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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】対向ピストン型ディスクブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 55/228 20060101AFI20220322BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20220322BHJP
   F16D 63/00 20060101ALI20220322BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20220322BHJP
   F16D 65/00 20060101ALI20220322BHJP
   F16D 65/02 20060101ALI20220322BHJP
   F16D 55/225 20060101ALI20220322BHJP
   F16D 121/24 20120101ALN20220322BHJP
   F16D 125/40 20120101ALN20220322BHJP
【FI】
F16D55/228
B60T13/74 G
F16D63/00 A
F16D65/18
F16D65/00 C
F16D65/02 C
F16D65/02 M
F16D55/225 102C
F16D121:24
F16D125:40
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018113725
(22)【出願日】2018-06-14
(65)【公開番号】P2019215067
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000516
【氏名又は名称】曙ブレーキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 哲弥
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕之
(72)【発明者】
【氏名】市毛 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 禎雄
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0058524(US,A1)
【文献】特開2015-215074(JP,A)
【文献】特開2016-098848(JP,A)
【文献】特開2016-079986(JP,A)
【文献】特開2016-017558(JP,A)
【文献】特開2015-086886(JP,A)
【文献】特許第4754390(JP,B2)
【文献】実開平06-051572(JP,U)
【文献】実開平05-077633(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
B60T 8/32-8/96
B60T 13/00-17/22
F16D 49/00-71/04
F16D 121/24
F16D 125/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータの軸方向両側に配置され、1つ以上のシリンダをそれぞれ有するアウタボディ部及びインナボディ部と、前記アウタボディ部と前記インナボディ部との周方向両側部同士を連結する1対の連結部とを有し、懸架装置に固定されるキャリパと、
前記シリンダ内にそれぞれ嵌装された複数のピストンと、
前記ロータの軸方向両側に配置され、前記キャリパに対し軸方向の変位を可能に支持された1対のパッドと、
クランプ部材と、推力発生機構と、を有するパーキング機構部と、を備え、
前記クランプ部材は、軸方向外側部に押圧部を有し、軸方向内側部にクランプ基部を有しており、周方向に関して前記1対の連結部の間部分に配置され、前記押圧部と前記クランプ基部との間に存在する前記1対のパッド及び前記インナボディ部を径方向外側から跨ぐようにして前記キャリパに対し軸方向の変位を可能に支持されており、
前記推力発生機構は、前記クランプ基部に支持され、パーキングブレーキによる制動作動時に前記キャリパに対し軸方向内側に変位する内側変位部材と、前記インナボディ部が備える前記シリンダ内に配置され、パーキングブレーキによる制動作動時に前記キャリパに対し軸方向外側に変位する外側変位部材と、を有しており、
サービスブレーキによる制動力は、前記シリンダ内に圧油を送り込むことにより発生させ、パーキングブレーキによる制動力は、前記推力発生機構を作動させることにより発生させる、対向ピストン型ディスクブレーキ装置であって、
前記インナボディ部は、前記外側変位部材が内側に配置された前記シリンダの開口縁部から軸方向内側に向けて伸長したガイド筒を、軸方向内側部に有しており、前記クランプ基部は、前記内側変位部材が内側に配置され、かつ、軸方向外側が開口した収納孔を有しており、該収納孔の内側に前記ガイド筒を軸方向に関する相対移動を可能に嵌合することで、前記クランプ部材を前記キャリパに対し軸方向の変位を可能に支持する第一ガイド部を構成しており
前記第一ガイド部とともに、前記クランプ部材を前記キャリパに対し軸方向の変位を可能に支持する第三ガイド部をさらに有し、前記第三ガイド部は、前記アウタボディ部と前記押圧部との間に軸方向に配置されたアウタ側ガイドピンを含み、
前記アウタ側ガイドピンは、前記アウタボディ部と前記押圧部とのいずれか一方に固定され、かつ、前記アウタボディ部と前記押圧部とのいずれか他方に、弾性体を介して摺動可能に挿入されている、
対向ピストン型ディスクブレーキ装置。
【請求項2】
前記ガイド筒と前記内側変位部材及び前記外側変位部材とが、互いに同軸に配置されている、請求項1に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ装置。
【請求項3】
前記内側変位部材が、外周面に雄ねじ部を有するスピンドルであり、前記外側変位部材が、内周面に雌ねじ部を有し、前記スピンドルに螺合したナットである、請求項1~2のうちのいずれか1項に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ装置。
【請求項4】
前記ガイド筒の外周面と前記収納孔の内周面との間に挟持された弾性リングをさらに備える、請求項1~3のうちのいずれか1項に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ装置。
【請求項5】
前記ガイド筒の外周面と前記収納孔の開口部との間に架け渡されたダストカバーをさらに備える、請求項1~4のうちのいずれか1項に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ装置。
【請求項6】
前記第一ガイド部から周方向に外れた位置に、前記第一ガイド部とともに、前記クランプ部材を前記キャリパに対し軸方向の変位を可能に支持する第二ガイド部を有しており、前記第二ガイド部は、前記インナボディ部と前記クランプ基部との間に軸方向に配置されたインナ側ガイドピンを含む、請求項1~5のうちのいずれか1項に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ装置。
【請求項7】
前記インナ側ガイドピンは、前記インナボディ部と前記クランプ基部とのいずれか一方に固定されており、前記インナボディ部と前記クランプ基部とのいずれか他方に摺動可能に挿入されている、請求項6に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ装置。
【請求項8】
前記インナ側ガイドピンは、前記インナボディ部と前記クランプ基部とのいずれか他方に、スリーブを介して摺動可能に挿入されている、請求項7に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ装置。
【請求項9】
前記キャリパは、前記アウタボディ部の周方向中間部と前記インナボディ部の周方向中間部とを軸方向に連結する中間連結部を有しており、前記インナ側ガイドピンは、周方向に関して前記中間連結部と同じ位置に固定されている、請求項7~8のうちのいずれか1項に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ装置。
【請求項10】
前記第三ガイド部は、周方向に関して前記第一ガイド部と同じ位置に配置されている、請求項1~9のうちのいずれか1項に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ装置。
【請求項11】
前記クランプ基部には、該クランプ基部の外周面から前記収納孔に連通した通孔を有しており、前記クランプ基部の外周面に開口した前記通孔の開口部が止め栓により塞がれている、請求項1~10のうちのいずれか1項に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ装置。
【請求項12】
前記クランプ部材は、前記ロータの径方向外側に配置され、かつ、前記押圧部と前記クランプ基部とを軸方向に連結するブリッジ部を有しており、該ブリッジ部と前記押圧部とは、互いに別体に構成されている、請求項1~11のうちのいずれか1項に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ装置。
【請求項13】
前記クランプ基部には、前記推力発生機構を作動させる電動駆動装置を備えている、請求項1~12のうちのいずれか1項に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制動を行うために使用する、対向ピストン型ディスクブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクブレーキ装置は、放熱性に優れるとともに、走行時における制動力の細かな調節が可能であるなどの理由から、自動車の前輪だけではなく、自動車の後輪に関しても、サービスブレーキを行うためのブレーキ装置として採用される場合がある。また、ディスクブレーキ装置をサービスブレーキに用いる場合には、パーキングブレーキに用いるブレーキ装置を、サービスブレーキに用いるディスクブレーキ装置とは別に設けることも行われている。
【0003】
例えば特開平9-60667号公報、及び、特開2002-21892号公報には、パーキングブレーキ専用のドラムブレーキ装置を、サービスブレーキ専用のディスクブレーキ装置の径方向内側に配置した、いわゆるドラムインハット式の構造が開示されている。また、パーキングブレーキ専用のディスクブレーキ装置を、サービスブレーキ専用のディスクブレーキ装置とは別に設ける、いわゆるツインキャリパ式の構造も知られている。
【0004】
図18は、サービスブレーキ専用のディスクブレーキ装置と、パーキングブレーキ専用のディスクブレーキ装置とを、それぞれ別に設けた従来構造の模式図を示している。図示の構造では、車輪とともに回転するロータ1の周囲に、サービスブレーキ専用の対向ピストン型ディスクブレーキ装置2と、パーキングブレーキ専用のフローティング型ディスクブレーキ装置3とを、周方向に離隔して配置している。対向ピストン型ディスクブレーキ装置2とフローティング型ディスクブレーキ装置3とは、懸架装置を構成するナックル4に支持固定されている。具体的には、対向ピストン型ディスクブレーキ装置2を構成するキャリパ5を、ナックル4が備える取付部(ステー)6aに支持固定し、フローティング型ディスクブレーキ装置3を構成するサポート7を、ナックル4が備える別の取付部6bに支持固定している。
なお、本明細書及び特許請求の範囲全体で、「軸方向」、「径方向」及び「周方向」とは、特に断らない限り、ロータの軸方向、径方向及び周方向をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-60667号公報
【文献】特開2002-21892号公報
【文献】特開2015-194165号公報
【文献】特開2007-177995号公報
【文献】特開2011-158058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した構造では、サービスブレーキ専用の対向ピストン型ディスクブレーキ装置2と、パーキングブレーキ専用のフローティング型ディスクブレーキ装置3とを、別々に設けている。このため、サービスブレーキとパーキングブレーキとの2つの機能を備える1つのブレーキ装置として見た場合、装置全体が大型化するとともに、重量が嵩むことが避けられない。また、ナックル4には、取付部6a、6bをそれぞれ設ける必要があるため、ナックル4の形状に関する自由度が低くなる。ナックルには、ダンパーを固定するための取付部や、ロアアームを固定するための取付部などを別途設ける必要があり、ナックルの形状に関する自由度を確保することは、ナックル周辺の部材の設計の自由度を確保する上で重要になる。
【0007】
このような事情に鑑みて、特開2015-194165号公報には、サービスブレーキとして機能する対向ピストン型ディスクブレーキ装置に、パーキングブレーキとして機能するフローティングキャリパの如きパーキング機構部を、組み合わせる構造が開示されている。このような構造によれば、それ単体で、サービスブレーキとパーキングブレーキとの2つの機能を発揮できる。したがって、それぞれ専用の装置を設ける場合に比べて、装置全体としての小型化及び軽量化を図れるとともに、懸架装置の形状の自由度を向上できる。
【0008】
特開2015-194165号公報に記載された構造は、パーキングブレーキの作動時に、パーキング機構部を構成するクランプ部材を、対向ピストン型ディスクブレーキ装置を構成するキャリパに対し軸方向に変位(平行移動)させ、1対のパッドをロータの軸方向両側面に押し付けることで制動力を得る。このため、クランプ部材を、軸方向に関する変位が円滑に行えるようにキャリパに支持することが重要になる。クランプ部材は、キャリパにマウントするように設けられており、軸方向寸法が大きいため、キャリパに対する支持が不安定であると、径方向や周方向への傾きが大きくなりやすい。クランプ部材に傾きが生じると、パーキングブレーキの作動時に、パーキング機構部の内部部品などに、こじりが発生したり、引き摺りが発生したりする可能性があり、制動力を安定して得ることが難しくなる。
【0009】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、対向ピストン型ディスクブレーキ装置を構成するキャリパにクランプ部材をマウントして設けることで、サービスブレーキとパーキングブレーキとの2つの機能をあわせ持つディスクブレーキ装置に関して、キャリパに対するクランプ部材の軸方向変位が円滑に行える、クランプ部材の支持構造を実現する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の対向ピストン型ディスクブレーキ装置は、キャリパ(対向ピストン型キャリパ)と、複数のピストンと、1対のパッドと、パーキング機構部とを備える。
前記キャリパは、使用時に例えばナックルなどの懸架装置に固定されるものであり、ロータの軸方向両側に配置され、1つ以上のシリンダをそれぞれ有するアウタボディ部及びインナボディ部と、前記アウタボディ部と前記インナボディ部との周方向両側部同士を連結する1対の連結部とを有している。
前記複数のピストンは、前記シリンダ内にそれぞれ嵌装されている。
前記1対のパッドは、前記ロータの軸方向両側に配置され、前記キャリパに対し軸方向の変位を可能に支持されている。
前記パーキング機構部は、クランプ部材と、推力発生機構とを有している。
前記クランプ部材は、軸方向外側部に押圧部を有し、軸方向内側部にクランプ基部を有しており、周方向に関して前記1対の連結部の間部分に配置され、前記押圧部と前記クランプ基部との間に存在する前記1対のパッド及び前記インナボディ部を径方向外側から跨ぐようにして前記キャリパに対し軸方向の変位を可能に支持されている。
前記推力発生機構は、前記クランプ基部に支持され、パーキングブレーキによる制動作動時に前記キャリパに対し軸方向内側に変位する、例えばスピンドルなどの内側変位部材と、前記インナボディ部が備える前記シリンダ内に配置され、パーキングブレーキによる制動作動時に前記キャリパに対し軸方向外側に変位する、例えばナットなどの外側変位部材と、を有している。
【0011】
本発明の対向ピストン型ディスクブレーキ装置は、サービスブレーキによる制動力は、前記シリンダ内に圧油を送り込み、前記ピストンにより前記パッドを前記ロータの両側面に押し付けることにより発生させる。これに対し、パーキングブレーキによる制動力は、前記推力発生機構を作動させることにより発生させる。すなわち、前記推力発生機構の作動に伴って、前記外側変位部材により直接又は間接的に、前記ロータの軸方向内側に配置された前記パッドを前記ロータの軸方向内側面に押し付けるとともに、この押し付けに伴う反力により、前記内側変位部材及び前記クランプ部材を前記キャリパに対し軸方向内側に変位させ、前記押圧部により、前記ロータの軸方向外側に配置された前記パッドを前記ロータの軸方向外側面に押し付けることにより発生させる。
【0012】
本発明の対向ピストン型ディスクブレーキ装置では、前記インナボディ部は、前記外側変位部材が内側に配置された前記シリンダの開口縁部から軸方向内側に向けて伸長したガイド筒を、軸方向内側部に有している。前記クランプ基部は、前記内側変位部材が内側に配置され、かつ、軸方向外側が開口した収納孔を有している。そして、前記収納孔の内側に前記ガイド筒を軸方向に関する相対移動を可能に嵌合することで、前記クランプ部材を前記キャリパに対し軸方向の変位を可能に支持する第一ガイド部を構成している。
【0013】
本発明では、前記第一ガイド部とともに、前記クランプ部材を前記キャリパに対し軸方向の変位を可能に支持する第三ガイド部を設けている。前記第三ガイド部は、前記アウタボディ部と前記押圧部との間に軸方向に配置された(架け渡された)アウタ側ガイドピンを備える
この場合、前記第三ガイド部を、周方向に関して前記第一ガイド部と同じ位置に配置することができる
また、本発明では、前記アウタ側ガイドピンを、前記アウタボディ部と前記押圧部とのいずれか一方に固定し、前記アウタボディ部と前記押圧部とのいずれか他方に、弾性体を介して摺動可能に挿入する。
【0014】
本発明では、前記ガイド筒と、前記内側変位部材及び前記外側変位部材とを、互いに同軸に配置することができる。
【0015】
本発明では、前記内側変位部材を、外周面に雄ねじ部を有するスピンドルとし、前記外側変位部材を、内周面に雌ねじ部を有し、前記スピンドルに螺合したナットとすることができる。
【0016】
本発明では、前記ガイド筒の外周面と前記収納孔の内周面との間に挟持された弾性リングをさらに備えることができる。
【0017】
本発明では、前記ガイド筒の外周面と前記収納孔の開口部との間に架け渡されたダストカバーをさらに備えることができる。
【0018】
本発明では、前記第一ガイド部から周方向に外れた位置に、前記第一ガイド部とともに、前記クランプ部材を前記キャリパに対し軸方向の変位を可能に支持する第二ガイド部を設けることができる。前記第二ガイド部は、前記インナボディ部と前記クランプ基部との間に軸方向に配置された(架け渡された)インナ側ガイドピンを備えたものとすることができる。
この場合、前記インナ側ガイドピンを、前記インナボディ部と前記クランプ基部とのいずれか一方に固定し、前記インナボディ部と前記クランプ基部とのいずれか他方に摺動可能に挿入することができる。
さらに、前記インナガイドピンを、前記インナボディ部と前記クランプ基部とのいずれか他方に、スリーブを介して摺動可能に挿入することもできる。
また、前記第二ガイド部を設ける場合には、前記キャリパを、前記アウタボディ部の周方向中間部と前記インナボディ部の周方向中間部とを軸方向に連結する中間連結部を有するものとし、前記インナ側ガイドピンを、周方向に関して前記中間連結部と同じ位置に固定することもできる。
【0019】
本発明では、前記クランプ基部に、該クランプ基部の外周面から前記収納孔に連通した通孔を設け、前記クランプ基部の外周面に開口した前記通孔の開口部を止め栓により塞ぐことができる。
【0020】
本発明では、前記クランプ部材を、前記ロータの径方向外側に配置され、かつ、前記押圧部と前記クランプ基部とを軸方向に連結するブリッジ部を有するものとし、該ブリッジ部と前記押圧部とを、互いに別体に構成することができる。
【0021】
本発明では、前記クランプ基部に、前記推力発生機構を作動させる電動駆動装置を備えさせることができる。
【0022】
本発明では、パーキングブレーキによる制動時に、前記ロータの軸方向内側に配置された前記パッドを、前記外側変位部材により間接的に押圧する場合には、例えば、前記外側変位部材と同じシリンダ内に嵌装されたピストンを介して押圧することができる。
また、前記外側変位部材と同じシリンダ内に嵌装された前記ピストンを、軸方向外側の大径筒部と、軸方向内側の小径筒部と、これら大径筒部の外周面と小径筒部の外周面とをつなぐ段差面とを備えた段付き形状とし、この段差面の面積と、段付き形状の前記ピストンと軸方向に対向して配置された、前記アウタボディのシリンダ内に嵌装されたピストンの受圧面積とを等しくすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の対向ピストン型ディスクブレーキ装置によれば、対向ピストン型ディスクブレーキ装置を構成するキャリパにクランプ部材をマウントして設けることで、サービスブレーキとパーキングブレーキとの2つの機能をあわせ持つディスクブレーキ装置に関して、キャリパに対するクランプ部材の軸方向変位が円滑に行える、クランプ部材の支持構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施の形態の第1例のディスクブレーキ装置を示す正面図である。
図2図2は、実施の形態の第1例のディスクブレーキ装置を示す背面図である。
図3図3は、実施の形態の第1例のディスクブレーキ装置を示す左側面図である。
図4図4は、実施の形態の第1例のディスクブレーキ装置を示す平面図である。
図5図5は、実施の形態の第1例のディスクブレーキ装置を示す底面図である。
図6図6は、実施の形態の第1例のディスクブレーキ装置を、径方向外側かつ軸方向外側から見た斜視図である。
図7図7は、実施の形態の第1例のディスクブレーキ装置を、径方向外側かつ軸方向内側から見た斜視図である。
図8図8は、第一ガイド部の周辺部をガイド筒の中心軸を含む仮想平面で切断した、図4の部分断面図である。
図9図9は、第一ガイド部の周辺部の拡大断面図である。
図10図10は、第二ガイド部の周辺部をインナ側ガイドピンの中心軸を含む仮想平面で切断した、図4の部分断面図である。
図11図11は、第三ガイド部の周辺部をアウタ側ガイドピンの中心軸を含む仮想平面で切断した、図4の部分断面図である。
図12図12は、実施の形態の第1例のディスクブレーキ装置からパーキング機構部を取り外して示す、図6に相当する図である。
図13図13は、実施の形態の第1例のディスクブレーキ装置からパーキング機構部を取り外して示す、図7に相当する図である。
図14図14は、実施の形態の第1例のディスクブレーキ装置からパーキング機構部を取り外し、径方向内側かつ軸方向外側から見た斜視図である。
図15図15は、実施の形態の第1例のディスクブレーキ装置からパーキング機構部を取り外し、径方向内側かつ軸方向内側から見た斜視図である。
図16図16は、実施の形態の第1例のディスクブレーキ装置からパーキング機構部を取り出し、周方向片側から見た側面図である。
図17図17は、実施の形態の第1例のディスクブレーキ装置からパーキング機構部を取り出し、径方向内側かつ軸方向外側から見た斜視図である。
図18図18は、サービスブレーキとパーキングブレーキとの2つの機能を発揮させるための従来構造のブレーキ装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[実施の形態の第1例]
実施の形態の第1例について、図1図17を用いて説明する。本例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置2aは、サービスブレーキとパーキングブレーキとの2つの機能をあわせ持っており、懸架装置に固定されるキャリパ8と、1対のパッド9a、9b(アウタパッド9a、インナパッド9b)と、合計4個のピストン10、11(1個の兼用ピストン10と、3個のサービス専用ピストン11)と、キャリパ8に支持されたパーキング機構部12とを備える。
【0026】
対向ピストン型ディスクブレーキ装置2aは、キャリパ8に備えられた全て(4個)のシリンダ18a、18b、19a、19b内に圧油を送り込むことにより、サービスブレーキによる制動力を得る。これに対し、対向ピストン型ディスクブレーキ装置2aは、作動油を利用せずに、パーキング機構部12を機械的に駆動することにより、パーキングブレーキによる制動力を得る。
【0027】
キャリパ8は、アウタパッド9a及びインナパッド9bを、軸方向(図1、2の表裏方向、図3の左右方向、図4、5の上下方向)に移動可能に支持する。このようなキャリパ8は、アルミニウム合金などの軽合金の鋳造品(ダイキャスト成形品を含む)であり、ロータ1(図4参照)の軸方向両側に配置されたアウタボディ部13及びインナボディ部14と、ロータ1の径方向外側に配置された1対の連結部15a、15b及び中間連結部16とを有している。キャリパ8は、インナボディ部14が備える1対の取付座17a、17bにより、ナックル4(図18参照)を構成する取付部に支持固定される。
【0028】
連結部15aは、キャリパ8の周方向片側(図1、4の右側、図2、5の左側で、車両前進時における回入側)、かつ、ロータ1の径方向外側に配置されており、アウタボディ部13の周方向片側部とインナボディ部14の周方向片側部とを軸方向に連結している。連結部15bは、キャリパ8の周方向他側(図1、4の左側、図2、5の右側で、車両前進時における回出側)、かつ、ロータ1の径方向外側に配置されており、アウタボディ部13の周方向他側部とインナボディ部14の周方向他側部とを軸方向に連結している。中間連結部16は、キャリパ8の周方向中間部、かつ、ロータ1の径方向外側に配置されており、アウタボディ部13の周方向中間部とインナボディ部14の周方向中間部とを軸方向に連結している。
【0029】
アウタボディ部13は、ロータ1の軸方向外側に配置されており、周方向片側に回入側アウタシリンダ18aを有しており、周方向他側に回出側アウタシリンダ18bを有している。インナボディ部14は、ロータ1の軸方向内側に配置されており、周方向片側に回入側インナシリンダ19aを有しており、周方向他側に回出側インナシリンダ19bを有している。回入側アウタシリンダ18aと回入側インナシリンダ19aとは、軸方向に対向して配置されており、回出側アウタシリンダ18bと回出側インナシリンダ19bとは、軸方向に対向して配置されている。
【0030】
合計4個のシリンダ18a、18b、19a、19bのうち、回入側インナシリンダ19aの内側には、サービスブレーキとパーキングブレーキとの両方に使用する兼用ピストン10を、軸方向に関する変位を可能に嵌装している。回入側インナシリンダ19a以外の残り3個のシリンダ18a、18b、19bの内側には、サービスブレーキにのみ使用するサービス専用ピストン11を、軸方向に関する変位を可能に嵌装している。
【0031】
回入側インナシリンダ19aは、図8及び図9に示すように、インナボディ部14の軸方向外側面に開口しているだけでなく、インナボディ部14の軸方向内側面にも開口している。つまり、回入側インナシリンダ19aは、インナボディ部14を軸方向に貫通するように設けられている。回入側インナシリンダ19aは、段付き孔であり、軸方向外半部に大径孔部20を有しており、軸方向内半部に小径孔部21を有している。
【0032】
小径孔部21の軸方向内側の開口縁部には、ガイド筒22が設けられている。ガイド筒22は、回入側インナシリンダ19aの小径孔部21の開口縁部から軸方向内側に向けて伸長しており、インナボディ部14の軸方向内側部に、回入側インナシリンダ19aと同軸に設けられている。ガイド筒22は、円筒形状を有しており、小径孔部21と同じ内径を有している。ガイド筒22の軸方向に関する長さ寸法は、パーキングブレーキの作動時に軸方向に変位する、パーキング機構部12を構成するクランプ部材41の変位量よりも大きくなっている。
【0033】
回入側インナシリンダ19aに嵌装された兼用ピストン10は、例えばアルミニウム合金製で、略円筒形状を有している。兼用ピストン10は、外周面が段付き形状で、軸方向外半部に大径筒部23を有しており、軸方向内半部に小径筒部24を有している。大径筒部23の外周面と小径筒部24の外周面とは、円輪状の段差面25によりつながっている。大径筒部23の径方向内側には、小径筒部24の軸方向外側部から軸方向に伸長した延長筒部26が設けられている。小径筒部24の内周面と延長筒部26の内周面とは、内径が一定のまま軸方向に連続しており、これら小径筒部24の内周面と延長筒部26の内周面には、雌スプライン27が形成されている。延長筒部26の軸方向外側部は、底部28により塞がれている。延長筒部26の底部28には、兼用ピストン10の先端部を構成する、略円盤状の押部29が外嵌されている。
【0034】
兼用ピストン10は、大径筒部23を回入側インナシリンダ19aの大径孔部20の内側に嵌装し、かつ、小径筒部24を回入側インナシリンダ19aの小径孔部21の内側に嵌装している。また、兼用ピストン10の段差面25を、回入側インナシリンダ19aの大径孔部20の底面30に対向させている。そして、これら段差面25と、底面30と、大径孔部20と、小径筒部24の外周面との間に、圧油を導入するための円環状の液圧室31aを形成している。また、大径孔部20及び小径孔部21には、それぞれ断面矩形状のシール溝32a、32bを形成している。そして、シール溝32a、32b内に、環状のピストンシール33a、33bをそれぞれ装着している。また、回入側インナシリンダ19aの大径孔部20の開口縁部には、環状凹溝34を形成している。そして、環状凹溝34の内側に、ダストカバー36の径方向外側部を装着し、ダストカバー35の径方向内側部を、押部29の外周面に装着している。これにより、ダストカバー35を、大径孔部20の開口縁部と兼用ピストン10の先端部との間に架け渡している。
【0035】
サービス専用ピストン11は、例えばアルミニウム合金製で、有底円筒形状を有している。サービス専用ピストン11の底面と、サービス専用ピストン11が嵌装された各シリンダ18a、18b、19bの奥部との間には、圧油を導入するための液圧室31bが形成されている。また、各シリンダ18a、18b、19bの内周面には、図示しないシール溝が形成されており、該シール溝には、図示しないピストンシールが装着されている。また、各シリンダ18a、18b、19bの開口縁部とサービス専用ピストン11の先端部との間には、図示しないダストカバーを架け渡している。
【0036】
各シリンダ18a、18b、19a、19bの液圧室31a、31bには、インナボディ部14に設けられた導入口からそれぞれ圧油を送り込む。本例では、兼用ピストン10を構成する円輪状の段差面25の面積(受圧面積)と、サービス専用ピストン11の底面の面積(受圧面積)とを、互いに等しくしている。このため、サービスブレーキ時に、兼用ピストン10と、該兼用ピストン10と軸方向に対向するサービス専用ピストン11(及びその他のサービス専用ピストン11)とが、ロータ1の軸方向両側面を互いに等しい力で押圧する。
【0037】
アウタボディ部13の軸方向内側面の周方向両側部、及び、インナボディ部14の軸方向外側面の周方向両側部には、ロータ1に近づくように軸方向に張り出した1対のガイド壁部36a、36bが設けられている。ガイド壁部36a、36bの周方向に対向する側面には、これら各側面に対してほぼ直交する方向に伸長したガイド凹溝37a、37bがそれぞれ設けられている。
【0038】
アウタパッド9a及びインナパッド9bは、ロータ1の軸方向両側に配置されている。具体的には、アウタパッド9aは、ロータ1とアウタボディ部13との間に配置されており、インナパッド9bは、ロータ1とインナボディ部14との間に配置されている。アウタパッド9a及びインナパッド9bはそれぞれ、ライニング(摩擦材)38と、該ライニング38の裏面を支持した金属製の裏板(プレッシャプレート)39とを備えている。裏板39の周方向両側部には、それぞれ周方向に突出した耳部40を備えている。そして、アウタパッド9aに設けられた1対の耳部40を、アウタボディ部13に設けられた1対のガイド凹溝37a、37bにそれぞれ緩く係合させている。また、インナパッド9bに設けられた1対の耳部40を、インナボディ部14に設けられた1対のガイド凹溝37a、37bにそれぞれ緩く係合させている。これにより、アウタパッド9a及びインナパッド9bを、キャリパ8に対して、軸方向に関する変位を可能に、かつ、周方向及び径方向に関する変位を不能に支持している。
【0039】
パーキング機構部12は、図16及び図17に示すように、クランプ部材41と、推力発生機構42とを備えている。クランプ部材41は、アルミニウム系合金製又は鉄系合金製で、逆U字形状を有しており、周方向に関して周方向片側の連結部15aと中間連結部16との間部分に配置され、かつ、1対のパッド9a、9b及びインナボディ部14を径方向外側から跨いでいる。つまり、クランプ部材41は、キャリパ8にマウントするように設けられている。クランプ部材41は、軸方向外側部に二股状の押圧部43を有しており、軸方向内側部にクランプ基部44を有している。また、クランプ部材41は、ロータ1の径方向外側に配置され、かつ、押圧部43とクランプ基部44とを軸方向に連結するブリッジ部45を有している。本例では、押圧部43とブリッジ部45とを互いに別体に構成し、これら押圧部43とブリッジ部45とを、軸方向に配置した1対のボルト80により互いに結合している。具体的には、押圧部43を軸方向に挿通したボルト80の先端部を、ブリッジ部45の軸方向外端部に対して螺合している。これに対し、ブリッジ部45とクランプ基部44とは、互いに一体に構成されている。
【0040】
押圧部43は、アウタボディ部13の周方向片半部の軸方向内側面とアウタパッド9aの周方向片半部の軸方向外側面との間に、回入側アウタシリンダ18aの軸方向内側部を跨ぐようにして、径方向外側から挿入されている。このため、アウタボディ部13のうち、回入側アウタシリンダ18aの軸方向内側部の周方向両側には、押圧部43の二股状の径方向内側部を挿入するための1対の凹部が設けられている。
【0041】
クランプ基部44は、インナボディ部14の軸方向内側に配置されており、基部本体46と、該基部本体46から周方向他側に張り出した1つの腕部47とを備えている。基部本体46は、図8及び図9に示すように、その内側に、軸方向外側に開口した収納孔50を有する有底円筒形状であり、筒状部48と、該筒状部48の軸方向内側開口を塞ぐ底板部49とを有している。底板部49の中央部には、軸方向に貫通した貫通孔51が設けられている。収納孔50は、インナボディ部14の軸方向内側部に設けられたガイド筒22の外径よりもわずかに大きい内径を有している。
【0042】
腕部47の先端部は、軸方向に伸長した円筒部52により構成されている。円筒部52は、軸方向両側に開口しており、円筒部52の中心軸と、基部本体46に設けられた収納孔50の中心軸とは、互いに平行である。円筒部52は、基部本体46とほぼ同じ軸方向寸法を有しており、収納孔50よりも小さい内径を有している。
【0043】
本例では、クランプ部材41を、第一ガイド部53、第二ガイド部54及び第三ガイド部55により、キャリパ8に対して軸方向に関する変位を可能に、かつ、周方向及び径方向の変位を不能に支持している。
【0044】
第一ガイド部53は、図8及び図9に示すように、インナボディ部14の軸方向内側部に設けられたガイド筒22と、クランプ基部44の軸方向外側面に開口した収納孔50とから構成されている。すなわち、第一ガイド部53は、ガイド筒22の先半部を収納孔50の内側に、軸方向に関する相対変位を可能に嵌合することで構成されている。また、ガイド筒22の中心軸と収納孔50の中心軸とは、互いに同軸に配置されている。ガイド筒22の外周面と収納孔50の内周面との間の径方向隙間は、パーキングブレーキ時に、押圧部43とクランプ基部44とが軸方向に互いに離れる方向に変位した場合にも、ガイド筒22の外周面と収納孔50の内周面との間で、こじりが発生しない程度の大きさに設定されている。
【0045】
ガイド筒22の外周面と収納孔50の内周面との間には、断面矩形状の弾性リング56を挟持している。このために、収納孔50の内周面にシール溝57を形成し、該シール溝57内に弾性リング56を装着している。本例では、このようにガイド筒22の外周面と収納孔50の内周面との間に弾性リング56を挟持しているため、ガイド筒22の外周面と収納孔50の内周面との間の気密性を確保することができる。したがって、ガイド筒22の内側に水などの異物が侵入することを有効に防止できる。また、弾性リング56により、ガイド筒22を弾性支持しているため、ガイド筒22と収納孔50とをセンタリングすることが可能になり、こじりの発生を有効に防止できる。このため、ガイド筒22の外周面と収納孔50の内周面との間の径方向隙間を、比較的大きく確保することもできる。なお、本例では、弾性リング56として、断面矩形状の角シールを使用した場合について説明したが、断面円形状のOリングを使用することも可能である。
【0046】
収納孔50の開口縁部には、環状凹溝58が形成されている。環状凹溝58の内側には、ダストカバー59の径方向外側部を装着し、ダストカバー59の径方向内側部を、ガイド筒22の外周面の軸方向中間部に装着している。これにより、収納孔50開口縁部とガイド筒22の中間部との間にダストカバー59を架け渡し、ガイド筒22の外周面と収納孔50の内周面との間に、水などの異物が侵入することを防止している。
【0047】
本例では、収納孔50の内側にガイド筒22の先半部を嵌合(挿入)する際に、収納孔50及びガイド筒22内の圧力が上昇するのを防止するため、筒状部48の円周方向一部に形成された筒状部48の外周面と収納孔50とを連通した通孔60を通じて、収納孔50及びガイド筒22内の空気を外部に逃がすようにしている。そして、ガイド筒22の先半部を収納孔50の内側に嵌合した後に、筒状部48の外周面に開口した通孔60の開口部を止め栓61により塞いでいる。
【0048】
第二ガイド部54は、第一ガイド部53から周方向に外れた、周方向に関して中間連結部16と同じ位置に設けられており、第一ガイド部53とともに、クランプ部材41をキャリパ8に対し軸方向の変位を可能に支持する。このような第二ガイド部54は、図10に示すように、クランプ基部44を構成する腕部47に設けられた円筒部52と、インナボディ部14に固定されたインナ側ガイドピン62とから構成されている。インナ側ガイドピン62は、軸方向外側部がインナボディ部14に固定されており、軸方向中間部が円筒部52の内側に軸方向に関する摺動可能(相対変位を可能)に挿入されている。このため、インナ側ガイドピン62は、インナボディ部14とクランプ基部44(円筒部52)との間に軸方向に配置されて(架け渡されて)いる。インナ側ガイドピン62の軸方向外側部は、インナボディ部14の軸方向内側面のうち、周方向に関して中間連結部16と同じ位置で、かつ、回出側インナシリンダ19bの径方向外側に位置する部分に開口した、雌ねじ孔63に螺合している。また、インナ側ガイドピン62の中心軸とガイド筒22の中心軸とは、互いに平行に配置されている。
【0049】
上述のように、インナ側ガイドピン62を、周方向に関して中間連結部16と同じ位置に配置している。このため、インナ側ガイドピン62を、キャリパ8のうちで軸方向に関する剛性の高い、すなわち、変位量が少ない部分に固定している。したがって、インナ側ガイドピン62が、キャリパ8の変形に起因して傾くことを防止できる。また、雌ねじ孔63の深さ寸法を十分に確保できるため、周方向に関して中間連結部16から外れた位置に雌ねじ孔63を形成する場合のように、深さ寸法の確保を目的として増厚する必要がない。このため、キャリパ8の重量増加を抑えることができる。また、腕部47の周方向への突出量を抑えられるため、クランプ部材41の周方向寸法を抑えることができる。したがって、レイアウト性を良好にすることができる。
【0050】
インナ側ガイドピン62の軸方向中間部は、例えば金属製で円筒状のスリーブ64を介して、円筒部52の内側に挿入されている。スリーブ64は、円筒部52よりも軸方向寸法が大きくなっており、インナ側ガイドピン62をインナボディ部14に固定した状態で、インナボディ部14の軸方向内側面とインナ側ガイドピン62の頭部との間に挟持されている。つまり、スリーブ64により、インナ側ガイドピン62の螺合量を規制することで、インナ側ガイドピン62の軸方向に関する位置決めを図っている。スリーブ64の内径は、インナ側ガイドピン62の外径よりも少しだけ大きく、スリーブ64の外径は、円筒部52の内径よりも少しだけ小さい。本例では、このようなスリーブ64を介して、インナ側ガイドピン62を円筒部52の内側に挿入しているため、摺動抵抗を低減できるとともに、スリーブ64とインナ側ガイドピン62との間で寸法のばらつきを吸収することができる。また、円筒部52の軸方向両端部とスリーブ64の軸方向両端部との間に、それぞれダストカバー65を架け渡している。これにより、円筒部52の内周面とスリーブ64の外周面との間に、水などの異物が侵入することを防止している。
【0051】
第三ガイド部55は、周方向に関して第一ガイド部53と同じ位置に設けられており、第一ガイド部53及び第二ガイド部54とともに、クランプ部材41をキャリパ8に対し軸方向の変位を可能に支持する。このような第三ガイド部55は、図11に示すように、アウタボディ部13に設けられた支持筒部66と、クランプ部材41に固定されたアウタ側ガイドピン67とから構成されている。支持筒部66は、アウタボディ部13のうちで、回入側アウタシリンダ18aの径方向外側に設けられている。アウタ側ガイドピン67は、軸方向内側部がクランプ部材41の押圧部43に固定されており、軸方向外側部が支持筒部66の内側に軸方向に関する摺動可能(相対変位を可能)に挿入されている。このため、アウタ側ガイドピン67は、アウタボディ部13と押圧部43との間に軸方向に配置されて(架け渡されて)いる。アウタ側ガイドピン67の軸方向内側部は、押圧部43の軸方向外側面に開口した雌ねじ孔68に螺合している。また、アウタ側ガイドピン67の中心軸と収納孔50の中心軸とは、互いに平行に配置されている。アウタ側ガイドピン67の中心軸と収納孔50の中心軸とは、周方向位置は互いに同じであるが、径方向位置は異なっている。
【0052】
アウタ側ガイドピン67の軸方向外側部は、弾性材製で有底円筒状の弾性体(ゴムブッシュ)69を介して、支持筒部66の内側に挿入されている。弾性体69は、支持筒部66に対して軸方向に関する抜け止めが図られており、その底部により、アウタ側ガイドピン67の軸方向外端面を覆っている。このような弾性体69は、アウタ側ガイドピン67の軸方向外側部を、アウタボディ部13に対して弾性支持する。
【0053】
推力発生機構42は、図8及び図9に示すように、回転運動を直線運動に変換し、作動時に軸方向に関する全長を変化させる送りねじ機構であり、内側変位部材であるスピンドル70と、外側変位部材であるナット71とを備えている。
【0054】
スピンドル70は、先端部(軸方向外側部)乃至中間部の外周面に、雄ねじ部72を有しており、基端寄り部に、他の部分よりも大径のフランジ部73を有している。スピンドル70の基端部(軸方向内側部)は、クランプ基部44の底板部49に形成された貫通孔51の内側に、回転可能に支持されている。スピンドル70の先端部乃至中間部は、回入側インナシリンダ19aに嵌装された兼用ピストン10の内側に軸方向内側から挿入されている。スピンドル70の中心軸は、収納孔50(ガイド筒22)の中心軸と同軸である。フランジ部73の軸方向内側面と、底板部49の軸方向外側面との間には、スラスト軸受74が配置されている。これにより、フランジ部73に作用する軸方向荷重を底板部49によって支承可能とし、かつ、底板部49に対するフランジ部73の相対回転を可能としている。
【0055】
ナット71は、内周面に雌ねじ部75を有しており、スピンドル70の先端部乃至中間部の雄ねじ部72に螺合している。ナット71の先端部(軸方向外側部)には、他の部分よりも外径の大きい大径部が設けられており、該大径部の外周面には、雄スプライン76が形成されている。そして、雄スプライン76を、兼用ピストン10を構成する小径筒部24及び延長筒部26の内周面に形成された雌スプライン27にスプライン係合させている。このため、ナット71は、兼用ピストン10の内側に、軸方向変位を可能にかつ相対回転を不能に配置されている。このようなナット71の中心軸も、収納孔50(ガイド筒22)の中心軸と同軸である。
【0056】
本例では、クランプ基部44の軸方向内側に、電動駆動装置(MGU)77を支持固定している。電動駆動装置77は、ケーシング78と、該ケーシング78の内側にそれぞれ収納された電動モータ及び歯車式減速機などの減速機構とを備えている。そして、減速機構を構成する最終歯車を固定した回転軸79を、スピンドル70の基端部に相対回転不能に接続している。これにより、電動モータへの通電に基づいて、スピンドル70を回転させることで、ナット71をインナボディ部14に対して軸方向に変位させるようにしている。
【0057】
対向ピストン型ディスクブレーキ装置2aによりサービスブレーキを作動させる際には、キャリパ8に備えられた全てのシリンダ18a、18b、19a、19bの液圧室31a、31bに、それぞれ圧油を送り込む。これにより、全てのピストン10、11(1個の兼用ピストン10と3個のサービス専用ピストン11)を、それぞれシリンダ18a、18b、19a、19bから押し出し、1対のパッド9a、9bをロータ1の軸方向両側面に押し付ける。この結果、ロータ1が、軸方向両側から強く押し付けられて、制動が行われる。このように、対向ピストン型ディスクブレーキ装置2aは、サービスブレーキによる制動力を、作動油の導入により、全てのピストン10、11を押し出すことにより得る。
【0058】
これに対し、対向ピストン型ディスクブレーキ装置2aによりパーキングブレーキを作動させる際には、電動駆動装置77を構成する電動モータに通電し、推力発生機構42を構成するスピンドル70を回転させる。これにより、ナット71をインナボディ部14に対して軸方向外側に変位させる。そして、ナット71の先端部(軸方向外端部)を、兼用ピストン10を構成する延長筒部26の底部28に押し付け、該兼用ピストン10により、インナパッド9bをロータ1の軸方向内側面に押し付ける。また、この押し付けに伴う反力を、スピンドル70からスラスト軸受74を介してクランプ部材41に伝達する。これにより、スピンドル70及びクランプ部材41をキャリパ8に対し軸方向内側に変位させる。この際、ガイド筒22と収納孔50、インナ側ガイドピン62(スリーブ64)と円筒部52、及び、アウタ側ガイドピン67と支持筒部66(弾性体69)とが、それぞれ軸方向に摺動(相対移動)する。そして、押圧部43により、アウタパッド9aをロータ1の軸方向外側面に押し付ける。この結果、ロータ1が軸方向両側から強く押し付けられて制動が行われる。このように、対向ピストン型ディスクブレーキ装置2aは、パーキングブレーキによる制動力を、フローティング型ブレーキの如き動作を行う、パーキング機構部12を駆動することのみにより得る。
【0059】
また、パーキングブレーキを解除するには、電動モータにより、スピンドル70を制動作動時とは逆回転させる。これにより、ナット71をインナボディ部14に対して軸方向内側に変位させる。また、スピンドル70をインナボディ部14に対して軸方向外側に変位させることで、クランプ部材41をインナボディ部14に対して軸方向外側に変位させる。この際、ガイド筒22と収納孔50、インナ側ガイドピン62(スリーブ64)と円筒部52、及び、アウタ側ガイドピン67と支持筒部66(弾性体69)とが、それぞれ軸方向に摺動(相対移動)する。また、兼用ピストン10を、ピストンシール33a、33bの弾性復元力により、軸方向内側、すなわちロータ1から離れる方向に変位させる。この結果、1対のパッド9a、9bとロータ1の軸方向両側面との間に、クリアランスが確保される。
【0060】
以上のような本例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置2aによれば、それ単体で、サービスブレーキとパーキングブレーキとの2つの機能を発揮することができるため、それぞれ専用の装置を設ける場合に比べて、装置全体としての小型化及び軽量化を図れるとともに、ナックル4の形状の自由度を向上できる。
すなわち、油圧式のサービスブレーキとして機能する対向ピストン型ディスクブレーキ装置2aに、パーキングブレーキとして機能するパーキング機構部12を組み合わせて、1つの対向ピストン型ディスクブレーキ装置2aを構成している。しかも、パーキング機構部12を構成するクランプ部材41を、キャリパ8に対して、マウント(径方向に重畳)するように支持し、かつ、パーキング機構部12を構成する推力発生機構42の一部の部材(ナット71の大部分及びスピンドル70の軸方向外半部)を、回入側インナシリンダ19a内に配置している。
【0061】
このため、前記図18に示した従来構造の場合のように、サービスブレーキとパーキングブレーキの専用の2つの装置を周方向に離隔して設ける構造や、単に周方向に連続させた構造と比べて、装置全体としての小型化(周方向に連続させた構造に対しては特に、周方向に関する全長の短縮化)及び軽量化を図れる。さらに、押圧部43を回入側アウタシリンダ18a及びサービス専用ピストン11を跨ぐ形状(二股形状)としているため、周方向に隣接して設ける場合に比べて、周方向に関する全長を効果的に小さくできる。また、ナックル4に必要な取付部が、キャリパ8を支持固定するための1つで済むため、ナックル4の形状に関する自由度を向上できる。さらに、サービスブレーキとパーキングブレーキとで、1対のパッド9a、9bを共通に使用するため、パッド数を低減する(図18の構造と比較して、2枚のパッドを減らす)ことが可能になり、この面からも軽量化及び低コスト化を図れる。
【0062】
特に本例では、第一ガイド部53と第二ガイド部54と第三ガイド部55との、3つのガイド部53、54、55により、パーキング機構部12を構成するクランプ部材41をキャリパ8に対して支持する支持構造を採用している。このため、パーキングブレーキを作動する場合やパーキングブレーキを解除する場合に、クランプ部材41が、キャリパ8に対して径方向や周方向に傾くことを有効に防止できる。また、雌スプライン27と雄スプライン76との間や、雄ねじ部72と雌ねじ部75との間などに、こじりが発生したり、引き摺りが発生したりすることを有効に防止できる。この結果、電動モータの回転運動を推力発生機構42により効率良く直線運動に変換し、クランプ部材41を軸方向に円滑に変位させることが可能になるため、パーキングブレーキによる制動力を安定して得ることができる。
【0063】
また、第二ガイド部54を、第一ガイド部53及び第三ガイド部55から周方向に外れた位置に設けているため、クランプ部材41が、電動モータ(スピンドル70)の回転にかかわらず、ガイド筒22の中心軸周りに回転することも防止できる。したがって、本例では、クランプ部材41を、キャリパ8に対し、軸方向に関する変位のみ可能に支持することができる。また、第三ガイド部55により、押圧部43をアウタボディ部13に対して支持しているため、第一ガイド部53から軸方向に離れた位置に存在する押圧部43が径方向や周方向に変位(振動)することを有効に防止できる。特に本例では、アウタ側ガイドピン67を弾性体69を介してアウタボディ部13に支持しているため、摺動抵抗を抑えられるとともに、クランプ部材41(押圧部43)の振動をより有効に抑えられる。また、第三ガイド部55と第一ガイド部53との周方向位置を同じとし、アウタ側ガイドピン67を押圧部43の周方向中央に配置しているため、アウタ側ガイドピン67を設けたことに起因して重量バランスが崩れることを防止できる。
【0064】
さらに、図16に示すように、クランプ部材41を構成する押圧部43とブリッジ部45とを互いに別体とし、これら押圧部43とブリッジ部45とをボルト80により互いに結合しているため、押圧部43の軸方向内側面とブリッジ部45の径方向内側面とを直角に配置することができる。このため、押圧部とブリッジ部とを一体に設けることで、押圧部の軸方向内側面とブリッジ部の径方向内側面とを凹円弧状の曲面部を介して連続させる場合に比べて、アウタパッド9aとの干渉を防止をしつつ、クランプ部材41を径方向内側に配置することができる。このため、クランプ部材41がキャリパ8から径方向外側に張り出すことを有効に防止できる。したがって、対向ピストン型ディスクブレーキ装置2aの径方向幅寸法を小さく抑えることができ、対向ピストン型ディスクブレーキ装置2aのレイアウト性を向上することができる。
【0065】
実施の形態では、パーキングブレーキによる制動力を、電動駆動装置を利用して得る構造についてのみ説明したが、本発明はこのような構造に限定されない。すなわち、パーキングブレーキによる制動力は、パーキング機構部の駆動により発生させることができれば、例えば特開2007-177995号公報などに開示されるような、パーキングレバーによる駆動構造を採用することもできる。また、使用するパッド数に就いても、2枚に限定されず、例えば4枚や6枚設けることもできる。また、推力発生機構として、特開2011-158058号公報に記載されているような、送りねじ機構とボールランプ機構とを組み合わせた構造なども採用することができる。また、パーキングブレーキの制動力を得る際に、推力発生機構を構成する内側変位部材により直接、ロータの軸方向内側に配置されたパッドを押圧する構成を採用することもできる。さらに、第二ガイド部を構成するインナ側ガイドピンの軸方向内側部をクランプ部材に固定し、インナ側ガイドピンの軸方向外側部をインナボディ部に摺動可能に挿入する構成を採用することもできる。また、第三ガイド部を構成するアウタ側ガイドピンの軸方向外側部をアウタボディ部に固定し、アウタ側ガイドピンの軸方向内側部をクランプ部材(押圧部)に摺動可能の挿入する構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0066】
1 ロータ
2、2a 対向ピストン型ディスクブレーキ装置
3 フローティング型ディスクブレーキ装置
4 ナックル
5 キャリパ
6a、6b 取付部
7 サポート
8 キャリパ
9a アウタパッド
9b インナパッド
10 兼用ピストン
11 サービス専用ピストン
12 パーキング機構部
13 アウタボディ部
14 インナボディ部
15a、15b 連結部
16 中間連結部
17a、17b 取付座
18a 回入側アウタシリンダ
18b 回出側アウタシリンダ
19a 回入側インナシリンダ
19b 回出側インナシリンダ
20 大径孔部
21 小径孔部
22 ガイド筒
23 大径筒部
24 小径筒部
25 段差面
26 延長筒部
27 雌スプライン
28 底部
29 押部
30 底面
31a、31b 液圧室
32a、32b シール溝
33a、33b ピストンシール
34 環状凹溝
35 ダストカバー
36a、36b ガイド壁部
37a、37b ガイド凹溝
38 ライニング
39 裏板
40 耳部
41 クランプ部材
42 推力発生機構
43 押圧部
44 クランプ基部
45 ブリッジ部
46 基部本体
47 腕部
48 筒状部
49 底板部
50 収納孔
51 貫通孔
52 円筒部
53 第一ガイド部
54 第二ガイド部
55 第三ガイド部
56 弾性リング
57 シール溝
58 環状凹溝
59 ダストカバー
60 通孔
61 止め栓
62 インナ側ガイドピン
63 雌ねじ孔
64 スリーブ
65 ダストカバー
66 支持筒部
67 アウタ側ガイドピン
68 雌ねじ孔
69 弾性体
70 スピンドル
71 ナット
72 雄ねじ部
73 フランジ部
74 スラスト軸受
75 雌ねじ部
76 雄スプライン
77 電動駆動装置
78 ケーシング
79 回転軸
80 ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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