(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】箔転写装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/325 20060101AFI20220322BHJP
B41J 25/312 20060101ALI20220322BHJP
B41J 3/28 20060101ALI20220322BHJP
B41J 2/475 20060101ALN20220322BHJP
【FI】
B41J2/325 A
B41J25/312
B41J3/28
B41J2/475
(21)【出願番号】P 2018147435
(22)【出願日】2018-08-06
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】高橋 文博
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-069501(JP,A)
【文献】特開2017-071130(JP,A)
【文献】特開平07-047702(JP,A)
【文献】特開平02-270581(JP,A)
【文献】特開平08-067020(JP,A)
【文献】特開平03-005182(JP,A)
【文献】特開2013-220536(JP,A)
【文献】特開2016-215599(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0167147(US,A1)
【文献】特開2018-069502(JP,A)
【文献】特開2002-240497(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105665944(CN,A)
【文献】中国実用新案第201931729(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/325-2/48
B41J 23/00-25/34
B41J 3/00-3/54
B44B 1/00-11/14
B44C 1/00-7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱転写箔が載置された被転写物を保持する保持台と、
前記保持台の上方に配置された箔転写用ツールと、
前記箔転写用ツールと前記保持台とを水平方向に相対的に移動させる水平移動機構と、
前記箔転写用ツールと前記保持台とを鉛直方向に相対的に移動させる鉛直移動機構と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記被転写物に転写する画像のデータを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されたデータに基づいて前記水平移動機構が前記箔転写用ツールと前記保持台とを水平方向に相対移動させる軌道を演算し、前記軌道を、画像を転写する際の転写中軌道と、画像を転写する際以外の非転写中軌道とに区別する軌道演算部と、
前記水平移動機構を制御して、前記箔転写用ツールと前記保持台とを、前記軌道演算部が演算した軌道に沿って水平方向に相対移動させる水平移動制御部と、
前記鉛直移動機構を制御して、前記箔転写用ツールと前記保持台とを鉛直方向に相対移動させる鉛直移動制御部と、
を有し、
前記鉛直移動制御部は、
前記箔転写用ツールと前記保持台とが前記転写中軌道を相対移動されているときには、前記箔転写用ツールを、直接または間接に前記熱転写箔に接触しかつ前記熱転写箔を第1圧力以上の圧力で押圧する第1状態に保ち、
前記箔転写用ツールと前記保持台とが前記非転写中軌道を相対移動されているときには、前記箔転写用ツールを、直接または間接に前記熱転写箔に接触しかつ前記熱転写箔を前記第1圧力以下の圧力で押圧する第2状態に保つように設定されている、
箔転写装置。
【請求項2】
前記第2状態は、前記箔転写用ツールが前記熱転写箔を押圧する圧力がゼロの状態である、
請求項1に記載の箔転写装置。
【請求項3】
前記箔転写用ツールは、光を照射する光源を備えている、
請求項1または2に記載の箔転写装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
少なくとも第1モードと第2モードとから転写モードを選択可能に構成されたモード選択部と、
前記箔転写用ツールのエネルギーを制御するエネルギー制御部と、
を備え、
前記エネルギー制御部は、前記箔転写用ツールと前記保持台とが前記転写中軌道を相対移動されているときには前記箔転写用ツールから転写可能なエネルギーを出力させ、前記非転写中軌道を相対移動されているときには前記箔転写用ツールから転写可能なエネルギーを出力させないように設定され、
前記鉛直移動制御部は、
前記モード選択部で前記第1モードが選択された場合、前記箔転写用ツールと前記保持台とが前記非転写中軌道を相対移動されているときには、前記転写中軌道を相対移動されているときよりも小さい圧力で前記箔転写用ツールに前記熱転写箔を押圧させるように前記鉛直移動機構を制御し、
前記モード選択部で前記第2モードが選択された場合、前記箔転写用ツールと前記保持台とが前記非転写中軌道を相対移動されているときと前記転写中軌道を相対移動されているときとにおいて等しい圧力で前記箔転写用ツールに前記熱転写箔を押圧させるように前記鉛直移動機構を制御する、
請求項1~3のいずれか一つに記載の箔転写装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箔転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱転写箔を利用した箔転写装置(箔押し装置とも呼ばれる。)が知られている。箔転写装置による箔転写では、被転写物上に熱転写箔を重ね、箔転写用ツールで熱転写箔を上から押圧しながら熱転写箔を加熱する。これにより、被転写物の表面に画像を転写することができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、箔転写用ツールとして、所定の温度範囲で加熱可能なペンを備えた箔押し装置が開示されている。また、例えば、特許文献2には、箔転写用ツールとして、レーザー光を照射する光ペンを備えた箔押し装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-220536号公報
【文献】特開2016-215599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、被転写物に転写される画像には、互いに離間した複数の画像を備えたものがありうる。そのような画像を箔転写する場合、箔転写用ツールは、互いに離間した画像と画像との間を、箔転写を行うことなく移動する。この箔転写を伴わない箔転写用ツールの移動は、例えば、箔転写用ツールを熱転写箔から離間させて行われる。この場合、箔転写用ツールは、当該移動の開始時には熱転写箔から離間するように移動され、終了時には熱転写箔を再度押圧するように移動される。しかし、この箔転写用ツールの上昇および下降に要する時間のために、箔転写の生産性が低下することがある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、箔転写しないときの箔転写用ツールの移動に要する時間を低減して、生産性を向上させる箔転写装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示される箔転写装置は、保持台と、箔転写用ツールと、水平移動機構と、鉛直移動機構と、制御装置とを備える。
前記保持台は、熱転写箔が載置された被転写物を保持する。前記箔転写用ツールは、前記保持台の上方に配置されている。前記水平移動機構は、前記箔転写用ツールと前記保持台とを水平方向に相対的に移動させる。前記鉛直移動機構は、前記箔転写用ツールと前記保持台とを鉛直方向に相対的に移動させる。
前記制御装置は、記憶部と、軌道演算部と、水平移動制御部と、鉛直移動制御部とを有している。前記記憶部は、前記被転写物に転写する画像のデータを記憶する。前記軌道演算部は、前記記憶部に記憶されたデータに基づいて前記水平移動機構が前記箔転写用ツールと前記保持台とを水平方向に相対移動させる軌道を演算し、前記軌道を、画像を転写する際の転写中軌道と、画像を転写する際以外の非転写中軌道とに区別する。前記水平移動制御部は、前記水平移動機構を制御して、前記箔転写用ツールと前記保持台とを、前記軌道演算部が演算した軌道に沿って水平方向に相対移動させる。前記鉛直移動制御部は、前記鉛直移動機構を制御して、前記箔転写用ツールと前記保持台とを鉛直方向に相対移動させる。
前記鉛直移動制御部は、前記箔転写用ツールと前記保持台とが前記転写中軌道を相対移動されているときには、前記箔転写用ツールを、直接または間接に前記熱転写箔に接触しかつ前記熱転写箔を第1圧力以上の圧力で押圧する第1状態に保つように設定されている。前記鉛直制御部は、また、前記箔転写用ツールと前記保持台とが前記非転写中軌道を相対移動されているときには、前記箔転写用ツールを、直接または間接に前記熱転写箔に接触しかつ前記熱転写箔を前記第1圧力以下の圧力で押圧する第2状態に保つように設定されている。
【0008】
上記箔転写装置によれば、第2状態では箔転写用ツールが熱転写箔を強く押圧していないため、箔転写はされない。また、第2状態では箔転写用ツールが熱転写箔に接触しているため、転写中軌道から非転写中軌道への移行に際して箔転写用ツールを上昇させる距離、および、非転写中軌道から転写中軌道への移行に際して箔転写用ツールを下降させる距離が短い。そこで、転写中軌道から非転写中軌道への移行時間、および、非転写中軌道から転写中軌道への移行時間を短くすることができる。それにより、箔転写の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る箔転写装置を模式的に示す斜視図である。
【
図2】箔転写装置を模式的に示す一部破断斜視図である。
【
図3】鉛直移動機構、水平移動機構および保持台を模式的に示す左側面図である。
【
図4】メンテナンス位置にある保持台を模式的に示す平面図である。
【
図5】固定位置にある保持台を模式的に示す平面図である。
【
図6】ヘッド付近の構成を模式的に示す縦断面図である。
【
図8】箔転写される画像の一例を示す模式図である。
【
図9】第1モードが選択された場合において、
図8に示された画像を箔転写するときの箔転写用ツールに掛かる圧力と、光源の状態とを示すタイムチャートである。
【
図10】第2モードが選択された場合において、
図8に示された画像を箔転写するときの箔転写用ツールに掛かる圧力と、光源の状態とを示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0011】
図1は、箔転写装置10を示す斜視図である。
図2は、箔転写装置10を模式的に示す一部破断斜視図である。
図3は、鉛直移動機構30、水平移動機構40および保持台70を模式的に示す左側面図である。以下の説明では、左、右、上、下とは、箔転写装置10の正面にいるユーザーが電源スイッチ14aを見た場合の左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。また、上記ユーザーが箔転写装置10に近づく方を後方、遠ざかる方を前方とする。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。本実施形態に係る箔転写装置10は、相互に直交する軸をX軸、Y軸およびZ軸としたときに、X軸とY軸とで構成される平面に置かれるものとする。ここでは、X軸は、左右方向に延びる。Y軸は、前後方向に延びる。Z軸は、上下方向に延びる。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、箔転写装置10の設置態様を何ら限定するものではない。
【0012】
図1に示すように、箔転写装置10は箱状に形成されている。箔転写装置10は、前方が開口された筐体12と、筐体12内に配置されたヘッドユニット20と、鉛直移動機構30と、水平移動機構40と、箔転写用ツール60と、保持台70とを備えている。筐体12は、底壁14と、左側壁15と、右側壁16と、上壁17と、後壁18(
図2参照)とを備えている。筐体12は、例えば鋼板によって構成されている。
【0013】
図2に示すように、左側壁15は、底壁14の左端において上方に延びている。左側壁15は、底壁14に対して垂直に設けられている。右側壁16は、底壁14の右端において上方に延びている。右側壁16は、底壁14に対して垂直に設けられている。後壁18は、底壁14の後端において上方に延びている。後壁18は、左側壁15の後端および右側壁16の後端に接続されている。後壁18には、箱状のケース18aが設けられている。ケース18aには、後述する制御装置100が収容されている。上壁17は、左側壁15の上端、右側壁16の上端および後壁18の上端に接続されている。上壁17には、後述する鉛直移動機構30の一部が配置されている。底壁14と左側壁15と右側壁16と上壁17と後壁18とに囲まれた領域は、筐体12の内部空間を構成する。
【0014】
図1に示すように、底壁14には、保持台70が設けられている。保持台70は、熱転写箔82(
図3参照)その他の必要なフィルムと被転写物80とを保持する。保持台70は、ここでは、熱転写箔82と、光吸収フィルム76とが載置された状態で被転写物80を保持している。保持台70は、固定具70Aとフィルム保持具70Bとを備えている。
【0015】
固定具70Aは、被転写物80を保持する部材である。固定具70Aは、例えばバイスである。保持台70には、固定具70Aが着脱自在に取り付けられている。ただし、固定具70Aは、保持台70に着脱不能に固定されていてもよい。
【0016】
被転写物80を構成する材料や形状は、特に限定されない。被転写物80は、例えば、アクリル、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)等の樹脂類であってもよいし、普通紙、画用紙、和紙等の紙類、ゴム類や、金、銀、銅、プラチナ、真鍮、アルミ、鉄、チタン、ステンレス等の金属類等であってもよい。
【0017】
図4および
図5は、保持台70を模式的に示す平面図である。
図4、
図5に示すように、フィルム保持具70Bは、ベース部材71と、保持部材72と、支持部材73と、ストッパ74と、箔固定用フィルム75とを備えている。詳しくは後述するが、保持部材72は水平面に沿って回転可能に構成されている。
図4は、保持部材72が回転位置の1つであるメンテナンス位置P1にあるときの図である。
図5は、保持部材72が回転位置の他の1つである固定位置P2にあるときの図である。
【0018】
図1に示すように、ベース部材71は、底壁14に設けられている。ベース部材71は、平板状に形成されている。支持部材73は、ベース部材71から上方に延びている。支持部材73は、第1スライドバー73aおよび第2スライドバー73bを備えている。第1スライドバー73aおよび第2スライドバー73bは、ベース部材71から上方に延びている。第1スライドバー73aおよび第2スライドバー73bは、ベース部材71の左端部から上方に延びている。第1スライドバー73aは、第2スライドバー73bより後方に配置されている。第1スライドバー73aと第2スライドバー73bとは平行に配置されている。第1スライドバー73aの上下方向の長さは、第2スライドバー73bの上下方向の長さより長い。
【0019】
保持部材72は、箔固定用フィルム75および光吸収フィルム76を保持する。
図1に示すように、保持部材72は、第1スライドバー73aおよび第2スライドバー73bに上下方向に移動可能に保持されている。保持部材72は、ベース部材71より上方に配置されている。
図3に示すように、保持部材72には、第1スライドバー73aが挿入される第1貫通孔72aと、第2スライドバー73bが挿入される第2貫通孔72bとが形成されている。保持部材72を上方に移動させることによって、第2スライドバー73bを第2貫通孔72bから抜くことができる。このとき、保持部材72は、第1スライドバー73aにのみ支持される。これにより、
図4に示すように、保持部材72は、第1スライドバー73aを中心に矢印A方向および矢印B方向に回転可能となる。
【0020】
保持部材72は、A方向およびB方向への回転により、固定位置P2(
図5参照)と、メンテナンス位置P1(
図4参照)とに配置可能に構成されている。固定位置P2は、箔固定用フィルム75によって、熱転写箔82を被転写物80に固定するときの保持部材72の位置である。固定位置P2では、保持部材72は、固定具70Aの上方に位置している。保持部材72が固定位置P2に位置するとき、第1スライドバー73aは第1貫通孔72aに挿入され、第2スライドバー73bは第2貫通孔72bに挿入されている。保持部材72は、この状態で鉛直方向に移動されうる。このように、支持部材73は、保持部材72を被転写物80の上方で鉛直方向に移動させるように構成されている。
【0021】
メンテナンス位置P1は、保持部材72に保持された箔固定用フィルム75を交換したり、固定具70Aを保持台70から取り外したり、固定具70Aに固定された被転写物80を固定具70Aから取り外したりするときの保持部材72の位置である。保持部材72がメンテナンス位置P1に位置するとき、第1スライドバー73aは第1貫通孔72aに挿入され、第2スライドバー73bは第2貫通孔72bに挿入されていない。
【0022】
図5に示すように、保持部材72には、上下方向に貫通する開口72cが形成されている。開口72cは、矩形状に形成されている。開口72cの大きさは、固定具70Aの大きさより大きい。即ち、開口72cの左右方向の長さは、固定具70Aの左右方向の長さより長く、開口72cの前後方向の長さは、固定具70Aの前後方向の長さより長い。固定位置P2において、固定具70Aと開口72cとは、平面視で重なる。即ち、平面視で開口72cの内方に固定具70Aが配置される。
【0023】
箔固定用フィルム75は、平面視で開口72cと重なるように保持部材72に保持されている。箔固定用フィルム75は、開口72cより大きく、平面視で開口72cの全体と重なるように保持部材72に保持されている。箔固定用フィルム75は、保持部材72の裏面に保持されている。箔固定用フィルム75を保持する方法は特に限定されないが、例えば、両面テープにより保持部材72に保持されている。箔固定用フィルム75の下面には、光吸収フィルム76が固定されている。光吸収フィルム76を箔固定用フィルム75に固定する方法は特に限定されないが、例えば、光を透過する接着剤や両面テープにより固定されている。箔固定用フィルム75は熱転写箔82を上方から押さえつけて被転写物80に固定するが、押圧力の大部分は保持部材72の重量によるものである。
【0024】
ストッパ74は、保持部材72の回転を規制する部材である。
図1に示すように、ストッパ74は、ベース部材71から上方に延びている。ストッパ74は、第1スライドバー73aより後方に配置されている。ストッパ74の上端は、第2スライドバー73bの上端より上方に位置する。ストッパ74の上端は、例えば、第1スライドバー73aの上端より上方に位置する。
図5に示すように、ストッパ74は、保持部材72が固定位置P2に位置するとき保持部材72が
図5の矢印B方向に回転することを規制する。保持部材72が固定位置P2に位置するとき、ストッパ74は、保持部材72と接触している。
【0025】
箔固定用フィルム75と光吸収フィルム76の接合体は、熱転写箔82を上方から押圧して熱転写箔82を被転写物80に固定している。被転写物80と各フィルム類は、下から被転写物80、熱転写箔82、光吸収フィルム76、箔固定用フィルム75の順に重ねられている。熱転写箔82は、例えば、保持部材72がメンテナンス位置P1にあるときに被転写物80上に載置される。その後、熱転写箔82は、保持部材72が固定位置P2に移動されると、箔固定用フィルム75と光吸収フィルム76の接合体によって被転写物80上に固定される。
【0026】
箔固定用フィルム75は、光透過性を有するフィルムである。箔固定用フィルム75は、光吸収フィルム76に比べて、光吸収性が著しく低い素材で形成されている。箔固定用フィルム75は、例えば透明である。箔固定用フィルム75は、ここでは、光吸収フィルム76より強度が高い。箔固定用フィルム75の厚みは、例えば、25μm~100μm程度である。箔固定用フィルム75の材質は特に限定されない。箔固定用フィルム75は、例えばポリエステルのようなプラスチックフィルムで構成されている。
【0027】
光吸収フィルム76は、箔転写用ツール60の光源62(
図6参照)から照射される所定の波長帯の光(レーザー光)を効率よく吸収して、光エネルギーを熱エネルギーに変換するフィルムである。光吸収フィルム76は、例えばポリイミドのような樹脂で構成されている。光吸収フィルム76は、例えば100~200℃での耐熱性を有している。
【0028】
熱転写箔82は、加熱および押圧されることにより、被転写物80の表面に画像を転写する箔である。ここでは、熱転写箔82は、箔転写用ツール60の光源62が照射する光のエネルギーによって箔転写を行う。熱転写箔82としては、例えば、箔転写用に一般に市販されている転写箔を特に限定なく用いることができる。熱転写箔82は、一般的には、基材と、装飾層と、接着層とがこの順に積層されている。熱転写箔82における装飾層は、例えば、金箔、銀箔等のメタリック箔や、ハーフメタリック箔、顔料箔、多色印刷箔、ホログラム箔、静電気破壊対策箔等を包含する。なお、本実施形態では、光吸収フィルム76は熱転写箔82と別体であるが、光吸収フィルム76と同等の働きをもつ光吸収材が熱転写箔82内に形成されていてもよい。その場合には、光吸収フィルム76は使用されなくてもよい。光吸収材の厚みは、例えば、1μm~15μm程度である。
【0029】
筐体12の内部空間には、鉛直移動機構30と、水平移動機構40とが設けられている。鉛直移動機構30は、箔転写用ツール60と保持台70とを鉛直方向に相対的に移動させる機構である。ここでは、鉛直移動機構30は、ヘッドユニット20と、ヘッドユニット20に設けられた箔転写用ツール60とを鉛直方向に移動させる。ただし、鉛直移動機構30は、箔転写用ツール60と保持台70とを鉛直方向に相対的に移動させるように構成されていればよく、両者のうちのいずれを移動させるかは限定されない。また、水平移動機構40は、箔転写用ツール60と保持台70とを水平方向に相対的に移動させる機構である。ここでは、水平移動機構40は、ヘッドユニット20と箔転写用ツール60とを水平方向に移動させる。水平移動機構40は、ヘッドユニット20をY軸方向に移動させるY軸方向移動機構40Yと、X軸方向に移動させるX軸方向移動機構40Xとを備えている。ただし、水平移動機構40は、箔転写用ツール60と保持台70とを水平方向に相対的に移動させるように構成されていればよく、両者のうちのいずれを移動させるかは限定されない。ヘッドユニット20は、鉛直移動機構30、Y軸方向移動機構40YおよびX軸方向移動機構40Xにより、保持台70に対して三次元的に移動される。鉛直移動機構30、Y軸方向移動機構40YおよびX軸方向移動機構40Xは、いずれも底壁14よりも上方に配置されている。
【0030】
図1に示すように、鉛直移動機構30は、Z軸方向送りネジ棒31と、Z軸方向移動用モータ32と、送りナット33とを備えている。Z軸方向送りネジ棒31は、Z軸に沿って延びている。Z軸方向送りネジ棒31は、螺旋状のネジ溝を有している。Z軸方向送りネジ棒31の上方は、上壁17に固定されている。Z軸方向送りネジ棒31の上端部は、上壁17の下面をZ軸方向に貫通しており、その一部が上壁17の内部に配置されている。Z軸方向送りネジ棒31の下端部は、フレーム14b(
図3も参照)に回転自在に支持されている。フレーム14bは、底壁14上に固定されている。Z軸方向移動用モータ32は、制御装置100(
図2参照)に接続されている。Z軸方向移動用モータ32は、上壁17に固定されている。Z軸方向移動用モータ32の駆動軸は上壁17の下面をZ軸方向に貫通しており、その一部が上壁17の内部に配置されている。上壁17の内部において、Z軸方向送りネジ棒31は、Z軸方向移動用モータ32に連結されている。Z軸方向移動用モータ32は、Z軸方向送りネジ棒31を回転させる。
【0031】
図2に示すように、Z軸方向送りネジ棒31には、ネジ山を有する送りナット33が噛み合っている。左側壁15と右側壁16との内側には、それぞれZ軸方向に延びるスライドシャフト34が設けられている。スライドシャフト34は、Z軸方向送りネジ棒31と平行に配置されている。スライドシャフト34には、昇降ベース35がZ軸方向に摺動可能に係合している。昇降ベース35には、送りナット33が設けられている。昇降ベース35は、送りナット33を介してZ軸方向送りネジ棒31に支持されている。Z軸方向移動用モータ32が駆動されると、昇降ベース35は、Z軸方向送りネジ棒31の回転により、スライドシャフト34に沿って上下方向に移動する。Y軸方向移動機構40YおよびX軸方向移動機構40Xは、昇降ベース35に連結されている。このため、Y軸方向移動機構40YおよびX軸方向移動機構40Xは、昇降ベース35の上下方向への移動に伴って上下方向に一体的に移動する。
【0032】
図2に示すように、Y軸方向移動機構40Yは、ヘッドユニット20をY軸方向(前後方向)に移動させる機構である。Y軸方向移動機構40Yは、Y軸方向送りネジ棒41と、Y軸方向移動用モータ42と、送りナット43とを備えている。Y軸方向送りネジ棒41は、Y軸に沿って延びている。Y軸方向送りネジ棒41は、昇降ベース35に設けられている。Y軸方向送りネジ棒41は、螺旋状のネジ溝を有している。Y軸方向送りネジ棒41の後端部は、Y軸方向移動用モータ42に連結されている。Y軸方向移動用モータ42は、制御装置100に接続されている。Y軸方向移動用モータ42は、昇降ベース35の後方に固定されている。Y軸方向移動用モータ42は、Y軸方向送りネジ棒41を回転させる。Y軸方向送りネジ棒41のネジ溝には、ネジ山を有する送りナット43が噛合っている。昇降ベース35には、Y軸方向に延びる一対のスライドシャフト44が設けられている。2本のスライドシャフト44は、Y軸方向送りネジ棒41と平行に配置されている。スライドシャフト44には、スライドベース45がY軸方向に摺動可能に係合している。スライドベース45には、送りナット43が設けられている。Y軸方向移動用モータ42が駆動されると、スライドベース45は、Y軸方向送りネジ棒41の回転により、スライドシャフト44に沿って前後方向に移動する。
【0033】
図1に示すように、X軸方向移動機構40Xは、ヘッドユニット20をX軸方向(左右方向)に移動させる機構である。X軸方向移動機構40Xは、X軸方向送りネジ棒46と、X軸方向移動用モータ47とを備えている。X軸方向送りネジ棒46は、X軸に沿って延びている。X軸方向送りネジ棒46は、スライドベース45の前方に設けられている。X軸方向送りネジ棒46は、螺旋状のネジ溝を有している。X軸方向送りネジ棒46の一端は、X軸方向移動用モータ47に連結されている。X軸方向移動用モータ47は、制御装置100(
図2参照)に接続されている。X軸方向移動用モータ47は、スライドベース45の前方に延びた右側壁面に固定されている。X軸方向移動用モータ47は、X軸方向送りネジ棒46を回転させる。X軸方向送りネジ棒46のネジ溝には、ヘッドユニット20に設けられた送りナット(図示せず)が噛合っている。スライドベース45の前方には、X軸方向に延びる一対のスライドシャフト48が設けられている。スライドシャフト48は、X軸方向送りネジ棒46と平行に配置されている。スライドシャフト48には、ヘッドユニット20がX軸方向に摺動可能に係合している。X軸方向移動用モータ47が駆動されると、ヘッドユニット20は、X軸方向送りネジ棒46の回転により、スライドシャフト48に沿って左右方向に移動する。
【0034】
図6は、ヘッドユニット20付近の構成を模式的に示す縦断面図である。
図6に示すように、ヘッドユニット20は箔転写用ツール60を搭載している。
【0035】
箔転写用ツール60は、被転写物80上に載置された熱転写箔82を押圧すると共に、熱転写箔82に対して光を照射する部材である。箔転写用ツール60は、保持台70よりも上方に配置されている。箔転写用ツール60から照射された光は、箔固定用フィルム75を透過して、光吸収フィルム76に照射される。箔転写用ツール60は、ペン本体61と、光源62と、光ファイバ63とを備えている。
【0036】
光源62は、光を照射する部材である。光源62は、ここでは、レーザー光を照射する。光源62は、筐体12の内部に配置されている。光源62から照射されたレーザー光は、光吸収フィルム76に供給される。その光は、光吸収フィルム76において熱エネルギーに変換されて熱転写箔82を加熱する。本実施形態における光源62は、レーザーダイオード(LD)と光学系とを備えている。光源62は、制御装置100に接続されている。光源62からのレーザー光の照射(オン)および停止(オフ)の切り替えや、レーザー光のエネルギーの調整等は制御装置100により行われる。光源62は、熱転写箔82に与えるエネルギーを調整可能に構成されている。レーザー光は応答速度が速いため、光の照射と非照射との切り換え、および、上記レーザー光のエネルギーの変更を瞬時に行うことができる。これにより、所望の性状を備えるレーザー光を光吸収フィルム76に照射することができる。
【0037】
ペン本体61は、長尺の円筒形状に形成されている。ペン本体61は、長手方向が上下方向Zに一致するように配置されている。ペン本体61の軸心は、上下方向に延びている。ペン本体61は、ホルダ61aと、押圧体61bと、フェルール61cとを有している。
【0038】
ホルダ61aは、ペン本体61の下端部に取り付けられている。ホルダ61aは、押圧体61bをペン本体61の下端に保持する。押圧体61bは、ホルダ61aに着脱可能に構成されている。押圧体61bは、箔固定用フィルム75および光吸収フィルム76を介して、間接的に熱転写箔82を押圧する。押圧体61bは、硬質な材料から構成されている。押圧体61bの硬度は厳密には限定されないものの、例えば、ビッカース硬さで100Hv0.2以上(例えば、500Hv0.2以上)の材料により構成される。押圧体61bは球体状に形成されている。押圧体61bは、また、光源62から発せられる光を透過する材料から形成されている。押圧体61bは、例えば、合成石英ガラスにより構成されている。
【0039】
フェルール61cは、ペン本体61の内部に収容されている。フェルール61cは、円筒形に構成されている。フェルール61cは、円筒軸が上下方向に一致するように配置されている。フェルール61cには、円筒軸に沿って貫通孔61c1が設けられている。貫通孔61c1の下端は、ホルダ61aの下端の押圧体61bを保持する部分まで延びている。
【0040】
光ファイバ63は、光源62から照射された光を伝送するファイバ状の光伝送媒体である。光ファイバ63は、光が通過するコア部(図示せず)と、コア部の周囲を覆い光を反射させるクラッド部(図示せず)とを備えている。光ファイバ63の一方の端部63aは、光源62に接続されている。光ファイバ63の他方の端部63bは、フェルール61cの貫通孔61c1に挿入されている。そこで、光源62から照射されたレーザー光は、光ファイバ63を経由して押圧体61bに到達し、押圧体61bを透過して光吸収フィルム76に照射される。
【0041】
図6に示されるように、ヘッドユニット20は、ヘッド21と、係合部材22と、押圧検知機構23とを備えている。ヘッド21は、箔転写用ツール60を保持している。ヘッド21は、押圧検知機構23のスライド機構23a(後述)を介して、係合部材22に係合している。
【0042】
係合部材22は、X軸方向移動機構40Xに係合している。X軸方向移動機構40Xは、係合部材22を介してヘッドユニット20をX軸方向に移動させる。係合部材22は、X軸方向移動機構40Xのネジ棒46に係合する送りナット(図示せず)と、スライドシャフト48に係合するブッシュ(図示せず)とを備えている。係合部材22の前面には、押圧検知機構23が取り付けられている。押圧検知機構23は、ヘッド21を上下方向に移動可能に保持するスライド機構23aと、センサ23bと、ヘッド21が上方に移動されたときにセンサ23bに検知されるアーム23cとを備えている。
【0043】
スライド機構23aは、2本のスライドシャフト23a1と、スプリング機構23a2とを備えている。スライドシャフト23a1は、上下方向に延びている。スライドシャフト23a1には、ヘッド21が係合している。ヘッド21は、スライドシャフト23a1に沿って上下方向に移動できるように構成されている。スライド機構23aにおいて、ヘッド21の上方には、スプリング機構23a2が配置されている。スプリング機構23a2はスプリングを備えている。スプリング機構23a2においてスプリングは圧縮されて配置されており、スプリング機構23a2は、スプリングの復元力によってヘッド21を下方に押圧している。ヘッド21は、このスプリング機構23a2の押圧力以上の押圧力で上方に押し上げられない場合には、係合部材22に対して上方に移動しないように構成されている。
【0044】
押圧検知機構23のセンサ23bは、ヘッド21の上方に配置されている。センサ23bは、箔転写用ツール60がスライド機構23aに対して上方に移動されたことを検知するように構成されている。また、そのとき信号を送信するように構成されている。センサ23bは、制御装置100に接続されている。制御装置100は、センサ23bが発する信号を受信している。センサ23bは、例えば、スイッチを備えたメカ式のセンサである。ただし、センサ23bはメカ式のセンサでなくともよく、例えば光電センサなどでもよい。センサ23bは、外部に突出したスイッチ部23b1を備えている。
【0045】
アーム23cは、ヘッド21に設けられている。アーム23cは、ここでは、ヘッド21の右側の側面に設けられている。アーム23cは、上方に向かって延びている。アーム23cの上端は、押圧検知機構23のセンサ23bの近傍に位置している。鉛直移動機構30によってヘッドユニット20が下降されたとき、ヘッド21の下方に例えば被転写物80等の物体があれば、ヘッド21はその物体に突き当たる。ヘッド21が物体に突き当たった状態から、ヘッドユニット20がスプリング機構23a2の弾性力以上の力で下降されると、ヘッド21はスライドシャフト23a1に沿って上方に移動する。アーム23cは、ヘッド21が係合部材22に対して一定距離(
図6の距離L1)だけ上方に移動するとセンサ23bのスイッチ部23b1を押下するように構成されている。本実施形態に係るセンサ23bは、スイッチ部23b1が押下されると信号を送信する。制御装置100はセンサ23bからの信号により箔転写用ツール60が上方に向かって押圧されていることを把握する。なお、以下では適宜、センサ23bが信号を発する時点で箔転写用ツール60が熱転写箔82を押下する圧力を「第1圧力」と称する。言い換えれば、押圧検知機構23は、箔転写用ツール60が上方に向かって第1圧力以上の圧力で押圧されているときに信号を送信するように構成されている。
【0046】
箔転写装置10の動作は、制御装置100によって制御されている。
図7は、本実施形態に係る箔転写装置10のブロック図である。
図7に示されるように、制御装置100は、Z軸方向移動用モータ32と、Y軸方向移動用モータ42と、X軸方向移動用モータ47と、光源62とに電気的に接続されており、それらを制御可能に構成されている。また、制御装置100は、センサ23bと接続され、センサ23bからの信号を受信している。制御装置100は、典型的にはコンピュータである。制御装置100は、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器からの印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU)と、CPUが実行するプログラムを格納したROMと、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAMと、上記プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置とを備えている。
【0047】
図7に示すように、制御装置100は、記憶部110と、軌道演算部120と、鉛直移動制御部130と、水平移動制御部140と、光源制御部150と、モード選択部160とを備えている。
【0048】
記憶部110は、被転写物80に転写する画像のデータを記憶している。画像のデータは、例えば、箔転写装置10に接続された外部コンピュータ等で作成され、記憶部110に記憶される。
【0049】
軌道演算部120は、記憶部110に記憶されたデータに基づいて、水平移動機構40が箔転写用ツール60を水平方向に移動させる軌道を演算する。また、演算された軌道を、画像を転写する際の転写中軌道と、画像を転写する際以外の非転写中軌道とに区別する。軌道演算部120は、第1演算部121と、第2演算部122とを備えている。
【0050】
第1演算部121は、記憶部110に記憶されたデータに基づいて、水平移動機構40が箔転写用ツール60を水平方向に移動させる軌道を演算する。
図8は、箔転写される画像の一例を示す模式図である。
図8に示すように、箔転写される画像は、互いに離間した複数の画像を組み合わせた画像である場合がある。
図8に示す画像の場合、全体の画像は、互いに離間した第1の画像I1と、第2の画像I2と、第3の画像I3とからなっている。この場合、箔転写用ツール60は、それぞれ第1画像I1、第2画像I2、および第3画像I3を箔転写する際の軌道O1、O2、およびO3(以下では適宜、転写中軌道と称する。)だけでなく、例えば、第1画像I1から第2画像I2に移動する際の軌道O4および第2画像I2から第3画像I3に移動する際の軌道O5(以下では適宜、非転写中軌道と称する。)に沿うように水平移動される。転写中軌道O1~O3は、画像を転写する際に箔転写用ツール60が移動する軌道である。非転写中軌道O4およびO5は、画像を転写する際以外に箔転写用ツール60が移動する軌道である。第1演算部121は、転写中軌道と非転写中軌道とを合わせた軌道(
図8の場合は、軌道O1~O5を全て合わせた軌道)を、箔転写すべき画像データに基づいて演算する。第2演算部122は、第1演算部121が演算した軌道を、転写中軌道と非転写中軌道とに区別する。
【0051】
鉛直移動制御部130は、鉛直移動機構30を制御して、箔転写用ツール60を鉛直方向に移動させる。鉛直移動制御部130は、第1押圧制御部131と、第2押圧制御部132と、信号受信部133とを備えている。第1押圧制御部131は、後述するモード選択部160において、箔転写のモードとして第1モードが選択された場合に、鉛直移動機構30の動きを制御する。第1押圧制御部131は、第1モードが選択された場合、箔転写用ツール60が転写中軌道を移動されているときには、箔転写用ツール60を、熱転写箔82に接触し、かつ、熱転写箔82を第1圧力以上の圧力で押圧する状態に保つように設定されている。以下では、この箔転写用ツール60が熱転写箔82に接触し、かつ、熱転写箔82を第1圧力以上の圧力で押圧している状態を「第1状態」とも称する。
【0052】
なお、本実施形態では、箔転写用ツール60は、箔固定用フィルム75と光吸収フィルム76とを介して、間接的に熱転写箔82に接触し、熱転写箔82を押圧している。そこで、以下では、箔転写用ツール60が箔固定用フィルム75と光吸収フィルム76とを介して間接的に熱転写箔82に接触し、または熱転写箔82を押圧することを、単に「箔転写用ツール60が熱転写箔に接触し、または押圧する」と呼ぶこととする。しかしながら、熱転写箔82は、箔固定用フィルム75以外の方法によって固定されてもよく、光吸収層を含んでいてもよい。従って、箔転写用ツール60は、熱転写箔82に直接接触し、押圧してもよい。
【0053】
第1押圧制御部131は、また、箔転写用ツール60が非転写中軌道を移動されているときには、箔転写用ツール60を、熱転写箔82に接触し、かつ、熱転写箔82を第1圧力以下の圧力で押圧する状態に保つように設定されている。以下では、この箔転写用ツール60が熱転写箔82に接触し、かつ、熱転写箔82を第1圧力以下の圧力で押圧している状態を「第2状態」とも称する。第2状態の詳細については後述する。
【0054】
第1押圧制御部131は、第1圧力調整部131aと、第2圧力調整部131bとを備えている。第1圧力調整部131aは、箔転写用ツール60を第2状態から第1状態に移行させる動作を制御する。第2圧力調整部131bは、箔転写用ツール60を第1状態から第2状態に移行させる動作を制御する。これら制御の詳細については後述する。
【0055】
第2押圧制御部132は、モード選択部160において、箔転写のモードとして第2モードが選択された場合に、鉛直移動機構30の動きを制御する。第2押圧制御部132は、モード選択部160で第2モードが選択された場合、箔転写用ツール60を第1状態に保つように設定されている。第1モードと第2モードの詳細については後述する。
【0056】
信号受信部133は、押圧検知機構23に接続され、押圧検知機構23が送信する信号を受信するように構成されている。制御装置100は、信号受信部133がセンサ23bからの信号を受信することによって、箔転写用ツール60が第1圧力以上の圧力で熱転写箔82を押圧していることを把握する。また、制御装置100は、信号受信部133がセンサ23bからの信号を受信しなくなることによって、箔転写用ツール60が熱転写箔82を押圧する圧力が第1圧力より小さくなったことを把握する。
【0057】
水平移動制御部140は、水平移動機構40を制御して、第1演算部121が演算した軌道に沿って箔転写用ツール60を水平方向に移動させるように設定されている。言い換えれば、水平移動制御部140は、転写中軌道と非転写中軌道とに沿って箔転写用ツール60を水平方向に移動させる。
【0058】
光源制御部150は、箔転写用ツール60から出力する光のエネルギーを制御する。詳しくは、光源制御部150は、箔転写用ツール60が転写中軌道を移動されているときには箔転写用ツール60から箔転写可能なエネルギーを出力させ、箔転写用ツール60が非転写中軌道を移動されているときには箔転写用ツール60から箔転写可能なエネルギーを出力させないように設定されている。ここでは、光源制御部150は、転写中、箔転写用ツール60が箔転写可能なエネルギーの光を照射するように、光源62に流す電流を制御する。また、光源制御部150は、非転写中には、箔転写用ツール60が箔転写可能なエネルギーの光を照射しないように、光源62を消灯する。しかし、光源制御部150が箔転写用ツール60の動作とエネルギーとを制御する方法は上記に限定されない。例えば、光源制御部150は、パルス電流を流すことによる光源62の点滅によって箔転写用ツール60の出力を制御してもよい。また、例えば、光源62を消灯する代わりに、少ない電流で点灯させてもよい。
【0059】
モード選択部160は、第1モードと第2モードとから転写モードを選択可能に構成されている。本実施形態では、箔転写のモードは、第1モードと第2モードとの2モードである。ただし、箔転写のモードは、3モード以上あってもよい。モード選択部160は、少なくとも第1モードと第2モードとから転写モードを選択可能に構成されていればよい。第1モードが選択されたとき、鉛直移動機構30の制御は第1押圧制御部131が行う。第2モードが選択されたとき、鉛直移動機構30の制御は第2押圧制御部132が行う。モード選択部160は、例えば、外部コンピュータの表示装置などにモード選択画面を表示させる。
【0060】
以下では、
図8に示された画像の場合を例として、箔転写装置10の動作を説明する。箔転写の前には、被転写物80および熱転写箔82が、ユーザーによって保持台70にセットされる。本実施形態では、被転写物80は固定具70Aに固定される。熱転写箔82は、フィルム保持具70Bの保持部材72に取り付けられた箔固定用フィルム75、光吸収フィルム76に、例えば貼付される。熱転写箔82は、保持部材72が固定位置P2に配置されることにより、被転写物80上に固定される。また、箔転写のモードが、ユーザーによって選択される。ここでは、まず、箔転写のモードとして第1モードが選択された場合について説明する。
【0061】
(第1モード)
図9は、第1モードが選択された場合において、
図8に示された画像を箔転写するときの箔転写用ツール60に掛かる圧力と、光源62の状態とを示すタイムチャートである。
図9の横軸は、時間Tを示している。
図9の横軸の時間Tは、第1画像I1を箔転写する前に箔転写用ツール60が移動するのに使われた時間T0と、第1画像I1を箔転写するのに使われた時間T1と、第2画像I2を箔転写するのに使われた時間T2と、第3画像I3を箔転写するのに使われた時間T3と、第1画像I1から第2画像I2に箔転写用ツール60が移動するのに使われた時間T4と、第2画像I2から第3画像I3に箔転写用ツール60が移動するのに使われた時間T5とからなっている。時間T0~T5は、T0、T1、T4、T2、T5、T3の順に並んでいる。
【0062】
図9の上の図は、画像を箔転写するときの箔転写用ツール60に掛かる圧力を示している。
図9では、第1圧力を「Pr1」、圧力ゼロを「0」で示している。
図9の下の図は、光源62の点灯、消灯を示している。図では、光源62の点灯状態が「ON」で、消灯状態が「OFF」で示されている。
【0063】
時間T0において、箔転写用ツール60は、熱転写箔82の上方を移動している。このとき、箔転写用ツール60は、熱転写箔82から離間している。そこで、時間T0において、箔転写用ツール60は上向きの押圧力を受けていない。制御装置100は、信号受信部133がセンサ23bからの信号を受信していないことにより、箔転写用ツール60に第1圧力Pr1以上の上向きの押圧力が掛かっていないことを認識している。
【0064】
また、時間T0において、光源62は消灯されている。これは、時間T0においては、箔転写が行われておらず、光源62を点灯させる必要がないからである。
【0065】
第1軌道O1の前の軌道(時間T0に対応)から第1軌道O1(時間T1に対応)に移行する際、箔転写用ツール60は、第1状態に移行される。第1押圧制御部131の第1圧力調整部131aは、箔転写用ツール60を第1状態に移行させるときには、少なくとも信号受信部133が押圧検知機構23からの信号を受信するまで箔転写用ツール60を下降させる。ここでは、第1圧力調整部131aは、信号受信部133が押圧検知機構23からの信号を受信したタイミングから少し後まで箔転写用ツール60を下降させる。
【0066】
第1状態への移行においては、箔転写用ツール60は、鉛直移動機構30により下方に移動される。すると、箔転写用ツール60の下端に設けられた押圧体61bが熱転写箔82に接触する。さらに鉛直移動機構30が箔転写用ツール60を押し下げようとすると、箔転写用ツール60は、熱転写箔82を押圧する。押圧力が所定の値を上回ると、ヘッド21がスライド機構23aに沿って上方に移動する。このヘッド21の移動距離が一定量(
図6の距離L1)以上となると、アーム23cがセンサ23bをONさせる。このとき、箔転写用ツール60には第1圧力Pr1が掛かっている。本実施形態では、箔転写用ツール60の下方への移動は、センサ23bがONした時点よりも少し後に停止される。その場合、箔転写用ツール60が熱転写箔82を押圧する圧力は、第1圧力Pr1よりも大きくなる。
【0067】
なお、箔転写用ツール60の下方への移動は、センサ23bがONした時点で停止されてもよい。その場合、箔転写用ツール60が熱転写箔82を押圧する圧力は、第1圧力Pr1に等しくなる。
【0068】
時間T1の間、第1押圧制御部131は、鉛直移動機構30を制御して、箔転写用ツール60を熱転写箔82に押し当て続け、水平移動制御部140は、箔転写用ツール60が第1軌道O1を描くように水平移動機構40を制御する。また、
図9に示すように、時間T1の間、光源62は点灯している。
【0069】
第1画像I1の箔転写において、光吸収フィルム76のうち光源62のレーザー光が照射された部分は、レーザー光を吸収する。それにより、光エネルギーが熱エネルギーに変換される。光吸収フィルム76は、レーザー光を受けて発熱し、その熱が熱転写箔82の接着層に伝導する。これにより接着層が軟化し、接着性を発現する。接着層は、装飾層と被転写物80との表面に付着し、装飾層と被転写物80とを密着させる。その後、箔転写用ツール60が移動して、当該照射部分への光エネルギーの供給が終了すると、接着層は放熱により冷却されて、硬化する。これにより、装飾層と被転写物80の表面とが固着され、当該部分における箔転写が完成する。この作業を水平方向の位置を変えて続けることにより、被転写物80への箔転写が完成する。
【0070】
上記したような箔転写のメカニズムは、レーザー光の照射とともに、箔転写用ツール60が熱転写箔82を直接または間接に押圧し、熱転写箔82が被転写物80に押し付けられることによって成立する。
【0071】
第1軌道O1(時間T1に対応)から第4軌道O4(時間T4に対応)に移行する際、箔転写用ツール60は、第1状態から第2状態に移行される。第1押圧制御部131の第2圧力調整部131bは、箔転写用ツール60を第1状態から第2状態に移行させるときには、少なくとも信号受信部133による押圧検知機構23からの信号の受信が途切れるまで昇降ベース35を上昇させる。ここでは、第2圧力調整部131bは、信号受信部133が押圧検知機構23からの信号が途切れたタイミングから少し後まで箔転写用ツール60を上昇させる。
【0072】
第1状態から第2状態への移行においては、昇降ベース35は、鉛直移動機構30により上方に移動される。この移動により、箔転写用ツール60の下端が熱転写箔82を押圧する力は弱まる。押圧力が第1圧力Pr1を下回ると、アーム23cがセンサ23bのスイッチ部23b1から離間する。それにより、スイッチ部23b1がOFFする。本実施形態では、昇降ベース35の上方への移動は、センサ23bがOFFした時点よりも少し後に停止される。詳しくは、昇降ベース35は、センサ23bがOFFした時点から、距離L1(
図5参照)だけ上昇して停止される。このとき、昇降ベース35は、計算上、箔転写用ツール60が熱転写箔82からちょうど離間しようとする位置に停止される。このとき、箔転写用ツール60の押圧力は、ゼロになる。第2状態は、箔転写用ツール60が熱転写箔82を押圧する圧力がゼロの状態である。ここで言う「ゼロ」には、第2状態における箔転写用ツール60の押圧力が第1状態に比べて十分に小さく、実質的にゼロである場合が含まれる。
【0073】
なお、昇降ベース35の上方への移動は、センサ23bがOFFした時点で停止されてもよい。その場合、第2状態において箔転写用ツール60が熱転写箔82を押圧する圧力は、第1圧力Pr1よりもわずかに小さい圧力となる。また、昇降ベース35は、センサ23bがOFFした位置と箔転写用ツール60の先端が熱転写箔82から離間する位置の中間で停止されてもよい。その場合、第2状態において箔転写用ツール60が熱転写箔82を押圧する圧力は、第1圧力Pr1よりも小さく、ゼロよりも大きい圧力となる。
【0074】
第4時間T4の間、箔転写用ツール60は、第1画像I1と第2画像I2との間の第4軌道O4に沿って移動される。第4軌道O4は、非転写中軌道である。時間T4の間、第1押圧制御部131は、鉛直移動機構30を制御して、箔転写用ツール60を第2状態に維持する。また、水平移動制御部140は、箔転写用ツール60が第4軌道O4を描くように水平移動機構40を制御する。光源62は、
図9に示すように、時間T4の間、消灯している。
【0075】
時間T4の間は、レーザー光は熱転写箔82に照射されず、また、箔転写用ツール60が熱転写箔82に向かって第1圧力Pr1以上の圧力で押圧されていないため、箔転写は行われていない。
【0076】
以下同様にして、第4軌道O4(時間T4に対応)から第2軌道O2(時間T2に対応)に移行する際には、箔転写用ツール60は、第2状態から第1状態に移行される。第2時間T2の間、箔転写用ツール60は、第1状態に維持されつつ第2軌道O2上を移動される。第2軌道O2(時間T2に対応)から第5軌道O5(時間T5に対応)に移行する際には、箔転写用ツール60は、第1状態から第2状態に移行される。時間T5の間、箔転写用ツール60は、第2状態に維持されつつ第5軌道O5上を移動される。第5軌道O5(時間T5に対応)から第3軌道O3(時間T3に対応)に移行する際には、箔転写用ツール60は、第2状態から第1状態に移行される。時間T3の間、箔転写用ツール60は、第1状態に維持されつつ第3軌道O3上を移動される。
【0077】
言い換えれば、第1モードにおいて、箔転写用ツール60は、転写中軌道を移動されているときには、熱転写箔82に接触しつつ熱転写箔82を押圧する状態に保たれており、それにより箔転写が行われる。また、第1モードにおいては、箔転写用ツール60は、非転写中軌道を移動されているときには、熱転写箔82に接触しつつ熱転写箔82を押圧しない状態に保たれており、それにより箔転写を行わずに熱転写箔82上を通過する。
【0078】
このように、第1モードによる箔転写によれば、箔転写用ツール60が非転写中軌道を移動するとき、熱転写箔82が押圧されないので、箔転写がされない。
【0079】
さらに、第1モードによる箔転写によれば、例えば、非転写中軌道を移動するときに箔転写用ツール60を熱転写箔82から完全に離間させる方法よりも生産性を向上させうる。非転写中軌道を移動するときに箔転写用ツール60を熱転写箔82から完全に離間させる方法では、転写中軌道から非転写中軌道に移行する際に箔転写用ツール60を上昇させる動作、および、非転写中軌道から転写中軌道に移行する際に箔転写用ツール60を下降させる動作には、それぞれある程度の時間を要していた。本実施形態の第1モードによる箔転写では、箔転写用ツール60は非転写中軌道を移動する際にも熱転写箔82に接触している。そこで、転写中軌道から非転写中軌道に移行する際に箔転写用ツール60を上昇させる距離、および、非転写中軌道から転写中軌道に移行する際に箔転写用ツール60を下降させる距離が短い。そのため、転写中軌道から非転写中軌道への移行時間、および、非転写中軌道から転写中軌道への移行時間を短くすることができる。その結果、箔転写の生産性を向上させることができる。
【0080】
また、第1モードでは、非転写中軌道を移動される際、箔転写用ツール60は熱転写箔82を押圧しないので、被転写物80に非転写中軌道が跡として残るおそれが小さい。例えば、被転写物80が柔らかい素材の場合、熱転写箔を押圧する圧力が強いと、箔転写用ツール60が非転写中軌道を移動した跡が被転写物80に残る可能性がある。本実施形態の第1モードによる箔転写によれば、箔転写用ツール60は、非転写中軌道を移動中には、被転写物80の押圧を弱めるため、そのような可能性を低減することができる。
【0081】
特に、本実施形態のように、箔転写用ツール60が熱転写箔82を押圧する圧力を実質的にゼロとすることで、箔転写用ツール60が熱転写箔82を押圧した跡が被転写物80に残る可能性をほとんどなくすことができる。
【0082】
本実施形態では、箔転写装置10は、箔転写用ツール60が所定の圧力以上の圧力で熱転写箔82を押下しているかどうかを検知する押圧検知機構23を備え、押圧検知機構23の検知結果に基づいて鉛直移動機構30の動作を制御している。かかる押圧検知機構23および制御によれば、箔転写用ツール60を、確実に第1状態または第2状態に移行させることができる。
【0083】
なお、熱転写箔82に熱量を与えるエネルギー源としては、レーザー光源を好適に利用することができる。レーザー光源は、消灯すれば極めて短時間で熱転写箔82を加熱する効果が失われるため、第2状態において箔転写用ツール60が熱転写箔82に接触していても、接着層が溶融されてしまう虞が少ない。
【0084】
(第2モード)
次に、第2モードについて説明する。
図10は、第2モードが選択された場合において、
図8に示された画像を箔転写するときの箔転写用ツール60に掛かる圧力と、光源62の状態とを示すタイムチャートである。
図10の横軸、縦軸、および第1時間T1~第5時間T5は、
図9と同じである。
【0085】
図10に示すように、第2モードにおいては、箔転写の開始(
図10では、時間T1の開始)から箔転写の終了(
図10では、時間T3の終了)まで、箔転写用ツール60は、熱転写箔82を第1圧力Pr1以上の圧力で押圧している。本実施形態に係る第2押圧制御部132は、モード選択部160で第2モードが選択された場合、箔転写用ツール60を第1状態に保つように設定されている。
【0086】
また、本実施形態に係る光源制御部150は、第2モードにおいても、箔転写用ツール60が転写中軌道を移動されているときには光源62を点灯させ、箔転写用ツール60が非転写中軌道を移動されているときには光源62を消灯させるように設定されている。光源制御部150は、箔転写中のみ光源62を点灯させ、箔転写中以外のタイミングでは光源62を消灯させている。
【0087】
前述したように、箔転写は、レーザー光の照射とともに、箔転写用ツール60が熱転写箔82を押圧し、熱転写箔82が被転写物80に押し付けられることによって行われる。レーザー光の照射が停止されているときには、箔転写は行われない。そこで、第2モードの場合にも、箔転写は、箔転写用ツール60が転写中軌道を移動する際にだけ実施され、非転写中軌道を移動する際には実施されない。
【0088】
第2モードによる箔転写によれば、例えば、被転写物80が柔らかい素材の場合、箔転写用ツール60が熱転写箔82を押圧した跡が被転写物80に残る可能性がある。しかし、第2モードによれば、転写中軌道と非転写中軌道との間の移行の際に、箔転写用ツール60の押圧状態を切り替える必要がなく、その分、箔転写に要する時間を節減することができる。
図9および
図10に示されているように、時間T1の開始から時間T3の終了までの総時間は、
図10の方が
図9よりも少ない。そこで、被転写物80に跡を残さないことよりも生産性を優先する場合には、第2モードを好適に利用することができる。あるいは、第2モードは、例えば、被転写物80が硬く、跡が残りにくい素材の場合などにも好適に利用することができる。
【0089】
このように、本実施形態に係る箔転写装置10によれば、第1モードと第2モードを使い分けることにより、箔転写の品質と生産性とのバランスを取ることができる。
【0090】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上記した実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。例えば、上記した実施形態では、箔転写用ツール60は、押圧検知機構23の検知に基づいて、第1状態と第2状態とに切り替えられていた。しかし、箔転写用ツール60の状態は、例えば、鉛直移動機構30が備えるエンコーダが発するパルスに基づいて切り替えられてもよい。つまり、箔転写用ツール60の鉛直方向の位置に基づいて切り替えられてもよい。また、押圧検知機構23は、上記した構成に限定されない。例えば、押圧検知機構23は、箔転写用ツール60に掛かる圧力を直接測定する圧力センサを備えていてもよい。
【0091】
また、上記した実施形態では、箔転写装置10は、箔転写のモードとして第1モードと第2モードとを選択可能に構成されていたが、そうでなくともよい。例えば、全ての箔転写は、第1モードによって行われるように構成されていてもよい。
【0092】
上記した実施形態では、箔転写用ツール60には光源62が設けられていたが、熱転写箔82にエネルギーを与える部材はレーザー光源に限定されない。熱転写箔82にエネルギーを与える部材は、例えば熱ペン等であってもよい。第1モードによる箔転写の効果は、例えば、熱ペンを有する箔転写用ツールを備えた箔転写装置においても発揮されうる。
【符号の説明】
【0093】
10 箔転写装置
30 鉛直移動機構
40 水平移動機構
60 箔転写用ツール
62 光源
70 保持台
72 保持部材
73 支持部材
75 箔固定用フィルム
80 被転写物
82 熱転写箔
100 制御装置
110 記憶部
121 第1演算部
122 第2演算部
130 鉛直移動制御部
131 第1押圧制御部
131a 第1圧力調整部
131b 第2圧力調整部
132 第2押圧制御部
133 信号受信部
140 水平移動制御部
150 光源制御部(エネルギー制御部)
160 モード選択部