最も広く知られている。変数集合により、変数をグループ化して表示することができ、トランザクション制御することができる(例えば、モードを変更する)。
【0021】
ユーザは、1つ以上の情報ハンドリングシステム100と通信する、またはインタラクションを行なうオペレータ、技術者、またはエンジニアとするか、またはこの技術分野の当業者に公知の任意の他のユーザとすることができる。
【0022】
更に、この技術分野の当業者であれば、前述の情報ハンドリングシステム100の1つ以上の構成要素は、遠く離れた場所に配置することができ、かつ1つ以上の他の構成要素にネットワークを介して接続することができることを理解できるであろう。また、本発明の実施形態は、複数のノードを有する分散システム上で実現することができ、本発明の各構成部は、分散システム内の異なるノードに配置することができる。例えば、ディスプレイ114は、情報ハンドリングシステム100の他の構成要素から遠く離れた場所に配置することができる。情報ハンドリングシステム100は、1つ以上のクライアント装置、サーバ、またはクライアント装置及びサーバの任意の組み合わせを備えることができる。
【0023】
図2を参照するに、200で一括して示されているのは、モデル予測推定器またはコントローラの機器点検変更処理を行なって、複数の構成要素または機器を含むシステムの稼働停止時間及び潜在的な制御設計誤差を低減するフロー図である。例えば、1つの実施形態では、システムは、幾つかの構成要素または機器を含むことができ、
図3に300で一括して示されるように、変数が1つの構成要素から別の構成要素に供給される。1つの実施形態では、機器1 312は、関連する測定変数F1 302を持つ入力ストリーム310を有することができ、出力ストリーム314と、当該出力ストリーム314に関連し、かつ機器2 316の入力としても作用する測定値F2 304と、を有することができ、機器2 316は、出力ストリーム318と、当該出力ストリーム318に関連し、かつ機器3 320の入力としても作用する測定値F3 306と、を有することができ、機器3 320は、出力ストリーム322と、当該出力ストリーム322に関連する測定値F4 308と、を有することができる。これらの関連する測定値は、例えば液位、温度、圧力、品質、またはこの技術分野の当業者に公知の他の潜在的に測定可能な工学値である。
【0024】
モデル化を行なうために、F1 302の値を使用して、変数F2 304の現在値及び未来値を生成することができ、これらの値自体を使用してF3 306の現在値及び未来値を生成することができる。更に、変数F3 306の現在値及び未来値を使用してF4 308の現在値及び未来値を生成することができる。機器1 312を稼働停止する場合、ストリーム314の特性が変化して、F2 304が、F3 306を生成するために使用する必要がある値に正しく設定されなくなる。しかしながら、他のモデル化関係式、例えばF4 308を生成するために使用されるF3 306を使用する関係式は維持される。機器構成要素を3つしか示していないが、機器1 302、機器2 306、機器3 308、及び任意の数の他の機器構成要素を使用することができる。
【0025】
1つ以上の実施形態では、機器構成要素は、物理的なプロセス機器の全部または一部とすることができる、または更に広い意味では、モデル化を行なうために分離された個々の工学的現象とすることができる。更に、構成要素及びストリームは、下流の構成要素を表わす複素モデル化関係式に用いられる1つ以上の変数を含むことができる。複素モデル化関係式は、線形項及び非線形項、統計モデル及び実験モデル、開放方程式形式及び閉鎖方程式形式、第1原理モデル及び及び相関モデル、及びこの技術分野の当業者に公知の他の形式を含む。例えば、構成要素を稼働させること、構成ストリームの特性を変更すること、及び運転条件の変更を含む幾つかの実施形態を同様に適用することができる。同様に、任意の1つ以上の機器構成要素は、1つ以上の入力変数(点検状態変化量に含まれない他の入力変数を含む)及び1つ以上の出力(点検状態変化量に含まれない他の出力変数を含む)を有することができ、これらの入力及び出力は1つ以上の機器構成要素に供給される。
【0026】
図2の200で一括して示される1つの実施形態では、機器点検変更処理に関する要求をステップ202で受信する。要求は、ユーザトランザクション、I/Oインターフェースから受信される値、別のプログラムまたはアプリケーションの入力/出力、またはこの技術分野の当業者に公知の任意の他のトリガーにより開始することができる。受信する要求は、個々の変数に関する要求、または変数グループに関する要求とすることができる。変数グループは、2つ以上の変数を含むことができ、この集合は、具体的にはユーザまたは設計者が設定して、特定されるプロセス条件を処理することができる、またはシステムにより、他の利用可能なモデル及びアプリケーション構成情報に基づいて自動的に設定することができる。個々の変数は、運転条件が1つの変数のみに関するモデル変更の注意事項を保証する場合に;例えば、プロセスストリームの構成要素が変化して、分析器から、下流変数に適用可能なプロセス値が供給されなくなる場合に要求される。変数グループは、運転条件が、幾つかの変数に関する幾つかのモデル変更の注意事項を保証する場合に要求され、幾つかの変数の全てを、稼働停止させている機器の1つの構成要素に関連付けることができる。例えば、熱交換器を稼働停止させる場合、熱交換器の両側の出口温度は、多種多様な下流変数に適用可能なプロセス値とはならない。
【0027】
ステップ204では、要求の種類を判断する。すなわち、ステップ204において、機器点検が個別変数に対応していると判断される場合、ステップ206において、個別変数に対応する機器点検フラグを調整して、変数が機器点検モードであり、モデルに対する調整を行なう必要があることを通知する。機器点検フラグは、メモリ104、記憶装置106、CPU102に関連するメモリ、またはこの技術分野の当業者に公知の任意の他のメモリを含む任意のメモリに格納されているシングルビットまたはマルチビットとすることができる。ステップ204において、機器点検が変数グループに対応していると判断される場合、ステップ208において、当該点検セットに関連する変数群の全てに対応する機器点検フラグを同様に調整して、モデルに対する複数種類の調整を行なう必要があることを通知する。機器点検セットフラグは、メモリ104、記憶装置106、CPU102に関連するメモリ、またはこの技術分野の当業者に公知の任意の他のメモリを含む任意のメモリに格納されているシングルビットまたはマルチビットに関連付けることができる。機器点検フラグが、個別変数であるか、または変数グループであるかどうかに関係なく、いずれの変数に対しても設定される場合、値変化量が伝達されて予測値の更新が行なわれることはない。
【0028】
一旦、機器点検フラグがステップ206において設定されると、または複数のフラグがステップ208において設定されると、モデル構造をステップ210において適切に調整し、ステップ210では、例えばモデル化係数をゼロに設定して、除去しない場合には残ることになるプロセス関係式を除去することができる、及び/又はこの技術分野の当業者に公知のより高い次数の複素次モデル化プロセス関係式の係数を調整することができる。構造的調整は、予測を行なうために、関連するPOVプロセス測定値を校正するために、プロセスPOV推定値及び未来値予測を行なうために、MV制御調整値を決定するために、実現可能なMV及びCV制御目標値を決定するために、及びプロセスの最適化を行なうために少なくとも部分的に行なわれる。機器点検フラグをステップ206またはステップ208において設定することにより、特定の個別変数または変数グループ集合が、モデルプロセスの伝達接続値を与えなくなることを通知することができる。例えば、蒸留塔、熱交換器、及び反応器を直列に配置したシステムでは、熱交換器の変数が機器点検に設定される(関連する機器点検フラグが設定される)場合、蒸留塔から熱交換器を通って反応器に至ることによるモデルプロセスの影響がモデルに及ぶことがなくなる。外乱推定及び予測値伝達を行なうために、熱交換器のMV、DV、及びPOVの値は、これらの値が測定され続けて個別に予測される場合でも、一定に保持される(変化が生じないので影響が生じない)。モデル構造は、推定及び制御に必要な機能を提供し、かつモデル化対象のシステムに関連するこれまでの知識または相関データに少なくとも部分的に基づいて構築される。モデル構造はユーザから提供されるようにしてもよい。
【0029】
モデル化調整の他に、ステップ212における変数調整または信号調整を更に行なって、指示される機器点検のモデル化の一貫性を確保して、機器点検に関する適正な注意事項を確実に遵守する必要がある。これらの調整は、変数を一定に保つのと同じくらいに簡単である、またはそれ以外には、この技術分野の当業者に公知の特定の構成に関する調整を適切に行なうことによりアプリケーション118において構築されるモデルの種類及び構造により決定される。例えば、1つの実施形態では、システムは、互いに直列に配置される蒸留塔、熱交換器、及び反応器を含む。熱交換器の変数が機器点検に設定される場合、蒸留塔から熱交換器を通って反応器に至ることによるモデル化プロセスの影響がモデルに及ぶことがなくなり、蒸留塔から反応器のモデルに及ぶ入力の影響は必ず、一定に保持される、またはその他には、推定される。
【0030】
ステップ212において調整される値は、過去値、現在値、及び予測未来値を含むことができ、かつ使用するモデルの性質、及び指示される機器点検について予想されるプロセスの影響によって異なる可能性がある。例えば、簡単な線形時系列モデルを使用する場合、機器点検に設定され、かつ下流モデルにより使用される個別変数の値、または変数グループの値に関連する入力は必ず、一定値に少なくとも部分的に基づいて設定される。
【0031】
次に、ステップ214では、1つ以上の変数、または変数グループ、もしくはモデルの構成部分のうちいずれが、現在、機器点検モードになっているかを特定する視覚インジケータまたはフラグを設けて、これらの変数のモデル化プロセスの影響が、他の方法で調整されているようにする。すなわち、識別情報を、ディスプレイ114を介して提供することができ、ディスプレイ114は、機器点検セットに関連する個別変数または変数グループが機器点検モードに設定された時刻を表示する。
【0032】
ステップ216では、機器点検が完了したかどうかを判断する。ステップ216を、機器点検が完了するまで繰り返し、システムまたは機器を調整してシステムまたは機器の正常状態に戻そうとする、例えば稼働状態に戻そうとする。機器点検が完了したと判断する場合、ステップ218において、機器点検フラグをリセットする、または機器点検フラグを調整する。機器が稼働しなくなると、ステップ220において、モデルを適切にリセットする、または機器の正常状態に調整し戻す、他の内部フラグを設定する、例えば個別変数または変数グループを設定する。
【0033】
ステップ222では、内部モデル予測値を調整して、1つ以上の変数値を接続し直す。機器点検フラグが変化する場合、注意を適切に喚起して、測定値及び予測値を適切に「接続し直す」。例えば、これは、一定に保持されたが、機器点検状態で実際のプロセス変更を伴う可能性があるモデル値の補正、推定校正プロセスのリセット、この技術分野の当業者に公知の制御値及び最適化値の汎用初期化を含む。
【0034】
実施形態を様々な実施態様及び開発態様について説明してきたが、これらの実施形態は、例示であり、かつ本発明の主題の範囲は、これらの実施形態に限定されないことを理解できるであろう。多くの変更、変形、追加、及び改善が可能である。
【0035】
複数の例を、本明細書において説明される構成要素、操作、または構造に対応して、単一の例として提供することができる。一般的に、別々の構成要素として例示的な構成で提示される構造及び機能は、複合構造または複合構成要素として実現することができる。同様に、単一の構成要素として提示される構造及び機能は、別々の構成要素として実現することができる。これらの変更、変形、追加、及び改善、更には他の変更、変形、追加、及び改善は、本発明の主題の範囲に含まれる。