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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】変成器の製造方法及び変成器
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20220322BHJP
   H01F 27/245 20060101ALI20220322BHJP
   H01F 27/26 20060101ALI20220322BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20220322BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
H01F41/02 H
H01F27/245 155
H01F27/26 130S
H01F27/32 150
H01F30/10 E
H01F41/02 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018033827
(22)【出願日】2018-02-27
(65)【公開番号】P2019149487
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2020-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】下村 好亮
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-161317(JP,U)
【文献】特開平02-165610(JP,A)
【文献】特開2003-077749(JP,A)
【文献】特開平08-051034(JP,A)
【文献】米国特許第06046663(US,A)
【文献】特開2003-318039(JP,A)
【文献】特開2019-046969(JP,A)
【文献】実開昭56-040632(JP,U)
【文献】実開昭48-103814(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/02
H01F 27/26
H01F 27/245
H01F 27/32
H01F 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導線を巻回することによって形成されているコイルと、
前記導線が巻回されているコイルボビンと、
帯状の鋼板を複数回巻回することによって形成されている筒状の巻鉄心と、
前記鋼板が巻回されており、前記コイルボビンに取り付けられている筒状又は半筒状の巻鉄心ボビンと
を備える変成器を製造する方法であって、
前記巻鉄心ボビンの外周面に凸部が設けられており、
前記鋼板の一端部に穴部が設けられており、
前記コイルボビンに前記巻鉄心ボビンを取り付け、
前記鋼板の前記一端部が最内周に位置するようにして、前記巻鉄心ボビンの前記外周面に沿って前記鋼板を巻回することによって前記巻鉄心を形成し、
該巻鉄心の外周面に周方向の外力を与えることによって、前記巻鉄心を前記巻鉄心ボビンに締め付け、
前記巻鉄心の前記巻鉄心ボビンへの締め付け時に前記凸部と前記穴部とを互いに係合させることを特徴とする変成器の製造方法。
【請求項2】
前記外力を与えられることによって前記巻鉄心の内周面が周方向に回転し、
前記巻鉄心の前記内周面が周方向に回転することによって前記凸部が前記穴部に挿入され、
更に前記外力を与えられることによって前記巻鉄心の前記巻鉄心ボビンへの締め付けが完了することを特徴とする請求項1に記載の変成器の製造方法。
【請求項3】
無端状のベルトの一部を2本のローラの間に張り渡し、
2本の前記ベルト夫々の前記一部を、該一部の間に前記巻鉄心を配して対向させ、
2本の前記ベルト夫々を長手方向に走行させ、
走行する2本の前記ベルトを、前記巻鉄心の前記外周面に同時的に接触させることによって、前記巻鉄心の前記外周面に前記外力を与えることを特徴とする請求項1又は2に記載の変成器の製造方法。
【請求項4】
2本の前記ベルトを前記巻鉄心に対して同時的に接離させることによって、前記外力を間欠的に与えることを特徴とする請求項3に記載の変成器の製造方法。
【請求項5】
導線を巻回することによって形成されているコイルと、
前記導線が巻回されているコイルボビンと、
帯状の鋼板を複数回巻回することによって形成されている筒状の巻鉄心と、
前記鋼板が巻回されており、前記コイルボビンに取り付けられている筒状又は半筒状の巻鉄心ボビンと
を備える変成器であって、
前記巻鉄心ボビンの外周面に設けられている凸部と、
前記巻鉄心の内周面に設けられており、前記巻鉄心の前記巻鉄心ボビンへの周方向の固定を行なう穴部と
を備え
前記穴部は、前記鋼板に設けられた貫通孔であり、
前記凸部の突出量は前記鋼板の厚みより大きく、
前記凸部の前記周方向の両側面は、前記凸部の先端から基端に向けて、互いに接近する方向に傾斜しており、
前記両側面の一方と前記巻鉄心ボビンの外周面との間に、前記穴部の開口の周縁部が係合していることを特徴とする変成器。
【請求項6】
前記コイルボビン及び前記巻鉄心ボビン夫々に、互いに嵌合している位置決め部が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の変成器。
【請求項7】
導線を巻回することによって形成されているコイルと、
前記導線が巻回されているコイルボビンと、
帯状の鋼板を複数回巻回することによって形成されている筒状の巻鉄心と、
前記鋼板が巻回されており、前記コイルボビンに取り付けられている筒状又は半筒状の巻鉄心ボビンと
を備える変成器であって、
前記巻鉄心ボビンの外周面に設けられている凸部と、
前記巻鉄心の内周面に設けられており、前記巻鉄心の前記巻鉄心ボビンへの周方向の固定を行なう穴部と
を備え、
前記コイルボビン及び前記巻鉄心ボビン夫々に、互いに嵌合している位置決め部が設けられていることを特徴とする変成器。
【請求項8】
前記穴部は、前記鋼板に設けられた貫通孔であり、
前記凸部の突出量は前記鋼板の厚み以上の大きさであることを特徴とする請求項に記載の変成器。
【請求項9】
前記凸部の突出量は前記鋼板の厚みより大きく、
前記凸部の前記周方向の両側面は、前記凸部の先端から基端に向けて、互いに接近する方向に傾斜しており、
前記両側面の一方と前記巻鉄心ボビンの外周面との間に、前記穴部の開口の周縁部が係合していることを特徴とする請求項8に記載の変成器。
【請求項10】
前記凸部は1つだけ設けられており、
前記穴部は1つだけ、前記鋼板の幅方向の中心部に設けられていることを特徴とする請求項5から9の何れか一項に記載の変成器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル及び巻鉄心を備える変成器の製造方法及び変成器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2に記載のコイルは、矩形枠状のコイルボビンに、コイルボビンの周方向に導線を巻回することによって形成されている。巻鉄心は円筒状をなし、帯状の鋼板を複数回円筒状に巻回することによって形成されている。鋼板は、コイルボビンの一辺部に巻回されており、巻鉄心の径方向に積層されている。
【0003】
巻鉄心において層状の鋼板間に隙間がある場合、変成器の性能が劣化する。
特許文献1には、巻鉄心に周方向の外力を与えることによって、巻鉄心をコイルボビンの一辺部に締め付けることが記載されている。巻鉄心の締め付けによって、層状の鋼板間の隙間が解消されるので、変成器の性能が向上する。
【0004】
特許文献2においては、コイルボビンに凹状の係止切込が設けられており、巻鉄心の内周面に凸状の係止部が設けられている。係止部は、鋼板の長手方向の端部を折り曲げるか、又は折り返すことによって形成される。或いは、係止部は、鋼板の長手方向の端部にポンチ加工を施すことによって形成される。
巻鉄心の係止部がコイルボビンの係止切込に係止された場合、巻鉄心に周方向の外力が与えられても、巻鉄心が周方向に空回りする虞はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-77749号公報
【文献】特開2001-358023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、巻鉄心を構成している鋼板は焼鈍されているので、軟らかい。故に、凸状の係止部は、鋼板に加わった外力によって変形する虞がある。
変形した係止部は、係止切込に係止することができない。従って、巻鉄心に周方向の外力を与えたときに巻鉄心が周方向に空回りするので、巻鉄心を適切に締め付けることができない。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、巻鉄心を適切に締め付けることができる変成器の製造方法及び変成器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施の形態に係る変成器の製造方法は、導線を巻回することによって形成されているコイルと、前記導線が巻回されているコイルボビンと、帯状の鋼板を複数回巻回することによって形成されている筒状の巻鉄心と、前記鋼板が巻回されており、前記コイルボビンに取り付けられている筒状又は半筒状の巻鉄心ボビンとを備える変成器を製造する方法であって、前記巻鉄心ボビンの外周面に凸部が設けられており、前記鋼板の一端部に穴部が設けられており、前記コイルボビンに前記巻鉄心ボビンを取り付け、前記鋼板の前記一端部が最内周に位置するようにして、前記巻鉄心ボビンの前記外周面に沿って前記鋼板を巻回することによって前記巻鉄心を形成し、該巻鉄心の外周面に周方向の外力を与えることによって、前記巻鉄心を前記巻鉄心ボビンに締め付け、前記巻鉄心の前記巻鉄心ボビンへの締め付け時に前記凸部と前記穴部とを互いに係合させることを特徴とする。
【0009】
本実施の形態にあっては、巻鉄心ボビンに凸部が設けられている。
巻鉄心を構成している鋼板には穴部が設けられている。鋼板に外力が加わっても、穴部は変形し難い。
鋼板は、穴部が設けられている端部が最内周に位置するようにして、巻鉄心ボビンの外周面に沿って巻回される。この結果、巻鉄心ボビンの周りに巻鉄心が形成される。
巻鉄心の外周面には、巻鉄心の周方向の外力が与えられる。巻鉄心の穴部には巻鉄心ボビンの凸部が係合するので、巻鉄心が周方向に空回りすることはない。故に、巻鉄心を巻鉄心ボビンに適切に締め付けることができる。
【0010】
巻鉄心は巻鉄心ボビンを介してコイルボビンに取り付けられる。故に、コイルボビンに巻回されている導線に巻鉄心が接触することによって導線が損傷することを防止することができる。
【0011】
本実施の形態に係る変成器の製造方法は、前記外力を与えられることによって前記巻鉄心の内周面が周方向に回転し、前記巻鉄心の前記内周面が周方向に回転することによって前記凸部が前記穴部に挿入され、更に前記外力を与えられることによって前記巻鉄心の前記巻鉄心ボビンへの締め付けが完了することを特徴とする。
【0012】
本実施の形態にあっては、巻鉄心の外周面に周方向の外力が与えられることによって、巻鉄心の内周面が周方向に回転する。このとき、巻鉄心ボビンの凸部が巻鉄心の穴部に挿入される。即ち、凸部と穴部とが自然に係合する。
凸部と穴部との係合後も巻鉄心の外周面に周方向の外力が与えられることによって、巻鉄心の巻鉄心ボビンへの締め付けが完了する。
【0013】
本実施の形態に係る変成器の製造方法は、無端状のベルトの一部を2本のローラの間に張り渡し、2本の前記ベルト夫々の前記一部を、該一部の間に前記巻鉄心を配して対向させ、2本の前記ベルト夫々を長手方向に走行させ、走行する2本の前記ベルトを、前記巻鉄心の前記外周面に同時的に接触させることによって、前記巻鉄心の前記外周面に前記外力を与えることを特徴とする。
【0014】
本実施の形態にあっては、無端状のベルトが長手方向に走行する。走行するベルトの一部が巻鉄心の外周面に接触することによって、巻鉄心の外周面に周方向の外力が与えられる。
ベルトから外力が与えられるとき、巻鉄心は2本のベルトに挟まれる。故に、巻鉄心が偏心することが抑制される。
【0015】
本実施の形態に係る変成器の製造方法は、2本の前記ベルトを前記巻鉄心に対して同時的に接離させることによって、前記外力を間欠的に与えることを特徴とする。
【0016】
本実施の形態にあっては、巻鉄心の外周面に周方向の外力が間欠的に与えられる。このために、2本のベルトは巻鉄心への同時的な接触と同時的な離隔とを繰り返す。
2本のベルトが巻鉄心に接触したとき、巻鉄心は2本のベルトに挟まれるので、扁平に変形する。しかしながら、2本のベルトが巻鉄心から離隔したとき、鋼板の弾性によって、巻鉄心は元の形状に復元する。即ち、巻鉄心の変形を防止することができる。
【0017】
本実施の形態に係る変成器は、導線を巻回することによって形成されているコイルと、前記導線が巻回されているコイルボビンと、帯状の鋼板を複数回巻回することによって形成されている筒状の巻鉄心と、前記鋼板が巻回されており、前記コイルボビンに取り付けられている筒状又は半筒状の巻鉄心ボビンとを備える変成器であって、前記巻鉄心ボビンの外周面に設けられている凸部と、前記巻鉄心の内周面に設けられており、前記巻鉄心の前記巻鉄心ボビンへの周方向の固定を行なう穴部とを備え、前記穴部は、前記鋼板に設けられた貫通孔であり、前記凸部の突出量は前記鋼板の厚みより大きく、前記凸部の前記周方向の両側面は、前記凸部の先端から基端に向けて、互いに接近する方向に傾斜しており、前記両側面の一方と前記巻鉄心ボビンの外周面との間に、前記穴部の開口の周縁部が係合していることを特徴とする。
本実施の形態に係る変成器は、導線を巻回することによって形成されているコイルと、前記導線が巻回されているコイルボビンと、帯状の鋼板を複数回巻回することによって形成されている筒状の巻鉄心と、前記鋼板が巻回されており、前記コイルボビンに取り付けられている筒状又は半筒状の巻鉄心ボビンとを備える変成器であって、前記巻鉄心ボビンの外周面に設けられている凸部と、前記巻鉄心の内周面に設けられており、前記巻鉄心の前記巻鉄心ボビンへの周方向の固定を行なう穴部とを備え、前記コイルボビン及び前記巻鉄心ボビン夫々に、互いに嵌合している位置決め部が設けられていることを特徴とする。
【0018】
本実施の形態にあっては、例えば本実施の形態に係る変成器の製造方法に従って、本実施の形態に係る変成器を製造することができる。巻鉄心の締め付け時に巻鉄心ボビンの凸部と巻鉄心の穴部とが係合し、巻鉄心が巻鉄心ボビンに周方向に固定される。故に、巻鉄心の締め付け時に巻鉄心が空回りしない。従って、巻鉄心は巻鉄心ボビンに適切に締め付けられている。この結果、変成器の性能を向上させることができる。
【0019】
本実施の形態に係る変成器は、前記凸部は1つだけ設けられており、前記穴部は1つだけ、前記鋼板の幅方向の中心部に設けられていることを特徴とする。
【0020】
本実施の形態にあっては、鋼板に1つだけ穴部が設けられている。故に、穴部を設けることによる鋼板の強度の低下を防止することができる。
穴部は鋼板の幅方向の中心部に設けられている。故に、巻鉄心の外周面に周方向の外力が与えられたときに、鋼板が凸部と穴部との係合個所を中心に回転することを抑制することができる。
【0021】
本実施の形態に係る変成器は、前記コイルボビン及び前記巻鉄心ボビン夫々に、互いに嵌合している位置決め部が設けられていることを特徴とする。
【0022】
本実施の形態にあっては、コイルボビンの位置決め部と巻鉄心ボビンの位置決め部とが互いに嵌合する。故に、巻鉄心ボビンをコイルボビンに取り付ける場合に巻鉄心ボビンをコイルボビンに対して容易に位置決めすることができる。また、巻鉄心ボビンのコイルボビンに対する位置ずれを防止することができる。
【0023】
本実施の形態に係る変成器は、前記穴部は、前記鋼板に設けられた貫通孔であり、前記凸部の突出量は前記鋼板の厚み以上の大きさであることを特徴とする。
【0024】
本実施の形態にあっては、穴部が貫通孔なので、鋼板の両面の何れ側が巻鉄心の内周面となる場合であっても、凸部が穴部に係合することができる。
凸部の突出量が鋼板の厚みに等しい場合、穴部に挿入された凸部が鋼板から突出しない。故に、凸部が層状の鋼板間に隙間を形成することを防止することができる。
凸部の突出量が鋼板の厚みより大きい場合、穴部に挿入された凸部が鋼板から突出する。故に、凸部が穴部から抜け出して凸部と穴部との係合が解除されることを防止することができる。
【0025】
本実施の形態に係る変成器は、前記凸部の突出量は前記鋼板の厚みより大きく、前記凸部の前記周方向の両側面は、前記凸部の先端から基端に向けて、互いに接近する方向に傾斜しており、前記両側面の一方と前記巻鉄心ボビンの外周面との間に、前記穴部の開口の周縁部が係合していることを特徴とする。
【0026】
本実施の形態にあっては、凸部の傾斜した側面と巻鉄心ボビンの外周面との間に、穴部の開口の周縁部が係合している。故に、凸部と穴部とを強固に係合させることができる。
凸部の周方向の両側面が夫々傾斜しているので、巻鉄心の巻き方向によらず、一方の側面と巻鉄心ボビンの外周面との間に、穴部の開口の周縁部が係合する。
【発明の効果】
【0027】
本実施の形態の変成器の製造方法及び変成器によれば、巻鉄心を適切に締め付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施の形態1に係る変成器を示す斜視図である。
図2】コイルボビン及び巻鉄心ボビンを示す斜視図である。
図3】巻鉄心及び巻鉄心ボビンを模式的に示す断面図である。
図4】鋼板を示す正面図である。
図5】巻鉄心の形成手順(鋼板の引き出し)を説明するための平面図である。
図6】巻鉄心の形成手順(鋼板の送り出し)を説明するための平面図である。
図7】巻鉄心の形成手順(大円の完成)を説明するための平面図である。
図8】巻鉄心の形成手順(巻鉄心の形成)を説明するための平面図である。
図9】巻鉄心ボビンに巻回された鋼板を模式的に示す断面図である。
図10】変成器を製造するための巻締装置を示す平面図である。
図11】巻鉄心の締め付け手順(ベルト離隔時)を説明するための平面図である。
図12】巻鉄心の締め付け手順(ベルト接触時)を説明するための平面図である。
図13】実施の形態2に係る変成器が備える巻鉄心及び巻鉄心ボビンを模式的に示す断面図である。
図14】実施の形態3に係る変成器が備える巻鉄心及び巻鉄心ボビンを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を、その実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0030】
実施の形態 1.
図1は、実施の形態1に係る変成器を示す斜視図である。
図中1は変成器であり、本実施の形態の変成器1は変圧器である。
変成器1は、2つのコイル2,2、コイルボビン3、2つの巻鉄心4,4、及び2つの巻鉄心ボビン5,5を備える。
各コイル2は、導線を巻回することによって形成されている。コイル2を構成する導線は、コイルボビン3に巻回されている。
各巻鉄心4は円筒状をなし、帯状の鋼板41を円筒状に複数回巻回することによって形成されている。巻鉄心4を構成している鋼板41は、巻鉄心ボビン5に巻回されている。
【0031】
図2は、コイルボビン3及び巻鉄心ボビン5を示す斜視図である。
図1及び図2に示すように、コイルボビン3は外枠31及び内枠32を備える。
外枠31及び内枠32夫々は一方向に長い矩形枠状をなす。内枠32は、外枠31の開口に同心に嵌め込まれている。コイル2,2の内、一方を構成する導線は、外枠31に巻回されている。コイル2,2の内、他方を構成する導線は、内枠32に巻回されている。
【0032】
外枠31の外周面には、全長に亘って溝311が設けられている。コイル2を構成する導線は、外枠31の溝311を埋めるようにして、外枠31に周方向に巻回されている。溝311の周壁には切り欠き312が設けられている。コイル2を構成する導線の2つの端部21,21は、外枠31の切り欠き312を通して、コイルボビン3の外部に引き出されている。
【0033】
内枠32には、外枠31の溝311及び切り欠き312と同様の溝及び切り欠き322が設けられている。コイル2を構成する導線は、内枠32の溝を埋めるようにして、内枠32に周方向に巻回されている。コイル2を構成する導線の2つの端部21,21は、内枠32の切り欠き322を通して、コイルボビン3の外部に引き出されている。
【0034】
内枠32のコイル2は、例えば一次コイルとして用いられる。この場合、外枠31のコイル2は二次コイルとして用いられる。一次コイルを構成している導線の端部21,21を通して一次コイルに交流電圧が入力された場合、相互誘導によって二次コイルに交流電圧が生じる。二次コイルに生じた交流電圧は、二次コイルを構成している導線の端部21,21を通して二次コイルから出力される。二次コイルから出力される交流電圧は、一次コイルに入力された交流電圧が、一次コイルの巻き数と二次コイルの巻き数との比に比例して変圧された交流電圧である。
【0035】
各巻鉄心ボビン5は円筒状をなす。巻鉄心ボビン5の軸長方向はコイルボビン3の長辺方向に沿う。巻鉄心ボビン5,5の一方は、コイルボビン3の2つの長辺部3a,3aの一方を囲んでいる。他方の巻鉄心ボビン5は、コイルボビン3の他方の長辺部3aを囲んでいる。
以下では、コイルボビン3の長辺方向を上下方向といい、コイルボビン3の短辺方向を左右方向という。前後方向について、図1及び図2中の手前側を前側という。
【0036】
各巻鉄心ボビン5は半円筒51,52を備える。半円筒51,52は、夫々の軸長方向が平行であり、且つ夫々の内面がコイルボビン3の長辺部3aを介して向かい合うようにして、互いに連結されている。
【0037】
半円筒51の周方向の両端部夫々には、ボス511及び連結突起512が設けられている。ボス511の内部は後向きに凹んでおり、連結突起512は前向きに突出している。半円筒52の周方向の両端部には、半円筒51のボス511,511及び連結突起512,512と同様の2つのボス及び2つの連結突起が設けられている。図2には半円筒52の一の連結突起(図中522)が示されている。
半円筒51,52は、半円筒51のボス511,511に半円筒52の連結突起522,522が嵌め込まれ、半円筒51の連結突起512,512が半円筒52の2つのボスに嵌め込まれていることによって、互いに連結されている。
【0038】
半円筒51は、切り欠き513,513及び穴部514を備える。
切り欠き513,513は、半円筒51の軸長方向の両端部に設けられている。各切り欠き513は、半円筒51の周方向の中心部に配されており、矩形状をなす。
穴部514は、半円筒51の内周面に設けられており、矩形状をなす。穴部514は、切り欠き513,513を結ぶ直線上に配されている。
半円筒52には、半円筒51の切り欠き513,513及び穴部514と同様の切り欠き523,523及び穴部が設けられている。
【0039】
コイルボビン3の各長辺部3aには、2つの位置決め突起33,33及び位置決め突起34が上下方向に並設されている。図2に示す位置決め突起33,33,34夫々は、外枠31の前面から前向きに突出している。位置決め突起34は、位置決め突起33,33の間に配されている。
位置決め突起33,33は、半円筒52の切り欠き523,523に嵌め合わされている。位置決め突起34は、半円筒52の穴部に嵌め合わされている。
【0040】
図示はしないが、コイルボビン3の各長辺部3aには、更に2つの位置決め突起33,33及び位置決め突起34が設けられている。これらは、例えば外枠31の後面から後向きに突出している。後側の位置決め突起33,33は、半円筒51の切り欠き513,513に嵌め合わされている。後側の位置決め突起34は、半円筒51の穴部514に嵌め合わされている。
【0041】
コイルボビン3の位置決め突起33,33,34が半円筒51の切り欠き513,513及び穴部514の内面に当接するので、半円筒51(延いては巻鉄心ボビン5)の軸長方向及び周方向の位置ずれが防止されている。同様に、コイルボビン3の位置決め突起33,33,34が半円筒52の切り欠き523,523及び穴部の内面に当接するので、半円筒52(延いては巻鉄心ボビン5)の軸長方向及び周方向の位置ずれが防止されている。つまり、位置決め突起33,33,…及び位置決め突起34,34は、コイルボビン3に設けられた位置決め部として機能する。切り欠き513,513,523,523、穴部514、及び半円筒52の穴部は、巻鉄心ボビン5に設けられた位置決め部として機能する。
【0042】
半円筒52の外周面には凸部53が設けられている。凸部53は、半円筒52の軸長方向及び周方向夫々の中心部に配されている。凸部53は四角柱状をなす。凸部53の先端面は半円筒52の外周面に平行である。
凸部53は、半円筒52に一体成形されたものでもよく、別体の部材を半円筒52に固定したものでもよい。
【0043】
図3は、巻鉄心4及び巻鉄心ボビン5を模式的に示す断面図である。
図1及び図3に示す巻鉄心4は、巻鉄心ボビン5と同心に配されており、巻鉄心ボビン5の外周面に締め付けられている。巻鉄心4の内径は、巻鉄心ボビン5の外径に等しい。
巻鉄心4は、コイル2,2の磁気的な結合を強化している。
【0044】
鋼板41は、巻鉄心4の内周から外周に向けて図3中反時計回りに巻鉄心ボビン5に巻回されている。鋼板41は、巻鉄心4の径方向に積層されている。図を簡単にするために、図3には、層状の鋼板41が4層だけ積層された巻鉄心4が示されているが、鋼板41は多数層積層されている。
鋼板41の厚みは巻鉄心ボビン5の凸部53の突出量よりも薄い。例えば鋼板41の厚みは凸部53の突出量の約半分である。
【0045】
図4は、鋼板41を示す正面図である。
鋼板41の長手方向の一端部には、穴部42が設けられている。穴部42は鋼板41の幅方向の中心部に配されている。図3及び図4に示すように、穴部42は矩形の貫通孔である。
穴部42の、鋼板41の長手方向の長さは、凸部53の、巻鉄心ボビン5の周方向の長さより長い。穴部42の、鋼板41の幅方向の長さは、凸部53の、巻鉄心ボビン5の軸長方向の長さより長い。
【0046】
穴部42には巻鉄心ボビン5の凸部53が挿入されている。この結果、凸部53と穴部42とが互いに係合している。故に、巻鉄心4は巻鉄心ボビン5に対して周方向に固定されている。
以下では、鋼板41の長手方向の両端部の内、穴部42が設けられている端部を端部411という。また、鋼板41の長手方向の両端部の内、穴部42が設けられていない端部を端部412という。
端部411は、巻鉄心4の最内周に位置している。換言すれば、端部411は、巻鉄心ボビン5の外周面に積層された1層目の鋼板41である。つまり、巻鉄心4は内周面に穴部42が設けられている。
端部412は、巻鉄心4の最外周に位置している。
【0047】
次に、変成器1の製造手順について説明する。
まず、外枠31及び内枠32夫々にコイル2が巻回される。次いで、外枠31に内枠32が嵌め込まれることによって、コイルボビン3が形成される。
【0048】
次に、コイルボビン3に巻鉄心ボビン5が取り付けられる。
コイルボビン3に巻鉄心ボビン5を取り付ける場合、半円筒51,52が、夫々の内面がコイルボビン3の長辺部3aに向き、夫々の軸長方向がコイルボビン3の長辺部3aに沿うようにして対向配置される。
【0049】
次いで、半円筒51の切り欠き513,513及び穴部514に、コイルボビン3の後側の位置決め突起33,33及び位置決め突起34が嵌め合わされる。また、半円筒52の切り欠き523,523及び穴部に、コイルボビン3の前側の位置決め突起33,33及び位置決め突起34が嵌め合わされる。更に、半円筒51のボス511,511に、半円筒52の連結突起522,522が嵌め込まれる。半円筒51の連結突起512,512は、半円筒52の2つのボスに嵌め込まれる。
【0050】
以上の結果、半円筒51,52が連結されて、巻鉄心ボビン5が形成される。また、巻鉄心ボビン5がコイルボビン3に対して位置決めされ、コイルボビン3に取り付けられる。コイルボビン3に対して位置決めされた巻鉄心ボビン5は、外力を加えられたとしても位置ずれする虞はない。
【0051】
図5図8は、巻鉄心4の形成手順を説明するための平面図である。
図5は、鋼板コイル401(後述)から鋼板41を引き出す工程を示している。
鋼板コイル401は、鋼板41が円柱状の芯材(不図示)に周方向に巻回されることによって、形成される。鋼板コイル401の形成後、芯材は鋼板コイル401から引き抜かれる。
鋼板コイル401は円筒状をなす。鋼板コイル401の内径は、巻鉄心ボビン5の外径に等しい。鋼板41は、鋼板コイル401の径方向に積層されている。鋼板コイル401の最内周には鋼板41の端部411が位置している。鋼板コイル401の最外周には、端部412が位置している。
鋼板コイル401は焼鈍される。
【0052】
巻鉄心4を形成するための装置は、ローラ601,602を備える。ローラ601,602夫々の軸長方向は上下方向である。ローラ601,602は、ローラ601,602夫々の周面が互いに接離可能であるように、図示しない基台の上面に立設されている。
鋼板コイル401は、軸長方向が上下方向に沿うようにして、ローラ601,602に挟持される。このとき、ローラ601は鋼板コイル401の内周面に接触し、ローラ602は鋼板コイル401の外周面に接触する。
鋼板41の端部412は、鋼板コイル401から引き出される。
【0053】
コイルボビン3は、長辺方向が上下方向に沿うようにして、ローラ601,602が立設されている基台に載置される。図5(並びに後述する図6図8及び図10図12)において、コイル2の図示は省略されている。
【0054】
図6は、鋼板コイル401から大円402(後述)へ鋼板41を送り出す工程を示している。
ローラ601,602夫々が回転することによって、鋼板41は鋼板コイル401から送り出される。図6中、鋼板41は、巻鉄心4の内周から外周に向けて反時計回りに巻回されており、ローラ601は半時計回りに、ローラ602は時計回りに夫々回転する。
【0055】
鋼板コイル401から送り出された鋼板41は、コイルボビン3の開口(コイルボビン3に取り付けられている巻鉄心ボビン5,5の間)に通される。
次に、鋼板41は、図6中反時計回りに湾曲し、鋼板41の端部412が鋼板41の外周面に仮固定されることによって、1層目の大円402を形成する。
大円402は、鋼板コイル401よりも大径の円筒である。大円402の軸長方向は巻鉄心ボビン5の軸長方向に沿う。大円402は、一方の巻鉄心ボビン5を囲む。
【0056】
1層目の大円402が形成された後で、ローラ601,602は、鋼板コイル401を更に回転させる。鋼板コイル401の回転に伴い、鋼板コイル401を構成している鋼板41は大円402に送り出され、大円402の内周面に順次積層される。
鋼板41が送り出しに伴い、鋼板コイル401の厚みは薄くなる。ローラ601,602は互いに接近し、鋼板コイル401を挟持し続ける。
【0057】
図7は、大円402が完成した状態を示している。
鋼板コイル401を形成していた鋼板41が全て大円402に送り出された場合、鋼板41の端部411は大円402の最内周に位置し、鋼板41の端部412は大円402の最外周に位置する。鋼板41は、大円402の径方向に積層されている。
鋼板41は弾性を有するので、大円402には、大円402を縮径させる方向の力が働いている。
【0058】
ところで、図6に示す大円402が図7に示す大円402になるまでの間、鋼板41の端部411は何度もローラ601,602の間を通過する。このとき、ローラ601,602から鋼板41の厚み方向の外力が端部411に加えられる。とはいえ、端部411に設けられている穴部42が、端部411に加えられた外力によって変形する虞はない。
【0059】
図8は、巻鉄心ボビン5に巻鉄心4を形成する工程を示している。
大円402の完成後、ローラ601が大円402から抜き出され、鋼板41の外周面に仮固定されていた端部412がそこから取り外される。すると、鋼板41の弾性によって、大円402が縮径して巻鉄心4が形成される。即ち、巻鉄心ボビン5の外周面に沿って鋼板41が巻回される。
【0060】
図9は、巻鉄心ボビン5に巻回された鋼板41を模式的に示す断面図である。
図8に示すように形成された巻鉄心4において、図9に示すように、層状の鋼板41間に隙間が生じることがある。巻鉄心4が巻鉄心ボビン5に締め付けられれば、鋼板41間の隙間は解消される。
【0061】
図10は、変成器1を製造するための巻締装置を示す平面図である。
図中6は巻締装置である。巻締装置6は、例えば水平な床面に載置されている。
【0062】
巻締装置6は、載置板611と2つの固定具612,612とを備える。
載置板611の一面は床面に平行であり、上向きである。コイルボビン3は、長辺方向が上下方向に沿うようにして、載置板611に載置される。
固定具612,612は、載置板611の上面に配されている。固定具612,612がコイルボビン3の下辺部を前後両側(図10中左右両側)から挟み持つことによって、コイルボビン3は載置板611に固定される。
【0063】
巻締装置6は2つの基台621,621を備える。
基台621,621は、前後方向に互いに離隔して、夫々床面に設置されている。載置板611は基台621,621に架け渡されている。基台621,621は、載置板611を中心に前後対称である。以下では前側(図10中右側)の基台621の構成について説明する。
【0064】
基台621は、天板及び4本の脚を有する机である。基台621の天板は、床面に平行な上面を有する。基台621の天板には開口622が設けられている。開口622は前後方向に長い矩形状をなす。基台621の上面には、ガイドレール623,623が敷設されている。ガイドレール623,623の一方は開口622の左辺に沿い、ガイドレール623,623の他方は開口622の右辺に沿う。ガイドレール623,623は互いに平行であり、夫々前後方向に延びている。
【0065】
ガイドレール623,623には、ガイドレール623,623に沿って移動可能に、ローラ台624が設置されている。ローラ台624は開口622を覆っている。ローラ台624は床面に平行な上面を有する。
ローラ台624にはボールネジ625のナットが連結されている。ボールネジ625のネジ軸の軸長方向は前後方向に沿う。ボールネジ625には接離用モータ626が連結されている。接離用モータ626が正逆に回転する都度、ボールネジ625のナットがネジ軸に沿って進退する。ボールネジ625のナットの進退に伴い、ローラ台624が前後に移動する。
【0066】
ローラ台624の上面には、駆動ローラ631、従動ローラ(ローラ)632,632、及び調整ローラ633,633が夫々回転可能に立設されている。
従動ローラ632,632は、ローラ台624の後辺部にて左右方向に離隔している。駆動ローラ631は、従動ローラ632,632の前側にて、従動ローラ632,632を結ぶ線を底辺とする二等辺三角形の頂点に配されている。
駆動ローラ631及び従動ローラ632,632には、ベルト634が無端状に巻回されている。
調整ローラ633,633は、従動ローラ632,632と駆動ローラ631との間に張り渡されたベルト634が凹状をなすようにして、ベルト634の外面に接触している。
【0067】
駆動ローラ631には、巻締用モータ635が連結されている。巻締用モータ635はローラ台624の下面に設置されており、開口622を通って基台621の天板の下側に突出している。
巻締用モータ635が一方向に回転することによって、駆動ローラ631が駆動され、ベルト634が長手方向に走行し、従動ローラ632,632が従動する。
調整ローラ633,633は、ベルト634の張力を調整するためのものである。従動ローラ632,632と駆動ローラ631との間に張り渡されたベルト634が直線状に近づくほど、ベルト634の張力が低下する。
【0068】
ベルト634の一部は従動ローラ632,632の間に張り渡されている。以下では、ベルト634の従動ローラ632,632の間に張り渡されている部分をベルト634の張り渡し部という。
【0069】
巻締装置6は制御部64を備える。
制御部64はCPUを有している。制御部64は、接離用モータ626,626及び巻締用モータ635,635夫々の動作を制御する。
【0070】
図11及び図12は、巻鉄心4の締め付け手順を説明するための平面図である。
図11は、ベルト634,634が巻鉄心4から離隔している状態を示している。
ベルト634,634夫々の張り渡し部は、前後方向に互いに対向している。巻鉄心4は、ベルト634,634夫々の張り渡し部の中央部の間に配される。
【0071】
図10に示す制御部64が巻締用モータ635,635夫々を一方向に回転させた場合、ベルト634,634夫々が長手方向に走行する。図11及び図12中、鋼板41は、巻鉄心4の内周から外周に向けて反時計回りに巻回されており、各ベルト634は時計回りに走行する。
図10に示す制御部64が接離用モータ626,626夫々を一方向に回転させた場合、ローラ台624,624が巻鉄心4に接近し、ベルト634,634夫々の張り渡し部の中央部が巻鉄心4に接触する。
【0072】
図12は、ベルト634,634が巻鉄心4に接触している状態を示している。
ベルト634,634は同時的に巻鉄心4の外周面に接触する。ベルト634,634は、巻鉄心4の外周面の周方向に互いに180°離隔した2ヶ所に接触する。
走行しているベルト634,634が巻鉄心4の外周面に接触することによって、巻鉄心4の外周面に周方向の外力が与えられる。
ベルト634の幅が鋼板41の幅よりも短い場合、ベルト634は、巻鉄心4の軸長方向の中央部に接触する。なお、ベルト634の幅は鋼板41の幅以上の長さでもよい。
【0073】
図10に示す制御部64が接離用モータ626,626夫々を他方向に回転させた場合、ローラ台624,624が巻鉄心4から離隔するので、ベルト634,634夫々が巻鉄心4から離隔する(図11参照)。
【0074】
制御部64は、巻締用モータ635,635夫々を一方向に回転させ続け、接離用モータ626,626夫々の正逆の回転及び回転停止を適宜のタイミングで切り替える。この結果、ベルト634,634の巻鉄心4への接触と巻鉄心4からの離隔とが所定のタイミングで繰り返され、ベルト634,634から巻鉄心4に間欠的に周方向の外力が与えられる。
【0075】
巻鉄心4に周方向の外力が与えられることによって、鋼板41が周方向に回転する(図9参照)。
鋼板41の回転は、巻鉄心4の外周面側(端部412側)から巻鉄心4の内周面側(端部411側)へ伝播する。換言すれば、巻鉄心4は、最初は外周近傍の鋼板41しか回転しないが、やがて内周近傍の鋼板41も回転し始める。
巻鉄心4は徐々に巻鉄心ボビン5に締め付けられていく。巻鉄心4の締め付けの進行に伴い、層状の鋼板41間の隙間が小さくなる。
【0076】
巻鉄心4の内周面が周方向に回転することによって、巻鉄心ボビン5の凸部53が巻鉄心4の穴部42に挿入される。即ち、凸部53と穴部42とが自然に係合する(図3参照)。
【0077】
凸部53と穴部42とが係合した場合、巻鉄心4に周方向の外力が与えられることによって、鋼板41の長手方向の外力が穴部42の開口の周縁部に加えられる。しかしながら、穴部42は変形し難い。故に、穴部42が変形することによって凸部53と穴部42との係合が解除されることを防止することができる。
【0078】
凸部53と穴部42とが係合した状態で、巻鉄心4に周方向の外力が更に与えられることによって、巻鉄心4の巻鉄心ボビン5への締め付けが完了する。
巻鉄心4の巻鉄心ボビン5への締め付けが完了した場合、制御部64は、ベルト634,634を巻鉄心4から離隔させ、ベルト634,634夫々の走行を停止させる。
一方の巻鉄心ボビン5に巻鉄心4を締め付けた後で、他方の巻鉄心ボビン5に巻鉄心4が形成され、締め付けられる。
【0079】
巻鉄心4の巻鉄心ボビン5への締め付けが完了したか否かを判定するために、例えば、巻締用モータ635,635夫々のトルクが検出される。トルクの検出結果は、制御部64に与えられる。検出結果が所定値を上回った場合、制御部64は、巻鉄心4の締め付けが完了したと判定する。一方、検出されたトルクが所定値以下である場合、制御部64は、巻鉄心4の締め付け処理を続行する。
【0080】
以上のような変成器1の製造方法によれば、巻鉄心4の穴部42に巻鉄心ボビン5の凸部53が係合するので、巻鉄心4が周方向に空回りすることはない。故に、巻鉄心4を巻鉄心ボビン5に適切に締め付けることができる。巻鉄心4が巻鉄心ボビン5に適切に締め付けられることにより、鋼板41間の隙間を解消することができる。この結果、変成器1の性能を向上させることができる。
【0081】
巻鉄心4は巻鉄心ボビン5を介してコイルボビン3に取り付けられる。即ち、巻鉄心4がコイルボビン3に直接的に取り付けられることはない。故に、コイルボビン3に巻回されている導線に巻鉄心4が接触することによって導線が損傷することを防止することができる。
穴部42は貫通孔なので、鋼板41の両面の何れ側が巻鉄心4の内周面となる場合であっても、凸部53が穴部42に係合することができる。
【0082】
図12に示すように、ベルト634,634が巻鉄心4に接触したとき、巻鉄心4はベルト634,634に挟まれる。故に、巻鉄心4が偏心することが抑制される。
一方、巻鉄心4は、ベルト634,634に挟まれることによって、扁平に変形する。しかしながら、ベルト634,634が巻鉄心4から離隔したとき、鋼板41の弾性によって、巻鉄心4は元の形状に復元する。即ち、巻鉄心4の変形を防止することができる。
【0083】
鋼板41の端部412は、巻鉄心4の外周面から外側へ離隔することがある。ところで、ベルト634の巻鉄心4に接触する部分は、ベルト634の張り渡し部の中央部である。故に、ベルト634と巻鉄心4の外周面とに囲まれている空間は広い。従って、鋼板41の端部412が、ベルト634と巻鉄心4の外周面とが接触する部分に円滑に入り込むことができる。
【0084】
なお、変成器1は電力用でも計器用でもよい。
変成器1は電圧器に限定されない。
巻鉄心ボビン5は円筒状に限定されない。例えば巻鉄心ボビン5は楕円筒状でもよい。或いは巻鉄心ボビン5は半筒状でもよい。
【0085】
巻鉄心4には、複数の穴部42,42,…が設けられてもよい。この場合、巻鉄心ボビン5に複数の凸部53,53,…が設けられる。凸部53,53,…が穴部42,42,…に係合している場合、巻鉄心ボビン5に周方向の外力が与えられたときに、鋼板41が凸部53と穴部42との係合個所を中心に回転することを抑制することができる。
【0086】
一方、本実施の形態においては、穴部42は鋼板41の幅方向の中心部に設けられている。故に、巻鉄心ボビン5に周方向の外力が与えられたときに、鋼板41が凸部53と穴部42との係合個所を中心に回転することを抑制することができる。
しかも、穴部42が1つだけなので、鋼板41の強度の低下を防止することができる。
【0087】
次に、実施の形態2,3を説明する。実施の形態2,3の変成器1の構成は、実施の形態1の変成器1と略同様の構成である。実施の形態2,3の変成器1の製造方法は、実施の形態1の変成器1の製造方法と略同様である。実施の形態2,3の変成器1及び変成器1の製造方法は、実施の形態1の変成器1及び変成器1の製造方法の作用効果と略同様の作用効果を奏する。以下では、実施の形態1との差異について説明し、その他、実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0088】
実施の形態 2.
図13は、実施の形態2に係る変成器1が備える巻鉄心4及び巻鉄心ボビン5を模式的に示す断面図である。
巻鉄心ボビン5の凸部53の突出量は、鋼板41の厚みに等しい。故に、穴部42に挿入された凸部53は、1層目の鋼板41から突出しない。従って、1層目の鋼板41と1層目の鋼板41に積層される2層目の鋼板41との間に隙間が形成されることを防止することができる。
【0089】
実施の形態1の場合、凸部53の突出量は鋼板41の厚みより大きい(図3参照)。故に、穴部42に挿入された凸部53は1層目の鋼板41から突出する。従って、凸部53が穴部42から抜け出して凸部53と穴部42との係合が解除されることを防止することができる。
ただし、1層目の鋼板41と2層目の鋼板41との間に隙間が形成される。しかしながら、実施の形態1においては、凸部53の突出によって形成される隙間は無視できるほど小さいので、変成器1の性能に悪影響を及ぼす虞はない。
【0090】
実施の形態 3.
図14は、実施の形態3に係る変成器1が備える巻鉄心4及び巻鉄心ボビン5を模式的に示す断面図である。
図中531,531は、巻鉄心ボビン5の凸部53の周方向の両側面である。側面531,531は、凸部53の先端から基端に向けて、互いに接近する方向に傾斜している。故に、各側面531と巻鉄心ボビン5の外周面との間に空間が形成されている。
【0091】
巻鉄心4の内周面が周方向に回転することによって、巻鉄心ボビン5の凸部53が巻鉄心4の穴部42に挿入される。このとき、一方の側面531と巻鉄心ボビン5の外周面との間に形成された空間に、穴部42の開口の周縁部が挿入される。この結果、側面531と巻鉄心ボビン5の外周面との間に穴部42の開口の周縁部が係合する。
穴部42の開口の周縁部が側面531に巻鉄心ボビン5の内周側から当接するので、凸部53が穴部42から抜け出す虞はない。即ち、凸部53と穴部42とを強固に係合させることができる。
【0092】
凸部53の側面531,531夫々が傾斜しているので、巻鉄心4の巻き方向によらず、側面531,531の一方と巻鉄心ボビン5の外周面との間に穴部42の開口の周縁部が係合する。
なお、図に示す側面531は平面であるが、これに限定されるものではない。
【0093】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0094】
1 変成器
2 コイル
3 コイルボビン
33 位置決め突起(位置決め部)
34 位置決め突起(位置決め部)
4 巻鉄心
41 鋼板
42 穴部
5 巻鉄心ボビン
513 切り欠き(位置決め部)
514 穴部(位置決め部)
523 切り欠き(位置決め部)
53 凸部
531 側面
632 従動ローラ(ローラ)
634 ベルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14