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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】吸入可能な液体のための吸入器デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/00 20060101AFI20220322BHJP
【FI】
A61M15/00 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018522828
(86)(22)【出願日】2016-07-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-08-02
(86)【国際出願番号】 AU2016050638
(87)【国際公開番号】W WO2017011867
(87)【国際公開日】2017-01-26
【審査請求日】2019-07-18
(31)【優先権主張番号】2015902868
(32)【優先日】2015-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2015902881
(32)【優先日】2015-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】518021919
【氏名又は名称】メディカル、ディベロップメンツ、インターナショナル、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MEDICAL DEVELOPMENTS INTERNATIONAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】グレッグ、ローランド
(72)【発明者】
【氏名】エドワード、リナカー
(72)【発明者】
【氏名】グレン、ギルバート
(72)【発明者】
【氏名】ビクター、レギン
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-131603(JP,A)
【文献】国際公開第2010/095660(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/115324(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入可能な液体の貯留及び患者への送出のための吸入器デバイスであって、前記デバイスがパック形状本体を備え、前記パック形状本体が、
(1)吸入可能な液体が予め充填された受動蒸発支持材料を備えるレセプタクルと、
(2)前記レセプタクルを覆うレセプタクル蓋であって、少なくとも1つの空気入口開口及び少なくとも1つの蒸気吸入開口を備えるレセプタクル蓋と
を備え
記レセプタクル蓋が前記レセプタクルに対して閉鎖位置にある場合に前記空気入口開口及び前記蒸気吸入開口がシールされそれにより前記パック形状本体がシールされた蒸気チャンバを形成し、
さらに前記レセプタクル蓋が前記レセプタクルに対して開放位置にある場合に前記空気入口開口及び前記蒸気吸入開口はシールされずに開放し、前記空気入口開口及び前記蒸気吸入開口を介して前記蒸気チャンバを通る空気/蒸気経路を与える、吸入器デバイス。
【請求項2】
前記パック形状本体は、
(1)吸入可能な液体が予め充填された受動蒸発支持材料を備えるレセプタクル、及び
(2)少なくとも1つの空気入口開口及び少なくとも1つの蒸気吸入開口を備えるレセプタクル蓋
のみから成り
記レセプタクル蓋が前記レセプタクルに対して閉鎖位置にある場合に前記空気入口開口及び前記蒸気吸入開口がシールされそれにより前記パック形状本体がシールされた蒸気チャンバを形成し、
さらに前記レセプタクル蓋が前記レセプタクルに対して開放位置にある場合に前記空気入口開口及び前記蒸気吸入開口はシールされずに開放し、前記空気入口開口及び前記蒸気吸入開口を介して前記蒸気チャンバを通る空気/蒸気経路を与える、請求項1に記載の吸入器デバイス。
【請求項3】
前記レセプタクル蓋は、前記レセプタクルに対して前記蓋を跳ね上げる、上方へ引き上げる、ねじる、旋回させる、回転させる、又は、蓋のねじを緩めることによって開放される請求項1又は2に記載の吸入器デバイス。
【請求項4】
前記レセプタクル蓋は、前記レセプタクルとシール係合するように着脱自在に締結される請求項1から3のいずれか一項に記載の吸入器デバイス。
【請求項5】
前記レセプタクル蓋が回転可能に開放可能である請求項1から4のいずれか一項に記載の吸入器デバイス。
【請求項6】
更なる空気入口開口及び更なる蒸気吸入は各々、前記レセプタクル蓋が開放位置にある場合に前記レセプタクル蓋の前記空気入口開口及び前記蒸気吸入開口とそれぞれ並ぶように、前記レセプタクルに形成され、さらに部分的に又は完全に前記空気入口開口を前記更なる空気入口開口と並べ且つ前記蒸気吸入開口を前記更なる蒸気吸入開口と並べることによって、ユーザが吸入する際にユーザに前記蒸気を送出するように前記空気/蒸気経路は調整可能に制御されうる請求項1からのいずれか一項に記載の吸入器デバイス。
【請求項7】
前記レセプタクル蓋が平坦である請求項1からのいずれか一項に記載の吸入器デバイス。
【請求項8】
前記蓋は、ユーザが前記蓋を開放するのを助けるためのグリップを備える請求項1からのいずれか一項に記載の吸入器デバイス。
【請求項9】
前記蓋が詰め物挿入体を備える請求項1からのいずれか一項に記載の吸入器デバイス。
【請求項10】
前記レセプタクル蓋は、前記蒸気吸入開口を介して蒸気を送出するための一体形成されたマウスピースを備える請求項1からのいずれか一項に記載の吸入器デバイス。
【請求項11】
吸入可能な液体がハロゲン化揮発性液体である請求項1から10のいずれか一項に記載の吸入器デバイス。
【請求項12】
前記吸入可能な液体が鎮痛剤として使用するためのメトキシフルランである請求項1から11のいずれか一項に記載の吸入器デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入可能な液体のための吸入器デバイスに関し、特に、ハロゲン化揮発性液体などの吸入可能な揮発性液体の貯留及び/又は患者への投与のための、吸入器デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
活性物質を備える又はそれ自体が活性物質である吸入可能な液体の貯留及び患者への投与は、一般に、課題を与える。患者の好み及び病院環境又は他の環境での必要に応じた自己投与又は投与の容易さに起因して、治療物質又は医薬物質などの活性物質は、しばしば、経口送出できるように錠剤及びカプセルの形態で、鼻送出できるようにスプレーの形態で、及び、経静脈的な送出ができるように液体製剤の形態で形成される。
【0003】
例えば呼吸器疾患を治療又は緩和するために患者の肺に活性物質を投与することが有利な場合、活性物質は、単独で又は鼻腔内経路と組み合わせて経口吸入経路により投与される場合がある。適した吸入器デバイスとしては、例えば、定用量吸入器及び乾燥粉末吸入器を挙げることができる。これらのタイプの経口吸入器デバイスは、一般に、活性物質を肺における所望の作用部位に送出するための加圧手段を必要とする。加えて、活性物質を含有する又はそれ自体が活性物質である液体は、通常、吸入経路による送出に適するように投与ポイントで吸入可能な呼吸用の形態への変換を要する。噴霧又はエアロゾル化により呼吸用のサイズの液滴へ変換するなど、液体を呼吸用の形態へ変換すること、或いは、蒸気を形成するために加熱することは、移動する機械的な加熱手段及び/又は電気手段を送出装置が含む必要があり、これにより、設計、製造の複雑さ、エンドユーザのコスト、操作性、及び/又は、患者の使用が増大する。
【0004】
活性物質としての又は活性物質を備える揮発性液体の使用が知られている。1つのそのような例はハロゲン化揮発性液体である。ハロゲン化揮発性液体は、麻酔(健忘、筋肉麻痺、及び/又は、鎮静を含む)及び/又は鎮痛を誘発する及び/又は維持するのに有用であると見なされてきたため、麻酔薬及び/又は鎮痛薬として有用となり得る。フッ素化物の麻酔特性は少なくとも1946年以来から知られてきた(Robbins、B.H.J Pharmacol Exp Ther(1946)86:197-204)。この後、1950年代にフルオロオクテン、ハロタン、及び、メトキシフルランが臨床用途に導入され、その後、現在幾つかの国で臨床的に使用されているエンフルラン、イソフルラン、セボフルラン、及び、デスフルランが開発された(Terrell、R.C.Anesthesiology(2008)108(3):531-3)。
【0005】
ハロゲン化揮発性液体は、全身麻酔のために使用される場合、気化器及び呼吸可能なキャリアガスの流れを含む送出システムを介して陽圧下で患者に送出される場合がある。より最近では、局所麻酔又は局部麻酔及び非吸入経路による送出で使用するためにハロゲン化揮発性液体が形成されてきた。例としては、皮内又は静脈内注射用微小液滴(例えば米国特許第4,725,442号明細書);髄腔内又は硬膜外送出のための水溶液(例えば、国際公開第2008/036858号パンフレット);スワブ、液滴、スプレー、又は、経粘膜送出のためのエアロゾル(例えば国際公開第2010/025505号パンフレット);経皮的、局所、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、皮下、神経周囲浸潤、くも膜下腔内、又は、硬膜外送出用の揮発性麻酔薬の揮発性、気化、又は、蒸発を減少させるのに有効な量の抽出溶媒を含む水性ベースの溶液(例えば国際公開第2009/094460号パンフレット、国際公開第2009/094459号パンフレット);医療用パッチへの製剤に適した組成物(例えば国際公開第2014/143964号パンフレット);局所、髄腔内、硬膜外、経皮的、局所、経口、関節内、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、膀胱内、及び、皮下送出のための溶液、懸濁液、クリーム、ペースト、油、ローション、ゲル、泡、ヒドロゲル、軟膏、リポソーム、エマルジョン、液晶エマルジョン、及び、ナノエマルジョンとしての製剤に適した組成物(例えば、国際公開第2008/070490号パンフレット、国際公開第2009/094460号パンフレット、国際公開第2010/129686号パンフレット)、及び、安定した注入可能な液体製剤(国際公開第2013/016511号パンフレット)としての製剤が挙げられる。
【0006】
揮発性液体の安全な貯留及び取り扱いのための主な考慮事項は、一般に、蒸気圧の上昇、容器のロバスト性、及び、容器シールの完全性を含む。また、揮発性液体の化学的性質は、活性物質が貯留時に容器材料を浸透する、可溶化する、或いはさもなければ、容器材料と反応することができれば重要でなり得る。ハロゲン化揮発性液体のための多数の貯留容器が、キャップ付きボトル大型タンク、出荷用容器などのガラスバイアルの代替物としての硬質ポリマー容器(例えば、国際公開第1999/034762号パンフレット、国際公開第2012/116187号パンフレット);液体麻酔薬を麻酔機又は気化器へ送出するための流体接続用のねじ付きスパウトを伴うガスケットレス弁アセンブリ及び柔軟な容器を備えた硬質ポリマーボトル(例えば、国際公開第2010/135436号パンフレット、国際公開第2013/106608号パンフレット、国際公開第2013/149263号パンフレット、国際公開第2015/034978号パンフレット);貯留された液体麻酔薬をスロット付き管を介して気化器に送出するためのキャップ付き膜を有する容器(国際公開第2009/117529号パンフレット);及び、蒸気バリア特性又は容器不活性を与える又は高めるための材料で随意的にコーティングされた硬質な高分子容器及びアルミニウム容器(例えば、国際公開第2002/022195号パンフレット、国際公開第2003/032890号パンフレット、国際公開第2010/129796号パンフレット)を含めて記載されてきた。
【0007】
ハロゲン化揮発性液体のような吸入不可能な形態の揮発性液体及び該揮発性液体を貯留するための容器を形成する際の様々な進歩にもかかわらず、吸入可能な形態の揮発性液体及び揮発性液体を貯留する及び/又は患者へ投与するための装置の必要性が依然として残る。
【0008】
吸入可能な医薬品のための新規な吸入器を設計しようとする試みは一般的に進行中である。例えば、国際公開第2008/040062号パンフレットは、吸入可能な液体及び粉末状固体を貯留する及び/又はユーザの口内又は鼻内に送出するための複雑な構造及び可動部品に依存する多様な吸入器デバイスの概念を記載する。記載される様々な装置は、加圧キャニスタ、アンプル、バイアル、及び、プランジャの形態の1つ又は2つの薬剤容器を保持するようになっている。装置は、装置の内壁に対して装置の外壁をスライドさせて薬剤容器から液体薬剤を送出することによって作動されるものとして記載される。幾つかの実施形態において、装置は、空気経路を開放するように展開する可動マウスピースを含む。また、この装置は、一方又は両方の吸気及び呼気の一方向の空気流を与えるための1つ以上の一方向弁を含むものとしても記載される(吸気及び呼気の流れを方向付ける一連の一方向弁も、一般に、国際公開第1997/003711号パンフレットに記載される装置の参照により組み入れられる国際公開第2007/033400号パンフレットに記載されている)。
【0009】
使用のために必要とされる際、国際公開第2008/040062号パンフレットの装置は、打ち抜き手段、すなわち、壊れやすい端部を有する投薬容器の2つの壊れやすい端部をそれぞれ穿孔するための2つのパンチによって薬剤を放出することができると主張されているが、加圧手段(例えば加圧キャニスタによる);壊れやすい手段(例えばストライカでアンプルを破裂させることによる又は壊れやすい膜又はバイアルのシールをパンチ手段で打ち抜くことによる);粉砕可能な手段(例えばバイアルをプランジャで粉砕することによる);取り外し手段(例えばバイアルからねじを外したキャップを取り除くことによる);及び、プランジング手段(例えばプランジャバレルから薬剤を押し込むことによる)を含む様々な他の手段が一般に記載される。
【0010】
しかしながら、ハロゲン化揮発性液体のような吸入可能な液体は、蒸気が蒸発し得る有効な空気チャンバを必要とするとともに、患者への送出のために空気/蒸気チャンバを通る効果的な空気流を可能にする。したがって、国際公開第2008/040062号パンフレットの例えば図48A、48B、48C、49A、49B、50A、50B、51A、51B、56A、56B、57,58A、58B、58C及び58Dに記載されるような実施形態は、蒸発手段(又は芯)が液体貯留容器自体の壁によって放出された液体に効果的に曝されることが防止されるので、実際には機能しないと予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第4,725,442号明細書
【文献】国際公開第2008/036858号パンフレット
【文献】国際公開第2010/025505号パンフレット
【文献】国際公開第2009/094460号パンフレット
【文献】国際公開第2009/094459号パンフレット
【文献】国際公開第2014/143964号パンフレット
【文献】国際公開第2008/070490号パンフレット
【文献】国際公開第2010/129686号パンフレット
【文献】国際公開第2013/016511号パンフレット
【文献】国際公開第1999/034762号パンフレット
【文献】国際公開第2012/116187号パンフレット
【文献】国際公開第2010/135436号パンフレット
【文献】国際公開第2013/106608号パンフレット
【文献】国際公開第2013/149263号パンフレット
【文献】国際公開第2015/034978号パンフレット
【文献】国際公開第2009/117529号パンフレット
【文献】国際公開第2002/022195号パンフレット
【文献】国際公開第2003/032890号パンフレット
【文献】国際公開第2010/129796号パンフレット
【文献】国際公開第2008/040062号パンフレット
【文献】国際公開第1997/003711号パンフレット
【文献】国際公開第2007/033400号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【文献】Robbins、B.H.J Pharmacol Exp Ther(1946)86:197-204
【文献】Terrell、R.C.Anesthesiology(2008)108(3):531-3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、既知の吸入器に優る1つ以上の利点又は改善を与える、吸入可能な液体の貯留及び患者への投与のための新規な吸入器デバイス、特に、鎮痛剤として使用するためのメトキシフルランなどのハロゲン化揮発性液体を送出するための吸入器を提供する。この装置は、最低限2つの製造部品(吸入可能な液体が予め充填された受動蒸発支持材料を除く)を用いて吸入可能な液体を貯留して投与することができる。この装置は、個別に製造された容器内に液体を貯留する必要性を回避することによって、輸送コスト、保管コスト、及び、廃棄コスト、並びに、材料廃棄を更に減少させることもできる、使いやすい、予め充填される(すなわち、いつでも使用できる状態にある)、容易に持ち運びできる、低コストで製造される装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、吸入可能な液体の貯留及び患者への送出のための吸入器デバイスであって、前記装置がパック形状本体を備え、パック形状本体が、
(1)吸入可能な液体が予め充填された受動蒸発支持材料を備えるレセプタクルと、
(2)レセプタクル蓋と、
(3)少なくとも1つの空気入口開口と、
(4)少なくとも1つの蒸気吸入開口と、
を備え、
吸入可能な液体を貯留するためにレセプタクル蓋が閉じられるときに空気入口開口及び蒸気吸入開口が閉鎖位置にあり、更に、吸入可能な液体が貯留時に蒸気を形成するにつれてパック形状本体が蒸気チャンバを形成し、それにより、空気入口開口及び蒸気吸入開口を介して蒸気チャンバを通る空気/蒸気経路を与えるために蓋が開放されるときに貯留された蒸気を患者への直接的な投与のために利用できる、吸入器デバイスが提供される。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、吸入可能な液体の貯留及び患者への送出のための吸入器デバイスであって、前記装置がパック形状本体を備え、パック形状本体が、
(1)吸入可能な液体が予め充填された受動蒸発支持材料を備えるレセプタクル、
(2)レセプタクル蓋、
(3)少なくとも1つの空気入口開口、及び、
(4)少なくとも1つの蒸気吸入開口、
のみから成り、
吸入可能な液体を貯留するためにレセプタクル蓋が閉じられるときに空気入口開口及び蒸気吸入開口が閉鎖位置にあり、更に、吸入可能な液体が貯留時に蒸気を形成するにつれてパック形状本体が蒸気チャンバを形成し、それにより、空気入口開口及び蒸気吸入開口を介して蒸気チャンバを通る空気/蒸気経路を与えるために蓋が開放されるときに貯留された蒸気を患者への直接的な投与のために利用できる、吸入器デバイスが提供される。
【0016】
第1及び第2の態様に係る1つの実施形態では、レセプタクル蓋が回転可能に開放される。
【0017】
第1及び第2の態様に係る1つの実施形態では、空気入口開口及び蒸気吸入開口がレセプタクル蓋に形成される。更なる実施形態において、レセプタクル蓋は、蒸気吸入開口を介して蒸気を送出するための一体形成されたマウスピースを備える。
【0018】
1つの実施形態では、吸入可能な液体がハロゲン化揮発性液体である。更なる実施形態において、ハロゲン化揮発性液体は、ハロタン(2-ブロモ-2-クロロ-1,1,1-トリフルオロエタン)、セボフルラン(フルオロメチル-2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチルエーテル)、デスフルラン(2-ジフルオロメチル-1,2,2,2-テトラフルオロエチルエーテル)、イソフルラン(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)、エンフルラン(2-クロロ-1,1 ,2-トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)、及び、メトキシフルラン(2,2-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチルメチルエーテル)から成るグループから選択される。1つの実施形態において、吸入可能な液体は、鎮痛剤として使用するためのメトキシフルランである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】メトキシフルランを投与するために現在使用されるGreen Whistle(商標)吸入器デバイス(Medical Developments International Limited)と称される従来技術の吸入器デバイスを示す。
図2】本発明の一実施形態に係る吸入器デバイス(図2A)及び破線線図(図2B)を示す。
図3】幾つかの内部構成要素をより良く示すための図2Aの吸入器デバイスの分解図を示す。
図4図2Aの吸入器デバイスの更なる図を示し、具体的には、開放位置にある空気入口開口を示す後端面図(図4A)、開放位置にある蒸気吸入開口を示す前端面図(図4B)、図4Bの線A-Aに沿う装置の側方視野を与えるための断面図(図4C)を示す。
図5図2Aの吸入器デバイスの上面図(図5A)、及び、患者による吸入時の使用中の装置の側面図(図5B)を示す。
図6】本発明の一実施形態に係る装置(図2A)及び従来技術のGreen Whistle吸入器(図1)によって送出されるメトキシフルランの比較濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
吸入可能な液体を投与するために役立つ吸入器デバイスは、一般に、患者に活性物質を送出するために受動的又は能動的な手段のいずれかによって作動すると考えられ得る。能動的手段を有する吸入器デバイスは、例えば、活性物質を噴霧する、気化する、及び/又は、一般に送出するために、加圧手段、移動手段、機械的手段、加熱手段、及び/又は、電気的手段を含んでもよい。これに対し、受動的手段を有する吸入器デバイスは、周囲条件での活性物質の気化又は蒸発、及び、活性物質を送出するための患者の呼吸のみに依存する。
【0021】
Analgizer(商標)吸入器デバイス(Abbott Laboratories Corporation)は、吸入可能な液体を送出するために受動的手段によって作動する装置の例である。USPTO TESSのデータベースによれば、Analgizer(商標)は、吸入麻酔の自己投与の管理のための吸入器に関して商標登録されて現在失効している商標であり、1968年に初めて使用された。Analgizer(商標)は、非常に単純な装置であり、マウスピースとポリプロピレンの吸収芯とを有し、断面で見て「スイスロール」形状に強固に巻かれた白い円筒形のポリエチレン開放端チューブから成っていた。吸入麻酔薬、すなわち、メトキシフルラン(15mL)が、使用直前に、吸入器の開放端の基部に流し込まれて、強固に巻回された芯上へ注がれた。患者は、その後、マウスピースを通して吸入することによって液体麻酔薬を自己投与することができた。
【0022】
Green Whistle(商標)吸入器デバイス(Medical Developments International Limited)は、1990年代に開発され、それ以来、Penthrox(商標)/(登録商標)(メトキシフルラン)を鎮痛剤として送出するためにオーストラリアで使用されてきた(1.5mL又は3mL、スクリューキャップを伴う茶色のガラスバイアル貯留容器)。Green Whistle(商標)装置は、その設計の簡素さにおいてはAnalgizer(商標)と同様であるが、患者の呼気時の装置からの薬剤蒸気損失を防ぐための基端部の一方向弁と、吐き出された薬剤蒸気を濾過するためにマウスピースの希釈穴に外部から嵌め込まれるように設計される活性炭(AC’)チャンバとを含めるなど、特定の機能的改善を含む。基端部に対する付加的な設計変更は、送出されるべき薬剤用量を貯留するために使用されるガラスバイアルからのキャップの除去を助けるためのキャップラグの導入、断面で見て「S形状」芯上へ注がれる液体の広がりを促進するためのドーム、又は、ドームの代わりに、呼吸可能なガスラインの取り付けを可能にしてガスを装置に通すように方向付けるための入口ニップルを含んでいた。Green Whistle(商標)装置は、一人の患者の使用を目的として設計される。
【0023】
Methoxyflurane(Penthrox(登録商標)/(商標)、Medical Developments International Limited)は、モルヒネ及びフェンタニルなどの一般的な鎮痛剤に代わる非麻薬性鎮痛剤、すなわち非オピオイド鎮痛剤を提供する。また、メトキシルフランは、経口錠剤形態で又は経静脈的に患者に投与される鎮痛剤に代わるものを与え、したがって、臨床的状況、外科的状況(例えば術前及び術後)、及び/又は、緊急の状況において(例えば救急診療科及びトリアージ管並びに救急医療隊員や捜索救助隊などの第1応答者により)迅速な痛みの軽減が求められるときに特に有用となり得る。しかしながら、Green Whistle(商標)装置は、現在、メトキシフルランを投与するために市販されている唯一の装置である。装置の使用説明書によれば、投与者は、メトキシフルランボトルを直立状態に保持して、吸入器の基部を使用し、ボトルキャップを緩め、その後、吸入器を45°の角度に傾けてボトルの内容物を基部に流し込む前に装置を回転させつつ手でキャップを取り外すことが求められる。随意的にACチャンバが事前に又は後に外部から装置に取り付けられてもよい。装置が有効である間に、ステップ数及び別個の構成要素の数は、例えば高ストレス状況及び/又は緊急状況において投与者又は自己投与者にとって取り扱い上の困難をもたらす場合がある。
【0024】
本発明は、ハロゲン化揮発性液体、特に鎮痛剤として使用するためのメトキシフルランなどの吸入可能な液体の貯留及び患者への投与のための新規な吸入器デバイスを提供し、この装置は、既知の吸入器に優る1つ以上の利点又は改善を有する。
【0025】
定義
本明細書中において別段に定義されなければ、以下の用語は、以下の一般的な意味を有すると理解される。
【0026】
「活性物質」とは、治療物質及び非治療物質、並びに、それらを含む化合物、製剤、及び、組成物のことである。
【0027】
「緩和する」、「緩和」、及び、その変形は、患者の状態及び/又は疾患の症状及び/又は根本的な原因を和らげる、少なくする、軽減する、良くする、又は、改善することを指す。
【0028】
「送出用量」とは、患者に投与するための吸入可能な液体又は活性物質の用量を指す。
【0029】
「フィルタ」、「フィルタリング」、及び、その変形は、呼気時に患者の呼気から吸入可能な揮発性液体蒸気を吸収、吸着、捕獲、捕捉、除去、掃去、又は、部分的又は完全に除去できる物質の能力を指す。
【0030】
「ハロゲン化揮発性液体」とは、(i)塩素(Cl)原子、臭素(Br)原子、フッ素(F)原子、及び、ヨウ素(I)原子から成るグループから選択される少なくとも1つのハロゲン原子を含む、或いは、(ii)塩素(Cl)原子、臭素(Br)原子、フッ素(F)原子、及び、ヨウ素(I)原子から成るグループから選択される少なくとも1つのハロゲン原子を備える活性物質を含む活揮発性液体のことである。幾つかの実施形態では、ハロゲン化炭化水素、特にフッ素化炭化水素、及び、ハロゲン化エーテル、特にフッ素化エーテルが好ましい場合がある。幾つかの実施形態では、ハロゲン化エーテルが特に好ましい場合があり、ハロゲン化エーテルとしては、ハロタン(2-ブロモ-2-クロロ-1,1,1-トリフルオロエタン)、セボフルラン(フルオロメチル-2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチルエーテル)、デスフルラン(2-ジフルオロメチル-1,2,2,2-テトラフルオロエチルエーテル)、イソフルラン(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)、エンフルラン(2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)、及び、メトキシフルラン(2,2-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチルメチルエーテル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
「吸入可能な液体」とは、活性物質を含む液体、又は、それ自体が活性物質であって容易に吸入可能であるか又は患者によって吸入され得る或いは吸入されるようになっている液体のことである。幾つかの実施形態では、吸入可能な揮発性液体、特にハロゲン化揮発性液体が好ましい。
【0032】
「吸入」、「吸入可能」、及び、その変形は、例えば、これに限定されないが、空気、呼吸可能な気体、吸入可能な液体の患者による取り入れを指し、経口吸入及び鼻吸入の両方を含む。幾つかの実施形態では、経口吸入が特に好ましい。
【0033】
「患者」とは、人の患者及び動物の患者の両方を指す。幾つかの実施形態では、人の患者が特に好ましい場合がある。したがって、患者への言及は、吸入可能な液体が投与される人又は動物を意味すると理解され、人の患者の場合には、自己投与による投与を含むと理解される。
【0034】
「医薬物質」とは、患者の状態及び/又は疾患の症状及び/又は根本的な原因を治療するための薬剤、又は、薬剤を含む化合物、製剤、又は、組成物のことである。医薬物質という用語は、治療物質又は活性物質と互換的に使用することができる。
【0035】
「呼吸」、「呼吸の」、及び、それらの変形は、例えばこれに限定されないが、空気、呼吸可能な気体、吸入可能な液体、及び、活性成分などを患者が呼吸する、吸い込む、吸入する、及び、吐き出す行為を指す。
【0036】
「室温」とは、例えば10℃~40℃であってもよいが、より一般的には15℃~30℃の周囲温度のことである。
【0037】
「治療物質」とは、患者を治療することができる又は患者に治療的又は医学的な利益を提供する、或いは、患者における治療的使用のための規制及び/又は市場流通承認を有する又は必要とする活性物質、又は、活性物質を含む化合物、製剤、又は、組成物(生物学的な化合物、製剤、及び、組成物を含む)のことである。治療物質は医薬物質を含む。これに対し、「非治療物質」は、例えば無煙たばこ製品及び電子たばこのような治療的使用のための規制及び/又は販売承認を有さない又は必要としなくてもよい、或いは、認知された又は同定された治療的使用を有さないが、例えば栄養補助食品など、一般的な健康、幸福、又は、生理学的利益などの非治療的な理由のために患者により使用される場合がある活性物質を意味すると理解される。
【0038】
「治療する」、「治療」、及び、その変形は、患者の状態及び/又は疾患の症状及び/又は根本的な原因の緩和、調節、調整、又は、停止を指す。幾つかの実施形態において、治療は、防御的治療又は予防的治療を含んでもよい。
【0039】
「揮発性液体」とは、液体形態で主に存在するが、例えばそれらが室温及び通常の大気圧において周囲条件下で蒸気形態で部分的に存在するように蒸気を容易に形成し、蒸発し、又は、気化する物質のことである。
【0040】
実施形態
ここで、非限定的な例に関連して実施形態を説明する。
【0041】
吸入可能な液体の貯留及び患者への送出のための吸入器デバイスであって、前記装置がパック形状本体を備え、パック形状本体が、
(1)吸入可能な液体が予め充填された受動蒸発支持材料を備えるレセプタクルと、
(2)レセプタクル蓋と、
(3)少なくとも1つの空気入口開口と、
(4)少なくとも1つの蒸気吸入開口と、
を備え、
吸入可能な液体を貯留するためにレセプタクル蓋が閉じられるときに空気入口開口及び蒸気吸入開口が閉鎖位置にあり、更に、吸入可能な液体が貯留時に蒸気を形成するにつれてパック形状本体が蒸気チャンバを形成し、それにより、空気入口開口及び蒸気吸入開口を介して蒸気チャンバを通る空気/蒸気経路を与えるために蓋が開放されるときに貯留された蒸気を患者への直接的な投与のために利用できる、吸入器デバイスが提供される。
【0042】
1つの実施形態では、吸入可能な液体の貯留及び患者への送出のための吸入器デバイスであって、前記装置がパック形状本体を備え、パック形状本体が、
(1)吸入可能な液体が予め充填された受動蒸発支持材料を備えるレセプタクル、
(2)レセプタクル蓋、
(3)少なくとも1つの空気入口開口、及び、
(4)少なくとも1つの蒸気吸入開口、
のみから成り、
吸入可能な液体を貯留するためにレセプタクル蓋が閉じられるときに空気入口開口及び蒸気吸入開口が閉鎖位置にあり、更に、吸入可能な液体が貯留時に蒸気を形成するにつれてパック形状本体が蒸気チャンバを形成し、それにより、空気入口開口及び蒸気吸入開口を介して蒸気チャンバを通る空気/蒸気経路を与えるために蓋が開放されるときに貯留された蒸気を患者への直接的な投与のために利用できる、吸入器デバイスが提供される。
【0043】
吸入器デバイスは「パック形状」と見なされるが、変形を受け入れることができると理解される。例えば、レセプタクル蓋は、平坦ではなく、湾曲され、例えばドーム形を成していてもよく、又は、レセプタクル蓋は、例えば、ユーザが蓋を開けるのを助けるための随意的なグリップの付加により異なる外形を成してもよい。パック形状本体はその高さに関して長尺であってもよく又は先が断ち切られてもよいが、1つの実施形態では、ポケットサイズの収納及び携帯性のために薄型で容易に積み重ねることができる装置を提供するべく平坦な上端(すなわち、レセプタクル蓋の上端)及び平坦な下端(すなわち、レセプタクルの下端)を有する先が断ち切られたパック形状本体が提供される。
【0044】
使用のために必要とされる際には、患者が吸入するにつれて蒸気を患者へ送出するべく空気が蒸気チャンバに流れ込んで受動蒸発支持材料の表面を横切って流れることができるようにするために空気入口開口及び蒸気吸入開口が開放される。
【0045】
空気入口開口及び蒸気吸入開口は、蒸気チャンバを通る空気流経路を与えるために多くの方法でパック形状本体に形成されてもよい。例えば、これらの開口は、蓋が開放されるときに露出され得るレセプタクル又はレセプタクル蓋の溝又は穴によって形成されてもよく、或いは、蓋が調整可能に開放されるときにレセプタクルの対応する溝又は穴と部分的に又は完全に位置合わせされるレセプタクル蓋の溝又は穴によって形成されてもよい。
【0046】
1つの実施形態では、ユーザが吸入するにつれて蒸気をユーザに送出するべく蓋が開放されるときに蒸気チャンバを通る空気流経路を与えるために空気入口開口及び蒸気吸入開口がレセプタクル蓋に形成される。他の実施形態において、空気入口開口及び蒸気吸入開口は、蓋が調整可能に開放されるときに装置を通る空気流経路を与えるようにレセプタクル蓋及びレセプタクルの両方に形成され、それにより、ユーザが吸入する際に蒸気をユーザに送出するべく蓋の開口をレセプタクルの開口と部分的に又は完全に位置合わせすることによって空気流経路を調整可能に制御する。1つの実施形態において、レセプタクル蓋は、蒸気吸入開口を介して蒸気を送出するための一体形成されたマウスピースを備える。
【0047】
レセプタクル蓋は、例えば、レセプタクルに対して蓋を跳ね上げる、上方へ引き上げる、ねじる、旋回させる、回転させる、又は、蓋のねじを緩めることによって開放されてもよい。1つの実施形態では、レセプタクル蓋が回転可能に開放される。レセプタクル蓋は、例えばねじ山構成又はスナップ嵌合結合構成によってレセプタクルとシール係合するように着脱可能に締結されてもよい。空気流路は、部分的に開放される又は完全に開放される開口をもたらすためにレセプタクルに対して蓋を跳ね上げる、上方へ引き上げる、ねじる、旋回させる、回転させる、又は、蓋のねじを緩めることによって調整可能に制御されてもよい。また、レセプタクル蓋は、好適には、断続的な使用中に余分な蒸気が開口を通じて逃げるのを防止するために蓋を閉じることによって装置を一時的に密封できるようにしてもよい。
【0048】
レセプタクル蓋は、随意的には、貯留モードのための装置の密閉及び再密閉を助ける詰め物挿入体を備えてもよい。したがって、1つの実施形態では、レセプタクル蓋が随意的に詰め物挿入体を備える。詰め物挿入体は、レセプタクル蓋が閉じられるときに密閉をもたらするのに役立つために圧縮性材料と蒸気不透過性フィルム又は箔とを備えてもよい。圧縮性材料の例としては、高分子発泡体又はLDPEなどのスポンジが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
蒸気不透過性フィルムの例としては、高分子フィルム、金属箔(例えば、アルミニウム、ニッケル、及び、それらの合金など)、及び、それらの共押出高分子フィルム及び/又はラミネートフィルムなどの箔を含むこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、蒸気不透過性フィルムは、高分子フィルム又は金属箔から選択される単一層である。他の実施形態において、蒸気不透過性フィルムは、高分子フィルム、金属箔、及び、それらの共押出高分子フィルム及び/又は箔を含む組合せから選択される2つ以上の層を備えるラミネートフィルムである。ラミネートフィルムは、例えばLLDPEなどの適切な溶着可能な箔又は高分子フィルムから形成される溶着可能な層を備えてもよい。溶着可能な層は、ラミネートの層を一緒にシールすること及び/又は溶着可能な層を備える蒸気不透過性フィルムを装置に対してシールすることに役立ってもよい。溶着に適したプロセスとしては、熱溶着及び超音波溶着が挙げられる。
【0050】
1つの実施形態において、高分子フィルムは、100g/m/24h未満、好ましくは50g/m/24h未満のMVTRを有する。1つの実施形態において、高分子フィルムは、ポリオレフィン、高分子フタル酸エステル、フッ素化高分子、ポリエステル、ナイロン、ポリビニル、ポリスルホン、天然高分子、及び、例えば二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)などの二軸延伸高分子を含むそれらの共押出高分子を含む組合せから成るグループから選択される高分子を備える。1つの実施形態において、高分子フィルムは、PP、PE、LDPE、LLDPE、HDPE、BOPP、4-メチルペンテン、ポリメチルペンテンポリシクロメチルペンテン、PEN、PET、PETP、PEI、PBT、PTT、PCT、Kel-F、PTFE、セルロースアセテート、POM、PETG、PCTG、PCTA、ナイロン、PVA、EVOH、デンプン、セルロース、タンパク質、及び、それらの共押出高分子を含む組合せから成るグループから選択される高分子を備える。
【0051】
1つの実施形態において、蒸気不透過性フィルムはPETを備える。他の実施形態において、蒸気不透過性フィルムは、PETと、金属箔層、好ましくはアルミニウム箔層とを備える。1つの実施形態では、蒸気不透過性フィルムが金属化PET(Met PET)を備える。
【0052】
本装置は、携帯可能な容易に使用できる一体型の薬剤貯留送出装置を提供するために吸入可能な液体が予め装填される受動蒸発支持材料を備える。本装置は、メトキシフルランのための従来の吸入器デバイスと比べて、例えば、緊急時、病院にいないとき、孤立した環境で、屋外環境で、スポーツしているとき、人道的支援で、及び/又は、現場作業環境で迅速な痛みの軽減が必要とされるときに、容易な投与、特に自己投与をもたらす。
【0053】
1つの実施形態において、受動蒸発支持材料は、蒸気チャンバを通じた単一の長手方向空気流/蒸気経路を形成するようになっている。他の実施形態において、受動蒸発支持材料は、蒸気チャンバを通じた少なくとも2つの独立した長手方向空気流/蒸気経路を形成するようになっている。好ましい実施形態において、受動蒸発支持材料は、蒸気チャンバを通じた3つ以上の独立した長手方向空気流/蒸気経路を形成するようになっている。
【0054】
1つの実施形態において、受動蒸発支持材料は、蒸気チャンバを通じた単一の長手方向空気流/蒸気経路を形成するようになっており、その形態は、平面ライニング、蒸気チャンバ壁の部分ライニング、及び、蒸気チャンバ壁の全ライニングから成るグループから選択される。
【0055】
他の実施形態において、受動蒸発支持材料は、少なくとも2つの独立した長手方向空気流/蒸気経路、好ましくは3つ以上の独立した長手方向空気流/蒸気経路を蒸気チャンバを通じて形成するようになっている。少なくとも2つ、好ましくは3つ以上の独立した長手方向空気流/蒸気経路を形成できる断面形状の多数の例が想定されてもよく、そのうちの一部は以下の通りである。2つ、好ましくは3つ以上の独立した長手方向空気流/蒸気経路は、例えば、これらに限定されないが、少なくとも2つの独立した空気流/蒸気経路を形成できるA形、B形、S形、Z形、数字2、数字5、及び、数字8、並びに、蒸気チャンバを通じて3つ以上の独立した長手方向空気流/蒸気経路を形成できるK形、M形、V形、W形、X形、Y形、及び、数字3などのアルファベットの文字又は1桁の数字から選択される断面形状をとる受動蒸発支持材料によって形成されてもよい。
【0056】
1つの実施形態において、受動蒸発支持材料は、3つ以上の独立した長手方向空気流/蒸気経路を与えるようになっている。経路は、受動蒸発支持材料それ自体を貫く独立した導管として形成されてもよく、又は、経路は、受動蒸発支持材料が蒸気チャンバの内面と接触することによって形成されてもよい。したがって、1つの実施形態において、受動蒸発支持材料は、3つ以上の長手方向導管を備え、この場合、導管は、受動蒸発支持材料内に形成され、又は、蒸気チャンバの内面と共に受動蒸発支持材料によって形成され、又は、それらの組合せである。3つ以上の独立した長手方向空気流/蒸気経路を与えるようになっている受動蒸発支持材料は、より小さいサイズの装置に特に適し得る。
【0057】
受動蒸発支持材料は、吸入可能な液体を吸収してそれを受動的に蒸気として放出するのに適した任意の材料から形成されてもよい。ウィッキング特性を有する材料が、本装置での使用にとって特に好ましい受動蒸発支持材料である。ウィッキング特性は、一般に、引き出し、拡散、引張又は別の方法によるものであろうと、材料の初期接触点から材料の全体にわたってであろうと、及び/又は、液体が材料の露出された表面領域から蒸発するにつれてであろうと、液体を分配することによって、材料がその表面からの液体の蒸発率又は気化率を促進させる又は高めることができる能力を含むように理解される。したがって、1つの実施形態では、受動蒸発支持材料がウィッキング材料である。1つの実施形態では、ウィッキング材料がウィッキングフェルト又は多孔質高分子材料である。好ましい実施形態では、ウィッキング材料がポリプロピレンウィッキングフェルトである。
【0058】
本装置は、ハロゲン化揮発性液体、特に鎮痛剤として使用するためのメトキシフルランを貯留して投与するのに特に有用であると考えられる。したがって、1つの実施形態では、吸入可能な液体がハロゲン化揮発性液体である。更なる実施形態において、ハロゲン化揮発性液体は、ハロタン(2-ブロモ-2-クロロ-1,1,1-トリフルオロエタン)、セボフルラン(フルオロメチル-2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチルエーテル)、デスフルラン(2-ジフルオロメチル-1,2,2,2-テトラフルオロエチルエーテル)、イソフルラン(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)、エンフルラン(2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)、及び、メトキシフルラン(2,2-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチルメチルエーテル)から成るグループから選択される。好ましい実施形態において、吸入可能な液体は、鎮痛剤として使用するためのメトキシフルランである。
【0059】
本装置による患者への投与に適した吸入可能な液体の送出用量は、例えば、規制された承認用量を参照することによって決定されてもよい。鎮痛剤として使用するためのメトキシフルランの適切な送出用量は、一般に、15mL未満、好ましくは12mL未満である。1つの実施形態において、送出用量は、0.5mL、1mL、1.5mL、2mL、2.5mL、3mL、3.5mL、4mL、4.5mL、5mL、5.5mL、6mL、6.5mL、7mL、7.5mL、8mL、8.5mL、9mL、9.5mL、10mL、10.5mL、11mL、11.5mL及び12mLから成るグループから選択される。1つの実施形態において、本装置による投与のためのメトキシフルランの送出用量は、1.5mL、3mL及び6mLから成るグループから選択される。
【0060】
装置は様々な材料から形成されてもよい。しかしながら、適した材料は、貯留及び/又は送出されるべき吸入可能な液体を基準にしてそれらの材料が化学的に不活性である、安定している、及び、不浸透性であるかどうかを考慮することによって選択されてもよい。材料は、FDAのような規制当局による医療グレード人体使用のための承認された基準を満たすかどうかを基準にするなどして医療機器用途へのそれらの適合性に基づき選択されてもよい。
【0061】
本装置は、ハロゲン化揮発性液体を貯留する及び投与するのに特に有用であると想定される。したがって、1つの実施形態において、装置は、ハロゲン化揮発性液体、特に鎮痛剤として使用するためのメトキシフルランの貯留及び患者への送出に適合する1つ以上の材料から形成される。
【0062】
本装置を形成するのに適し得る材料の例としては、高分子(ホモポリマー及びヘテロポリマー、すなわち、コポリマーを含む)、複合材料(ナノ複合材料を含む)、金属(その合金を含む)、及び、それらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、装置は、高分子(ホモポリマー及びヘテロポリマー、すなわち、コポリマーを含む)、複合材料(粘土と組み合わせた高分子などのナノ複合材料を含む)、金属(アルミニウム及びその合金を含む)、及び、それらの組合せから形成される。更なる実施形態において、装置は、高分子(ホモポリマー及びヘテロポリマー、すなわち、コポリマーを含む)、複合材料(粘土と組み合わせた高分子などのナノ複合材料を含む)、金属(アルミニウム、ニッケル、及び、それらの合金を含む)、酸化物(酸化アルミニウム、酸化ケイ素を含む)、樹脂(エポキシフェノール樹脂及びDuPontの商標であるSurlyn(登録商標)などのアイオノマー樹脂を含む)、ラッカー及びエナメルから成るグループから選択される1つ以上の材料で随意的に内部が裏打ちされ又はコーティングされる。
【0063】
本装置の1つの利点は、吸入可能な液体の貯留及び投与に必要な個々の構成要素又は部品の数が最小であるという観点から操作が容易であることに加え、製造が比較的単純で低コストであることだと考えられる。レセプタクルは、単一の製造部品として形成されてもよい。レセプタクル蓋は、同一又は異なる材料から別々に形成されてもよい。1つの実施形態において、レセプタクル及びレセプタクル蓋は、高分子材料、金属(例えば、アルミニウム、ニッケル)、及び、金属合金(例えば、ステンレス鋼)から成るグループから選択される材料から独立に形成される。
【0064】
高分子は、射出成形、ブロー成形、及び、押出プロセスによる本明細書中に記載される本装置及び高分子フィルムの大規模製造に特に適している。また、それらの高分子は、3D印刷技術による更に小さい規模での本装置の製造に適している。更に、高分子は、装置の廃棄後にリサイクルされてもよい。
【0065】
本明細書中に記載される本装置及び高分子フィルムを形成するのに用いる高分子の例としては、以下の高分子及びそれらの組合せ(共押出高分子を含む)、すなわち、ポリプロピレン(「PP」)、低密度ポリエチレン(「LDPE」)、直鎖状低密度ポリエチレン(「LLDPE」)、及び、高密度ポリエチレン(「HDPE」)を含むポリエチレン(「PE」)、二軸延伸ポリプロピレン(「BOPP」)、4-メチルペンテン、ポリメチルペンテン、ポリシクロメチルペンテンなどのポリオレフィン;ポリエチレンナフタレート(「PEN」)、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)((「PETE」)としても知られる)、ポリエチレンテレフタレートポリエステル(「PETP」)、ポリエチレンイソフタレート(「PEI」)、ポリブチレンテレフタレート(「PBT」)、ポリトリメチレンテレフタレート(「PTT」)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(「PCT」)などの高分子フタル酸エステル;製造後にフッ素化される(例えば成形後フッ素化)高分子、フッ素化エチレン-プロピレン、クロロトリフルオロエチレン(「Kel-F」)、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)を含むフッ素化高分子;酢酸セルロース、ポリオキシメチレン(「POM」)を含むポリエステル、及び、ポリエチレンテレフタレートグリコール共ポリエステル(「PETG」)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートグリコール改質体(「PCTG」)、及び、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート/イソフタル酸(「PCTA」)などのコポリマーを含むテレフタル酸エステル基を含有するポリエステル;アモルファスナイロンを含むナイロン;ポリビニルアルコール(「PVA」)及びエチレンビニルアルコール(「EVOH」)を含むポリビニル;ポリエーテルスルホン(「PES」)を含むポリスルホン;及び、デンプン、セルロース、及び、タンパク質を含む天然高分子を挙げることができるが、これらに限定されない。また、適切な高分子は、100g/m/24h未満、好ましくは50g/m/24h未満の水蒸気透過率(「MVTR」、水蒸気透過率「WVTR」としても知られる)を有する高分子を含んでもよい。
【0066】
したがって、1つの実施形態では、装置が1つ以上の高分子から形成され、この場合、装置は、高分子(ホモポリマー及びヘテロポリマー(コポリマーとしても知られる)を含む)及びその組合せ(共押出高分子を含む)、複合材料(粘土と組み合わせた高分子などのナノ複合材料を含む)、金属(アルミニウム、ニッケル、及び、それらの合金を含む)、酸化物(酸化アルミニウム、酸化ケイ素を含む)、スプレーコーティング、樹脂(エポキシフェノール樹脂及びDuPontの商標であるSurlyn(登録商標)などのアイオノマー樹脂を含む)、ラッカー及びエナメルから成るグループから選択される1つ以上の材料を伴う随意的な内部ライニング又はコーティングを更に備える。
【0067】
1つの実施形態において、高分子は、ポリオレフィン、高分子フタル酸エステル、フッ素化高分子、ポリエステル、ナイロン、ポリビニル、ポリスルホン、天然高分子、及び、それらの共押出高分子を含む組合せから選択される。1つの実施形態において、高分子は、100g/m/24h未満、好ましくは50g/m/24h未満のMVTRを有する。1つの実施形態において、ポリオレフィンは、PP、PE、LDPE、LLDPE、HDPE、4-メチルペンテン、ポリメチルペンテンポリシクロメチルペンテン、及び、それらの共押出高分子を含む組合せから成るグループから選択される。1つの実施形態において、高分子フタル酸エステルは、PEN、PET、PETP、PEI、PBT、PTT、PCT及びBOPPなどのそれらの共押出高分子を含む組合せから成るグループから選択される。1つの実施形態において、フッ素化高分子は、Kel-F、PTFE、及び、それらの共押出高分子を含む組合せから選択される。1つの実施形態において、ポリエステルは、セルロースアセテート、POM、及び、PETG、PCTG、PCTAを含むテレフタル酸エステル基を含有するポリエステル、並びに、それらの共押出高分子を含む組合せから成るグループから選択される。1つの実施形態では、ナイロンがアモルファスナイロンである。一実施形態では、ポリビニルは、PVA、EVOH及びそれらの共押出高分子を含む組合せから選択される。1つの実施形態では、ポリスルホンがPESである。1つの実施形態において、天然高分子は、デンプン、セルロース、タンパク質、及び、それらの共押出高分子を含む組合せから成るグループから選択される。
【0068】
1つの実施形態において、装置は、PP、PE、LDPE、LLDPE、HDPE、BOPP、4-メチルペンテン、ポリメチルペンテンポリシクロメチルペンテン、PEN、PET、PETP、PEI、PBT、PTT、PCT、Kel-F、PTFE、セルロースアセテート、POM、PETG、PCTG、PCTA、ナイロン、PVA、EVOH、デンプン、セルロース、タンパク質、及び、それらの共押出高分子を含む組合せから成るグループから選択される単一の高分子から形成される。他の実施形態において、装置は、PP、PE、LDPE、LLDPE、HDPE、4-メチルペンテン、ポリメチルペンテンポリシクロメチルペンテン、PEN、PET、PETP、PEI、PBT、PTT、PCT、Kel-F、PTFE、セルロースアセテート、POM、PETG、PCTG、PCTA、ナイロン、PVA、EVOH、デンプン、セルロース、タンパク質、及び、それらの共押出高分子を含む組合せから成るグループから選択される2つ以上の高分子から形成される。1つの実施形態において、装置は、HDPE、PET、及び、それらの組合せから成るグループから選択される高分子から形成される。1つの実施形態では、装置がPETを備える。
【0069】
レセプタクル蓋又はレセプタクルが蒸気吸入開口を介して蒸気を送出するための一体形成されたマウスピースを備える実施形態では、マウスピースの形状が患者使用に適した任意の形状であってもよい。1つの実施形態では、マウスピースがマウスピース穴に向かって先細りになっている。1つの実施形態において、マウスピース穴の断面形状は、従来のエアロゾル又はネブライザーフェイスマスクに適合するようになっている。
【0070】
吸入可能な液体を装置を使用して患者が自己投与できるため、装置は、患者の手首又は首の周りに配置するためのラニヤード及びそれに取り付くためのポイントを随意的に備えてもよい。したがって、1つの実施形態において、装置は、ラニヤード及びそれに取り付くためのポイントを備える。
【0071】
実施例1
図1は、Penthrox(商標)/(登録商標)(メトキシフルラン)を鎮痛剤として送出するためにオーストラリアで現在使用される従来技術のGreen Whistle(商標)吸入器デバイス(1)(Medical Developments International Limited)(1.5mL又は3mL、スクリューキャップを伴う茶色のガラスバイアル貯留容器)を示す。使用のために必要とされる際には、送出用量のメトキシフルランが装置の基端部(3)に流し込まれる。用量が蒸発手段(図示せず)上への送出のために基端部に流し込まれた後、メトキシフルランは、患者がマウスピース(2)を通じて空気/蒸気混合物を吸入することにより鎮痛薬を自己投与できるように蒸発する。患者がマウスピースを通じて呼吸し続ければ、任意の呼気/蒸気混合物は、活性炭を収容する外的に取り付けられるチャンバ「ACチャンバ」(4)を介して装置から抜け出る。
【0072】
実施例2
図2Aは、本発明の一実施形態に係る吸入器デバイス(5)を示す。吸入器デバイスは、パック形状本体を有するとともに、レセプタクル(6)及び空気入口穴(7a)を伴うレセプタクル蓋(7)と、一体成形されて部分的に先細るマウスピース(8)とを備える。蓋及びマウスピースの形状をより良く示すために装置の上面図が図5Aに示される。図2Bでは、マウスピースの蒸気吸入穴(8a)が破線図により示される。また、メトキシフルランなどの吸入可能な液体(9)が予め充填される内部に収容される受動蒸発支持材料も示される。貯留モードにおいて、吸入器デバイスは、吸入可能な液体及びその蒸気のための密封された貯留容器として機能し、それにより、吸入器デバイスは、準備万端であり、開放時にいつでも薬剤を蒸気形態で患者へ迅速に送出するできる状態にある。図3に与えられる分解図は、折り畳まれた構成の受動蒸発支持材料を示す。貯留及び/又は使用時に受動蒸発支持材料の動きを防止するために、レセプタクルは位置決め手段(6a)も備える。また、レセプタクル蓋は詰め物挿入体(10)も備える。蓋が開放されると、空気流経路が蒸気チャンバの空気入口開口及び蒸気吸入開口を通じて形成される。図4Aは、空気入口穴(7a)端からの空気流経路を示し、また、図4Bは、蒸気吸入穴(8a)端からの空気流経路を示す。図4Cは、空気入口穴から蒸気吸入穴までの蒸気チャンバを通じた空気流経路の側方視野を与えるための断面図である。使用中の装置が図5Bに更に示され、この図5Bは、患者による吸入時の空気/蒸気流の方向を示す。
【0073】
実施例3
吸入器デバイスがメトキシフルランを送出できる能力は、肺波形発生システムなどの呼吸シミュレータシステムを用いて検査されてもよい。
【0074】
外部ACチャンバが取り付けられたGreen Whistle装置及び本発明に係るプロトタイプ装置(図2)によるメトキシフルランの送出(%濃度)は、肺波形発生システムを用いて測定された。プロトタイプ装置は、HDPE同等の材料を使用してラピッドプロトタイプとして製造された。
【0075】
両方の装置が以下のように検査された。肺波形発生器が「大人」流量条件(毎分14回の呼吸)に設定され、濃度ロギングソフトウェア及びDatexセンサが開始された。各検査ごとに、送出されるべきメトキシフルラン(3mL)がポリプロピレン製の芯に予め充填され、その後、装置のマウスピース端部が肺波形発生器の開口に挿入された。最初の呼吸濃度のために最初の1分間、その後、定常状態試験のために次の20分間、集中ロギングが開始された。
【0076】
結果が図6に与えられる。いずれの場合も、装置がメトキシフルランを送出した。Green Whistle装置は当初はより高いレベルでメトキシフルランを送出したが、プロトタイプ装置は、より長い時間にわたって定常状態レベルを維持することが分かった。したがって、プロトタイプ装置は、より低い濃度のメトキシフルランをより長い期間にわたって送出することが分かった。これに対し、Green Whistle装置は、より短い期間にわたってより高い定常状態レベルでメトキシフルランを最初に送出し、その後、急速に減少してプロトタイプ装置により達成されるメトキシフルランの定常状態濃度を下回ることが分かった。
【0077】
この明細書及び特許請求の範囲の全体にわたって、文脈が別段に必要としなければ、「備える(comprise)」という単語及び「備える(comprises)」や「備えている(comprising)」などのその変形は、述べられた整数又はステップ或いは一群の整数又はステップを含むことを意味するが、任意の他の整数又はステップ或いは一群の整数又はステップを排除することを意味しないものと理解される。
【0078】
この明細書における任意の従前の刊行物又はそれから導き出される情報或いは既知の任意の事項への言及は、この明細書が関連する対象分野における共通の一般的知識の一部を従前の刊行物又はそれから導き出される情報或いは既知の事項が形成するという確認又は承認又は任意の形態の示唆として解釈されず、また、解釈されるべきでない。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6