(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】物体検知装置、物体検知方法及び物体検知プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/60 20160101AFI20220322BHJP
B60L 53/124 20190101ALI20220322BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20220322BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20220322BHJP
G01S 13/86 20060101ALI20220322BHJP
G01S 15/04 20060101ALI20220322BHJP
G01S 13/04 20060101ALI20220322BHJP
H02J 50/80 20160101ALN20220322BHJP
【FI】
H02J50/60
B60L53/124
B60M7/00 X
H02J50/12
G01S13/86
G01S15/04
G01S13/04
H02J50/80
(21)【出願番号】P 2018111290
(22)【出願日】2018-06-11
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】深江 唯正
(72)【発明者】
【氏名】巳波 敏生
(72)【発明者】
【氏名】久保 正樹
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-056915(JP,A)
【文献】特開2017-135838(JP,A)
【文献】国際公開第2014/129182(WO,A1)
【文献】特表2016-502385(JP,A)
【文献】特開2009-236623(JP,A)
【文献】特開2009-174900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00-50/90
B60L 53/124
B60M 7/00
G01S 13/86
G01S 15/04
G01S 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械学習により学習された閾値を、少なくとも車両及び自然環境のいずれかに関する特徴に対応付けて記憶する記憶部と、
非接触給電システムの送電装置と受電装置との間に電磁波又は超音波を発信し、前記電磁波又は前記超音波の反射波を受信するセンサ部と、
前記電磁波又は前記超音波及び前記反射波に基づいて、前記送電装置と前記受電装置との間に形成される電磁場領域における前記反射波の大きさを算出する算出部と、
前記送電装置と前記受電装置との間を撮影する撮影部と、
前記撮影部により撮影された画像に基づいて認識される、少なくとも車両及び自然環境のいずれかに関する特徴に基づいて、前記記憶部から前記閾値を取得する取得部と、
前記算出部により算出された前記反射波の大きさと前記取得部により取得された前記閾値とを比較し、前記送電装置と前記受電装置との間に物体が存在するか否かを判定する判定部と、
を備える物体検知装置。
【請求項2】
前記送電装置から送電された電力量に対する前記受電装置で受電された電力量の値、及び前記画像に基づいて認識される前記特徴に基づいて、前記閾値を学習する機械学習部を、さらに備え、
前記記憶部は、前記機械学習部により学習された前記閾値を記憶する、
請求項1記載の物体検知装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記算出部により算出された前記反射波の大きさが、前記取得部により取得された前記閾値よりも大きい場合に、前記送電装置と前記受電装置との間に物体が存在すると判定し、
前記判定部により、前記送電装置と前記受電装置との間に物体が存在すると判定された場合に、前記送電装置からの送電を停止させる送電制御部を、さらに備える、
請求項1又は2記載の物体検知装置。
【請求項4】
前記送電制御部は、前記撮影部により撮影された画像に基づいて認識される物体の大きさが、所定の大きさ以上である場合に、前記送電装置からの送電を停止させる、
請求項3記載の物体検知装置。
【請求項5】
前記判定部により、前記送電装置と前記受電装置との間に物体が存在しないと判定された場合に、前記送電装置から送電された電力量に対する前記受電装置で受電された電力量の値に基づいて、前記送電装置から送電される電力量を制御する電力量制御部をさらに備える、
請求項3又は4に記載の物体検知装置。
【請求項6】
前記電力量制御部は、前記送電装置から送電された電力量に対する前記受電装置で受電された電力量の値が所定の値未満である場合に、前記送電装置から送電される電力量が増加するように制御する、
請求項5記載の物体検知装置。
【請求項7】
前記車両に関する特徴には、前記受電装置を搭載する車体の地上高が含まれ、前記自然環境に関する特徴には、雨滴の大きさが含まれる、
請求項1から6のいずれか1項に記載の物体検知装置。
【請求項8】
プロセッサにより実行される物体検知方法であって、
機械学習により学習された閾値を、少なくとも車両及び自然環境のいずれかに関する特徴に対応付けて記憶させる記憶ステップと、
センサ部により非接触給電システムの送電装置と受電装置との間に発信された電磁波又は超音波及び前記電磁波又は前記超音波の反射波に基づいて、前記送電装置と前記受電装置との間に形成される電磁場領域における前記反射波の大きさを算出する算出ステップと、
前記送電装置と前記受電装置との間を撮影する撮影部により撮影された画像に基づいて認識される、少なくとも車両及び自然環境のいずれかに関する特徴に基づいて、前記記憶ステップにおいて記憶された閾値を取得する取得ステップと、
前記算出ステップにおいて算出された前記反射波の大きさと前記取得ステップにおいて取得された前記閾値とを比較し、前記送電装置と前記受電装置との間に物体が存在するか否かを判定する判定ステップと、
を含む物体検知方法。
【請求項9】
コンピュータを、
機械学習により学習された閾値を、少なくとも車両及び自然環境のいずれかに関する特徴に対応付けて記憶する記憶部、
非接触給電システムの送電装置と受電装置との間に電磁波又は超音波を発信し、前記電磁波又は前記超音波の反射波を受信するセンサ部、
前記電磁波又は前記超音波及び前記反射波に基づいて、前記送電装置と前記受電装置との間に形成される電磁場領域における前記反射波の大きさを算出する算出部、
前記送電装置と前記受電装置との間を撮影する撮影部、
前記撮影部により撮影された画像に基づいて認識される、少なくとも車両及び自然環境のいずれかに関する特徴に基づいて、前記記憶部から前記閾値を取得する取得部、
前記算出部により算出された前記反射波の大きさと前記取得部により取得された前記閾値とを比較し、前記送電装置と前記受電装置との間に物体が存在するか否かを判定する判定部、
として機能させる物体検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検知装置、物体検知方法及び物体検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、非接触(ワイヤレス)給電システムの送電装置と受電装置との間に物体が侵入した場合に、送電を停止させる技術が開示されている。この特許文献1では、車両に搭載された物体検知センサから照射される電磁波の反射信号を利用して、送電装置と受電装置との間に存在する物体を検出する。具体的に、反射信号の受信強度と、反射信号から定まる物体の相対速度及び物体までの距離とに基づいて、物体の種類を判定し、その物体が送電を停止すべき物体である場合に、送電を停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の物体検知センサは、車両の後輪間付近に設けられている。したがって、例えば、車体の地上高が低い場合や降雨時には、物体からの反射波に、車両底部からの反射波や雨滴からの反射波が重畳し、反射信号の受信強度が増大することになる。反射信号の受信強度が本来得られる受信強度よりも増大すると、物体を誤検知し、誤って送電を停止させる要因となる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、非接触給電システムの送電装置と受電装置との間に存在する物体の検知精度を高めることができる物体検知装置、物体検知方法及び物体検知プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による物体検知装置は、機械学習により学習された閾値を、少なくとも車両及び自然環境のいずれかに関する特徴に対応付けて記憶する記憶部と、非接触給電システムの送電装置と受電装置との間に電磁波又は超音波を発信し、電磁波又は超音波の反射波を受信するセンサ部と、電磁波又は超音波及び反射波に基づいて、送電装置と受電装置との間に形成される電磁場領域における反射波の大きさを算出する算出部と、送電装置と受電装置との間を撮影する撮影部と、撮影部により撮影された画像に基づいて認識される、少なくとも車両及び自然環境のいずれかに関する特徴に基づいて、前記記憶部から閾値を取得する取得部と、算出部により算出された反射波の大きさと取得部により取得された閾値とを比較し、送電装置と受電装置との間に物体が存在するか否かを判定する判定部と、を備える。
【0007】
この態様によれば、センサ部から発信される電磁波又は超音波に基づいて算出される、送電装置と受電装置との間の電磁場領域における反射波の大きさと、撮影部で撮影される画像に基づいて取得される、少なくとも車両及び自然環境のいずれかに関する特徴に対応付けて記憶部に記憶されている、機械学習済みの閾値とを比較して、送電装置と受電装置との間に物体が存在するか否かを判定することができる。したがって、車両や自然環境等の状況により反射波の大きさが変動する場合であっても、それらの状況に応じて学習された閾値を用いて、送電装置と受電装置との間に物体が存在するか否かを判定することが可能となる。
【0008】
上記態様において、送電装置から送電された電力量に対する受電装置で受電された電力量の値、及び画像に基づいて認識される特徴に基づいて、閾値を学習する機械学習部を、さらに備え、記憶部は、機械学習部により学習された閾値を記憶することとしてもよい。
【0009】
この態様によれば、受電電力量/送電電力量の値及び上記特徴に基づいて、特徴ごとに設定させる閾値を機械学習させることが可能となるため、物体の存在を判定する際の精度を高めることができる。
【0010】
上記態様において、判定部は、算出部により算出された反射波の大きさが、取得部により取得された閾値よりも大きい場合に、送電装置と受電装置との間に物体が存在すると判定し、判定部により、送電装置と受電装置との間に物体が存在すると判定された場合に、送電装置からの送電を停止させる送電制御部を、さらに備えることとしてもよい。
【0011】
この態様によれば、反射波の大きさが閾値よりも大きい場合に、送電装置と受電装置との間に物体が存在すると判定し、送電装置からの送電を停止させることができるため、例えば犬や猫等の物体に対して与える電磁場の影響を低減させることが可能となる。
【0012】
上記態様において、送電制御部は、撮影部により撮影された画像に基づいて認識される物体の大きさが、所定の大きさ以上である場合に、送電装置からの送電を停止させることとしてもよい。
【0013】
この態様によれば、物体の大きさが所定の大きさ以上である場合に、送電装置からの送電を停止させることができる。したがって、例えば、送電装置から受電装置への電力の伝送効率に影響を与えない昆虫等の小さな物体が存在する場合には、送電装置からの送電を継続させることができるため、不要な送電停止を防ぐことが可能となる。
【0014】
上記態様において、判定部により、送電装置と受電装置との間に物体が存在しないと判定された場合に、送電装置から送電された電力量に対する受電装置で受電された電力量の値に基づいて、送電装置から送電される電力量を制御する電力量制御部をさらに備えることとしてもよい。
【0015】
この態様によれば、物体が存在しない場合に、受電電力量/送電電力量の値、すなわち伝送効率に基づいて、送電装置から送電される電力量を制御することができるため、伝送効率を好適な状態に維持することが可能となる。
【0016】
上記態様において、電力量制御部は、送電装置から送電された電力量に対する受電装置で受電された電力量の値が所定の値未満である場合に、送電装置から送電される電力量が増加するように制御することとしてもよい。
【0017】
この態様によれば、受電電力量/送電電力量の値、すなわち伝送効率が所定の値未満である場合に、送電装置から送電される電力量を増加させることができるため、伝送効率が所定の値未満に低下した場合に、伝送効率を回復させることが可能となる。
【0018】
上記態様において、車両に関する特徴には、受電装置を搭載する車体の地上高が含まれ、自然環境に関する特徴には、雨滴の大きさが含まれることとしてもよい。
【0019】
この態様によれば、車体の地上高に対応付けて閾値を設定することや、雨滴の大きさに対応付けて閾値を設定することができるため、物体からの反射波に、車両底部からの反射波や雨滴からの反射波が重畳した場合であっても、その重畳分を加味した閾値を用いて、物体が存在するか否かを判定することが可能となる。
【0020】
本発明の他の態様に係る物体検知方法は、プロセッサにより実行される物体検知方法であって、機械学習により学習された閾値を、少なくとも車両及び自然環境のいずれかに関する特徴に対応付けて記憶させる記憶ステップと、センサ部により非接触給電システムの送電装置と受電装置との間に発信された電磁波又は超音波及び電磁波又は超音波の反射波に基づいて、送電装置と受電装置との間に形成される電磁場領域における反射波の大きさを算出する算出ステップと、送電装置と受電装置との間を撮影する撮影部により撮影された画像に基づいて認識される、少なくとも車両及び自然環境のいずれかに関する特徴に基づいて、記憶ステップにおいて記憶された閾値を取得する取得ステップと、算出ステップにおいて算出された反射波の大きさと取得ステップにおいて取得された閾値とを比較し、送電装置と受電装置との間に物体が存在するか否かを判定する判定ステップと、を含む。
【0021】
この態様によれば、センサ部から発信される電磁波又は超音波に基づいて算出される、送電装置と受電装置との間の電磁場領域における反射波の大きさと、撮影部で撮影される画像に基づいて取得される、少なくとも車両及び自然環境のいずれかに関する特徴に対応付けて記憶されている、機械学習済みの閾値とを比較して、送電装置と受電装置との間に物体が存在するか否かを判定することができる。したがって、車両や自然環境等の状況により反射波の大きさが変動する場合であっても、それらの状況に応じて学習された閾値を用いて、送電装置と受電装置との間に物体が存在するか否かを判定することが可能となる。
【0022】
本発明の他の態様に係る物体検知プログラムは、コンピュータを、機械学習により学習された閾値を、少なくとも車両及び自然環境のいずれかに関する特徴に対応付けて記憶する記憶部、非接触給電システムの送電装置と受電装置との間に電磁波又は超音波を発信し、電磁波又は超音波の反射波を受信するセンサ部、電磁波又は超音波及び反射波に基づいて、送電装置と受電装置との間に形成される電磁場領域における反射波の大きさを算出する算出部、送電装置と受電装置との間を撮影する撮影部、撮影部により撮影された画像に基づいて認識される、少なくとも車両及び自然環境のいずれかに関する特徴に基づいて、記憶部から閾値を取得する取得部、算出部により算出された反射波の大きさと取得部により取得された閾値とを比較し、送電装置と受電装置との間に物体が存在するか否かを判定する判定部、として機能させる。
【0023】
この態様によれば、センサ部から発信される電磁波又は超音波に基づいて算出される、送電装置と受電装置との間の電磁場領域における反射波の大きさと、撮影部で撮影される画像に基づいて取得される、少なくとも車両及び自然環境のいずれかに関する特徴に対応付けて記憶部に記憶されている、機械学習済みの閾値とを比較して、送電装置と受電装置との間に物体が存在するか否かを判定することができる。したがって、車両や自然環境等の状況により反射波の大きさが変動する場合であっても、それらの状況に応じて学習された閾値を用いて、送電装置と受電装置との間に物体が存在するか否かを判定することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、非接触給電システムの送電装置と受電装置との間に存在する物体の検知精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態における物体検知装置及び非接触給電システムの構成の一例を概略的に示すブロック図である。
【
図2】物体検知装置及び非接触給電システムを駐車場及び車両に適用した実施例を示す模式図である。
【
図3】物体検知装置の制御部の構成の一例を概略的に示すブロック図である。
【
図4】センサからの距離とセンサが受信する反射波に含まれる複数の反射波の振幅レベルとの関係を例示するグラフである。
【
図5】物体検知装置の動作例を説明するためのフローチャートである。
【
図6】変形例における物体検知装置の制御部の構成の一例を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面における各種の寸法比率は、その図示の比率に限定されるものではない。
【0027】
図1は、本発明に係る物体検知装置、及び非接触給電システムの構成の一例を概略的に示すブロック図である。非接触給電システム100は、例えば、磁界共鳴方式により送電装置101から受電装置102に数kHz~数百MHzの高周波電力を非接触で伝送するシステムである。この非接触給電システム100の詳細については後述する。
【0028】
ここで、非接触給電システム100に含まれる送電装置101は、道路側に適宜設置することができ、受電装置102は、車両に搭載することができる。
図2を参照して具体的に説明する。例えば、駐車場の各駐車スペース9に、送電コイルユニット3を含む送電装置101並びに物体検知装置1のセンサ11及びカメラ12を設置し、車両8に受電コイルユニット4を含む受電装置102を搭載することができる。
【0029】
図2に示すように、車両8を駐車スペース9に駐車すると、駐車スペース9の路面側に設けられた送電コイルユニット3を含む送電装置101から、車両8の底部に設けられた受電コイルユニット4を含む受電装置102に電力が非接触で伝送される。物体検知装置1は、センサ11及びカメラ12を用い、非接触給電システム100の送電装置101と受電装置102との間に物体が存在するか否かを判定し、物体が存在する場合に送電装置101からの送電を停止させる。
【0030】
図1に戻り、物体検知装置1の構成について詳細に説明する。物体検知装置1は、物理的な構成として、例えば、プロセッサと、通信インタフェースと、記憶資源(記憶部)と、センサ11と、カメラ12とを備える。プロセッサは、記憶資源に格納されているコンピュータプログラムを実行することで、後述する制御部13としての各種機能を実現する。通信インタフェースは、ネットワークを介して他の装置と通信するためのハードウェアモジュールであり、通信部14としての機能を有する。記憶資源は、例えば、コンピュータプログラムや、データベース等に登録される各種データを格納する。各種データには、例えば、後述する機械学習部により学習される閾値等が含まれる。
【0031】
センサ11及びカメラ12は、物体検知装置1の内部に備えることとしてもよいが、物体検知装置1の外部に備え、有線通信又は無線通信を利用して物体検知装置1と接続させることで物体検知装置1の一部を構成することとしてもよい。
【0032】
センサ11は、非接触給電システム100の送電装置101と受電装置102との間に電磁波を発信し、電磁波の反射波を受信するセンサ部として機能する。センサ11として、例えば、ミリ波、マイクロ波、光等の電磁波を発信するレーダを用いることができる他、超音波等の音波を発信するレーダを用いることができる。本実施形態では、例示的に、電磁波を発信するレーダをセンサ11として用いた場合について説明する。センサ11は、道路側に設置することに限定されず、車両に搭載することとしてもよい。
【0033】
カメラ12は、送電装置101と受電装置102との間を撮影する撮影部として機能する。カメラ12は、道路側に設置することに限定されず、車両に搭載することとしてもよい。
【0034】
図3を参照して、物体検知装置1の制御部13が有する各種の機能について説明する。制御部13は、例えば、算出部131と、取得部132と、判定部133と、機械学習部134と、送電制御部135とを有する。
【0035】
算出部131は、センサ11から発信された電磁波及びセンサ11が受信した反射波に基づいて、送電装置101と受電装置102との間に形成される電磁場領域における反射波の大きさを算出する。反射波の大きさを算出する手順について以下に説明する。ここでは、センサ11として、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)レーダを用いた場合について例示する。
【0036】
(1)算出部131は、センサ11から発信された電磁波と、センサ11により受信された反射波とをミキシングする。(2)算出部131は、ミキシングした信号をFFT(Fast Fourier Transform)解析する。(3)算出部131は、FFT解析した結果に基づいて、物体までの距離及び物体の相対速度等を算出するとともに、センサ11からの距離とセンサ11が受信する反射波の振幅レベル(反射波の大きさ)との関係を算出する。
【0037】
図4に、センサ11からの距離とセンサ11が受信する反射波に含まれる複数の反射波の振幅レベルとの関係を示すグラフを例示する。Erは、送電装置101と受電装置102との間に形成される電磁場領域の範囲を示す指標である。Thは、送電装置101と受電装置102との間に物体が存在するか否かを判定する際に用いる閾値である。センサ11が受信した反射波の振幅レベルが閾値Thよりも大きい場合には、物体が存在すると判定する。Rsは、送電装置101と受電装置102との間に存在する物体からの反射波であり、Rcは、車両底部からの反射波である。車両底部からの反射波Rcは、車体の地上高が低くなると発生する反射波であり、車体の地上高が低いほど振幅レベルが大きくなる傾向にある。
【0038】
ここで、
図4において、センサ11が受信する反射波は、重ね合わせの原理により、物体からの反射波Rsに車両底部からの反射波Rcが重畳した反射波となる。したがって、車体の地上高が低く、車両底部からの反射波が発生する車両の場合、センサ11が受信する反射波の振幅レベルは、車両底部からの反射波が発生しない車両に比べ、車両底部からの反射波Rcの分だけ大きくなる。それゆえ、閾値を、車両底部からの反射波が発生しない車両に対して用いる閾値Thに固定すると、車両底部からの反射波Rcが発生する車両では、物体が存在していないにもかかわらず、物体が存在するとの誤判定が生ずる可能性が高くなる。
【0039】
このような誤判定を防止するために、車両底部からの反射波Rcが発生する車両に対して用いる閾値を、車両底部からの反射波が発生しない車両に対して用いる閾値Thよりも、車両底部からの反射波Rcの分だけ大きな値に設定し、
図4の閾値Thaとすることが求められる。
【0040】
このような事情に鑑み、本実施形態における物体検知装置1は、
図3の機械学習部134において、カメラ12で撮影された画像に基づいて、閾値を学習することとした。以下に、機械学習部134について説明する。
【0041】
機械学習部134は、送電装置101から送電された電力量(以下、「送電電力量」ともいう。)及び受電装置102で受電された電力量(以下、「受電電力量」ともいう。)に関するデータを非接触給電システム100から取得する。機械学習部134は、取得したデータに基づいて、送電電力量に対する受電電力量(受電電力量/送電電力量)の値(以下、「伝送効率」ともいう。)を算出する。
【0042】
機械学習部134は、カメラ12で撮影された画像に対して画像認識を実行し、車両及び自然環境に関する特徴を抽出する。車両に関する特徴として、例えば、車体の地上高、車両の形状等が該当する。自然環境に関する特徴として、例えば、カメラのレンズ表面に付着した雨滴の大きさ、電磁場領域に散在する枯葉の状態等が該当する。なお、画像認識により抽出される特徴は、送電装置101と受電装置102との間に形成される電磁場領域における反射波の振幅レベルに影響を与えるものに関する特徴であればよい。画像認識の手法は、公知の手法を用いることができる。
【0043】
機械学習部134は、画像認識により得られた特徴と画像が撮影された時間帯の伝送効率とに基づいて閾値を算定し、その算定した閾値を、画像認識により得られた特徴に対応付けて記憶資源に記憶させることで、閾値を学習する。閾値を学習する際の具体例を、以下(a)、(b)に記載する。
【0044】
(a)例えば、画像認識により得られた特徴が車体の地上高である場合、その画像が撮影された時間帯の伝送効率が、基準となる伝送効率よりも低いときには、車両底部からの反射波の影響により反射波の大きさが大きくなり、物体が存在すると誤判定され、送電が停止されたことが想定される。したがって、機械学習部134は、基準となる閾値よりも大きな値となる閾値を算定する。画像認識により得られた車体の地上高に対し、既に複数の異なる伝送効率データが蓄積されている場合には、例えば、複数の伝送効率データの平均値を用いて閾値を算定することとしてもよい。そして、その算定した閾値を、画像認識により得られた車体の地上高に対応付けて記憶資源に記憶させる。
【0045】
(b)例えば、画像認識により得られた特徴がカメラのレンズ表面に付着した雨滴の大きさである場合、その画像が撮影された時間帯の伝送効率が、基準となる伝送効率よりも低いときには、降雨の影響により反射波の大きさが大きくなり、物体が存在すると誤判定され、送電が停止されたことが想定される。したがって、機械学習部134は、基準となる閾値よりも大きな値となる閾値を算定する。画像認識により得られた雨滴の大きさに対し、既に複数の異なる伝送効率データが蓄積されている場合には、例えば、複数の伝送効率データの平均値を用いて閾値を算定することとしてもよい。そして、その算定した閾値を、画像認識により得られた雨滴の大きさに対応付けて記憶資源に記憶させる。
【0046】
図3の取得部132は、カメラ12で撮影された画像に基づいて認識される特徴に基づいて、その特徴に対応付けて記憶されている閾値を記憶資源から取得する。この閾値は、機械学習部134による学習により記憶資源に記憶されたものである。
【0047】
ここで、上述したように、機械学習部134が閾値を学習する際に、カメラ12で撮影された画像に対して画像認識を実行しているが、画像認識を実行するのは機械学習部134に限定されない。例えば、閾値を取得する取得部132が画像認識を実行することとしてもよい。この場合、機械学習部134は、取得部132により認識された特徴を用いて閾値を学習することとしてもよい。
【0048】
判定部133は、算出部131により算出された反射波の大きさと取得部132により取得された閾値とを比較し、送電装置101と受電装置102との間に物体が存在するか否かを判定する。具体的に、判定部133は、算出部131により算出された反射波の大きさが、取得部132により取得された閾値よりも大きい場合に、送電装置101と受電装置102との間に物体が存在すると判定する。一方、判定部133は、算出部131により算出された反射波の大きさが、取得部132により取得された閾値以下である場合に、送電装置101と受電装置102との間に物体が存在しないと判定する。
【0049】
送電制御部135は、送電装置101と受電装置102との間に物体が存在すると判定された場合に、送電装置101に送電停止メッセージを送信し、送電装置101からの送電を停止させる。
【0050】
次に、
図1に示す非接触給電システム100の構成について説明する。非接触給電システム100は、送電装置101を構成する送電ユニット2及び送電コイルユニット3と、受電装置102を構成する受電コイルユニット4及び受電ユニット5とを備える。
【0051】
送電ユニット2は、高周波電源21、制御部22及び通信部23を備える。高周波電源21は、所定の周波数(数kHz~数百MHzの高周波)の高周波電力を発生する。高周波電源21は、高周波信号を発生する高周波信号発生回路と、高周波信号発生回路で発生した高周波信号を増幅するパワーアンプと、このパワーアンプに直流の電源電圧を供給するDC-DCコンバータと、パワーアンプから出力される高周波信号の高周波成分を除去するローパスフィルタと、パワーアンプから出力される高周波電力の電力量を制御する電力制御部と、を含む。
【0052】
送電ユニット2の制御部22は、ROM、RAM、CPUなどを備えるマイクロコンピュータやFPGA(field-programmable gate array)などで構成される。制御部22は、高周波電源21に対してDC-DCコンバータの出力電圧を制御する出力制御信号を出力し、高周波電源21から出力される高周波電力を制御する。通信部23は、物体検知装置1や受電ユニット5との間で無線通信を利用して各種の情報をやり取りする。
【0053】
送電コイルユニット3は、送電部31を備える。送電部31は、送電ユニット2の高周波電源21から出力される高周波電力を受電コイルユニット4の受電部41に無線で伝送する。送電部31は、例えば、複数ターンのソレノイドコイルからなるインダクタ(送電用コイル)とそのインダクタに直列に接続されたキャパシタとの直列共振回路で構成される。送電部31における直列共振回路の直列共振周波数(=1/[2π・√(L・C)])(L:インダクタの自己インダクタンス、C:キャパシタのキャパシタンス)は、高周波電源21から出力される高周波電力の周波数(以下、「電源周波数」ともいう。)[MHz]に調整されている。
【0054】
受電コイルユニット4は、受電部41を備える。受電部41は、送電コイルユニット3の送電部31との間で磁界結合をして送電部31から高周波電力を受電する。受電部41は、送電部31と同一の構成を有し、複数ターンのソレノイドコイルからなるインダクタ(受電用コイル)とそのインダクタに直列に接続されたキャパシタとの直列共振回路で構成される。受電部41における直列共振回路の直列共振周波数は、電源周波数[MHz]に調整されている。
【0055】
受電ユニット5は、整流回路51、制御部52及び通信部53を備える。整流回路51は、受電コイルユニット4の受電部41から出力される高周波信号を整流し、電力を蓄電する蓄電デバイスに直流電力を供給する。整流回路51は、例えば、4個の整流素子をブリッジ接続したブリッジ回路で構成される。制御部52は、ROM、RAM、CPUなどを備えるマイクロコンピュータやFPGAなどで構成される。通信部53は、物体検知装置1や送電ユニット2との間で無線通信により各種の情報をやり取りする。
【0056】
次に、
図5を参照して、実施形態における物体検知装置1の動作例について説明する。
【0057】
最初に、物体検知装置1の算出部131は、センサ11から発信された電磁波及びセンサ11が受信した反射波に基づいて、送電装置101と受電装置102との間に形成される電磁場領域における反射波の大きさを算出する(ステップS101)。続いて、物体検知装置1の取得部132は、カメラ12で撮影された画像に基づいて認識される特徴に基づいて、その特徴に対応付けて記憶されている閾値を記憶資源から取得する(ステップS102)。
【0058】
続いて、物体検知装置1の判定部133は、上記ステップS101で算出された反射波の大きさが、上記ステップS102で取得された閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS103)。この判定がNOである場合(ステップS103;NO)には、後述するステップS105に処理を移行する。
【0059】
上記ステップS103の判定で、反射波の大きさが閾値よりも大きいと判定された場合(ステップS103;NO)に、物体検知装置1の送電制御部135は、送電装置101に送電停止メッセージを送信し、送電装置101からの送電を停止させる(ステップS104)。
【0060】
続いて、物体検知装置1の機械学習部134は、非接触給電システム100から取得した送電電力量及び受電電力量に関するデータに基づいて、伝送効率を算出する(ステップS105)。続いて、機械学習部134は、カメラ12で撮影された画像に基づいて認識された特徴及びその画像が撮影された時間帯の伝送効率に基づいて閾値を算定する(ステップS106)。
【0061】
続いて、機械学習部134は、上記ステップS106で算定した閾値を、上記ステップS106の特徴に対応付けて記憶資源に記憶させる(ステップS107)。
【0062】
上述したように、実施形態における物体検知装置1によれば、センサ11から発信される電磁波を用いて、送電装置101と受電装置102との間の電磁場領域における反射波の大きさを算出し、カメラ12で撮影される画像に基づいて、車両及び自然環境のいずれかに関する特徴に対応付けて記憶されている、機械学習済みの閾値を取得し、算出した反射波の大きさと取得した閾値とを比較して、送電装置101と受電装置102との間に物体が存在するか否かを判定することができる。加えて、伝送効率の実績、並びに車両及び自然環境のいずれかに関する特徴に基づいて、特徴ごとに設定される閾値を学習させることができる。
【0063】
したがって、車両や自然環境等の状況により反射波の大きさが変動する場合であっても、それらの状況に応じて学習された閾値を用いて、送電装置101と受電装置102との間に物体が存在するか否かを判定することが可能となる。
【0064】
それゆえ、実施形態における物体検知装置1によれば、非接触給電システム100の送電装置101と受電装置102との間に存在する物体の検知精度を高めることが可能となる。
【0065】
[変形例]
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、他の様々な形で実施することができる。このため、上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。例えば、上述した各処理ステップは処理内容に矛盾を生じない範囲で任意に順番を変更し、又は並列に実行することができる。
【0066】
また、上述した実施形態において、送電制御部135は、反射波の大きさが閾値よりも大きい場合に、送電装置101からの送電を停止させているが、送電装置101からの送電を停止させる条件は、これに限定されない。例えば、送電制御部135は、カメラ12で撮影された画像に基づいて認識される物体の大きさが、所定の大きさ以上である場合に、送電装置101からの送電を停止させることとしてもよい。これにより、例えば、送電装置101から受電装置102への電力の伝送効率に影響を与えない昆虫等の小さな物体が存在する場合には、送電装置101からの送電を継続させることができるため、不要な送電停止を防ぐことが可能となる。
【0067】
また、上述した実施形態における制御部13は、
図6に示すように、電力量制御部136をさらに備えることとしてもよい。電力量制御部136は、判定部133により、反射波の大きさが閾値以下である、すなわち送電装置101と受電装置102との間に物体が存在しないと判定された場合に、伝送効率に基づいて、送電装置から送電される電力量を制御する。伝送効率は、上記実施形態と同様に、非接触給電システム100から取得する送電電力量及び受電電力量に関するデータに基づいて算出することができる。
【0068】
具体的に、電力量制御部136は、算出した伝送効率が所定の値未満である場合に、送電装置101に送電量増加メッセージを送信し、送電装置101から送電される電力量を増加させる。これにより、伝送効率が所定の値未満に低下した場合に、伝送効率を回復させることが可能となる。
【0069】
さらに、上述した実施形態における制御部13は、機械学習部134を備えているが、機械学習部134は必須の構成要素ではない。機械学習部134を備えない場合には、既に学習済みの閾値を、車両及び自然環境のいずれかに関する特徴に対応付けて記憶資源に記憶させておき、その閾値を用いて物体の存在を判定することとすればよい。
【符号の説明】
【0070】
1…物体検知装置、2…送電ユニット、3…送電コイルユニット、4…受電コイルユニット、5…受電ユニット、8…車両、9…駐車スペース、11…センサ、12…カメラ、13…制御部、14…通信部、21…高周波電源、22…制御部、23…通信部、31…送電部、41…受電部、51…整流回路、52…制御部、53…通信部、100…非接触給電システム、101…送電装置、102…受電装置、131…算出部、132…取得部、133…判定部、134…機械学習部、135…送電制御部、136…電力量制御部。