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特許7043293センサ、センサ制御方法、および制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】センサ、センサ制御方法、および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/165 20200101AFI20220322BHJP
【FI】
G01L5/165
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018039430
(22)【出願日】2018-03-06
(65)【公開番号】P2019152599
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】和田 卓
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-171334(JP,A)
【文献】特開平8-5482(JP,A)
【文献】特開2014-115282(JP,A)
【文献】特開2001-91382(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0176266(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00- 1/26
G01L 5/00- 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の独立電極と、
前記複数の独立電極に対して初期位置から圧縮方向と前記圧縮方向に直交する剪断方向とに変位可能に支持された共通電極と、
前記共通電極と前記複数の独立電極との間に位置する誘電体と、
前記共通電極と前記複数の独立電極の各々との間における静電容量を検出する検出部と、
検出された前記静電容量の和に基づいて、前記圧縮方向における前記共通電極と前記複数の独立電極との相対的な圧縮変位量を算出する圧縮変位量算出部と、
検出された前記静電容量に基づいて、前記剪断方向における前記共通電極と前記複数の独立電極との相対的な剪断変位量を算出する剪断変位量算出部と、
前記共通電極が前記初期位置にあるときの前記静電容量に基づいて、前記誘電体の誘電率を算出する誘電率算出部と、
前記誘電率と前記誘電体の弾性率との関係を表す予め規定された関係情報に基づいて、算出された前記誘電率から前記弾性率を算出する弾性率算出部と、
前記圧縮変位量と前記誘電体の材料特性とに基づいて、前記共通電極から前記誘電体に対して前記圧縮方向に印加された圧縮力を算出する圧縮力算出部と、
を備え、
前記複数の独立電極の各々が、前記圧縮方向に直交して広がる独立対向面をもち、
すべての前記独立対向面が、同一の平面に沿って広がり、
前記共通電極が、前記圧縮方向に直交して広がる共通対向面をもち、
前記共通電極が前記初期位置にあるとき、各前記独立対向面が、前記圧縮方向において前記共通対向面に対向する領域と対向しない領域とを含み、
前記共通電極が移動可能な範囲のうちの少なくとも一部において、前記共通対向面のうち複数の前記独立対向面に対向する面積の合計が、一定であり、
前記圧縮力の算出に使用される前記材料特性が、前記弾性率を含み、
前記圧縮力算出部が、算出された前記弾性率を使用して、前記圧縮力を算出する、
センサ。
【請求項2】
第1仮想中心線と前記第1仮想中心線に交わる第2仮想中心線とにより分割された第1区画と第2区画と第3区画と第4区画との各々に1つの前記独立電極が位置し、
前記第1仮想中心線が、前記圧縮方向に直交する第1剪断方向に平行であり、
前記第2仮想中心線が、前記圧縮方向と前記第1剪断方向とに直交する第2剪断方向に平行であり、
前記第1区画に位置する前記独立電極である第1独立電極と、前記第2区画に位置する前記独立電極である第2独立電極とが前記第1剪断方向に並び、
前記第3区画に位置する前記独立電極である第3独立電極と、前記第4区画に位置する前記独立電極である第4独立電極とが前記第1剪断方向に並び、
前記第1独立電極と前記第3独立電極とが、前記第2剪断方向に並び、
前記第2独立電極と前記第4独立電極とが、前記第2剪断方向に並び、
前記検出部が、前記第1独立電極と前記共通電極との間の前記静電容量である第1静電容量を検出し、
前記検出部が、前記第2独立電極と前記共通電極との間の前記静電容量である第2静電容量を検出し、
前記検出部が、前記第3独立電極と前記共通電極との間の前記静電容量である第3静電容量を検出し、
前記検出部が、前記第4独立電極と前記共通電極との間の前記静電容量である第4静電容量を検出し、
前記圧縮変位量算出部が、前記第1静電容量と前記第2静電容量と前記第3静電容量と前記第4静電容量との和に基づいて、前記圧縮変位量を算出し、
前記剪断変位量算出部が、前記第1静電容量と前記第3静電容量との和と、前記第2静電容量と前記第4静電容量との和とに基づいて、前記第1剪断方向における前記剪断変位量である第1剪断変位量を算出し、
前記剪断変位量算出部が、前記第1静電容量と前記第2静電容量との和と、前記第3静電容量と前記第4静電容量との和とに基づいて、前記第2剪断方向における前記剪断変位量である第2剪断変位量を算出する、
請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記第1独立電極の前記独立対向面と前記第3独立電極の前記独立対向面とが、前記第1仮想中心線に対して線対称であり、
前記第2独立電極の前記独立対向面と前記第4独立電極の前記独立対向面とが、前記第1仮想中心線に対して線対称であり、
前記第1独立電極の前記独立対向面と前記第2独立電極の前記独立対向面とが、前記第2仮想中心線に対して線対称であり、
前記第3独立電極の前記独立対向面と前記第4独立電極の前記独立対向面とが、前記第2仮想中心線に対して線対称である、
請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
各前記独立対向面が、前記第1剪断方向に平行な2辺と前記第2剪断方向に平行な2辺とをもつ長方形であり、
前記共通対向面が、前記第1剪断方向に平行な2辺と前記第2剪断方向に平行な2辺とをもつ長方形である、
請求項3に記載のセンサ。
【請求項5】
各前記独立対向面が、共通の仮想中心点をもつ扇形状であり、
前記共通対向面が、円形であり、
前記共通電極が前記初期位置にあるとき、前記圧縮方向において、前記共通対向面の中心点が、前記仮想中心点に重なる、
請求項3に記載のセンサ。
【請求項6】
前記共通対向面が、前記第1剪断方向に平行で前記第1区画から前記第2区画内に延びた第1縁部と、前記第2剪断方向に平行で前記第1区画から前記第3区画内に延びた第2縁部と、湾曲縁部とをもち、
前記共通電極が前記初期位置にあるとき、前記湾曲縁部が、前記第1区画内に位置し、
前記湾曲縁部が、前記第1縁部の一端と前記第2縁部の一端とをつなぎ、
前記湾曲縁部が、前記第1剪断方向と前記第2剪断方向との間に規定される90度の中心角をもつ扇形状であり、
前記湾曲縁部が、前記圧縮方向に直交する平面内において外側に向けて凸状であり、
前記共通電極が前記初期位置にあるとき、前記共通対向面のうち前記第1区画内の領域が、前記第1縁部と前記湾曲縁部とから前記第2剪断方向に前記第3区画まで連続して広がる形状をもち、
前記共通電極が前記初期位置にあるとき、前記共通対向面のうち前記第1区画内の領域が、前記第2縁部と前記湾曲縁部とから前記第1剪断方向に前記第2区画まで連続して広がる形状をもち、
前記第1独立電極の前記独立対向面が、前記第1縁部に平行な第1外縁部と、前記第2縁部に平行な第2外縁部と、湾曲外縁部とをもち、
前記湾曲外縁部が、前記第1外縁部の一端と前記第2外縁部の一端とをつなぎ、
前記湾曲外縁部が、前記第1剪断方向と前記第2剪断方向との間に規定される90度の中心角をもつ扇形状であり、
前記湾曲外縁部が、前記圧縮方向に直交する平面内において外側に向けて凸状であり、
前記第1独立電極の前記独立対向面が、前記第1外縁部と前記湾曲外縁部とから前記第2剪断方向において前記第3区画に向けて連続して広がる形状をもち、
前記第1独立電極の前記独立対向面が、前記第2外縁部と前記湾曲外縁部とから前記第1剪断方向において前記第2区画に向けて連続して広がる形状をもち、
前記共通電極が前記初期位置にあるとき、前記圧縮方向において、前記湾曲縁部の扇形状の仮想中心点が前記湾曲外縁部の扇形状の仮想中心点に重なり、
前記共通電極が前記初期位置にあるとき、前記第2剪断方向における前記第1外縁部と前記第1縁部との離間距離が、前記第1剪断方向における前記第2外縁部と前記第2縁部との離間距離と同じであり、
前記共通電極が前記初期位置にあるとき、前記湾曲外縁部の半径と前記湾曲縁部の半径との差が、前記第2剪断方向における前記第1外縁部と前記第1縁部との離間距離と同じである、
請求項3に記載のセンサ。
【請求項7】
前記誘電体が、前記複数の独立電極と前記共通電極との間を前記圧縮方向に満たす弾性体であり、
前記共通電極が前記誘電体により、前記複数の独立電極に対して前記初期位置から前記圧縮方向と前記剪断方向とに相対的に変位可能に支持された、
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項8】
前記誘電体が、前記複数の独立電極と前記共通電極との間を前記圧縮方向に満たす弾性体であり、
前記共通電極が前記誘電体により、前記複数の独立電極に対して前記初期位置から前記圧縮方向と前記剪断方向とに相対的に変位可能に支持され、
記圧縮変位量と前記第1剪断変位量と前記第2剪断変位量と前記誘電体の前記材料特性とに基づいて、前記共通電極から前記誘電体に対して前記剪断方向に印加された剪断力を算出する剪断力算出部を備える、
請求項2乃至請求項6のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項9】
前記複数の独立電極に対する前記共通電極の移動範囲を制限するストッパを備え、
前記誘電体が、前記移動範囲内において弾性変形可能である、
請求項7または請求項8に記載のセンサ。
【請求項10】
第1基板と、
第2基板と、
前記複数の独立電極の各々に接続された複数の第1配線と、
前記共通電極に接続された第2配線と、
を備え、
前記複数の第1配線の各々の少なくとも一部と、前記複数の独立電極とが、前記第1基板に固定され、
前記第2配線の少なくとも一部と、前記共通電極とが、前記第2基板に固定された、
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項11】
前記複数の独立電極に対する前記共通電極の移動範囲を制限するストッパと、
前記ストッパが固定された第1基板と、
前記複数の独立電極の各々に接続された複数の第1配線と、
前記第1基板と前記共通電極との間に延びた第2配線と、
を備え、
前記誘電体が、前記移動範囲内において弾性変形可能であり、
前記複数の第1配線の各々の少なくとも一部が、前記第1基板に固定され、
前記第2配線の少なくとも一部が、前記ストッパに固定された、
請求項7または請求項8に記載のセンサ。
【請求項12】
複数の独立電極と、
前記複数の独立電極に対して初期位置から圧縮方向と前記圧縮方向に直交する剪断方向とに変位可能に支持された共通電極と、
前記共通電極と前記複数の独立電極との間に位置する誘電体と、
前記共通電極と前記複数の独立電極の各々との間における静電容量を検出する検出部と、
検出された前記静電容量の和に基づいて、前記圧縮方向における前記共通電極と前記複数の独立電極との相対的な圧縮変位量を算出する圧縮変位量算出部と、
検出された前記静電容量に基づいて、前記剪断方向における前記共通電極と前記複数の独立電極との相対的な剪断変位量を算出する剪断変位量算出部と、
を備え、
前記複数の独立電極の各々が、前記圧縮方向に直交して広がる独立対向面をもち、
すべての前記独立対向面が、同一の平面に沿って広がり、
前記共通電極が、前記圧縮方向に直交して広がる共通対向面をもち、
前記共通電極が前記初期位置にあるとき、各前記独立対向面が、前記圧縮方向において前記共通対向面に対向する領域と対向しない領域とを含み、
前記共通電極が移動可能な範囲のうちの少なくとも一部において、前記共通対向面のうち複数の前記独立対向面に対向する面積の合計が、一定であり、
前記複数の独立電極に対する前記共通電極の移動範囲を制限するストッパと、
前記ストッパが固定された第1基板と、
前記複数の独立電極の各々に接続された複数の第1配線と、
前記第1基板と前記共通電極との間に延びた第2配線と、
を更に備え、
前記誘電体が、前記移動範囲内において弾性変形可能であり、
前記複数の第1配線の各々の少なくとも一部が、前記第1基板に固定され、
前記第2配線の少なくとも一部が、前記ストッパに固定された、
センサ。
【請求項13】
補助電極を備え、
前記補助電極が、前記圧縮方向に直交して広がる補助対向面をもち、
前記補助対向面の面積が、前記共通対向面の面積より小さく、
前記補助対向面の全体が、前記圧縮方向において前記共通対向面に対向する、
請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項14】
センサにより実行されるセンサ制御方法であって、
前記センサが、
前記複数の独立電極と、
前記複数の独立電極に対して初期位置から圧縮方向と前記圧縮方向に直交する剪断方向とに変位可能に支持された共通電極と、
前記共通電極と前記複数の独立電極との間に位置する誘電体と、
を備え、
前記複数の独立電極の各々が、前記圧縮方向に直交して広がる独立対向面をもち、
すべての前記独立対向面が、同一の平面に沿って広がり、
前記共通電極が、前記圧縮方向に直交して広がる共通対向面をもち、
前記共通電極が前記初期位置にあるとき、各前記独立対向面が、前記圧縮方向において前記共通対向面に対向する領域と対向しない領域とを含み、
前記共通電極が移動可能な範囲のうちの少なくとも一部において、前記共通対向面のうち複数の前記独立対向面に対向する面積の合計が、一定であり、
前記センサ制御方法が、
前記センサが、前記共通電極と前記複数の独立電極の各々との間における静電容量を検出することと、
前記センサが、検出された前記静電容量の和に基づいて、前記圧縮方向における前記共通電極と前記複数の独立電極との相対的な圧縮変位量を算出することと、
前記センサが、検出された前記静電容量に基づいて、前記剪断方向における前記共通電極と前記複数の独立電極との相対的な剪断変位量を算出することと、
前記センサが、前記共通電極が前記初期位置にあるときの前記静電容量に基づいて、前記誘電体の誘電率を算出することと、
前記センサが、前記誘電率と前記誘電体の弾性率との関係を表す予め規定された関係情報に基づいて、算出された前記誘電率から前記弾性率を算出することと、
前記センサが、前記圧縮変位量と前記誘電体の材料特性とに基づいて、前記共通電極から前記誘電体に対して前記圧縮方向に印加された圧縮力を算出することと、
を含み、
前記圧縮力の算出に使用される前記材料特性が、前記弾性率を含み、
前記センサが前記圧縮力を算出することは、算出された前記弾性率を使用して、前記圧縮力を算出することを含む、
センサ制御方法。
【請求項15】
コンピュータに請求項14に記載のセンサ制御方法を実行させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサ、センサ制御方法、および制御プログラムに関し、特に、電極の変位を検出するセンサ、センサ制御方法、および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電極間の静電容量の変化から電極間の相対的な変位を検出することにより、電極に印加された力を検出するセンサが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1の触覚センサは、圧縮方向に沿った圧縮力を検出する圧縮力検出部と、圧縮方向に直交する剪断方向の剪断力を検出する剪断力検出部とを別々に備える。圧縮力検出部と剪断力検出部とは、各々が2つの平行な平板の間に誘電層を挟んで構成される。圧縮力検出部は、2つの平板の距離に応じて圧縮力を検出する。剪断力検出部は、2つの平板の広がる方向に沿ったずれに応じて剪断力を検出する。
【0004】
特許文献2は、平行な第1電極と第2電極とのセットを複数備える触覚センサを開示する。第1電極と第2電極との相対的な位置が、セット間で異なる。圧縮力が加わったときは、第1電極と第2電極とが重なる面積が一定のまま、第1電極と第2電極との距離が変化する。剪断力が加わったときは、第1電極と第2電極との距離が一定のまま、第1電極と第2電極とが重なる面積が変化する。その結果、セットごとの静電容量を検出することにより、圧縮力と剪断力とを共通の電極により検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-122018号明細書
【文献】特開2014-115282号明細書
【文献】特開2015-45552号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、圧縮力検出部と剪断力検出部との2つのセンサを積み重ねただけの特許文献1の触覚センサでは、圧縮力検出部の2つの平板に、剪断方向の力が加わるので、厳密に圧縮力だけを測定することができない。さらに、剪断力検出部の2つの平板に圧縮力が加わるので、厳密に剪断力だけを測定することができない。
【0007】
また、特許文献2の触覚センサでは、各セットが第1電極と第2電極とを1つずつ必要とするので、構成が複雑であり、広い面積が必要となる。また、複数のセットで、第1電極と第2電極とを正確に配置する必要があるので、製造が困難である。また、電極数が多いので、断線を防ぐ配慮が必要となる。
【0008】
そこで本開示は、圧縮方向の変位と剪断方向の変位とを従来に比べて正確に検出可能で、簡単な構造のセンサ、センサ制御方法、および制御プログラムを提供することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様に係るセンサは、複数の独立電極と、複数の独立電極に対して初期位置から圧縮方向と圧縮方向に直交する剪断方向とに変位可能に支持された共通電極と、共通電極と複数の独立電極との間に位置する誘電体と、共通電極と複数の独立電極の各々との間における静電容量を検出する検出部と、検出された静電容量の和に基づいて、圧縮方向における共通電極と複数の独立電極との相対的な圧縮変位量を算出する圧縮変位量算出部と、検出された静電容量に基づいて、剪断方向における共通電極と複数の独立電極との相対的な剪断変位量を算出する剪断変位量算出部と、共通電極が初期位置にあるときの静電容量に基づいて、誘電体の誘電率を算出する誘電率算出部と、誘電率と誘電体の弾性率との関係を表す予め規定された関係情報に基づいて、算出された誘電率から弾性率を算出する弾性率算出部と、圧縮変位量と誘電体の材料特性とに基づいて、共通電極から誘電体に対して圧縮方向に印加された圧縮力を算出する圧縮力算出部と、を備え、複数の独立電極の各々が、圧縮方向に直交して広がる独立対向面をもち、すべての独立対向面が、同一の平面に沿って広がり、共通電極が、圧縮方向に直交して広がる共通対向面をもち、共通電極が初期位置にあるとき、各独立対向面が、圧縮方向において共通対向面に対向する領域と対向しない領域とを含み、共通電極が移動可能な範囲のうちの少なくとも一部において、共通対向面のうち複数の独立対向面に対向する面積の合計が一定であり、圧縮力の算出に使用される材料特性が、弾性率を含み、圧縮力算出部が、算出された弾性率を使用して、圧縮力を算出する
【0010】
第1の態様に係るセンサによれば、圧縮変位量と剪断変位量との算出において、共通した複数の独立電極における静電容量を使用するので、圧縮変位量と剪断変位量との算出に別々の電極を用意する従来技術に比べて簡単な構造で、圧縮変位量と剪断変位量とを正確に検出可能である。また、圧縮変位量を検出するための誘電体と剪断変位量を検出するための誘電体とを重ねる必要がないため、圧縮変位量と剪断変位量とを正確に区別することができる。
また、第1の態様に係るセンサによれば、温度などによる誘電体の弾性率の変化を考慮して、圧縮力を正確に検出可能である。
【0011】
本開示の第2の態様に係るセンサは、第1の態様に係るセンサにおいて、第1仮想中心線と第1仮想中心線に交わる第2仮想中心線とにより分割された第1区画と第2区画と第3区画と第4区画との各々に1つの独立電極が位置し、第1仮想中心線が、圧縮方向に直交する第1剪断方向に平行であり、第2仮想中心線が、圧縮方向と第1剪断方向とに直交する第2剪断方向に平行であり、第1区画に位置する独立電極である第1独立電極と、第2区画に位置する独立電極である第2独立電極とが第1剪断方向に並び、第3区画に位置する独立電極である第3独立電極と、第4区画に位置する独立電極である第4独立電極とが第1剪断方向に並び、第1独立電極と第3独立電極とが、第2剪断方向に並び、第2独立電極と第4独立電極とが、第2剪断方向に並び、検出部が、第1独立電極と共通電極との間の静電容量である第1静電容量を検出し、検出部が、第2独立電極と共通電極との間の静電容量である第2静電容量を検出し、検出部が、第3独立電極と共通電極との間の静電容量である第3静電容量を検出し、検出部が、第4独立電極と共通電極との間の静電容量である第4静電容量を検出し、圧縮変位量算出部が、第1静電容量と第2静電容量と第3静電容量と第4静電容量との和に基づいて、圧縮変位量を算出し、剪断変位量算出部が、第1静電容量と第3静電容量との和と、第2静電容量と第4静電容量との和とに基づいて、第1剪断方向における剪断変位量である第1剪断変位量を算出し、剪断変位量算出部が、第1静電容量と第2静電容量との和と、第3静電容量と第4静電容量との和とに基づいて、第2剪断方向における剪断変位量である第2剪断変位量を算出する。
【0012】
第2の態様に係るセンサによれば、従来に比べて簡単な構造で、多方向における変位量、すなわち、圧縮変位量と、第1剪断方向における第1剪断変位量と、第2剪断方向における第2剪断変位量とを正確に検出可能である。
【0013】
本開示の第3の態様に係るセンサは、第2の態様に係るセンサにおいて、第1独立電極の独立対向面と第3独立電極の独立対向面とが、第1仮想中心線に対して線対称であり、第2独立電極の独立対向面と第4独立電極の独立対向面とが、第1仮想中心線に対して線対称であり、第1独立電極の独立対向面と第2独立電極の独立対向面とが、第2仮想中心線に対して線対称であり、第3独立電極の独立対向面と第4独立電極の独立対向面とが、第2仮想中心線に対して線対称である。
【0014】
第3の態様に係るセンサによれば、複数の独立電極の独立対向面に対称性があるので、非対称な場合に比べて製造が容易であり、変位量の算出が容易となる。
【0015】
本開示の第4の態様に係るセンサは、第3の態様に係るセンサにおいて、各独立対向面が、第1剪断方向に平行な2辺と第2剪断方向に平行な2辺とをもつ長方形であり、共通対向面が、第1剪断方向に平行な2辺と第2剪断方向に平行な2辺とをもつ長方形である。
【0016】
第4の態様に係るセンサによれば、複数の独立電極が長方形であるので、複雑な形状に比べて製造が容易であり、静電容量の算出が容易となる。
【0017】
本開示の第5の態様に係るセンサは、第3の態様に係るセンサにおいて、各独立対向面が、共通の仮想中心点をもつ扇形状であり、共通対向面が、円形であり、共通電極が初期位置にあるとき、圧縮方向において、共通対向面の中心点が、仮想中心点に重なる。
【0018】
第5の態様に係るセンサによれば、複数の独立電極が扇形状であるので、複雑な形状に比べて製造が容易であり、静電容量の算出が容易となる。また、初期位置から共通電極を変位させる場合、いずれの方向においても、最大変位可能量を同じにすることができる。
【0019】
本開示の第6の態様に係るセンサは、第3の態様に係るセンサにおいて、共通対向面が、第1剪断方向に平行で第1区画から第2区画内に延びた第1縁部と、第2剪断方向に平行で第1区画から第3区画内に延びた第2縁部と、湾曲縁部とをもち、共通電極が初期位置にあるとき、湾曲縁部が、第1区画内に位置し、湾曲縁部が、第1縁部の一端と第2縁部の一端とをつなぎ、湾曲縁部が、第1剪断方向と第2剪断方向との間に規定される90度の中心角をもつ扇形状であり、湾曲縁部が、圧縮方向に直交する平面内において外側に向けて凸状であり、共通電極が初期位置にあるとき、共通対向面のうち第1区画内の領域が、第1縁部と湾曲縁部とから第2剪断方向に第3区画まで連続して広がる形状をもち、共通電極が初期位置にあるとき、共通対向面のうち第1区画内の領域が、第2縁部と湾曲縁部とから第1剪断方向に第2区画まで連続して広がる形状をもち、第1独立電極の独立対向面が、第1縁部に平行な第1外縁部と、第2縁部に平行な第2外縁部と、湾曲外縁部とをもち、湾曲外縁部が、第1外縁部の一端と第2外縁部の一端とをつなぎ、湾曲外縁部が、第1剪断方向と第2剪断方向との間に規定される90度の中心角をもつ扇形状であり、湾曲外縁部が、圧縮方向に直交する平面内において外側に向けて凸状であり、第1独立電極の独立対向面が、第1外縁部と湾曲外縁部とから第2剪断方向において第3区画に向けて連続して広がる形状をもち、第1独立電極の独立対向面が、第2外縁部と湾曲外縁部とから第1剪断方向において第2区画に向けて連続して広がる形状をもち、共通電極が初期位置にあるとき、圧縮方向において、湾曲縁部の扇形状の仮想中心点が湾曲外縁部の扇形状の仮想中心点に重なり、共通電極が初期位置にあるとき、第2剪断方向における第1外縁部と第1縁部との離間距離が、第1剪断方向における第2外縁部と第2縁部との離間距離と同じであり、共通電極が初期位置にあるとき、湾曲外縁部の半径と湾曲縁部の半径との差が、第2剪断方向における第1外縁部と第1縁部との離間距離と同じである。
【0020】
第6の態様に係るセンサによれば、初期位置から共通電極を変位させる場合、いずれの方向においても、最大変位可能量を同じにすることができる。
【0021】
本開示の第7の態様に係るセンサは、第1乃至第6のいずれか1つの態様に係るセンサにおいて、誘電体が、複数の独立電極と共通電極との間を圧縮方向に満たす弾性体であり、共通電極が誘電体により、複数の独立電極に対して初期位置から圧縮方向と剪断方向とに相対的に変位可能に支持される。
【0022】
第7の態様に係るセンサによれば、共通電極を誘電体とは別の材料で支持する場合に比べて構成が簡単となる。また、誘電体が弾性体であるので、力を解除したときに共通電極を自動的に元の位置に戻すことができる。
【0023】
本開示の第8の態様に係るセンサは、第2乃至第6のいずれか1つの態様に係るセンサにおいて、誘電体が、複数の独立電極と共通電極との間を圧縮方向に満たす弾性体であり、共通電極が誘電体により、複数の独立電極に対して初期位置から圧縮方向と剪断方向とに相対的に変位可能に支持され、圧縮変位量と第1剪断変位量と第2剪断変位量と誘電体の材料特性とに基づいて、共通電極から誘電体に対して剪断方向に印加された剪断力を算出する剪断力算出部を備えるセンサである。
【0024】
第8の態様に係るセンサによれば、圧縮力と剪断力との算出において、共通した複数の独立電極における静電容量を使用するので、圧縮力と剪断力との算出に別々の電極を用意する従来技術に比べて簡単な構造で、圧縮力と剪断力とを正確に検出可能である。また、従来と異なり、圧縮力を検出するための誘電体と剪断力を検出するための誘電体とを重ねる必要がないため、圧縮力と剪断力とを正確に区別することができる。
【0025】
本開示の第の態様に係るセンサは、第7の態様または第8の態様に係るセンサにおいて、複数の独立電極に対する共通電極の移動範囲を制限するストッパを備えるセンサであって、誘電体が、移動範囲内において弾性変形可能である。
【0026】
の態様に係るセンサによれば、誘電体の塑性変形を防いで、正確な検出を維持することができる。
【0027】
本開示の第10の態様に係るセンサは、第1乃至第のいずれか1つの態様に係るセンサにおいて、第1基板と、第2基板と、複数の独立電極の各々に接続された複数の第1配線と、共通電極に接続された第2配線と、を備えるセンサであって、複数の第1配線の各々の少なくとも一部と、複数の独立電極とが、第1基板に固定され、第2配線の少なくとも一部と、共通電極とが、第2基板に固定される。
【0028】
10の態様に係るセンサによれば、複数の第1配線と複数の独立電極とが第1基板に固定されるので、断線を防ぎやすい。また、第2配線と共通電極とが第2基板に固定されるので、断線を防ぎやすい。
【0029】
本開示の第11の態様に係るセンサは、第7の態様または第8の態様に係るセンサにおいて、複数の独立電極に対する共通電極の移動範囲を制限するストッパと、ストッパが固定された第1基板と、複数の独立電極の各々に接続された複数の第1配線と、第1基板と共通電極との間に延びた第2配線と、を備えるセンサであって、誘電体が、移動範囲内において弾性変形可能であり、複数の第1配線の各々の少なくとも一部が、第1基板に固定され、第2配線の少なくとも一部が、ストッパに固定される。
【0030】
11の態様に係るセンサによれば、第1配線と第2配線とが固定されるので断線を防ぎやすい。
【0031】
本開示の第12の態様に係るセンサは、複数の独立電極と、複数の独立電極に対して初期位置から圧縮方向と圧縮方向に直交する剪断方向とに変位可能に支持された共通電極と、共通電極と複数の独立電極との間に位置する誘電体と、共通電極と複数の独立電極の各々との間における静電容量を検出する検出部と、検出された静電容量の和に基づいて、圧縮方向における共通電極と複数の独立電極との相対的な圧縮変位量を算出する圧縮変位量算出部と、検出された静電容量に基づいて、剪断方向における共通電極と複数の独立電極との相対的な剪断変位量を算出する剪断変位量算出部と、を備え、複数の独立電極の各々が、圧縮方向に直交して広がる独立対向面をもち、すべての独立対向面が、同一の平面に沿って広がり、共通電極が、圧縮方向に直交して広がる共通対向面をもち、共通電極が初期位置にあるとき、各独立対向面が、圧縮方向において共通対向面に対向する領域と対向しない領域とを含み、共通電極が移動可能な範囲のうちの少なくとも一部において、共通対向面のうち複数の独立対向面に対向する面積の合計が、一定であり、複数の独立電極に対する共通電極の移動範囲を制限するストッパと、ストッパが固定された第1基板と、複数の独立電極の各々に接続された複数の第1配線と、第1基板と共通電極との間に延びた第2配線と、を更に備え、誘電体が、移動範囲内において弾性変形可能であり、複数の第1配線の各々の少なくとも一部が、第1基板に固定され、第2配線の少なくとも一部が、ストッパに固定される。
【0033】
本開示の第13の態様に係るセンサは、第1乃至第12のいずれか1つの態様に係るセンサにおいて、補助電極を備え、補助電極が、圧縮方向に直交して広がる補助対向面をもち、補助対向面の面積が、共通対向面の面積より小さく、補助対向面の全体が、圧縮方向において共通対向面に対向する。
【0034】
第13の態様に係るセンサによれば、補助対向面の全体が圧縮方向において共通対向面に対向するので、剪断方向の変位によらず、補助電極と共通電極との間の静電容量が一定となり、安定して圧縮方向の変位を検出することができる。
【0035】
本開示の第14の態様に係るセンサ制御方法は、センサにより実行されるセンサ制御方法であって、センサが、複数の独立電極と、複数の独立電極に対して初期位置から圧縮方向と圧縮方向に直交する剪断方向とに変位可能に支持された共通電極と、共通電極と複数の独立電極との間に位置する誘電体と、を備え、複数の独立電極の各々が、圧縮方向に直交して広がる独立対向面をもち、すべての独立対向面が、同一の平面に沿って広がり、共通電極が、圧縮方向に直交して広がる共通対向面をもち、共通電極が初期位置にあるとき、各独立対向面が、圧縮方向において共通対向面に対向する領域と対向しない領域とを含み、共通電極が移動可能な範囲のうちの少なくとも一部において、共通対向面のうち複数の独立対向面に対向する面積の合計が、一定であり、センサ制御方法が、センサが、共通電極と複数の独立電極の各々との間における静電容量を検出することと、センサが、検出された静電容量の和に基づいて、圧縮方向における共通電極と複数の独立電極との相対的な圧縮変位量を算出することと、センサが、検出された静電容量に基づいて、剪断方向における共通電極と複数の独立電極との相対的な剪断変位量を算出することと、センサが、共通電極が初期位置にあるときの静電容量に基づいて、誘電体の誘電率を算出することと、センサが、誘電率と誘電体の弾性率との関係を表す予め規定された関係情報に基づいて、算出された誘電率から弾性率を算出することと、 センサが、圧縮変位量と誘電体の材料特性とに基づいて、共通電極から誘電体に対して圧縮方向に印加された圧縮力を算出することと、 を含み、圧縮力の算出に使用される材料特性が、弾性率を含み、センサが圧縮力を算出することは、算出された弾性率を使用して、圧縮力を算出することを含む。
【0036】
本開示の第15の態様に係る制御プログラムは、第14の態様に係るセンサ制御方法をコンピュータに実行させる制御プログラムである。
【発明の効果】
【0037】
本開示によれば、圧縮方向の変位と剪断方向の変位とを従来に比べて正確に検出可能で、簡単な構造のセンサ、センサ制御方法、および制御プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】第1実施形態のセンサの斜視図である。
図2図1に示すセンサの平面図である。
図3図2の3-3線を通る断面におけるセンサの断面図である。
図4図2に示す独立電極と共通電極との位置関係を説明するための平面図である。
図5図2に示す独立電極と共通電極と制御装置とを示すブロック図である。
図6図1に示すセンサが実施するセンサ制御方法を説明するためのフロー図である。
図7図1に示すセンサが実施する校正方法を説明するためのフロー図である。
図8】第2実施形態の共通電極と独立電極と誘電体との平面図である。
図9】第3実施形態の共通電極と独立電極と誘電体との平面図である。
図10】第4実施形態の共通電極と独立電極と誘電体との平面図である。
図11】第5実施形態の共通電極と独立電極と補助電極との平面図である。
図12】第5実施形態の独立電極と共通電極と補助電極と制御装置とを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、第1~第5実施形態に係るセンサについて説明する。第1実施形態のセンサでは、各構成要素の百の位が1で表されている。同様に、第2~第5実施形態の各構成要素は、それぞれ、百の位が2~5で表されている。別段断りのない限り、異なる実施形態において百の位のみが異なる構成要素は、それぞれ、同様の構成要素を表す。第2実施形態以降は、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0040】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態のセンサ100の斜視図である。図2は、図1に示すセンサ100の平面図である。図3は、図2の3-3線を通る断面におけるセンサ100の断面図である。図1に示すセンサ100は、電極間の相対的な変位量を検出することにより、電極に印加された力の大きさを検出する。電極には例えば人間の指により力が印加される。
【0041】
本明細書において、互いに直交するx方向、y方向、及びz方向を規定する。x方向は、互いに逆を向くx1方向とx2方向とを区別せずに表す。y方向は互いに逆を向くy1方向とy2方向とを区別せずに表す。z方向は互いに逆を向くz1方向とz2方向とを区別せずに表す。また、z1側を上と表現し、z2側を下と表現する場合がある。これらの方向は、相対的な位置関係を説明するために便宜上規定するのであって、実際の使用時の方向を限定するわけではない。構成要素の形状は、「略」という記載があるかないかにかかわらず、本明細書で開示された実施形態の技術思想が実現される限り、記載された表現に基づく厳密な幾何学的な形状に限定されない。
【0042】
z2方向を圧縮方向と呼び、x方向を第1剪断方向と呼び、y方向を第2剪断方向と呼ぶ。第1剪断方向と第2剪断方向とを区別せずに剪断方向と呼ぶ場合がある。第1剪断方向は、圧縮方向に直交する。第2剪断方向は、圧縮方向と第1剪断方向とに直交する。すなわち、圧縮方向と剪断方向とは直交する。剪断方向は、第1剪断方向と第2剪断方向との組み合わせも含む。
【0043】
図2に示すように、センサ100は、第1基板110と、第1基板110に固定された枠状のストッパ111と、第1基板110につながる複数の第1配線112と、第1基板110から離間した第2基板120と、第2基板120につながる第2配線121と、第1基板110に固定された第1独立電極130-1~第4独立電極130-4(以下、区別せずに独立電極130と呼ぶ場合がある)と、第2基板120に固定された共通電極140と、4つの独立電極130と共通電極140との間に位置する誘電体150(図3)と、センサ100の動作を制御する制御装置160とを備える。
【0044】
(基板)
図1に示すように、第1基板110は、xy平面に平行に広がる平板状の硬質材料を母材とする回路基板である。第2基板120は、xy平面に平行に広がる平板状の硬質材料を母材とする回路基板である。第2基板120は、z方向から見たときに、x方向に平行な2辺とy方向に平行な2辺とをもつ長方形である。第2基板120は、第1基板110からz1方向に離間して位置する。
【0045】
(ストッパ)
図1に示すように、ストッパ111は、第1基板110に固定されており、第1基板110からz1方向に延びる。ストッパ111は、例えば、硬質の樹脂で形成される。図2に示すように、ストッパ111は、z方向から見たとき、内側に、x方向に平行な2辺とy方向に平行な2辺とをもつ長方形の空間を規定する。図1に示すように、ストッパ111の内側の空間は、yz平面に平行な2面とzx平面に平行な2面とに囲まれた直方体であり、z1方向に開放されている。ストッパ111は、複数の独立電極130に対する共通電極140の移動範囲を制限する。
【0046】
(独立電極)
図3に示すように、4つの独立電極130は、ストッパ111に囲まれる空間内において、第1基板110のz1側の面に固定される。各独立電極130は、xy平面に平行に広がる薄膜平板状の金属である。
【0047】
図4は、4つの独立電極130と共通電極140との位置関係を説明するための平面図である。z方向から見たとき、x方向に平行な第1仮想中心線101と、y方向に平行で第1仮想中心線101に交わる第2仮想中心線102とにより、空間が第1区画103-1と第2区画103-2と第3区画103-3と第4区画103-4と(以下、区別せずに区画103と呼ぶ場合がある)に分割される。4つの区画103は仮想的な概念であり、現実に区切りが存在しなくてよい。
【0048】
4つの区画103の各々に、1つの独立電極130が位置する。第1区画103-1に第1独立電極130-1が位置する。第2区画103-2に第2独立電極130-2が位置する。第3区画103-3に第3独立電極130-3が位置する。第4区画103-4に第4独立電極130-4が位置する。第1独立電極130-1と第2独立電極130-2とが、x方向に並ぶ。第3独立電極130-3と第4独立電極130-4とが、x方向に並ぶ。第1独立電極130-1と第3独立電極130-3とが、y方向に並ぶ。第2独立電極130-2と第4独立電極130-4とが、y方向に並ぶ。
【0049】
第1独立電極130-1が、第1独立対向面131-1をもつ。第2独立電極130-2が、第2独立対向面131-2をもつ。第3独立電極130-3が、第3独立対向面131-3をもつ。第4独立電極130-4が、第4独立対向面131-4をもつ。以下、第1独立対向面131-1~第4独立対向面131-4を区別せずに、独立対向面131と呼ぶ場合がある。すなわち、複数の独立電極130の各々が、z方向に直交して広がり、z1方向を向いた独立対向面131をもつ。すべての独立対向面131が、同一の平面に沿って広がる。各独立対向面131は、x方向に平行な2辺とy方向に平行な2辺とをもつ長方形である。
【0050】
第1独立対向面131-1と第3独立対向面131-3とが、第1仮想中心線101に対して線対称である。第2独立対向面131-2と第4独立対向面131-4とが、第1仮想中心線101に対して線対称である。第1独立対向面131-1と第2独立対向面131-2とが、第2仮想中心線102に対して線対称である。第3独立対向面131-3と第4独立対向面131-4とが、第2仮想中心線102に対して線対称である。
【0051】
4つの独立対向面131の全体の外形は、x方向に平行な2辺とy方向に平行な2辺とをもつ長方形である。4つの独立対向面131は、相互に近接しており、第1仮想中心線101と第2仮想中心線102とに沿った十字状の細い絶縁領域によって区切られる。他の例において、独立対向面131の角が丸みを帯びてもよい。
【0052】
(共通電極)
図3に示すように、共通電極140は、ストッパ111に囲まれる空間内において、第2基板120のz2側の面に固定される。共通電極140は、xy平面に平行に広がる薄膜平板状の金属である。共通電極140は、z2方向を向いた、z方向に直交して広がる共通対向面141をもつ。共通対向面141は、x方向に平行な2辺とy方向に平行な2辺とをもつ長方形である。z方向から見たとき、共通対向面141の外形は、4つの独立対向面131の全体の外形より小さい。
【0053】
図1図3において、共通電極140は初期位置にある。図4の実線で示す共通電極140は初期位置にある。初期位置において、共通対向面141の重心は、z方向において4つの独立対向面131の全体の重心に重なる。共通電極140が初期位置にあるとき、各独立対向面131が、z方向において共通対向面141に対向する領域と対向しない領域とを含む。初期位置において、各独立対向面131と共通対向面141との対向する領域の面積は等しい。
【0054】
(誘電体)
図3に示すように、誘電体150は、z方向において共通電極140と4つの独立電極130との間に位置する。誘電体150は、z方向において4つの独立電極130のうちの共通電極140に対向する領域と、共通電極140との間を満たす弾性体である。図1に示すように、誘電体150は概ね、xy平面に平行な2面と、yz平面に平行な2面と、zx平面に平行な2面とに囲まれた直方体である。
【0055】
図2に示すように、z方向から見たとき、誘電体150は、x方向の両側およびy方向の両側において、共通電極140よりわずかに外側に広がっている。x方向とy方向との両側において、誘電体150は、ストッパ111の内面には達しない。
【0056】
共通電極140は、誘電体150により、4つの独立電極130に対して初期位置からx方向、y方向、z方向、およびx方向とy方向とz方向との合成方向に相対的に変位可能に支持される。共通電極140がz2方向に押されると、誘電体150が圧縮される。共通電極140が、z方向に直交する方向に押されると、誘電体150のz2側の面が4つの独立電極130に固定されたまま、誘電体150のz1側の面が力の方向にずれる。力が解除されると、共通電極140は初期位置に戻る。
【0057】
誘電体150は、ストッパ111により制限される共通電極140の移動範囲内において弾性変形可能である。すなわち、誘電体150が塑性変形しないように、ストッパ111により共通電極140の移動範囲が制限される。図3に示すように、移動の前後において、独立対向面131と共通対向面141とは、概ね、平行に保たれる。
【0058】
図4に示す二点鎖線の共通電極140は、実線の共通電極140を移動させた後の例示的な位置を示す。移動量によらず移動の前後で、共通対向面141の全面が常に独立対向面131に対向している。共通電極140が移動可能な範囲のうちの少なくとも一部において、共通対向面141のうち複数の独立対向面131に対向する面積の合計が、実質的に一定である。すなわち、本実施形態では、独立電極130の間の隙間は無視できる程度である。他の例において、計算において、4つの独立対向面131に対向する共通対向面141の面積から、隙間の面積を引いてもよい。
【0059】
(制御装置)
図1に示すように、制御装置160は、第1基板110上に固定されて、センサ100における後述の動作を電気的に行う。制御装置160は、他の位置にあってよく、複数の位置に分散されてもよい。
【0060】
(配線)
図2に示すように、4つの第1配線112の各々が、4つの独立電極130の各々と制御装置160とを接続する。第1配線112は、例えば、金属配線である。第1配線112の全体が、第1基板110に固定される。他の例において、4つの第1配線112の各々の少なくとも一部が、第1基板110に固定される。
【0061】
第2配線121は、第1基板110と共通電極140との間に延び、共通電極140と制御装置160とを接続する。第2配線121の少なくとも一部が、第2基板120に固定される。第2配線121の少なくとも一部が、ストッパ111に固定される。
【0062】
(寸法)
各図面の構成要素は、理解しやすくするため誇張して描かれている。一例において、共通対向面141の面積は、10mm×10mmである。一例において、誘電体150のz方向における厚さは、1mmである。
【0063】
(制御装置の詳細)
図5は、独立電極130と共通電極140と制御装置160とを示すブロック図である。制御装置160は、検出回路161と記憶装置162と演算処理装置163とを含む。
【0064】
以下、図5とあわせて図4を参照しながら、共通電極140が、実線の初期位置から二点鎖線の移動後の位置まで、x方向に変位量A変位し、y方向に変位量B変位した場合の計算例について、例示的に説明する。誘電体150(図3)の誘電率はεと表す。共通対向面141(図3)の面積はSと表す。図4に示すように、x方向における共通対向面141の幅は2wと表す。y方向における共通対向面141の長さは2hと表す。ε、S、w、hは、予め設定される。
【0065】
(検出回路)
図5に示す検出回路161は、各独立電極130と共通電極140との間に電圧を印加したときの、各独立電極130と共通電極140との間に蓄積される電荷量を検出する。検出回路161は、検出された電荷量から、第1独立電極130-1と共通電極140との間の静電容量である第1静電容量(=C1)と、第2独立電極130-2と共通電極140との間の静電容量である第2静電容量(=C2)と、第3独立電極130-3と共通電極140との間の静電容量である第3静電容量(=C3)と、第4独立電極130-4と共通電極140との間の静電容量である第4静電容量(=C4)とを表す信号を検出する。検出方法は、一例において、静電容量式タッチパッドにおける静電容量の検出方法と同様である。
【0066】
(記憶装置)
記憶装置162は、制御プログラム164と関係情報165とを記憶する。制御プログラム164は、演算処理装置163によって読み出されて、演算処理装置163にセンサ制御方法および校正方法の一部を行うための機能、及び他の機能を実装させる。演算処理装置163が種々の機能を実行するとき、記憶装置162は、演算処理装置163に制御されて、適宜必要な情報を記憶する。関係情報165は、後述のように、誘電体150(図1)の誘電率と弾性率との関係を表す。
【0067】
記憶装置162は、例えばROM(Read only memory)やRAM(Random access memory)など、揮発性または不揮発性の記憶装置を含む。また記憶装置162は、光ディスクやUSBメモリなどの非一時的な有形の記憶媒体を含んでいてもよい。記憶装置162は、取り外し可能であってもよく、取り外し不能であってもよい。
【0068】
(演算処理装置)
演算処理装置163は、記憶装置162に記憶された制御プログラム164を読み出して実行することにより、後述の検出部171、圧縮変位量算出部172、剪断変位量算出部173、誘電率算出部176、および弾性率算出部177として機能するコンピュータを含む。なお演算処理装置163は、少なくとも一部の処理を特定用途向け集積回路(ASIC:Application specific integrated circuits)などの専用のハードウェアや、本実施形態で説明される各機能を実装可能な他の回路で実行してもよい。
【0069】
(検出部)
検出部171は、上述の検出回路161を制御することにより、共通電極140と4つの独立電極130の各々との間における静電容量(すなわち、C1、C2、C3、およびC4)を検出する。
【0070】
(圧縮変位量算出部)
圧縮変位量算出部172は、検出された静電容量の和(すなわち、C1+C2+C3+C4)に基づいて、z方向における共通電極140と4つの独立電極130との相対的な圧縮変位量を算出する。
【0071】
圧縮変位量dは、初期位置からの、z2方向における共通電極140の変位量を表す。初期位置におけるz方向における独立対向面131と共通対向面141との距離をd1(変形前の誘電体150の厚さに等しい)とし、移動後のz方向における独立対向面131と共通対向面141との距離をd2(変形後の誘電体150の厚さに等しい)とした場合、圧縮変位量d(誘電体150の厚さの変化量に等しい)は式(1)のように表される。初期位置におけるd1は、予め設定される。初期位置における静電容量の和Cは、式(2)のように表される。εは、誘電体150の誘電率を表す。移動後の静電容量の和CABは、式(3)のように表される。
d=d1-d2 … 式(1)
C=ε×S/d1 …式(2)
CAB=ε×S/d2 …式(3)
従って、圧縮変位量dは、式(4)のように算出される。
d=d1(CAB-C)/CAB …式(4)
【0072】
(剪断変位量算出部)
剪断変位量算出部173は、検出された静電容量(すなわち、C1、C2、C3、およびC4)に基づいて、剪断変位量(すなわち、AおよびB)を算出する。剪断変位量は、x方向とy方向との各々における共通電極140と4つの独立電極130との相対的な変位量である。第1剪断変位量(=A)は、C1とC3との和(=CL)と、C2とC4との和(=CR)とに基づいて算出される、x方向における剪断変位量である。第2剪断変位量(=B)は、C1とC2との和(=CU)と、C3とC4との和(=CB)とに基づいて算出される、y方向における剪断変位量である。
【0073】
C1とC3との和CLは、式(5)のように表される。C2とC4との和CRは、式(6)のように表される。移動後の静電容量CABは式(7)のように表される。式(5)と式(6)と式(7)とを使用して、CL-CRが式(8)のように表される。
CL=C1+C3=ε2h×(w+A)/(d1-d) …式(5)
CR=C2+C4=ε2h×(w-A)/(d1-d) …式(6)
CAB=ε2h×2w/(d1-d) …式(7)
CL-CR=ε2h×2A/(d1-d)=CAB×A/w …式(8)
【0074】
従って、第1剪断変位量Aは式(9)のように算出される。同様に、第2剪断変位量Bは式(10)のように算出される。
A=w×(CL-CR)/CAB …式(9)
B=h×(CU-CB)/CAB …式(10)
従って、全体の剪断変位量qは、式(11)のように算出される。なお、sqrtは、括弧内の式の平方根を計算する。
q=sqrt(A+B) …式(11)
【0075】
(圧縮力算出部)
圧縮力算出部174は、圧縮変位量dと誘電体150の材料特性とに基づいて、共通電極140から誘電体150に対してz2方向に印加された圧縮力f1を算出する。圧縮力の算出に使用される材料特性は、誘電体150の弾性率Eを含む。弾性率Eは、予め設定される。
【0076】
誘電体150の弾性率Eは、式(12)のように表される。誘電体150に加わる圧縮方向の応力σ1は、式(13)のように表される。誘電体150の圧縮ひずみoは、式(14)のように表される。
E=σ1/o …式(12)
σ1=f1/S …式(13)
o=d/d1 …式(14)
従って、圧縮力f1は、式(12)と式(13)と式(14)とから式(15)のように算出される。
f1=E×S×d/d1 …式(15)
【0077】
(剪断力算出部)
剪断力算出部175は、圧縮変位量dと第1剪断変位量Aと第2剪断変位量Bと誘電体150の材料特性とに基づいて、共通電極140から誘電体150に対してz方向に直交する方向に印加された剪断力f2を算出する。剪断力の算出に使用される材料特性は、誘電体150のずれ弾性係数Gを含む。
【0078】
誘電体150のずれ弾性係数Gは、式(16)のように表される。剪断応力σ2は、式(17)のように表される。
G=σ2×d2/q …式(16)
σ2=f2/S …式(17)
従って、式(16)と式(17)と式(1)とから、全体の剪断力f2は式(18)のように算出される。x方向における剪断力である第1剪断力fxは、式(19)のように算出される。y方向における剪断力である第2剪断力fyは、式(20)のように算出される。
f2=G×S×sqrt(A+B)/(d1-d) …式(18)
fx=f2×A/q …式(19)
fy=f2×B/q …式(20)
【0079】
(誘電率算出部)
誘電率算出部176は、共通電極140が初期位置にあるときの静電容量に基づいて、誘電体150の誘電率を算出する。共通電極140が初期位置にあることは、例えば、検出された静電容量に所定期間変化がないこと、他の入力からの通知があること、起動して間もないことなどによって認識する。
【0080】
(弾性率算出部)
弾性率算出部177は、誘電体150の誘電率と弾性率との関係を表す予め規定された関係情報165に基づいて、算出された誘電率から弾性率を算出する。関係情報165は、一例において、誘電率と弾性率との関係を表す計算式であり、他の一例において、誘電率と弾性率との関係を表す表である。圧縮力算出部174は、弾性率算出部177により算出された弾性率を使用して、圧縮力を算出する。
【0081】
(センサ制御方法)
図6は、図1に示すセンサ100が実施するセンサ制御方法を説明するためのフロー図である。なお、ステップの順序は、算出が可能である限りにおいて、図示されるものに限定されない。
【0082】
まず、図6に示すステップ181において、検出部171(図5)が、静電容量(すなわち、C1、C2、C3、およびC4)を検出する。次に、図6に示すステップ182において、圧縮変位量算出部172(図5)が、式(4)に基づいて圧縮変位量dを算出する。次に、図6に示すステップ183において、剪断変位量算出部173(図5)が、式(9)に基づいて第1剪断変位量Aを算出し、式(10)に基づいて第2剪断変位量Bを算出し、式(11)に基づいて全体の剪断変位量qを算出する。
【0083】
次に、図6に示すステップ184において、圧縮力算出部174(図5)が、式(15)に基づいて、圧縮力f1を算出する。次に、図6に示すステップ185において、剪断力算出部175(図5)が、式(18)に基づいて全体の剪断力f2を算出し、式(19)に基づいて第1剪断力fxを算出し、式(20)に基づいて第2剪断力fyを算出する。
【0084】
(校正方法)
図7は、図1に示すセンサ100が実施する校正方法を説明するためのフロー図である。
【0085】
まず、ステップ186において、誘電率算出部176(図5)は、共通電極140(図4)が初期位置にあるか否か判定する。共通電極140(図4)が初期位置にあることは、例えば、検出された静電容量に所定期間変化がないこと、他の入力からの通知があること、起動して間もないことなどによって認識する。ステップ186において、共通電極140(図4)が初期位置にないと判定された場合、校正方法が終了する。ステップ186において、共通電極140(図4)が初期位置にあると判定された場合、ステップ187に進む。
【0086】
ステップ187において、誘電率算出部176(図5)は、共通電極140(図4)が初期位置にあるときの静電容量(すなわち、C1、C2、C3、およびC4)に基づいて、式(2)から誘電体150(図3)の誘電率を算出する。次に、ステップ188において、弾性率算出部177(図5)は、関係情報165(図5)と算出された誘電率とに基づいて、弾性率を算出する。弾性率が算出された後、圧縮力算出部174(図5)は、算出された弾性率を使用して圧縮力を算出する。
【0087】
以上のように、x1方向における共通電極140の変位量Aが増えると、第1独立電極130-1と共通電極140との対向面積に、第3独立電極130-3と共通電極140との対向面積を加えた面積SLが単調増加し、第2独立電極130-2と共通電極140との対向面積に、第4独立電極130-4と共通電極140との対向面積を加えた面積SRが、SLと同じ大きさの変化率で単調減少する。式(3)と同様に、d2が一定の場合、静電容量CLはSLに比例し、静電容量CRはSRに比例する。
【0088】
従って、AとCLとが一対一に対応し、AとCRとが一対一に対応するので、d2がわかればCLおよびCRからAが一意に算出される。x2方向、y1方向、およびy2方向についても同様である。
【0089】
(まとめ)
本実施形態のセンサ100は、複数の独立電極130と、複数の独立電極130に対して初期位置から圧縮方向と圧縮方向に直交する剪断方向とに変位可能に支持された共通電極140と、共通電極140と複数の独立電極130との間に位置する誘電体150と、共通電極140と複数の独立電極130の各々との間における静電容量を検出する検出部171と、検出された静電容量の和に基づいて、圧縮方向における共通電極140と複数の独立電極130との相対的な圧縮変位量を算出する圧縮変位量算出部172と、検出された静電容量に基づいて、剪断方向における共通電極140と複数の独立電極130との相対的な剪断変位量を算出する剪断変位量算出部173と、を備え、複数の独立電極130の各々が、圧縮方向に直交して広がる独立対向面131をもち、すべての独立対向面131が、同一の平面に沿って広がり、共通電極140が、圧縮方向に直交して広がる共通対向面141をもち、共通電極140が初期位置にあるとき、各独立対向面131が、圧縮方向において共通対向面141に対向する領域と対向しない領域とを含み、共通電極140が移動可能な範囲のうちの少なくとも一部において、共通対向面141のうち複数の独立対向面131に対向する面積の合計が、一定である。
【0090】
本実施形態によれば、圧縮変位量と剪断変位量との算出において、共通した複数の独立電極130における静電容量を使用するので、圧縮変位量と剪断変位量との算出に別々の電極を用意する従来技術に比べて簡単な構造で、圧縮変位量と剪断変位量とを正確に検出可能である。また、圧縮変位量を検出するための誘電体150と剪断変位量を検出するための誘電体150とを重ねる必要がないため、圧縮変位量と剪断変位量とを正確に区別することができる。
【0091】
本実施形態において、第1仮想中心線101と第1仮想中心線101に交わる第2仮想中心線102とにより分割された第1区画103-1と第2区画103-2と第3区画103-3と第4区画103-4との各々に1つの独立電極130が位置し、第1仮想中心線101が、圧縮方向に直交する第1剪断方向に平行であり、第2仮想中心線102が、圧縮方向と第1剪断方向とに直交する第2剪断方向に平行であり、第1区画103-1に位置する独立電極130である第1独立電極130-1と、第2区画103-2に位置する独立電極130である第2独立電極130-2とが第1剪断方向に並び、第3区画103-3に位置する独立電極130である第3独立電極130-3と、第4区画103-4に位置する独立電極130である第4独立電極130-4とが第1剪断方向に並び、第1独立電極130-1と第3独立電極130-3とが、第2剪断方向に並び、第2独立電極130-2と第4独立電極130-4とが、第2剪断方向に並び、検出部171が、第1独立電極130-1と共通電極140との間の静電容量である第1静電容量を検出し、検出部171が、第2独立電極130-2と共通電極140との間の静電容量である第2静電容量を検出し、検出部171が、第3独立電極130-3と共通電極140との間の静電容量である第3静電容量を検出し、検出部171が、第4独立電極130-4と共通電極140との間の静電容量である第4静電容量を検出し、圧縮変位量算出部172が、第1静電容量と第2静電容量と第3静電容量と第4静電容量との和に基づいて、圧縮変位量を算出し、剪断変位量算出部173が、第1静電容量と第3静電容量との和と、第2静電容量と第4静電容量との和とに基づいて、第1剪断方向における剪断変位量である第1剪断変位量を算出し、剪断変位量算出部173が、第1静電容量と第2静電容量との和と、第3静電容量と第4静電容量との和とに基づいて、第2剪断方向における剪断変位量である第2剪断変位量を算出する。
【0092】
本実施形態によれば、従来に比べて簡単な構造で、多方向における変位量、すなわち、圧縮変位量と、第1剪断方向における第1剪断変位量と、第2剪断方向における第2剪断変位量とを正確に検出可能である。
【0093】
本実施形態において、第1独立電極130-1の独立対向面131と第3独立電極130-3の独立対向面131とが、第1仮想中心線101に対して線対称であり、第2独立電極130-2の独立対向面131と第4独立電極130-4の独立対向面131とが、第1仮想中心線101に対して線対称であり、第1独立電極130-1の独立対向面131と第2独立電極130-2の独立対向面131とが、第2仮想中心線102に対して線対称であり、第3独立電極130-3の独立対向面131と第4独立電極130-4の独立対向面131とが、第2仮想中心線102に対して線対称である。
【0094】
本実施形態によれば、複数の独立電極130の独立対向面131に対称性があるので、非対称な場合に比べて製造が容易であり、変位量の算出が容易となる。
【0095】
本実施形態において、各独立対向面131が、第1剪断方向に平行な2辺と第2剪断方向に平行な2辺とをもつ長方形であり、共通対向面141が、第1剪断方向に平行な2辺と第2剪断方向に平行な2辺とをもつ長方形である。
【0096】
本実施形態によれば、複数の独立電極130が長方形であるので、複雑な形状に比べて製造が容易であり、静電容量の算出が容易となる。
【0097】
本実施形態において、誘電体150が、複数の独立電極130と共通電極140との間を圧縮方向に満たす弾性体であり、共通電極140が誘電体150により、複数の独立電極130に対して初期位置から圧縮方向と剪断方向とに相対的に変位可能に支持される。
【0098】
本実施形態によれば、共通電極140を誘電体150とは別の材料で支持する場合に比べて構成が簡単となる。また、誘電体150が弾性体であるので、力を解除したときに共通電極140を自動的に元の位置に戻すことができる。
【0099】
本実施形態のセンサ100は、圧縮変位量と誘電体150の材料特性とに基づいて、共通電極140から誘電体150に対して圧縮方向に印加された圧縮力を算出する圧縮力算出部174と、圧縮変位量と第1剪断変位量と第2剪断変位量と誘電体150の材料特性とに基づいて、共通電極140から誘電体150に対して剪断方向に印加された剪断力を算出する剪断力算出部175と、を備える。
【0100】
本実施形態によれば、圧縮力と剪断力との算出において、共通した複数の独立電極130における静電容量を使用するので、圧縮力と剪断力との算出に別々の電極を用意する従来技術に比べて簡単な構造で、圧縮力と剪断力とを正確に検出可能である。また、従来と異なり、圧縮力を検出するための誘電体150と剪断力を検出するための誘電体150とを重ねる必要がないため、圧縮力と剪断力とを正確に区別することができる。
【0101】
本実施形態のセンサ100は、共通電極140が初期位置にあるときの静電容量に基づいて、誘電体150の誘電率を算出する誘電率算出部176と、誘電率と誘電体150の弾性率との関係を表す予め規定された関係情報165に基づいて、算出された誘電率から弾性率を算出する弾性率算出部177と、を備え、圧縮力の算出に使用される材料特性が、弾性率を含み、圧縮力算出部174が、算出された弾性率を使用して、圧縮力を算出する。
【0102】
本実施形態によれば、温度などによる誘電体150の弾性率の変化を考慮して、圧縮力を正確に検出可能である。
【0103】
本実施形態のセンサ100は、複数の独立電極130に対する共通電極140の移動範囲を制限するストッパ111を備え、誘電体150が、移動範囲内において弾性変形可能である。
【0104】
本実施形態によれば、誘電体150の塑性変形を防いで、正確な検出を維持することができる。
【0105】
本実施形態のセンサ100は、第1基板110と、第2基板120と、複数の独立電極130の各々に接続された複数の第1配線112と、共通電極140に接続された第2配線121と、を備え、複数の第1配線112の各々の少なくとも一部と、複数の独立電極130とが、第1基板110に固定され、第2配線121の少なくとも一部と、共通電極140とが、第2基板120に固定される。
【0106】
本実施形態によれば、複数の第1配線112と複数の独立電極130とが第1基板110に固定されるので、断線を防ぎやすい。また、第2配線121と共通電極140とが第2基板120に固定されるので、断線を防ぎやすい。
【0107】
本実施形態のセンサ100は、複数の独立電極130に対する共通電極140の移動範囲を制限するストッパ111と、ストッパ111が固定された第1基板110と、複数の独立電極130の各々に接続された複数の第1配線112と、第1基板110と共通電極140との間に延びた第2配線121と、を備え、誘電体150が、移動範囲内において弾性変形可能であり、複数の第1配線112の各々の少なくとも一部が、第1基板110に固定され、第2配線121の少なくとも一部が、ストッパ111に固定される。
【0108】
本実施形態によれば、第1配線112と第2配線121とが固定されるので断線を防ぎやすい。
【0109】
(第2実施形態)
図8は、本実施形態の共通電極240と4つの独立電極230と誘電体250との平面図である。
【0110】
各独立対向面231は概ね、共通の仮想中心点204をもつ扇形状である。独立対向面231は概ね、x方向とy方向とにより規定される90度の中心角をもつ。すなわち、4つの独立対向面231は、概ね1つの円を4等分したものである。共通対向面241は、円形である。共通電極240が初期位置にあるとき、z方向において、共通対向面241の中心点が、仮想中心点204に重なる。
【0111】
誘電体250は、z方向において4つの独立電極230のうちの共通電極240に対向する領域と、共通電極240との間を満たす弾性体である。誘電体250は概ね、z方向に延びた中心軸をもつ円柱である。z方向から見たとき、誘電体250は、全体的に共通電極240よりわずかに外側に広がっているが、4つの独立電極230全体の外形より小さい。
【0112】
第2仮想中心線202の両側における静電容量(CL、CR)の算出方法は、式(5)および式(6)とは異なる。しかし、数学的に第1仮想中心線201の両側において共通対向面241と独立対向面231とが対向する各面積は、x方向の変位量の関数であり、逆に、面積から変位量が算出される。従って、静電容量がわかれば面積がわかり、結果として変位量が算出される。y方向における変位量も同様である。x方向とy方向との変位量がわかれば、第1実施形態(図4)と同様に圧縮力と剪断力とが計算可能である。
【0113】
他の例において、第1実施形態と同様に、4つの独立電極230の外形に沿って4つの独立電極230を囲う円筒状のストッパが、共通電極240の移動範囲を制限する。
【0114】
(まとめ)
本実施形態において、各独立対向面231が、共通の仮想中心点204をもつ扇形状であり、共通対向面241が、円形であり、共通電極240が初期位置にあるとき、圧縮方向において、共通対向面241の中心点が、仮想中心点204に重なる。
【0115】
本実施形態によれば、複数の独立電極230が扇形状であるので、複雑な形状に比べて製造が容易であり、静電容量の算出が容易となる。また、初期位置から共通電極240を変位させる場合、いずれの方向においても、最大変位可能量を同じにすることができる。
【0116】
(第3実施形態)
図9は、本実施形態の共通電極340と4つの独立電極330と誘電体350との平面図である。共通電極340の形状の説明は、初期位置にあるときの位置関係に基づく。
【0117】
共通電極340の共通対向面341は、第1区画303-1に位置する第1湾曲縁部392-1と、第2区画303-2に位置する第2湾曲縁部392-2と、第3区画303-3に位置する第3湾曲縁部392-3と、第4区画303-4に位置する第4湾曲縁部392-4と(以下、区別せずに湾曲縁部392と呼ぶ場合がある)をもつ。湾曲縁部392は、x方向とy方向との間に規定される90度の中心角をもつ扇形状をもつ。4つの湾曲縁部392は概ね、1つの円を4等分して離間したものに等しい。湾曲縁部392は、圧縮方向に直交する平面内において外側に向けて凸状である。
【0118】
共通対向面341は、x方向に平行で第1区画303-1から第2区画303-2内に延びた第1縁部391-1と、y方向に平行で第1区画303-1から第3区画303-3内に延びた第2縁部391-2と、y方向に平行で第2区画303-2から第4区画303-4内に延びた第3縁部391-3と、x方向に平行で第3区画303-3から第4区画303-4内に延びた第4縁部391-4とをもつ。
【0119】
第1区画303-1において第1湾曲縁部392-1は、第1縁部391-1の一端と第2縁部391-2の一端とをつなぐ。第2区画303-2において第2湾曲縁部392-2は、第1縁部391-1の他端と第3縁部391-3の一端とをつなぐ。第3区画303-3において第3湾曲縁部392-3は、第2縁部391-2の他端と第4縁部391-4の一端とをつなぐ。第4区画303-4において第4湾曲縁部392-4は、第3縁部391-3の他端と第4縁部391-4の他端とをつなぐ。
【0120】
共通対向面341のうち第1区画303-1内の領域は、第1縁部391-1と湾曲縁部392とから第2剪断方向に第3区画303-3まで連続して広がる形状をもつ。共通対向面341のうち第1区画303-1内の領域は、第2縁部391-2と湾曲縁部392とから第1剪断方向に第2区画303-2まで連続して広がる形状をもつ。共通対向面341の全体が、第1仮想中心線301に対して線対称な形状であり、第2仮想中心線302に対して線対称な形状である。すなわち、共通対向面341は全体として、長方形の角を丸くした形状である。
【0121】
第1区画303-1に位置する第1独立電極330-1の第1独立対向面331-1は、第1縁部391-1に平行な第1外縁部393と、第2縁部391-2に平行な第2外縁部394と、湾曲外縁部395と、x方向に平行な第3外縁部396と、y方向に平行な第4外縁部397とをもつ。湾曲外縁部395は、第1外縁部393のx1側の一端と第2外縁部394のy2側の一端とをつなぐ。湾曲外縁部395は、x方向とy方向との間に規定される90度の中心角をもつ扇形状をもつ。湾曲外縁部395は、圧縮方向に直交する平面内において外側に向けて凸状である。
【0122】
第3外縁部396のx1側の一端は、第2外縁部394のy1側の一端に接続される。第4外縁部397のy2側の一端は、第1外縁部393のx2側の一端に接続される。第3外縁部396のx2側の一端は、第4外縁部397のy1側の一端に接続される。第3外縁部396と第4外縁部397との交点は、第1仮想中心線301と第2仮想中心線302との交点付近に位置する。
【0123】
第1独立対向面331-1は、第1外縁部393と湾曲外縁部395とからy方向において第3区画303-3に向けて第3外縁部396まで連続して広がる形状をもつ。第1独立対向面331-1は、第2外縁部394と湾曲外縁部395とからx方向において第2区画303-2に向けて第4外縁部397まで連続して広がる形状をもつ。第1独立電極330-1は全体として、長方形のうち、第1仮想中心線301と第2仮想中心線302との交点から最も遠い角に丸みをもたせた形状をもつ。
【0124】
4つの独立対向面331全体の外形は、長方形の角が丸みを帯びた形状をもつ。また、4つの独立対向面331は、第1仮想中心線301と第2仮想中心線302とに沿った十字状の細い絶縁領域によって区切られる。共通電極340が初期位置にあるとき、z方向において、湾曲縁部392の扇形状の仮想中心点が湾曲外縁部395の扇形状の仮想中心点に、点305で重なる。z方向から見たとき、共通対向面341の外形は、4つの独立対向面331全体の外形より小さい。
【0125】
共通電極340が初期位置にあるとき、y方向における第1外縁部393と第1縁部391-1との離間距離L1が、x方向における第2外縁部394と第2縁部391-2との離間距離L2と同じである。共通電極340が初期位置にあるとき、湾曲外縁部395の半径と湾曲縁部392の半径との差L3が、y方向における第1外縁部393と第1縁部391-1との離間距離L1と同じである。
【0126】
第1独立対向面331-1と第3独立対向面331-3とが、第1仮想中心線301に対して線対称である。第2独立対向面331-2と第4独立対向面331-4とが、第1仮想中心線301に対して線対称である。第1独立対向面331-1と第2独立対向面331-2とが、第2仮想中心線302に対して線対称である。第3独立対向面331-3と第4独立対向面331-4とが、第2仮想中心線302に対して線対称である。
【0127】
誘電体350は、z方向において4つの独立電極330のうちの共通電極340に対向する領域と、共通電極340との間を満たす弾性体である。誘電体350は概ね、z方向に延びた柱状体であり、xy平面に平行な断面は、概ね共通対向面341と相似である。z方向から見たとき、誘電体350は、全体的に共通電極340よりわずかに外側に広がっているが、4つの独立電極330全体の外形より小さい。
【0128】
第2仮想中心線302の両側における静電容量(CL、CR)の算出方法は、式(5)および式(6)とは異なる。しかし、数学的に第1仮想中心線301の両側において共通対向面341と独立対向面331とが対向する各面積は、x方向の変位量の関数であり、逆に、面積から変位量が算出される。従って、静電容量がわかれば面積がわかり、結果として変位量が算出される。y方向における変位量も同様である。x方向とy方向との変位量がわかれば、第1実施形態(図4)と同様に圧縮力と剪断力とが計算可能である。
【0129】
(まとめ)
本実施形態において、共通対向面341が、第1剪断方向に平行で第1区画303-1から第2区画303-2内に延びた第1縁部391-1と、第2剪断方向に平行で第1区画303-1から第3区画303-3内に延びた第2縁部391-2と、湾曲縁部392とをもち、共通電極340が初期位置にあるとき、湾曲縁部392が、第1区画303-1内に位置し、湾曲縁部392が、第1縁部391-1の一端と第2縁部391-2の一端とをつなぎ、湾曲縁部392が、第1剪断方向と第2剪断方向との間に規定される90度の中心角をもつ扇形状であり、湾曲縁部392が、圧縮方向に直交する平面内において外側に向けて凸状であり、共通電極340が初期位置にあるとき、共通対向面341のうち第1区画303-1内の領域が、第1縁部391-1と湾曲縁部392とから第2剪断方向に第3区画303-3まで連続して広がる形状をもち、共通電極340が初期位置にあるとき、共通対向面341のうち第1区画303-1内の領域が、第2縁部391-2と湾曲縁部392とから第1剪断方向に第2区画303-2まで連続して広がる形状をもち、第1独立電極330-1の独立対向面331が、第1縁部391-1に平行な第1外縁部393と、第2縁部391-2に平行な第2外縁部394と、湾曲外縁部395とをもち、湾曲外縁部395が、第1外縁部393の一端と第2外縁部394の一端とをつなぎ、湾曲外縁部395が、第1剪断方向と第2剪断方向との間に規定される90度の中心角をもつ扇形状であり、湾曲外縁部395が、圧縮方向に直交する平面内において外側に向けて凸状であり、第1独立電極330-1の独立対向面331が、第1外縁部393と湾曲外縁部395とから第2剪断方向において第3区画303-3に向けて連続して広がる形状をもち、第1独立電極330-1の独立対向面331が、第2外縁部394と湾曲外縁部395とから第1剪断方向において第2区画303-2に向けて連続して広がる形状をもち、共通電極340が初期位置にあるとき、圧縮方向において、湾曲縁部392の扇形状の仮想中心点が湾曲外縁部395の扇形状の仮想中心点に重なり、共通電極340が初期位置にあるとき、第2剪断方向における第1外縁部393と第1縁部391-1との離間距離が、第1剪断方向における第2外縁部394と第2縁部391-2との離間距離と同じであり、共通電極340が初期位置にあるとき、湾曲外縁部395の半径と湾曲縁部392の半径との差が、第2剪断方向における第1外縁部393と第1縁部391-1との離間距離と同じである。
【0130】
本実施形態によれば、初期位置から共通電極340を変位させる場合、いずれの方向においても、最大変位可能量を同じにすることができる。
【0131】
(第4実施形態)
図10は、本実施形態の共通電極440と3つの独立電極430と誘電体450との平面図である。第1実施形態(図4)と異なり、独立電極430は3つであり、回転対称に位置する。3つの独立電極430には、第1独立電極430-1と第2独立電極430-2と第3独立電極430-3とが含まれる。
【0132】
第1仮想線406-1と第2仮想線406-2と第3仮想線406-3とが120度間隔で反時計回りに規定される。第1仮想線406-1は、y方向に平行である。第2仮想線406-2と第3仮想線406-3との間に第1区画403-1が位置し、第3仮想線406-3と第1仮想線406-1との間に第2区画403-2が位置し、第1仮想線406-1と第2仮想線406-2との間に第3区画403-3が位置する。
【0133】
第1独立電極430-1は、全体が第1区画403-1内に位置する。第1独立電極430-1は、x方向に平行な第1縁部498-1と、第1縁部498-1のx2側の一端からy2方向に延びた第2縁部498-2と、第1縁部498-1のx1側の一端からy2方向に延びた第3縁部498-3と、第2仮想線406-2に平行な第4縁部498-4と、第3仮想線406-3に平行な第5縁部498-5とを含む。
【0134】
第2縁部498-2と第3縁部498-3とは同じ長さである。第4縁部498-4は、一端において、第2縁部498-2のy2側端部に接続する。第5縁部498-5は、一端において、第3縁部498-3のy2側端部に接続する。第4縁部498-4の他端と第5縁部498-5の他端とが接続される。第4縁部498-4と第5縁部498-5とは、同じ長さであり、120度の内角を規定する。
【0135】
第2区画403-2に位置する第2独立電極430-2は、第1独立電極430-1を時計回りに120度回転させた形状をもつ。第3区画403-3に位置する第3独立電極430-3は、第1独立電極430-1を反時計回りに120度回転させた形状をもつ。
第1独立電極430-1と第2独立電極430-2と第3独立電極430-3とは、120度の角度をなす頂点を互いに近接させて位置する。
【0136】
共通電極440および誘電体450の形状は、第1実施形態(図4)の共通電極140および誘電体150の形状と同様である。共通電極440が初期位置にあるとき、共通電極440の重心は、z方向において、第1仮想線406-1と第2仮想線406-2と第3仮想線406-3との交点に重なる。z方向から見たとき、共通電極440および誘電体450の外形は、3つの独立電極430の外形から外に出ない。
【0137】
(まとめ)
本実施形態によれば、圧縮方向に直交する3つの剪断方向における共通電極440の変位量を検出することができる。
【0138】
(第5実施形態)
図11は、本実施形態の共通電極540と4つの独立電極530と補助電極532の平面図である。本実施形態の共通電極540の形状は、第1実施形態(図4)の共通電極140の形状と同様である。
【0139】
本実施形態の各独立電極530は、第1実施形態(図4)の独立電極130のうち、第1仮想中心線101と第2仮想中心線102との交点に近い角が、長方形に切り取られた形状をもつ。図11に示すように、第1仮想中心線501と第2仮想中心線502との交点に重なるように、4つの独立電極530は、x方向に平行な2辺とy方向に平行な2辺に囲まれる空き領域534を規定する。空き領域534の面積は、共通対向面541の面積より小さい。
【0140】
補助電極532は、第1仮想中心線501と第2仮想中心線502との交点に重なるように、空き領域534内に位置する。補助電極532は、xy平面に平行に広がる薄膜平板状の金属である。補助電極532は、z1方向を向いた、z方向に直交して広がる補助対向面533をもつ。補助対向面533は、x方向に平行な2辺とy方向に平行な2辺とをもつ長方形である。独立対向面531と補助対向面533とは、同一の平面に沿って広がる。
【0141】
z方向から見たとき、補助対向面533の外形は、共通対向面541の全体の外形より小さい。補助対向面533の面積が、共通対向面541の面積より小さい。補助対向面533の全体が、z方向において共通対向面541に対向する。一例において、共通電極540の移動可能な範囲のうち少なくとも一部において、補助対向面533の全体が、z方向において共通対向面541に対向する。他の一例において、共通電極540の移動可能な範囲の全体において、補助対向面533の全体が、z方向において共通対向面541に対向する。
【0142】
図12は、独立電極530と共通電極540と補助電極532と制御装置560とを示すブロック図である。第1実施形態と異なり、検出回路561はさらに、補助電極532と共通電極540との間に電圧を印加したときの、補助電極532と共通電極540との間に蓄積される電荷量から補助電極532と共通電極540との間における静電容量C5を検出する。圧縮変位量算出部572は、第1実施形態で算出される圧縮変位量に加えて、または、第1実施形態で算出される圧縮変位量に代えて、C5に基づいて圧縮変位量を算出する。
【0143】
補助電極532は第1仮想中心線501によりy方向に2等分され、第2仮想中心線502によりx方向に2等分される。また、補助電極532と独立電極530との間隔は無視できる程度である。第1実施形態のCLとCRとに比べて、本実施形態のCLとCRとはそれぞれC5/2小さい。しかし、式(8)のように差分をとるとC5/2は相殺されるので、C5を利用せずに式(8)の第1項と第2項とからAが求まる。Bについても同様である。また、本実施形態では、式(7)の右辺がCAB+C5を表すことを利用して、式(9)および式(10)を書き換えることにより、剪断変位量の算出にC5を利用することもできる。
【0144】
(まとめ)
本実施形態のセンサは、補助電極532を備え、補助電極532が、圧縮方向に直交して広がる補助対向面533をもち、補助対向面533の面積が、共通対向面541の面積より小さく、補助対向面533の全体が、圧縮方向において共通対向面541に対向する。
【0145】
本実施形態によれば、補助対向面533の全体が圧縮方向において共通対向面541に対向するので、剪断方向の変位によらず、補助電極532と共通電極540との間の静電容量が一定となり、安定して圧縮方向の変位を検出することができる。
【0146】
本発明は上述した実施形態には限定されない。すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明は、静電容量により変位を検出する種々のセンサに適用可能である。
【符号の説明】
【0148】
100…センサ、101…第1仮想中心線、102…第2仮想中心線、
103…区画(103-1…第1区画~103-4…第4区画)、110…第1基板、
111…ストッパ、112…第1配線、120…第2基板、121…第2配線、
130…独立電極(130-1…第1独立電極~130-4…第4独立電極)、
131…独立対向面(131-1…第1独立対向面~131-4…第4独立対向面)、
140…共通電極、141…共通対向面、150…誘電体、160…制御装置、
161…検出回路、162…記憶装置、163…演算処理装置、
164…制御プログラム、165…関係情報、171…検出部、
172…圧縮変位量算出部、173…剪断変位量算出部、174…圧縮力算出部、
175…剪断力算出部、176…誘電率算出部、177…弾性率算出部、
204…仮想中心点、305…点、391-1…第1縁部、391-2…第2縁部、
391-3…第3縁部、391-4…第4縁部、
392…湾曲縁部(392-1…第1湾曲縁部~392-4…第4湾曲縁部)、
393…第1外縁部、394…第2外縁部、395…湾曲外縁部、
396…第3外縁部、397…第4外縁部、
403-1…第1区画、403-2…第2区画、403-3…第3区画、
406-1…第1仮想線、406-2…第2仮想線、406-3…第3仮想線、
430…独立電極(430-1…第1独立電極~430-3…第3独立電極)、
431…独立対向面(431-1…第1独立対向面~431-3…第3独立対向面)、
498-1…第1縁部、498-2…第2縁部、498-3…第3縁部、
498-4…第4縁部、498-5…第5縁部、
532…補助電極、533…補助対向面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12