IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジーの特許一覧

特許7043400垂直カーボンナノチューブおよびリチウムイオンバッテリーの化学、物品、アーキテクチャーおよび製造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】垂直カーボンナノチューブおよびリチウムイオンバッテリーの化学、物品、アーキテクチャーおよび製造
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20220322BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20220322BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220322BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20220322BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220322BHJP
   H01M 4/70 20060101ALI20220322BHJP
   H01M 4/38 20060101ALN20220322BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALN20220322BHJP
   H01M 4/134 20100101ALN20220322BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/0565
H01M4/13
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M4/70 Z
H01M4/38 Z
H01M10/0525
H01M4/134
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018525660
(86)(22)【出願日】2017-01-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-02-07
(86)【国際出願番号】 US2017014359
(87)【国際公開番号】W WO2017127694
(87)【国際公開日】2017-07-27
【審査請求日】2019-12-27
(31)【優先権主張番号】62/286,075
(32)【優先日】2016-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/286,083
(32)【優先日】2016-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/287,497
(32)【優先日】2016-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/308,740
(32)【優先日】2016-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508032284
【氏名又は名称】カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】イザベル エム ダロレス
(72)【発明者】
【氏名】アジン ファイミ
(72)【発明者】
【氏名】コン ワン
(72)【発明者】
【氏名】アドリアヌス アイ アリア
(72)【発明者】
【氏名】ルチアーナ センドン
(72)【発明者】
【氏名】モルテザ ガリブ
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-265674(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102891335(CN,A)
【文献】国際公開第2014/203965(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0010788(US,A1)
【文献】特表2013-521629(JP,A)
【文献】特開2006-147210(JP,A)
【文献】特開2012-119236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/058-10/0587
H01M 10/0565
H01M 10/052-10/0525
H01M 10/04
H01M 4/13-4/1399
H01M 4/62
H01M 4/66-4/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セルの製造にあたり、
アノード活物質を組み込むアノードカーボンナノチューブが支持される第1の集電体を含むアノードを形成すること;
カソード活物質を組み込むカソードカーボンナノチューブが支持される第2の集電体を含むカソードを形成すること;
前記第1の集電体および第2の集電体の間に密着するように設けられる固形ポリマー絶縁体を形成すること;および
前記第1の集電体第2の集電体および固形ポリマー絶縁体を同一平面内にぴったりと合った関係に組み立てることであって、ここで、前記固形ポリマー絶縁体は、前記第1の集電体および第2の集電体を分離し且つ該第1の集電体および第2の集電体が電気的に短絡するのを防止するように構成される、こと
を含む、方法。
【請求項2】
固形ポリマー絶縁体はフォトリソグラフィーによって形成される、請求項1の方法。
【請求項3】
アノードおよびカソードカーボンナノチューブの間にポリマー電解質ペーストを充填することをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項4】
ポリマー電解質ペーストを固形状態に硬化させることをさらに含む、請求項3の方法。
【請求項5】
組立後にアノードおよびカソードカーボンナノチューブの間を充填することをさらに含む、請求項3の方法。
【請求項6】
ポリマー電解質ペーストには、官能化ポリ(エチレングリコール)、リチウム塩、イオン液体、およびグラフェンオキシドが含まれる、請求項3の方法。
【請求項7】
前記固形ポリマー絶縁体が、前記第1の集電体及び第2の集電体の部分の間の30μmのギャップ内に取り付けられる、請求項1の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、リチウムイオン(Li-イオン)電気化学セル(即ち、バッテリー)、特に二次(即ち、再充電可能な)Li-イオンバッテリー(LiBs)に関する。
【背景技術】
【0002】
LIBsは電気エネルギーを蓄える卓越した手段となっている。二次電池の中で、LIBsは、いくつかの顕著な利益、例えば、高い容量および重量エネルギー密度、長い貯蔵寿命および操作のボーダー温度範囲(boarder temperature range)などのようなものを提供する。LIBsの商業化により、ラップトップコンピュータおよび高性能スマートフォンの実現が可能になった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
目下の商業上のリチウムイオンバッテリーの大部分は、正極またはカソードとしてのリチウム含有遷移金属酸化物、および負極またはアノードとしての炭素質材料(特にグラファイト)との組合せに基づく。そのように構成された、既存のLIBsの比エネルギーは、多くの用途、例えば、電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、およびスマートグリッドコミュニティシステムなどのようなものでは、電極材料の比電荷キャパシティが限られているため、依然として不十分である。
【0004】
LIBsのエネルギー密度を大幅に改善するために、シリコンアノードおよびLi2Sカソードの使用が構想された。シリコンは4,200mAh/gの理論電荷キャパシティを有し、それは、372mAh/gの理論キャパシティを有する目下のグラファイトアノードの10倍よりも高い。その豊富さ、低コスト、および高い理論キャパシティのために、イオウ系材料は最も有望なカソードの1つと考えられた。有害な遷移金属化合物と比較したとき、イオウはなおより一層環境にやさしいと考えられる。
【0005】
シリコンアノードおよびLi2Sカソード化学は、1550Wh/kgの理論的比エネルギーを有するLIBをもたらし、それは既存のLIBsの理論的比エネルギーの4倍である。それにもかかわらず、イオウカソードおよびシリコンアノードには、それらの実用化が妨げられる欠点がある。
【0006】
イオウの主な欠点は、高溶解性ポリスルフィド種が充放電サイクル中に液状電解質において形成されることである。その結果、いわゆる「シャトル効果」が生じ、それは陽イオウ電極から活物質を除去し、およびまたアノード表面領域を損傷または不活性化する。さらに、イオウ系バッテリーは、低い電子伝導性を、付随する非効率性と共に有する。
【0007】
シリコーンアノード使用の欠点は、サイクリングの際に生じる大きな容量変化(>400%)である。この問題は、集電体からのシリコンの破砕、亀裂および断絶を引き起こし、サイクリング中のキャパシティの損失につながる。それに加え、容量変化はまた、固形電解質界面(SEI)フィルムの不可逆的および連続的な形成を引き起こす。この表面フィルムは、アノード表面を不動態化し、および電解質溶液のさらなる分解を防止する。しかしながら、電気化学的サイクル中にシリコンが経験する大量の変化は、SEI層を連続的に弱化させ、および破砕し得、各サイクル毎に新鮮なシリコンが電解質に露出する。
【0008】
ナノ構造(例えば、ナノワイヤ)支持体をリチオ化/脱リチオ化する際に、活物質を粉砕から保護する努力は、その関連で有効であることが証明された。しかしながら、そのような作用は、ナノ構造材料の表面積が増大するため、サイクリングの際のSEIの持続性の破壊/再形成に関連する問題を増大させる。シリコン粒子上にコーティングされた薄い炭素層は、SEIの機械的安定性を高め、およびアノードの寿命を改善することが示唆された。しかしながら、薄い炭素層の形成は、炭化ケイ素の形成をもたらす高温アニーリングを要し、シリコンの一部分を不活性にする。
【0009】
現在まで、全体的な解決策は特定されていない。むしろ、上述した問題は、シリコンアノードおよびイオウカソードLIBsを様々に制限し、それらが、急速なキャパシティフェーディング、乏しいサイクル寿命、低いシステム効率および/または大きな内部抵抗に広く悩まされることになる。
【0010】
LIBsが安全性の問題を提起することがあることも知られる。特に、エネルギーがますますセルに充填されるとき(シリコンアノードおよびイオウカソード化学でのように)、安全性が優先される。多くのLIBsは目下、有機溶媒電解質を用い、それらは揮発性で、および可燃性である。したがって、過充電、内部短絡、物理的損傷、または他の故障メカニズムによってセルが過熱される場合、それが熱暴走を起こし、それは火災や爆発の重大な危険につながることがある。これらの電解質の安全性を改善する試みは、ポリマーまたはセラミック/ガラス固形電解質を用いて固形状態のバッテリーを作り出すことに焦点が当てられた。
【0011】
最も有望な結果は、ポリ(エチレンオキシド)およびLi塩のブレンドに基づくシステムで得られた。しかしながら、これらの材料は非常に乏しいイオン伝導性しか有さず、それはそれらの可能性を制限する。ポリマー電解質へのイオン液体またはセラミックフィラーの添加は、イオン伝導性の顕著な向上を示した。5×10-4 S/cm程度の高い導電性値が室温で達成されたが、これは液状電解質と競合するには低すぎるため、それらの適用が高温での操作に制限される。また、イオン伝導性の上昇は、ポリマー電解質の機械的特性を低下させることが多い。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ここでの実施形態は、前述の性能および/または安全性の考慮事項に様々に対処する。そのようなものとして、それらは、以下の点を考慮して、記載されたような、または当業者には理解されるような利益を提示する。
概略
【0013】
第一のセットの実施形態は、三次元(3D)バッテリーアーキテクチャーのための固形ポリマー電解質を包含する。本ポリマー電解質は、官能化ポリ(エチレン)オキシドまたはポリ(エチレングリコール)で、それは官能化ポリ(エチレン)オキシドに、その分子量が20,000g/mol(何れの場合も、PEG)未満であるときに言及されるためで、リチウム塩、イオン液体、およびフィラーとしてのグラフェンオキシドの組合せである。いわゆる「3D」バッテリーは、それらのアーキテクチャーを、米国特許出願公開第(USPPN)2015/0010788号において記載されたものと共有することができ、それらは参照によりここに組み込まれる。
【0014】
以下に詳述する他のアーキテクチャーおよび/または関連する製造方法も同様に使用することができる。これらの実施形態はまた、参照によりここにもまた組み込まれる’788公報に記載されるシリコンおよびイオウ(すなわちSi/S)ならびに他の関連する化学物質を利用または共有してもよい。
【0015】
しかしながら、構成されたように、本ポリマー電解質は、本システムにおいていくつかの重要な役割または機能を果たす。すなわち、それは、優れたバッテリー性能を提供するために、実施形態に依存して、単独でまたは組み合わせて以下の手段を提供する:(1)アノードおよびカソードの間のLiイオン輸送;(2)アノードおよびカソードの接触を回避する電極間の物理的障壁(そうでなければ電気的経路の短絡をもたらす);(3)ポリマー電解質が揮発性および可燃性の有機溶媒を含まないように電池の安全性を確保すること;(4)電極の緩衝応力および歪みによる電極の容量変化に適応すること;(5)ポリスルフィド溶解およびポリスルフィドシャトル機構を防止すること;および(6)アノード表面上に安定なSEIを、Si表面に結合し、およびそれによって安定化される可能性があるポリマーと共に形成することである。
【0016】
第二のセットの実施形態は、3Dバッテリー生産のための製造方法またはプロセスを包含する。一つの方法では、インターレースまたはインターリーブされたアノードおよびカソード(すなわち、負電極および正電極)集電体構造を分離するために、マイクロスケールポリマー構造が製造される。介在したマイクロ構造ポリマー要素(群)の配置は、電気的短絡を回避する。
【0017】
別の方法では、寸法的に安定なセラミック基材が生成され、それは、インターレースまたはインターリーブされたアノードおよびカソードが、垂直配向の(縦に整列したとも言う)カーボンナノチューブ(VACNT)の成長用に、導電性成長基材(例えば、ニッケル)をその上に適用する際に提供されるようにするためである。一旦VACNTsにて電気的に活性な材料を組み込みおよび/または堆積させると、電気的短絡なしに(上述したマイクロ構造の絶縁の有無にかかわらず)セルを組み立てることができ、残りのギャップは液状または固形電解質で満たされる。
【0018】
第三のセットの実施形態は、シリコンアノードのサイクル中に安定なSEIを形成するために、ポリ(エチレン)オキシドビス(アジド)(PEO-N3)を使用する組成物および方法を包含する。高いLiイオン伝導性およびシリコン表面(群)への良好な結合により、ポリマー層は良好なバッテリー性能を可能にしながらシリコンを保護する。具体的には、薄い層(例えば、約10nmないし約100nmの間から)は低い抵抗性(例えば、約103から約104Ω.cmまで)を提供し、バッテリー性能はほとんど影響を受けず、その一方でポリマーは電解質分解を有効に防止する。これらの実施形態は、VACNTアーキテクチャーに関連して有利に採用され-下記にさらに詳述されるように3D配置、または2次元(2D)配置で採用されてもよい。
【0019】
第四のセットの実施形態は、グラフェンポリ(乳酸)(PLA)複合体がセルのカソードおよび/またはアノード材料を覆う組成物および方法を包含する。第三のセットの実施形態の場合と同様に、これらは、VACNTアーキテクチャーに関連して有利に使用され-2Dまたは3D配置で採用されるか問わない。
【0020】
主題の化学、アーキテクチャー、ハーフセル(半電池とも言う)および/またはそこから構成される個々のまたは単体のセル、セルのグループ、キットで、それにはそれらが含まれ(アセンブリ(集合体とも言う)を伴うか、または伴わずに)、使用および製造の方法は、すべてが本開示の範囲内に含まれる。同じもののいくつかの態様は、上記で説明され、およびより一層詳細な議論は、以下に図に関連して提示する。ここに記載する主題の他のシステム、デバイス、方法、特長および利益は、以下の図および詳細な記載を検討することにより、当業者には明らかになるであろう。
【0021】
すべてのそのような追加のシステム、デバイス、方法、特長および利益は、この明細書内に含まれ、ここに記載される主題の範囲内であり、および添付の請求の範囲によって保護されることが意図される。例示的な実施形態の特長は、請求の範囲におけるそれらの特長の明示的な記載がない限り、添付の請求の範囲を制限するものと決して解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
ここに記載する主題の詳細は、その構造および操作の双方に関して、添付の図面の検討によって明らかになり得、そこでは、同様の参照番号は同様の部分を指す。図面において構成要素は必ずしも縮尺どおりではなく、代わりに主題の原理を例示することに重点を置く。さらに、すべての実例は概念を伝えることが意図され、そこでは、相対的な大きさ、形状および他の詳細な属性は、文字通りや、または正確にではなくむしろ模式的に例示され得る。
【0023】
図1図1A-図1Cは、3Dバッテリーアーキテクチャーの実施形態の上面図、側面図および斜視図である。
図2図2Aおよび図2Bは、それぞれ、図1A-1Cの実施形態についてのペーストおよび硬化した(as-cured)固体形態の電解質である。
図3】固形ポリマー電解質の実施形態の導電性を比較するグラフである。
図4】ここでの様々な実施形態に適用可能な電極(アノードまたはカソード)構成の詳細な垂直断面図である。
図5】電極要素の光学顕微鏡図である。
図6】マイクロ構造絶縁要素のより一層高い倍率での挿入図(インセットとも言う)の詳細を伴う光学顕微鏡図である。
図7図5および6においての要素のアセンブリを示す光学顕微鏡図である。
図8図5-7に関連して記載される構成要素を含む実施形態の製造方法を詳述するフローチャートである。
図9図9Aおよび9Bは、それぞれ、その上にニッケル集電体を堆積する前および後のセラミック基材の上面図である。
図10図9Aおよび9Bに関連して記載される構成要素を含む実施形態の製造方法を詳述するフローチャートである。
図11】別の実施形態におけるSEI生産またはPEO-N3による製造を詳細に示すフローチャートである。
図12】G/PLAトラップを伴うか、または伴わないS-VACNT電極の性能のサイクリングを示すグラフである。
図13図13Aおよび13Bは、それぞれ、グラフェンPLA複合体を用いたポリスルフィドトラップ型カソードおよびアノードの生産を詳細に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な記載
様々な例または実施形態を以下に説明する。これらの例を非制限的な意味で参照し、それはそれらが、デバイス、システム(系とも言う)および方法のより一層広範に適用可能な態様を例示するために提供されることに留意すべきだからである。これらの実施形態に対して様々な変化を為し得、および様々な実施形態の真の精神および範囲から離れることなく等価なものを置換することができる。さらに、特定の状況、材料、組成物、プロセス、プロセスアクト(プロセス行為とも言う)(群)(群は複数もあり得ることを示す)またはステップ(群)を本発明の目的(群)、精神または範囲に適合させるために、多くの修飾を行うことができる。そのような修飾はすべて、本開示の範囲内にあることを意図する。
【0025】
本主題を詳細に説明する前に、この開示が記載された特定の例の実施形態に制限されず、それ自体、もちろん、変えられ得ることが理解されるべきである。ここに使用する術語は、特定の実施形態を説明するだけの目的のためのものであり、および制限することを意図するものではなく、それは本開示の範囲が添付の請求の範囲によってだけ制限されるからであることも理解すべきである。
【0026】
ここに提供される任意の実施形態に関して説明されるすべての特長、要素、構成要素、機能、行為およびステップは、任意の他の実施形態からのものと自由に組み合わせ可能であり、および置き換え可能であることが意図される。一定の特長、要素、構成要素、機能、またはステップがただ一つだけの実施形態に関して記載される場合、そのときその特長、要素、構成要素、機能、行為またはステップは、明確に記載されない限り、またはさもなければ不可能でない限り、ここに記載のあらゆる他の実施態様と共に使用することができる。したがって、この段落は、請求の範囲の導入のための先行する基礎および書面による支持としてはたらき、どんなときにも、それは異なる実施形態からの特長、要素、構成要素、機能、行為およびステップを組み合わせるか、または、一の実施態様からの特長、要素、構成要素、機能、行為およびステップを別のもののそれらと置き換え、それは、以下の記載が、特定の例においてそのような組合せまたは置換が可能であることを明示的に述べていない場合でもそうである。逆に、任意の随意な要素(例えば、上記で重大であると示されない任意の要素)を除外するために、請求の範囲をドラフトすることができる。そのようなものとして、この記述は、請求項要素の暗唱、または任意の他のタイプの「否定的な」制限の直接的な使用と関連して、または暗に、任意の与えられる要素に関する「からなる(consisting)」という用語を使用することによる含意によって「専ら」、「だけ」およびその他同種類のものなどのような排他的な術語の使用のための先行する基礎として役立つことを意図する。すべての可能な組合せおよび置換えまたは排除の明示的な暗唱は、過度に負担となり、およびそれによりカバーされる。
【0027】
実施形態の第1のセット
上記に概略した第1のセットの実施形態では、Si/S LIBバッテリー化学に基づくことができる3Dバッテリーアーキテクチャーと共に使用するために「高性能」ポリマー電解質を記載する。ポリマー電解質(高分子電解質とも言う)は、フィラー(充填剤とも言う)として官能化ポリ(エチレングリコール)(PEG)、リチウム塩、イオン液体(イオン性液体とも言う)、およびグラフェンオキシド(酸化グラフェンとも言う)の組合せである。
【0028】
全体的な組合せは、シリコン(ケイ素とも言う)およびイオウ(硫黄とも言う)の有益なエネルギー特性を活用し、その一方、寿命およびコストの問題も考慮に入れる。また、ポリマー電解質は、有毒な、および不安定な材料の不存在、ならびに可燃性有機溶媒の不存在のため、安全性を提供する。
【0029】
図1A-1Cは、ポリマー電解質を用いる3D Si/Sバッテリー10の基本的構成を例示する。カソード12およびアノード14は、インターレース様式において組み立てられるとき、双方の電極要素(即ち、アノードおよびカソード)が同じ平面になるように、櫛の「ティース(歯とも言う)」または交互の「フィンガー(指とも言う)」を有する櫛タイプ立体構成においてパターン化される。ポリマー電解質16は、電極表面の間の空間を充填する(以下に参照するように任意の随意なマイクロ(微細とも言う)構造絶縁性の特色と共に)。
【0030】
図1Aおよび図1Bに示すような十分または完全なアセンブリ(集合体とも言う)では、これらの要素はケーシング18内に収容またはセットされ、およびVNCTsがセットされる集電体(電流コレクタとも言う)部分20をさらに含むことができる(この関連において、「セット」は、成長、付着またはさもなければそれに取り付けることを意味する)。
【0031】
示されるように、電極は同じ平面内でインターレースされる。代替的に、それらは、互いに逆方向にまたは対向して設置されてもよい。
【0032】
前者の配置は、電極12および14の表面または要素をインターフィットのとき相互に非常に近接して置き、従ってイオンの拡散長さまたは距離が減少される。介在されたポリマー電解質16は、アノードおよびカソードの間のLiイオン輸送を保証し、および電極要素間の物理的バリアとして作用する。
【0033】
電解質は、フィラーとして官能化ポリ(エチレングリコール)(PEG)、リチウム塩、イオン液体、および酸化グラフェンの組合せを含むか、または(随意に)それらからなる。電解質16は、図2Aにおいて示すように、室温でペーストとして調製される。それは、このスラリーまたはペースト形態において3Dアーキテクチャーのチャネル22にて導入することができる。それは次に硬化されるか、またはさもなければ物質の固形状態に固くされる。
【0034】
架橋後、組成物は、ペーストから伸縮性の独立フィルムとして機能することができる状態に変換するその意図された機械的特性を発現する。バッテリーにおいてチャネルの外側で、これは図2Bに見ることができる。
【0035】
ポリマー電解質の調製プロセスおよび電極システムへのその組込みは、有機溶媒を使用せずに達成することができる。一旦目的の電極がモールドに組み立てられると、ポリマー電解質を組み込むことができる。
【0036】
1つの例では、すべての化合物は、約60℃またはそれよりも高い(約60℃以上とも言う)(例えば、最大値として約80℃までで、そこでは、随意に精巧に作られた会合された成分のアジド官能基が分解し始めるより下まで)で、混合物が均質になるまで一緒に混合される(すなわち、約60℃未満のポリ(エチレングリコール)の低融点を利用する)。次に、混合物を図1Cに見られる電極システム24の上部に注ぐ。
【0037】
その流動性のために、少なくとも約60℃の温度で、ポリマー電解質混合物は電極システムに注入することができる(is able infuse into)。このプロセスは、バキュームまたは不活性(例えば、希ガスまたはN2)雰囲気下で行うことができる。
【0038】
続いてポリマー電解質を硬化させる。紫外線(UV)光、炉またはオーブンの熱および/またはマイクロ波エネルギーによる硬化は、ポリマーの架橋および機械的強度の顕著な増加をもたらす。ポリマー電解質の機械的特性(例えば、可撓性、弾性および/または変形性)は、成分比を変動することによって最適化することができる。実例の化合物には、yモル比EO/Liおよびxモル比BMP/Liを有するPEOyLiTFSIxBMPTFSIが含まれ、式中、PEO=ポリ(エチレン)オキシド、LiTFSI=ビス(トリフルオロメチルスルホニル)リチウム塩およびBMPTFI(イオン液体)=1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドであり、およびYは10から20まで、およびxは0から4まで変動することができる。x=0を伴い、ポリマー電解質フィルムは粘着性がなく、剛性で、および伸縮性ではない。図3に示される導電性について試験されたそのような化合物の例を以下のテーブルに示す:
【0039】
【表1】
いずれにしても、選定された材料は相乗的に作用する。
【0040】
すなわち、硬化の際、PEGの官能基は架橋を受け、その結果、機械的特性(上記のような)が顕著に増加する。異なる組合せの塩(例えば、上記のもの)および/またはイオン液体(例えば、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(EMI-TFSI)、N-メチル,N-プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(MPP-TFSI)、N-ブチル,N-プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(BMP-TFSI)、N-ブチル,N-プロピルピロリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスファート(BMP-FAP)およびN-ブチル,N-プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(BMP-FSI)および/またはここに参照することによりその全体において組み込まれる米国特許出願公開第(USPPN)20150380767号に記載されているようなもの)の組込みは、ポリマー電解質のイオン伝導性を著しく高める。グラフェンオキシド(GO)シートは、優れた機械的特性を有し、およびポリマー電解質の引張強さを増加させるPEGと強く相互作用する。さらに、GO酸素基はイオン輸送を促進し、およびイオン伝導性を改善する。したがって、この特定のポリマー電解質は、非常に良好な機械的特性および良好なイオン伝導性の双方を所有する。
【0041】
ポリマー電解質のいくつかの組成物のイオン伝導性の例(上記のテーブル1に示す例A-D)を、温度の関数として図3に示す。示されるように、1mS/cmに近いイオン伝導性は室温で達成することができ、それは固形電解質にとって高いと考えられる。比較のために、ガラスセラミック電解質は、10-5ないし10-4S/cmの範囲においてイオン伝導性を有し、およびPEOベースの電解質は、10-5S/cmの範囲において伝導性を有する。
【0042】
さらに、導電性は、典型的な液状電解質、例えば、エチレンカルボナート/ジメチルカルボナートにおける慣習的な1Mリチウムヘキサフルオロホスファート(EC/DMC中1MのLiPF6)などのようなものより約1桁低いままである。選定されたバッテリーアーキテクチャーおよび随意のSi/S化学物質とともに、非常に良好な性能を有する二次電池である(例えば、以下に詳述するようである)。
【0043】
3Dアーキテクチャーは、電解質を通して活物質(群)間の短いイオン輸送長さを可能にする。実例の距離(以下による)は、アノードからカソードへの迅速なイオン輸送をもたらし、および逆もまた同様である。導電性の異なる電解質(すなわち、対象ポリマー電解質を用いて1mS/cm、1MのLiPF6液状電解質を用いて10mS/cm)を有する様々なインターレース(組み合わせるとも言う)電極の「フィンガー」幅において構成された500μm高さのVACNTsを有する3D Si/Li2Sバッテリーアーキテクチャーを考え、以下の値をモデル化した:
【0044】
【表2】
あるいはまた、それぞれの固形電解質の選択肢を有する与えられた厚さの2D Si/Li2Sバッテリーアーキテクチャー(すなわち、対向する電極面を有する)を考慮して、以下の値をモデル化した:
【0045】
【表3】
いずれの場合も、得られた値は、25μmの電解質の厚さを含み、電解質の厚さが3Dの場合においてフィンガー間のギャップであり、および電極の厚さが2Dの例の場合でテーブル3において代表されるCNTの高さに等しいモデルについてであった。
実施形態の第2のセット
【0046】
3D電極アーキテクチャーおよびそれらの製造のためのプロセスが(必ずしもそうとは限らないが)、上記の固形電解質に関連して使用するために企図される。電極配置はバッテリーを作成する際の重要な考慮事項の1つである。2Dジオメトリーを備えた目下のLi-イオンバッテリーは大キャパシティを達成するために大きなフットプリント領域を必要とし、それに対して、3Dバッテリーアーキテクチャーは面外寸法を使用する利益を有する。このことは、与えられたフットプリント領域内の電極材料の量を増加させることによって面積キャパシティ(areal capacity)を増加させることができる。また、より一層短いイオン拡散距離を有するより一層利用しやすい表面を可能にすることによって、電気化学的特性を改善することもできる。
【0047】
実例の電極アーキテクチャーを図4において示す。シリコン26およびイオウ28は、活性電極材料を提供することができる。VACNT構造30は、スキャフォールド(足場とも言う)および(随意の)グラフェンエンクロージャー(グラフェン封入とも言う)32をそれぞれ提供する。図1A-1Cにおいて示す構成で採用するとき、これにより、充電および放電サイクル中に、バッテリー化学物質が自由に膨張および収縮することが可能になる(例えば、シリコンおよびイオウ)。
【0048】
ここでの実施形態は、高アスペクト比の電極要素、例えば、図1A-1Cおよび4に示すものなどのようなものを用いた生産のための2つの新しい3Dバッテリー製造プロセスを含む。「高アスペクト比」によって、意味されるものは2および約25の間であり、そこでは、最大VACNTの高さが、約25から約200μmまでの与えられたフィンガーの幅を伴う約500μmであってよい。
【0049】
対象のプロセスは、各電極の分離し、および独立した調製を可能にする。これは、異なるアノードおよびカソード活物質を各VACNTアレイに組み込むことが異なる手法に関係するため、有利である。
【0050】
双方のプロセスにおいて、カソードおよびアノード構造は、電極が交互のアノードおよびカソードと互いにかみ合うことを可能にする特定の構造においてパターン形成される。この構成の例を図1A-1Cおよび5-7に示す。
【0051】
組み立てられるとき、電極は同じ平面内にある(随意に、それらの基材支持表面と共に)が、しかし、互いに接触することなく位置される。電極は、充放電サイクル中の容量変化によって誘発される応力および歪みに適応するために(すなわち、Si/S化学でも)、図1Cおよび4に示すように、それらの間に十分なチャネル空間またはギャップ22を有し、その一方、高い出力密度は、短い電子およびイオン輸送長さを、活物質において(典型的には100μm未満)および電解質において(典型的には100μm未満、および好ましくは約30μmまで下に)維持することによって達成され得る。
【0052】
これらの実施形態では、含まれる電流コレクタの形状は、カソードおよびアノードの双方の形状を決定する。製造プロセスは、電流コレクタを分離し、材料の単体からのそれらの機械加工によって開始することができる。非接触高速レーザーまたは放電機械加工(EDM)技術を用いて、正確な電極を作成することができる。あるいはまた、個々の(対して、対形成された)部分を機械加工し得る。
【0053】
図5に示すように、組立てバッテリー構造において集電体(群)20として、ニッケル(Ni)および触媒(示していない)で被覆されたステンレス鋼(SS)を使用することができる。この例では、各集電体「フィンガー」要素は、長さ1.44cmおよび幅335μmであり、および約30μmのインターリーブ(混ぜ入れるとも言う)部分の間のチャネル22のために構成される。
【0054】
特に、ニッケル(Ni)は、触媒特性またはその他の点で望ましい場合、切断の前または後にステンレス鋼上に(よく知られる微細加工技術、例えば、リソグラフィー、物理蒸着(PVD)または電気メッキなどのようなものを用いて)堆積させることができる。触媒の添加により、VACNT足場(図5において示していない)は次いで、パターン形成された電流コレクタ上にCVD堆積技術によって直接成長させられる。SiおよびS(またはLi2S)は、各電極上のVACNT足場中に別々に組み込まれてもよい。次に、Si/VACNTおよびS/VACNT(またはLi2S/VACNT)をラップまたはコーティングするために、グラフェン(またはグラフェンおよびPLA複合体)を使用することができる。特に、VACNT足場の使用は、それらの内部電気抵抗をエスカレートさせることや、または出力密度に影響を及ぼすことなく、シリコンおよびイオウ活物質の非常に厚いフィルム(膜とも言う)(例えば、数mmまで)の使用を可能にする。
【0055】
アセンブリ(集合とも言う)の際、電流コレクタ部分の間の電気的絶縁のために、微細構造ポリマー要素(群)を使用することができる。フォトリソグラフィー技術は、エポキシベースのフォトレジストを使用して微細構造の「モールド」を製造するために用いることができる(例えば、SU-8/2002/2100またはSU-8/2002/2150)。この要素は、アノードおよびカソードを分離するために使用される(例えば、上述の30μmのチャネルまたはギャップの例に適合する)。フォトリソグラフィープロセスは、フォトレジストパターニングのために使用され、概して、スピンコーティング、ソフトベーク、近UV曝露、現像、およびポストベークを含む。
【0056】
SU-8微細構造は、ガラスまたは酸化ケイ素基材または任意のタイプの非導電性基材上に形成し得る。基材への良好な付着および全体的な高アスペクト比の微細構造(例えば、約5ないし約25のオーダーで)のために、SU-8/2002をベース層として使用し、続いてSU-8 2100または2150を適用することができる。
【0057】
図6は、リソグラフィー技術によって作成された酸化ケイ素ウェハ上のSU-8微細構造素子40を示す。ギャップ22に収まる各「ライン(線とも言う)」の幅は10μmであり、および全体の厚さは約250μmである。この厚さは、約25μmないし約250μmの電流コレクタ20の厚さと協調する。言い換えれば、図7に示すように位置され、または据え付けられたものである場合、微細構造要素または要素群は、典型的にはステンレス鋼電流コレクタの厚さと一致するように、電気的短絡から電極基材または電流コレクタを絶縁する。さらに、ポリマー微細構造または微細構造要素40は、電極の基部を単独に分離する。それらの相互(平面)表面上、電解質はVACNTs30および関連する活物質26、28および/またはエンケーシング(包囲体とも言う)32を分離する。SU-8材料要素40の例の電気抵抗は2.8×10 16Ω.cmである。
【0058】
図8は、上記に関連するプロセスを詳細に示す。プロセス100は102にて開始される。作用の一つのラインに沿って、104にて、上記のモールドの微細構造要素(群)が参照される。
【0059】
他のラインに沿って、電流コレクタ部分が106にて、随意に、上述したように切断される。108にて、VACNTsは基材または電流コレクタ電極部分上で成長する。
【0060】
アノード「側」またはバッテリーの一部分について、SiをCNT足場において110で組み込むことができる。カソード側用に、そのCNTsにおいて112でLi2Sを組み込むことができる。
【0061】
114では、アノードおよびカソードは、微細構造「モールド」要素(群)と一緒に組み立てられる。116にて、このサブアセンブリは、上述のように(または他の方法で)ポリマー電解質で満たされ、および/またはそこに封入される。例示していないが、次いでハウジングおよび様々な電気的接続を(例えば、図1Aおよび1Bに関連して例示するように)適用することができる。
【0062】
このセット(設定とも言う)の実施形態の別の例では、製造プロセスは、レーザー切断または他の方法によって、規定されたパターン(例えば、前述の「櫛」または「ブラシ」形状)を用いて、セラミック(例えば、Al2O3)基材を切断することを包含する。そのような取り組みは、互いに挿入されるセラミック基材片50、52と共に図9Aに例示される。図9Bは、ニッケル電流コレクタ20の材料堆積後のセラミック基材の2つの部分を示す。セラミックまたは非導電性ポリマー、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのようなものを基材として使用することは、次の:1)寸法安定性、2)切断からのゆがみに対する抵抗性、3)より一層微細な特長分解能(feature resolution)を達成する能力および/または4)熱影響ゾーンがないことを含む潜在的な利益を提供する。
【0063】
再び、VACNT足場は次に、CVD堆積技術によって、パターン化された電流コレクタ(群)上に成長させることができる。SiおよびLi2Sはまた、切断された電極の各側にてVACNT足場中に個別に組み込むこともできる。次に、グラフェンはVACNTsをラップまたはコート(cote)するために用いられ得る。最後に、上記のように、電極(カソードおよびアノード)は互いに挿入される。
【0064】
より一層詳細には、図10で、一旦プロセス120が122にて開始すると、それは124にてセラミック基材を切断することを含む。基材は次いで、金属(例えば、ニッケル)を用いてコーティングまたはパターン化される。128において、VACNTsは、パターン化された金属上に成長され、それはセラミック基材にわたり電流コレクタとして働く。
【0065】
上記のように、活物質が、VACNTsにおいて、130および132にて組み込まれる。随意に、134にて、負荷されたVACNTsは、グラフェンフィルムにおいて336および138にて封入されてもよい。
【0066】
アノードおよびカソードは次いで、140で(微細構造モールドの分離を必要とせずに)組み立てられ、および142で(随意に)ポリマー電解質で充填される。上記のようにして、ポリマー電解質を次に硬化させることができる。さらに、電極は、上記のようにカプセル封入されてもよく、および/または他の最終的なバッテリー製造行為またはステップ、例えば、構造を包むこと、等などのようなものが完了してもよい。
実施形態の第3のセット
【0067】
第3のセットの実施形態は、ポリ(エチレン)オキシドビス(アジド)(PEO-N3)ポリマーを用いてシリコンアノード上に予め形成された安定なSEIを生成することを含む(例えば、図4においてアノード14上のコーティング32におけるようである)。そのようにして製造されたシリコン表面26上の薄い(例えば、約2nmおよび100nmの間の)保護層は、高性能で、および良好なサイクル寿命(good cyclability)のリチウムイオンバッテリーに寄与する(例えば、理論値の80%のキャパシティを維持することが10サイクルを超えて得られた)。
【0068】
適用(例えば、以下にさらに記載するように)、および硬化させると、ポリマーのアジド官能基は高度に反応性のニトレン(ナイトレンとも言う)ラジカルに変換され、ポリマーの架橋を、およびその機械的特性の著しい増加をもたらす。これらの機械的特性は、ポリマーマトリクス中にグラフェン、イオン液体、または有機低分子の小量(例えば、全体組成の約1ないし約2重量%)を組み込むことによって増強することができる。したがって、ポリマー層は、シリコン電極の容量変化に適合するのに役立つことができる(すなわち、それは電極の応力および歪みを緩衝する)。
【0069】
アジド基の別の重要な特長は、それらがUV照射を受けるとき、シリコン表面に結合するそれらの能力である。この特長は、シリコン表面を保護し、および各サイクルにおいて電解質のさらなる分解を防止する。一緒になって、これらの特長または態様は、シリコンアノードのサイクリング(循環とも言う)中に安定なSEIを形成するポリマー層を提供する。本対象のポリマーはまた、高いリチウムイオン伝導性(例えば、約1mS/cm)を提供する。特に、ポリ(エチレン)オキシドベースのポリマーは、それらのよく知られる高いイオン伝導性のために、固形状態のリチウムイオンバッテリーにおいて広く使用される。したがって、ポリマー層はシリコン表面を保護する一方、それはまた、アノード材料への、およびそれからのリチウムイオン輸送を可能にする。
【0070】
高温(例えば、約80℃以下)を適用することなく、図11において例示するように、ポリマー層を形成するためのプロセス150を達成し得る。具体的に、152において、PEO-N3を有機溶液にて溶解する。次いで、154において、シリコンアノードをPEO-N3溶液中に浸漬被覆する。156にて、薄い(例えば、約10μmないし100μm、より一層好ましくは10μmないし20μmの)ポリマー層が続いて硬化される。UV光、対流熱(例えば、約250℃にて)またはマイクロ波を硬化のために使用することができる。
実施形態の第4のセット
【0071】
さらに別のセットの実施形態では、いわゆる「ポリスルフィドトラップ」がリチウムイオウバッテリー用に生産される。実例のリチウムイオウセルは、リチウム含有アノード、カソードおよびリチウム含有アノードとイオウ含有カソードとの間のセパレータを含む。活物質の損失を防止し、およびポリスルフィドのアノード側への移動を停止するために、イオウ活物質28の電極(カソード)12を、グラフェンおよび熱可塑性ポリマー(例えば、ポリ(乳酸)(PLA))複合体層32を用いて図4におけるようにカバーする(少なくとも部分的に)。グラフェンおよびPLAの複合体層は効果的なリチウムポリスルフィドトラップを示し、さもなければバッテリー内で生じるであろうシャトル機構(すなわち、電解質におけるリチウムポリスルフィドの溶解)を防止する。イオウバッテリーにおける乏しいサイクル寿命、低い比キャパシティおよび低いエネルギー効率をもたらす以前の問題は、イオウと、グラフェンおよびPLA複合体で被覆またはカバーされたVACNTsとの複合体を含むカソードにより対処される。VACNTsは、Sベースのカソードの導電性を高めるために採用されるが、その一方、グラフェンおよびPLA複合体は、ポリスルフィドを助け、またはその電解質への溶解を全体で防止し、およびグラフェンおよびPLAのエンクロージャー内のイオウ粒子の破壊を最小にする。別な方法で述べると、グラフェンおよびPLAは、グラフェンシートの柔軟な構造のために、ポリスルフィドにとって理想的なトラップである。同様に、グラフェンシートは、剛性および強度において改善につながるPLA鎖閉じ込め効果に寄与する可能性がある。
【0072】
充放電サイクル中、グラフェンおよびPLA複合体のエンクロージャーは、電解質と、VACNTsにおいて形成されるポリスルフィドとの間の直接接触を防止する。このようにして、電解質中へのポリスルフィドの溶解は(上述のように)回避され、その一方で同時に、電気化学反応が起こることを可能にすることができる。この活性は、最終的にバッテリーサイクル寿命を改善し、全体のキャパシティを改善し、および図12においてG/PLAトラップ160を伴い、対して158では伴わないデータに見られるように、S-VACNTのキャパシティにおいてフェーディング(減退とも言う)を最小限にする。明らかに、著しくより一層高い初期キャパシティおよび全体のキャパシティは観察されるが、G/PLAトラップが適用されるとき、10サイクル後に見てわかるほどの減衰は観察されない。さらに、グラフェンエンクロージャーはまた、VACNTsの内部抵抗も低減し、最終的にはバッテリー効率を全体的に向上させる。
【0073】
図13Aは、そのようなカソード調製のためのプロセス162を例示する。164で、溶融イオウおよびイオウ含有溶液が調製される。それらは166で、上からの溶融、およびVACNTの空所中への流れによってイオウを注入し、その一方で、電解質が通過できるように被覆されたCNTsの間にいくらかの空間を可能にする)。イオウは炭素と非常に良好な親和性を有するので、CNTは容易に被覆され、各個々のCNTを被覆することが可能にされる。好首尾なイオウ注入プロセスは、VACNT構造の約300%ないし約350重量%(またはイオウとVACNTとの比約60%)の間の変化をもたらす。一旦VACNT足場がイオウによって注入されると、グラフェンおよびPLA複合体は168にてVACNTsを(浸漬、スピンコーティングまたは他の方法を介して)カプセル化する。
【0074】
グラフェンおよびPLA溶液の異なる濃度は、典型的には、Siの1%ないし10重量%を有するG/PLAコーティングを得る目的で、グラフェンおよびPLAペレットまたはワイヤを塩素化溶媒中に溶解することによって得られる。グラフェンおよびPLA溶液は、スピンコーティング、ドロップキャスティングまたはスプレーコーティング法によってVACNT/S電極上に堆積される。
【0075】
同じ方法はバッテリーアノードの調製において用いることができる。そのような実施形態では、図4に関して説明したアノード14およびカソード12のそれぞれのためのコーティング32は、グラフェンおよびPLA複合体を含む。1つの特定の実例の実施形態では、そのコーティング32は、グラフェンおよびPLA複合体だけを含み、そして他の物質は含まない。Si-VACNTアノードをグラフェンおよびPLAとハイブリッド化することは、非常に大きな容量変化による構造的損傷を回避しながら、Siの高い理論キャパシティを利用するための解法を提供する。
【0076】
そのようなコーティングは、上記のごとく形成された安定なSEI層にわたり適用することができる。この場合を除いて、図13Bのプロセス170において、CVD法または別の技術によって、シリコーン(Silicone)がアノードに、172にて組み込まれる。次に、Si-VACNTカソードは、グラフェンおよびPLA複合体で、174にて封入される。
実施形態のバリエーション
【0077】
対象の方法は、使用および/または製造の方法を含め、論理的に可能な事象の任意の順序だけでなく、暗唱された事象の任意の順序で遂行されてもよい。さらに、ある範囲の値が提供される場合、その範囲の上限と下限との間のあらゆる介在値および記載された範囲において任意の他の記載または介在値が本発明内に包含されることが理解される。また、記載された創意に富む実施形態または変形の任意の随意の特長は、ここに記載される任意の1以上の特長と、無関係に、または組み合わされて説明され、および請求され得ることが企図される。
【0078】
本発明を、いくつかの例を参照し、随意に様々な特長を組み込んで記載したが、本発明は、本発明の各変形に関して企図されるように、記載され、または示されたものに制限されるものではない。本発明の真の精神および範囲から離れることなく、記載された本発明に対して様々な変化がなされてもよく、および等価なもの(ここに暗唱されているか、またはいくらか簡潔にするために含まれていないものかにかかわらず)を置換することができる。
【0079】
単数品目への言及には、複数の同じ品目が存在する可能性を含む。より一層具体的には、ここに、および添付の請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、「said」および「the」は、特に別なように明記しない限り、複数の指示対象を含む。換言すれば、これらの物品を使用することにより、上記の明細ならびに下記の請求の範囲における対象項目の「少なくとも1つ」が考慮される。
【0080】
同様に、請求の範囲において用語「含む」の使用は、任意の追加の要素の包含--与えられる数の要素が請求項に列挙されているかどうかにかかわらず、または請求の範囲に説明された要素の性質を転換すると見なされ得る特長の付加を含めることを可能にするものでなければならない。ここに特に規定される場合を除き、ここに使用されるすべての技術的および科学的用語は、クレームの妥当性を維持しながら、普通に理解される意味で可能な限り広く与えられるべきである。いずれの場合にも、ここに記載された異なる創意に富む実施形態または態様の幅は、提供された例および/または対象の明細に対してではなく、むしろ発行された請求項の言語の範囲によってだけ制限される。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13