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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】便器洗浄タンク
(51)【国際特許分類】
   E03D 1/26 20060101AFI20220322BHJP
【FI】
E03D1/26
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018087805
(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2019190244
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】張岳 和彦
【審査官】中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-025500(JP,A)
【文献】実開平04-097969(JP,U)
【文献】特開平08-013582(JP,A)
【文献】特開2017-020323(JP,A)
【文献】特開2004-346572(JP,A)
【文献】米国特許第06728976(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水を貯留するタンク本体と、前記タンク本体の下部に設けられて前記タンク本体を便器本体に固定するベースプレートと、を備える便器洗浄タンクであって、
前記ベースプレートは、ベースプレート本体の前記便器本体側の前端縁に立設される前壁部を有すると共に、前記前壁部の内側に、前記前壁部の高さ方向の中途部から前記ベースプレート本体にかけて、段差部又は傾斜部を一体に有する、便器洗浄タンク。
【請求項2】
前記段差部は、前記前壁部の内面から後方に向けて突出した後、前記ベースプレート本体に向けて斜め下向きに延びる、請求項1に記載の便器洗浄タンク。
【請求項3】
前記前壁部は、前記ベースプレート本体の幅方向の全体に亘って立設される、請求項1又は2に記載の便器洗浄タンク。
【請求項4】
前記ベースプレートは、前記ベースプレート本体の後端に立設される後壁部を有すると共に、前記後壁部の内側に、前記後壁部の高さ方向の中途部から前記ベースプレート本体にかけて、段差部又は傾斜部を一体に有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の便器洗浄タンク。
【請求項5】
前記段差部又は前記傾斜部は、前記ベースプレートの下方に向けて開放するスリット状の肉抜き部を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の便器洗浄タンク。
【請求項6】
前記段差部又は前記傾斜部よりも上側の壁高さをH1、前記段差部又は前記傾斜部の高さをH2としたとき、H1:H2=3:1~1:1である、請求項1~5のいずれか1項に記載の便器洗浄タンク。
【請求項7】
便器本体と、前記便器本体に供給する洗浄水を貯留する請求項1~6のいずれか1項に記載の便器洗浄タンクと、を備える、便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器洗浄タンクに関し、詳しくは、洗浄水量を確保しながらも、タンク本体の奥行方向の寸法を小さくした薄型の便器洗浄タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄水を貯留するタンク本体を備え、便器本体に固定される便器洗浄タンクが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-7451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、便器装置において、便器の前出寸法の縮小化が求められている。このような便器装置を、便器に便器洗浄タンクが固定される便器装置により構成する場合、便器の前出寸法を縮小するためには、便器洗浄タンクを薄型化することが必要である。
【0005】
しかし、便器洗浄タンクを薄型化すると、使用者が便器洗浄タンクに凭れ掛かる等することによって便器洗浄タンクに荷重が掛かると、便器洗浄タンクの底面積が小さいために、その荷重を便器洗浄タンク自身で受け止めきれない場合がある。この場合、便器洗浄タンクの損傷につながる懸念があるため、従来、特に、便器洗浄タンクの薄型化を図る上で課題を有していた。
【0006】
本発明は、耐荷重性の高い便器洗浄タンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る便器洗浄タンクは、洗浄水を貯留するタンク本体(例えば、後述のタンク本体41)と、前記タンク本体の下部に設けられて前記タンク本体を便器本体(例えば、後述の便器本体21)に固定するベースプレート(例えば、後述のベースプレート43)と、を備える便器洗浄タンク(例えば、後述の便器洗浄タンク4)であって、前記ベースプレートは、ベースプレート本体(例えば、ベースプレート本体430)の前端に立設される前壁部(例えば、後述の前壁部433)を有すると共に、前記前壁部の内側に、前記前壁部の高さ方向の中途部から前記ベースプレート本体にかけて、段差部(例えば、後述の段差部435)又は傾斜部(例えば、後述の傾斜部439)を一体に有する。
【0008】
(2) (1)に記載の便器洗浄タンクにおいて、前記ベースプレートは、前記ベースプレート本体の後端に立設される後壁部(例えば、後述の後壁部434)を有すると共に、前記後壁部の内側に、前記後壁部の高さ方向の中途部から前記ベースプレート本体にかけて、段差部(例えば、後述の段差部436)又は傾斜部を一体に有することが好ましい。
【0009】
(3) (1)又は(2)に記載の便器洗浄タンクにおいて、前記段差部又は前記傾斜部は、前記ベースプレートの下方に向けて開放するスリット状の肉抜き部(例えば、後述の肉抜き部437、438)を有することが好ましい。
【0010】
(4) (1)~(3)のいずれかに記載の便器洗浄タンクにおいて、前記段差部又は前記傾斜部よりも上側の壁高さをH1、前記段差部又は前記傾斜部の高さをH2としたとき、H1:H2=3:1~1:1であることが好ましい。
【0011】
(5) 本発明に係る便器装置(例えば、後述の便器装置1)は、便器本体(例えば、後述の便器本体21)と、前記便器本体に供給する洗浄水を貯留する(1)~(4)のいずれかに記載の便器洗浄タンク(例えば、後述の便器洗浄タンク4)と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐荷重性の高い便器洗浄タンクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る便器洗浄タンクを備える便器装置の斜視図である。
図2】本発明に係る便器洗浄タンクの内部を示す平面図である。
図3】本発明に係る便器洗浄タンクの一部を分解して示す斜視図である。
図4】本発明に係る便器洗浄タンクの下部構造を拡大して示す断面図である。
図5】ベースプレートの平面図である。
図6図5中のA-A線に沿うベースプレートの断面図である。
図7】(a)は本発明に係るベースプレートの前壁部の断面を模式的に示す図であり、(b)は比較例に係るベースプレートの前壁部の断面を模式的に示す図である。
図8】ベースプレートの撓みを説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態に示す便器装置1は、図1に示すように、便器2が床面f1に設置される床置きタイプの便器装置を示している。便器装置1は、便器2と、この便器2の後方に配置される便器洗浄装置3と、を備えている。なお、以下の説明において、便器2に着座した使用者から見た場合の前後の向きを前後方向とする。また、便器2に着座した使用者から見た場合の左右の向きを幅方向とする。更に、床面f1に対する鉛直方向に沿う上下の向きを上下方向とする。
【0015】
便器2は、立壁面f2に近接した床面f1上に設置されている。便器2は、便器本体21の上部に回動可能に取り付けられた便座22及び便蓋23と、これら便座22及び便蓋23の後方に配置される便座装置の機能部24と、を有している。
【0016】
便器洗浄装置3は、便器本体21の後部に配置されている。便器洗浄装置3は、便器洗浄タンク4と、便器洗浄タンク4の外装体であるタンクカバー5と、を含んで構成される。
【0017】
本実施形態に示すタンクカバー5は、便器洗浄タンク4の前方を覆う前カバー51と、便器洗浄タンク4の側方及び後方を覆う後カバー52と、便器洗浄タンク4の上方を覆う上カバー53と、を有する。前カバー51と上カバー53は、後カバー52に対して着脱可能に取り付けられる。これにより、便器洗浄タンク4の全体がタンクカバー5によって遮蔽され、見栄えが良好となり、意匠性が向上する。
【0018】
便器洗浄タンク4の下方の便器2の後方側は、左右一対の下カバー54によって覆われている。これにより、便器2の後方側に配置される配管部品(図示せず)等が目隠しされると共に、便器2の後方側が便器洗浄装置3から下方向に延びる薄型の箱体形状となり、意匠的な統一感が生み出されて意匠性が更に向上する。
【0019】
便器洗浄タンク4は、図3に示すように、タンク本体41と、内蓋42と、ベースプレート43と、防露材44と、補強フレーム45と、備えている。なお、図3では、便器2のうちの便器本体21のみ破線で示し、便座22、便蓋23、機能部24の図示を省略している。
【0020】
タンク本体41は、ブロー成形品からなる。ブロー成形されたタンク本体41の上面開口部411(図2参照)は、ブロー成形品の上部を略水平方向に切断することによって形成される。このため、ブロー成形品は、前後方向に離型することによって成形でき、射出成形品のような離型のための抜き勾配を上下方向に設ける必要がない。その結果、タンク本体41の外周面は、上下方向に沿って真っ直ぐな面となり、床面f1に対して垂直に延びた側壁面を構成することができる。このため、タンク本体41は、抜き勾配に起因するタンク容積の減少が少なく、奥行き寸法を小さくして薄型化しても、射出成形品に比べてタンク容積を大きく確保することが可能である。その結果、このタンク本体41を有する便器洗浄タンク4を備えた便器装置1は、前後方向の寸法(前出寸法)を縮小化することが可能である。
【0021】
なお、本実施形態に示すタンク本体41は、前後方向よりも左右方向(幅方向)に長く形成されている。具体的には、このタンク本体41は、前後方向の長さ(奥行き)と左右方向の長さ(幅)と高さとの比が、2:5.4:5.7となるように形成されている。
【0022】
タンク本体41の内部には洗浄水が貯留されると共に、図2に示すように、便器洗浄用の内部部品が収容される。具体的には、タンク本体41内には、給水を行うボールタップ4a、ボールタップ4aの止水を行うためのフロート4b、洗浄水の水位を制限すると共に便器本体21に補給水を供給するためのオーバーフロー管4c、排水口を開閉するフラッパー弁4d、フラッパー弁4dを引き上げる玉鎖4e、玉鎖4eを引き上げ操作するための引上げアーム4f等が収容されている。引上げアーム4fには、タンクカバー5の外側に取り付けられるレバーハンドル4gのスピンドル4hが連結されている。
【0023】
内蓋42は、タンク本体41の上面開口部411(図2参照)を被蓋するようにタンク本体41に対してねじ止めされている。具体的には、内蓋42は、内蓋本体421と、点検蓋422とで構成される。内蓋本体421は、上面開口部411の周縁に沿って装着され、タンク本体41に対してねじ止めされる。一方、点検蓋422は、タンク本体41に対してねじ止めされておらず、内蓋本体421に対して着脱可能に取り付けられている。このため、内蓋42は、内蓋本体421から点検蓋422を取り外すことにより、ねじ止めされている内蓋本体421を取り外すことなく、タンク本体41の内部に対してアクセス可能である。
【0024】
ベースプレート43は、タンク本体41の下部に取り付けられている。ベースプレート43は、タンク本体41よりも硬質な樹脂によって形成され、タンク本体41の底面形状に略等しい平面形状を有している。ベースプレート43は、タンク本体41の下面を支持すると共に、ベースプレート43の底部から突出する一対の緊締ボルト431(図3参照)によって、便器本体21の後部の上面21aに固定されることにより、タンク本体41を便器本体21に固定する機能を有する。
【0025】
タンク本体41とベースプレート43との取付け構造を図4に示す。タンク本体41の底面412に、円形の下面開口部413が形成されている。この下面開口部413には、略円筒状の弁座シート46が装着されている。弁座シート46は、タンク本体41の内部部品の一つであるフラッパー弁4d(図4において図示せず)の弁座を構成する部品であり、下面開口部413よりも大径なフランジ部461を有している。弁座シート46は、フランジ部461とタンク本体41との間にパッキン46aを挟むようにして、タンク本体41の内側から装着されている。
【0026】
弁座シート46は、フランジ部461よりも下方側に、外周面に雄ねじを有する円筒部462を一体に有し、この円筒部462が下面開口部413から下方に突出している。弁座シート46は、下面開口部413から突出する円筒部462に、タンク本体41の外側から締付けナット46bが螺合することにより、タンク本体41に取り付けられている。
【0027】
一方、ベースプレート43の中央部には、円形の開口部432(図5参照)が設けられ、この開口部432に、タンク本体41の下面から突出する弁座シート46の円筒部462が貫挿されている。そして、この開口部432から下方に突出する円筒部462に締付けナット46cが螺合することにより、ベースプレート43が締付けナット46cとタンク本体41との間で挟着されている。これにより、タンク本体41の下部にベースプレート43が固定される。
【0028】
タンク本体41に固定されたベースプレート43は、下面に突設される一対の緊締ボルト431を、便器本体21の上面21aに設けられるタンク取付け穴(図示せず)に挿入させて固定される。これにより、タンク本体41がベースプレート43を介して便器本体21に固定される。便器本体21に固定されたタンク本体41の円筒部462は、便器本体21の洗浄水流入口(図示せず)と連通し、タンク本体41内の洗浄水を便器本体21に供給可能とされる。
【0029】
防露材44は、発泡スチロール樹脂等により、タンク本体41の外周面に沿った形状に成形されている。本実施形態に示す防露材44は、前側防露材441と後側防露材442とに2分割され、タンク本体41を前後方向から挟むようにタンク本体41の外周面に装着されている。防露材44は、少なくともタンク本体41内に貯留される洗浄水の水位に対応する高さを有する。
【0030】
この防露材44は、前側防露材441と後側防露材442とに前後方向に2分割されているため、成形型から離型するための抜き勾配が前後方向に設けられ、上下方向には設けられない。これにより、前側防露材441と後側防露材442とが組み合わされて構成される防露材44は、便器洗浄タンク4の前面側及び後面側において上下方向に沿って垂直に延びる面を形成することができる。その結果、便器洗浄タンク4を薄型化しても、防露材の上下方向の抜き勾配に起因する便器洗浄タンク4のタンク容積の減少を招くおそれはない。しかも、本実施形態に示すタンク本体41にも上下方向の抜き勾配が設けられていないことと相俟って、便器洗浄タンク4の更なる薄型化を図ることが可能となり、便器装置1の前後方向の寸法(前出寸法)を更に縮小化することが可能である。
【0031】
本実施形態に示す補強フレーム45は、図3に示すように、便器洗浄タンク4の両側面に配置される金属製の側面フレーム部材451と、便器洗浄タンク4の前面側に幅方向に延びるように配置される金属製の補強ステー452と、を有している。
【0032】
側面フレーム部材451は、ベースプレート43の幅方向の両端面43aに、それぞれ固定ねじ45aによって固定されている。側面フレーム部材451は、ベースプレート43からタンク本体41の略1/2の高さに亘る範囲の便器洗浄タンク4の側面を覆うように配置されている。側面フレーム部材451は、平面視コ字型に形成されており、ベースプレート43に取り付けられることによって、前側防露材441と後側防露材442とが前後に開かないように、防露材44を前後方向から挟持している。
【0033】
なお、タンクカバー5の後カバー52は、この側面フレーム部材451にねじ固定されている。この後カバー52に前カバー51及び上カバー53が取り付けられることにより、タンクカバー5は、側面フレーム部材451及びベースプレート43を介して便器本体21に固定される。
【0034】
補強ステー452の両端部は、左右の側面フレーム部材451に固定ねじ45bによってそれぞれ固定されている。これにより、左右の側面フレーム部材451同士が補強ステー452によって連結され、側面フレーム部材451に生じるスプリングバック等によって側面フレーム部材451が左右方向に広がることを防止している。
【0035】
補強フレーム45は、使用者がタンクカバー5に凭れ掛かった際に、その荷重を受けてタンク本体41に荷重を直接作用させないように機能する。補強ステー452に作用する荷重は、補強ステー452の両端部から各側面フレーム部材451に伝達される。側面フレーム部材451は、タンク本体41よりも堅牢なベースプレート43に固定されているため、補強ステー452から伝達される荷重を効果的に受け止め、ベースプレート43を介して便器本体21に逃がすことができる。
【0036】
なお、前後方向に分割された防露材44は、抜き勾配も前後方向に設けられるため、図3に示すように、前側防露材441の前面には、補強フレーム45の補強ステー452を収容する凹部44aと側面フレーム部材451を収容する凹部44bとを有することができる。これにより、補強フレーム45の前方への突出量を抑えることができるため、補強フレーム45を設けてもタンク本体41のタンク容積の減少を招くことなく、便器洗浄タンク4を薄型化することができる。
【0037】
次に、ベースプレート43について更に説明する。本実施形態に示すベースプレート43は、図5に示すように、タンク本体41の底面形状に略等しい形状を有するベースプレート本体430を有する。ベースプレート本体430の上面側(タンク本体41が取り付けられる面側)の四周縁には、上方に向けて延びる壁部が立設されている。特に、ベースプレート本体430の上面側の前端縁(図5における右端縁)には、上方に向けて延びる前壁部433が立設されていると共に、ベースプレート本体430の上面側の後端縁(図5における左端縁)には、上方に向けて延びる後壁部434が立設されている。
【0038】
図6に示すように、前壁部433の内側には、前壁部433の高さ方向の中途部からベースプレート本体430にかけて一体に設けられた段差部435を有する。段差部435は、前壁部433の高さ方向の中途部の内面から後方に向けて僅かに突出した後、ベースプレート本体430に向けてやや斜め下向きに延びている。これにより、前壁部433は、ベースプレート本体430との接続部位の幅(前後方向の厚み)が段差部435よりも上方の部位に比べて大きくなっている。
【0039】
ここで、図7(a)は、ベースプレート本体430に段差部435を有する前壁部433の断面を模式的に示し、図7(b)は、ベースプレート本体430に段差部435を有しない前壁部433Aの断面を模式的に示している。ベースプレート43は樹脂成型品であるため、成形型から離型する際に上下方向に抜き勾配が設けられる。このため、ベースプレート本体430に立設される前壁部433の断面形状は、上下方向の抜き勾配によって、前壁部433の根元部から上端にかけて次第に細くなる形状にならざるを得ない。
【0040】
図7(a)に示すように、ベースプレート本体430に段差部435を有する前壁部433の場合は、上下方向の抜き勾配(図中の斜線で示す)の起点Pを、前壁部433と段差部435との境界部に配置することができるため、前壁部433の断面形状は、段差部435から上端に行くに従って細くなる。これに対し、図7(b)に示すように、段差部435を有しない前壁部433Aの場合、上下方向の抜き勾配(図中の斜線で示す)によって、前壁部433Aの断面形状は、上端に行くに従って細くなる。この場合、前壁部433Aとベースプレート本体430との接続部位が抜き勾配の起点Pとなる。その結果、ベースプレート本体430からの立設高さを同じとした場合、前壁部433の上端の幅W1の方が、前壁部433Aの上端の幅W2よりも大きくなる。このため、内側に段差部435を有する前壁部433の方が、厚みの大きい壁部を形成することができる。
【0041】
前壁部433の厚みが大きくなることにより、次のような効果が得られる。即ち、タンク本体41に後方に傾く力が作用した場合、図8に示すように、便器本体21との固定部位である一対の緊締ボルト431の部位を境にして、緊締ボルト431の内側がベースプレート本体430下方に向けて撓もうとし、緊締ボルト431の外側のベースプレート本体430が上方に向けて撓もうとする。このとき、特に前壁部433に大きな応力が作用する。本実施形態に示すベースプレート43は、前壁部433の厚みを大きくできることにより、このようなベースプレート43のねじれに対する強度を向上させることができ、便器洗浄タンク4の耐荷重性を高めることができる。段差部435は、前壁部433の中途部までの高さであるため、タンク本体41や防露材44の取り付けの邪魔になることはない。このため、ベースプレート43が前方向に大きく突出するようなことはなく、便器洗浄タンク4の薄型化の障害となることはない。
【0042】
しかも、本実施形態に示すベースプレート43は、図5に示すように、前面側が前方に向けて凸となるように幅方向に湾曲する曲面となっているため、更にねじれに対する強度を向上させることができる。
【0043】
前壁部433と段差部435との関係は、図6に示すように、前壁部433における段差部435よりも上側の壁高さをH1、段差部435の高さ(ベースプレート本体430の下面から段差部435の上面までの高さ)をH2としたとき、H1:H2=3:1~1:1であることが好ましい。これにより、タンク本体41や防露材44の取り付けの邪魔になることなく、前壁部433の厚みを可及的に大きくしてベースプレート43に必要な強度を確保することができる。
【0044】
なお、タンク本体41に前方に傾く力が作用した場合は、特に後壁部434に大きな応力が作用する。このため、図5及び図6に示すように、後壁部434の内側にも、段差部435と同様の段差部436を設けることが好ましい、これにより、後壁部434の厚みも大きくできるため、ベースプレート43のねじれに対する強度を更に向上させることができる。この後壁部434と段差部436との関係も、上記と同様にH1:H2=3:1~1:1の関係を満たすことが好ましい。
【0045】
段差部435、436には、図6に示すように、ベースプレート43の下方に向けて開放するスリット状の肉抜き部437、438を有することが好ましい。このような肉抜き部437、438を設けることにより、ベースプレート43の強度を確保しながら、軽量化を図ることができる。また、肉抜き部437、438を設けることで、段差部435、436を本実施形態に示すように屈曲された板状の樹脂で形成でき、樹脂の厚みを抑えることができる。その結果、段差部435、436を形成する板状の樹脂の厚みを、ベースプレート43のその他の部位の厚みと同一又は近づけることができるため、厚みの差に起因するヒケの発生を抑制することができる。
【0046】
以上の実施形態では、前壁部433、後壁部434の内側に、それぞれ段差部435、436を設けるようにしたが、段差部435、436に代えて、前壁部433、後壁部434の内側に、前壁部433、後壁部434の内面からベースプレート本体430のかけて滑らかに斜め傾斜する傾斜部を一体に設けるようにしても、上記と同様の効果が得られる。図7(a)では、前壁部433の内側に一体に設けた傾斜部439を破線で示している。このような傾斜部439は、後壁部434の内側にも同様に設けることができる。
【符号の説明】
【0047】
21 便器本体
4 便器洗浄タンク
41 タンク本体
43 ベースプレート
430 ベースプレート本体
433 前壁部
434 後壁部
435 段差部
436 段差部
437、438 肉抜き部
439 傾斜部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8