(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】人または物体を検知するセンサ、自動ドアシステム、自動ドアおよび自動ドアの評価方法
(51)【国際特許分類】
E05F 15/74 20150101AFI20220322BHJP
G01V 8/10 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
E05F15/74
G01V8/10 S
(21)【出願番号】P 2018068384
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 渉太
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-231650(JP,A)
【文献】国際公開第2018/030337(WO,A1)
【文献】特開2017-014801(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102010033818(DE,A1)
【文献】米国特許第05142152(US,A)
【文献】特開2008-291598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00-15/79
G01V 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人または物体を検知する検知エリアを複数の領域に分割した各部分領域で、人または物体の存在を検知した検知回数に応じた第1の値と、人または物体の存在を検知していた時間に応じた第2の値の少なくとも一方の値を求める演算部と、
前記各部分領域に対応して、前記値に応じた情報を記憶する記憶部と、を備
え、
前記情報は、前記検知回数を評価していた期間に対する前記検知回数の比率である、
人または物体を検知するセンサ。
【請求項2】
人または物体の存在を検知したときに開扉され、人または物体の存在を検知しないときに閉扉される扉に備えられ、
前記演算部は、人または物体の存在を検知してから扉が1開閉するまでの間に人または物体の存在を1回以上検知した場合、前記第1の値を所定の単位変化させる、
請求項1に記載の人または物体を検知するセンサ。
【請求項3】
前記演算部は、人または物体の存在を検知してから閉扉動作が開始されるまでの間に人または物体の存在を1回以上検知した場合、前記第1の値を所定の単位変化させる、
請求項1に記載の人または物体を検知するセンサ。
【請求項4】
前記情報は、開扉動作した回数に対する前記値の比率である、
請求項2または3に記載の人または物体を検知するセンサ。
【請求項5】
人または物体の画像を取得する画像センサを備える、
請求項1から
4のいずれかに記載の人または物体を検知するセンサ。
【請求項6】
前記各部分領域に対応して記憶されている前記情報を視覚的に示すデータを生成するデータ生成部を備える、
請求項1から
5のいずれかに記載の人または物体を検知するセンサ。
【請求項7】
人または物体を検知する検知エリアを複数の領域に分割した各部分領域の現在の検知状態だけを記憶できるセンサと、
当該センサと通信して人または物体の存在を検知した検知回数に応じた第1の値と、人または物体の存在を検知していた時間に応じた第2の値の少なくとも一方の値を
求める演算部と、前記各部分領域に対応して、前記値に応じた情報を記憶する記憶部と、を有する電子装置と、
を備え
、
前記情報は、前記検知回数を評価していた期間に対する前記検知回数の比率である、
自動ドアシステム。
【請求項8】
人または物体を検知する検知エリアを複数の領域に分割した各部分領域で、人または物体の存在を検知した検知回数に応じた第1の値と、人または物体の存在を検知していた時間に応じた第2の値の少なくとも一方の値を求める演算部と、
前記各部分領域に対応して、前記値に応じた情報を記憶する自動ドアセンサと、
を備え
、
前記情報は、前記検知回数を評価していた期間に対する前記検知回数の比率である、
自動ドア。
【請求項9】
人または物体を検知する検知エリアを複数の領域に分割した各部分領域で、人または物体の存在を検知した検知回数に応じた第1の値と、人または物体の存在を検知していた時間に応じた第2の値の少なくとも一方の値を求めることと、
前記各部分領域に対応して、前記値に応じた情報を記憶することと、
を含
み、
前記情報は、前記検知回数を評価していた期間に対する前記検知回数の比率である、
自動ドアの評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人または物体を検知するセンサ、自動ドアシステム、自動ドアおよび自動ドアの評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動ドアなどに用いる人や物体を検知するセンサが知られている。例えば、本出願人は、特許文献1により、自動ドアセンサを備えた自動ドアの技術を開示した。この自動ドアは、動作制御に関する情報を蓄積するデータロガーを備えている。このデータロガーは、データバスに接続されており、データバス上の情報を全て受信して順次記憶していく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、自動ドアの起動などに用いられる人や物体を検知するセンサについて検討し、以下の認識を得た。
自動ドアでは、初期設定や保守作業の際に、扉の開閉動作の適正化のため、センサエリアを分割した複数の小スポット(以下、「スポット」という)について、スポット毎に感度などのパラメータを調整することがある。しかし、この調整の際、適正化の対策を行うべきスポットや範囲を把握できないために、的外れな調整が行われる懸念がある。
【0005】
そこで、定量的な設定を可能にするため、自動ドア自体が具体的な検知情報などを蓄積するように構成することが考えられる。しかし、単に時系列的にスポット毎のデータを保存すると、膨大な情報量となり、それを格納するために大容量のメモリが必要になるという問題がある。これらから、本発明者は、特許文献1に記載の技術には、少ないメモリで、スポット毎に検知した情報を記憶し、スポット毎のパラメータの調整を容易にする観点で改善の余地があることを認識した。
【0006】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、少ないメモリで各スポットが検知した情報を記憶することが可能な人または物体を検知するセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の人または物体を検知するセンサは、人または物体を検知する検知エリアを複数の領域に分割した各部分領域で、人または物体の存在を検知した検知回数に応じた第1の値と、人または物体の存在を検知していた時間に応じた第2の値の少なくとも一方の値を求める演算部と、各部分領域に対応して、値に応じた情報を記憶する記憶部と、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、プログラム、プログラムを記録した一時的なまたは一時的でない記憶媒体、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少ないメモリで各スポットが検知した情報を記憶することが可能な人または物体を検知するセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る自動ドアシステムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図1の自動ドアを概略的に示す正面図である。
【
図3】
図1の自動ドアの検知エリアを概略的に示す上面視の図である。
【
図4】
図1の検知センサの記憶部の記憶情報を模式的に示す図である。
【
図5】
図1の検知センサの画像データの一例を示す図である。
【
図6】
図1の検知センサの画像データの別の一例を示す図である。
【
図7】
図1の自動ドアの画像データの一例を示す図である。
【
図8】
図1の自動ドアの画像データの別の一例を示す図である。
【
図9】第2実施形態に係る自動ドアシステムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図10】第3実施形態に係る自動ドアシステムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図11】第4実施形態に係る自動ドアの評価方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明の概要について説明する。本発明のある態様は、人または物体(以下、「被検知体」という)を検知するセンサである。本センサは、被検知体の検知結果に応じて動作する自動ドアやエスカレータなどの各種装置に備えられてもよい。本センサは、被検知体を検知する検知エリアを複数の領域に分割した各部分領域で、被検知体の存在を検知した検知回数に応じた第1の値(以下、「値Nv1」という)と被検知体の存在を検知していた時間に応じた第2の値(以下、「値Nv2」という)の少なくとも一方の値(以下、「値Nv」という)を求める演算部と、各部分領域に対応して、値Nvに応じた情報(以下、「情報Mv」という)を記憶する記憶部と、を備える。
【0012】
この態様によると、各部分領域に対応して、値Nv1と値Nv2の少なくとも一方の値Nvに応じた情報Mvを記憶することができる。この場合の情報量は、部分領域毎の検知情報を時系列的にすべて記憶する場合と比べて小さくなるので、記憶容量の少ないメモリで足りる。このため、被検知体を検知するセンサが簡略化され、小型化やコスト削減が容易になる。
【0013】
また、各部分領域に対応して、記憶部に記憶された情報Mvを用いて部分領域毎の感度などのパラメータを調整することができる。このため、パラメータ調整が容易になり特別な技能を有する者でなくても調整することが可能になる。またパラメータについて的外れでない的確な調整を行うことが可能になる。また、部分領域毎の値Nv1や値Nv2などの情報Mvによって、被検知体の動向や誤検知の有無を容易に把握することができる。
【0014】
記憶部は、演算部と一体に設けられてもよいし、別々に設けられてもよい。被検知体は、特に限定されないが、例えば、人、人型ロボット、自動運搬車、動物、カート、台車などであってもよい。
【0015】
本センサは、被検知体の存在を検知したときに開扉され、被検知体の存在を検知しないときに閉扉される扉に備えられ、演算部は、被検知体の存在を検知してから扉が1開閉するまでの間に被検知体の存在を1回以上検知した場合、値Nv1を所定の単位変化させてもよい。この場合、1開閉期間に所定の単位(例えば、1カウント)だけ変化させるので、行ったり来たりしているような被検知体による複数回検知を1カウントとして記録することができる。このため、単に被検知体の検知回数を記録する場合に比べて、より正確に被検知体の動向や誤検知の有無を容易に把握することができる。
【0016】
演算部は、被検知体の存在を検知してから閉扉動作が開始されるまでの間に被検知体の存在を1回以上検知した場合、値Nv1を所定の単位変化させてもよい。この場合、1開閉期間に複数の被検知体を検知した場合にそれぞれの被検知体を認識してカウントすることができる。
【0017】
情報Mvは、開扉動作した回数に対する値Nvの比率であってもよい。この場合、単純に被検知体を検知した回数を記憶する場合と比べて、記憶する情報量を抑制することができる。情報量を抑制することにより、メモリの記憶容量を削減することができる。なお、このセンサは、自動ドアのコントローラから開扉動作した回数を取得することができるように構成されてもよい。
【0018】
情報Mvは、検知回数を評価していた期間に対する検知回数の比率であってもよい。この場合、被検知体を検知した頻度を把握することができる。評価期間は、数日、数週間、数ヶ月、半年、数年などであってもよい。評価期間が長い場合には、検知頻度の方が検知回数より情報量を小さくすることができる。
【0019】
本センサは、被検知体の画像を取得する画像センサを備えてもよい。この場合、取得した画像から被検知体の特徴を抽出して定量化することにより、被検知体の類似性を把握することが可能になる。例えば、被検知体の色や大きさを定量化してその類似性を把握することができる。被検知体が所定の範囲で類似する場合に、これらの被検知体は同一人であると判定することができる。1開閉期間に同一人を重複して検知した場合に値Nv1を1カウントだけ増やすことが可能になる。同一人について重複カウントする場合に比べて、より正確に被検知体の動向や誤検知の有無を把握することができる。
【0020】
各部分領域に対応して記憶されている情報Mvを視覚的に示すデータ(以下、「データGd」という)を生成するデータ生成部を備えてもよい。このデータGdは画像データであってもよい。この場合、生成されたデータGdを表示あるいは印刷して確認することができる。このことにより、作業員は、対策が必要な部分領域を定量的に把握することができるので、短時間で的確な対策を行うことができる。データGdは、各部分領域の情報Mvを、明度や色相の違い、線やドットなどの模様の密度、棒グラフの棒の高さ、折れ線グラフのドットの位置などによって表現した分布図であってもよい。
【0021】
データGdは、随時生成されてもよいし、何らかの生成要求があったときに生成されてもよいし、所定の期間ごとに生成されてもよい。生成されたデータGdは保持され、送信要求があったときに送信されてもよいし、所定の間隔でデータベースなどにアップロードされてもよい。
【0022】
本発明の別の態様は自動ドアシステムである。本自動ドアシステムは、被検知体を検知する検知エリアを複数の領域に分割した各部分領域の現在の検知状態だけを記憶できるセンサと、当該センサと通信して被検知体の存在を検知した検知回数に応じた値Nv1と被検知体の存在を検知していた時間に応じた値Nv2の少なくとも一方の値Nvを取得する電子装置と、を備える。
【0023】
この態様によると、値Nv1と値Nv2の少なくとも一方の値Nvを電子装置に転送することができるので、センサのメモリの記憶容量が小さい場合でも正確な情報を記憶することができる。
【0024】
本発明のさらに別の態様は自動ドアセンサである。この自動ドアセンサは、被検知体を検知する検知エリアを複数の領域に分割した各部分領域で、被検知体の存在を検知した検知回数に応じた値Nv1と被検知体の存在を検知していた時間に応じた値Nv2の少なくとも一方の値Nvを求める演算部と、各部分領域に対応して、値Nvに応じた情報を記憶する。
【0025】
この態様によると、自動ドアセンサは、各部分領域に対応して検知回数や検知時間などの情報を記憶するので、メモリを別途設ける場合に比べて配線や通信手段を簡素化することができる。このメモリは、自動ドアセンサが設けられる配線基板上に実装されてもよい。
【0026】
本発明のさらに別の態様は自動ドアの評価方法である。この自動ドアの評価方法は、被検知体を検知する検知エリアを複数の領域に分割した各部分領域で、被検知体の存在を検知した検知回数に応じた値Nv1と被検知体の存在を検知していた時間に応じた値Nv2の少なくとも一方の値Nvを求めることと、各部分領域に対応して、値Nvに応じた情報を記憶することと、を含む。
【0027】
この態様によると、自動ドアの各部分領域の検知回数や検知時間などの情報により被検知体の動向や誤検知の有無を把握することが容易になる。この評価結果に基づいて調整を行うことにより、各部分領域の検知感度などのパラメータを適切な状態に調整することができる。
【0028】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施の形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0029】
[第1実施形態]
まず、
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る自動ドアシステム1について説明する。
図1は、自動ドアシステム1の構成の一例を示すブロック図である。自動ドアシステム1は、自動ドア100と、携帯端末70と、外部記憶装置74と、を含む。自動ドア100は、自動ドア100を通行する被検知体を検知する検知センサ10を備える。携帯端末70は、自動ドアの設置・保守を行う作業員が使用するハンディターミナルである。作業員は、携帯端末70を用いて、自動ドア100の扉の移動速度、開放時間、検知センサ10の感度などの制御パラメータを設定することができる。外部記憶装置74は、所定のネットワークを介して自動ドア100と通信する外部記憶装置であって、例えばネットワークサーバであってもよい。
【0030】
次に、
図1~
図3を参照して、自動ドア100の全体構成について説明する。
図2は、自動ドア100を概略的に示す正面図である。
図3は、自動ドア100の検知エリアを概略的に示す上面視の図である。自動ドア100は、被検知体が通行する開口を開閉する扉12を間口方向Wに開閉動作させる可動装置である。自動ドア100は、扉12が開状態のとき、被検知体は奥行方向Dに通行可能になる。この例では、間口方向Wと奥行方向Dとは互いに直交する。
【0031】
自動ドア100は、検知センサ10と、補助センサ28と、内部バス16と、コントローラ22と、ドアエンジン26と、を含む。コントローラ22は、制御部20とエンジン駆動部24とを含む回路ユニットであり、例えば自動ドア100の無目14に設けられる。検知センサ10は、被検知体保護のため扉12の近傍に設けられる。検知センサ10は、検知エリア18において、被検知体の存在を検知し、その検知結果を制御部20に提供する。検知センサ10は、自動ドアセンサと称されることがある。本実施形態の検知センサ10は、無目14に設けられている。検知センサ10については後述する。
【0032】
補助センサ28は、開扉した扉12の間を被検知体が通行している場合に、扉12の閉動作を制限し、被検知体の安全を図る安全センサとして機能する。補助センサ28は、公知の各種センサを用いることができる。本実施形態の補助センサ28は、赤外線を投光する投光器28aと、その赤外線を受光する受光器28bと、を含み、当該赤外線の遮断の有無を検知する。補助センサ28は、扉12の間を通行する被検知体を検知してその検知結果を制御部20に提供する。
【0033】
内部バス16は、コントローラ22の制御部20や検知センサ10など自動ドア100の構成要素の間で動作制御に関する情報を伝送するデータバスとして機能する。制御部20および検知センサ10は、内部バス16に自動ドア100の動作制御に関する情報を送信する。制御部20は、例えば、扉12の位置を内部バス16に送信する。制御部20および検知センサ10は、内部バス16に送信された自動ドア100の動作制御に関する情報を受信する。
【0034】
制御部20は、検知センサ10および補助センサ28の検知結果に基づいて、エンジン駆動部24を介してドアエンジン26を駆動する。エンジン駆動部24は、制御部20の制御に応じてドアエンジン26を駆動する駆動回路である。ドアエンジン26は、エンジン駆動部24に駆動されて、扉12を開閉動作させる。一例として、ドアエンジン26は、モータ(不図示)とこのモータに駆動されるプーリ(不図示)とを含み、扉12が懸架されたループ状のベルト(不図示)を駆動して扉12を間口方向Wに移動させる。
【0035】
(検知エリア)
図3に示すように、検知エリア18は、検知エリア18を複数の領域に分割した複数の部分領域18sで構成される。複数の部分領域18sは、床面に二次元に配列されている。各部分領域18sは、それぞれ独立して被検知体を検知可能なスポットである。一例として、複数の部分領域18sは、間口方向Wおよび奥行方向Dにマトリックス状に配置される。本実施形態では、検知エリア18は、間口方向WにA行~L行まで12行に配列され、奥行方向Dに1列目~6列目まで6列に配列された72個の部分領域18sで構成されている。以下、各部分領域18sを、例えば、スポットE1、スポットF2のように、行名のアルファベットと、列名の数字とによって表記することがある。部分領域18sの数は、72個より多くてもよいし、少なくてもよい。
【0036】
検知エリア18の形状は、特に限定はないが、例えば、矩形、円形、台形、楕円形などの形状であってもよい。また、検知エリア18には検知されない隙間があってもよい。また、部分領域18sの形状は、特に限定されないが、例えば、矩形、円形、台形、楕円形などの形状であってもよい。互いに隣り合う部分領域18sの間に隙間があってもよい。
【0037】
次に、
図1~
図4を参照して検知センサ10について説明する。
図1のブロック図で示す、検知センサ10および制御部20の各ブロックはハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする電子素子や機械部品などで実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0038】
図1のブロック図に示すように、検知センサ10は、検知部10aと、演算部10bと、記憶部10cと、通信部10dと、データ生成部10eと、設定管理部10fと、を含む。演算部10bおよび記憶部10cは、同一の配線基板上に設けられてもよいし、同一のICチップ上に形成されてもよい。演算部10bまたは記憶部10cが設けられる配線基板上に検知部10aが設けられてもよい。
【0039】
検知部10aの検知原理は、特に限定されないが、例えば、赤外線(反射型およびパッシブ型を含む)、レーザ、画像センサ、超音波、電波などを用いるものであってもよい。本実施形態の検知部10aは、検知エリア18に投光された赤外線の反射光を受光する受光素子である。検知部10aは、検知エリア18の各部分領域18sに対応して被検知体の検知結果を演算部10bに提供する。本実施形態の検知部10aは、各部分領域18sに対応する72個の検知結果を提供する。この検知結果は被検知体を検知しているか否かの2値情報であってもよい。
【0040】
演算部10bは、検知部10aの検知結果に基づき、被検知体の存在を検知した検知回数に応じた第1の値Nv1と、被検知体の存在を検知していた時間に応じた第2の値Nv2の少なくとも一方の値Nvを求める。つまり、演算部10bは、各部分領域18sに対応する72個の値Nvを求める。本実施形態の演算部10bでは、第1の値Nv1は被検知体の検知回数であり、第2の値Nv2は被検知体の存在を検知していた時間である。以下、値Nvが被検知体の検知回数である例について説明するが、値Nvが被検知体の存在を検知していた時間である場合も同様である。
【0041】
記憶部10cは、各部分領域18sに対応して、演算部10bの演算結果である値Nvに応じた情報Mvを記憶する。情報Mvは、値Nvに対して各種の処理を行って得た値であってもよい。
【0042】
下記に、値Nvから情報Mvを求める処理を例示する。
(処理の例1)情報Mvは、値Nvであってもよい。例えば、記憶部10cは、値Nvをそのまま情報Mvとして記憶してもよい。
(処理の例2)情報Mvは、値Nv(分子)の扉12の開扉回数(分母)に対する比率であってもよい。例えば、記憶部10cは、値Nvを扉12の開扉回数で除して得た値を情報Mvとして記憶してもよい。
(処理の例3)情報Mvは、値Nv(分子)の、その値Nvを評価していた評価期間(分母)に対する比率であってもよい。特に、情報Mvは、被検知体の検知回数の、その検知回数を評価していた期間に対する比率であってもよい。例えば、記憶部10cは、被検知体の検知回数である値Nvを、その検知回数を評価していた期間で除して得た値を情報Mvとして記憶してもよい。
(処理の例4)情報Mvは、値Nv(分子)を所定のアルゴリズムに基づき圧縮したデータであってもよい。例えば、記憶部10cは、値Nvを所定の数値(例えば、100、1000など)で除して得た値を情報Mvとして記憶してもよい。
このように処理することにより、情報Mvの情報量を値Nvの情報量より小さくすることが可能になる。
【0043】
本実施形態の記憶部10cは、値Nvをそのまま情報Mvとして記憶する。つまり、記憶部10cは、各部分領域18sに対応する72個の値Nvを情報Mvとして記憶する。記憶部10cは、1または複数ビットのメモリを部分領域18sの数だけ備えてもよい。本実施形態の記憶部10cは、1ビットメモリを72個備えている。
図4は、記憶部10cの記憶状態を模式的に示す図である。この図は、被検知体が扉12に向かって奥行方向Dに進行し、開扉された扉12の間を通過した場合の記憶状態を示している。この図で、スポットE1~E6、F1~F6、G1~G6、H1~H6ではMv=1であり、その他のスポットではMv=0である。
【0044】
通信部10dは、記憶部10cの情報Mvを制御部20に送信する。本実施形態の通信部10dは、内部バス16を介して記憶部10cの情報Mvを制御部20に送信する。制御部20は、送信された記憶部10cの情報Mvを受信して後述する二次記憶部20cに記憶する。通信部10dは、制御部20から動作や設定に関する情報を受信する。
【0045】
情報Mvを送信するタイミングについて説明する。
図4の例では、最初に1列目のスポットE1、F1、G1、およびH1が被検知体を検知し、以後、2列目から6列目のスポットが順次に被検知体を検知する。つまり、1回の扉12の開閉に対して、各スポットの検知タイミングはそれぞれ異なる。これらが検知されたタイミングで、情報Mvをその都度送信してもよいが、なんらかのイベントが発生した場合にのみまとめて情報Mvを送信してもよい。本実施形態の通信部10dは、所定のイベントが発生したときに、記憶部10cの情報Mvをまとめて送信する。この場合、処理が簡略化され、二次記憶部20cの記憶容量を小さくできる。
【0046】
データ生成部10eは、各部分領域18sに対応して記憶部10cに記憶されている情報Mvを視覚的に示すデータを生成する。つまり、データ生成部10eは、記憶部10cの情報Mvを視覚的に示すデータGdを生成する。データGdは、各部分領域18sの情報Mvの値を、色や模様の相違により表現した分布図であってもよい。
【0047】
図5、
図6は、情報Mvを視覚的に示すデータGdの一例を示す図であり、
図4の例について、各部分領域18sの情報MvをデータGdとして示している。
図5において、各グリッドは各部分領域18sに対応し、その色が情報Mvの値を示している。
図5では、情報Mvの値を白とハッチングの2段階で示している。
図6では、情報Mvの値を棒グラフの棒の高さによって示している。本実施形態のデータ生成部10eは、携帯端末70の操作に応じてデータGdを生成し、データGdは携帯端末70に表示される。データGdを使用して設定を変更する手順は、後述するデータGsを使用して設定を変更する手順と同様でありここでは説明を省く。
【0048】
設定管理部10fは、各部分領域18sに対応する検知部10aの設定パラメータを管理する。本実施形態の設定管理部10fは、検知部10a毎に検知感度および検知の有効・無効を管理する。検知部10aの検知感度は、閾値を変更することによって変更されてもよい。検知が無効化された部分領域18sについては、検知部10aの検知状況に関わらず、非検知状態を出力する。この例では、設定管理部10fの設定内容は、携帯端末70の操作に基づいて変更される。設定管理部10fは、通信部10dおよび制御部20を介して携帯端末70から設定情報を取得することができる。
【0049】
(転送動作)
検知センサ10の記憶部10cの記憶容量を小さくするために、本実施形態は所定のタイミングで記憶部10cの情報Mvを制御部20の二次記憶部20cに転送し、記憶部10cをクリアするように構成されている。下記に、情報Mvの転送動作を例示する。
【0050】
(転送動作の例1)
扉12が全開したときに、記憶部10cの情報Mvが二次記憶部20cに転送され、記憶部10cがクリアされてもよい。検知センサ10は、制御部20が内部バス16に送信した扉12の位置を取得して、扉12が全開したか否かを判定することができる。
【0051】
(転送動作の例2)
扉12が全開した状態で補助センサ28が被検知体を検知したときに、記憶部10cの情報Mvが二次記憶部20cに転送され、記憶部10cがクリアされてもよい。検知センサ10は、制御部20が内部バス16に送信した補助センサ28の検知結果を取得して、補助センサ28が被検知体を検知したか否かの情報を取得することができる。
【0052】
(転送動作の例3)
検知センサ10が被検知体を検知しなくなったときに、記憶部10cの情報Mvが二次記憶部20cに転送され、記憶部10cがクリアされてもよい。検知センサ10は、検知部10aの検知結果に基づいて、被検知体を検知しなくなったか否かの情報を取得することができる。
【0053】
(転送動作の例4)
検知センサ10が被検知体を検知しなくなった後、タイマ制御部20fのタイマ時間を経過したときに、記憶部10cの情報Mvが二次記憶部20cに転送され、記憶部10cがクリアされてもよい。検知センサ10は、制御部20が内部バス16に送信したタイマ制御部20fの出力信号を取得して、タイマ時間を経過したか否かの情報を取得することができる。
【0054】
(転送動作の例5)
扉12が全開して閉じ方向に反転したときに、記憶部10cの情報Mvが二次記憶部20cに転送され、記憶部10cがクリアされてもよい。検知センサ10は、制御部20が内部バス16に送信した扉12の移動方向を取得して、扉12が反転したか否かの情報を取得することができる。
【0055】
(転送動作の例6)
扉12が全閉したときに、記憶部10cの情報Mvが二次記憶部20cに転送され、記憶部10cがクリアされてもよい。検知センサ10は、制御部20が内部バス16に送信した扉12の位置を取得して、扉12が全閉したか否かの情報を取得することができる。
【0056】
(制御部)
次に、
図1を参照して、制御部20について説明する。制御部20は、取得部20aと、バス通信部20bと、二次記憶部20cと、画像データ生成部20dと、エンジン制御部20eと、タイマ制御部20fと、近距離通信部20gと、パラメータ管理部20hと、ネット通信部20jと、を含む。取得部20aは、補助センサ28からその検知結果を取得する。バス通信部20bは、内部バス16に動作制御に関する情報を送信し、内部バス16から動作制御に関する情報を受信する。この例のバス通信部20bは、内部バス16を介して、検知センサ10から検知エリア18の検知結果を取得し、検知センサ10に所定の情報を提供する。
【0057】
二次記憶部20cは、後述する検知センサ10の記憶部10cから情報Mvを取得して二次的に記憶する。この場合、情報Mvは累積されて情報Msとして記憶される。
【0058】
画像データ生成部20dは、各部分領域18sに対応して二次記憶部20cに記憶されている情報Msを視覚的に示すデータを生成する。つまり、画像データ生成部20dは、二次記憶部20cの情報Msを視覚的に示すデータGsを生成する。データGsは、各部分領域18sの情報Msの値を、色や模様の相違により表現した分布図であってもよい。
【0059】
図7、
図8は、情報Msを視覚的に示すデータの一例を示す図である。これらの図は、各部分領域18sの情報MsをデータGsとして示している。
図7において、各グリッドは各部分領域18sに対応し、情報Msの値を白と2段階のハッチングとで示している。
図8では、情報Msの値を棒グラフの棒の高さによって示している。本実施形態の画像データ生成部20dは、携帯端末70の操作に応じてデータGsを生成し、データGsは携帯端末70に表示される。データGsは、プリンタ(不図示)によって印刷されてもよいし、ネットワークを介して所定の情報端末に送信されてもよい。
【0060】
次に、データGsを使用して設定を変更する手順を説明する。保守を行う作業員は、データGsを参考にして対策が必要な部分領域18sを容易に絞り込むことができ、より的確なパラメータ調整をすることができる。例えば、データGsに、周囲と異なる特異点が見られる場合には、その特異点に対応する部分領域18sで誤検知が生じていると判断することができる。
【0061】
図7、
図8において、スポットL1が周囲から孤立した特異点Psと判断することができる。このような特異点Psについて、以下に例示する原因が推定される。
(推定原因1)オフィスの事務機器の配置などにより人の動線がスポットL1と重複していることにより不要開閉を生じている。
(推定原因2)スポットL1に対応する床面の反射率が、他の床面より高いことにより、閾値に対するマージンが小さく、誤検知による不要開閉を生じている。
(推定原因3)スポットL1の近傍に観葉植物などが置かれていることにより、葉の揺らぎなどを誤検知して不要開閉を生じている。
(推定原因4)スポットL1で反射した外光(太陽光など)により誤検知を生じて不要開閉を生じている。
【0062】
保守を行う作業員は、これらの推定原因を取り除く対策を施すことにより不要開閉を低減することができる。原因を取り除けない場合や原因が不明な場合には、スポットL1に対応する検知部10aの感度を下げ、または検知を無効化することなどの対策を施すことで、誤検知による不要開閉を低減することができる。このように、本実施形態によれば、作業員は、対策が必要なスポットを定量的に把握することができるので、短時間で的確な対策を行うことができる。
【0063】
エンジン制御部20eは、検知センサ10の検知結果および補助センサ28の検知結果に応じてエンジン駆動部24を制御する。タイマ制御部20fは、被検知体を検知しなくなってから所定のタイマ時間経過するまで、扉12を開放したままに制御するオープンタイマとして機能する。近距離通信部20gは、自動ドア100の近傍の携帯端末70と通信する。この例の近距離通信部20gは、検知エリア18の検知回数または検知時間などの自動ドア100の動作情報を携帯端末70に送信し、携帯端末70から、パラメータの設定情報を受信する。
【0064】
パラメータ管理部20hは、扉12の制御パラメータの設定を管理する。管理可能な制御パラメータとしては、扉開速度、扉閉速度、扉の開放時間を規定するオープンタイマ、スタートトルク、ブレーキトルク、反転時のブレーキトルクである反転トルク、全開位置手前の徐行速度である開クッション速度、全閉位置手前の徐行速度である閉クッション速度、全開ストローク、半開ストロークなどが挙げられる。本実施形態のパラメータ管理部20hでは、携帯端末70の操作により設定内容を変更することができる。
【0065】
ネット通信部20jは、無線または有線ネットワークを介して外部記憶装置74と通信する。この例のネット通信部20jは、検知エリア18の検知回数または検知時間に関する情報を、外部記憶装置74に送信して、外部記憶装置74に記憶させる。この情報は、検知センサ10から取得した情報であってもよいし、二次記憶部20cに記憶した情報であってもよい。外部記憶装置74は、検知センサ10から取得した情報を記憶する場合、二次記憶装置として機能し、二次記憶部20cに記憶した情報を記憶する場合、三次記憶装置として機能する。
【0066】
このように構成された自動ドア100の1開閉の動作の一例を説明する。
(1)検知部10aが部分領域18sのいずれかで被検知体を検知したら、検知センサ10は、その検知結果を制御部20に送信する。
(2)制御部20は、当該検知結果を取得したら、扉12を開くようにエンジン駆動部24を制御する。
(3)検知部10aが被検知体を検知しなくなったら、制御部20は、タイマ制御部20fにより経過時間のカウントを開始する。
(4)経過時間が所定の期間を超えたら、制御部20は、扉12を閉じるようにエンジン駆動部24を制御する。扉12が閉位置に戻ったら、制御部20は、開閉動作を終了する。
(5)この間、検知センサ10は、記憶部10cに情報Mvを記憶する。また、前述の転送動作に示したように、検知センサ10は、所定のタイミングで記憶部10cの情報Mvを制御部20の二次記憶部20cに転送し、記憶部10cをクリアする。
(6)携帯端末70から要求があったとき、検知センサ10または制御部20は、データGdまたはGsを生成して携帯端末70に送信する。
【0067】
以上が、第1実施形態の説明である。このように構成されたことにより、本実施形態の自動ドアシステム1は、各部分領域18sの検知状況に基づいて記憶した情報MvまたはMsに基づいて、各部分領域18sについて的確な設定を適切に行うことができる。
【0068】
[第2実施形態]
次に、
図9を参照して、本発明の第2実施形態に係る自動ドアシステム2について説明する。
図9は、自動ドアシステム2の構成の一例を示すブロック図である。自動ドアシステム2は、検知センサ10(B)と、制御部20(B)と、を備える。検知センサ10(B)は、人または物体(被検知体)を検知する検知エリア18を複数の領域に分割した各部分領域18sの現在の検知状態だけを記憶することができる。制御部20(B)は、当該検知センサ10(B)と通信して被検知体の存在を検知した検知回数に応じた第1の値Nv1と、被検知体の存在を検知していた時間に応じた第2の値Nv2の少なくとも一方の値Nvを取得する演算部20kを含む電子装置である。
【0069】
本実施形態の自動ドアシステム2は、第1実施形態の自動ドアシステム1に対して検知センサと制御部の構成が相違し、他の構成は同様である。したがって、重複する説明を省き、相違点について重点的に説明する。
【0070】
本実施形態の自動ドアシステム2は、補助センサ28と、内部バス16と、コントローラ22と、ドアエンジン26と、携帯端末70と、外部記憶装置74と、をさらに含む。コントローラ22は、制御部20(B)とエンジン駆動部24とを含む。本実施形態のコントローラ22は、制御部20の代わりに制御部20(B)を含む点で第1実施形態のコントローラ22と相違し、他の構成は同様である。
【0071】
図9を参照して、検知センサ10(B)および制御部20(B)について説明する。本実施形態の検知センサ10(B)は、演算部10bおよびデータ生成部10eを備えず、記憶部10cの代わりに記憶部10hを備え、画像センサ10gおよび特徴抽出部10jをさらに備える点で第1実施形態の検知センサ10と相違し、他の構成は同様である。本実施形態の制御部20(B)は、演算部20kを含む点で第1実施形態の制御部20と相違し、他の構成は同様である。換言すれば、演算部20kは、検知センサ10の代わりに制御部20(B)に設けられている。演算部20kの機能・動作は演算部10bと同様である。
【0072】
本実施形態の画像センサ10gは、検知エリア18の人または物体(被検知体)の画像Psを取得する。画像センサ10gは、例えばイメージセンサであってもよい。特徴抽出部10jは、画像Psから被検知体の画像的な特徴Cgを抽出する。特徴Cgは被検知体の色、大きさ、形状などを定量化したものであってもよい。被検知体の色は、例えば被検知体の画像Psの明度から閾値を用いて区分された白と黒と灰色であってもよいし、画像Psの色相から区分された色であってもよい。被検知体の大きさは、画像Psの面積から特定することができる。
【0073】
検知センサ10(B)は、検知部10aが複数回検知したそれぞれの被検知体の画像Psを比較して所定の範囲で類似している場合に、これらの被検知体は同一人であると判定する。この判定は、定量化された特徴Cgに応じて行われてもよい。画像センサ10gを備えることにより、1回の開閉動作における同一人の重複検知について、第1の値Nv1を1単位だけ変化させることができる。
【0074】
第1実施形態の記憶部10cは、演算部10bの演算結果(情報Mv)を記憶するが、本実施形態の記憶部10hは、各部分領域18sの現在の検知状態だけを記憶する。この場合、記憶部10hの記憶容量を削減することができる。
【0075】
制御部20(B)の演算部20kは、内部バス16を介して検知センサ10(B)と通信して検知部10aの検知結果を取得する。演算部20kは、検知部10aの検知結果に基づき、被検知体の存在を検知した検知回数に応じた第1の値Nv1と、被検知体の存在を検知していた時間に応じた第2の値Nv2の少なくとも一方の値Nvを求める。制御部20(B)の二次記憶部20cは、演算部20kから値Nvを取得して情報Msとして記憶する。
【0076】
以上が、第2実施形態の説明である。このように構成されたことにより、本実施形態の自動ドアシステム2では、検知センサ10(B)の記憶容量を小さくすることができる。また、演算部を有しないため検知センサ10(B)が簡略化され、検知センサ10(B)の小型化やコスト削減が容易になる。
【0077】
[第3実施形態]
次に、
図10を参照して、本発明の第3実施形態に係る自動ドア300について説明する。
図10は、自動ドア300を含む自動ドアシステム3の構成の一例を示すブロック図である。自動ドア300は、演算部20mと、検知センサ10(C)と、を備える。演算部20mは、人または物体(被検知体)を検知する検知エリア18を複数の領域に分割した各部分領域18sで、被検知体の存在を検知した検知回数に応じた第1の値Nv1と被検知体の存在を検知していた時間に応じた第2の値Nv2の少なくとも一方の値Nvを求める。検知センサ10(C)は、いわゆる自動ドアセンサであり、各部分領域18sに対応して、値Nvに応じた情報を記憶する記憶部10mを含む。
【0078】
本実施形態の自動ドア300は、第1実施形態の自動ドア100に対して検知センサ10(C)と制御部20(C)の構成が相違し、他の構成は同様である。したがって、重複する説明を省き、相違点について重点的に説明する。
【0079】
本実施形態の自動ドア300は、補助センサ28と、内部バス16と、コントローラ22と、ドアエンジン26と、をさらに含む。コントローラ22は、制御部20(C)とエンジン駆動部24とを含む。本実施形態のコントローラ22は、制御部20の代わりに制御部20(C)を含む点で第1実施形態のコントローラ22と相違し、他の構成は同様である。
【0080】
図10を参照して、検知センサ10(C)および制御部20(C)について説明する。本実施形態の検知センサ10(C)は、演算部10bを備えず、記憶部10cの代わりに記憶部10mを備える点で第1実施形態の検知センサ10と相違し、他の構成は同様である。本実施形態の制御部20(C)は、演算部20mを含む点で第1実施形態の制御部20と相違し、他の構成は同様である。換言すれば、演算部が、検知センサ10の代わりに制御部20(C)に設けられている。演算部20mの機能・動作は演算部10bと同様である。
【0081】
本実施形態の演算部20mは、内部バス16を介して、検知部10aの検知結果を取得する。演算部20mは、検知部10aの検知結果に基づき、被検知体の存在を検知した検知回数に応じた第1の値Nv1と、被検知体の存在を検知していた時間に応じた第2の値Nv2の少なくとも一方の値Nvを求める。本実施形態の検知センサ10(C)は、内部バス16を介して、演算部20mから値Nvを取得して、記憶部10mに記憶する。記憶部10mの機能・動作は第1実施形態の記憶部10cと同様である。
【0082】
以上が、第3実施形態の説明である。このように構成されたことにより、本実施形態の自動ドア300は、検知センサ10(C)の外部に演算部20mが設けられているので、検知センサ10(C)が簡略化され、小型化やコスト削減が容易になる。
【0083】
[第4実施形態]
次に、
図1~
図3および
図11を参照して、本発明の第4実施形態に係る自動ドアの評価方法S80について説明する。
図11は、評価方法S80のフローチャートである。本実施形態の評価方法S80は、第1実施形態の自動ドア100について、検知センサ10の検知エリア18を複数の領域に分割した各部分領域18sの感度設定が適切であるかを評価する方法である。
【0084】
図11に示すように、評価方法S80は、被検知体を検知すること(ステップS82)と、値を求めること(ステップS84)と、情報を記憶すること(ステップS86)と、情報を二次記憶すること(ステップS88)と、画像データを生成すること(ステップS90)と、画像データを提示すること(ステップS92)と、を含む。
【0085】
ステップS82では、検知部10aにより、検知エリア18の各部分領域18sに対応して被検知体を検知する。検知部10aは、各部分領域18sに対応する72個の検知結果を提供する。
【0086】
ステップS84では、演算部10bにより、検知部10aの検知結果に基づき、被検知体の存在を検知した検知回数に応じた第1の値Nv1と、被検知体の存在を検知していた時間に応じた第2の値Nv2の少なくとも一方の値Nvを求める。演算部10bは、各部分領域18sに対応する72個の値Nvを求める。
【0087】
ステップS86では、記憶部10cにより、各部分領域18sに対応して、演算部10bの演算結果である値Nvに応じた情報Mvを記憶する。情報Mvは、値Nvに対して各種の処理を行って得た値であってもよい。
【0088】
ステップS88では、二次記憶部20cにより、検知センサ10の記憶部10cから情報Mvを取得して二次的に記憶する。二次記憶部20cの情報Msは、情報Mvを累積したものであってもよい。
【0089】
ステップS90では、画像データ生成部20dにより、二次記憶部20cの情報Msを視覚的に示すデータGsを生成する。
【0090】
ステップS92では、データGsを提示する。例えば、データGsは、携帯端末70に表示されることで提示されてもよい。また、データGsは、プリンタで印刷されることで提示されてもよいし、ネットワークを介して所定の情報端末に送信されることで提示されてもよい。
【0091】
以上が、自動ドアの評価方法S80の説明である。この評価方法はあくまでも一例であり、他の手順を追加したり、一部の手順を変更または削除したり、手順の順序を入れ替えてもよい。本実施形態によれば、検知エリア18の各部分領域18sの感度設定が適切であるかを容易に評価することができる。
【0092】
[第5実施形態]
次に、
図1を参照して、本発明の第5実施形態に係る検知センサ10について説明する。検知センサ10は、人または物体(被検知体)を検知するセンサであって、自動ドアなど、被検知体を検知した結果に基づき動作する可動装置に好適に用いられる。検知センサ10は、被検知体を検知する検知エリア18を複数の領域に分割した各部分領域18sで、被検知体の存在を検知した検知回数に応じた第1の値Nv1と被検知体の存在を検知していた時間に応じた第2の値Nv2の少なくとも一方の値Nvを求める演算部10bと、各部分領域18sに対応して、値Nvに応じた情報Mvを記憶する記憶部10cと、を備える。検知センサ10の構成および動作は第1実施形態で説明した内容と同様であり、重複する説明を省く。
【0093】
以上が、第5実施形態の説明である。このように構成されたことにより、本実施形態の検知センサ10は、各部分領域18sの検知状況に対応する値Nvに応じた情報を記憶することができる。記憶された情報を用いることにより各部分領域18sの感度設定を適切に行うことができる。
【0094】
以上、本発明の各実施形態をもとに説明した。これらの実施形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求の範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0095】
[変形例]
以下、変形例について説明する。変形例の図面および説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0096】
各実施形態の説明では、説明の便宜のため、演算部、記憶部、データ生成部などの構成要素が、検知センサまたは制御部のいずれかに設けられる例を示したが、本発明はこれに限定されない。これらの構成要素が検知センサや制御部に物理的に設けられていることは必須ではない。演算部、記憶部、データ生成部を含む本発明の各構成要素は、論理的にその機能を果たすことができれば、何れに設けられていてもよい。例えば、これらの構成要素は自動ドアから離隔された各種の装置に設けられていてもよい。
【0097】
各実施形態の説明では、検知エリア18が扉12の一方側のみに設けられる例を示したが、本発明はこれに限定されない。検知エリア18は、扉12の他方側にも設けられてもよい。
【0098】
第1~第3実施形態の説明では、内部バス16を備える例を示したが、本発明はこれに限定されない。内部バス16を備えることは必須ではない。内部バスの代わりに、一方から他方に情報を伝達可能な手段を備えてもよいし、必要に応じて双方向に情報を伝達可能な手段を備えてもよい。
【0099】
第1実施形態の説明では、データ生成部10eと、画像データ生成部20dと、を備える例を示したが、本発明はこれに限定されない。データ生成部10eまたは画像データ生成部20dの一方のみを備えてもよい。
【0100】
第1実施形態の説明では、記憶部10cの情報Mvを制御部20の二次記憶部20cに転送する例を示したが、本発明はこれに限定されない。記憶部10cの情報Mvは、二次記憶部20cの代わりに、外部記憶装置74に転送されてもよい。また、記憶部10cの情報Mvは、二次記憶部20cと外部記憶装置74の双方に転送されてもよい。また、情報Mvの転送は、転送元から転送先に直接転送されてもよいし、1つ以上の中継手段を介して転送されてもよい。
【0101】
第2実施形態の説明では、検知部10aと画像センサ10gとを別個に備える例を示したが、本発明はこれに限定されない。画像センサは、画像を取得できるものであればよく、例えば、検知部10aを画像センサとして兼用してもよいし、画像センサ10gを検知部として兼用してもよい。
【0102】
(その他の変形例)
検知センサ10、10(B)、10(C)は、天井など無目14以外の箇所に設置されてもよい。
【0103】
上述した実施形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0104】
10・・検知センサ、 10a・・検知部、 10b・・演算部、 10c、10h、10m・・記憶部、 10e・・データ生成部、 10g・・画像センサ、 12・・扉、 18・・検知エリア、 18s・・部分領域、 20・・制御部、 20b・・バス通信部、 20c・・二次記憶部、 20d・・画像データ生成部、 20k、20m・・演算部、 22・・コントローラ、 24・・エンジン駆動部、 26・・ドアエンジン、 70・・携帯端末、 100、200、300・・自動ドア。