(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/63 20060101AFI20220322BHJP
B01J 27/053 20060101ALI20220322BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220322BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20220322BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01J27/053 A
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
(21)【出願番号】P 2018522488
(86)(22)【出願日】2017-06-05
(86)【国際出願番号】 JP2017020879
(87)【国際公開番号】W WO2017213105
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2020-05-01
(31)【優先権主張番号】P 2016113471
(32)【優先日】2016-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】小野塚 敬
(72)【発明者】
【氏名】村上 恭介
(72)【発明者】
【氏名】滝 健一
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-183319(JP,A)
【文献】特開2009-011937(JP,A)
【文献】特開平10-296085(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0219906(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0104491(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/73
53/86-53/90
53/94
53/96
B01J 21/00-38/74
F01N 3/00
3/02
3/04-3/38
9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路内に配置され、該内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒であって、
基材と、該基材の表面に形成された触媒コート層とを備え、
前記触媒コート層は、前記基材上に設けられた下層と、該下層上に設けられた中層と、該中層上に設けられた上層とを有する積層構造に形成されており、
前記上層は、RhとCe含有酸化物とを含み、
前記下層は、PdとCe含有酸化物とを含み、
前記中層は、Pdを含み、かつ、Ce含有酸化物を含まないCeレス層であり、
前記上層におけるCeの含有量Aに対する前記下層におけるCeの含有量Bの比(B/A)が、2≦(B/A)であ
り、
前記中層に配置されたPdに対する前記下層に配置されたPdの質量比(下層/中層)が0.01~0.1の範囲にある、排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記比(B/A)が、3≦(B/A)≦10である、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記上層におけるCeの含有量Aと、前記下層におけるCeの含有量Bとの合計が、前記基材の体積1L当たり、CeO
2換算で100g/L以下である、請求項1または2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記上層におけるCeの含有量Aが、前記基材の体積1L当たり、CeO
2換算で3g/L~30g/Lである、請求項1~3の何れか一つに記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
前記下層におけるCeの含有量Bが、前記基材の体積1L当たり、CeO
2換算で40g/L~70g/Lである、請求項1~4の何れか一つに記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
前記Ce含有酸化物は、セリア-ジルコニア複合酸化物である、請求項1~5の何れか一つに記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒に関する。詳しくは、基材と該基材の表面に形成された触媒コート層とを備える排ガス浄化用触媒に関する。
なお、本国際出願は2016年6月7日に出願された日本国特許出願第2016-113471号に基づく優先権を主張しており、その出願の全内容は本明細書中に参照として組み入れられている。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジン等の内燃機関から排出される排ガスを浄化するために、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、及びRh(ロジウム)の貴金属のうち少なくとも一種を含む三元触媒がよく用いられている。かかる三元触媒の一つの典型的な構成では、高耐熱性セラミックス基材の表面にアルミナからなる触媒コート層を形成し、この触媒コート層にPt、PdおよびRhの貴金属のうちの一種または二種以上を担持させている。Pt、PdおよびRhを併用することによって、排ガス中の有害成分を一度に効率よく浄化することができる。
【0003】
このような三元触媒を用いて効率的に排ガス中の成分を浄化するためには、エンジンに供給される空気とガソリンの混合比率である空燃比が理論空燃比(ストイキ)近傍であることが望ましい。従来、触媒が有効に働くことができる空燃比の雰囲気変動を緩和する目的で、上記貴金属の担体として酸素吸蔵能(OSC:Oxygen Storage Capacity)を有するCe含有酸化物(例えばセリア‐ジルコニア複合酸化物)を用いることが広く行われている(例えば特許文献1~3)。Ce含有酸化物は、排ガスの空燃比がリーンであるとき(すなわち酸素過剰側の雰囲気)には排ガス中の酸素を吸蔵し、排ガスの空燃比がリッチであるとき(すなわち燃料過剰側の雰囲気)には吸蔵されている酸素を放出するという働きをする。これにより、排ガス中の酸素濃度が変動したときでも安定した触媒性能が得られるようになり、触媒の浄化性能が向上する。
【0004】
また、近年では排ガス浄化用触媒の性能をさらに向上させるために、貴金属触媒の全てを一つの担体層に担持させるのではなく、触媒コート層を少なくとも上下二層を有する積層構造に形成し、一方の層にPdを、他方の層にRhをそれぞれ分離して担持させた触媒が開発されている。例えば、特許文献1には、上層、中間層、下層の3層からなる触媒コート層を有する排ガス浄化用触媒において、下層および中間層にPdを含有し、上層にRhを含有した排ガス浄化用触媒が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2005-506900号公報
【文献】特開2003-112049号公報
【文献】特開2011-183319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般に、エンジン始動直後など排ガス温度が未だ低い場合、排ガス浄化用触媒は十分に暖機されていないため触媒の浄化性能が低下するという欠点がある。特に低温の排ガス中には燃料の未燃物質であるHC(Cold HC)が多く含まれているため、エンジン始動直後の低温状態において良好なCold HC浄化性能を発揮し得る排ガス浄化用触媒が求められている。また、始動後しばらくして触媒の温度が十分に上昇した場合に、さらにエンジンに高負荷がかかっている状態では、エンジンからNOx(Hot NOx)が多く排出される傾向がある。そのため、高負荷運転時において良好なHot NOx浄化性能を発揮し得る排ガス浄化用触媒が求められている。つまり、Cold HC浄化性能とHot NOx浄化性能との両立が高いレベルで実現され得る排ガス浄化用触媒が望まれている。
【0007】
本発明は、かかる事案に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、積層構造タイプの触媒コート層を備えた排ガス浄化用触媒において、Cold HC浄化性能とHot NOx浄化性能との両立が高いレベルで実現され得る排ガス浄化用触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、Pdを下層に配置し、Rhを上層に配置した積層構造タイプの触媒コート層を備えた排ガス浄化用触媒において、上層と下層との間にCe含有酸化物を含まないCeレス層(中層)を設けることにより、Cold HC浄化性能を向上させることに思い到り、さらに上層におけるCeの含有量と下層におけるCeの含有量との比を適切に規定することによって、Cold HC浄化性能とHot NOx浄化性能との両立が高いレベルで実現され得ることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明によって提供される排ガス浄化用触媒は、内燃機関の排気通路内に配置され、排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒であり、基材と、該基材の表面に形成された触媒コート層とを備える。前記触媒コート層は、前記基材上に設けられた下層と、該下層上に設けられた中層と、該中層上に設けられた上層とを有する積層構造に形成されている。前記上層は、RhとCe含有酸化物とを含む。前記下層は、PdとCe含有酸化物とを含む。前記中層は、Pdを含み、かつ、Ce含有酸化物を含まないCeレス層である。そして、前記上層におけるセリウムの含有量Aに対する前記下層におけるセリウムの含有量Bの比(B/A)が、2≦(B/A)である。
【0010】
このように、Rhを配置した上層とPdを配置した下層との間にCeレス層を設けるとともに、特定の含有量比となるように上層と下層とにCe含有酸化物を配置することにより、Hot NOx浄化性能とCold HC浄化性能とがバランスよく向上した、最適な排ガス浄化用触媒が実現され得る。
【0011】
ここに開示される排ガス浄化用触媒の好ましい一態様では、前記比(B/A)が、3≦(B/A)≦10である。このようなCeの含有量比(B/A)の範囲内であると、Hot NOx浄化性能とCold HC浄化性能との両立がより好適に発揮され得る。
【0012】
ここに開示される排ガス浄化用触媒の好ましい一態様では、前記上層におけるセリウムの含有量Aと、前記下層におけるセリウムの含有量Bとの合計が、前記基材の体積1L当たり、CeO2換算で100g/L以下である。このようなCeの含有量の範囲内であると、上述した効果がより良く発揮され得る。
【0013】
ここに開示される排ガス浄化用触媒の好ましい一態様では、前記上層におけるセリウムの含有量Aが、前記基材の体積1L当たり、CeO2換算で3g/L~30g/Lである。このような上層におけるCeの含有量Aの範囲内であると、Hot NOx浄化性能とCold HC浄化性能との両立がより高いレベルで実現され得る。
【0014】
ここに開示される排ガス浄化用触媒の好ましい一態様では、前記下層におけるセリウムの含有量Bが、前記基材の体積1L当たり、CeO2換算で40g/L~70g/Lである。このような下層におけるセリウムの含有量Bの範囲内であると、Hot NOx浄化性能とCold HC浄化性能との両立がより高いレベルで実現され得る。
【0015】
ここに開示される排ガス浄化用触媒の好ましい一態様では、前記Ce含有酸化物は、セリア‐ジルコニア複合酸化物である。セリア‐ジルコニア複合酸化物は高い酸素吸蔵放出能(雰囲気緩和能)を有するため、本発明の目的に適したCe含有酸化物として好適に使用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る排ガス浄化用触媒の概略構成説明図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る排ガス浄化用触媒におけるリブ壁部分の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば多孔質担体の組成など)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば排ガス浄化用触媒の配置に関するような一般的事項)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の説明において、空燃比がリーン、ストイキおよびリッチの排ガスとは、それぞれリーン、ストイキおよびリッチの混合ガスを内燃機関にて燃焼させた際に、該内燃機関から排出される排ガスの空燃比と同等の空燃比を有する排ガスもしくは該排ガスに炭化水素を後供給した排ガスを指すものである。
【0018】
ここで開示される排ガス浄化用触媒は、基材と、該基材の表面に形成された触媒コート層とからなり、触媒コート層は積層構造に形成されている。
【0019】
図1は排ガス浄化用触媒の一典型例の模式図である。本実施形態に係る排ガス浄化用触媒100は、複数の規則的に配列されたセル12と、該セル12を構成するリブ壁14を有するハニカム基材10を備える。
【0020】
ここで開示される排ガス浄化用触媒100を構成する上記基材10としては、従来のこの種の用途に用いられる種々の素材及び形態のものが使用可能である。例えば、コージェライト、炭化ケイ素(SiC)等のセラミックスまたは合金(ステンレス等)から形成されたハニカム構造を備えるハニカム基材などを好適に採用することができる。一例として外形が円筒形状であるハニカム基材であって、その筒軸方向に排ガス通路としての貫通孔(セル)が設けられ、各セルを仕切る隔壁(リブ壁)に排ガスが接触可能となっているものが挙げられる。基材の形状はハニカム形状の他にフォーム形状、ペレット形状などとすることができる。また基材全体の外形については、円筒形に代えて、楕円筒形、多角筒形を採用してもよい。なお、本明細書において、基材10の体積(容積)とは、基材の純容積に加えて内部の空隙(セル)容積を含む(即ち当該空隙(セル)内に形成された触媒コート層を含む)嵩容積をいう。
【0021】
<触媒コート層>
図2は、
図1のハニカム基材10におけるリブ壁14の表面部分の構成を模式的に示す図である。リブ壁14は、基材10と、その表面に形成された三層構造の触媒コート層30を備えている。かかる三層構造の触媒コート層30は、基材10上に設けられた下層32と、該下層32上に設けられた中層34と、該中層34上に設けられた上層36とを有する積層構造に形成されている。
【0022】
ここに開示される技術では、上層36は、RhとCe含有酸化物とを含む。下層32は、PdとCe含有酸化物(セリウムを含む酸化物)とを含む。中層34は、Pdを含み、かつ、Ce含有酸化物を含まないCeレス層である。そして、上層36におけるCeの含有量Aに対する下層32におけるCeの含有量Bの比(B/A)が、2≦(B/A)である。このことによって、Cold HC浄化性能とHot NOx浄化性能との両立が高いレベルで実現され得る。このような効果が得られる理由としては、特に限定的に解釈されるものではないが、例えば以下のように考えられる。すなわち、Rhを配置した上層36とPdを配置した下層32との間にPdを含むCeレス層(中層)34を設けた排ガス浄化用触媒では、中層34においてPdとCe含有酸化物とが共存していないため、HCの選択反応性が高まる。そのため、エンジン始動直後の低温状態においても高いHC浄化性能が発現し、排ガス中のCold HCを効率良く浄化することができる。その一方で、下層32と上層36との間にCeレス層34を設けると、その背反として酸素吸蔵放出能(雰囲気緩和能)が不十分となり、高負荷時におけるHot NOx浄化性能が低下傾向になり得る。これに対し、上記特定の含有量比となるように上層36と下層32にCe含有酸化物を配置した排ガス浄化用触媒では、高負荷時に中層34が上層36および下層32により効果的に雰囲気緩和され、Hot NOxのエミッションが抑制される。このことがHot NOx浄化性能およびCold HC浄化性能の向上に寄与するものと考えられる。
【0023】
上層36および下層32の双方にCe含有酸化物を含有させることによる効果をより良く発揮させる観点から、上層36におけるCeの含有量Aに対する下層32におけるCeの含有量Bの比(B/A)は、2以上にすることが適当であり、好ましくは2.5以上、より好ましくは3以上である。上記Ceの含有量比の上限は特に限定されないが、触媒としての機能をより良く発揮させる等の観点から、概ね15以下にすることが適当であり、好ましくは12以下、より好ましくは10以下(例えば8以下)である。このような含有量比となるように上層および下層の双方にCe含有酸化物を含ませることにより、Hot NOx浄化率向上効果がより高レベルで実現され得る。ここに開示される技術は、上層36に含まれるCeに対する下層32に含まれるCeの含有量比が3以上10以下である態様で好ましく実施され得る。
【0024】
好ましい一態様では、上層36におけるCeの含有量Aと、下層32におけるCeの含有量Bとの合計が、基材の体積1L当たり、CeO2換算で30g/L以上である。Hot NOx浄化率向上等の観点から、上記含有量の合計(すなわちA+B)は、好ましくは40g/L以上、より好ましくは45g/L以上、さらに好ましくは50g/L以上、特に好ましくは55g/L以上である。上記含有量の合計(A+B)の上限は特に限定されないが、例えば100g/L以下とすることができ、好ましくは90g/L以下、より好ましくは80g/L以下である。上記含有量の合計(A+B)は、例えば75g/L以下であってもよく、70g/L以下であってもよい。ここに開示される技術は、例えば上層36におけるCeの含有量Aと下層32におけるCeの含有量Bとの合計がCeO2換算で30g/L以上100g/L以下である態様で好ましく実施され得る。
【0025】
<下層>
ここで開示される下層32は、Ce含有酸化物を含むCe含有層であって、かつ、貴金属触媒としてPdを含んでいる。Ce含有酸化物としては、CeO2(セリア)や該セリアを含むCeO2含有複合酸化物などが挙げられる。中でも、セリア-ジルコニア複合酸化物(CeO2-ZrO2複合酸化物)の使用が好ましい。上層36に加えて下層32にCe含有酸化物を含有させることにより、深いリーン雰囲気時において酸素吸蔵放出能が適切に発揮され(例えば上層36で吸収しきれなかった酸素が下層32で吸収されることで、中層34におけるPdの酸素被毒が抑制され)、NOxエミッションを効果的に抑制することができる。
【0026】
下層32におけるCeの含有量Bは、上層36におけるCeの含有量Aとの間で前記関係を満たす限りにおいて特に制限はないが、NOxのエミッションを抑制する等の観点から、例えば、基材の体積1リットル当たり、CeO2換算で20g/L以上、好ましくは30g/L以上、より好ましくは40g/L以上、さらに好ましくは45g/L以上、特に好ましくは50g/L以上である。また、下層32におけるCeの含有量Bは、概ね90g/L以下にすることが適当であり、好ましくは80g/L以下、より好ましくは70g/L以下、さらに好ましくは60g/L以下、特に好ましくは55g/L以下である。ここに開示される技術は、下層32におけるCeの含有量Bが45g/L~55g/Lである態様で好ましく実施され得る。
【0027】
下層32におけるCe含有酸化物がセリア-ジルコニア複合酸化物の場合、セリア-ジルコニア複合酸化物におけるCeO2とZrO2との混合割合は、CeO2:ZrO2=20:80~60:40、好ましくは30:70~40:60であるとよい。CeO2の混合割合が上記範囲内であると、Pdを含む下層32において高い触媒活性とOSC(酸素吸蔵放出能)を実現することができる。下層32におけるセリア-ジルコニア複合酸化物の量は特に制限されないが、Hot NOxのエミッションを抑制する等の観点から、例えば、基材の体積1リットル当たり、80g/L~200g/L、好ましくは100g/L~180g/L、より好ましくは110g/L~150g/Lである。
【0028】
下層32は、Ce含有酸化物以外の金属酸化物(以下、「非Ce含有酸化物」ともいう。)が混在するものであってもよい。そのような非Ce含有酸化物としては、酸化アルミニウム(アルミナ:Al2O3)、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO2)、これらの固溶体等が挙げられる。中でもAl2O3の使用が好ましい。Al2O3とCe含有酸化物とは、質量混合比(Al2O3:Ce含有酸化物)が5:95~50:50(典型的には10:90~30:70)の範囲内で混合することが好ましい。下層32における非Ce含有酸化物の含有量は特に制限されないが、例えば、基材の体積1リットル当たり、5g/L~80g/L(好ましくは10g/L~40g/L、典型的には15g/L~30g/L)であることが好ましい。
【0029】
ここで開示される下層32におけるCe含有酸化物および非Ce含有酸化物には、バリウム(Ba)が添加されていてもよい。上記Baの添加量が、硫酸バリウムに換算して、Ce含有酸化物および非Ce含有酸化物の合計100質量部に対して0.1質量部~10質量部を満足するものが好ましく、0.5質量部~5質量部を満足するものがより好ましく、1質量部~3質量部を満足するものがさらに好ましい。下層32におけるバリウムの含有量は特に制限されないが、例えば、基材の体積1リットル当たり、0.1g/L~15g/L(好ましくは0.5g/L~5g/L、典型的には1g/L~3g/L)であることが好ましい。
【0030】
下層32には、副成分として他の材料(典型的には無機酸化物)が添加されていてもよい。該触媒層に添加し得る物質としては、例えば、ランタン(La)、イットリウム(Y)等の希土類元素、カルシウムなどのアルカリ土類元素、その他遷移金属元素などが挙げられる。上記の中でも、ランタン、イットリウム等の希土類元素は、触媒機能を阻害せずに高温における比表面積を向上できるため、安定化剤として好適に用いられる。また、これら副成分の含有割合は、Ce含有酸化物100質量部に対して20質量部以下(好ましくは10質量部以下)に設定することが好ましい。
【0031】
ここに開示される下層32に含有されるPdは、上述したCe含有酸化物および非Ce含有酸化物の少なくとも一方に担持されている。Pdの担持量は特に制限されないが、下層32に含まれるCe含有酸化物および非Ce含有酸化物の合計質量100質量部に対して0.01質量部~0.5質量部の範囲(例えば0.03質量部~0.3質量部、好ましくは0.05質量部~0.1質量部)とすることが適当である。下層32におけるPdの含有量は特に制限されないが、例えば、基材の体積1リットル当たり、0.05g/L~2g/L、典型的には0.1g/L~2g/L(好ましくは0.1g/L~0.5g/L、典型的には0.1g/L~0.3g/L)であることが好ましい。
【0032】
ここで開示される下層32は、Pdの性能を損なわない程度に他の貴金属触媒を含んでいてもよい。Pd以外の貴金属触媒として、例えば、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)等が挙げられる。
【0033】
下層32の成形量(コート量)は特に制限されないが、例えば、基材の体積1リットル当たり、80g/L~300g/L(典型的には100g/L~250g/L、例えば120g/L~200g/L)程度であることが好ましい。下層32の成形量が少なすぎる場合は、触媒コート層としての機能が弱くなる虞がある。また、下層32の成形量が多すぎると、ハニカム基材10のセル内を排気ガスが通過する際の圧力損失の上昇を招く虞がある。
【0034】
<中層>
ここで開示される中層34は、貴金属触媒としてPdと、該Pdを担持する担体とを含んでいる。この中層34は、Ce含有酸化物を含まないCeレス層である。このようにPdを配置した下層32とRhを配置した上層36との中間にCe含有酸化物を含まないCeレス層34を設けることにより、HCの選択反応性が高まる。また、Pdを含む中層をCeレス化することで、リッチ時にPdを介して酸素が放出されない。そのため、再始動時(例えばフューエルカットやアイドリングストップ直後)におけるPdのメタル化が促進され、NOx浄化性能が向上する。
【0035】
ここで開示される中層34のPdを担持する担体は、非Ce含有酸化物であり得る。かかる非Ce含有酸化物としては、多孔質であって、かつ、耐熱性に優れた金属酸化物が好ましく用いられる。例えば、酸化アルミニウム(アルミナ:Al2O3)、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO2)、これらの固溶体等が挙げられる。中でも、耐久性(特に耐熱性)の観点から、Al2O3の使用が好ましい。中層34のPdを非Ce含有酸化物のみに担持させ、CeO2等の塩基性の高い元素に近接させないことにより、Pdのシンタリングが抑制され得る。また、中層34のPdを非Ce含有酸化物に担持させることにより、硫黄(S)の吸着が減少し、S被毒が抑制され得る。中層34における担体の含有量は特に制限されないが、例えば、基材の体積1リットル当たり、10g/L~100g/L(例えば20g/L~80g/L、好ましくは30g/L~60g/L、典型的には35g/L~50g/L)であることが好ましい。
【0036】
ここで開示される中層34のPdを担持する担体には、バリウム(Ba)が添加されていてもよい。中層34の担体にBaを添加することにより、PdのHC被毒が抑えられ、触媒活性(特に低温活性)の向上が図られる。また、担体に対するPdの分散性が向上し、高温におけるPdの粒成長にともなうシンタリングがより良く抑えられる。ここで開示される担体としては、上記Baの添加量が、硫酸バリウムに換算して、担体100質量部に対して20質量部~80質量部を満足するものが好ましく、30質量部~60質量部を満足するものがより好ましく、40質量部~55質量部を満足するものがさらに好ましい。Baの含有量を上記範囲内とすることにより、エンジン始動直後でも高い触媒活性を発揮することができる。中層34におけるバリウムの含有量は特に制限されないが、例えば、基材の体積1リットル当たり、5g/L~50g/L(好ましくは10g/L~30g/L、典型的には15g/L~25g/L)であることが好ましい。
【0037】
中層34には、副成分として他の材料(典型的には無機酸化物)が添加されていてもよい。該触媒層に添加し得る物質としては、例えば、ランタン(La)、イットリウム(Y)等の希土類元素、カルシウムなどのアルカリ土類元素、その他遷移金属元素などが挙げられる。上記の中でも、ランタン、イットリウム等の希土類元素は、触媒機能を阻害せずに高温における比表面積を向上できるため、安定化剤として好適に用いられる。また、これら副成分の含有割合は、非Ce含有酸化物100質量部に対して20質量部以下(好ましくは10質量部以下)に設定することが好ましい。
【0038】
ここに開示される中層34に含有されるPdは、上述した非Ce含有酸化物からなる担体に担持されている。Pdの担持量は特に制限されないが、中層34に含まれる担体100質量部に対して0.5質量部~20質量部の範囲(例えば1質量部~10質量部、好ましくは3質量部~6質量部)とすることが適当である。これより少ないと十分な触媒活性が得られず、これより多く担持させても効果が飽和するとともにコスト面で不利である。中層34におけるPdの含有量は特に制限されないが、例えば、基材の体積1リットル当たり、0.1g/L~10g/L(好ましくは0.5g/L~5g/L、典型的には1g/L~3g/L)であることが好ましい。中層34の担体にPdを担持させる方法としては特に制限されない。例えば、非Ce含有酸化物の粉末を、パラジウム塩(例えば硝酸塩)やパラジウム錯体(例えば、テトラアンミン錯体)を含有する水溶液に含浸させた後、乾燥させ、焼成することにより調製することができる。
【0039】
好ましい一態様では、中層34に配置されたPdに対する下層32に配置されたPdの質量比(下層/中層)が、0.5以下(例えば0.005~0.5)である。Pdの質量比を上記範囲内とすることで、より高い触媒活性が発揮され得る。上記Pdの質量比は、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.1以下(例えば0.01~0.1)である。ここで開示される技術は、例えば、中層34に配置されたPdに対する下層32に配置されたPdの質量比が0.03~0.08である態様で好ましく実施され得る。
【0040】
ここで開示される中層34は、Pdの性能を損なわない程度に他の貴金属触媒を含んでいてもよい。Pd以外の貴金属触媒として、例えば、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)等が挙げられる。
【0041】
中層34の成形量(コート量)は特に制限されないが、例えば、基材の体積1リットル当たり、20g/L~100g/L(典型的には40g/L~80g/L)程度であることが好ましい。中層34の成形量が少なすぎる場合は、触媒コート層としての機能が弱くなる虞がある。また、中層34の成形量が多すぎると、基材のセル内を排気ガスが通過する際の圧力損失の上昇を招く虞がある。
【0042】
<上層>
ここで開示される触媒コート層を構成する上層36は、貴金属触媒としてRhと、該貴金属触媒を担持する担体とを含んでいる。
【0043】
ここで開示される上層36の貴金属触媒を担持する担体は、Ce含有酸化物であり得る。Ce含有酸化物としては、CeO2(セリア)や該セリアを含むCeO2含有複合酸化物などが挙げられる。中でも、セリア-ジルコニア複合酸化物(CeO2-ZrO2複合酸化物)の使用が好ましい。高負荷(高流量)時には排ガスが下層32まで拡散しにくい。そのため、下層32に加えて上層36にCe含有酸化物を含有させることにより、高負荷時において酸素吸蔵放出能が適切に発揮され(例えば上層36で酸素を吸収することで、中層34におけるPdの酸素被毒が抑制され)、NOxエミッションを効果的に抑制することができる。
【0044】
上層36におけるCeの含有量Aは、下層32におけるCeの含有量Aとの間で前記関係を満たす限りにおいて特に制限はないが、高負荷時のNOxエミッションを抑制する等の観点から、例えば、基材の体積1リットル当たり、CeO2換算で概ね1g/L以上、好ましくは3g/L以上、より好ましくは4.5g/L以上、さらに好ましくは6g/L以上である。また、上層36におけるCeの含有量Aは、Rhの易メタル化(活性化)の観点から、CeO2換算で、好ましくは30g/L以下、より好ましくは25g/L以下、さらに好ましくは20g/L以下、特に好ましくは18g/L以下である。ここに開示される技術は、上層36に含まれる上記Ceの含有量が6g/L以上18g/L以下である態様で好ましく実施され得る。
【0045】
上層36におけるCe含有酸化物がセリア-ジルコニア複合酸化物の場合、セリア-ジルコニア複合酸化物におけるCeO2とZrO2との混合割合は、CeO2:ZrO2=5:95~50:50、好ましくは10:90~40:60、より好ましくは15:85~30:70であるとよい。CeO2の混合割合が上記範囲内であると、Rhを含む上層36において高い触媒活性とOSC(酸素吸蔵放出能)を実現することができる。上層36におけるセリア-ジルコニア複合酸化物の量は特に制限されないが、Hot NOxエミッション抑制等の観点から、例えば、基材の体積1リットル当たり、20g/L~120g/L、好ましくは25g/L~100g/L、より好ましくは30g/L~90g/Lである。
【0046】
ここで開示される上層36は、Ce含有酸化物以外の金属酸化物(非Ce含有酸化物)が混在するものであってもよい。そのような非Ce含有酸化物としては、酸化アルミニウム(アルミナ:Al2O3)、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO2)、これらの固溶体等が挙げられる。中でもAl2O3の使用が好ましい。Al2O3とCe含有酸化物とは、質量混合比(Al2O3:Ce含有酸化物)が95:5~5:95(典型的には70:30~20:80)の範囲内で混合することが好ましい。上層36における非Ce含有酸化物の含有量は特に制限されないが、例えば、基材の体積1リットル当たり、5g/L~50g/L(好ましくは10g/L~40g/L、典型的には15g/L~30g/L)であることが好ましい。
【0047】
上層36には、副成分として他の材料(典型的には無機酸化物)が添加されていてもよい。該触媒層に添加し得る物質としては、例えば、ランタン(La)、イットリウム(Y)等の希土類元素、カルシウムなどのアルカリ土類元素、その他遷移金属元素などが挙げられる。上記の中でも、ランタン、イットリウム等の希土類元素は、触媒機能を阻害せずに高温における比表面積を向上できるため、安定化剤として好適に用いられる。また、これら副成分の含有割合は、Ce含有酸化物100質量部に対して20質量部以下(好ましくは10質量部以下)に設定することが好ましい。
【0048】
ここに開示される上層36に含有されるRhは、前述したCe含有酸化物に担持されている。Rhの担持量は特に制限されないが、上層36に含まれるCe含有酸化物100質量部に対して0.05質量部~2質量部の範囲(例えば0.1質量部~1質量部、好ましくは0.2質量部~0.5質量部)とすることが適当である。上層36におけるRhの含有量は特に制限されないが、例えば、基材の体積1リットル当たり、0.01g/L~1g/L(好ましくは0.05g/L~0.5g/L、典型的には0.1g/L~0.3g/L)であることが好ましい。
【0049】
上層36に配置されたRhに対する下層32および中層34に配置されたPdの質量比(Pd/Rh)が、2.5以上(例えば2.5~40、典型的には5~40)である。Pd/Rhの質量比を上記範囲内とすることで、排ガス中の有害ガスがより良く浄化され得る。上記Pd/Rhの質量比は、好ましくは8以上、より好ましくは10以上である。ここで開示される技術は、例えば、上層36に配置されたRhに対する下層32および中層34に配置されたPdの質量比が8~30(典型的には10~15)である態様で好ましく実施され得る。
【0050】
ここで開示される上層36は、Rhおよび/またはPtの性能を損なわない程度に他の貴金属触媒を含んでいてもよい。Pd以外の貴金属触媒として、例えば、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)等が挙げられる。
【0051】
上層36の成形量(コート量)は特に制限されないが、例えば、基材の体積1リットル当たり、50g/L~180g/L(典型的には75g/L~150g/L、例えば90g/L~120g/L)程度であることが好ましい。上層36の成形量が少なすぎる場合は、触媒コート層としての機能が弱くなる虞がある。また、上層36の成形量が多すぎると、ハニカム基材10のセル内を排気ガスが通過する際の圧力損失の上昇を招く虞がある。
【0052】
<触媒コート層の形成方法>
触媒コート層30は、下層32中層34と上層36とで異なるスラリーを基に形成するとよい。例えば、下層32を形成するための下層用スラリーと、中層34を形成するための中層用スラリーと、上層36を形成するための上層用スラリーとを用意する。下層用スラリーには、PdとCe含有酸化物と他の下層構成成分(例えばバリウム等)が含まれる。上層用スラリーには、Rhを担持したCe含有酸化物と他の上層構成成分(例えば非Ce含有酸化物等)が含まれる。下層用スラリーを基材10の下層32が形成される部分(ここでは基材全体)にウォッシュコートすることにより、基材10の表面に下層32を形成する。下層32を形成した後、中層形成用スラリーを基材10の中層34が形成される部分(ここでは基材全体)にウォッシュコートすることにより、下層32の上に中層34を形成する。中層34を形成した後、上層形成用スラリーを基材10の上層36が形成される部分(ここでは基材全体)にウォッシュコートすることにより、中層34の上に上層36を形成する。このようにして、上層36、中層34および下層32を備えた触媒コート層30が形成され得る。なお、触媒コート層30をウォッシュコートにより形成するプロセスにおいて、スラリーを基材に適当に密着させるため、スラリーにはバインダーを含有させもよい。バインダーとしては、例えばアルミナゾル、シリカゾル等の使用が好ましい。スラリーの粘度は、該スラリーが基材(例えばハニカム基材)のセル内へ容易に流入し得るように適宜調整するとよい。基材10の表面にウォッシュコートされたスラリーの乾燥条件は基材または担体の形状及び寸法により左右されるが、典型的には80~300℃程度(例えば100~250℃)で1~10時間程度であり、焼成条件は約400~1000℃程度(例えば500~700℃)で約1~4時間程度である。
【0053】
以上、本発明の一実施形態に係る排ガス浄化用触媒100について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0054】
例えば、上述した実施形態では、触媒コート層30は、基材10上に設けられた下層32と、該下層32上に設けられた中層34と、該中層34上に設けられた上層36とからなる三層構造であるが、当該三つの層に加えて他の層(例えば上層36上に形成された別の層)を有する四層以上であってもよい。さらに、触媒コート層30は、上層36、中層34および下層32が基材(例えばハニカム基材)10の全域にわたって積層構造になっている必要はなく、各層32、34、36の一部(例えば上層36の一部と中層34の一部と下層32の一部と)が部分的に積層されて三層構造を形成するものであってもよい。
【0055】
以下、本発明に関する試験例を説明するが、本発明を以下の試験例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0056】
<実施例1>
アルミナ粉末30gと、硝酸Pd溶液(Pdで0.1g)と、CeO2-ZrO2複合酸化物125g(CeO2で50g)と、硫酸バリウム2gと、水とを混合して下層形成用スラリーAを得た。この下層形成用スラリーAを用いてモノリスハニカム基材(容積1L)全体にウォッシュコートを施し、250℃で1時間乾燥、500℃で1時間焼成することによって、基材上に下層を形成した。また、2gのPdを担持したアルミナ粉末40gと、硫酸バリウム20gと、水とを混合して中層形成用スラリーBを得た。この中層形成用スラリーBを用いてハニカム基材全体にウォッシュコートを施し、250℃で1時間乾燥、500℃で1時間焼成することによって、下層上に中層を形成した。また、0.2gのRhを担持したCeO2-ZrO2複合酸化物60g(CeO2で12g)と、アルミナ粉末30gと、水とを混合して上層形成用スラリーCを得た。この上層形成用スラリーCを用いてハニカム基材全体にウォッシュコートを施し、250℃で1時間乾燥、500℃で1時間焼成することによって、中層上に上層を形成した。このようにして、本例に係る排ガス浄化用触媒を得た。
【0057】
<実施例2>
本例では、実施例1の下層形成用スラリーAにおけるCeO2-ZrO2複合酸化物の使用量を113g(CeO2で45g)に変更したこと以外は実施例1と同じ手順で係る排ガス浄化用触媒を得た。
【0058】
<実施例3>
本例では、実施例1の下層形成用スラリーAにおけるCeO2-ZrO2複合酸化物の使用量を138g(CeO2で55g)に変更したこと以外は実施例1と同じ手順で係る排ガス浄化用触媒を得た。
【0059】
<実施例4>
本例では、実施例1の上層形成用スラリーCにおけるCeO2-ZrO2複合酸化物の使用量を30g(CeO2で6g)に変更したこと以外は実施例1と同じ手順で係る排ガス浄化用触媒を得た。
【0060】
<実施例5>
本例では、実施例1の上層形成用スラリーCにおけるCeO2-ZrO2複合酸化物の使用量を90g(CeO2で18g)に変更したこと以外は実施例1と同じ手順で係る排ガス浄化用触媒を得た。
【0061】
<実施例6>
本例では、実施例1の上層形成用スラリーCにおけるCeO2-ZrO2複合酸化物の使用量を45g(CeO2で9g)に変更したこと以外は実施例1と同じ手順で係る排ガス浄化用触媒を得た。
【0062】
<実施例7>
本例では、実施例1の下層形成用スラリーAにおけるCeO2-ZrO2複合酸化物の使用量を100g(CeO2で40g)に変更したこと以外は実施例1と同じ手順で係る排ガス浄化用触媒を得た。
【0063】
<実施例8>
本例では、実施例1の上層形成用スラリーCにおけるCeO2-ZrO2複合酸化物の使用量を100g(CeO2で20g)に変更したこと以外は実施例1と同じ手順で係る排ガス浄化用触媒を得た。
【0064】
<比較例1>
アルミナ粉末60gと、硝酸Pd溶液(Pdで2g)と、CeO2-ZrO2複合酸化物125g(CeO2で50g)と、硫酸バリウム2gと、水とを混合して下層形成用スラリーDを得た。この下層形成用スラリーDを用いてモノリスハニカム基材(容積1L)全体にウォッシュコートを施し、250℃で1時間乾燥、500℃で1時間焼成することによって、下層を形成した。また、0.2gのRhを担持したCeO2-ZrO2複合酸化物60g(CeO2で12g)と、アルミナ粉末70gと、水とを混合して上層形成用スラリーEを得た。この上層形成用スラリーEを用いてハニカム基材(容積1L)全体にウォッシュコートを施し、250℃で1時間乾燥、500℃で1時間焼成することによって、下層上に上層を形成した。このようにして、本例に係る排ガス浄化用触媒を得た。
【0065】
<比較例2>
本例では、実施例1の下層形成用スラリーAにおいてCeO2-ZrO2複合酸化物の使用量を0g(すなわちCeO2-ZrO2複合酸化物の添加なし)としたこと以外は実施例1と同じ手順で排ガス浄化用触媒を得た。
【0066】
<比較例3>
本例では、実施例1の上層形成用スラリーCにおいてCeO2-ZrO2複合酸化物60gをZrO2酸化物60gに変更したこと以外は実施例1と同じ手順で排ガス浄化用触媒を得た。
【0067】
<比較例4>
本例では、実施例1の下層形成用スラリーAにおけるCeO2-ZrO2複合酸化物の使用量を30g(CeO2で12g)とし、かつ、上層形成用スラリーCにおけるCeO2-ZrO2複合酸化物の使用量を250g(CeO2で50g)と変更したこと以外は実施例1と同じ手順で係る排ガス浄化用触媒を得た。
【0068】
各例に係る排ガス浄化用触媒について、下層におけるCeO2の含有量B、中層におけるCeO2の含有量、上層におけるCeO2の含有量A、上層におけるCeO2の含有量Aに対する下層におけるCeO2の含有量Bの比(B/A)を表1に纏めて示す。
【0069】
【0070】
<耐久試験>
各例に係る排ガス浄化用触媒を排気量4Lのガソリンエンジンに取り付け、20時間の定常耐久試験を行った。
【0071】
<浄化性能評価>
上記耐久試験後、各例に係る排ガス浄化用触媒の浄化性能を比較するため、各排ガス浄化用触媒を通過した後の排ガスに含まれるNMHC(ノンメタンハイドロカーボン)およびNOxの排出量(エミッション)を測定した。評価エンジンは排気量1Lのガソリンエンジン、測定モードはJC08モードとした。JC08モードでは、予めエンジンを暖気しておいた状態(ホットモード)と、完全に冷え切った状態(コールドモード)での両方で試験が行われる。結果を表1の該当欄に示す。ここでは、ホットモードにおいて採取した排ガス中におけるNOxの走行距離当たりの排出量(g/km)を「Hot NOx」欄に、コールドモードにおいて採取した排ガス中におけるNMHCの走行距離当たりの排出量(g/km)を「Cold HC」欄に示してある。
【0072】
表1に示すように、上層と下層との間にCeレス層(中層)を設けていない比較例1の排ガス浄化用触媒は、Cold HCの排出量が0.02g/kmを上回った。これに対し、上層と下層との間にCeレス層(中層)を設けた実施例1~8では、Cold HCの排出量が0.018g/km以下となり、比較例1に比べて、Cold HC浄化性能が良好であった。また、実施例1~8および比較例2~4を比較すると、上層および下層の何れか一方のみにCeO2-ZrO2複合酸化物を配置した比較例2、3および上層と下層の双方にCeO2-ZrO2複合酸化物を配置しかつ上下層のCeO2の含有量比(B/A)を2未満とした比較例4の排ガス浄化用触媒は、Hot NOxの排出量が0.0135g/kmを上回った。これに対し、上層と下層の双方にCeO2-ZrO2複合酸化物を配置し、かつ、上下層のCeO2の含有量比(B/A)を2以上とした実施例1~8は、Hot NOxの排出量が0.013g/km未満となり、比較例2~4に比べて、Hot NOxのエミッションが抑えられていた。この結果から、上層と下層との間にCeレス層を設け、かつ、上下層のCeO2の含有量比(B/A)を2以上とした排ガス浄化用触媒によると、Cold HC浄化性能とHot NOx浄化性能との両立が高いレベルで実現され得ることが確かめられた。
【0073】
なお、下層におけるCeO2の含有量Bを45g/L以上とし、かつ、上層におけるCeO2の含有量Aを18g/L以下とした実施例1~6は、実施例7、8に比べると、Hot NOxのエミッションについて、より良好な結果が得られた。
【0074】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、Hot NOx浄化性能とCold HC浄化性能との両立が実現され得る排ガス浄化用触媒を提供することができる。