(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】創傷包帯
(51)【国際特許分類】
A61M 27/00 20060101AFI20220322BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
A61M27/00
A61M25/00 610
(21)【出願番号】P 2018520573
(86)(22)【出願日】2016-10-21
(86)【国際出願番号】 GB2016053295
(87)【国際公開番号】W WO2017068364
(87)【国際公開日】2017-04-27
【審査請求日】2019-10-11
(32)【優先日】2015-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508080986
【氏名又は名称】コンバテック リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100183232
【氏名又は名称】山崎 敏行
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・コットン
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-530539(JP,A)
【文献】米国特許第05358492(US,A)
【文献】米国特許第04441215(US,A)
【文献】特開2002-200176(JP,A)
【文献】特開平10-305050(JP,A)
【文献】特表2006-523515(JP,A)
【文献】特開2002-210020(JP,A)
【文献】特表2015-520647(JP,A)
【文献】特開2003-275228(JP,A)
【文献】特表2003-520082(JP,A)
【文献】国際公開第2001/070305(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレナージ管を含む陰圧創傷閉鎖療法包帯であって、
前記ドレナージ管は、
不浸透性シースと、
モノフィラメント糸から編まれるか、または
、モノフィラメント糸を互いに通してジグザグ形に織り合わせて形成されていると共に、
前記不浸透性シースによって包囲された管とを含む。
【請求項2】
前記管は、編まれた管である、請求項1に記載の陰圧創傷閉鎖療法包帯。
【請求項3】
前記モノフィラメント糸は、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリブチレンテレフタレートモノフィラメント糸である、請求項1または2に記載の陰圧創傷閉鎖療法包帯。
【請求項4】
前記編まれた、または
、前記形成された管は、4~10mmまたは5~8mmの外径を有する、請求項1~3のいずれかに記載の陰圧創傷閉鎖療法包帯。
【請求項5】
前記不浸透性シースは、不浸透性材料の1つ以上のシートを含む、請求項1~4のいずれかに記載の陰圧創傷閉鎖療法包帯。
【請求項6】
前記編まれた、または
、前記形成された管は、不浸透性材料の2つのシート間に挟持される、請求項5に記載の陰圧創傷閉鎖療法包帯。
【請求項7】
前記不浸透性シースは、ヒートシールによって前記編まれた、または
、前記形成された管に接着される、請求項1~6のいずれかに記載の陰圧創傷閉鎖療法包帯。
【請求項8】
前記不浸透性シースは、ポリウレタンシースである、請求項1~7のいずれかに記載の陰圧創傷閉鎖療法包帯。
【請求項9】
前記ドレナージ管の一端は、前記ドレナージ管が前記包帯に取り付けられ得る一体型タブを形成する、請求項1~8のいずれかに記載の陰圧創傷閉鎖療法包帯。
【請求項10】
前記ドレナージ管の一端は、陰圧源への接続のために適合されている、請求項1~9のいずれかに記載の陰圧創傷閉鎖療法包帯。
【請求項11】
陰圧創傷閉鎖療法で使用するため
の管であって、
モノフィラメント糸から編まれるか、または、
モノフィラメント糸を互いに通してジグザグ形に織り合わせて形成されていると共に、不浸透性シースによって包囲されている、管。
【請求項12】
前記管は、編まれている、請求項11に記載の管。
【請求項13】
前記モノフィラメント糸は、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリブチレンテレフタレートモノフィラメント糸である、請求項11または12に記載の管。
【請求項14】
前記編まれた、または
、前記形成された管は、4~10mmまたは5~8mmの外径を有する、請求項11~13のいずれかに記載の管。
【請求項15】
前記不浸透性シースは、不浸透性材料の1つ以上のシートを含む、請求項11~14のいずれかに記載の管。
【請求項16】
前記編まれた、または
、前記形成された管は、不浸透性材料の2つのシート間に挟持される、請求項15に記載の管。
【請求項17】
前記不浸透性シースは、ヒートシールによって前記編まれた、または
、前記形成された管に接着される、請求項11~16のいずれかに記載の管。
【請求項18】
前記不浸透性シースは、ポリウレタンシースである、請求項11~17のいずれかに記載の管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、特に陰圧創傷閉鎖療法中の使用のためのドレナージ管を含む創傷包帯に関し、より具体的には、そのような包帯または他の用途で使用するのに好適なドレナージ管に関する。
【背景技術】
【0002】
陰圧創傷閉鎖療法(NPWT)は、周囲の圧力と比べて低減された圧力(一般的に、「陰圧」と称される)を創傷に印加することを伴い、それは、創傷の機械的収縮及び創傷液の除去をもたらし、したがって、肉芽組織の形成を促進し、創傷閉鎖を速める。技術は、慢性下腿潰瘍及び大きい開放創などの回復が遅い創傷の治療に特に有効である。ドレナージ管が横断する密封ドレープからなる包帯は、創傷開口に適用され、陰圧が確立され得るシールを形成する。ドレナージ管は、創傷液が引き抜かれることを可能にする陰圧源に接続される。
【0003】
ドレナージ管は、従来、単純なプラスチック管である。そのような管は、比較的非可撓性であり、キンクから十分に回復せず、また、患者が管の上に横たわっている場合に問題を引き起こす可能性があり、例えば、管の上に横たわることは、褥瘡をもたらす可能性がある。
【0004】
本発明は、陰圧創傷閉鎖療法包帯で使用するのに好適な新しい形態のドレナージ管を提供し、それは、従来技術の上記及び/または他の制限を克服するか、または実質的に軽減する。
【0005】
本発明の第1の態様において、ドレナージ管を含む陰圧創傷閉鎖療法包帯が提供され、ドレナージ管は、モノフィラメント糸から編まれるか、または組まれ、不浸透性シースによって包囲された管を含む。
【0006】
管を形成するための編まれた、または組まれたモノフィラメントの使用は、得られる管が可撓性であるため有利である。それはまた、弾性であり、したがって非常に容易に跳ね返って元の形に戻るが、圧力がそれに印加されたときに平らにもなる。これは、患者が誤って管上に横たわった場合、患者が褥瘡を発症する可能性がより低いことを意味する。加えて、モノフィラメント糸は、ドレナージ管または包帯内に流され得るいかなる繊維も含まない。
【0007】
モノフィラメント糸とは、短繊維、通常は押出成形されたプラスチック材料から作製された糸を意味する。
【0008】
編まれた管とは、円形編みプロセスによって形成された材料の管を意味し、糸の複数のループが組み合わされる。
【0009】
組まれた管とは、互いを通してジグザグ形で多くの糸を織り合わせて、管を形成することによって形成された材料の管を意味する。
【0010】
好ましくは、管は、モノフィラメント糸から編まれる。そのような管は、特に弾性であり、変形された後に非常に容易に跳ね返ってその管状の形状に戻る。
【0011】
モノフィラメント糸は、そのような糸を製作するために従来使用される任意の材料を有してもよい。例としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリブチレンテレフタレートが挙げられる。
【0012】
好ましくは、管は、4~10mm、より好ましくは、5~8mm、及び最も好ましくは、約6mmの外径を有する。そのような直径の管は、詰まりなしでドレナージ管として作用するために好適なサイズを有するが、弾性的に変形可能な状態のままである。
【0013】
不浸透性シースは、任意の好適な形態を有してもよい。例えば、シースは、編まれた、または組まれた管の外部に適用される不浸透性コーティングであってもよい。しかしながら、より好ましくは、シースは、編まれた、または組まれた管を包囲する不浸透性材料の1つ以上のシートから形成される。例えば、不浸透性材料は、管がシート間で保持されるように、両側で一緒に密閉される不浸透性材料の2つのシートから形成されてもよい。
【0014】
シートは、管の両側で管及び互いの両方に、あるいは互いにのみ接着されてもよい。好ましくは、シートは、管及び互いの両方に接着される。この構成は、シート間の定位置で管を保持し、シートとは無関係の管の動きを防止する。
【0015】
不浸透性材料は、任意の好適な方法によってそれ自体及び管に接着されてもよいが、好ましくは、不浸透性材料は、管及びそれ自体にヒートシールされる。ヒートシールは、創傷包帯を汚染し得る接着剤などのいかなる追加の構成成分も導入されないため、有利である。
【0016】
不浸透性材料は、任意の好適な材料であってもよいが、好ましくは、不浸透性材料は、プラスチック材料のシート、より好ましくは、不浸透性材料は、ポリウレタンである。
【0017】
概して、編まれた、または組まれた管の一端は、陰圧療法創傷包帯の本体に接続され、もう一端は、コネクタに取り付けられ、それによって、包帯は、減圧源に連結されてもよい。
【0018】
管が包帯の本体に接続された時点で、管は、包帯の閉鎖支持層の開口部に隣接して終端してもよい。不浸透性シースが管を包囲する不浸透性材料の1つ以上のシートを含む場合、それらのシートのうちの1つ以上は、管の端部を覆うタブへと形成され、包帯の支持層へ結合されてもよい。タブは、任意の好適な形状であってもよいが、好ましくは、タブは、円形である。このようにしてタブを形成することによって、大きい表面積が提供され、それによって、管が包帯に取り付けられ得る。
【0019】
編まれた、または組まれた管の開放構造は、管の末端部分が包帯の支持層の開口部にわたって位置付けられた場合、管の材料を通して、使用中に包帯に減圧が印加され得ることを意味する。創傷滲出液は、管の材料を通過し、ドレナージ管を通って引き抜かれてもよい。しかしながら、編まれた、または組まれた材料はまた、フィルタとして作用し、管内の妨害を引き起こし得る材料の比較的大きい片が創傷包帯から管内に引き込まれ得る程度を防止または低減してもよい。
【0020】
ドレナージ管のもう一端は、陰圧源への接続のために適合される。好適な接続は、編まれた、または組まれた管の端部に挿入される、例えば、シリコーンまたはポリ塩化ビニルのプラスチック管を備えた従来のコネクタによって実現されてもよい。この場合もやはり、編まれた、または組まれた管を包囲する不浸透性材料のシート(複数可)は、コネクタのプラスチック管にも延在及び包囲して、コネクタと編まれた、または組まれた管との間の気密シールを形成してもよい。
【0021】
創傷包帯の本体は、概して、従来型であり、陰圧創傷閉鎖療法で使用するための他の創傷包と同様の形態を有してもよい。例えば、包帯は、創傷パッキング要素と吸収要素とを含んで、創傷からの滲出液の除去を補助し、大きい創傷が破壊されることを予防してもよい。上記の通り、創傷包帯は、陰圧(減圧)が包帯とそれが適用される創傷との間に確立され得るように、通常、空気及び液体に対して不浸透性である支持層を含む。しかしながら、支持層が水蒸気の透過を可能にするために、低い程度の浸透性を有してもよく、かつ好ましくは有することが理解されるべきである。典型的には、支持層は、例えば、ポリウレタンの細孔性プラスチック材料のシートである。包帯はまた、概して、患者の皮膚に包帯を固定して、包帯の下で減圧が確立されることを可能にする気密シールを形成するために、接着剤を有する創傷接触層または縁を有する。接着剤は、最も好ましくは、非粘着性または低粘着性接着剤、最も好ましくは、軟質シリコーンゲルである。
【0022】
陰圧創傷閉鎖療法包帯でのその使用は別として、上記の形態のドレナージ管は、可撓性管が必要とされる、特に、例えば、患者が管の上に横たわった場合に管が容易に折り畳み可能であるべきだが、それにもかかわらず、変形後にその通常の構成に戻るべきであることが要件である、他の医療デバイスに応用され得る。したがって、本発明の第2の態様において、医療用途で使用するための編まれた、または組まれた管が提供され、管は、モノフィラメント糸から編まれるか、または組まれ、不浸透性シースによって包囲されている。
【0023】
管は、例えば、胸腔ドレーンなどの外科用ドレーンとして、またはその一部として、任意の好適な医療用途において有用であり得る。
【0024】
編まれた、または組まれた管が、本発明の第1の態様の陰圧創傷包帯のドレナージ管に関して上記で考察される特徴のうちのいずれかを有してもよいことが理解されるであろう。
【0025】
本発明の第1の態様に従ったドレナージ管を含む陰圧創傷閉鎖療法包帯は、創傷を治療するために使用され得る。したがって、本発明の第3の態様によると、(a)本発明の第1の態様に従った陰圧創傷閉鎖療法包帯を創傷に適用するステップと、(b)ドレナージ管を介して、減圧を包帯に印加するステップと、を含む、創傷を治療する方法が提供される。
【0026】
陰圧創傷包帯が、本発明の第1の態様に関して上記で考察される特徴のうちのいずれかを有してもよいことが理解されるであろう。
【0027】
本発明の一実施形態が、ここで、添付の図面を参照して、単に例示目的でより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】
図1の線II-IIに沿った、
図1の包帯の一部を形成するドレナージ管の断面図である。
【0029】
最初に
図1を参照すると、本発明に従った創傷包帯は、略矩形の包帯本体1と、ドレナージ管12とを含む。
【0030】
包帯本体1は、包帯本体1の頂部(すなわち、非皮膚対向)表面を構成する支持層10と、包帯本体の下面を構成し、そのため
図1では見えず、かつ使用前に、剥離ライナー(同様に見えない)によって被覆される、接着剤皮膚接触層と、支持層と皮膚接触層との間に位置する吸収本体11とを含む。ドレナージ管12のうちの一端は、ドレナージ管12が包帯本体1の内部と、特に吸収本体11と流体連通しているように、支持層10の開口部13に隣接する点で支持層10に取り付けられる。
【0031】
ドレナージ管12は、ポリウレタンフィルムの2つのシート15a、15b間で密閉された編まれた管14から形成される。編まれた管14は、好適な合成ポリマー、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリブチレンテレフタレートのモノフィラメントから編まれる。編まれた管14は、約6mmの外径を有する。ポリウレタンフィルムのシート15a、15bは、編まれた管14がシート15a、15bによって包囲されるように、編まれた管14の両側で編まれた管14の長さに沿って互いにヒートシールされる(
図2を参照されたい)。シート15a、15bは、創傷包帯に接続された編まれた管14の端部を超えて延在し、編まれた管14の直径よりも有意に大きい直径を有する一体型円形タブ16内のこの端部で終端する。この円形タブ16は、好適な接着剤を使用して支持層10に接着され、編まれた管14及び支持層10の開口部13の周囲で気密シールを形成する。強化材料の環17は、支持層10の開口部13の周囲で支持層10に取り付けられる。
【0032】
包帯本体1に遠位のドレナージ管12の端部は、従来のねじ込みコネクタ18を介した減圧源への接続のために適合される。短い長さの管19は、コネクタ18から編まれた管14内へと延在し、シート15a、15b間で密閉されて、気密接続を形成する。
【0033】
使用中、創傷包帯1は、滲出している創傷にわたって配置され、ドレナージ管12は、減圧源に接続される。滲出物は、創傷から包帯に吸収され、管を通して吸い出される。編まれた管14が可撓性かつ弾性であるため、それは、キンクを形成せず、その元の形状に容易に戻ることができる。管14がまた軟質であるため、患者がその上に横たわった場合に快適であり、褥瘡を引き起こさない。