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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】遠心ファン
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/42 20060101AFI20220322BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20220322BHJP
   F04D 29/046 20060101ALI20220322BHJP
   H02K 11/30 20160101ALI20220322BHJP
   H02K 5/04 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
F04D29/42 K
F04D29/66 L
F04D29/66 N
F04D29/046 D
H02K11/30
H02K5/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018091413
(22)【出願日】2018-05-10
(65)【公開番号】P2018200048
(43)【公開日】2018-12-20
【審査請求日】2020-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2017104605
(32)【優先日】2017-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017105437
(32)【優先日】2017-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】野上田 弥
(72)【発明者】
【氏名】松原 真朗
(72)【発明者】
【氏名】藤本 征也
(72)【発明者】
【氏名】関 徹也
(72)【発明者】
【氏名】畑原 聡
(72)【発明者】
【氏名】奈良 精久
(72)【発明者】
【氏名】津崎 淳
(72)【発明者】
【氏名】門野 佑基
(72)【発明者】
【氏名】牧野 友哉
(72)【発明者】
【氏名】村端 宏史
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/122735(WO,A1)
【文献】特開2003-230075(JP,A)
【文献】特開2002-288975(JP,A)
【文献】特開平11-294837(JP,A)
【文献】特開平10-262315(JP,A)
【文献】特開2016-226178(JP,A)
【文献】特開2007-195370(JP,A)
【文献】特開2001-304189(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0039783(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0178265(US,A1)
【文献】特開2014-126041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/42
F04D 29/66
F04D 29/046
H02K 11/30
H02K 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の上ケーシングと樹脂製の下ケーシングの間にインペラ、モータおよび回路基板を収めた構造を有する遠心ファンであって、
前記下ケーシングの底面にはリブが形成され、
前記下ケーシングは、前記回路基板を前記下ケーシングに固定する第1のピンを備え、
前記第1のピンは、前記リブにより補強され
前記リブは、径方向に延在する第1のリブおよび周方向に延在する第2のリブにより構成され、
前記第1のリブと前記第2のリブが交差する部分に前記第1のピンが立設され、
前記下ケーシングは、前記第1のリブによって補強された環状の突起部を備え、前記環状の突起部に前記インペラの回転軸となるシャフトを回転自在な状態で保持する中空円筒形状の軸受ホルダーが保持されている遠心ファン。
【請求項2】
前記第1のリブの前記環状の突起部に繋がる部分は、略三角形状を有する請求項に記載の遠心ファン。
【請求項3】
軸に垂直な方向から見て、前記第1のリブの前記略三角形状の部分が前記回路基板と重なる位置にある請求項に記載の遠心ファン。
【請求項4】
前記軸受ホルダーには、ステータコアが固定され、
前記ステータコアには、樹脂製のインシュレータが装着され、
前記インシュレータは、前記下ケーシングと前記ステータコアの間に配置された前記回路基板および前記下ケーシングを貫通する第2のピンを備えている請求項乃至のいずれか一項に記載の遠心ファン。
【請求項5】
前記第2のピンは、前記第1のピンに対して前記回路基板の軸中心側を貫通し、
前記第1のピンは、前記第2のピンに対して前記回路基板の外縁側を貫通している請求項に記載の遠心ファン。
【請求項6】
前記軸受ホルダーには、ステータコアが固定され、
前記ステータコアには、樹脂製のインシュレータが装着され、
前記インシュレータは、先端に凹部が設けられ、前記下ケーシングの方向に延在した延在部を備え、
前記延在部の前記先端は前記回路基板における前記第1のピンが貫通した部分を挟む部分に接触している請求項乃至のいずれか一項に記載の遠心ファン。
【請求項7】
前記インシュレータは、前記下ケーシングの方向に延在する円筒部を備え、
前記円筒部には、前記第1のリブが入り込むスリットが形成されている請求項乃至のいずれか一項に記載の遠心ファン。
【請求項8】
前記回路基板には、前記モータのコイルの巻き線の端末が挿入されるコイル端末挿入孔が設けられ、
前記下ケーシングの前記コイル端末挿入孔の部分には、貫通孔が設けられ、
前記コイルの前記端末は、前記貫通孔の内部で前記回路基板に半田で接続されている請求項1乃至のいずれか一項に記載の遠心ファン。
【請求項9】
前記下ケーシングは、当該下ケーシングの一部であるコネクタハウジングを備える請求項1乃至のいずれか一項に記載の遠心ファン。
【請求項10】
前記上ケーシングは、前記下ケーシングの方向に延在する支柱を備え、
前記支柱の先端は、前記下ケーシングに設けた貫通孔に貫通した状態で前記下ケーシングに溶着されている請求項1乃至のいずれか一項に記載の遠心ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠心ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
家電機器、OA機器、産業機器の冷却、換気、空調や、車両用の空調、送風などに広く用いられている送風機として、遠心ファンが知られている。従来の遠心ファンとして、ケーシングが上ケーシングと下ケーシングとからなり、上ケーシングと下ケーシングの間にインペラを収納し、インペラの回転に伴って吸い込み口から吸入した空気を上ケーシングと下ケーシングの間の側面に形成された吹き出し口から外方に向けて排出する遠心ファンが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図16に示す特許文献1に記載された技術では、吸い込み口33から導入された空気は、羽根車30の羽根51の間を通過し、羽根車30の径外方に向けて吹き出され、羽根車30の側方にあるケーシングの吹き出し口19から排出される。ケーシングは樹脂製の上ケーシング11と金属製の下ケーシング21とが、平面視で四隅に位置するねじ14を用いて互いに組み付けられている。上ケーシング11と下ケーシング21とは、ねじ14が配される部分で支柱を挟むようにして互いに組み付けられている。吹き出し口19は、ねじ14を用いた上ケーシング11と下ケーシング21との締結部分を除いたケーシング10の側部であって、上ケーシング11と下ケーシング21との間に設けられている。下ケーシング21には、孔部25が形成され、孔部25には、モータ60への給電のためのコネクタ71が取り付けられている。
【0004】
しかしながら、図16に示す特許文献1に記載の遠心ファンは、下ケーシング21を羽根車30の主板として機能させているため、羽根51の下面と下ケーシング21との間に形成されるギャップ精度が重要となる。この構造では、羽根51と下ケーシング21との干渉を防止するために、下ケーシング21の平面度を高精度にする必要がある。このため、部品の加工コストを低減できない。また、下ケーシング21が金属板から形成されているため、遠心ファンの軽量化を阻害している。
【0005】
これに対して、図17に示す遠心ファンは、ケースがスクロール形状に形成されたハウジング12と、回転ファン22を回転させるためのモータを支持するヨーク14から構成されている。そして、ヨーク14にはインサート鉄板がインサート成形によってヨーク14内に一体に形成され、コネクタ部42もヨーク14と一体に設けられている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
図17に示す特許文献2に記載されたファンモータにおけるヨーク14において、その材質は明らかではない。しかしながら、特許文献2のファンモータでは、インサート鉄板がインサート成形によってヨーク14内に一体に形成され、コネクタ部もヨーク14と一体に設けられた構成であることから、ヨーク14は樹脂成形で形成されているものと推認できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-167304号公報
【文献】特開平11-294837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載されたファンモータにおけるヨーク14を樹脂成形で形成した場合、ヨーク14の厚さを薄くすることができず、また、ヨーク14の厚さを薄くした場合、ヨーク14の剛性(強度)が低下し、部材の固有振動数が低下して振動の要因となる。このため、ファンの軽量化の要求に対して十分に対応できない。
【0009】
このような背景において、本発明は、軽量で振動が抑えられた構造の遠心ファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、樹脂製の上ケーシングと樹脂製の下ケーシングの間にインペラ、モータおよび回路基板を収めた構造を有する遠心ファンであって、前記下ケーシングの底面にはリブが形成され、前記下ケーシングは、前記回路基板を前記下ケーシングに固定する第1のピンを備え、前記第1のピンは、前記リブにより補強され、前記リブは、径方向に延在する第1のリブおよび周方向に延在する第2のリブにより構成され、前記第1のリブと前記第2のリブが交差する部分に前記第1のピンが立設され、前記下ケーシングは、前記第1のリブによって補強された環状の突起部を備え、前記環状の突起部に前記インペラの回転軸となるシャフトを回転自在な状態で保持する中空円筒形状の軸受ホルダーが保持されている遠心ファンである。
【0012】
また、本発明において、前記第1のリブの前記環状の突起部に繋がる部分は、略三角形状を有する態様が挙げられる。また、本発明において、軸に垂直な方向から見て、前記第1のリブの前記略三角形状の部分が前記回路基板と重なる位置にある態様が挙げられる。また、本発明において、前記軸受ホルダーには、ステータコアが固定され、前記ステータコアには、樹脂製のインシュレータが装着され、前記インシュレータは、前記下ケーシングと前記ステータコアの間に配置された前記回路基板および前記下ケーシングを貫通する第2のピンを備えている態様が挙げられる。
【0013】
また、本発明において、前記第2のピンは、前記第1のピンに対して前記回路基板の軸中心側を貫通し、前記第1のピンは、前記第2のピンに対して前記回路基板の外縁側を貫通している態様が挙げられる。また、本発明において、前記軸受ホルダーには、ステータコアが固定され、前記ステータコアには、樹脂製のインシュレータが装着され、前記インシュレータは、先端に凹部が設けられ、前記下ケーシングの方向に延在した延在部を備え、前記延在部の前記先端は前記回路基板における前記第1のピンが貫通した部分を挟む部分に接触している態様が挙げられる。
【0014】
また、本発明において、前記インシュレータは、前記下ケーシングの方向に延在する円筒部を備え、前記円筒部には、前記第1のリブが入り込むスリットが形成されている態様が挙げられる。また、本発明において、前記回路基板には、前記モータのコイルの巻き線の端末が挿入されるコイル端末挿入孔が設けられ、前記下ケーシングの前記コイル端末挿入孔の部分には、貫通孔が設けられ、前記コイルの前記端末は、前記貫通孔の内部で前記回路基板に半田で接続されている態様が挙げられる。
【0015】
また、本発明において、前記下ケーシングは、当該下ケーシングの一部であるコネクタハウジングを備える態様が挙げられる。また、本発明において、前記上ケーシングは、前記下ケーシングの方向に延在する支柱を備え、前記支柱の先端は、前記下ケーシングに設けた貫通孔に貫通した状態で前記下ケーシングに溶着されている態様が挙げられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、軽量で振動が抑えられた構造の遠心ファンが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の分解断面斜視図である。
図2】実施形態の底面側から見た斜視図である。
図3】実施形態の遠心ファンの断面図(コイル端末の接合の逃げ部の箇所の断面図)である。
図4】実施形態の遠心ファンの断面図(樹脂ピンの箇所の断面図)である。
図5】実施形態におけるステータコアにインシュレータを装着した状態を下側インシュレータ側から見た斜視図である。
図6】実施形態におけるステータ構造体を下ケーシングに取り付けた状態を示す部分拡大図である。
図7】ステータコアを下ケーシングに取り付けた状態を示す部分拡大図である。
図8】実施形態の分解断面斜視図である。
図9】実施形態の底面側から見た斜視図である。
図10】実施形態の遠心ファンの断面図(コイル端末の接合の逃げ部の箇所の断面図)である。
図11】実施形態の遠心ファンの断面図(樹脂ピンの箇所の断面図)である。
図12】実施形態におけるステータコアにインシュレータを装着した状態を下側インシュレータ側から見た斜視図である。
図13】実施形態におけるステータ構造体を下ケーシングに取り付けた状態を示す部分拡大図である。
図14】実施形態の底面側から見た斜視図である。
図15】実施形態の遠心ファンの断面図(コイル端末の接合の逃げ部の箇所の断面図)(A)と断面図(樹脂ピンの箇所の断面図)(B)である。
図16】従来(特許文献1)の遠心ファンを示す断面図である。
図17】他の従来(特許文献2)のファンを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.第1の実施形態
(構成)
図1には、実施形態の遠心ファン100が示されている。遠心ファン100のケーシングは上ケーシング110と下ケーシング140から構成されている。上ケーシング110と下ケーシング140の間にモータ130によって駆動され回転するインペラ120が収納されている。インペラ120の回転に伴って吸込口111から吸入された空気はインペラ120の羽根123の間を通過して上ケーシング110と下ケーシング140の間に介装された支柱114を除いた側面に形成された吹出口181(図2,3,4参照)からケーシングの外方に向けて排出される。
【0019】
上ケーシング110は、樹脂(PBT樹脂(ガラス繊維で強化されたものも含む))のモールド成形品であり、中央には、空気の吸込口111が設けられている。上ケーシング110の上面側には複数のリブ116が同心及び放射状に形成されている。リブ116の間には凹部(肉盗み部分)103が形成され、強度を確保すると共に軽量化が図られている。上ケーシング110の側面の4か所には、フランジ部113で補強された支柱114が上ケーシング110と一体に形成されている。支柱114の下部(下ケーシング140の側)先端には、下ケーシング140との結合に利用される突起部115が設けられている。
【0020】
インペラ120は、環状のシュラウド121と、環状の主板122と、シュラウド121と環状の主板122の間に配置された複数の羽根123とから構成されている。羽根123は全て同じ形状の後向き羽根で周方向に均等配置されている。本実施例では、樹脂成形で環状のシュラウド121と羽根123を一体成形し、真鍮からなる中空のブッシュ124(図1参照)をインサート成形で主板122を一体成形した後、羽根123の下面に主板122を超音波溶着して接合している。
【0021】
図1に示すように、ブッシュ124の中心(インペラ120の回転中心)には、金属製のシャフト173が固定されている。シャフト173は、玉軸受171,172(図3,4参照)により後述する軸受ホルダー145に回転自在な状態で保持されている。
【0022】
なお、インペラ120の他の構成として、環状のシュラウド121と羽根123を一体成形した後、主板122を樹脂の2色成形にて一体に形成した構成(この時、ブッシュ124をインサート成形)が挙げられる。またインペラ120の他の構成として、主板122と羽根123を一体成形(この時、ブッシュ124をインサート成形)した後、羽根123の上面にシュラウド121を超音波溶着して接合した構成等であってもよい。
【0023】
インペラ120の内側には、周方向に沿って交互に異なる極性に着磁された環状のロータマグネット127が固定されている。ロータマグネット127は、後述するステータコア151の突極(極歯)151a(図5,6,7参照)の外周面に隙間を有して対向する位置に配置されている。
【0024】
シュラウド121の内周縁は吸込口125を構成し、その内周縁には軸方向に立設する環状突起部126が設けられている。図3に示すように、インペラ120の上部に設けられた環状突起部126が上ケーシング110の下面に形成された環状の凹部117の中に微小の隙間を隔てて収容されることでラビリンスシールが形成されている。このラビリンスシールにより、吹出口181から吹き出された空気の一部が、上ケーシング110下面とシュラウド121の上面との間に形成された隙間を通って吸込口111に逆流することを抑制している。
【0025】
モータ130はアウターロータ型のブラシレスDCモータである。モータ130と下ケーシング140との間には、両面配線で電子部品は片面実装である回路基板132が配置されている。回路基板132には、モータ130の駆動に必要な電子回路やセンサ回路等が搭載されている。
【0026】
回路基板132には、モータ130のステータコア151に巻回されたコイル193(図3参照)の端末193aが接続されるスルーホールであるコイル端末挿入孔133が設けられている。また回路基板132には、下ケーシング140の樹脂ピン149が貫通する下ピン挿入孔134が設けられている。また、回路基板132には、コネクタピン162(図3参照)が接続されるスルーホールも設けられている。
【0027】
回路基板132は、下ケーシング140に立設された樹脂ピン149(図4参照)により下ケーシング140の凹部141に固定されている。なお、モータ130と回路基板132を一体化させ、この一体化したものを下ケーシング140の凹部141に固定する構造も可能である。
【0028】
下ケーシング140は、合成樹脂(PBT樹脂で、PBTのGF強化も含む)の成形により形成され、中央には円形の凹部141とその外周側に段部144が形成されている。凹部141の中央には金属製の軸受ホルダー145が、立設された状態で下ケーシング140に一体成形(インサート成形)されている。すなわち、軸受ホルダー145がインサート成形された状態で、下ケーシング140が成形されている。後述するように、軸受ホルダー145にモータ130のステータコア151が固定されている。
【0029】
軸受ホルダー145の内側には、シャフト173を回転自在な状態で保持するための一対の玉軸受171,172が嵌着されている。なお、図1の符号174は、玉軸受172を固定するEリングである。軸受ホルダー145の下端は、下ケーシング140の下面に開口150(図2,4参照)を形成している。
【0030】
下ケーシング140において、凹部141の中央に軸方向に立設して形成された軸受ホルダー145の根元側の外周面には、下ケーシング140と一体成形された環状(筒状)の突起部146が形成されている。軸受ホルダー145は、環状の突起部146によって周囲から補強される形で下ケーシング140に一体化され保持されている。
【0031】
下ケーシング140の凹部141の底面には、環状の突起部146の外周面から凹部141の最外周縁に延在する放射状のリブ147が複数条(この例では12条)形成され、更に放射状のリブ147の間を結合する同心状のリブ148が複数条(この例では4条)形成されている。リブ147,148によって樹脂製の下ケーシング140が補強され、下ケーシング140の剛性が確保されている。なお、放射状のリブ147は外周側ほど、リブ147の間が広くなるため、外周側はリブ147の本数を増やす構成にしてもよい。
【0032】
また、放射状のリブ147の根元側(環状の突起部146の側)は、環状の突起部146の外周面に形成された略三角形状のリブ147a(図3,6参照)に繋がっている。この三角形状のリブ147aにより、下ケーシング140と環状の突起部146の一体構造の剛性が確保され、更に環状の突起部146によって支えられる軸受ホルダー145の下ケーシング140への固定構造(一体構造)の剛性が確保されている。
【0033】
また、下ケーシング140の段部144には、インペラ120の主板122の外周側が、接触しない状態で収納される。三角形状のリブ147aの形状のバリエーションとしては、軸方向に突出し、環状の突起部146を外側から支え補強する形状を採用することができる。具体的な形状としては、三角形状の他に、四角形状、円や楕円を4等分した形状、これらの中の複数を組み合わせた形状を採用できる。
【0034】
下ケーシング140の凹部141の底面には、下ケーシング140と一体成形にて成形された複数の樹脂ピン149が立設されている(図1図4参照)。樹脂ピン149は、軸方向に延在し、回路基板132を下ケーシング140に固定するために利用される。樹脂ピン149は、放射状のリブ147と最も外側および最も内側の同心状のリブ148が交差する部分に設けられている。この内側および外側の同心状の位置に設けられた樹脂ピン149によって、回路基板132がその内周側と外周側において下ケーシング140に固定される。樹脂ピン149の数は、なるべく多い方が良いが、1つ周方向においてバランスを考慮した位置で4個以上とすることが好ましい。
【0035】
回路基板132のコイル端末挿入孔133に対応する下ケーシング140の部分には、コイル193の端末193a(図3参照)の回路基板132への半田接続を行うための貫通孔136(図2,3参照)が設けられている。この貫通孔136が設けられていることで、回路基板132を下ケーシング140の凹部141底面に設置した状態で、コイル193の端末193aを上方(露出面側)からコイル端末挿入孔133(図1、3参照)に挿入し、下ケーシング140の裏面側(図2の視点の側)から端末193aの回路基板132への半田接続の作業が行える。図2,3の符号137は、端末193aの回路基板132への半田接続部である。
【0036】
図3に示すように、下ケーシング140を成形する際、同時にコネクタハウジング161が樹脂の一体成形にて形成されている。コネクタハウジング161の内側には、コネクタピン162がコネクタハウジング161に圧入されることで装着されている。コネクタハウジング161の後側(背面側)は、保護用のカバー163が装着され、コネクタピン162の露出が防止されている。
【0037】
図3,4に示すように、軸受ホルダー145の外周にはステータコア151が固定されて配設されている。ステータコア151は、所定形状の鋼板を複数枚、積層して構成された構造で、中央に開口が形成され、そこに軸受ホルダー145が嵌合されている。ステータコア151の軸方向両側から樹脂製の上側インシュレータ191および下側インシュレータ192が装着されている。ステータコア151は、周方向に沿って径外側の方向に延在する複数の突極151a(図5,6参照)を備え、この複数の突極151aには、上側インシュレータ191および下側インシュレータ192を介してコイル(ステータコイル)193が巻回されている。なお、図5,6には、コイル193が巻回されていない状態が示されている。
【0038】
図5に示すように、下側インシュレータ192はその中央に軸方向に延在する円筒部195を有している。円筒部195には、周方向にスリット(切欠)195aが複数(この例では6カ所)形成されている。このスリット195aは隣接する突極151aの間に形成されたスロット152の中央と軸中心を結ぶ線上に形成されている。このスリット195aのそれぞれには、下ケーシング140の突起部146の外周面に形成された三角形状のリブ147aが挿入される(図6参照)。三角形状のリブ147aは、放射状のリブ147の根元の部分であり、三角形状のリブ147aから径外側の方向に延在した部分が放射状のリブ147である。スリット195aへのリブ147aの挿入はステータコア151の位置決めも兼ねている。
【0039】
軸に垂直な方向から見て、三角形状のリブ147aはスロット152の中央に位置するため、コイル193(図3,4参照、図5,6では記載されていない)との干渉(接触)を回避してリブ147aの寸法を大きくできる。この結果、下ケーシング140の剛性および下ケーシング140と軸受ホルダー145の一体構造の剛性を高くできる。
【0040】
また、下側インシュレータ192には、軸方向に延在した延在部196(図5参照)が設けられている。延在部196の先端は、二股構造を有し、凹部196aとその両側の突出部196bを有している。
【0041】
以下、主に図1を参照し、回路基板132とモータ130を下ケーシング140に固定する作業の手順の一例を説明する。まず、ステータコア151に上側インシュレータ191と下側インシュレータ192を装着し、更にコイル193を突極151aに巻回して図5の状態のステータ構造体170を得る。
【0042】
他方で、図示省略した電子部品を取り付けた回路基板132を用意する。そして、この回路基板132を下ケーシング140の凹部141の底面に取り付ける。この際、下ピン挿入孔134に下ケーシング140に立設された樹脂ピン149が挿入され、その先端が回路基板132の上面から突出する状態とする。そして、回路基板132の上面から突出した樹脂ピン149の先端を赤外線カシメや熱カシメ等の方法で潰し、回路基板132に溶着する。この作業により、ピン溶着部分149aが形成され、回路基板132が樹脂ピン149により下ケーシング140に固定される。また、図3に示すコネクタピン162を回路基板132の配線パターンと半田で接合させる。
【0043】
次に、図5の状態を有するステータ構造体170を下ケーシング140に嵌着する。この作業では、まずコイル端末挿入孔133にコイル193の端末193a(図3参照)を差し込み、その先端を貫通孔136の内部に突出させる。次いで、ステータコア151を下ケーシングに一体成型された軸受ホルダー145に嵌着させ固定する。なお、この固定において、接着剤を併用してもよい。
【0044】
上記のステータ構造体170の下ケーシング140への装着において、延在部196の先端両側の突出部196bの間にピン溶着部149aが位置するようにし、凹部196aの内側にピン溶着部149aが収容されるようにする。また、一対の突出部196bがピン溶着部149aを挟む位置で回路基板132に当接するようにする。この状態が図6,7に示されている。この状態では、凹部196aがピン溶着部149aの逃げ部となり、一対の突出部196bの先端が回路基板132に当接する。ここで、突出部196bの先端と回路基板132の当接部分を接着剤で固定してもよい。
【0045】
次に、貫通孔136の内部において、コイル端末挿入孔133に差し込まれたコイル端末193aの先端を回路基板132の配線パターンに半田接続する。こうして、図2,3の半田接続部137が形成される。
【0046】
図1,2に示すように、上ケーシング110と下ケーシング140の結合は、上ケーシング110と下ケーシング140の間に支柱114を介装して結合させている。具体的には、支柱114は上ケーシング110の外周部に設けたフランジ部113に形成されており、樹脂(PBT樹脂で、PBTのGF強化も含む)の成形により、上ケーシング110と一体成形で形成され、支柱114の先端部に突起部115が形成されている。この突起部115を下ケーシング140のフランジ142に形成した貫通孔143に挿通し、貫通孔143から突出した突起部115の先端部115a(図2参照)を溶着(例えば、超音波溶着、振動溶着、レーザ溶着、等)や熱カシメ等することで、支柱114と下ケーシング140とが接合されている。
【0047】
(優位性)
下ケーシング140を樹脂製にすることで軽量化することができ、凹部141の底面に成形した複数のリブ(放射状のリブ147と同心状のリブ148)によって厚さを薄くすることによる剛性の低下を防止できる。さらに、環状の突起部146の外周面に形成した三角形状のリブ147aによりシャフト173の軸受け構造の剛性を確保できる。
【0048】
また、回路基板132が下ケーシング140から突出した樹脂ピン149によって下ケーシングに固定される。この構造では、下ケーシング140と回路基板132とが一体化され、下ケーシング140が回路基板132によって補強される。このため、下ケーシング140に係る構造は、軽量でありながら剛性が高く、振動が発生し難い。
【0049】
特に、樹脂ピン149を用いた回路基板132の下ケーシング140への結合が、回路基板132の同心状の2つの環状の部分で行われているので、下ケーシング140への回路基板132の結合が強固に行われる。
【0050】
特に、樹脂ピン149は、下ケーシング140を補強する放射状のリブ147と同心状のリブ148の交点に形成されている。このリブの交点の部分は、強度の高い部分であるので、この交点の部分に樹脂ピン149を立設し、樹脂ピン149により上記リブの交点の付近に回路基板132を押さえつけて固定することで、下ケーシング140と回路基板132の結合強度を高くでき、また両者を一体化した構造の剛性を高くできる。このため、軽量化を図りつつ振動が発生し難い構造が得られる。
【0051】
また、下ケーシング140と支柱114との結合作業は自動化が容易であり、製造コストを抑えることができる。また、下ケーシング140を樹脂製にすることで、電子部品を実装した回路基板132と下ケーシング140の間に絶縁シートを配置する必要がなく、部品点数を削減できる。また、下ケーシング140の最外周縁は、吹出口181を形成する箇所となるが、下ケーシング140が樹脂製のため、吹出口181を形成する箇所の形状の自由度を高くすることができ、吹出口181からの空気の風向を制御することが容易となる。この結果、空気の吹き出しに起因する騒音を低減することができる。
【0052】
回路基板132の中央には円形の開口135(図1図6参照)が形成されている。この開口135が突起部146(図3,4参照)の外周面に形成された三角形状のリブ147aの逃げの空間となり、リブ147aが回路基板132と接触するのを回避している。
【0053】
(むすび)
遠心ファン100(図1)は、樹脂製の上ケーシング110と樹脂製の下ケーシング140の間にインペラ120、モータ130および回路基板132を収めた構造を有し、下ケーシング140の凹部141の底面には補強用の放射状のリブ147,同心状のリブ148が形成され、これらリブの部分に樹脂ピン149が立設され、回路基板132は樹脂ピン149により下ケーシング140に固定されている。
【0054】
この構造によれば、樹脂を用い、また放射状のリブ147および同心状のリブ148によって補強された構造とすることで、下ケーシング140を軽量化できる。特に、リブによって剛性が確保された樹脂ピン149によって回路基板132と下ケーシング140が一体化される。そのため、樹脂製の下ケーシング140の厚みを大きくしなくても下ケーシング140の剛性を高くでき、低振動の遠心ファン100が得られる。
【0055】
また、樹脂ピン149は、放射状のリブ147と同心状のリブ148が交差する部分に立設されている。放射状のリブ147と同心状のリブ148が交差する部分は、剛性の高い部分であり、そこに樹脂ピン149を立設させることで、樹脂ピン149自体の剛性を高くできる。このため、樹脂ピン149による下ケーシング140と回路基板132の一体構造の剛性を高くでき、振動し難い構造が得られる。
【0056】
下ケーシング140は、放射状のリブ147によって補強された環状の突起部146を備え、環状の突起部146にインペラ120の回転軸となるシャフト173を回転自在な状態で保持する中空円筒形状の軸受ホルダー145が一体成形により保持されている。この構造によれば、軸受ホルダー145が振動し難い構造となるので、インペラ120の回転に伴う振動の発生が抑えられた遠心ファン100が得られる。
【0057】
軸受ホルダー145には、ステータコア151(図3,4)が固定され、ステータコア151には、樹脂製の下側インシュレータ192が装着され、下側インシュレータ192は、下ケーシング140の方向に延在する円筒部195(図3,4,5,6)を備え、円筒部195には、放射状のリブ147(図1)の環状の突起部146につながる三角形状のリブ147aが入り込むスリット195a(図5)が形成されている。
【0058】
この構造によれば、三角形状のリブ147aとスリット195aをステータ構造体170(図5)の下ケーシング140に対する位置決め機構に利用することができ、組立が行い易い構造となる。また、三角形状のリブ147aの寸法を大きくできるので、三角形状のリブ147aによる環状の突起部146の補強が確実に行われる。
【0059】
下側インシュレータ192は、先端に凹部196a(図5)が設けられ、下ケーシング140の方向に延在した延在部196を備えている。延在部196の先端には、凹部196aの両側で軸方向に突出する一対の突出部196bが設けられている。図7に示すように、一対の突出部196bは、回路基板132の樹脂ピン149が貫通した部分を周方向で挟んだ位置で、回路基板132に接触している。
【0060】
図7の視点で見て、樹脂ピン149の回路基板132への溶着部149a(図4,6,7)を周方向で挟む部分の裏面側には、同心状のリブ148が存在している。この周方向で挟む部分に二股構造の突出部196bの先端が当接することで、一対の突出部196bと同心状のリブ148との間に回路基板132が挟まれた状態となり、下ケーシング140への回路基板132の密着性がより高くなる。
【0061】
回路基板132は平板状であり、支持構造によっては振動する可能性がある。突出部196bと同心状のリブ148との間に回路基板132を挟む構造は、複数の点で回路基板が同心状のリブ148に押さえつけられるので、回路基板132が振動し難い構造が得られる。
【0062】
回路基板132には、モータ130(図1)のコイル193の端末193a(図3)が挿入されるコイル端末挿入孔133(図1,3)が設けられている。下ケーシング140のコイル端末挿入孔133に対応する部分には、貫通孔136(図3)が設けられている。コイル193の端末193aは、貫通孔136の内部で回路基板132に半田で接続され、半田接続部137(図2,3)が形成されている。
【0063】
この構造では、下ケーシング140の裏面側から貫通孔136を介して、回路基板132を貫通した端末193aの回路基板132への半田付けが行われる。遠心ファン100に用いられるコイル193の巻き線は細く、扱いに注意が必要であるが、上記の構造では、半田接続部137に係る作業の作業性が高く、また確実な作業ができる優位性がある。
【0064】
2.第2の実施形態
(構成)
図8には、実施形態の遠心ファン200が示されている。図9には、遠心ファン200の斜視図が、図10および図11には、遠心ファン200の軸に垂直な方向から見た断面図が示されている。以下の説明において、第1の実施形態と同じ符号の部分は、第1の実施形態で説明したものと同じである。以下、第1の実施形態と同じ部分については簡素に説明し、第1の異なる部分について詳細に説明する。
【0065】
遠心ファン200は、上ケーシング110と下ケーシング140から構成され、上ケーシング110と下ケーシング140の間にモータ130によって駆動され回転するインペラ120が収納されている。インペラ120の回転に伴って吸込口111から空気を吸入し、この吸入した空気を吹出口181から径外側の方向に向けて排出する。
【0066】
上ケーシング110は、吸気口111、リブ116、凹部103、フランジ113、支柱114、突起部115を備えている。インペラ120は、環状のシュラウド121、環状の主板122、羽根123を備えている。主板122の内側には、ブッシュ124とロータマグネット127が固定されている。ブッシュ124の中心には、金属製のシャフト173が固定されている。シャフト173は、玉軸受171,172により後述する軸受ホルダー145に回転自在な状態で保持されている。
【0067】
環状のシュラウド121の内周縁は吸込口125を構成し、その内周縁には軸方向に立設する環状突起部126が設けられている。第1の実施形態の場合と同様に、環状突起部126を利用してラビリンスシールが形成されている。
【0068】
モータ130はアウターロータ型のブラシレスDCモータで、回路基板132と一体化され、下ケーシング140に形成した凹部141の底面に装着されている。回路基板132には、コイル193の端末が接続されるスルーホールであるコイル端末挿入孔133、下側インシュレータ192の樹脂ピン194が貫通する貫通孔153、下ケーシング140の樹脂ピン149が貫通する貫通孔134が設けられている。
【0069】
第1の実施形態の場合と同様に、下ケーシング140の中央には円形の凹部141とその外周側に段部144が形成されている。凹部141の中央には、立設された状態で金属製の軸受ホルダー145が一体に成形されている。軸受ホルダー145の内側には、シャフト173を回転自在な状態で保持するための一対の玉軸受171,172が嵌着されている。
【0070】
軸受ホルダー145の根元側の外周面には、下ケーシング140と一体成形された環状(筒状)の突起部146が形成されている。軸受ホルダー145は、環状の突起部146によって周囲から補強される形で下ケーシング140に一体化され保持されている。
【0071】
凹部141の底面には、突起部146の外周面から凹部141の最外周縁に延在する放射状の複数条のリブ147が形成され、更に放射状のリブ147の間を結合する同心状の複数条のリブ148が形成されている。また、放射状のリブ147の根元側(突起部146の側)は、突起部146を補強する三角形状のリブ147aに繋がっている。なお、同心状のリブ148は1条でもよい。
【0072】
図12および13には、ステータコア151に上側インシュレータ191と下側インシュレータ192を装着した状態が示されている。下側インシュレータ192の下面には下側インシュレータ192と一体成形にて形成した樹脂ピン194が形成されている。樹脂ピン194は、軸方向(下ケーシング140の方向)に延在しており、ステータコア151における各突極151a先端の周方向における下面の略中央部に配置されている。下側インシュレータ192は、スリット195aが形成された円筒部195を有している。この部分の構造は、第1の実施形態と同じである。
【0073】
以下、組立工程の一例を説明する。まず、下側インシュレータ192と回路基板132との結合を行う。最初に、下側インシュレータ192の下面に形成した樹脂ピン194を回路基板132に形成した貫通孔134(図8参照)に挿通する。同時に、突極151aに巻回したコイル193の端末を回路基板132に形成したコイル端末挿入孔133に挿通する。
【0074】
その後、下側インシュレータ192と反対側から半田にて回路基板132に形成した配線パターンとコイル193の端末を電気的に接合する。この接合によって、下側インシュレータ192の下面に回路基板132が装着されたステータ組立体を得る。この配線パターンとコイル193の端末の半田接続部137(接合箇所)は突起となる(図10参照)。下ケーシング140の凹部141の底面には、上記の突起となる半田接続部137が収まる凹型の逃げ部141aが形成されている。ここで、回路基板132は、両面配線で、電子部品は片面実装となっている。
【0075】
次に、ステータコア151、上側インシュレータ191、下側インシュレータ192、コイル193および回路基板132により構成されたステータ組立体を下ケーシング140に装着する。この作業では、まずステータ組立体(ステータコア151)を軸受ホルダー145に嵌着させる。このとき、図12に示す円筒部195に形成されたスリット195aにリブ147aが挿入されるよう、位置合わせを行う。また、貫通孔134を貫通した状態の樹脂ピン194を下ケーシング140に形成した貫通孔153に貫通させ、その先端を下ケーシング140の背面から突出させる(図11参照)。
【0076】
また、上記の作業において、下ケーシング140の樹脂ピン149を回路基板132に形成した貫通孔134に貫通させる。ここで、下ケーシング140の樹脂ピン149の形成箇所は、放射状のリブ147と同心状のリブ148との交点である。そして、下ケーシング140の下面から突出した樹脂ピン194の先端を赤外線カシメ、熱カシメ、等々で潰し、ピン溶着部194aを形成する。また同様にして、回路基板132から突出した樹脂ピン149の先端を潰してピン溶着部149aを形成する。
【0077】
この結果、ステータコア151、上側インシュレータ191、下側インシュレータ192、コイル193および回路基板132により構成されたステータ組立体は、下ケーシング140の凹部141の底面に固定される。なお、上ケーシング110と下ケーシング140の結合、および配線の接続は、第1の実施形態の場合と同じである。
【0078】
(優位性)
下側インシュレータ192に形成した樹脂ピン194で、ステータコア151、上側インシュレータ191、下側インシュレータ192、コイル193および回路基板132により構成されたステータ組立体と下ケーシング140とを一体化しているため、剛性を高くすることができ、下ケーシング140の固有振動数を高くすることができる。この結果、インペラ120を高回転することによって生じる下ケーシング140の振動を防止できる。さらに、下ケーシング140に形成した樹脂ピン149は、回路基板132の外周側を貫通しているので、回路基板132の外縁に近い部分が下ケーシング140に樹脂ピン149によって固定される。このため、回路基板132と下ケーシング140との一体構造が強固となり、一層、振動を防止することができる。
【0079】
(むすび)
以上述べたように、遠心ファン200は、上ケーシング110と下ケーシング140の間にインペラ120を収めた構造を有し、下ケーシング140は、複数の三角形状のリブ147aによって補強された環状の突起部146を備え、環状の突起部146にインペラ120の回転軸となるシャフト173を回転自在な状態で保持する中空円筒形状の軸受ホルダー145が保持されている。
【0080】
軸受ホルダー145は、玉軸受171,172を介してシャフト173を回点自在な状態で保持する部材であり、軸受ホルダー145の軸方向(シャフト173の延在方向)に対するブレは、振動の原因となる。このため、軸受ホルダー145は、上述したブレが生じ難い強度でもって下ケーシング140に固定される必要がある。遠心ファン200では、軸受ホルダー145が三角形状のリブ147aによって補強された環状の突起部146の内側に保持されるので、下ケーシング140と軸受ホルダー145の一体構造の剛性を高くでき、上述した軸方向に対するブレが生じ難い構造が得られる。このため、下ケーシング140を樹脂製として軽量化を図り、且つ、軸のブレが抑えられて振動が発生し難い遠心ファンが得られる。
【0081】
軸受ホルダー145には、ステータコア151が固定され、ステータコア151には、樹脂製の下側インシュレータ192が装着され、下側インシュレータ192は、下ケーシング140とステータコア151の間に配置された回路基板132および下ケーシング140を貫通する樹脂ピン194を備えている。
【0082】
この構造によれば、ステータコア151が樹脂ピン194によって下ケーシング140に固定され、さらに回路基板132も樹脂ピン194によって下ケーシング140に固定される。このため、下ケーシング140とステータ組立体とが結合した状態の剛性が高く、また回路基板132が振動し難い構造が得られる。
【0083】
相対的に見て、樹脂ピン194(図11)は、回路基板132の軸中心側を貫通し、樹脂ピン149は、回路基板132の外縁側(軸中心から離れた側)を貫通している。また、回路基板132の外縁近くにおいて、上面に突出した樹脂ピン149の先端を潰してピン溶着部149aを形成し、樹脂ピン149により回路基板132の周縁を下ケーシング140に押し付けて固定している。回路基板132の外縁近くが固定されていないと、その部分における振動が発生し易い。上記の構造によれば、回路基板132の外縁付近が下ケーシング140に固定されるので、回路基板132および回路基板132と下ケーシング140とが一体化した構造体の振動を効果的に抑えることができる。
【0084】
下側インシュレータ192は、下ケーシング140の方向に延在する円筒部195(図3,4,5,6)を備え、円筒部195には、三角形状のリブ147aが入り込むスリット195aが形成されている。この構造によれば、ステータ組立体と下ケーシング140との組立時における位置決めが容易であり、また補強のための構造体である三角形状のリブ147aの寸法を確保できる。
【0085】
軸に垂直な方向から見て、三角形状のリブ147aが回路基板132と重なる位置にある(図3,4)。この構造によれば、軸方向における寸法を抑えた遠心ファンが得られる。
【0086】
下ケーシング140は、下ケーシング140と一体に成形され、下ケーシング140の一部であるコネクタハウジング161を備えている。この構造によれば部品点数が抑えられる。
【0087】
上ケーシング110は、下ケーシング140の方向に延在する支柱114(図2)を備え、支柱114の先端は、下ケーシング140に設けた貫通孔143(図1)に貫通した状態で下ケーシング140に溶着されている。この構造により、上ケーシング110と下ケーシング140とを結合する工程が行い易く、また結合の強度を高くできる。
【0088】
3.第3の実施形態
図14に本実施形態の遠心ファン300の斜視図を示し、図15(A)および(B)に断面図を示す。以下、実施形態1および2と異なる部分について説明する。本実施形態では、回路基板132が下ケーシング140に樹脂ピン149で固定されている。すなわち、回路基板132には、樹脂ピン149が貫通する孔が設けられ、この孔に樹脂ピン149を貫通させている。そして、回路基板132上に突出した樹脂ピン149の先端を塑性変形させて潰し(例えば、熱カシメを行うことで)、ピン溶着部149aが形成されている。ピン溶着部149aが形成されることで、樹脂ピン149による下ケーシング140への回路基板132の固定が行われている。
【0089】
また、下側インシュレータ192は、下方に延在する樹脂ピン194を有している。樹脂ピン194は、下ケーシング140を貫通している。下ケーシング140を貫通した樹脂ピン194の先端は、塑性変形され潰され、ピン溶着部194aが形成されている。ピン溶着部194aが形成されることで、下側インシュレータ192(ステータコア151を含むステータ)と下ケーシング140との結合が行なわれている。
【0090】
また、下ケーシング140には、貫通孔154が設けられている。そして、貫通孔154の内側でコイル193の端末が回路基板132に半田接続され、半田接続部137が形成されている。
【0091】
4.その他の実施形態
図5の構造と図12の構造とを組み合わせた構造も可能である。例えば、下側インシュレータ192の放射状の6個の極歯の部分において、凹部196aおよび突出部196bを備えた構造と、樹脂ピン194を備えた構造を周方向に沿って一つ置きに交互に設けた構造が可能である。この場合、凹部196aがある部分を、軸に垂直な方向から見た断面構造が図4の状態となる。また、樹脂ピン194がある部分を、軸に垂直な方向から見た断面構造が図11の状態となる。
【符号の説明】
【0092】
100…遠心ファン、103…凹部、110…上ケーシング、111…吸込口、113…フランジ部、114…支柱、115…突起部、116…リブ、117…環状の凹部、120…インペラ、121…シュラウド、122…主板、123…羽根、124…ブッシュ、125…吸込口、126…環状突起部、127…ロータマグネット、130…モータ、132…回路基板、133…スルーホール、134…貫通孔、135…開口、136…貫通孔、140…下ケーシング、141…凹部、141a…逃げ部、142…フランジ、143…貫通孔、144…段部、145…軸受ホルダー、146…突起部、147…放射状のリブ、147a…三角形状のリブ、148…同心状のリブ、149…樹脂ピン、149a…潰された先端部分、151…ステータコア、151a…突極、152…スロット、153…貫通孔、154…貫通孔、161…コネクタハウジング、162…コネクタピン、163…カバー、171…玉軸受、172…玉軸受、173…シャフト、181…吹出口、191…上側インシュレータ、192…下側インシュレータ、193…コイル、194…樹脂ピン、194a…ピン溶着部、195…円筒部、195a…スリット(切欠)、196…延在部、196a…凹部、196b…突出部。
図1
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