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  • 特許-車両用の駆動装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】車両用の駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/02 20060101AFI20220322BHJP
   F16H 45/02 20060101ALI20220322BHJP
   B60K 17/12 20060101ALI20220322BHJP
   H02K 7/10 20060101ALI20220322BHJP
   H02K 7/104 20060101ALI20220322BHJP
   B60L 15/00 20060101ALI20220322BHJP
   B60L 7/28 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
B60K17/02 Z
F16H45/02 D
B60K17/12
H02K7/10 C
H02K7/104
B60L15/00 H
B60L7/28
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018061147
(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2019172007
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松岡 佳宏
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-85387(JP,A)
【文献】特開2007-60834(JP,A)
【文献】特開2011-231857(JP,A)
【文献】特開2004-156676(JP,A)
【文献】特開平5-24447(JP,A)
【文献】米国特許第5789823(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/02
F16H 45/02
B60K 17/12
H02K 7/10
H02K 7/104
B60L 15/00
B60L 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸に駆動力を伝達するための車両用の駆動装置であって、
内部空間を有する筐体と、
前記内部空間に配置され、前記筐体に固定される第1ステータと、前記第1ステータに対して回転可能に構成される第1ロータとを、有する電動機と、
前記内部空間に配置され、前記電動機の駆動力を前記出力軸に伝達するトルクコンバータと、
前記内部空間に配置され、前記第1ロータの回転を前記出力軸に選択的に伝達する回転伝達構造と、
を備え
前記トルクコンバータは、
前記第1ロータと一体回転可能に構成されるインペラと、前記出力軸に連結されるタービンと、前記筐体に対して回転可能な第2ステータとを、有し、
前記第1ロータが第1回転方向に回転する場合に、前記第1ロータの回転を前記出力軸に伝達し、
前記回転伝達構造は、前記第1ロータが前記第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転する場合に、前記第1ロータの回転を前記出力軸に伝達する、
車両用の駆動装置。
【請求項2】
前記内部空間に配置され、前記インペラと前記タービンとを一体回転可能に連結するロックアップ構造、
をさらに備える、
請求項に記載の車両用の駆動装置。
【請求項3】
前記内部空間に配置され、前記第1ロータの回転を制動可能に構成される制動部、
をさらに備え、
前記制動部は、前記筐体に固定される第3ステータと、前記第3ステータに対して回転可能且つ前記第1ロータと一体回転可能に構成される第2ロータとを、有する、
請求項1又は2に記載の車両用の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の駆動装置、特に、出力軸に駆動力を伝達するための車両用の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用の駆動装置は、例えば、モータジェネレーター(電動機)と、トルクコンバータとを、備えている(特許文献1を参照)。この車両用の駆動装置では、モータジェネレーター及びトルクコンバータは、車両において分散配置されている(特許文献1の図2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-231857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車両用の駆動装置では、駆動装置の各構成、例えばモータジェネレーター及びトルクコンバータが車両に分散配置されているので、駆動装置を車両に配置する場合に、各構成を個別に組み付ける必要がある。このため、駆動装置の組立性が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、車両に容易に組み付けることができる車両用の駆動装置を、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る車両用の駆動装置は、出力軸に駆動力を伝達するためのものである。車両用の駆動装置は、筐体と、電動機と、トルクコンバータとを、備える。筐体は、内部空間を有する。電動機は、内部空間に配置される。トルクコンバータは、内部空間に配置される。トルクコンバータは、電動機の駆動力を出力軸に伝達する。
【0007】
本車両用の駆動装置では、電動機及びトルクコンバータが、筐体の内部空間に配置される。これにより、車両用の駆動装置を、1ユニットとして車両に容易に組み付けることができる。
【0008】
本発明の他の側面に係る車両用の駆動装置では、電動機は、筐体に固定される第1ステータと、第1ステータに対して回転可能に構成される第1ロータとを、有することが好ましい。この場合、トルクコンバータは、第1ロータと一体回転可能に構成されるインペラと、出力軸に連結されるタービンと、筐体に対して回転可能な第2ステータとを、有する。
【0009】
このように構成しても、車両用の駆動装置を、1ユニットとして車両に容易に組み付けることができる。
【0010】
本発明の他の側面に係る車両用の駆動装置は、ロックアップ構造をさらに備えることが好ましい。ロックアップ構造は、内部空間に配置される。ロックアップ構造は、インペラとタービンとを一体回転可能に連結する。
【0011】
このようにロックアップ構造を構成しても、車両用の駆動装置を、1ユニットとして車両に容易に組み付けることができる。
【0012】
本発明の他の側面に係る車両用の駆動装置は、回転伝達構造をさらに備えることが好ましい。この場合、回転伝達構造は、内部空間に配置される。回転伝達構造は、第1ロータの回転を出力軸に選択的に伝達する。トルクコンバータは、第1ロータが第1回転方向に回転する場合に、第1ロータの回転を出力軸に伝達する。回転伝達構造は、第1ロータが第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転する場合に、第1ロータの回転を出力軸に伝達する。
【0013】
このように回転伝達構造を構成しても、車両用の駆動装置を、1ユニットとして車両に容易に組み付けることができる。
【0014】
本発明の他の側面に係る車両用の駆動装置は、制動部をさらに備えることが好ましい。この場合、制動部は、内部空間に配置される。制動部は、第1ロータの回転を制動する。制動部は、筐体に固定される第3ステータと、第3ステータに対して回転可能且つ第1ロータと一体回転可能に構成される第2ロータとを、有する。
【0015】
このように制動部を構成しても、車両用の駆動装置を、1ユニットとして車両に容易に組み付けることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、車両用の駆動装置において、車両に容易に組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る車両の全体構成を示す模式図。
図2】構成を説明するための駆動装置の断面図。
図3】油回路を説明するための駆動装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<全体概要>
図1は、本発明の車両用の駆動装置1が配置された車両の全体構成を示す模式図である。図1を用いて、駆動装置1に関係する構成について、簡単に説明する。
【0019】
図1に示すように、車両には、例えば、駆動装置1と、制御ユニット2と、バッテリユニット3とが、配置される。なお、ここでは、制御ユニット2及びバッテリユニット3が、駆動装置1に含まれない場合の例を示すが、制御ユニット2及びバッテリユニット3は駆動装置1に含まれていてもよい。
【0020】
駆動装置1は、駆動輪4を駆動するためのものである。駆動装置1は、車両本体(図示しない)に装着される。駆動装置1は、バッテリユニット3からの電力によって動作し、第1出力軸5(出力軸の一例)及び第2出力軸6を介して駆動輪4を駆動する。第1出力軸5には、第1ギア部7が設けられている。第2出力軸6には、第2ギア部8が設けられている。第2ギア部8は、第1ギア部7に噛み合う。第2出力軸6及び駆動輪4の間には、差動機構9が配置されている。
【0021】
この構成によって、駆動装置1から第1出力軸5に駆動力が伝達されると、この駆動力は、差動機構9を介して、第2出力軸6から駆動輪4の駆動軸へと伝達される。このようにして、駆動輪4は、駆動装置1によって駆動される。
【0022】
なお、上述した動力伝達経路は一例であって、他の出力軸やギア部をさらに用いて、駆動装置1の駆動力を駆動輪4に伝達してもよい。駆動装置1の詳細については、後述される。
【0023】
制御ユニット2は、駆動装置1及びバッテリユニット3を、制御する。制御ユニット2は、車両本体に装着される。制御ユニット2は、バッテリユニット3からの電力によって、動作する。
【0024】
バッテリユニット3は、駆動装置1及び制御ユニット2に電力を供給する。バッテリユニット3は、車両本体に装着される。バッテリユニット3は、外部電源によって充電可能である。また、バッテリユニット3は、駆動装置1において発生した電力を用いて、充電可能である。
【0025】
<駆動装置>
駆動装置1は、第1出力軸5に駆動力を伝達するためのものである。駆動装置1は、1つのユニットとして構成され、車両本体に装着される。図2に示すように、駆動装置1は、筐体10と、モータ13(電動機の一例)と、トルクコンバータ15とを、備える。駆動装置1は、回転伝達構造17を、さらに備える。駆動装置1は、ロックアップ構造19をさらに備える。駆動装置1は、リターダ20(制動部の一例)をさらに備える。
【0026】
ここでは、筐体10と、モータ13と、トルクコンバータ15と、油溜り部16と、回転伝達構造17と、ロックアップ構造19と、リターダ20とが、筐体10の内部に配置されることによって、筐体10は1つのユニットとして構成される。
【0027】
(筐体)
筐体10は、車両本体に取り付けられる。図1及び図2に示すように、筐体10は、内部空間Sを有する。筐体10は、油室Yと、油溜り部16とを、有する。詳細には、油室Yは、内部空間Sに形成される。油室Yは、第1油室Y1と、第2油室Y2とを、有する。
【0028】
第1油室Y1は、筐体10とトルコンケース25a,32(後述する)との間に設けられる。第2油室Y2は、トルコンケース25a,32の内部に設けられる。第2油室Y2は、メイン油室YMと、サブ油室YSとから、構成されている。
【0029】
メイン油室YMは、トルクコンバータ15の内部空間、例えばインペラ25、タービン27、及び第2ステータ29が作動する空間である。サブ油室YSは、メイン油室YMを除く空間、例えば、タービンシェル27a及びカバー部32の間の空間と、メイン油室YMの径方向外側の空間である。
【0030】
油溜り部16には、作動油が溜められる。油溜り部16は、油室Y(内部空間S)に作動油を供給可能に配置される。詳細には、油溜り部16は、第2油室Y2に作動油を供給可能なように、筐体10に設けられる。
【0031】
ここでは、油溜り部16は、トルクコンバータ15より径方向内側に配置される。油溜り部16は、トルクコンバータ15の作動によって、作動油を第2油室Y2に供給する。また、油溜り部16は、第1油室Y1からの作動油を受け取る。
【0032】
なお、本実施形態では、油溜り部16がトルクコンバータ15より径方向内側に配置される場合の例を示すが、油溜り部16は、油室Yと連結されていれば、他の場所に配置されてもよい。
【0033】
(モータ)
モータ13は、駆動装置1の駆動部である。図2に示すように、モータ13は、筐体10の内部空間Sに配置される。モータ13は、第1ステータ21と、第1ロータ22とを、有する。第1ステータ21は、筐体10に固定される。第1ステータ21には、コイル部21aが設けられている。
【0034】
第1ロータ22は、第1ステータ21に対して回転可能に構成される。第1ロータ22は、第1出力軸5に対して回転可能に支持されている。詳細には、第1ロータ22は、回転伝達構造17を介して、第1出力軸5に対して回転可能に支持されている。第1ロータ22は、位置決め部材34によって軸方向に位置決めされている。位置決め部材34は、第1ロータ22と一体回転可能なように第1ロータ22に取り付けられ、且つ第1出力軸5に対して回転可能なように第1出力軸5に支持されている。第1ロータ22には、N極及びS極が周方向に交互に配置された磁石部22aが、設けられている。
【0035】
第1ロータ22には、油路YR1(第2油路の一例)が形成されている。具体的には、油路YR1は、磁石部22a及び回転軸心Oの径方向間において、第1ロータ22に形成されている。ここでは、油路YR1は、回転軸心Oに沿って、軸方向に延びている。油路YR1は、油路YR3(後述する)に接続される。
【0036】
第1ステータ21のコイル部21aにバッテリユニット3から電流を供給し、コイル部21a及び磁石部22aの間に磁界を発生させることによって、第1ロータ22は、第1出力軸5の回転軸心まわりに第1ステータ21に対して回転する。第1ロータ22の回転は、バッテリユニット3からの電流を制御ユニット2によって制御することによって、制御される。
【0037】
(トルクコンバータ)
トルクコンバータ15は、モータ13の駆動力を第1出力軸5に伝達する。詳細には、トルクコンバータ15は、第1ロータ22が駆動方向R1(第1回転方向の一例;図1を参照)に回転する場合に、第1ロータ22の回転を第1出力軸5に伝達する。ここで、駆動方向R1は、車両を前進させるために第1ロータ22を回転させる方向である。
【0038】
図2に示すように、トルクコンバータ15は、筐体10の内部すなわち筐体10の内部空間Sに、配置される。
【0039】
トルクコンバータ15は、遠心力によって、作動油を油溜り部16から第2油室Y2へと案内する。また、トルクコンバータ15は、作動油を第2油室Y2から第1油室Y1へと供給する。
【0040】
トルクコンバータ15は、インペラ25と、タービン27と、第2ステータ29とを、有する。トルクコンバータ15は、作動油を介してインペラ25、タービン27、及び第2ステータ29を回転させることによって、インペラ25に入力されたトルクを、タービン27に伝達する。
【0041】
インペラ25は、第1ロータ22と一体回転可能に構成される。例えば、インペラ25例えばインペラシェル25aはカバー部32に固定されており、カバー部32は第1ロータ22に固定されている。インペラ25のインペラシェル25aと、第1ロータ22に固定されたカバー部32とによって、トルコンケース(ケース部の一例)が形成されている。トルコンケース25a,32は、第2油室Y2(メイン油室YM及びサブ油室YS)を、形成する。トルコンケース25a,32は、非磁性体である。
【0042】
トルコンケース25a,32、例えばカバー部32には、油路YR2(第1油路の一例)と、油路YR3とが、形成されている。油路YR2は、カバー部32の内面からカバー部32の外面に向けて、延びている。詳細には、油路YR2は、第1ステータ21のコイル部21aに向かって延びている。これにより、遠心力が作動油に作用すると、作動油が圧力調整弁18を介して油路YR2を通過し、第1油室Y1内のコイル部21aが冷却される。
【0043】
油路YR3は、カバー部32の内面からカバー部32の外面に向けて、延びている。詳細には、第1ロータ22に向かって延びている。より詳細には、油路YR3は、第1ロータ22の油路YR1に向けて延び、油路YR1に接続される。この接続によって、遠心力によって作動油が油溜り部16から油路YR1に流入すると磁石部22aが冷却され、その後、油路YR1の作動油は油路YR3を介して、サブ油室YSに流入する。
【0044】
タービン27は、第1出力軸5に連結される。ここでは、タービン27は、第1出力軸5と一体回転可能に連結される。タービン27のタービンシェル27aは、インペラシェル25aとカバー部32との間に配置される。第2ステータ29は、筐体10に対して回転可能に構成される。例えば、第2ステータ29は、ワンウェイクラッチ30を介して、筐体10に対して回転可能に配置される。
【0045】
トルクコンバータ15が作動すると、作動油が油溜り部16から第2油室Y2へと吸い上げられる。詳細には、トルクコンバータ15の作動によってインペラ25、タービン27、及び第2ステータ29が回転すると、作動油が油溜り部16からメイン油室YMへと吸い上げられる。すると、メイン油室YMの作動油は、インペラ25及びタービン27の間の隙間を通過し、遠心クラッチ31側からサブ油室YSへと移動する。
【0046】
また、トルクコンバータ15の作動時には、作動油が油溜り部16からサブ油室YSに吸い上げられる。この状態において、作動油は、圧力調整弁18が配置された油路YR2を介して、第2油室Y2(サブ油室YS)から第1油室Y1へと供給される。作動油が移動する経路の詳細、例えば油回路の詳細については、後述する。
【0047】
このように、トルクコンバータ15の作動によって、作動油は、油溜り部16、第2油室Y2、第1油室Y1の順に、案内される。すなわち、トルクコンバータ15はポンプとして機能し、作動油を筐体10の内部で移動させる。この作動油の移動によって、筐体10の内部空間Sに配置された各構成、例えばモータ13を、冷却することができる。
【0048】
(圧力調整弁)
トルコンケース25a,32(インペラシェル25a及びカバー部32)には、圧力調整弁18が設けられる。詳細には、圧力調整弁18が、トルコンケース25a,32例えばカバー部32に設けられた油路YR2に、配置されている。圧力調整弁18は、トルコンケース25a,32の内部の圧力に応じて、トルコンケース25a,32の内部からトルコンケース25a,32の外部への作動油の移動を、許可又は規制する。
【0049】
詳細には、トルコンケース25a,32の内部の圧力例えば第2油室Y2の圧力が、トルコンケース25a,32の外部の圧力例えば第1油室Y1の圧力より高い場合、圧力調整弁18は、油路YR2を開き、油路YR2における作動油の移動を許可する。
【0050】
一方で、トルコンケース25a,32の内部の圧力例えば第2油室Y2の圧力が、トルコンケース25a,32の外部の圧力例えば第1油室Y1の圧力より低い場合、圧力調整弁18は、油路YR2を閉ざし、油路YR2における作動油の移動を規制する。これにより、トルクコンバータ15が作動を停止した場合でも、トルクコンバータ15の内部、例えば第2油室Y2において、作動油を保持することができる。
【0051】
(回転伝達構造)
回転伝達構造17は、第1ロータ22の回転を第1出力軸5に選択的に伝達する。図2に示すように、回転伝達構造17は、筐体10の内部空間Sにおいて、第1ロータ22と第1出力軸5との間に配置される。例えば、回転伝達構造17は、ワンウェイクラッチ17a(クラッチ部の一例)を、有する。
【0052】
例えば、第1ロータ22が駆動方向R1に回転する場合には、ワンウェイクラッチ17aは、第1ロータ22の回転を第1出力軸5には伝達しない。一方で、第1ロータ22が反駆動方向R2(第2回転方向の一例;図1を参照)に回転する場合には、ワンウェイクラッチ17aは、第1ロータ22の回転を第1出力軸5に伝達する。ここで、反駆動方向R2は、駆動方向R1とは反対の回転方向である。
【0053】
(ロックアップ構造)
ロックアップ構造19は、筐体10の内部空間Sに配置される。ロックアップ構造19は、インペラ25とタービン27とを一体回転可能に連結する。
【0054】
ここでは、図2に示すように、ロックアップ構造19は、遠心クラッチ31を有している。遠心クラッチ31の遠心子31aは、タービン27例えばタービンシェル27aに、設けられる。詳細には、遠心クラッチ31を構成する複数の遠心子31aそれぞれは、周方向(回転方向)に間隔を隔てて配置され、径方向に移動可能且つタービンシェル27aと一体回転可能にタービンシェル27aに保持されている。
【0055】
複数の遠心子31aは、インペラシェル25aの径方向外側部25bに対向して配置されている。複数の遠心子31aそれぞれには、摩擦部材31bが設けられている。各遠心子31aの摩擦部材31bは、インペラシェル25aの径方向外側部25bと間隔を隔てて配置される。
【0056】
詳細には、複数の遠心子31aに遠心力が作用していない場合、又は複数の遠心子31aに作用する遠心力が所定の遠心力未満の場合、複数の遠心子31a(摩擦部材31b)はインペラシェル25aの径方向外側部25bと間隔を隔てて配置される。この状態が、クラッチオフ状態である。
【0057】
一方で、各遠心子31aの摩擦部材31bがインペラシェル25aの径方向外側部25bに当接した状態が、クラッチオン状態である。詳細には、複数の遠心子31aに作用する遠心力が所定の遠心力以上の場合、複数の遠心子31a(摩擦部材31b)はインペラシェル25aの径方向外側部25bに当接する。これにより、インペラ25とタービン27とが、一体回転可能に連結される。この状態が、クラッチオン状態である。
【0058】
(リターダ)
リターダ20は、第1ロータ22の回転を制動する。リターダ20は、電磁誘導を用いて制動力を発生する。図2に示すように、リターダ20は、筐体10に配置される。詳細には、リターダ20は、筐体10の内部空間Sに配置される。
【0059】
リターダ20は、第3ステータ35と、第2ロータ37とを、有する。第3ステータ35は、筐体10に固定される。第2ロータ37は、第3ステータ35に対して回転可能に構成される。また、第2ロータ37は、第1ロータ22と一体回転可能に構成される。
【0060】
ここでは、第2ロータ37は、インペラシェル25a(径方向外側部25b)に、固定されている。上述したように、インペラシェル25aは、カバー部32を介して、第1ロータ22と一体回転可能であるので、第2ロータ37は、インペラシェル25a及びカバー部32を介して、第1ロータ22と一体回転可能である。
【0061】
第3ステータ35にバッテリユニット3から電流を供給し、第3ステータ35及び第2ロータ37の磁石部の間に磁場が形成された状態において、第2ロータ37が第3ステータ35に対して回転すると、渦電流を発生する。この渦電流の発生によって、電気的な抵抗が、トルクの抵抗すなわち制動力となる。
【0062】
ここでは、バッテリユニット3から第3ステータ35への電流を制御ユニット2によって制御することによって、制動力は制御される。例えば、バッテリユニット3が満充電である場合(バッテリユニット3が充電不能の場合)、モータ13を回生ブレーキとして用いることが難しいので、リターダ20の制動力が用いられる。
【0063】
この場合、電流が、バッテリユニット3から第3ステータ35へと供給される。そして、第1ロータ22と一体回転する第2ロータ37が、第3ステータ35に対して回転すると、第2ロータ37の回転が制動される。すなわち、第2ロータ37の回転を制動することによって、第1ロータ22の回転が制動される。
【0064】
このようにリターダ20を作動させると、バッテリユニット3の充電量は減少する。これにより、バッテリユニット3が充電可能になると、リターダ20の作動を停止し、モータ13が回生ブレーキとして用いられる。
【0065】
モータ13が回生ブレーキとして用いられる場合は、バッテリユニット3からモータ13に対する電力供給が、停止される。すると、モータ13の第1ロータ22が、第1ステータ21に対して回転する。これにより、モータ13が、発電機及び制動部として機能する。これにより、バッテリユニット3が充電され、モータ13の第1ロータ22の回転が制動される
なお、バッテリユニット3が充電可能である場合、モータ13の制動力だけでなく、リターダ20の制動力も同時に用いてもよい。また、この場合、モータ13には制動力を発生させずに、リターダ20の制動力だけを用いてもよい。
【0066】
上述したバッテリユニット3の充電状態は、制御ユニット2によって監視されている。この状態において、例えば、制御ユニット2の命令に基づいてモータ13の駆動が停止された場合に、制御ユニット2は、上述したバッテリユニット3の充電状態に応じて、モータ13の制動力及び/又はリターダ20の制動力を用いるか否かを、判断する。
【0067】
(作動油の油回路)
図3に示すように、トルクコンバータ15が作動し作動油に遠心力が作用すると、まず、作動油は、油溜り部16から第2油室Y2(メイン油室YM及びサブ油室YS)に案内される。
【0068】
詳細には、作動油は、油溜り部16から、第1出力軸5の油路YR4、第1出力軸5及び筐体10の間の油路YR5を通過し、メイン油室YMの内部に到達する。メイン油室YMの作動油は、遠心クラッチ31側からサブ油室YSに移動可能である。
【0069】
また、作動油は、油溜り部16から、第1出力軸5及び第1ロータ22の間の油路YR6a,YR6b、カバー部32及びタービンシェル27aの間の油路YR7を通過し、サブ油室YSの内部に到達する。
【0070】
さらに、作動油は、油溜り部16から、第1出力軸5及び位置決め部材34の間の油路YR6b、第1ロータ22及び位置決め部材34の間の油路YR8、油路YR1、油路YR3を通過し、サブ油室YSの内部に到達する。このときに、第1ロータ22の磁石部22aが作動油によって冷却される。
【0071】
次に、遠心力が大きくなり、第2油室Y2(メイン油室YM及びサブ油室YS)の圧力が上昇すると、圧力調整弁18が開く。すると、作動油は、油路YR2を介して第2油室Y2から第1油室Y1へと案内される。これにより、第1ステータ21のコイル部21aが、作動油によって冷却される。
【0072】
なお、例えば、トルクコンバータ15が作動を停止し、第2油室Y2(メイン油室YM及びサブ油室YS)の圧力が低下すると、圧力調整弁18が閉じる。これにより、第2油室Y2から第1油室Y1への作動油の移動は停止し、第2油室Y2が圧力調整弁18によって密閉される。
【0073】
<まとめ>
上記のように駆動装置1を構成することによって、モータ13及びトルクコンバータ15が、筐体10の内部空間Sに配置される。これにより、駆動装置1を、1ユニットとして車両に容易に組み付けることができる。
【0074】
上記のように駆動装置1を構成することによって、油溜り部16、第2油室Y2、第1油室Y1の順に、作動油を案内することができる。このように、駆動装置1では、例えばポンプ及びポンプ用の制御装置を用意することなく、作動油を案内することができる。すなわち、駆動装置1では、簡単な構成で作動油を案内することができ、小型化を図ることができる。
【0075】
また、上記のように駆動装置1を構成することによって、モータ13及びリターダ20の少なくともいずれか一方によって、第1ロータ22の回転が制動される。このため、例えば、モータ13において第1ロータ22の回転が制動することが難しい場合には、リターダ20によって第1ロータ22の回転を制動することができる。このように、上記の駆動装置1では、第1ロータ22の回転、すなわちモータ13から出力される回転を、好適に制動することができる。
【0076】
また、上記のように駆動装置1を構成することによって、ロータ22が駆動方向R1に回転する場合、ロータ22の回転が、トルクコンバータ15を介して、第1出力軸5に伝達される。一方で、ロータ22が反駆動方向R2に回転する場合、ロータ22の回転が、回転伝達構造17例えばワンウェイクラッチ17aを介して、第1出力軸5に伝達される。すなわち、駆動装置1では、ロータ22の回転が、ロータ22の回転方向に応じて、トルクコンバータ15又は回転伝達構造17(ワンウェイクラッチ17a)によって、第1出力軸5に伝達される。これにより、モータ13の駆動力を第1出力軸5に好適に伝達することができる。
【0077】
〔他の実施形態〕
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0078】
(A)前記実施形態では、タービン27が第1出力軸5と一体回転可能に構成される場合の例を示した。これに代えて、タービン27が、駆動方向R1において第1出力軸5と一体回転可能に構成され、反駆動方向R2において第1出力軸5に対して回転可能に構成されてもよい。この構成は、例えば、ワンウェイクラッチをタービン27及び第1出力軸5の間に配置することによって、実現可能である。
【0079】
(B)前記実施形態では、ロックアップ構造19が遠心クラッチ31を有する場合の例を示したが、インペラ25及びタービン27の連結及び連結解除を上記のように行うことができれば、ロックアップ構造19は他の構造であってもよい。例えば、複数の遠心子31aそれぞれが、タービンシェル27aに揺動可能に保持されてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 駆動装置
5 第1出力軸
10 筐体
13 モータ
15 トルクコンバータ
7 回転伝達構造
17a ワンウェイクラッチ
118 遊星歯車機構
119 電磁クラッチ
16 油溜り部
18 逆流防止弁
19 ロックアップ構造
21 第1ステータ
22 第1ロータ
20 リターダ
35 第3ステータ
37 第2ロータ
Y 油室
Y1 第1油室
Y2 第2油室
YM メイン油室
YS サブ油室
図1
図2
図3