(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】精度管理用指標の生成方法、精度管理用指標の生成装置、検体分析装置、精度管理データ生成システム及び精度管理データ生成システムの構築方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20220322BHJP
【FI】
G01N35/00 F
G01N35/00 A
(21)【出願番号】P 2018066070
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2020-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芦田 衛
(72)【発明者】
【氏名】大東 元就
(72)【発明者】
【氏名】記野 史子
(72)【発明者】
【氏名】吉本 倫子
(72)【発明者】
【氏名】関 あかね
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 一博
(72)【発明者】
【氏名】平野 秀樹
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-187473(JP,A)
【文献】特開2018-025529(JP,A)
【文献】特表2012-519280(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0021368(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00 - 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体分析装置の分析精度を管理するための指標を生成する生成方法であって、
同一の検査項目について、検体が陽性であるか又は陰性であるかに関する判定結果を複数の
同種の検体分析装置から取得する工程と、
前記複数の
同種の検体分析装置から取得した複数の判定結果から、前記複数の
同種の検体分析装置により陽性又は陰性と判定された検体の割合
を信頼区間の推定式に適用し、前記分析精度を管理するための指標を生成する工程と、
を含む、生成方法。
【請求項2】
検体分析装置の分析精度を管理するための精度管理データの生成方法であって、
同一の検査項目について、検体が陽性であるか又は陰性であるかに関する判定結果を複数の
同種の検体分析装置から取得する工程と、
前記複数の
同種の検体分析装置から取得した複数の判定結果から、前記複数の
同種の検体分析装置により陽性又は陰性と判定された検体の割合
を信頼区間の推定式に適用して得られる精度管理用の指標を生成する工程と、
分析精度の管理対象の検体分析装置により陽性又は陰性と判定された検体の割合と、前記指標とを含み、前記管理対象の検体分析装置について得られた前記割合と、前記指標と
を比較可能な
前記精度管理データを生成する工程と、
を含む、生成方法。
【請求項3】
前記割合が陽性率である、請求項1又は2に記載の生成方法。
【請求項4】
前記割合が陰性率である、請求項1又は2に記載の生成方法。
【請求項5】
前記精度管理データは、前記管理対象の検体分析装置
について得られた前記割合を前記指標と共に示
すデータ
である、請求項2に記載の生成方法。
【請求項6】
前記複数の
同種の検体分析装置が同一施設に設置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の生成方法。
【請求項7】
前記複数の
同種の検体分析装置が複数の施設に設置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の生成方法。
【請求項8】
前記管理対象の検体分析装置から得られる前記割合が、所定の検体数毎に算出される、請求項2に記載の生成方法。
【請求項9】
さらに、試薬のロットに関する情報を取得する工程を含み、
前記管理対象の検体分析装置から得られる前記割合が試薬のロット毎に算出される、請求項2に記載の生成方法。
【請求項10】
前記指標は、前記検体の測定データを取得する試薬のロットが変わる毎に更新される、請求項9に記載の生成方法。
【請求項11】
前記指標は、患者の治療方法が変わる毎に更新される、請求項1から10に記載のいずれか一項に記載の生成方法。
【請求項12】
前記指標は、前記指標を生成する時点までの累積検体数によって変動する、請求項1から11に記載のいずれか一項に記載の生成方法。
【請求項13】
前記指標は、前記指標を生成する時点までに前記複数の
同種の検体分析装置から取得した前記割合の平均値に基づいて算出される、請求項1から12に記載のいずれか一項に記載の生成方法。
【請求項14】
前記指標が信頼区間の上限値及び下限値より選択される少なくとも一つである、請求項1から13に記載のいずれか一項に記載の生成方法。
【請求項15】
前記指標が99.7%信頼区間の上限値及び下限値より選択される少なくとも一つである、請求項14に記載のいずれか一項に記載の生成方法。
【請求項16】
前記判定結果が、複数の検査項目について取得され、前記割合が検査項目毎に取得される、請求項1から15に記載のいずれか一項に記載の生成方法。
【請求項17】
前記精度管理データが画面に表示される、請求項2に記載の生成方法。
【請求項18】
前記精度管理データが時系列で画面に表示される、請求項17に記載の生成方法。
【請求項19】
前記精度管理データが、前記管理対象の検体分析装置が標準試料から取得した測定データを含む、請求項17又は18に記載の生成方法。
【請求項20】
前記検体分析装置が腫瘍に関する分析を行うよう構成されている、請求項1から19に記載のいずれか一項に記載の生成方法。
【請求項21】
前記検体分析装置ががんの転移に関する分析を行うよう構成されている、請求項20に記載の生成方法。
【請求項22】
前記検体がリンパ節組織である、請求項21に記載の生成方法。
【請求項23】
さらに、所定のグループの識別情報を取得する工程を含み、
前記割合が、所定のグループ毎に算出される、請求項1から22のいずれか一項に記載の生成方法。
【請求項24】
前記所定のグループが、検体分析装置が設置されている施設毎に設定される、請求項23に記載の生成方法。
【請求項25】
前記精度管理データが、前記管理対象の検体分析装置
について得られた前記割合と前記指標とを時系列のグラフで示
すデータである、請求項2に記載の生成方法。
【請求項26】
前記指標の生成に用いられる判定結果の数が250より多い、請求項1から25のいずれか一項に記載の生成方法。
【請求項27】
同一の検査項目について、検体が陽性であるか又は陰性であるかに関する判定結果を複数の同種の検体分析装置から取得する工程と、
前記複数の同種の検体分析装置から取得した複数の判定結果から、前記複数の同種の検体分析装置により陽性又は陰性と判定された検体の割合を信頼区間の推定式に適用し、分析精度を管理するための指標を生成する工程と、
管理対象の検体分析装置について得られた割合が前記指標によって示される範囲から逸脱した場合に、分析精度が低下したと判定し、及び/又は
管理対象の検体分析装置について得られた割合が前記指標によって示される範囲にある場合に、分析精度が維持されていると判定する工程を備える、精度管理方法。
【請求項28】
検体分析装置の分析精度を管理するための指標の生成装置であって、
同一の検査項目について、検体が陽性であるか又は陰性であるかに関する判定結果を複数の
同種の検体分析装置から取得する通信部と、
前記通信部により前記複数の
同種の検体分析装置から取得された複数の判定結果から、前記複数の
同種の検体分析装置により陽性又は陰性と判定された検体の割合
を信頼区間の推定式に適用し、前記分析精度を管理するための指標を生成する処理部と、
を備える、生成装置。
【請求項29】
検体分析装置の分析精度を管理するための精度管理データの生成装置であって、
同一の検査項目について、検体が陽性であるか又は陰性であるかに関する判定結果を複数の同種の検体分析装置から取得する通信部と、
前記複数の同種の検体分析装置から取得した複数の判定結果から、前記複数の同種の検体分析装置により陽性又は陰性と判定された検体の割合を信頼区間の推定式に適用して得られる精度管理用の指標を生成し、
分析精度の管理対象の検体分析装置により陽性又は陰性と判定された検体の割合と、前記指標とを含み、前記管理対象の検体分析装置について得られた前記割合と、前記指標とを比較可能な前記精度管理データを生成する処理部と、
を備える、生成装置。
【請求項30】
請求項28又は29に記載の生成装置と、前記生成装置に接続された複数の
同種の検体分析装置とを備える、精度管理データの生成システム。
【請求項31】
請求項28又は29に記載の生成装置を準備する工程と、前記生成装置に接続した複数の
同種の検体分析装置を準備する工程と、を備える、精度管理データの生成システムの構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、精度管理用指標の生成方法、精度管理用指標の生成装置、検体分析装置、精度管理データ生成システム及び精度管理データ生成システムの構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ユーザ施設に設置される検体分析装置であって、電源が投入されるとスタンバイ状態に移行する測定ユニットを有し、電源が投入されて前記測定ユニットがスタンバイ状態に移行するイベントを含む所定のイベントが発生すると、報告データを管理装置へ自動的に送信する検体分析装置を含む、検体分析システムが開示されている。前記イベントには、患者検体の測定に関連するイベント、精度管理又は検量線作成のための標準検体の測定に関連するイベント、及び精度管理結果又は作成された検量線の承認に関連するイベントが含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシステムでは、検体分析装置から、管理装置に精度管理結果又は作成された検量線のデータが送信される。しかし、これらのデータは人工的に調製された陽性コントロール、陰性コントロール、キャリブレータ等の標準試料を測定して得られたデータであることが一般的である。標準試料は、厳密に被検体から採取された検体とは含有成分等が異なるため、厳密に検体を用いた場合の測定精度を反映することを保証することは困難である。万が一、標準試料を用いた場合と検体を用いた場合とで、測定条件が変化した場合、このような現象を特許文献1に記載の検体分析システムで検出することは困難である。このような現象を精度管理で検出するためには、精度管理が行われる検体分析装置で測定した検体の測定データに基づいて精度管理を行うことが必要となる。
【0005】
したがって、本明細書には、検体の測定データに基づいて検体分析装置の精度管理を行うための精度管理データを生成することを一課題として開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の実施形態は、検体分析装置の分析精度を管理するための指標を生成する生成方法に関する。前記生成方法は、検体が陽性であるか又は陰性であるかに関する判定結果を複数の検体分析装置から取得する工程と、前記複数の検体分析装置から取得した複数の判定結果から、前記複数の検体分析装置により陽性又は陰性と判定された検体の割合に基づく前記指標を生成する工程とを含む、を含む。本実施形態によれば、検体の測定データに基づいて精度管理を行うため指標の生成を行うことができる。
本開示の第2の実施形態は、検体分析装置の分析精度を管理するための精度管理データの生成方法に関する。前記生成方法は、検体が陽性であるか又は陰性であるかに関する判定結果を複数の検体分析装置から取得する工程と、前記複数の検体分析装置から取得した複数の判定結果から、前記複数の検体分析装置により陽性又は陰性と判定された検体の割合に基づく精度管理用の指標を生成する工程と、分析精度の管理対象の検体分析装置により陽性又は陰性と判定された検体の割合を前記指標と比較可能な精度管理データを生成する工程とを含む。本実施形態によれば、前記割合を前記指標と比較可能な精度管理データことができる。
本開示の第3の実施形態は、検体分析装置(2000)の分析精度を管理するための指標の生成装置(3000)に関する。生成装置(3000)は、検体が陽性であるか又は陰性であるかに関する判定結果を複数の検体分析装置から取得する通信部(710g)と、前記通信部により前記複数の検体分析装置から取得された複数の判定結果から、前記複数の検体分析装置により陽性又は陰性と判定された検体の割合に基づく前記指標を生成する処理部(710a)と、を備える。好ましくは、処理部(710a)は、分析精度の管理対象の検体分析装置(2000)により陽性又は陰性と判定された検体の割合を前記指標と比較可能な精度管理データ(4050)を生成する。
本開示の第4の実施形態は、生成装置(3000)と生成装置(3000)に接続された複数の検体分析装置とを備える、精度管理データの生成システム(7000)に関する。
本開示の第5の実施形態は、生成装置(3000)を準備する工程と、生成装置に接続した複数の検体分析装置(2000)を準備する工程とを備える、精度管理データの生成システム(7000)の構築方法に関する。
第1から第5の実施形態において、好ましくは、前記割合は陽性率及び/又は陰性率である。陽性率及び/又は陰性率とすることにより、前記検体の測定データが反映する病変の有無によって精度管理データの生成を行うことができる。さらに、第1から第5の実施形態において、前記精度管理データは、前記管理対象の検体分析装置から得られた前記割合を前記指標と共に示すためのデータを含む。このようにすることで、検体の測定データに基づいて精度管理データの生成を行うことができる。前記複数の検体分析装置が同一施設に設置されていても、複数の施設に設置されていてもよい。同一施設について判定結果を収集することにより、内部精度管理用のデータの生成が可能となる。また、複数の施設について判定結果を収集することにより、外部精度管理のデータの生成が可能となる。
【0007】
第1から第5の実施形態において、好ましくは、管理対象の検体分析装置から得られる前記割合は、所定の検体数毎に算出される。このようにすることで試薬のロット等の影響を受けずに精度管理を行うことができる。
【0008】
さらに、第1から第5の実施形態は、好ましくは、試薬のロットに関する情報を取得する工程を含み、前記管理対象の検体分析装置から得られる前記割合が試薬のロット毎に算出される。また、前記指標は、前記検体の測定データを取得する試薬のロットが変わる毎に更新される、このようにすることで、試薬のロットの違いによる精度を評価するためのデータの生成を行うことができる。
【0009】
第1から第5の実施形態は、好ましくは、前記患者の治療方法が変わる毎に更新される。このようにすることで、治療方法の変更に伴う病変の有無の割合の変化にも対応することができる。
【0010】
第1から第5の実施形態において、好ましくは、指標は、前記指標を生成する時点までの累積検体数によって変動する。このようにすることで、指標の適正を高めることができる。
【0011】
第1から第5の実施形態において、好ましくは、指標は、前記指標を生成する時点までに前記複数の検体分析装置から取得した前記割合の平均値に基づいて算出される。好ましくは、前記指標が信頼区間の上限値及び下限値より選択される少なくとも一つであり、好ましくは、前記指標が99.7%信頼区間の上限値及び下限値より選択される少なくとも一つである。このようにすることで、指標の適正を高めることができる。
【0012】
第1から第5の実施形態において、好ましくは、判定結果は、複数の検査項目について取得され、前記割合が検査項目毎に取得される。このようにすることで、検査項目毎に検体の測定データに基づく精度管理データの生成が可能となる。
【0013】
第1から第5の実施形態において、好ましくは、精度管理データは画面に表示される。好ましくは、前記精度管理データは時系列で画面に表示される。このようにすることで、オペレータに一目で精度を評価させることができる。
【0014】
第1から第5の実施形態において、前記精度管理データは、前記管理対象の検体分析装置が標準試料から取得した測定データをふくむ。このようにすることで、万が一精度管理不良と評価された場合に、その原因の追及がしやすくなる。
【0015】
第1から第5の実施形態において、好ましくは、前記検体分析装置が腫瘍に関する分析を行うよう構成されている。より好ましくは、前記検体分析装置ががんの転移に関する分析を行うよう構成されている。より好ましくは、前記検体がリンパ節組織である。このようにすることで、判定結果に高い信頼性が求められる腫瘍に関連する検査項目について、精度管理のデータの生成が可能となる。
【0016】
第1から第5の実施形態は、好ましくは、さらに、所定のグループの識別情報を取得する工程を含み、前記割合が、所定のグループ毎に算出される。好ましくは、前記所定のグループが、検体分析装置毎、又は検体分析装置が設置されている施設毎に設定される。このようにすることで、所定のグループ内での精度管理データの生成が可能となる。
【0017】
第1から第5の実施形態において、精度管理データは、好ましくは前記管理対象の検体分析装置から得られた前記割合と前記指標とを時系列のグラフで示すためのユーザインターフェースデータである。このようにすることで、ユーザビリティを高めることができる。
【0018】
本開示のある実施形態は、前記指標に基づいて、管理対象の検体分析装置の分析精度を評価する工程を備える、検体分析装置の分析精度を管理するための精度管理方法に関する。好ましくは、前記管理対象の検体分析装置の分析精度を評価する工程において、前記管理対象の検体分析装置から得られた前記割合が、前記指標によって示される範囲から逸脱した場合に、分析精度が低下したと判定される。このようにすることで、検体分析装置の精度管理が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
検体の測定データに基づいて精度管理を行うための精度管理データの生成を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】精度管理データの生成システムの構成の例を示すブロック図である。
【
図4】精度管理データの生成システムの構成の例を示す概略図である。
【
図6】測定ユニットの構成の例を示す平面図である。
【
図7】データ処理ユニットのハードウェア構成の例を示すブロック図である。
【
図8】濁度の立ち上がり時間の例を示すグラフである。
【
図10】キャリブレータ-コントロールデータベース4100の例を示す図である。
【
図11】判定結果データベース4010DBの例を示す図である。
【
図12】検体処理装置動作データベース4040の例を示す図である。
【
図13】施設毎に作成された精度管理情報データベース4050DBの例を示す図である。
【
図14】精度管理用指標の生成装置のハードウェア構成の例を示すブロック図である。
【
図15】検体分析装置とサーバの動作を示すフローチャートである。
【
図16】検体分析装置における判定処理のステップを示すフローチャートである。
【
図17】精度管理用指標の生成装置における割合算出処理のステップを示すフローチャートである。
【
図18】出力データを表示するための画面にログインするための画面の例示である。
【
図20】出力データを1つの領域に示す場合の例示である。
【
図21】1つの領域に示される情報の表示例である。
【
図22】1つの領域に示される情報の表示例である。
【
図23】1つの領域に示される情報の表示例である。
【
図24】1つの領域に示される情報の表示例である。
【
図25】1つの領域に示される情報の表示例である。
【
図26】1つの領域に示される情報の表示例である。
【
図27】1つの領域に示される情報の表示例である。
【
図28】1つの領域に示される情報の表示例である。
【
図29】1つの領域に示される情報の表示例である。
【
図30】1つの領域に示される情報の表示例である。
【
図31】1つの領域に示される情報の表示例である。
【
図32】1つの領域に示される情報の表示例である。
【
図33】各施設の陽性率を時系列で示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.精度管理用指標及び精度管理データの生成方法
はじめに、
図1に示す例を用いて本開示の第1の実施形態である精度用指標の生成方法の概要を説明する。第1の実施形態は、臨床検査室、臨床検査センター等に設置される検体分析装置2000の分析精度をモニタリングするための精度管理用指標の生成方法に関する。
【0022】
1つ又は複数の検体分析装置2000は、サービスセンタ等の管理施設に設置されている検体分析装置の分析精度を管理するための指標の生成装置3000(以下、単に「生成装置3000」とも呼ぶ)にネットワークを介して通信可能に接続される。この接続は、サーバ4000を介していてもよい。
【0023】
検体分析装置2000では、検体分析装置2000が測定した測定データに基づいてヒト(例えば、患者)の体内に病変が陽性であるかを検体毎に判定した判定結果4010、検査項目について管理対象の検体分析装置の分析精度をモニタリングするため標準試料(陽性コントロール、陰性コントロール、キャリブレータ等)を前記検体分析装置が測定することによって取得した、キャリブレーションデータ4020(キャリブレータの測定データ及びその濁度の立ち上がり時間、前記測定データから作成された検量線の傾き等の検量線データ等を含む)、陽性コントロールデータ及び/又は陰性コントロールデータを含むコントロールデータ4030(定量データ及び濁度の立ち上がり時間を含む。)、検体処理装置2000の動作データ4040(単に「動作データ4040」と呼ぶこともある)等が取得される。これらのデータは、直接、又はサーバ4000を介して生成装置3000に送信される。
【0024】
生成装置3000は、判定結果4010、キャリブレーションデータ4020、コントロールデータ4030、及び動作データ4040を、直接、又はサーバ4000を介して検体分析装置2000から取得することができる。
例えば、以下のステップにしたがって精度管理データの生成が作成される。
【0025】
ステップS1において、検体が陽性であるか又は陰性であるか、例えば病変がどの程度陽性であるかに関する判定結果4010が複数の検体分析装置2000について取得される。ステップS2において、はじめに、取得した判定結果に基づいて、複数の検体分析装置から取得した複数の判定結果から、分析精度の管理対象の検体分析装置複数の検体分析装置により陽性又は陰性と判定された検体の割合が算出される。そして前記割合に基づいて精度管理用の指標が生成される。好ましくは、前記管理対象の検体分析装置から得られた前記割合を、前記指標と比較可能に示すための精度管理データ4050(出力データ)が生成される。
【0026】
前記出力データは、ユーザインターフェースデータであり、例えば画面等の出力部720にウェブブラウザ等を介して出力され、管理施設のオペレータ(管理者)等が閲覧可能となる。ユーザインターフェースデータは、前記割合と前記指標とを時系列のグラフで示すものであることが好ましい。
【0027】
図1は、生成装置3000を用いて、精度管理データ4050を生成する方法を例示するが、精度管理データ4050の生成は、一部、又は全部をオペレータがおこなってもよい。
【0028】
図2に示すように、従来は精度管理情報として、人工的に調製された陽性コントロール、陰性コントロール、キャリブレータ等の標準試料を測定して得られた測定データ等を使用していた。これに対して本開示は、検体の測定データに基づいて精度管理を行うため、検体の測定データに基づいて取得された判定結果を精度管理に用いる。このようにすることで、検体そのものの測定について正確な測定ができているかどうかを評価することができる。
【0029】
本開示において、ヒトの検体に替えて哺乳動物の検体を用いてもよい。哺乳動物として好ましくは、サル、イヌ、ネコ、ウサギ等である。
【0030】
検体は、被検体から採取されうるものである限り制限されない。検体として、組織、細胞、血清、血漿、尿、髄液、腹水、胸水、唾液、胃液、膵液、胆汁、乳汁、間質液等を挙げることができる。
【0031】
検査項目は、病変を検出するための検査である限り制限されない。病変として、虚血性疾患(特に心臓、脳、肺、大腸等);アレルギー性気管支炎、糸球体腎炎等のアレルギー性疾患;認知症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、重症筋無力症、等の変性疾患(神経、骨格筋等);急性腎疾患、慢性腎疾患等の腎疾患;腫瘍(良性上皮性腫瘍、良性非上皮性腫瘍、悪性上皮性腫瘍、悪性非上皮性腫瘍);代謝性疾患(糖尿病等の糖質代謝異常、脂質代謝異常、電解質異常);感染症(細菌、ウイルス、リケッチア、クラミジア、真菌等、原虫、寄生虫等)等が挙げられる。病変として、より好ましくは心臓又は脳の虚血性疾患;アルツハイマー型(若年性)認知症及び脳血管性認知症を含む神経変性疾患;慢性腎疾患等の腎疾患;悪性上皮性又は悪性非上皮性腫瘍;糖尿病、脂肪肝、肥満等の代謝性疾患が挙げられる。病変として、特に好ましくは悪性腫瘍であり、悪性腫瘍として、例えば、気管、気管支又は肺等から発生する呼吸器系悪性腫瘍(扁平上皮肺がん、小細胞肺がん、大細胞肺がん、腺がん等の肺がんを含む);上咽頭、食道、胃、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、虫垂、上行結腸、横行結腸、S状結腸、直腸又は肛門部等から発生する消化管系悪性腫瘍;肝臓がん;膵臓がん;膀胱、尿管又は腎臓から発生する泌尿器系悪性腫瘍;卵巣、卵管及び子宮等から発生する女性生殖器系悪性腫瘍;乳がん;前立腺がん;皮膚がん;視床下部、下垂体、甲状腺、副甲状腺、副腎等の内分泌系悪性腫瘍;中枢神経系悪性腫瘍;骨軟部組織から発生する悪性腫瘍等の固形腫瘍が挙げられる。悪性腫瘍として、より好ましくは、肺がん(扁平上皮がん、小細胞がん、大細胞がん、腺がん)等の呼吸器系上皮性悪性腫瘍;胃がん、十二指腸がん、大腸がん(S状結腸がん、直腸がん等)等の消化管系上皮性悪性腫瘍;肝臓がん;膵臓がん;膀胱がん;甲状腺がん;卵巣がん;乳がん;前立腺がんを挙げることができる。最も好ましくは、乳がん、大腸がん、胃がん、非小細胞肺がんである。
【0032】
前記腫瘍には、転移性がんも含まれる。がんの転移先としては、リンパ組織、腹腔、胸腔、骨髄、髄膜、肝臓、肺等を挙げることができる。
【0033】
例えば、検査項目は、測定原理によって分類されてもよい。測定原理として、特定のDNA配列の有無やmRNAの発現量を測定する核酸検出法、タンパク質を定性又は定量するための免疫学的測定法、酵素活性や化合物の量を検出する生化学的測定法等を挙げることができる。核酸検出法では、例えばがん遺伝子の発現量等を、RT-LAMP(Reverse Transcription-Loop-mediated Isothermal Amplification)法、定量RT-PCR法、マイクロアレイ法、RNA-Seq法等で測定することができる。また、核酸検出法では、PCR法やシーケンシング法等により、例えばEGFR(epidermal growth factor receptor)遺伝子等の異常(変異等)を検出することができる。この他にも、電気抵抗方式及びフローサイトメトリによる血液検体中の血球数法、血液凝固能測定法、尿検体中の酵素活性や化合物の量を検出する尿定性法、尿検体中の有形成分を検出する尿中有形成分分析法等が検査項目に含まれてもよい。
【0034】
免疫学的測定法では、腫瘍マーカー等を、ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)法で測定することができる。
【0035】
本開示における生成方法が適用される最も好ましい検査項目は、リンパ組織へのがん転移を測定するCK19 mRNAの発現量である。
【0036】
前記判定結果の生成方法については、後述する検体分析装置の項で説明する。
【0037】
前記複数の検体分析装置から取得した複数の判定結果から、前記複数の検体分析装置により陽性又は陰性と判定された検体の割合は、例えば複数の検体分析装置から取得された判定結果から病変が陽性と判定された割合、及び/又病変が陰性と判定された割合である。前記複数の検体分析装置は、同一施設に設置されていても、異なる複数の施設に設置されていてもよい。
【0038】
前記割合は、例えば、陽性率及び/又は陰性率である。したがって、前記複数の検体分析装置の具体的な数は、割合を求めることができる限り制限されず、少なくとも2である。好ましくは、複数とは5以上、10以上、20以上、50以上、又は100以上である。
【0039】
例えば、生成装置3000が取得した全ての判定結果を母集団として前記割合を算出してもよい。例えば、前記割合は、所定のグループを母集団として母集団毎に算出してもよい。所定のグループとしては、試薬のロット毎、所定の検体数毎、検体分析装置毎、検体分析装置が設置されている施設毎、機種毎、国や県等の地域毎及び検査担当者毎よりなる群から選択される少なくとも一つのグループを挙げることができる。試薬のロット毎に前記割合を算出する場合には、本実施形態は、検体分析装置2000から試薬のロットに関する情報を取得する工程を含むことができる。
【0040】
分析精度の管理対象の検体分析装置により陽性又は陰性と判定された検体の割合は、前記指標と共に精度管理の情報として使用される。前記精度管理の情報は、前記割合と前記指標と比較可能な精度管理データとして生成される。
【0041】
前記指標は、前記割合を使って精度管理ができる値である限り制限されない。前記指標は、複数の判定結果から統計処理により算出された値であることが好ましい。より好ましくは、前記検体の測定前に収集された複数の判定結果から統計処理により算出された値であることが好ましい。前記指標は、前記割合が算出される際には、既に算出されていることが好ましい。前記指標は、前記指標を生成する時点までの累積検体数によって変動しうる。前記指標は、例えば試薬のロット等が変更された場合、更新されうる。前記指標は、被検体の治療方法が変更された際に、更新されうる。前記複数の判定結果は、同一施設に由来するものであっても、複数の施設に由来するものであってもよい。例えば、指標として、それぞれ信頼区間の上限値及び下限値より選択される少なくとも一つを挙げることができる。また、指標として、母集団における前記割合の平均値、標準偏差、分散等を考慮して求められる値を使用してもよい。例えば、前記指標は、前記指標を生成する時点までに前記複数の検体分析装置から取得した前記割合の平均値であってもよい。好ましくは、指標として信頼区間の上限値及び下限値の両方を使用することができる。信頼区間として好ましくは、99.7%信頼区間、99%信頼区間、95.4%信頼区間、95%信頼区間、又は68.3%信頼区間を上げることができる。より好ましくは99.7%信頼区間である。例えば、99.7%信頼区間を採用した場合指標の上限値は、(母集団における割合の平均値)+(3×母集団における割合の標準偏差)であり、下限値は、(母集団における割合の平均値)-(3×母集団における割合の標準偏差)である。信頼区間の算出方法は公知である。
【0042】
母比率の範囲(信頼区間)の推定式は、例えば以下のとおりである。
【数1】
(式中、nは試薬ロットが変わってからの検体数、pは累積検体の平均値、Zは定数を示す)。
【0043】
前記指標は、生成装置3000が以前に取得した複数の判定結果を用いて、予め決定しておくことができる。前記複数の判定結果の具体的な数は、信頼できる値を取得できる限り制限されない。
【0044】
前記割合を、前記指標と共に示すとは、前記割合と前記指標とが例えば1つの画面や1枚の用紙に両方合わせて表示され、少なくとも一時的に両方同時に閲覧されうる状態となる限り制限されない。例えば、前記割合と前記指標の値を並べて示す;前記割合の値を散布図、又はグラフとして示し、そこに前記指標をボーダーラインとして示す等が上げられる。
【0045】
前記割合は、前記指標と共に示され得る状態で1つの精度管理の情報を構成しうる。
【0046】
前記割合は、例えば複数の検査項目について、検査項目毎に算出されてもよい。この場合、各割合は、各割合それぞれに対応する指標と共に精度管理の情報として示されうる。
【0047】
前記精度管理の情報は、ユーザインターフェースデータである精度管理データ4050のとして例えば画面、プリンタ等の出力部720に出力されうる。精度管理データ4050が画面等に表示される場合には、ブラウザソフト等を介して表示される。
【0048】
前記検体分析装置2000は、判定結果4010を取得後、一定時間以内(好ましくは5分以内)に生成装置3000及び/又はサーバ4000に送信することが好ましい。また、オペレータ又は生成装置3000は、前記検体分析装置2000又はサーバ4000から、判定結果4010を所定の間隔(好ましくは5分おき)で取得することが好ましい。取得されたデータ、及び複数の判別結果から算出された前記割合は、各精度管理の情報に時系列含まれることが好ましい。また、精度管理データ4050も判定結果4010が取得される度にリアルタイムで生成されることが好ましい。このようにすることで、オペレータは、精度管理の異常の発生を、異常の発生から短時間で知ることができる。
【0049】
また、精度管理データには、他の精度管理の情報が含まれていてもよい。他の精度管理の情報には、例えばキャリブレーションデータ4020、陽性コントロールデータ及び/又は陰性コントロールデータを含むコントロールデータ4030、及び動作データ4040よりなる群から選択される少なくとも一種を含む情報(例えば時系列で示された情報)等が含まれる。より好ましくは、前記検査項目が、mRNAの発現量を測定する項目であるとき、他の精度管理の情報は、陽性コントロールにおける濁度の立ち上がり時間、陽性コントロールの定量データ(コピー数)、及び検量線の傾きよりなる群から選択される少なくとも一種である。
【0050】
動作データ4040は、検体測定中の検体分析装置の動作をモニタリングしたデータである。動作データ4040には、静電容量、定量カウント(液体の体積)、試薬の吸引及び吐出圧力、環境温度、試薬の残量、エラーコード、エラー内容、エラー発生日時、動作モニター、及びステータスよりなる群から選択される少なくとも一種のデータが含まれる。
【0051】
2.精度管理方法
本開示のある実施形態は、上記1.で述べた生成方法で生成された指標に基づいて、管理対象の検体分析装置の分析精度を評価する工程を含む、検体分析装置の分析精度を管理するための精度管理方法に関する。
【0052】
本実施形態において、前記管理対象の検体分析装置から得られた前記割合が、前記指標によって示される範囲から逸脱した場合に、分析精度が低下したと判定する。あるいは、前記指標によって示される範囲にある場合に、分析精度が維持されていると判定する。さらには、分析精度が低下したと判定された場合に、警告等を通知してもよい。警告は、オペレータに通知されてもよく、前記検体分析装置2000を操作しているユーザに通知されてもよい。また警告は、生成装置3000の出力部720に出力されてもよい。例えば、画面に警告を示すマークを表示してもよい。警告を表示するマークは、その警告が発せられている精度管理の情報の表示領域に合わせて表示されてもよい。
【0053】
3.精度管理データの生成システム及びその構築方法
3-1.システムの構成
図3は、第3の実施形態にかかる精度管理データの生成システム7000(以下、単に「生成システム7000」とも呼ぶ)の構成の例を示す概略図である。生成システム7000は、検体分析装置の分析精度を管理するための指標の生成装置3000と、病院又は検査センター等のユーザ施設に設置された検体分析装置2000とを備える。生成装置3000は、インターネット又は専用回線等の通信ネットワークを介してデータを通信可能に接続される。本開示において、通信可能に接続されるとは、生成装置3000と検体分析装置2000とが直接接続される場合と、サーバ4000等を介して間接的に接続される場合とを含む。生成システム7000には、タブレット等の携帯型端末6000等が含まれていてもよい。前記携帯型端末6000は、精度管理データ4050等の閲覧が可能である。検体分析装置2000及び生成装置3000については、上述する。生成システム7000において、検体分析装置2000及び生成装置3000は、同一施設に設置されていてもよく、異なる施設に設置されていてもよい。
【0054】
3-2.システムの構築方法
第4の実施形態は、生成装置3000を準備する工程と、検体分析装置2000を準備する工程とを含む、検体分析装置の分析精度を管理するための精度管理データの生成システムの構築方法に関する。また、本実施形態には、サーバ4000を準備する工程を含んでもよい。さらに本実施形態には、生成装置3000と検体分析装置2000とを通信可能に接続する工程を含んでもよい。
【0055】
3-3.検体分析装置の構成
本実施の形態に係る検体分析装置2000は、核酸検出法により特定のDNA配列の有無やmRNAの発現量を測定する遺伝子増幅検出装置、免疫学的な手法によりタンパク質等の定性又は定量を行う免疫学的測定装置、生化学的測定法で酵素活性や化合物の量を検出する生化学的測定装置、血液検体中の血球数をカウントする血球計数装置、血液凝固能を評価する血液凝固測定装置、尿検体中の酵素活性や化合物の量を検出する尿定性分析装置、尿検体中の有形成分を検出する尿中有形成分分析装置等であり得る。
【0056】
好ましくは、検体分析装置2000は、腫瘍に関する分析を行うよう構成されている。より好ましくは、検体分析装置2000ががんの転移に関する分析を行うよう構成されている。
【0057】
図4に、検体分析装置2000の一例として、遺伝子増幅検出装置の構成の例を示す。検体分析装置2000は、被検体からの摘出組織等を検体とし、この検体に含まれる標的核酸(標的遺伝子)の存在又は量を測定データとして出力可能なものである。より具体的には、この検体分析装置2000は、好ましくは、がんリンパ節転移の遺伝子診断システムとして用いられ、人体から切除されたリンパ節(検体)に前処理(ホモジナイズ、抽出処理など)を施して、核酸検出のための測定用試料となる可溶化抽出液を作成し、測定用試料中に存在する標的核酸(標的遺伝子)をLAMP法により増幅させ増幅に伴い発生する溶液の濁りを測定することで、標的核酸(がん遺伝子;mRNA)の検出又は定量をおこなう。
【0058】
この検体分析装置2000は、例えば術中迅速診断用に用いられ、具体的には、がんなどの手術中の検査に使用されるものである。例えば、術中に切除されたリンパ節から検体分析装置2000がリンパ節中の癌由来の遺伝子(標的核酸)の濃度を求め、これを参考に医師が術中にがん転移の度合いを診断し、リンパ節の郭清範囲を決定する。したがって、検体分析装置2000の出力には高い信頼性と迅速性が要求される。
【0059】
図2に示すように、検体分析装置2000は、人体などから得られた検体に対してホモジナイズなどの前処理を行って測定用試料を作成するための前処理ユニット210と、測定用試料に含まれる標的核酸の検出処理を行う測定ユニット220とを有している。また、検体分析装置2は、データ処理又はデータ通信などを行うためのデータ処理ユニット230を有している。このデータ処理ユニット230は、前処理ユニット210及び測定ユニット220のそれぞれから測定データを受信したり、前処理ユニット210及び測定ユニット220に動作指示信号などを送信したりする制御装置としての機能も有している。すなわち、前処理ユニット210とデータ処理ユニット230とが前処理装置として機能し、測定ユニット220とデータ処理ユニット230とが核酸検出装置として機能する。また、データ処理ユニット230は、ネットワークに接続されており、前述した生成装置3000又はサーバ4000との間のデータ送受信機能により、前処理ユニット210又は測定ユニット220のそれぞれの送信部から送信された測定データ等を、生成装置3000へ送信することができる。
【0060】
図5は、前処理ユニット210の構成の例を示す概略図である。
図5に示すように、前処理ユニット210は、主に、検体への前処理を行って測定用試料とする前処理部211と、前処理が完了した測定用試料を測定する測定部212とを備えている。前処理部211は、検体が入った容器をセットする検体セット部213と、検体セット部213にセットされた検体入り容器に前処理用試薬を添加する試薬添加部(試薬分注ピペット)214と、検体のホモジナイズを行うためのブレンダー(ホモジナイズ部)215、ホモジナイズ(前処理)された測定用試料を分注するピペット(分注部)216、ピペット216を測定部212及び測定ユニット220へ移送する移送部(図示省略)を備えている。
【0061】
前処理ユニット210は、データ処理ユニット230から測定開始指示信号を受けると、検体セット部213の検体に前処理用試薬を添加し(前処理用試薬添加処理)、ブレンダー215によって検体をホモジナイズし、測定用試料を作成する(ホモジナイズ処理)。そして、測定用試料をピペット216によって吸引し、通常の核酸検出の場合には、ピペット216が測定ユニット220まで移動し、測定ユニット220にセットされたサンプル容器22にサンプルを注入する。
【0062】
一方、精度管理の場合には、前処理用精度管理検体を前処理して作成された測定用精度管理検体を吸引したピペット216が吸光度測定セル217へ移動し、測定用精度管理検体を測定部212の吸光度測定セル217に注入する。前記吸光度測定セル217には、光源218から光が照射され、その光が検出器(受光部)219によって検出され、前処理がなされた測定用試料の吸光度が測定される。測定された吸光度(測定データ)は、前処理ユニット210の送信部(図示省略)によって、データ処理ユニット230へ送信される。なお、前処理としてはホモジナイズに限られるものではなく、核酸の抽出処理などであってもよい。
【0063】
図6は測定ユニット220の構成の例を示す平面図である。測定ユニット220は、
図6に示すように構成されており、この装置の詳細は、特開2005-98960に記載されている。ここでは、測定ユニット220の構成及び動作等を簡単に説明する。まず、前処理ユニット210から移動してきたピペットが、サンプル容器台21のサンプル容器セット孔21aにセットされたサンプル容器22に、前処理されたサンプルを注入する。
【0064】
試薬容器セット部30の正面左側のプライマー試薬容器セット孔31a及び酵素試薬容器セット孔31bには、標的核酸、例えばCK19(サイトケラチン19)のプライマー試薬が収容されたプライマー試薬容器32a及び酵素試薬が収容された酵素試薬容器32bがセットされている。また、試薬容器セット部30の正面右側のプライマー試薬容器セット孔31aには、内部標準物質のアラビドプシス(Arabidopsis、以下、「アラビド」という)のプライマー試薬が収容されたプライマー試薬容器32aがセットされている。また、正面右側のアラビド容器セット孔31dには、所定量のアラビドが収容されたアラビド溶液容器32dがセットされている。
【0065】
また、チップセット部40の凹部(図示せず)に、それぞれ36本の使い捨て用ピペットチップ41が収納された2つのラック42が嵌め込まれている。さらに、各反応検出ブロック60aの反応部61の2つの検出セルセット孔に、検出セル65の2つのセル部66aがセットされている。
【0066】
この状態で、測定ユニット220の動作がスタートすると、まず、分注機構部10のアーム部11が初期位置からチップセット部40に移動された後、チップセット部40において、分注機構部10の2つのシリンジ部12が下方向に移動される。これにより、2つのシリンジ部12のノズル部の先端が2つのピペットチップ41の上部開口部に圧入されるので、2つのシリンジ部12のノズル部の先端にピペットチップ41が自動的に装着される。そして、2つのシリンジ部12が上方に移動された後、分注機構部10のアーム部11は、試薬容器セット台31にセットされた標的核酸及びアラビドのプライマー試薬が収容された2つのプライマー試薬容器32aの上方に向かってX軸方向に移動される。そして、2つのシリンジ部12が下方向に移動されることにより、2つのシリンジ部12のノズル部に装着された2つのピペットチップ41の先端が、それぞれ、2つのプライマー試薬容器32a内の標的核酸及びアラビドのプライマー試薬の液面に挿入される。そして、シリンジ部12のポンプ部により2つのプライマー試薬容器32a内のCK19及びアラビドのプライマー試薬が吸引される。
【0067】
プライマー試薬の吸引後、2つのシリンジ部12が上方に移動された後、分注機構部10のアーム部11は、最も奥側(装置正面奥側)に位置する反応検出ブロック60aの上方に移動される。この場合、分注機構部10のアーム部11は、奥から2番目~5番目の他の反応検出ブロック60aの上方を通過しないように移動される。そして、最も奥側の反応検出ブロック60aにおいて、2つのシリンジ部12が下方向に移動されることにより、2つのシリンジ部12のノズル部12aに装着された2つのピペットチップ41が、それぞれ、検出セル65の2つのセル部66aに挿入される。そして、シリンジ部12のポンプ部を用いて、CK19及びアラビドの2つのプライマー試薬がそれぞれ2つのセル部66aに吐出される(プライマー試薬分注処理)。
【0068】
その後、ピペットチップ41は破棄され、2つのシリンジ部12のノズル部先端に新しい2つのピペットチップ41が自動的に装着されたのち、上記とほぼ同様の動作で、酵素試薬容器32b内の酵素試薬が検出セル65の2つのセル部66aに吐出される(酵素試薬分注処理)。その後、さらに同様に、アラビド溶液容器32d内のアラビド溶液が検出セル65の2つのセル部66aに吐出される。その後、さらに同様に、サンプル容器22のサンプル(測定用試料)が検出セル65の2つのセル部66aに吐出される(サンプル分注処理)。これによって、検出セル65の一方のセル部66aには、標的核酸を検出するための試料が調整され、他方のセル部66aには、アラビドを検出するための試料が調整される。
【0069】
上記のセル部内へのプライマー試薬、酵素試薬、アラビド溶液及びサンプルの吐出が行われた後、検出セル65の蓋閉め動作が行われる。蓋閉め動作が完了した後、反応部61のペルチェモジュールを用いて、検出セル65内の液温を約20℃から約65℃に加温することにより、LAMP法により標的遺伝子(CK19)及びアラビドを増幅する。そして、増幅に伴い生成されるピロリン酸マグネシウムによる白濁を比濁法により検出する。具体的には、濁度検出部62のLED光源部62aから、約1mmの直径を有する光を、反応部61の光照射溝を介して、増幅反応時の検出セル65のセル部66aに照射する。そして、その照射した光をフォトダイオード受光部62bで受光する。これにより、増幅反応時の検出セル65のセル部66a内の液濁度をリアルタイムで検出(モニタリング)する。フォトダイオード受光部62bで測定したCK19の測定データ及びアラビドの測定データは、測定ユニット220の有する送信部(図示省略)によってデータ処理ユニット230に送信される。
【0070】
次に、データ処理ユニット230の構成について説明する。
図7は、データ処理ユニット230の構成を示すブロック図である。データ処理ユニット230は、コンピュータ230aによって実現される。
図7に示すように、コンピュータ230aは、本体231と、出力部232と、入力部233とを備えている。本体231は、処理部231a(CPU:Central Processing Unit、GPU:Graphics Processing Unit又はMPU:Micro Processing Unit)、ROM(read‐only memory)231b、主記憶部(RAM:Random access memory)231c、補助記憶部(ハードディスク)231d、読出装置231e、入出力インタフェース231f、通信インタフェース231g、及び出力インタフェース231hを備えており、処理部231a、ROM231b、主記憶部231c、補助記憶部231d、読出装置231e、入出力インタフェース231f、通信インタフェース231g、及び出力インタフェース231hは、バス231jによって接続されている。主記憶部231cと補助記憶部231dとをあわせて記憶部ともいう。
【0071】
読出装置231eは、コンピュータを情報処理ユニット230として機能させるためのコンピュータプログラム234aを可搬型記録媒体234から読み出し、当該コンピュータプログラム234aをハードディスク231dにインストールすることが可能である。
【0072】
入出力インタフェース231fには、ケーブルを介して前処理ユニット210及び測定ユニット220のそれぞれが接続されている。入出力インタフェース231fは、前処理ユニット210及び測定ユニット220にデータ通信可能に接続されており、制御信号を前処理ユニット210及び測定ユニット220に出力することが可能である。かかる制御信号を受信した前処理ユニット210及び測定ユニット220の制御部(図示せず)がこの制御信号をデコードし、制御信号に対応して各機構部のアクチュエータを駆動する。また、前処理ユニット210及び測定ユニット220のそれぞれからは、データ処理ユニット230へ測定データを送信可能であり、データ処理ユニット230が測定データを受信すると、CPU231aが当該測定データに対して所定の処理を行う。
【0073】
測定ユニット220が取得した測定データの処理部231aによる処理についてさらに詳しく説明する。上述したとおり、フォトダイオード受光部62bで測定された標的核酸の測定データ及びアラビドの測定データが測定ユニット220から送信される。処理部231aにおいて、横軸に時間、縦軸に濁度(O.D.:OpticalDensity)をとった場合に、
図8に示すような標的核酸の測定データが得られる。そして、この標的核酸の測定データからサンプル中の標的遺伝子(例えば、CK19)のコピー数が急増するまでの時間である増幅立ち上がり時間を、処理部231aが検出する。一方、処理部231aは、上記と同様に、アラビドの測定データからも、横軸に時間、立て軸に濁度をとったアラビドの測定データを作成し、その測定データに基づいて、アラビドの増幅立ち上がり時間を取得する。処理部231aは、このアラビドの増幅立ち上がり時間に基づいて、標的核酸の増幅立ち上がり時間を補正する。このような補正をすることによって、サンプル中の増幅阻害物質が測定結果に与える影響を除去することができる。そして、
図9に示す、キャリブレータの測定データから作成された検量線に基づいて、補正された標的核酸の増幅立ち上がり時間から標的遺伝子の発現量すなわち標的核酸の定量データ(コピー数)が算出される。ここで、
図9に示した検量線は、横軸に増幅立ち上がり時間、縦軸に標的核酸コピー数[コピー数/μL]をとった曲線であり、一般に、増幅立ち上がり時間が短いほど、標的遺伝子濃度が高くなる。
【0074】
また、データ処理ユニット230は、後述する生成装置3000から送信される精度管理データ4050を直接、又はサーバ4000を経由して、受信可能であってもよい。処理部231aは、通信部231gを介して精度管理データ4050を受信し、出力部231hに精度管理データ4050を表示してもよい。
【0075】
3-4.サーバ
第5の実施形態は、サーバ4000に関する。サーバ4000は、コンピュータによって実現される。サーバ4000を実現するコンピュータの構成は、生成装置3000を実現するコンピュータ710の構成と同様であるので、その説明を省略する。
【0076】
サーバ4000を構成するコンピュータの補助記憶部(ハードディスク)には、
図3に示すように、検体分析装置2000の状態に関する状態情報を記憶するためのキャリブレータ-コントロールデータベース4100と、判定結果データベース4010DBと、検体処理装置動作データベース4040と、精度管理情報データベース4050DBが設けられている。
【0077】
図10は、キャリブレータ-コントロールデータベース4100の例を示す概略図である。キャリブレータ-コントロールデータベース4100には、例えば、受け付けたデータの番号(受付番号)を格納するフィールドF1と、データの受付日を格納するフィールドF2と、データの受付時刻を格納するフィールドF3と、検体分析装置の機種コードを格納するフィールドF4と、各検体分析装置に個別に割り当てられた装置IDを格納するフィールドF5と、装置の状態を示す動作状態コード又は装置の異常の種別を示すエラーコードを格納するフィールドF6と、データの更新処理を行ったオペレータの氏名を格納するフィールドF7と、データの処理区分を格納するフィールドF8と、試薬のロットに関する情報(試薬のロット番号等)を格納するフィールドF9と、陽性コントロールのコピー数と濁度の立ち上がり時間を格納するフィールドF10と、陰性コントロールのコピー数と濁度の立ち上がり時間を格納するフィールドF11と、第1のキャリブレータのコピー数と濁度の立ち上がり時間を格納するフィールドF12と、第2のキャリブレータのコピー数と濁度の立ち上がり時間を格納するフィールドF13と、第3のキャリブレータのコピー数と濁度の立ち上がり時間を格納するフィールドF14と、3つのキャリブレータから作成された検量線の傾きを格納するF15と、が設けられている。フィールドF10~フィールドF14は、検査項目毎にデータを格納する。
【0078】
図11は、判定結果データベース4010DBの例を示す概略図である。判定結果データベース4010DBには、例えば、受付番号を格納するフィールドF21と、データの受付日を格納するフィールドF22と、データの受付時刻を格納するフィールドF23と、検体分析装置の機種コードを格納するフィールドF24と、各検体分析装置に個別に割り当てられた装置IDを格納するフィールドF25と、各検体の識別番号(ID)を格納するフィールドF26と、各検体の判定結果を検査項目毎に格納するフィールドF27とが設けられている。
【0079】
図12は、検体処理装置動作データベース4040の例を示す概略図である。検体処理装置動作データベース4040には、例えば、受付番号を格納するフィールドF31と、データの受付日を格納するフィールドF32と、データの受付時刻を格納するフィールドF33と、検体分析装置の機種コードを格納するフィールドF34と、各検体分析装置に個別に割り当てられた装置IDを格納するフィールドF35と、ピペットの静電容量を格納するフィールドF36と、ピペットが定量した定量カウントを格納するフィールドF37と、ピペットの試薬の吸引及び吐出圧力を格納するフィールドF38と、ブロックの環境温度を格納するフィールドF39と、試薬の残量を格納するフィールドF40等が設けられる。
【0080】
図13は、精度管理データベース4050DBの例を示す概略図である。精度管理データベース4050DBには、例えば、受付番号を格納するフィールドF41と、データの受付日を格納するフィールドF42と、データの受付時刻を格納するフィールドF43と、検体分析装置の機種コードを格納するフィールドF44と、各検体分析装置に個別に割り当てられた装置IDを格納するフィールドF45と、生成装置3000が算出した前記複数の検体において病変がどの程度陽性であるかを示す割合を格納するフィールドF46とが設けられている。
【0081】
上記では、各データベースに受付番号を格納するフィールドと、データの受付日を格納するフィールドと、データの受付時刻を格納するフィールドと、検体分析装置の機種コードを格納するフィールドと、各検体分析装置に個別に割り当てられた装置IDを格納するフィールドとが設けられている実施形態を示したが、各データベースに共通する情報は、別途リストを設けて、そのリストと各データベース内のデータを、例えば受付番号等で紐付けて格納しておいてもよい。
【0082】
また、当該コンピュータの補助記憶部には、Linux(登録商標)、UNIX(登録商標)、マイクロソフト ウインドウズ サーバ(登録商標)等のサーバ オペレーティングシステム(Operating System:OS)等のサーバプログラムがインストールされており、前記コンピュータの処理部(CPU)が前記データベースサーバプログラムを実行することにより、当該コンピュータがサーバ4000として機能する。検体分析装置2000から送信された判定結果4010、キャリブレーションデータ4020、コントロールデータ4030、検体処理装置2000の動作データ4050は、例えば、サーバの通信部を介して、サーバの補助記憶部に記憶される。
【0083】
3-5.精度管理用指標の生成装置
図14は、生成装置3000の構成の例を示すブロック図である。生成装置3000は、コンピュータ7aによって実現される。
図14に示すように、生成装置3000は、本体710と、画面、プリンタ等の出力部720と、キーボード、又はタッチパネル等の入力部730とを備えている。本体710は、処理部(CPU、GPU、又はMPU)710a、ROM710b、主記憶部(RAM)710c、補助記憶部(ハードディスク)710d、読出装置710e、入出力インタフェース710f、通信部(通信インタフェース)710g、及び出力インタフェース710hを備えており、処理部710a、ROM710b、補助記憶部710c、ハードディスク710d、読出装置710e、入出力インタフェース710f、通信部710g、及び出力インタフェース710hは、バス710jによって接続されている。
【0084】
読出装置710eは、コンピュータを生成装置3000として機能させるためのコンピュータプログラム740aを可搬型記録媒体740から読み出し、当該コンピュータプログラム740aを補助記憶部710dにインストールすることが可能である。
【0085】
また補助記憶部710dには、電子メールプログラムがインストールされていてもよい。前記電子メールプログラムを実行することにより生成装置3000は、電子メールシステムのクライアントとして機能し、電子メールを送信することが可能となる。
【0086】
さらに補助記憶部710dには、ウェブブラウザプログラムがインストールされていてもよい。かかるウェブブラウザプログラムを処理部710aが実行することにより、生成装置3000は、ウェブクライアントとして機能し、サーバ4000から取得した各種データ及び処理部710aが生成した精度管理データ4050を、出力部720にウェブページとして表示することができる。
【0087】
サーバ4000は、生成装置3000と、一体化していてもよい。この場合、生成装置3000の補助記憶部710cに上記3-4.で述べた各データベースが格納される。
【0088】
3-6.検体分析装置の動作
図15を用いて、検体分析装置2000の動作の例を説明する。ここでは、サーバ4000に、上記3-4.で述べた各データベースが格納されている例を用いて説明するが、上記3-5.で述べたとおり、サーバ4000は、生成装置3000と一体であってもよい。
【0089】
検体分析装置2000は、検査開始前に起動される(ステップS101)。起動処理は次のようにして実行される。検体分析装置200の測定ユニット220には図示しない電源ボタンが設けられており、電源ボタンがユーザによって押下されることで測定ユニット220の電源がオンされる。電源がオンされると、測定ユニット220は、機構部の原点調整及び動作確認を実行し、スタンバイ状態に移行して起動処理が完了する。データ処理ユニット230の処理部231aは、測定ユニット220がスタンバイ状態に移行したことを検出すると、検体分析装置2000が起動されたことを通知するための通信データを生成し、サーバ4000へ通信部231gを介して送信する(ステップS102)。前記通信データには、検体分析装置の機種コード、検体分析装置の装置ID、検体分析装置の動作状態コードが含まれる。
【0090】
データ処理ユニット230のハードディスク231dには、その検体分析装置2000の機種コード及びシリアル番号が記憶されている。また、動作状態コードは、検体分析装置が起動した状態(起動状態)が“0”、検量線作成のためにキャリブレータの測定を開始する状態(検量線測定開始状態)が“1”、検量線作成のためにキャリブレータの測定を終了した状態(検量線測定終了状態)が“2”、作成された検量線がユーザによって承認された状態(検量線バリデーション状態)が“3”、検体の測定を開始する状態(サンプル測定開始状態)が“4”、検体の測定を終了した状態(サンプル測定終了状態)が“5”、検体分析装置(測定ユニット)がシャットダウンされる状態(測定ユニット終了状態)が“6”とされる。データ処理ユニット230の処理部231aは、上記ステップS102の処理において、補助記憶部231dに記憶されているに記憶されている機種コード及びシリアル番号と、そのときの装置状態に対応する動作状態コード(この場合は“0”)とを紐付けて通信データを生成する。前記通信データには、動作データ4040が含まれていてもよい。
【0091】
次に、例えば、各検査項目に対応した核酸、タンパク質、化合物等の定量に使用する検量線の作成が行われる。検量線の作成は、キャリブレータが測定ユニット220によって測定されることによって行われる。キャリブレータは、例えば検査項目の標準物質を所定量含むものである。検量線の作成には標準物質の量が異なる2~3種類のキャリブレータが用いられることが好ましい。以下、検査項目がmRNA(標的核酸)の発現量を測定する項目である場合を例として処理部231aの処理を説明する。
【0092】
上記3つのキャリブレータをそれぞれに収容したサンプル容器22は、検量線作成処理に先だって、測定ユニット220のサンプル容器台21にユーザによってセットされる。そして、ユーザが、測定ユニット220の検量線作成処理(キャリブレータ測定処理)を開始するために、データ処理ユニット230の入力部233によって開始指示を入力する。処理部231aは、かかる検量線測定の開始指示を受け付けると(ステップS103)、検量線測定開始を通知するための通信データを生成し、サーバ4000又は生成装置3000へ、通信部231gを介して送信する(ステップS104)。この通信データには、検量線測定開始状態を示す動作状態コード“1”が含まれる。その後、検体分析装置2000がキャリブレータの測定を実行する(ステップS105)。
【0093】
ステップS105の処理について具体的に説明する。測定ユニット220は、測定開始指示の信号を受信すると、3つのキャリブレータのそれぞれについて、プライマー試薬分注処理、酵素試薬分注処理、サンプル容器22のキャリブレータを検出セル65の1つのセル部66aに分注するキャリブレータ溶液分注処理を行う。その後、測定ユニット220は、検出セル65内の液温を核酸の変性、プライマーのアニーリング、及び伸長反応に必要な温度に制御することにより、LAMP(遺伝子増幅)反応により標的核酸を増幅し、濁度検出部62によって、増幅反応時の検出セル65のセル部66a内の液濁度を検出する検出処理を行う。
【0094】
そして、測定ユニット220は、検出された濁度を反映する光学情報(測定データ)を、データ処理ユニット230に送信する。処理部231aは、測定ユニット220から、それぞれのキャリブレータの測定データを受信すると、前記測定データの解析処理を行う。解析処理では、それぞれのキャリブレータの濁度立ち上がり時間を算出する。なお、濁度立ち上がり時間は、測定データとして得られた濁度が所定値を超えるまでの時間として算出される。処理部231aは、現在保有する検量線又は各キャリブレータのコピー数に応じた濁度に基づき、各キャリブレータについて算出された立ち上がり時間から、新たな検量線を作成する。
【0095】
検量線を作成した後、処理部231aは、検量線測定終了を通知するための通信データを生成し、サーバ4000へ通信部231gを介して送信する(ステップS106)。この通信データには、検量線測定終了状態を示す動作状態コード“2”、キャリブレーションデータ4020と、動作データ4040とが含まれていてもよい。
【0096】
作成された検量線はデータ処理ユニット230の出力部232に表示される。処理部231aは、ユーザ等によって当該検量線の認証(バリデート)を受け付けてもよい。ユーザは、出力部232に表示された検量線を確認し、検量線に異常がなければその検量線のバリデートを実行する。処理部231aは、かかる検量線のバリデートを受け付けると(ステップS107)、検量線のバリデートが実行されたことを通知するための通信データを生成し、サーバ4000へ通信部231gを介して送信する(ステップS108)。この通信データには、検量線バリデーション状態を示す動作状態コード“3”と、キャリブレーションデータ4020と、動作データ4040とが含まれる。
【0097】
上記キャリブレータの濁度の立ち上がり時間及びキャリブレータの測定データは、データ処理ユニット230からサーバ4000へ通信部231gを介して送信される。これらの測定データには、立ち上がり時間及びキャリブレータのコピー数の他、キャリブレータを測定した検体分析装置の装置ID、キャリブレータのロット番号、測定日時といった情報が含まれている。
【0098】
次にユーザは、検体を用いて前処理を実行する。検体測定の際には、組織等が前処理ユニット210の検体セット部213にセットされる。そして、ユーザが、検体の前処理を開始するために、検体分析装置2000のデータ処理ユニット230の入力部233によって検体測定の開始指示を入力する。処理部231aは、かかる検体測定の開始指示を受け付けると(ステップS109)、検体測定開始を通知するための通信データを生成し、サーバ4000へ送信する(ステップS110)。この通信データには、サンプル測定開始状態を示す動作状態コード“4”が含まれる。
【0099】
ステップS109の処理について具体的に説明する。前処理ユニット210は、測定開始指示の信号を受信すると(ステップS111)、前処理部211によって検体に前処理用試薬添加処理とホモジナイズ処理を行い、測定用試料を作成する。この測定用試料は、前処理ユニット210の測定部212に供され、吸光度が測定される。吸光度の測定データは、処理部231aによってサーバ4000へ通信部231gを介して送信される(ステップS112)、前処理。処理部231aは、前処理における前処理ユニット210の動作データをステップS110で、サーバ4000に送信してもよい。
【0100】
次に、処理部231aは、検体の測定と測定ユニット220の精度管理を行うための精度管理試料(以下、単に「コントロール」ともいう)の測定を実行する。コントロールとしては、標的核酸を既知の量で含むとともに内部標準核酸(植物由来の核酸;人体が有しない核酸)であるアラビドを含まない陽性コントロール(第1核酸検出用精度管理物質)と、内部標準核酸であるアラビドを既知量含むとともに標的核酸を含まないInternalコントロール(アラビドコントロール;陰性コントロール)の2種類が用いられる。
【0101】
陽性コントロールを収容したサンプル容器22と、アラビドコントロールを収容したサンプル容器22は、測定ユニット220のサンプル容器台21にセットされる。
【0102】
測定ユニット220は、測定開始指示の信号を受信すると、分注機構部10に近い方のブロック60aから検体から調製された測定用試料を分注する検体分注処理を行う。1つのブロック60aに1つの検出セル65が設けられており、1つの検出セル65に対して1検体分の測定試料が割り当てられる。1つの検出セル65には2つセル部66aが設けられているため、1つの検出セル65で1つの測定用試料を2重測定することができる。2つのセル部66aに、同じ測定用試料を分注してもよいが、一方のセル部66aに加える測定用試料を希釈してもよい。このようにすることで増幅の頭打ちを防ぐことができるため、測定試料に含まれる標的核酸のコピー数が多い場合、より正確に定量することができる。検体から調製された測定試料の分注が終わると、サンプル容器22の陽性コントロールを検出セル65の一方のセル部66aに分注し、陰性コントロールを他方のセル部66aに分注する溶液分注処理を行う。続いて測定試料又はコントロールが分注されたセル部66aにプライマー試薬分注処理及び酵素試薬を分注する試薬分注処理を行う。その後、測定ユニット220は、検出セル65内の液温を核酸の増幅に適した温度に制御することにより、LAMP法により標的核酸及びアラビドを増幅し、濁度検出部62によって、増幅反応時の検出セル65のそれぞれのセル部66a内の濁度をリアルタイムで検出(モニタリング)する検出処理を行う(ステップS113)。検出処理の結果は、処理部231aによってサーバ4000へ通信部231gを介して送信される(ステップS114)。処理部231aは、検出処理における測定ユニット220の動作データをステップS113で、サーバ4000に送信してもよい。
【0103】
測定ユニット220によって測定試料、陽性コントロール及び陰性コントロールの測定データが検出されると、その光学情報(測定データ)が処理部231aによって解析される。解析処理では、濁度の増幅立ち上がり時間、標的核酸又はアラビドの定量値(コピー数)が算出される(ステップS115)。濁度の増幅立ち上がり時間は、光学情報として得られた濁度が所定値を超えるまでの時間として算出される。
【0104】
処理部231aは算出された標的核酸又はアラビドの発現量のデータをサーバ4000へ、通信部231gを介して送信する(ステップS116)。また、処理部231aは算出された標的核酸の発現量のデータを出力部232に表示する。
【0105】
次に、処理部231aは、定量的な測定データ(増幅立ち上がり時間、コピー数)から、診断支援のための定性的な判定結果4010(定量している標的核酸が反映する病変が陽性か陰性か)を判定する(ステップS117)。この判定は、
図16に示すように、例えば、コピー数と基準範囲を比較し(ステップS301)、コピー数が第1の基準範囲(例えば250以下)の場合、又は
図8に示す測定データにおいて、所定時間が経過しても濁度が閾値に到達しない場合は「ND」、コピー数が第2の基準範囲(例えば、250より大きく5×10
3まで)内であれば「+」、コピー数が第3の基準範囲(例えば、5×10
3より大きい)であれば「++」として判定する(ステップS302)。ここで、「ND」は「転移は検出されない」、「+」は「転移は少ない」、「++」は「転移が認められる」というように定性的ながん転移の度合いを示している。コピー数が第4の基準範囲(例えば250より大きい)である場合に「転移が陽性である」と(ステップS303)、コピー数が第1の基準範囲であるか濁度が閾値未満の時に「転移が陰性である」と判定してもよい(ステップS304)。検体分析装置2000が、定量的な測定データ(がん由来細胞の量)から確定診断支援に役立つ定性的な結果を求めて表示することで、医師は、術中に迅速に診断を行い、郭清範囲を決定することができる。処理部231aは判定結果4010をサーバ4000へ、通信部231gを介して送信する(ステップS118)。また、処理部231aは判定結果4010を出力部232に表示する。
【0106】
上記のような判定が終了したときに、処理部231aは、検体測定終了を通知するための通信データを生成し(ステップS119)、サーバ4000へ、通信部231gを介して送信してもよい(ステップS120)。この通信データには、検体測定終了状態を示す動作状態コード“5”と、動作データ4040とが含まれる。また、処理部231aは、出力部232(例えば、画面)に出力する。
【0107】
検体分析装置2000の動作を停止するとき、例えば、ユーザはデータ処理ユニット230の入力部233を操作して、シャットダウンの指示を入力する。CPU231aは、かかるシャットダウン指示を受け付けると(ステップS121)、検体分析装置2のシャットダウンを通知するための通信データを生成し、サーバ4000へ送信する(ステップS122)。この通信データには、測定ユニット終了状態を示す動作状態コード“6”が含まれる。また、処理部231aは、検体分析装置2000のピペットの吸引動作回数等の動作履歴を含む動作データ4040を生成し、サーバ4000へ送信する(ステップS123)。検体分析装置2000のシャットダウンが完了すると、処理部231aは処理を終了する。
【0108】
3-7.サーバの動作
サーバ4000は、上記3-6.で述べた検体分析装置2000の動作に合わせて以下の処理を行う。
図15を用いて、サーバ4000の動作を説明する。
【0109】
サーバ4000は、
図15のステップS102で送信された起動処理に関連する通信データを受信し(ステップS201)、検体処理装置動作データベース4040に蓄積する(ステップS202)。
【0110】
サーバ4000は、
図15のステップS104で送信された検量線測定開始指示に関連する通信データを受信し(ステップS211)、検体処理装置動作データベース4040に蓄積する(ステップS212)。
【0111】
サーバ4000は、
図15のステップS106で送信された、キャリブレーションデータ4020を受信すると(ステップS221)、そのデータをキャリブレータ-コントロールデータベース4100に蓄積する(ステップS222)。また、サーバ4000は、各施設に設置された複数の検体分析装置から送信された複数のキャリブレーションデータを用いて統計処理を施す。具体的には、複数の施設に設置された検体分析装置2000(データ処理ユニット230)から送信されたデータに基づき、検査項目毎に、1日単位での平均値と標準偏差1SDとが求められる。また、サーバ4000は、標準偏差1SDを2倍した2SD、標準偏差1SDを3倍した3SDも求める。これらの1日単位の測定データの平均値、1SD、2SD、3SDは、サーバ4000の精度管理データベース4050DBに蓄積される。なお、精度管理データベース4050DBには、精度管理の基準となる検体分析装置である基準機のデータも蓄積される。
【0112】
サーバ4000は、
図15のステップS108で送信された、検量線バリデートの受付に関する通信データを受信すると(ステップS231)、そのデータをキャリブレータ-コントロールデータベース4100に蓄積する(ステップS232)。
【0113】
さらに、サーバ4000は、
図15のステップS108で送信された通信データを受信すると、算出された平均値と、1SD、2SD又は3SDとに基づいて、検量線作成処理が正常であるか否かを判定する。1SD、2SD、3SDは、それぞれ、受信した測定データが正常か否かの基準値となり得るものであり、各施設によって基準値として1SD、2SD、3SDのどれを使用するかが選択されており、選択された基準値が判定に用いられる。かかる判定結果も、精度管理データベース4050DBに登録される。
【0114】
サーバ4000は、
図15のステップS110で送信された、測定の開始指示の受付に関する通信データを受信すると(ステップS241)、そのデータを検体処理装置動作データベース4040に蓄積する(ステップS242)。
【0115】
サーバ4000は、
図15のステップS112で送信された、検体前処理の開始指示の受付に関する通信データを受信すると(ステップS251)、そのデータを検体処理装置動作データベース4040に蓄積する(ステップS252)。
【0116】
サーバ4000は、
図15のステップS114で送信された、コントロールデータ4030を受信すると(ステップS261)、そのデータをキャリブレーション-コントロールデータベース4100へ格納する(ステップS262)。
【0117】
また、サーバ4000は、各施設に設置された複数の検体分析装置2000から送信された複数のコントロールデータ4020に統計処理を施す。具体的には、複数の検体分析装置2000からそれぞれ送信されたコントロールデータ4020に基づき、1日単位での平均値と標準偏差1SDを求める。また、サーバ4000は、標準偏差1SDを2倍した2SD、標準偏差1SDを3倍した3SDも求める。これらの1日単位の測定データの平均値、1SD、2SD、3SDは、サーバ4000内の精度管理データベース4050DBに登録される。なお、精度管理データベース4050DBには、基準機においてコントロールを測定することにより得られたコントロールデータも蓄積される。
【0118】
さらに、サーバ4000の処理部は、
図15のステップS116で送信された、定量値に関する通信データを受信すると(ステップS271)、算出された平均値と、1SD、2SD、又は3SDとに基づいて、測定ユニットによる検体測定が正常であるか否かを判定する。より具体的には、サーバ4000は、過去一定時間(例えば、過去24時間)に受信したコントロールデータ4020の平均値と標準偏差1SD、2SD、又は3SDとに基づいて、検体測定が正常であるか否かを判定する。1SD、2SD、3SDは、それぞれ、受信した測定データが正常か否かの基準値となり得るものであり、各施設によって基準値として1SD、2SD、3SDのどれを使用するかが選択されており、選択された基準値が判定に用いられる。かかる判定結果も、精度管理データベース4050DBに登録される(ステップS272)。
【0119】
サーバ4000は、
図15のステップS118で送信された、判定結果4010に関連する通信データを受信すると(ステップS281)、その判定結果4010を判定結果データベース4010DBに蓄積する(ステップS282)。必要に応じて、後述する3-7.に述べる処理を行ってもよい。
【0120】
サーバ4000は、
図15のステップS120、122、123で送信された、通信データを受信すると(ステップS291)、その通信データを検体処理装置動作データベース4040に蓄積する(ステップS291)。
【0121】
3-8.生成装置の動作
生成装置3000は、検体分析装置2000が生成した判定結果4010に基づいて、精度管理データ4050を生成する。上記1-1.の各用語についての説明は、ここに援用される。
【0122】
図17を用いて、精度管理データ4050の生成処理の例を説明する。はじめに、生成装置3000の処理部710aは、サーバ4000から、又は複数の検体分析装置2000から同一検査項目について複数の判定結果4010を取得する(ステップS401)。次に、上記1-1.で説明した方法にしたがって、処理部710aは、前記複数の検体分析装置から取得した複数の判定結果から、前記複数の検体分析装置により陽性又は陰性と判定された検体の割合算出し、前記割合に基づいて指標を生成する(ステップS402)。処理部710aは、算出された前記割合を、記憶部に記憶する。さらに処理部710aは、前記割合と、生成装置3000の補助記憶部710dに記憶されている前記指標を生成する時点までに前記複数の検体分析装置から取得した前記割合に基づいて生成された指標とを比較可能な精度管理データ4050(ユーザ-インタフェース)を生成する(ステップS403)。生成された精度管理データ4050は、生成装置3000の補助記憶部710dに記憶されるか、生成装置3000の通信部710gを介してサーバ4000に送信される。ステップS401~ステップS403の処理は、取得される全判定結果4050について行ってもよく、所定のグループ毎に行ってもよい。
【0123】
4.ユーザインターフェース画面の表示例
出力データの表示方法の一例を、
図18~31を用いて、説明する。この例は、1つの領域に、標準試料の情報領域と、動作の情報領域と、割合の領域とを関連づけて表示する。
【0124】
はじめに、管理施設のオペレータ(管理者)等が、サービスセンタ等の管理施設に設置されている、後述するモニタリングデータの生成装置3000(以下、単に「生成装置3000」とも呼ぶ)を起動させ、
図18に示すモニタリングシステムへのログイン画面Aを出力部720に表示させる。ログイン画面Aには、例えば、システム名を表示する領域A1とユーザ名を入力する領域A2と、パスワードを入力する領域A3と、ログイン領域A4が含まれる。オペレータが、ユーザ名、パスワードを入力部730から入力し、ログイン領域を選択すると、画面は、
図19に示す1つ又は複数の検体分析装置2000のリストを表示する画面Bに切り替わる。
【0125】
画面Bには、例えば、特定の検体分析装置2000や施設を検索するために、施設名やシリアルナンバー等を入力可能な検索キーワード入力領域B1、施設名又は機種名を選択可能なプルダウン領域B2、検体分析装置2000のリストB3、内部精度管理を週単位でレポート画面を表示させるための週次レポート領域B5と、検査項目が反映する疾患の有無の陽性率を示すレポート画面を表示させるための陽性率レポート領域B6と、ログイン状態を解除する際に選択されるログオフ領域B4を含む。さらに、検体分析装置2000のリストを表示する画面Bには、精度管理不良が検出された施設をオペレータに知らせるための警告B7が表示されてもよい。
【0126】
検体分析装置2000のリストB3には、施設名(支店名等を含む)、検体分析装置2000の機種のシリアルナンバーの他、例えば、オペレータがログインした時点での各施設の検体分析装置2000の状態(ステータス)、前記ステータスになった日時、検体分析装置2000の機種名及び/又はニックネーム、検体分析装置2000のデータ処理ユニット230に搭載されている解析用ソフトウェアのバージョン情報等が含まれてもよい。
【0127】
さらに、検体分析装置2000のリストB3には、各検体分析装置2000の詳細なモニタリング情報を示すための領域B8が含まれる。この領域B8を選択することにより、本開示のモニタリングデータを閲覧することができる。
【0128】
領域B8を選択すると、標準試料の情報を閲覧することができる領域(標準データの情報領域)と、前記測定データを取得した時点の動作の情報を閲覧することができる領域(動作の情報領域)とを表示するための出力データ(ユーザインターフェースデータ)Cを出力した画面が表示される(
図20)。出力データCによって表示される画面には、例えば1つの領域E内に、試薬ロットをプルダウンリストで選択するプルダウンキーC1、各検体分析装置2000の内部精度管理の情報を数値で示す表示領域C2、及び/又は標準試料の情報領域と動作の情報領域とのいずれかの時系列のデータがグラフ等で示される複数の表示領域C3(領域1から11)が含まれる。また、精度管理不良が検出されている情報に警告C4が表示されてもよい。また、C5は領域Eをスクロールして表示位置を変更するためのスクロールキーを示す。
【0129】
次に、CK-19の発現量を検査項目とした場合を例示として、個々の表示領域C3の例を説明する。
【0130】
図21に、陽性コントロールの濁度の検出時間の時系列グラフ領域Dを例示する。時系列グラフ領域Dには、グラフ領域D3と、グラフの表示領域を変更するための選択領域D4と、グラフに表示されている線又はマークを説明するための凡例領域D2と、ユーザが閲覧する形式の情報を示すための選択領域D1を含む。また、グラフ内の点は、分析装置3000が取得した時点での各標準試料の情報を反映する値を示している(本開示において以下同じ)。また、精度管理不良が検出されている情報に警告D5が表示されてもよい。
【0131】
図22に、陽性コントロールの定量値を時系列で示すグラフの表示領域Fを例示する。表示領域Fにはグラフの表示領域を変更するための選択領域F1が含まれてもよい。また、
図22には、CK-19の発現量を検査項目とした場合の検量線の傾きを時系列で示すグラフの表示領域Gを例示する。表示領域Gにはグラフの表示領域を変更するための選択領域G1が含まれてもよい。
【0132】
図23に、各検体分析装置2000のステータスのリストを示す表示領域Hと、各検体分析装置2000のエラー履歴のリストを示す表示領域Iが例示される。それぞれページには、各リストの表示領域を変更するためのリスト選択領域H1が表示されてもよい。表示領域Hには、各検体分析装置2000の操作状態を示すステータスの内容と、状態の異なるステータスを識別して表示するためのステータスIDと、そのステータスをサーバ4000が受信した日時等が表示されてもよい。また、リストを、例えばCSVファイルとして出力するための処理を選択する選択領域a(本開示において、以下同じ)が表示されてもよい。表示領域Iには、各検体分析装置2000で検出された測定不良(エラー)の内容と、各エラーを識別して表示するためのエラーコードと、そのエラーが検出された日時等が示されてもよい。
【0133】
図24に、前記エラーの内容を示す表示領域Jが例示する。各リストの表示領域を変更するためのリスト選択領域J1が表示されてもよい。表示領域Jには、エラーが検出された検査項目、エラーが標準試料又は検体で検出されたか、前記エラーの推定原因を示すメッセージ等が表示されてもよい。
図32にエラーのパターンと推定原因の関係を示す。精度管理不良、検体分析装置2000の動作異常は、各データに対応する所定の基準範囲と比較することにより判定することができる。すなわち、基準範囲以内であれば良好であり、基準範囲外であれば不良と判定することができる。
【0134】
図25に、検量線を作成した際の各キャリブレータの測定値を時系列で示すグラフの表示領域Kを例示する。表示領域Kにはグラフの表示領域を変更するための選択領域K1が含まれてもよい。また、各グラフの由来を示す凡例領域K2が表示されてもよい。また、
図25に、CK-19の発現量を検査項目とした場合の各ブロック65における陽性コントロールの測定値を時系列で表示したグラフの表示領域Lを例示する。表示領域Lにはグラフの表示領域を変更するための選択領域L1が含まれてもよい。また、各グラフの由来を示す凡例領域L2が表示されてもよい。また、ブロック毎に表示を切り替えるためのブロック表示領域L3が含まれてもよい。
【0135】
図26に、オペレータが各検体分析装置2000における陽性コントロールの濁度の立ち上がり時間を確認するための比較表示領域Mを例示する。領域Mは、領域Mに表示させる各検体分析装置2000における陽性コントロールの濁度の立ち上がり時間を切り替えるためのブルダウン領域M1と、グラフの表示領域を変更するための選択領域M2が含まれてもよい。また、
図26に、各検体分析装置2000の精度を各検体分析装置2000の間で比較するための、外部精度管理リストNを例示する。外部精度管理リストNには、陽性コントロールの濁度の立ち上がり時間、陽性コントロールの定量値等が含まれてもよい。
【0136】
図27に、各検体分析装置2000の動作を時系列で示す例として静電容量を時系列で示すための静電容量の表示領域Oを例示する。静電容量は、吸引ノズルにピペットチップが正しく装着されているか否かを検出するための情報である。表示領域Oには、グラフの表示領域を変更するための選択領域O1が含まれてもよい。各グラフの由来を示す凡例領域O2が表示されてもよい。また
図27には、各検体分析装置2000が何回検体、標準試料又は試薬を吸引したかをカウントした定量カウントの表示領域Pを例示する。定量カウントは、試薬残量と合わせて、各液体が正確な量で分注されたかを評価するために使用される。表示領域Pには、グラフの表示領域を変更するための選択領域P1が含まれてもよい。各グラフの由来を示す凡例領域P2が表示されてもよい。
【0137】
図28に、各検体分析装置2000のデータ処理ユニット230に付属するソフトウェアのバージョン情報のリストを表示する表示領域Qを例示する。表示領域Qには、ソフトウェアのプログラム名、プログラムバージョン、プログラムの更新日時等が表示されてもよい。
【0138】
また、
図28に、被検体の体内に病変が陽性であるかを検体毎に判定した判定結果に基づいて算出した、陽性率の算出結果のリストを表示する表示領域Rを例示する。表示領域Rには、陽性率を算出した母集団の情報(対象)、集計開始日時、集計修了日時、装置数、総リンパ節数、陰性数、陽性数、陽性率が表示されてもよい。
【0139】
図29に、試薬のロット毎に乳がんのリンパ節転移の陽性率を時系列でグラフで示す表示領域を例示する。
図29において、矢印は、試薬交換を行った時点、すなわち試薬のロットが変わった時点を示す。
図29において符号18aは、99.7%信頼区間の上限値を示す。符号18bは、99.7%信頼区間の下限値を示す。符号18cは、実際に検体から取得された判定結果の陽性率の推移を示す。符号18dは、試薬ロットを問わず取得された全判定結果における陽性率の推移を示す。
【0140】
試薬のロットが変わった直後は、判定結果のn数が少ないため、99.7%信頼区間の上限値及び下限値が大きい傾向にある。しかし、判定結果のn数が蓄積するにつれ小さくなる。したがって、試薬ロットを考慮する場合、試薬交換直後は、別のグループで精度をモニタリングする必要がある。
【0141】
図30に、50検体毎に乳がんのリンパ節転移の陽性率を時系列でグラフに示す表示領域を例示する。
図30において符号19aは、99.7%信頼区間の上限値を示す。符号19bは、99.7%信頼区間の下限値を示す。符号19cは、実際に検体から取得された判定結果の陽性率の推移を示す。符号19cは、実際に検体から取得された判定結果の陽性率の推移を示す。符号19dは、試薬ロットを問わず取得された全判定結果における陽性率の推移を示す。
【0142】
所定の検体数毎に陽性率で精度のモニタリングを行うと、99.7%信頼区間の上限値及び下限値が安定していることが示されている。したがって、所定の検体数毎に精度のモニタリングを行うことにより、試薬交換等の影響を受けることなく、精度管理を行うことができる。
【0143】
図31に、施設ごとに乳がんのリンパ節転移の陽性率を時系列でグラフで示す表示領域を例示する。
図31において符号20aは、99.7%信頼区間の上限値を示す。符号20bは、99.7%信頼区間の下限値を示す。符号19cは、実際に検体から取得された判定結果の陽性率の推移を示す。符号20cは、実際に検体から取得された判定結果の陽性率の推移を示す。
【0144】
所定の検体数毎に陽性率で精度のモニタリングを行うと、99.7%信頼区間の上限値及び下限値が安定していることが示されている。したがって、全体の判定結果について精度のモニタリングを行うことにより、試薬交換等の影響を受けることなく、精度管理を行うことができる。
【0145】
さらに、各表示領域には、例えば、
図21に示す精度管理不良となった時点を示す警告D5、各表示領域において各凡例を選択するためのカーソルF2と、各凡例の選択により表示される各情報の具体的な測定データ、前記測定データが取得された日時等を示す領域F3が表示されてもよい。
【0146】
本開示において、出力データは、検査項目毎に生成されてもよく、1つの領域に複数の検査項目についての標準試料の情報が含まれてもよい。1つの領域に複数の検査項目についての標準試料の情報を含む場合には、前記複数の検査項目は、同じ検体分析装置2000で取得可能であることが好ましい。
また、本開示において、出力データは、同一の検査項目について測定原理の異なる2つの以上の管理対象の検体分析装置2000から取得された割合を1つの領域に表示するデータであってもよい。出力データは、同一の検査項目について測定原理が同じであり機種が異なる2つの以上の管理対象の検体分析装置2000から取得された割合を1つの領域に表示するデータであってもよい。
【0147】
4.本開示の効果の検証
図33に示すように、生成装置3000が取得した判定結果について、試薬ロット毎のグループを母集団として、各母集団について陽性率を求めたところ、各試薬ロットの陽性率が99.7%信頼区間に収束することを見出した。
図33において符号20aは、99.7%信頼区間の上限値を示す。符号20bは、99.7%信頼区間の下限値を示す。
【0148】
母比率の範囲(信頼区間)の推定式は、以下のとおりである。
【数2】
(式中、nは試薬ロットが変わってからの検体数、pは累積検体の平均値、Zは定数を示す)。
【符号の説明】
【0149】
2000 検体分析装置
3000 精度管理データの生成装置
7000 精度管理データの生成システム
710a 処理部
710g 通信部