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特許7043404早期乳癌における内分泌処置後の残留リスクの遺伝子シグネチャー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】早期乳癌における内分泌処置後の残留リスクの遺伝子シグネチャー
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6809 20180101AFI20220322BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20220322BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20220322BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20220322BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALI20220322BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20220322BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
C12Q1/6809 Z
G01N33/574 Z
G01N33/50 P
G01N37/00 102
C12Q1/6886 Z
C12N15/09 200
C12M1/00 A
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2018530774
(86)(22)【出願日】2016-12-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-03-28
(86)【国際出願番号】 CA2016000304
(87)【国際公開番号】W WO2017096457
(87)【国際公開日】2017-06-15
【審査請求日】2019-12-06
(31)【優先権主張番号】62/263,805
(32)【優先日】2015-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518201430
【氏名又は名称】オンタリオ・インスティテュート・フォー・キャンサー・リサーチ(オーアイシーアール)
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】バヤニ,ジェーン
(72)【発明者】
【氏名】バートレット,ジョン・エムエス
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,シンディ・キュー.
(72)【発明者】
【氏名】ブトロス,ポール・シー.
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-505630(JP,A)
【文献】J. Clin. Oncol.,2010年,Vol. 28,p. 4111-4119
【文献】Clin. Cancer Res.,2008年,Vol. 14,p. 1744-1752
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00 - 1/70
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳癌を伴なう対象において内分泌単独処置の予後を判定するための指標を提供する方法であって:
a)乳癌の腫瘍試料を用意する;
b)腫瘍試料において表4に挙げる95の遺伝子の発現レベルを決定する;
c)その発現レベルを対象コホートからの対照試料からのその遺伝子グループの基準発現レベルと比較する;そして
d)乳癌に関連する残留リスクを決定するための指標を提供する
ことを含み、その際、基準発現レベルと比較した遺伝子グループの発現における統計学的に有意の差であるか否かは乳癌に関連する残留リスクに対応する、前記方法。
【請求項2】
さらに、決定した遺伝子グループの発現レベルから対象の遺伝子発現プロファイルを構築する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
残留リスクの決定が、遺伝子グループの荷重和を計測mRNA存在量に掛けたものを含むモジュール調節異常スコア(MDS)を決定することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
高いMDSスコアはより高い残留リスクおよび/またはより劣悪な生存に関連し、低いMDSスコアはより低い残留リスクおよび/またはより良好な生存に関連する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
さらに、少なくとも1つの対照、好ましくは複数の対照を用いてmRNA存在量を正規化することを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
複数の対照のうち少なくとも1つが、基準対象または対象の基準遺伝子のmRNA存在量を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
さらに、対象の臨床指標を複数の基準臨床指標と比較し、その際、臨床指標は年齢、腫瘍グレード、病理学的腫瘍サイズまたは結節状態のうち少なくとも1つ、好ましくは 結節状態を含み、そして好ましくは多変量コックス比例ハザードモデルを用いてこれらの臨床指標をMDSに当てはめることを含む、請求項3~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
基準コホートの集団中央値と対比して対象が相対的に高い残留リスクを有するならば、さらに対象を内分泌療法と化学療法の併用で処置することを勧めるという指標を提供することを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
乳癌がホルモン受容体陽性(ER+)である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
NanoString(登録商標)を用いて発現レベルを決定する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
残留リスクが遠隔無再発生存である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
コンピューター実装した、乳癌を伴なう対象において内分泌単独処置の予後を判定するための指標を提供する方法であって:
a)少なくとも1つのプロセッサーにおいて、腫瘍試料における表4に挙げる95の遺伝子の発現レベルを反映するデータを受信する;
b)その少なくとも1つのプロセッサーにおいて、その発現レベルに対応する発現プロファイルを構築する;
c)その少なくとも1つのプロセッサーにおいて、その発現レベルを対象コホートからの対照試料からのその遺伝子グループの基準発現レベルと比較する;そして
d)その少なくとも1つのプロセッサーにおいて、乳癌に関連する残留リスクを決定するための指標を提供する
ことを含み、その際、基準発現レベルと比較した遺伝子グループの発現における統計学的に有意の差であるか否かは乳癌に関連する残留リスクに対応する、前記方法。
【請求項13】
プロセッサーが、遺伝子グループの荷重和を計測mRNA存在量に掛けたものを含むモジュール調節異常スコア(MDS)を計算することにより残留リスクを決定する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
高いMDSスコアはより高い残留リスクおよび/またはより劣悪な生存に関連し、低いMDSスコアはより低い残留リスクおよび/またはより良好な生存に関連する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
プロセッサーがさらに、少なくとも1つの対照、好ましくは複数の対照を用いてmRNA存在量を正規化する、請求項12~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
複数の対照のうち少なくとも1つが、基準対象または対象の基準遺伝子のmRNA存在量を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
プロセッサーがさらに、対象の臨床指標を複数の基準臨床指標と比較し、その際、臨床指標は年齢、腫瘍グレード、病理学的腫瘍サイズまたは結節状態のうち少なくとも1つ、好ましくは 結節状態を含み、そして好ましくは多変量コックス比例ハザードモデルを用いてこれらの臨床指標をMDSに当てはめる、請求項13~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
基準コホートの集団中央値と対比して対象が相対的に高い残留リスクを有するならば、さらに対象を内分泌療法と化学療法の併用で処置するための指示を出力する、請求項12~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
乳癌がホルモン受容体陽性(ER+)である、請求項12~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
残留リスクが遠隔無再発生存である、請求項12~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
プロセッサーおよびプロセッサーに接続したメモリーを有する汎用コンピューターと組み合わせて使用するためのコンピュータープログラムプロダクトであって、コンピューターメカニズムがエンコードされたコンピューター可読記憶媒体を含み、コンピュータープログラムメカニズムをコンピューターのメモリー内にローディングしてコンピューターに請求項1~11のいずれか1項に記載の方法を実行させることができる、前記コンピュータープログラムプロダクト。
【請求項22】
請求項21に記載のコンピュータープログラムプロダクトを記憶させるためのデータ構造が記憶されたコンピューター可読媒体。
【請求項23】
乳癌を伴ない、内分泌療法で処置された対象を、予後判定または分類するためのデバイスであって:
少なくとも1つのプロセッサー;および
少なくとも1つのプロセッサーと通信する電子メモリーであって、少なくとも1つのプロセッサーにおいて実行した際にその少なくとも1つのプロセッサーに下記を実行させる、プロセッサー実行可能なコードを記憶する電子メモリー:
a)腫瘍試料における表4に挙げる95の遺伝子の発現レベルを反映するデータを受信する;
b)その発現レベルに対応する発現プロファイルを構築する;
c)その発現レベルを対象コホートからの対照試料からのその遺伝子グループの基準発現レベルと比較する;そして
d)その少なくとも1つのプロセッサーにおいて、乳癌に関連する残留リスクを決定する;
を含み、その際、基準発現レベルと比較した遺伝子グループの発現における統計学的に有意の差であるか否かは乳癌に関連する残留リスクに対応する、前記デバイス。
【請求項24】
複数の単離した核酸配列を含む組成物であって、それぞれの単離した核酸配列は
(a)表4に挙げる95の遺伝子からなる遺伝子群のmRNA;および/または
(b)a)に対して相補的な核酸
にハイブリダイズする、それらの遺伝子グループの発現レベルを測定するために使用される組成物。
【請求項25】
表4に挙げる95の遺伝子からなる遺伝子群の発現生成物に相補的および/またはハイブリダイズ可能である1以上のポリヌクレオチドプローブを含むアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本出願は、U.S. Provisional Patent Application No. 62/263,805, 2015年12月7日出願に基づく優先権を主張し、それの全体を本明細書に援用する。
[0002] 本開示は、全般的に、乳癌を伴なう対象を予後判定または分類することに関する。より具体的には、本開示は、乳癌を伴なう対象を内分泌処置後にバイオマーカーを用いて予後判定または分類する方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
[0003] 早期エストロゲン受容体陽性(estrogen receptor positive)(ER+)乳癌の処置における著しい改善にもかかわらず、臨床挑戦が行なわれている。抗-内分泌療法は過去30~40年にわたる死亡率を低下させた1,2が、乳癌の80%を占めるER+疾患はなお早期乳癌による死亡の大部分をもたらしている。臨床処置決定をガイドするためにマルチパラメトリック遺伝子アッセイを用いることが増えている。大部分の予後判定試験はER+乳癌処置後の再発リスクを推定できるが、まだ新規標的治療選択肢についての予測的価値はない2,4。OncotypeDx(登録商標)(Genomic Health Inc.)5,6、Prosigna(商標)(NanoString Technologies、Inc.)7-9、Mammaprint(登録商標)(Agendia Inc.)10,11、Breast Cancer Index(BioTheranostics Inc.)12,13、およびEndoPredict(Sividon Diagnostics GmbH)14を含めて、これらのマルチパラメトリック検定はすべてほぼ類似の臨床有用性をもたらす15,16。それぞれがRNA存在量試験に由来するが、意外にも異なるRNAシグネチャー間にオーバーラップする遺伝子はほとんど無い17。Pratらは、組合わせシグネチャーがより正確に転帰を予測でき、より大きな臨床的有意性をもたらすことをイン・シリコで立証した18。それでもなお、10年にわたる多重残留リスクシグネチャーの開発にもかかわらず、層別化または標的医療に向けた進歩はこれらの検定によって顕著に促進されてはいない。既存の検定はいずれも、層別化医療アプローチの基礎をなす可能性のある次世代の作動可能なターゲットを同定しなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Abe,O., Abe,R., Enomoto,K., Kikuchi,K., Koyama,H., Masuda,H. et al. Effects of chemotherapy and hormonal therapy for early breast cancer on recurrence and 15-year survival: an overview of the randomised trials. Lancet 365, 1687-1717 (2005).
【文献】Dowsett,M., Cuzick,J., Ingle,J., Coates,A., Forbes,J., Bliss,J. et al. Meta-Analysis of Breast Cancer Outcomes in Adjuvant Trials of Aromatase Inhibitors Versus Tamoxifen. Journal of Clinical Oncology 28, 509-518 (2010).
【文献】Colleoni,M., Sun,Z., Price,K.N., Karlsson,P., Forbes,J.F., Thurlimann,B. et al. Annual Hazard Rates of Recurrence for Breast Cancer During 24 Years of Follow-Up: Results From the International Breast Cancer Study Group Trials I to V. J. Clin. Oncol. 34, 927-935 (2016).
【文献】Bartlett,J., Canney,P., Campbell,A., Cameron,D., Donovan,J., Dunn,J. et al. Selecting breast cancer patients for chemotherapy: the opening of the UK OPTIMA trial. Clin Oncol (R. Coll. Radiol. ) 25, 109-116 (2013).
【文献】Paik,S., Shak,S., Tang,G., Kim,C., Baker,J., Cronin,M. et al. A multigene assay to predict recurrence of tamoxifen-treated, node-negative breast cancer. N. Engl. J. Med. 351, 2817-2826 (2004).
【文献】Paik,S., Tang,G., Shak,S., Kim,C., Baker,J., Kim,W. et al. Gene expression and benefit of chemotherapy in women with node-negative, estrogen receptor-positive breast cancer. J. Clin. Oncol. 24, 3726-3734 (2006).
【文献】Chia,S.K., Bramwell,V.H., Tu,D., Shepherd,L.E., Jiang,S., Vickery,T. et al. A 50-gene intrinsic subtype classifier for prognosis and prediction of benefit from adjuvant tamoxifen. Clin. Cancer Res. 18, 4465-4472 (2012).
【文献】Nielsen,T.O., Parker,J.S., Leung,S., Voduc,D., Ebbert,M., Vickery,T. et al. A comparison of PAM50 intrinsic subtyping with immunohistochemistry and clinical prognostic factors in tamoxifen-treated estrogen receptor-positive breast cancer. Clin. Cancer Res. 16, 5222-5232 (2010).
【文献】Perou,C.M., Sorlie,T., Eisen,M.B., van de Rijn,M., Jeffrey,S.S., Rees,C.A. et al. Molecular portraits of human breast tumours. Nature 406, 747-752 (2000).
【文献】Cardoso,F., Van't Veer,L., Rutgers,E., Loi,S., Mook,S., & Piccart-Gebhart,M.J. Clinical application of the 70-gene profile: the MINDACT trial. J. Clin. Oncol. 26, 729-735 (2008).
【文献】van de Vijver,M.J., He,Y.D., van't Veer,L.J., Dai,H., Hart,A.A., Voskuil,D.W. et al. A gene-expression signature as a predictor of survival in breast cancer. N. Engl. J. Med. 347, 1999-2009 (2002).
【文献】Ma,X.J., Salunga,R., Dahiya,S., Wang,W., Carney,E., Durbecq,V. et al. A five-gene molecular grade index and HOXB13:IL17BR are complementary prognostic factors in early stage breast cancer. Clin. Cancer Res. 14, 2601-2608 (2008).
【文献】Whitfield,M.L., Sherlock,G., Saldanha,A.J., Murray,J.I., Ball,C.A., Alexander,K.E. et al. Identification of genes periodically expressed in the human cell cycle and their expression in tumors. Mol. Biol. Cell 13, 1977-2000 (2002).
【文献】Muller,B.M., Keil,E., Lehmann,A., Winzer,K.J., Richter-Ehrenstein,C., Prinzler,J. et al. The EndoPredict Gene-Expression Assay in Clinical Practice - Performance and Impact on Clinical Decisions. PLoS. One. 8, e68252 (2013).
【文献】Afentakis,M., Dowsett,M., Sestak,I., Salter,J., Howell,T., Buzdar,A. et al. Immunohistochemical BAG1 expression improves the estimation of residual risk by IHC4 in postmenopausal patients treated with anastrazole or tamoxifen: a TransATAC study. Breast Cancer Res. Treat. 140, 253-262 (2013).
【文献】Cuzick,J., Dowsett,M., Pineda,S., Wale,C., Salter,J., Quinn,E. et al. Prognostic Value of a Combined Estrogen Receptor, Progesterone Receptor, Ki-67, and Human Epidermal Growth Factor Receptor 2 Immunohistochemical Score and Comparison With the Genomic Health Recurrence Score in Early Breast Cancer. Journal of Clinical Oncology 29, 4273-4278 (2011).
【文献】Bartlett,J.M., Bayani,J., Marshall,A., Dunn,J.A., Campbell,A., Cunningham,C. et al. Comparing Breast Cancer Multiparameter Tests in the OPTIMA Prelim Trial: No Test Is More Equal Than the Others. J. Natl. Cancer Inst. 108, (2016).
【文献】Prat,A., Parker,J.S., Fan,C., Cheang,M.C., Miller,L.D., Bergh,J. et al. Concordance among gene expression-based predictors for ER-positive breast cancer treated with adjuvant tamoxifen. Ann. Oncol. 23, 2866-2873 (2012).
【発明の概要】
【0004】
[0004] ある側面において、乳癌を伴なう対象において内分泌単独処置(endocrine-only treatment)の予後を判定する方法を提供し、その方法は、a)乳癌の腫瘍試料を用意する;b)腫瘍試料において表4に挙げる少なくとも40の遺伝子の発現レベルを決定する;c)その発現レベルを対象コホートからの対照試料からのその遺伝子グループの基準発現レベルと比較する;そしてd)乳癌に関連する残留リスクを決定することを含み、その際、基準発現レベルと比較した遺伝子グループの発現における統計学的に有意の差または類似性は乳癌に関連する残留リスクに対応する。
【0005】
[0005] ある側面において、コンピューター実装した、乳癌を伴なう対象において内分泌単独処置の予後を判定する方法を提供し、その方法は、:a)少なくとも1つのプロセッサーにおいて、腫瘍試料における表4に挙げる少なくとも40の遺伝子の発現レベルを反映するデータを受信する;b)その少なくとも1つのプロセッサーにおいて、その発現レベルに対応する発現プロファイルを構築する;c)その少なくとも1つのプロセッサーにおいて、その発現レベルを対象コホートからの対照試料からのその遺伝子グループの基準発現レベルと比較する;そしてd)その少なくとも1つのプロセッサーにおいて、乳癌に関連する残留リスクを決定することを含み、その際、基準発現レベルと比較した遺伝子グループの発現における統計学的に有意の差または類似性は乳癌に関連する残留リスクに対応する。
【0006】
[0006] ある側面において、プロセッサーおよびプロセッサーに接続したメモリーを有する汎用コンピューターと組み合わせて使用するためのコンピュータープログラムプロダクトを提供し、そのコンピュータープログラムプロダクトは、コンピューターメカニズムがエンコードされたコンピューター可読記憶媒体を含み、コンピュータープログラムメカニズムをコンピューターのメモリー内にローディングしてコンピューターに本明細書に記載する方法を実行させることができる。
【0007】
[0007] ある側面において、本明細書に記載するコンピュータープログラムプロダクトを記憶させるためのデータ構造が記憶されたコンピューター可読媒体を提供する。
[0008] ある側面において、乳癌を伴ない、内分泌療法で処置された対象を、予後判定または分類するためのデバイスを提供し、そのデバイスは、少なくとも1つのプロセッサー;および少なくとも1つのプロセッサーと通信する電子メモリーを含み、その電子メモリーは、少なくとも1つのプロセッサーにおいて実行した際にその少なくとも1つのプロセッサーに下記を実行させる、プロセッサー実行可能なコードを記憶する:a)腫瘍試料における表4に挙げる少なくとも40の遺伝子の発現レベルを反映するデータを受信する;b)その発現レベルに対応する発現プロファイルを構築する;c)その発現レベルを対象コホートからの対照試料からのその遺伝子グループの基準発現レベルと比較する;そしてd)その少なくとも1つのプロセッサーにおいて、乳癌に関連する残留リスクを決定する;その際、基準発現レベルと比較した遺伝子グループの発現における統計学的に有意の差または類似性は乳癌に関連する残留リスクに対応する。
【0008】
[0009] ある側面において、乳癌を伴なう対象を処置する方法であって:a)本明細書に記載する方法に従って対象の残留リスクを決定する;そしてb)その残留リスクに基づいて処置を選択し、好ましくは対象をその処置に従って処置することを含む方法を提供する。ある態様において、患者が基準コホートの集団中央値と対比して相対的に高い残留リスクを有するならば、内分泌療法と化学療法の併用を処置として選択する。
【0009】
[0010] ある側面において、複数の単離した核酸配列を含む組成物であって、それぞれの単離した核酸配列は、(a)表4に挙げる少なくとも40の遺伝子に対応する遺伝子グループのmRNA;および/または(b)a)に対して相補的な核酸にハイブリダイズする、それらの遺伝子グループの発現レベルを測定するために使用される組成物を提供する。
【0010】
[0011] ある側面において、表4に挙げる少なくとも40の遺伝子の発現生成物に相補的およびハイブリダイズ可能である1以上のポリヌクレオチドプローブを含むアレイを提供する。
【0011】
[0012] ある側面において、乳癌腫瘍の試料から表4に挙げる少なくとも40の遺伝子のmRNAを検出するための試薬を含むキットを提供する。
[0013] 本開示の他の側面は以下の具体的態様のを添付の図面と合わせて考察すると当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
[0014] 添付の図面を参照して本開示の態様を以下に記載するが、それらは例示にすぎない。
図1-1】[0015] 図1A~1Dは、TEAM病理コホートにおける95-遺伝子 残留リスクシグネチャー(Residual Risk Signature)の、一組のカプラン・マイヤー生存プロット(Kaplan Meier Survival Plot)である。図1A)内分泌療法のみを受けている患者の検証コホートに適用した、結節状態(nodal status)を含む予後判定モデルに基づく生存曲線。図1B)Aに示したリスクスコア推定値を、各グループをQ1に対比した分位数としてグループ分けしたもの。コックス比例ハザードモデル( Cox proportional hazards model)を用いてハザード比を推定し、ログランク検定(log-rank test)を用いて生存差の有意性を推定した。
図1-2】図1C)TEAM検証コホートにおける患者リスクスコアの分布;推定5年再発確率(実線)および95% CI(影付き領域を囲む破線)を患者リスクスコアの関数として示す。垂直の黒い破線はトレーニングセット中央リスクスコアを示す。図1D)TEAM検証コホートにおける患者リスクスコアの分布;推定10年再発確率(実線)および95% CI(影付き領域を囲む破線)を患者リスクスコアの関数として示す。垂直の黒い破線はトレーニングセット中央リスクスコアを示す。
図2-A】[0016] 図2Aおよび2Bは、検証コホートにおける95-遺伝子 残留リスクシグネチャーとマルチパラメトリック検定の比較を示す。A)検証コホートにおいて、臨床共変量のほかに95-遺伝子 残留リスクシグネチャーおよび他の現在のマルチパラメトリック検定を用いて評価した患者のまとめ。患者試料を全体的な一致性(concordance)に従って順位付けし、すべての検定にわたってそれぞれヒートマップの下部および上部に組織化されたすべての患者を高リスクまたは低リスクと呼ぶ。標準的な臨床共変量、たとえばHER2状態、年齢、グレード、結節状態、ステージを含む。PAM50/Prosigna-like検定に基づく分子サブタイプ分類も示す。
図2-B】B)性能評価指標(performance indicator)として、各マルチパラメトリック検定についての受信者動作特性(receiver operating characteristic)曲線下面積(AUC)も示す。提示したすべての患者が内分泌処置のみを受けた者である。
図3-A】[0017] 図3A~3Gは、95-遺伝子 残留リスクシグネチャー内のシグナル伝達モジュールを示す。図3A)95-遺伝子 残留リスクシグネチャーの遺伝子間のREACTOME相互作用のまとめ。52遺伝子を含む6つの主な相互作用モジュールを95-遺伝子 残留リスクシグネチャーから同定した。遺伝子間、モジュール間およびモジュール内の関係を結合線により示す。矢印付きの実線は既知の直接的な正の関係を示す。直角の線で終わる実線は既知の負の調節関係を指示する。点線は他の遺伝子によって関連づけられた関係を指示する。赤丸付きの遺伝子は、インテグリティー化合物検索ツール(Integrity compound search tool)(Thompson Reuters)およびClinicalTrials.gov (https://clinicaltrials.gov/)に基づいて、既知の標的療法があるか、あるいはフェーズII/III開発中である遺伝子ターゲットを示す。
図3-B】図3B~3G)各モジュールについての、検証コホートを表わすカプラン・マイヤー曲線生存曲線(左)を示す。それぞれのカプラン・マイヤー曲線の右側は、各グループをQ1と比較した分位数としてグループ分けしたリスクスコア推定値である。ハザード比はコックス比例ハザードモデルを用いて推定され、生存差の有意性はログランク検定を用いて推定された。提示したすべての患者が内分泌処置のみを受けた者である。
図3-C】図3B~3G)各モジュールについての、検証コホートを表わすカプラン・マイヤー曲線生存曲線(左)を示す。それぞれのカプラン・マイヤー曲線の右側は、各グループをQ1と比較した分位数としてグループ分けしたリスクスコア推定値である。ハザード比はコックス比例ハザードモデルを用いて推定され、生存差の有意性はログランク検定を用いて推定された。提示したすべての患者が内分泌処置のみを受けた者である。
図3-D】図3B~3G)各モジュールについての、検証コホートを表わすカプラン・マイヤー曲線生存曲線(左)を示す。それぞれのカプラン・マイヤー曲線の右側は、各グループをQ1と比較した分位数としてグループ分けしたリスクスコア推定値である。ハザード比はコックス比例ハザードモデルを用いて推定され、生存差の有意性はログランク検定を用いて推定された。提示したすべての患者が内分泌処置のみを受けた者である。
図3-E】図3B~3G)各モジュールについての、検証コホートを表わすカプラン・マイヤー曲線生存曲線(左)を示す。それぞれのカプラン・マイヤー曲線の右側は、各グループをQ1と比較した分位数としてグループ分けしたリスクスコア推定値である。ハザード比はコックス比例ハザードモデルを用いて推定され、生存差の有意性はログランク検定を用いて推定された。提示したすべての患者が内分泌処置のみを受けた者である。
図3-F】図3B~3G)各モジュールについての、検証コホートを表わすカプラン・マイヤー曲線生存曲線(左)を示す。それぞれのカプラン・マイヤー曲線の右側は、各グループをQ1と比較した分位数としてグループ分けしたリスクスコア推定値である。ハザード比はコックス比例ハザードモデルを用いて推定され、生存差の有意性はログランク検定を用いて推定された。提示したすべての患者が内分泌処置のみを受けた者である。
図3-G】図3B~3G)各モジュールについての、検証コホートを表わすカプラン・マイヤー曲線生存曲線(左)を示す。それぞれのカプラン・マイヤー曲線の右側は、各グループをQ1と比較した分位数としてグループ分けしたリスクスコア推定値である。ハザード比はコックス比例ハザードモデルを用いて推定され、生存差の有意性はログランク検定を用いて推定された。提示したすべての患者が内分泌処置のみを受けた者である。
図4】[0018] 図4は、95-遺伝子 残留リスクシグネチャーを含む遺伝子の一変量結果を示す。ヒートマップは、内分泌処置患者のみのトレーニングコホートにおける最終残留リスクシグネチャーを含む95遺伝子の正規化した計測mRNA存在量プロファイルを示す。ヒートマップに示した95遺伝子は下記の順序で列記されている:BUB1B、CEP55、MYBL2、ANLN、ECT2、MKI67、MCM10、NUSAP1、BIRC5、UBE2T、RRM2、CENPF、PTTG1、ORC6L、CENPA、CDK1、CCNB1、KIF2C、EXO1、CDC20、STK15、PRC1、MELK、STMN1、NEK2、CDC6、CCNB2、MCM6、MCM2、ESPL1、PIk1、KPNA2、ASPM、SLC7AS、KNTC2、GNAZ、CCNE1、CCNE2、MAD2、TYMS、UBE2C、RACGAP1、DTL、CXXC5、CDCA7、RFC4、DIAPH3、CDCA1、C16ort61、ESM1、CK8、MMP9、GMPS、AYTL2、OSCN6L1、MMP11、LIN9。
図5-1】[0019] 図5A~5Fは、トレーニングコホートにおけるモデル比較のためのカプラン・マイヤー曲線を示す。A)臨床共変量なしでモデリングした、内分泌療法のみを受けている患者を表わす、95-遺伝子 残留リスクシグネチャーについての予後判定モデリングに基づくカプラン・マイヤー生存曲線。B)Aに示したリスクスコア推定値を、各グループをQ1と比較した分位数としてグループ分けしたもの。ハザード比はコックス比例ハザードモデルを用いて推定され、生存差の有意性はログランク検定を用いて推定された。
図5-2】C)年齢、グレード、病理学的腫瘍サイズおよび結節状態を含む臨床共変量を用いてモデリングした、内分泌療法のみを受けている患者を表わす、95-遺伝子 残留リスクシグネチャーについての予後判定モデリングに基づくカプラン・マイヤー生存曲線。D)Cに示したリスクスコア推定値を、各グループをQ1と比較した分位数としてグループ分けしたもの。ハザード比はコックス比例ハザードモデルを用いて推定され、生存差の有意性はログランク検定を用いて推定された。
図5-3】E)結節状態のみを唯一の臨床共変量としてモデリングした、内分泌療法のみを受けている患者における、95-遺伝子 残留リスクシグネチャーについての予後判定モデリングに基づくカプラン・マイヤー生存曲線。F)Eに示したリスクスコア推定値を、各グループをQ1と比較した分位数としてグループ分けしたもの。ハザード比はコックス比例ハザードモデルを用いて推定され、生存差の有意性はログランク検定を用いて推定された。
図6-1】[0020] 図6A~6Dは、検証コホートにおけるモデル比較のためのカプラン・マイヤー曲線を示す。A)臨床共変量なしでモデリングした、内分泌療法のみを受けている患者を表わす、95-遺伝子 残留リスクシグネチャーについての予後判定モデリングに基づくカプラン・マイヤー生存曲線。B)Aに示したリスクスコア推定値を、各グループをQ1と比較した分位数としてグループ分けしたもの。ハザード比はコックス比例ハザードモデルを用いて推定され、生存差の有意性はログランク検定を用いて推定された。
図6-2】C)年齢、グレード、病理学的腫瘍サイズおよび結節状態を含む臨床共変量を用いてモデリングした、内分泌療法のみを受けている患者を表わす、95-遺伝子 残留リスクシグネチャーについての予後判定モデリングに基づくカプラン・マイヤー生存曲線。D)Cに示したリスクスコア推定値を、各グループをQ1と比較した分位数としてグループ分けしたもの。ハザード比はコックス比例ハザードモデルを用いて推定され、生存差の有意性はログランク検定を用いて推定された。
図7】[0021] 図7は、検証コホートの化学療法処置患者および非-化学療法処置患者における95-遺伝子 残留リスクシグネチャーの検証を示す。A)化学療法のために調整されたアジュバント化学療法を受けた患者を含めた検証コホートにおける、結節状態を含む95-遺伝子 残留リスクシグネチャーの予後判定モデリングに基づくカプラン・マイヤー生存曲線。B)Aに示したリスクスコア推定値を、各グループをQ1と比較した分位数としてグループ分けしたもの。ハザード比はコックス比例ハザードモデルを用いて推定され、生存差の有意性はログランク検定を用いて推定された。C)Aに示した生存曲線において、高リスクまたは低リスクと同定され、化学療法のために調整されたアジュバント化学療法による処置を受けた患者を区別したもの。
図8】[0022] 図8は、検証コホートのHER2陽性およびHER2陰性患者における95-遺伝子 残留リスクシグネチャーの検証を示す。A)HER2状態のために調整されたアジュバント化学療法を受けなかった患者の検証コホートにおける、結節状態を含む95-遺伝子 残留リスクシグネチャーの予後判定モデリングに基づくカプラン・マイヤー生存曲線。B)HER2陰性患者のために調整されたアジュバント化学療法を受けなかった患者の検証コホートにおける、結節状態を含む95-遺伝子 残留リスクシグネチャーの予後判定モデリングに基づくカプラン・マイヤー生存曲線。C)HER2陽性患者のために調整されたアジュバント化学療法を受けなかった患者の検証コホートにおける、結節状態を含む95-遺伝子 残留リスクシグネチャーの予後判定モデリングに基づくカプラン・マイヤー生存曲線。
図9-1】[0023] 図9A~9Gは、現在の市販および学究的マルチパラメトリック検定のカプラン・マイヤー生存解析を示す。図示したのは、検証コホートにおける各種マルチパラメトリック検定のためにモデリングした遺伝子の発現に基づくカプラン・マイヤー生存曲線である。A)検証コホートの患者のProsigna検定の結果。低リスクおよび中リスクと同定された患者は類似の生存率を示し、高リスク患者はより劣悪なDRFSを示す。B)マルチパラメトリックアルゴリズムに基づくintrinsic subtyping結果に従った患者のカプラン・マイヤー生存率。
図9-2】C)リスクスコア(RS)カットオフ25を用いて二分割した(dichotomized)OncotypeDx-like発現分析に基づく検証コホートのカプラン・マイヤー生存解析。D)MammaPrint-likeの発現分析に基づく検証コホートのカプラン・マイヤー生存解析。
図9-3】E)Genomic Grade Index-likeの発現分析に基づく検証コホートのカプラン・マイヤー生存解析。F)IHC4遺伝子(ER、PgR、Ki67およびHER2)のRNA発現値に基づいて低リスクおよび高リスクと同定された検証コホート患者のカプラン・マイヤー生存解析。
図9-4】G)IHC4遺伝子(ER、PgR、Ki67およびHER2)のタンパク質発現値に基づいて低リスクおよび高リスクと同定された検証コホート患者のカプラン・マイヤー生存解析。
図10】[0024] 図10は、95-遺伝子 残留リスクシグネチャーを用いる新薬への患者の推定層別化を示す。図示したのは、発現プロファイリングに基づいてイン・シリコ経路分析により同定した95-遺伝子 標的療法シグネチャーに基づく推定臨床試験設計である。このスキームにおいて、シグネチャーによって低リスクと同定された患者は内分泌処置のみを受ける。高リスクと思われる者は、遺伝子変異状態およびコピー数など他のゲノムマーカーの統合と共に、次いでそれらの癌を駆動している経路を指向する標的治療にトリアージされる。
図11-A】[0025] 図11A~11Bは、TEAM試験スキームおよび患者試料を示す。A)タモキシフェン(Tamoxifen)およびエキセメスタン(Exemestan)アジュバント多国籍試験(Tamoxifen and Exemestane Adjuvant Multinational Trial)(TEAM)病態コホートについての試験スキーム。適格な患者は、タモキシフェンを2.5年間、続いてエキセメスタンを残りの2.5年間;またはエキセメスタンを5年間のいずれかを受けるようにランダム化された。
図11-B】B)TEAMコホートにおける統計学的検出力のまとめ。
図11-C】C)この試験のために採集および処理した試料のまとめ。
図12】[0026] 図12は、正規化戦略の前処理方法順位付けを示す。前処理TEAMコホート。ヒートマップは、HER2+veとHER2-veプロファイルの間の分子差を最大化し、一方でバッチエフェクト(batch effect)を最小限に抑える能力に基づく、前処理方法の順位付けを示す。252の組合わせの前処理方法について、上記の基準に従って2つの順位付けが確立され、続いてrank productを用いて集計された。このヒートマップは集計順位に基づいてソーティングされ、最も有効な前処理パラメーターが上部にある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0027] ホルモン受容体陽性の早期乳癌を伴なうある女性は内分泌療法のみで効果的に管理できるのに対し、他は追加の全身化学療法処置を必要とする。高リスク女性の管理における臨床上の難点は、既存および新規の薬物標的を同定すること、ならびにこれらの療法が有益であると思われる者を同定することである。
【0014】
[0028] 3,825のホルモン受容体陽性(ER+および/またはPgR+)症例から構成され、477(13%)のHER2陽性症例を含むタモキシフェンおよびエキセメスタンアジュバント多国籍試験(TEAM)病態コホート19を用いてmRNA存在量分析を実施して、残留リスクの遺伝子シグネチャー、たとえば95-遺伝子シグネチャーを同定および検証した。この95-遺伝子シグネチャーは、内分泌処置患者に関してリスク層別化を改善するのに有用である。さらに、この遺伝子シグネチャーを用いて潜在薬物標的を解明して、そのような高リスク患者に対する標的療法を開発するための層別化を改善することができる。
【0015】
95-遺伝子シグネチャーおよび処置
[0029] 学究的および市販のマルチパラメトリック検定から集めた遺伝子ならびに乳癌発病に対して重要な遺伝子のパネルを用いて、3,825人の患者をプロファイリングした。結節状態を含む95-遺伝子シグネチャーを検証して、遠隔無再発生存(distant relapse-free survival)に基づいて内分泌処置患者を高リスクグループと低リスクグループに層別化した(DRFS;HR=5.05,95%CI 3.53~7.22,p=7.51×10-22)。このリスクシグネチャーは現在のマルチパラメトリック検定より良好に作動することも認められた。アジュバント化学療法を受けた検証コホートの患者を含むすべての患者に95-遺伝子 予後判定シグネチャーを適用した場合にも、このシグネチャーはやはり予後判定能力があった(HR=4.76,95%CI 3.56~6.2,p=8.87×10-28)。機能性遺伝子相互作用解析により、細胞周期制御、有糸分裂および受容体チロシンシグナル伝達に関与する経路を表わす6つの重要なモジュールが同定された;これには乳癌その他の悪性疾患に使用するための既存の標的療法に伴なう多数の遺伝子が含まれる。よって、この予後判定シグネチャーを用いた高リスク患者の同定は、これらの標的療法で処置するための患者を優先できる可能性も備えている。
【0016】
[0030] 明らかになるように、本発明の一側面の好ましい特色および特徴は本発明の他のいずれかの側面に適用できる。本明細書中で用いる単数形“a”、“an”および“the”には、内容から明らかにそうではないことが要求されない限り、複数表記が含まれることを留意すべきである。
【0017】
[0031] ある側面において、乳癌を伴なう対象において内分泌単独処置の予後を判定する方法を提供し、その方法は、a)乳癌の腫瘍試料を用意する;b)腫瘍試料において表4に挙げる少なくとも40の遺伝子の発現レベルを決定する;c)その発現レベルを対象コホートからの対照試料からのその遺伝子グループの基準発現レベルと比較する;そしてd)乳癌に関連する残留リスクを決定することを含み、その際、基準発現レベルと比較した遺伝子グループの発現における統計学的に有意の差または類似性は乳癌に関連する残留リスクに対応する。
【0018】
[0032] 本明細書中で用いる用語“対象”は、動物界のいずれかのメンバー、好ましくはヒト、最も好ましくは乳癌を伴なうかまたは乳癌を伴なう疑いのあるヒトを表わす。
[0033] 本明細書中で用いる用語“試料”は、対象からのいずれかの体液、細胞または組織試料であって、生検液中に差示的に存在するバイオマーカー発現生成物および/または基準発現プロファイル、たとえばペプチドについてアッセイできるものを表わす。
【0019】
[0034] 本明細書中で用いる用語“予後”は、基準プロファイル、たとえばバイオマーカー基準発現プロファイルにより反映されるか、あるいは本明細書に開示する15バイオマーカーの発現レベルにより反映される、疾患サブタイプに関連する臨床転帰グループ、たとえばより劣悪な生存グループまたはより良好な生存グループを表わす。予後は、疾患進行の指標を提供し、癌による死亡の可能性の指標を含む。一態様において、臨床転帰クラスにはより良好な生存グループおよびより劣悪な生存グループが含まれる。
【0020】
[0035] 本明細書中で用いる用語“予後判定または分類する”は、予後と関連する基準プロファイルまたはバイオマーカー発現レベルに対する対象の類似性に従って、ある対象が属する臨床転帰グループを予測または同定することを意味する。たとえば、予後判定または分類は、乳癌を伴なうある個体がより良好またはより劣悪な生存転帰をもつかどうかを判定し、あるいは乳癌を伴なうある個体をより良好な生存グループまたはより劣悪な生存グループにグループ分けし、あるいは乳癌を伴なうある個体が療法に応答するか否かを予測する方法またはプロセスを含む。
【0021】
[0036] 本明細書中で用いる用語“遺伝子”は、ポリヌクレオチドを意味し、それにはコード配列、介在配列、ならびに転写および/または翻訳を制御する調節エレメントを含めることができる。遺伝子には、多型をコードする遺伝子の正常な対立遺伝子が含まれ、それにはその遺伝子がコードするポリペプチドのアミノ酸配列に影響を及ぼさないサイレント対立遺伝子、およびコードするポリペプチドの機能に実質的に影響を及ぼさないアミノ酸配列バリアントをもたらす対立遺伝子が含まれる。これらの用語は、場合により、コードするポリペプチドの機能に影響を及ぼす1以上の変異をもつ対立遺伝子も含むことができる。
【0022】
[0037] 本明細書中で用いる“バイオマーカーの発現を決定する”という句は、それらのバイオマーカーにより発現するRNAまたはタンパク質もしくはタンパク質活性もしくはタンパク質関連代謝産物を決定または定量することを表わす。用語“RNA”は、mRNA転写体、および/またはmRNAの特定のスプライスバリアントもしくは選択的バリアントを含み、それにはアンチセンス生成物が含まれる。本明細書中で用いる用語“バイオマーカーのRNA生成物”は、バイオマーカーおよび/または特定のスプライスバリアントもしくは選択的バリアントから転写されたRNA転写体を表わす。“タンパク質”の場合、それはバイオマーカーから転写されたRNA転写体から翻訳されたタンパク質を表わす。用語“バイオマーカーのタンパク質生成物”は、バイオマーカーのRNA生成物から翻訳されたタンパク質を表わす。
【0023】
[0038] 本明細書中で用いる用語“発現のレベル”または“発現レベル”は、バイオマーカーの生成物の測定可能な発現のレベルを表わす;たとえば、限定ではなく、マイクロRNA、発現したメッセンジャーRNA転写体、または転写体の特定のエキソンもしくは他の部分のレベル、バイオマーカーの発現したタンパク質またはその一部のレベル、バイオマーカーのDNA多型の数または存在、バイオマーカーの酵素活性または他の活性、および特定の代謝産物のレベル。
【0024】
[0039] 本明細書中で用いる用語“差示的発現した”または“差示的発現”は、バイオマーカーの生成物の発現レベルを測定することによりアッセイできるバイオマーカーの発現レベルの差、たとえば発現したmRNAまたはその一部のレベルの差を表わす。好ましい態様において、その差は統計学的に有意である。用語“発現のレベルの差”は、たとえば対照における特定のバイオマーカーの測定可能な発現レベルと比較したmRNAの量により測定した、特定のバイオマーカーの測定可能な発現レベルの増大または低減を表わす。
【0025】
[0040] 特定の態様において、遺伝子のグループは表4に挙げた遺伝子のうち少なくとも40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、または95である。
【0026】
[0041] ある態様において、本方法はさらに、測定した遺伝子グループの発現レベルから対象の遺伝子発現プロファイルを構築することを含む。
[0042] ある態様において、残留リスクの判定は、遺伝子グループの荷重和を計測mRNA存在量に掛けることを含む、モジュール調節異常スコア(module dysregulation score)(MDS)を決定することを含む。ある態様において、高いMDSスコアはより高い残留リスクおよび/またはより劣悪な生存と関連し、低いMDSスコアはより低い残留リスクおよび/またはより良好な生存と関連する。
【0027】
[0043] 本明細書中で用いる“全生存率(overall survival)”は、被験または処置グループの人々が癌などの疾患の診断日または処置開始日のいずれかの後からなお生存しているパーセントまたは時間の長さを表わす。臨床試験において、全生存率の測定は新規処置がいかに良好に作動するかを知るための1方法である。
【0028】
[0044] 本明細書中で用いる“無再発生存率”は、癌の場合には被験または処置グループの人々がその癌の一次処置後に何らその癌の徴候または症状なしに生存しているパーセントまたは時間の長さを表わす。臨床試験において、無再発生存率を測定することは新規処置がいかに良好に作動するかを知るための1方法である。それは何らかの疾患再発(局所、限局、または遠隔)として定義される。
【0029】
[0045] 本明細書中で用いる用語“生存良好”または“より良好な生存”は、“低生存”グループの患者と比較して生存の機会が高いことを表わす。たとえば、本出願のバイオマーカーは、患者を“生存良好グループ”に予後判定または分類することができる。これらの患者は外科処置後の死亡リスクがより低い。
【0030】
[0046] 本明細書中で用いる用語“生存不良”または“より劣悪な生存”は、“生存良好”グループの患者と比較して死亡リスクが高いことを表わす。たとえば、本出願のバイオマーカーまたは遺伝子は、患者を“生存不良グループ”に予後判定または分類することができる。これらの患者は、疾患による、または疾患のための外科処置、処置その他の原因による、死亡または有害反応のリスクがより高い。
【0031】
[0047] ある態様において、本方法はさらに、少なくとも1つの対照、好ましくは複数の対照を用いて、そのmRNA存在量を正規化することを含む。
[0048] ある態様において、複数の対照のうち少なくとも1つは基準対象またはその対象の基準遺伝子のmRNA存在量を含む。
【0032】
[0049] “対照集団”は、特定の個体グループまたは癌を伴なう個体もしくは伴わない個体のグループを表わし、場合によってはさらに地理、人種、系統、性、1以上の他の条件もしくは疾患、および/または文化指数(ただし、限定ではない)により同定できる。大部分の場合、対照集団は少なくとも10、50、100、1000、またはそれ以上の個体を含むことができる。
【0033】
[0050] “陽性対照データ”は、本発明の癌を伴なう1以上の対象のそれぞれにおいて本発明の標的遺伝子がコードするRNAのレベルを表わすデータを含み、本発明の癌を伴なう複数の対象において本発明の標的遺伝子がコードするRNAの平均レベルを表わす単一データ点を含む。
【0034】
[0051] “陰性対照データ”は、本発明の癌を伴わない1以上の対象のそれぞれにおいて本発明の標的遺伝子がコードするRNAのレベルを表わすデータを含み、本発明の癌を伴なう複数の対象において本発明の標的遺伝子がコードするRNAの平均レベルを表わす単一データ点を含む。
【0035】
[0052] 試験データが陽性対照データまたは陰性対照データと“一致する”確率は、試験データが、それぞれ、乳癌を伴わない対象より乳癌を伴なう対象において得られたデータの方に特徴的である可能性があるか、あるいは処理に対する乳癌応答を伴なう対象より処理に対する乳癌応答を伴わない対象において得られたデータの方に特徴的である可能性がある確率を表わす。
【0036】
[0053] ある態様において、本方法はさらに、対象の臨床指標を複数の基準臨床指標と比較し、その際、臨床指標は年齢、腫瘍グレード、病理学的腫瘍サイズまたは結節状態のうち少なくとも1つ、好ましくは 結節状態を含み、そして好ましくは多変量コックス比例ハザードモデルを用いてこれらの臨床指標をMDSに当てはめることを含む。
【0037】
[0054] したがって、高リスク予後を伴なう患者には、ホルモン療法に加えてより攻撃的な療法、たとえばアジュバント療法が有益な可能性がある。アジュバント療法は、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、標的療法、または生物学的療法を含むことができる。
【0038】
[0055] ある態様において、本方法はさらに、対象が基準コホートの集団中央値に対比して相対的に高い残留リスクをもつならば対象を内分泌療法と化学療法の併用で処置することを含む。
【0039】
[0056] ある態様において、乳癌はホルモン受容体陽性(ER+)である。
[0057] ある態様において、発現レベルはNanoString(登録商標)を用いて決定される。
【0040】
[0058] ある態様において、残留リスクは遠隔無再発生存を表わす。
[0059] ある側面において、乳癌を伴なう対象を処置する方法であって:a)本明細書に記載する方法に従って対象の残留リスクを決定する;そしてb)その残留リスクに基づいて処置を選択し、好ましくは対象をその処置に従って処置することを含む方法を提供する。ある態様において、患者が基準コホートの集団中央値と対比して相対的に高い残留リスクを有するならば、内分泌療法と化学療法の併用を処置として選択する。
【0041】
デバイスおよびシステム
[0060] ある側面において、コンピューター実装した、乳癌を伴なう対象において内分泌単独処置の予後を判定する方法であって:a)少なくとも1つのプロセッサーにおいて、腫瘍試料における表4に挙げる少なくとも40の遺伝子の発現レベルを反映するデータを受信する;b)その少なくとも1つのプロセッサーにおいて、その発現レベルに対応する発現プロファイルを構築する;c)その少なくとも1つのプロセッサーにおいて、その発現レベルを対象コホートからの対照試料からのその遺伝子グループの基準発現レベルと比較する;そしてd)その少なくとも1つのプロセッサーにおいて、乳癌に関連する残留リスクを決定することを含む方法を提供し、その際、基準発現レベルと比較した遺伝子グループの発現における統計学的に有意の差または類似性は乳癌に関連する残留リスクに対応する。
【0042】
[0061] 本明細書中で用いる“プロセッサー”はいずれかのタイプのプロセッサー、たとえばいずれかのタイプの汎用マイクロプロセッサーまたはマイクロコントローラー(たとえば、Intel(商標)x86、PowerPC(商標)、ARM(商標)プロセッサーなど)、デジタル信号処理(digital signal processing)(DSP)プロセッサー、集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array)(FPGA)、またはそのいずれかの組合わせであってもよい。
【0043】
[0062] 本明細書中で用いる“メモリー”は、内部または外部のいずれかに配置されたいずれかのタイプのコンピューターメモリーの適切な組合わせを含むことができる;たとえば、ランダムアクセスメモリー(random-access memory)(RAM)、読取り専用メモリー(read-only memory)(ROM)、コンパクトディスク読取り専用メモリー(CDROM)、電気光学メモリー、光磁気メモリー、消去可能プログラマブル読取り専用メモリー(erasable programmable read-only memory)(EPROM)、および電気的消去可能読取り専用メモリー(electrically-erasable programmable read-only memory)(EEPROM)など。慣用ファイルシステムを用いてメモリー102の部分を組織化し、制御し、そしてデバイスの全操作を支配するオペレーティングシステムにより制御および管理することができる。
【0044】
[0063] 本明細書中で用いる“コンピューター可読記憶媒体”(機械可読媒体、プロセッサー-可読媒体、またはコンピューター-可読プログラムコードが内蔵されたコンピューター使用可能媒体とも呼ばれる)は、コンピューターまたは機械により読み取ることができるフォーマットでデータを記憶できる媒体である。機械可読媒体はいずれか適切な有形の(tangible)非一過性媒体(non-transitory medium)であってもよく、これには下記を含む磁気、光学または電気記憶媒体が含まれる:フロッピーディスク、コンパクトディスク読取り専用メモリー(CD-ROM)、メモリーデバイス(揮発性または不揮発性)、または類似の記憶メカニズム。コンピューター可読記憶媒体は、実行した際にプロセッサーに本開示の態様に従った方法における工程を実施させる指示、コードシーケンス、コンフィギュレーション情報、または他のデータの各種セットを収容することができる。記載した実施事項を実施するために必要な他の指示および操作もコンピューター可読記憶媒体に記憶できることは当業者に認識されるであろう。コンピューター可読記憶媒体に記憶された指示をプロセッサーまたは他の適切な情報処理デバイスにより実行でき、記載したタスクを実施するための回路とインターフェース接続することができる。
【0045】
[0064] 本明細書中で用いる“データ構造”は、データを効率的に使用できるようにコンピューターにおいて組織化する特定の方法である。データ構造は、データ構造で実施できる操作およびそれらの操作の計算複雑性を特定する、1以上の特定の抽象データ型(abstract data types)(ADT)を実行できる。これと比較して、データ構造はADTが提供する指定の具体的実行である。
【0046】
[0065] 本開示の態様は、機械可読媒体(コンピューター-可読媒体、プロセッサー-可読媒体、またはコンピューター-可読プログラムコードが内蔵されたコンピューター使用可能媒体と呼ぶこともできる)に記憶されたコンピュータープログラムプロダクトとして表わすことができる。機械可読媒体はいずれか適切な有形の非一過性媒体であってもよく、これには下記を含む磁気、光学または電気記憶媒体が含まれる:フロッピーディスク、コンパクトディスク読取り専用メモリー(CD-ROM)、メモリーデバイス(揮発性または不揮発性)、または類似の記憶メカニズム。機械可読記憶媒体は、実行した際にプロセッサーに本開示の態様に従った方法における工程を実施させる指示、コードシーケンス、コンフィギュレーション情報、または他のデータの各種セットを収容することができる。記載した実施事項を実施するために必要な他の指示および操作も機械可読記憶媒体に記憶できることは当業者に認識されるであろう。機械可読媒体に記憶された指示をプロセッサーまたは他の適切な情報処理デバイスにより実行でき、記載したタスクを実施するための回路とインターフェース接続することができる。
【0047】
[0066] ある態様において、プロセッサーは遺伝子グループの荷重和を計測mRNA存在量に掛けたものを含むモジュール調節異常スコア(MDS)を計算することにより残留リスクを決定する。
【0048】
[0067] ある態様において、高いMDSスコアはより高い残留リスクおよび/またはより劣悪な生存と関連し、低いMDSスコアはより低い残留リスクおよび/またはより良好な生存と関連する。
【0049】
[0068] ある態様において、プロセッサーはさらに少なくとも1つの対照、好ましくは複数の対照を用いてmRNA存在量を正規化する。
[0069] ある態様において、複数の対照のうち少なくとも1つは基準対象またはその対象の基準遺伝子のmRNA存在量を含む。
【0050】
[0070] ある態様において、プロセッサーはさらに対象の臨床指標を複数の基準臨床指標と比較し、その際、臨床指標は年齢、腫瘍グレード、病理学的腫瘍サイズまたは結節状態のうち少なくとも1つ、好ましくは 結節状態を含み、そして好ましくは多変量コックス比例ハザードモデルを用いてこれらの臨床指標をMDSに当てはめることを含む。
【0051】
[0071] ある態様において、本方法はさらに、対象が基準コホートの集団中央値と対比して相対的に高い残留リスクを有するならば、内分泌療法と化学療法の併用で処置するための指示を出力することを含む。
【0052】
[0072] ある態様において、乳癌はホルモン受容体陽性(ER+)である。
[0073] ある態様において、残留リスクは遠隔無再発生存を表わす。
[0074] ある側面において、プロセッサーおよびプロセッサーに接続したメモリーを有する汎用コンピューターと組み合わせて使用するためのコンピュータープログラムプロダクトを提供し、そのコンピュータープログラムプロダクトは、コンピューターメカニズムがエンコードされたコンピューター可読記憶媒体を含み、コンピュータープログラムメカニズムをコンピューターのメモリー内にローディングしてコンピューターに本明細書に記載する方法を実行させることができる。
【0053】
[0075] ある側面において、本明細書に記載するコンピュータープログラムプロダクトを記憶させるためのデータ構造が記憶されたコンピューター可読媒体を提供する。
[0076] ある側面において、乳癌を伴ない、内分泌療法で処置された対象を、予後判定または分類するためのデバイスを提供し、そのデバイスは、少なくとも1つのプロセッサー;および少なくとも1つのプロセッサーと通信する電子メモリーを含み、その電子メモリーは、少なくとも1つのプロセッサーにおいて実行した際にその少なくとも1つのプロセッサーに下記を実行させる、プロセッサー実行可能なコードを記憶する:a)腫瘍試料における表4に挙げる少なくとも40の遺伝子の発現レベルを反映するデータを受信する;b)その発現レベルに対応する発現プロファイルを構築する;c)その発現レベルを対象コホートからの対照試料からのその遺伝子グループの基準発現レベルと比較する;そしてd)その少なくとも1つのプロセッサーにおいて、乳癌に関連する残留リスクを決定する;その際、基準発現レベルと比較した遺伝子グループの発現における統計学的に有意の差または類似性は乳癌に関連する残留リスクに対応する。
【0054】
診断試薬
[0077] ある側面において、複数の単離した核酸配列を含む組成物であって、それぞれの単離した核酸配列は、(a)表4に挙げる少なくとも40の遺伝子に対応する遺伝子グループのmRNA;および/または(b)a)に対して相補的な核酸にハイブリダイズする、それらの遺伝子グループの発現レベルを測定するために使用される組成物を提供する。
【0055】
[0078] ある側面において、表4に挙げる少なくとも40の遺伝子の発現生成物に相補的およびハイブリダイズ可能である1以上のポリヌクレオチドプローブを含むアレイを提供する。
【0056】
[0079] ある側面において、乳癌腫瘍の試料から表4に挙げる少なくとも40の遺伝子のmRNAを検出するための試薬を含むキットを提供する。
[0080] プライマーの例には、ポリヌクレオチドに対して相補的なプライマー伸長生成物の合成を触媒する条件下に置かれた際に相補鎖に沿ったポリヌクレオチド合成の開始点として作用できるオリゴヌクレオチドが含まれる。そのような条件には、4種類の異なるヌクレオチド三リン酸またはヌクレオシドアナログ、ならびに重合のための1種類以上の試薬、たとえばDNAポリメラーゼおよび/または逆転写酵素の存在、適切な緩衝剤(“緩衝剤”には、補因子であるか、またはpH、イオン濃度などに影響を及ぼす物質が含まれる)、ならびに適切な温度が含まれる。プライマーは、ポリメラーゼに対する試薬の存在下で伸長生成物の合成を刺激するのに十分な長さでなければならない。代表的プライマーは、標的配列に対して実質的に相補的な少なくとも約5ヌクレオチド長さの配列を含むが、これより若干長いプライマーが好ましい。プライマーは常に、標的配列(すなわち増幅されるべき特異的配列)に対し実質的に相補的な配列を含み、それにアニールできる。
【0057】
[0081] 本明細書中で用いる用語“相補的”または“その相補体”は、他の特定のポリヌクレオチドと相補的領域全体にわたってワトソン・クリック塩基対合を形成できるポリヌクレオチドの配列を表わす。この用語はポリヌクレオチド対にそれらの配列のみに基づいて適用され、それら2つのポリヌクレオチドが実際に結合するであろういずれか特定の条件を表わすものではない。
【0058】
[0082] 用語“プローブ”は、構造の異なる標的分子、たとえば対立遺伝子バリアントを、検出可能な状態で区別できる分子を表わす。検出は多種多様な方法で達成できるが、好ましくは特異的結合の検出に基づく。そのような特異的結合の例には、抗体結合および核酸プローブハイブリダイゼーションが含まれる。
【0059】
[0083] 用語“ハイブリダイズする”または“ハイブリダイズ可能”は、相補的核酸との配列特異的な非共有結合相互作用を表わす。好ましい態様において、ハイブリダイゼーションは高ストリンジェンシー条件下におけるものである。ハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件は当業者に既知であるか、あるいはCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1 6.3.6中に見出すことができる。たとえば、約45℃で6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、続いて50℃での2.0×SSC洗浄を採用できる。
【0060】
[0084] ポリヌクレオチド組成物は、当業者に容易に認識されるように、プライマーであってもよく、cDNAであってもよく、RNAであってもよく、標的cDNAまたはその一部に対して相補的なDNA、ゲノムDNA、スプライシングされていないRNA、スプライシングされたRNA、オルタニティブスプライシングされたRNA、合成形態のもの、および混合ポリマー(センス鎖およびアンチセンス鎖の両方)であってもよく、化学的または生化学的に修飾されていてもよく、あるいは非天然または誘導体化ヌクレオチド塩基を含んでいてもよい。
【0061】
[0085] 核酸がRNAを含む場合、示した配列という表記はTをUで置き換えたRNA均等物を表わすと解釈すべきである。
[0086] 核酸の単離、増幅および分析の方法は当業者にルーティンであり、プロトコルの例を、たとえばMolecular Cloning: A Laboratory Manual (3-Volume Set) Ed. Joseph Sambrook, David W. Russel, and Joe Sambrook, Cold Spring Harbor Laboratory; 3rd edition (Jan. 15, 2001), ISBN: 0879695773中に見出すことができる。PCR増幅に用いる方法に特に有用なプロトコル源は、PCR(Basics: From Background to Bench) by M. J. McPherson, S. G. Moller, R. Beynon, C. Howe, Springer Verlag; 1st edition (Oct. 15, 2000), ISBN: 0387916008である。
【0062】
[0087] 増幅法の例には以下のものが含まれる:鎖置換増幅(strand displacement amplification),U.S. Pat. No. 5,744,311に開示; 無転写等温増幅(transcription-free isothermal amplification),U.S. Pat. No. 6,033,881に開示; 修復連鎖反応増幅(repair chain reaction amplification),WO 90/01069に開示; リガーゼ連鎖反応増幅(ligase chain reaction amplification),European Patent Appl. 320 308に開示; ギャップ充填リガーゼ連鎖反応増幅(gap filling ligase chain reaction amplification),U.S. Pat. No. 5,427,930に開示; およびRNA無転写増幅(RNA transcription-free amplification),U.S. Pat. No. 6,025,134に開示。
【0063】
[0088] “キット”は、物理的構成要素、たとえばプローブ(これには限定ではなく、特異的プライマー、標識した核酸プローブ、抗体、タンパク質捕獲剤(単数または複数)が含まれる)、試薬(単数または複数)、指示シート(単数または複数)、および本発明を実施するのに有用な、特に試料中の特定のRNA分子のレベルを同定するのに有用な他の構成要素の組合わせを表わす。これらの物理的構成要素を、本発明を実施するのに適したいずれかの様式で配置することができる。たとえば、プローブおよび/またはプライマーを1以上の容器内に、またはアレイもしくはマイクロアレイデバイス状で提供することができる。
【0064】
[0089] 一態様において、 標的遺伝子がコードするRNAのレベルを1回の分析で決定できる。組合わせキットは、そのために、異なる標的遺伝子によりコードされるRNAからcDNAを増幅することができるプライマー類を含むことができる。たとえば、異なる標的遺伝子に由来するRNAが識別されるように、異なる蛍光標識を用いてプライマー類を差示標識することができる。
【0065】
[0090] マルチプレックス(たとえばデュプレックス)リアルタイムRT-PCRは、同一反応において2つの標的を同時に定量することができ、それによって時間が節約され、コストが低減し、かつ試料が節約される。マルチプレックスリアルタイムRT-PCRのこれらの利点は、この手法をハイスループット遺伝子発現分析に好適なものにする。リアルタイムフォーマットでのマルチプレックスqPCRアッセイは定量測定を促進し、偽陰性結果のリスクを最小限に抑える。すべての試料のアンプリコンがPCRのサブプラトー相(sub-plateau phase)で比較されるように、マルチプレックスPCRを最適化することが必須である。Yun, Z., I. Lewensohn-Fuchs, P. Ljungman, L. Ringholm, J. Jonsson, and J. Albert. 2003. A real-time TaqMan PCR for routine quantitation of cytomegalovirus DNA in crude leukocyte lysates from stem cell transplant patients. J. Virol. Methods 110:73-79. [PubMed]. Yun, Z., I. Lewensohn-Fuchs, P. Ljungman, and A. Vahlne. 2000. Real-time monitoring of cytomegalovirus infections after stem cell transplantation using the TaqMan polymerase chain reaction assays. Transplantation 69:1733-1736. [PubMed]。最大2、3、4、5、6、7、および8またはそれ以上の標的の同時定量が有用であろう。
【0066】
[0091] たとえば、キットに収容されるプライマーおよびプローブには、本明細書に記載する95-遺伝子シグネチャーのいずれかを認識できるものを含めることができる。
[0092] 標的ポリヌクレオチドに“選択的にハイブリダイズする”プライマーは、もっぱらまたは大部分が、試料中のRNAからなるかまたは試料中のRNAに対して相補的なcDNAからなるポリヌクレオチド混合物中の単一の標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズできるプライマーである。
【0067】
[0093] 試料にみられる、本明細書に記載する95遺伝子のいずれかを含む(ただし、これらに限定されない)乳癌についての1以上の遺伝子のRNAレベルでの遺伝子発現プロファイルは、多数の手法を用いて同定または確認することができ、これには下記のものが含まれるが、好ましくはそれらに限定されない:PCR法、たとえば本明細書において実施例中でさらに考察するもの、ノーザン分析およびマイクロアレイ手法、NanoString(登録商標)および定量シーケンシング。この遺伝子発現プロファイルは、試料において、たとえばマイクロアレイ手法を含む種々の手法を用いて測定できる。この方法の態様において、試料から抽出したRNAの逆転写により蛍光ヌクレオチドを取込ませることによって、蛍光標識cDNAプローブを作製することができる。チップに適用した標識cDNAプローブは、アレイ上のDNAの各スポットに特異的にハイブリダイズする。各アレイ状エレメントのハイブリダイゼーションの定量により、対応するmRNA存在量の評価が可能になる。たとえば、二色蛍光を用いると、2つのRNA源から作製された個別標識したcDNAプローブが対でアレイにハイブリダイズする。それぞれ特定した遺伝子に対応する2つの供給源からの転写体の相対存在量が、こうして同時に決定される。そのような方法は、細胞当たり少ないコピー数で発現する稀な転写体を検出するのに必要な感度、および少なくともおおよそ2倍の発現レベル差で再現性をもって検出するのに必要な感度をもつことが示された(Schena et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93(2):106-149 (1996))。マイクロアレイ分析は市販の装置により、製造業者のプロトコルに従って、たとえばAffymetrix GenChip技術またはIncyteのマイクロアレイ技術を用いて実施できる。
【0068】
[0094] 本明細書には本発明の態様が十分に理解されるために説明の目的で多数の詳細事項を述べる。しかし、これらの具体的な詳細事項が必須ではないことは当業者に明らかであろう。たとえば、本明細書に記載する態様がソフトウェアルーティン、ハードウェア回路、ファームウェア、またはその組合わせとして実装されるかどうかについて具体的な詳細事項を提示していない。
【0069】
[0095] 当業者に認識されるように、前記に挙げた側面および/または態様を多様な組合わせで組み合わせることができる。本開示の利点を以下の実施例によってさらに説明する。本明細書に述べる実施例およびそれらの具体的な詳細事項は説明のために提示されるにすぎず、それらを本発明の特許請求の範囲に対する限定と解釈すべきではない。
【実施例
【0070】
材料および方法
[0096] TEAM試験は多国籍オープンラベル フェーズIII試験であり、ホルモン受容体陽性19の早期乳癌を伴なう閉経後の女性を、エキセメスタン(25mg)1日1回またはタモキシフェン(20mg)1日1回を最初の2.5~3年間;続いてエキセメスタン(25mg)を投与する(合計5年間の処置)ようにランダムに割りつけた(参照:図11A)。ホルモン受容体(ERおよびPgR)およびHER2状態を免疫組織化学により試験参加のために地域で評価し、次いで中央で確認し28、HER2状態を免疫組織化学および蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(fluorescence in situ hybridization)(FISH)29により確認した。すべての評価をASCO/CAPガイドライン30-32に従って実施した。どの患者も抗HER2療法を受けなかった。遠隔無再発生存(distant relapse-free survival)(DRFS)をランダム化から遠隔再発または乳癌による死亡までの時間と定めた19
【0071】
[0097] TEAM試験は、5カ国からの4,736人の患者からなる、平均臨床追跡6.86年間の病態研究試験を含んでいた。検出力解析を実施して、この試験サイズがトレーニングコホートと検証コホートにおいてそれぞれ少なくとも3.0のHRを検出する88.6%および100%の検出力をもつことを確認した(参照:図11B)。3,825の試料からRNAが得られ、アッセイに成功した。英国コホートからの患者をトレーニングコホートとして割当て(n=790);一方、ドイツ、ベルギー、オランダおよびギリシャからの残りの患者は完全に独立した検証コホートを構成した(n=3,035)。すべての患者をmRNA存在量について評価した(参照:図11C)。内分泌単独処置後の残留リスクのシグネチャーを同定するために、主解析はネオアジュバントおよびアジュバント化学療法を受けた患者を除外した。
【0072】
TEAMコホート検出力計算
[0098] この試験で予後判定マーカーを開発するのに十分な検出力があるかどうかを評価するために、内分泌単独コホートと内分泌+アジュバント化学療法コホートの両方について検出力計算を実施した;全TEAMコホート(n=2549および事象数=320;n=3,825および事象数=507);ならびにトレーニング(n=576および事象数=67;n=790および事象数=106)および検証(n=1973および事象数=253;n=3,035および事象数=431)それぞれのサブセットについて別個に。等サイズの患者グループと仮定して、前記の事象数に対する特定のHRを観察する尤度を表わす検出力推定値を下記の式(1)から導いた37
【0073】
【数1】
【0074】
式中のEは総事象数(DRFS)を表わし、αは多重検定調整を表わすために10-3に設定された有意水準を表わす。1から3までの範囲のHRについて0.01のステップでzpowerを計算した38(Haider et al. 提出済み)。
【0075】
RNA抽出および発現プロファイリング
[0099] 症例当たり5つの4μmホルマリン固定パラフィン包埋(formalin-fixed paraffin-embedded)(FFPE)切片を脱パラフィン処理し、腫瘍領域をマクロ切除し、Ambion(登録商標) Recoverall(商標)総核酸単離キット-RNA抽出ブロトコル(Life Technologies(商標),カナダ,オンタリオ)を用いてRNAを抽出した。Nanodrop-8000分光光度計(米国デラウェア州)を用いてRNAアリコートを定量した。TEAM病態コホートから抽出した3825のRNAすべてのアッセイに成功した。各遺伝子についてプローブを設計し、NanoString(登録商標)Technologies(米国ワシントン州シアトル)で合成し;NanoString(登録商標)nCounter(登録商標)分析システムを用い、NanoString(登録商標)Technologiesプロトコルに従って、各試料につき250ngのRNAをハイブリダイゼーション、処理および分析した。
【0076】
mRNA存在量分析および生存モデリング
[00100] 未処理のmRNA存在量カウントデータを、NanoStringNorm Rパッケージ33,39(v1.1.19)により、発現上位75遺伝子の幾何平均から導いた正規化係数を用いて前処理した。RNAカウント|z-スコア|>6をもつ試料に目印をつけ、外れ値として除外した。このコホートにおける選択した正規化方法の性能を評価するために、合計252の組合わせの前処理方法を評価した:6つの陽性対照、8つの陰性対照および8つのハウスキーピング遺伝子(RPLP0、TFRC、MRPL19、SF3A1、GAPDH、PSMC4、ACTB、およびGUS)を利用する正規化方法、続いて包括的正規化に及ぶ(参照:図12)。最適な前処理パラメーターを同定するために、2つの基準を評価した。第1に、それぞれの前処理方法を、それらがHER2陽性試料とHER2陰性試料の間のERBB2 mRNA存在量のユークリッド距離(Euclidean distance)を最大化する能力に基づいて順位付けした。このプロセスをそれぞれの前処理スキームにつき100万のランダムサブセットのHER2陽性およびHER2陰性試料について繰り返した。第2に、それぞれの前処理方法を、それらがバッチ間変動を最小限に抑える能力に基づいて、5つのランダム選択した匿名FFPE乳癌試料から抽出したRNAの15回複製プールを用いて評価および順位付けした。混合効果線形モデルを実行し、残差推定値(residual estimate)をバッチ間変動の推定値として用いた(R package:nlme v3.1-117)。最後に、2つのマトリックスのRankProduct40に基づいて、これら2つの基準に基づく累積順位を推定した。未処理カウントを上位75の発現遺伝子から誘導した幾何平均に対して正規化するrank productに基づいて、最適な前処理方法の最終選択肢を選択した。14の試料を潜在外れ値として排除した(RNAカウント|z-スコア|>5または低いアレイ間相関性をもつ)。14の試料を二重に試験し、それらの未処理カウントを平均し、その後、単一試料として処理した後に正規化した。選択した方法はrank product中の上位10の前処理方法に含まれていた(参照:図12)。
【0077】
[00101] 患者を高発現グループと低発現グループに中央二分割(median-dichotomizing)することにより、前処理したmRNA存在量データの一変量生存解析を実施した。臨床変動年齢を二値としてモデリングし(55歳付近で二分割した)、一方、グレードおよび結節状態を順位変数(ordinal variable)としてモデリングし、病理学的サイズを連続変数としてモデリングした。
【0078】
ネットワークベースのシグネチャー誘導およびモジュール調節異常スコア
[00102] 一変量コックス比例ハザードモデリングに基づき、内分泌処置のみのトレーニングコホートにおいてまず遺伝子のフィーチャー選択を実施した;p<0.25のものを残した。これらの残した遺伝子を用いて“モジュール調節異常スコア”を計算した。
【0079】
[00103] 下記の方法を用いてモジュール調節異常スコア(MDS)を計算した(Haider et al., 提出済み):1)トレーニングコホートのみに基づく一変量コックス比例ハザードモデルを当てはめることにより、評価した遺伝子すべての重み(β)を計算した;そして2)次いでこれらの重みを計測mRNA存在量レベルに掛けて、式(2)により表わされる患者当たりのモジュール調節異常スコアを推定した:
【0080】
【数2】
【0081】
ここで、nは特定のモジュールにおける遺伝子の数を表わし、Xは遺伝子iの計測(z-スコア)存在量を表わす。トレーニングコホートにより推定したパラメーターを用いて検証コホートの患者についてのMDSを作成した。
【0082】
[00104] 次いで多変量コックス比例ハザードモデルを臨床共変量(年齢、グレード、病理学的サイズおよび結節状態)と共にMDSに当てはめた;AICを用いた段階的後退選択法(stepwise backward selection approach)を実施して、多変量モデルを改良した。最終選択したモデルをトレーニングコホートにおいてトレーニングし、そして完全独立した検証コホートにおいて検証した(参照:表1)。10年に切断した(truncated)DRFSをエンドポイントとして用いた。下記に従って再発確率を推定した。すべての生存モデリングを、DRFSについて、生存率パッケージ(survival package)(v2.37-4)を備えたR統計学的環境(R statistical environment)において実施した。受信者動作特性(receiver operating characteristic)(ROC)曲線下面積(AUC)によりモデル性能を評価した。
【0083】
【表1】
【0084】
再発確率
[00105] 予測リスクスコアを25の等しいビン(bin)に分割することにより、5年目および10年目の再発確率を推定した。各ビンについて、再発確率R(t)を1-S(t)として計算した;ここで、S(t)は5年目または10年目のカプラン・マイヤー生存率推定値である。これら25のビンのR(t)推定値を平滑化するために局所多項式回帰(local polynomial regression)を用いた。次いでこれらの予測推定値を、最初と最後のグループを除いた各グループの中央リスクスコアに対してプロットした;その際、それぞれ最低リスクスコアおよび99パーセンタイルを用いた。すべての生存モデリングをR統計学的環境(Rパッケージ:生存率v 2.38-3)で実施した。
【0085】
モデル評価
[00106] 受信者動作特性(ROC)曲線下面積を用いて生存モデルの性能を評価した。異なるモデルにわたるAUC差の有意性を評価するために並べ替え解析(permutation analysis)を実施した(生存オブジェクトの順序を維持したままスコアを10,000回シャッフルした)。
【0086】
商業ベースおよび学究ベースのリスク層別化スコアの誘導
[00107] 下記のマルチパラメトリック検定を含む、遺伝子を用いる類似のリスク分類の誘導:OncotypeDx(登録商標)(Genomic Health Inc.)5,6、Prosigna(商標)(NanoString Technologies,Inc.)7-9、Mammaprint(登録商標)(Agendia Inc.)10,11
【0087】
[00108] mRNA-IHC4リスクスコア:記載41,42に従ってIHC4-タンパク質モデルリスクスコアを計算し、臨床共変量について調整した。ERヒストスコア(histoscore)を30で割ることによりER10スコアを計算し、PgR染色パーセントを10で割ることによりPgR10スコアを計算した。10倍交差検証法を用いてモデルをトレーニングし、IHC4 RNAリスクスコアを作成した。mRNA-IHC4モデルを、トレーニングコホートにおけるESR1、PGR、ERBB2およびMKI67のmRNA存在量プロファイル上で、多変量コックス比例ハザードモデリングを用いてトレーニングした(表2)。モデル予測値(連続リスクスコア)を分位数にグループ分けし、カプラン・マイヤー解析、および前記に従って臨床変量について調整した多変量コックス比例ハザードモデルを用いて解析した。
【0088】
[00109] OncotypeDX-like再発スコア:前記43に従って16の被験遺伝子からのデータを正規化し、NanoString強度値をlog2変換して元の刊行物からの0-15測定範囲に当てはめた。次いで下記に基づいて未基準化(unscaled)再発スコアを計算した:RS+0.47×GRB7グループスコア-0.34×ERグループスコア+1.04×増殖グループスコア+0.10×浸潤グループスコア+0.05×CD68-0.08×GSTM1-0.07×BAG1;最後にこれらのスコアを前記43に従って基準化した。次いで患者をそれぞれ25より大またはそれ未満の再発スコアに基づいて高転帰および低転帰グループに分類し、DRFSについてモデリングした。
【0089】
[00110] Prosigna-likeサブタイプ分類および再発リスクスコア:Parker et al.44が概説した方法に基づいて試料をスコアリングし、PAM50遺伝子リストの50遺伝子45-47を用いてER陽性に関してトレーニングした。“normal-like”サブグループを最終サブタイプ分類から除外した。補足ファイル44からRスクリプト(R script)を求め、スコアを作成し、それらを次いでDRFSに対してモデリングした。
【0090】
[00111] MammaPrint-likeリスクスコア:genefu Rパッケージ(v1.14.0)のgene70関数に基づいて試料をスコアリングした。van de Vijver et al. 48およびDRFSに基づく転帰に従って低リスクおよび高リスクカテゴリーの誘導をモデリングした。
【0091】
[00112] Genomic Grade Index-likeリスクモデリング:Toussaint et al.49に概説された方法に基づき、MYBL2、KPNA2、CDC2およびCDC20を用いて試料をスコアリングした。発現データを用いて平均発現ハウスキーピング遺伝子(GUS、TBP、RPLPOおよびTFRC)を計算し、それを用いて4遺伝子の発現を正規化して、GGIスコアの決定に用いた。患者を低リスクまたは高リスクグループに分類し、DRFSについてモデリングした。Genomic Grade Index34はIHC435,36のほかに先にPrat et al., 18が記載し、それらを表2に記載する。
【0092】
【表2】
【0093】
Reactomeを用いたパスウェイ解析
[00113] 最終遺伝子リストをCytoscape(v3.0.2)のCytoscape Reactome機能性相互作用(Functional Interaction)(FI)プラグインにローディングした。2013バージョンのFIネットワークで記号を遺伝子セットとしてローディングした。FIネットワークをFIアノテーションでリンカー遺伝子なしに構築した。FIプラグイン関数を用いて、各モジュールについてスペクトルクラスタリング(Spectral clustering)およびパスウェイエンリッチメント(Pathway Enrichment)を計算した。
【0094】
結果
[00114] すべての遺伝子のRNA存在量プロファイルを3,825人の患者について作成した。完全な療法情報があった患者のうち2,549人を内分泌療法のみで処置し、一方、1,275人はアジュバント化学療法も受けた。内分泌処置のみの患者を576人のトレーニングコホート(n=67の事象)と1,973人の検証コホート(n=253の事象)に分け、それをそれぞれシグネチャー発見と検証に用いた。内分泌処置患者においてトレーニングおよび検証したシグネチャーの、アジュバント化学療法で処置した患者に対する予後判定能力を調べるために、次いで、そのシグネチャーを検証コホートの全患者に対してモデリングし、アジュバント化学療法のために調整した(n=3,035)。各コホートにおける中央追跡はそれぞれ7.51年および6.21年であった。内分泌処置のトレーニングコホートおよび検証コホートの臨床特徴を表1に記載する。3,825人の患者の全コホートの臨床特徴を表3にまとめる。高い腫瘍グレード、結節状態、病理学的サイズおよびHER2 IHC状態は、トレーニングコホートと検証コホートの両方において一変量で予後判定能力があった(参照:表1および表3)。
【0095】
【表3-1】
【0096】
【表3-2】
【0097】
内分泌処置後の残留リスクシグネチャーの同定および検証
[00115] 元の165遺伝子の遺伝子リストの一変量評価により、内分泌単独処置した患者において予後判定有意である95の遺伝子が同定された(表4,参照:図4)。これら95の遺伝子を機能モジュール(functional module)に集計し、残留リスクモデルをトレーニングするために用いた。これら95の遺伝子から、臨床共変量を用いて、および用いずに作成したMDSのモデリングにより、結節状態を唯一の臨床共変量として含む最終改良型シグネチャーが得られた(参照:図1)。このリスクモデルは、95-遺伝子シグネチャーを用いた場合、トレーニングコホートにおいて同等であることが認められた:臨床共変量を用いない場合(HRhigh=4.05,95% CI 2.25-7.3,p=3.28×10-6;10倍交差検証)、ならびに臨床共変量、たとえば腫瘍グレード、病理学的腫瘍サイズおよび結節状態を含めた場合(HRhigh=2.74,95% CI 1.61~4.65,p=2.06×10-4;10倍交差検証)(参照:図5)。中央値周囲で二分割し、検証セットに適用した場合、得られた95-遺伝子シグネチャーは内分泌処置後のDFRSの頑健な予測子であった(HRhigh=5.05,95% CI 3.53~7.22,p=7.51×10-19,参照:図1A)。トレーニングセットと同様に、すべての臨床共変量を検証コホートのモデルに含めた場合、類似の結果が得られた(HRhigh=5.56,95% CI 3.85~8.03,p=5.75×10-20,参照:図6)。試料を分位数に分けた場合(参照:図1B)、このシグネチャーはきわめて低いリスクの患者(10年目に<5%のDRFS)を同定した。このシグネチャーからの連続リスクスコアは5年目(参照:図1C)および10年目(参照:図1D)の再発の尤度と直接相関し、より高いリスクスコアは顕著に、より高い転移事象の尤度と相関していた。
【0098】
アジュバント化学療法の存在下における95-遺伝子 残留リスクシグネチャーの性能
[00116] アジュバント化学療法も受けた患者において95-遺伝子 残留シグネチャーが予後判定能力を維持するかどうかを判定するために、このモデルを検証コホートのすべての患者(化学療法を受けた者および受けていない者)に、ただし化学療法に層別化して適用した(参照:図7Aおよび7B)。結果は、このサブセットの患者において95-遺伝子シグネチャーが依然として予後判定能力をもつことを示した(HRhigh=4.7,95% CI 3.56~6.2,p=8.87×10-28)。アジュバント化学療法に従った層別化は、このシグネチャーによって低リスクまたは高リスクとして定められる患者間でDRFSにおいて差を示さなかった(参照:図7C)。
【0099】
HER2状態について調整した場合の95-遺伝子 残留リスクシグネチャーの性能
[00117] HER2陽性およびHER2陰性患者の両方において95-遺伝子 残留リスクシグネチャーが予後判定能力を維持するかどうかを判定するために、このモデルを追加のアジュバント化学療法を受けなかった検証コホートの患者に適用し、HER2状態により結果を層別化した(参照:図8)。このモデルをすべての患者に適用し、HER2状態により結果を層別化した場合(参照:図8A)、95-遺伝子シグネチャーによって低リスクと同定された患者はHER2陽性またはHER2陰性の患者間でDRFSに有意差を示さなかった(p=0.78)。同様に、高リスクと同定された患者について、HER2陽性またはHER2陰性の患者間でDRFSに統計学的有意差はみられなかった(p=0.09)が、HER2陽性患者はより劣悪な転帰の傾向を示すことが観察された。全体として、このシグネチャーは、HER2陽性(HR=5.17;95% CI:1.25~21.38;p=0.023)またはHER2陰性(HR=4.75;95% CI:3.23~6.97;p=2.01×10-15)のいずれの患者サブセット内でも(参照:図8B)、高リスクを低リスクから鑑別することができる。
【0100】
マルチパラメトリック検定に対する95-遺伝子シグネチャーの性能
[00118] NanoString RNA存在量データを用いて、現在のマルチパラメトリック検定からリスクスコアを作成し、図2Aおよび表5に既知の予後判定臨床因子と共に示す。分子intrinsic subtyping結果も示す(参照:図2A)。全検定にわたって高リスクおよび低リスク患者の共通グループがあるが、不一致(discordant)結果を伴なう患者が多数ある(参照:図2A、表6)。市販検定に基づいて作成したリスクスコア(参照:図2B、表7)と比較した場合、95-遺伝子シグネチャーはこの試験において0.76のAUCでこれらのマルチパラメトリック検定より良好な性能を示した。市販検定と95-遺伝子リスクスコアとのAUCにおける差は統計学的に有意であることが認められた(表8)。検定間の全体的一致性のほかに、検証コホート全体にわたるcommercial-likeリスクスコアのまとめを表5および6に示し、市販または学究的リスク層別化検定それぞれについてのカプラン・マイヤー生存プロットを図9に示し、補足データ中にさらに記載する。全体として、NanoString RNA存在量データを用いて総括した各検定は再発に対する低リスクまたは高リスクの患者を統計学的に有意に鑑別できた(参照:図9)。
【0101】
【表5】
【0102】
【表6】
【0103】
【表7】
【0104】
【表8】
【0105】
95-遺伝子 残留リスクシグネチャーおよびマルチパラメトリック検定の性能:
[00119] この遺伝子リストの組成物により、多数の市販および学究的な残留リスク層別化検定のものと類似するリスク分類の誘導が可能であった(参照:図2)。検証コホートにわたるそれぞれの市販および学究的検定についてのカプラン・マイヤー生存プロットは、それらのマルチパラメトリック検定の性能と一致する統計学的に有意の結果を示した(参照:図9,表5および6)。直接比較すると、95-遺伝子 残留リスク分類器(classifier)は、他のマルチパラメトリック検定結果より有意に良好な性能をもつ0.76の曲線下面積(AUC)を生じた(表7および8)。その次に良好な性能をもつ分類器は、MammaPrint-likeの結果(AUC=0.72)、OncotypeDx-like(AUC=0.71)、mRNA-IHC4(AUC=0.72)、Prosigna-like(AUC=0.70)、タンパク質-IHC4(AUC=0.68)、およびGenomic Grade Index-like(AUC=0.67)の結果であった。95-遺伝子シグネチャーは、この試験においてNanoString発現データにより作成されたGenomic Grade Index-like(2.83×10-9)およびProsigna-like(p=3.02×10-8)の結果より有意に良好な性能を示し;一方で、OncotypeDx-like(p=5.10×10-3)およびMammaPrint-like(p=2.98×10-3)検定結果より良好な性能も示した。検定間の一致性を表9に示す;95-遺伝子シグネチャーは、MammaPrint-likeおよびProsigna-likeの結果と、より大きな一致性を示す。
【0106】
[00120] Prosigna-like再発リスクスコアおよび分子サブタイプ分類: Prosigna検定を含む遺伝子を用いて、内分泌単独処置した検証コホート1971人の患者のうち、n=194は低リスクであると同定され;n=744は中リスクをもつと同定され;n=1033は高リスクであると同定された(参照:表5、図9)。検証コホートのDRFS所見によって先の試験が確認され、低リスクおよび中リスクと同定された者は高リスク患者より長いDRFSを示した(p=1.65×10-17)(参照:図9)。低リスクと中リスクの患者を合わせると、HRhigh 3.49,95% CI 2.59~4.7,p=1.75×10-16となった(参照:図9)。分子サブタイプ分類は777人(39.3%)の患者をルミナル(Luminal)A、502人の患者をルミナルB(25.4%)、352人(17.8%)の患者をBasal-like(基底-様)の分子シグネチャーをもつと同定し;342人(17.5%)の患者をHER2 enriched-like(HER2豊富-様)の分子シグネチャーをもつと同定した(表5)。HER2 enriched-likeであると同定され、それらについてHER2状態の情報が得られた患者のうち、113/334人(33.8%)はHER2が増幅されているかまたはHER2過剰発現について陽性であることがIHCにより認められ、一方、残りの221人(66.2%)は遺伝子によるタンパク質発現増幅について陰性であった。分子サブタイプにわたるDRFS間の差は、ルミナルAと分類された患者が過剰ルミナルBと分類された患者より長いDRFSをもつことを示した(参照:図9);同様に、Basal-likeの患者は8年目にHER2 enriched-likeの症例と類似のDRFSを示し、同様に、より短いDRFSを示した(p=8.88×10-23)(参照:図9)。
【0107】
[00121] OncotypeDx-likeリスクスコア: OncotypeDx-likeリスクスコアをPaik et al. 43に従って作成した。TAILORx試験50,51に用いられたカットオフに合わせてリスクスコア25をカットオフとして用いることにより、患者を低リスクまたは高リスクグループに二分割して(参照:図9)、936人(47.4%)を低リスクとみなし、1037人の患者(52.6 %)を高リスクとみなして同定した。25を超えるリスクスコアをもつ患者について、より低いリスクスコアをもつ患者より短いDRFSがみられた(HRhigh=2.97,95% CI 2.23~3.95,p=7.37×10-14)。
【0108】
[00122] MammaPrint-likeリスク評価: MammaPrint-likeリスク評価は、内分泌単独処置したコホート全体のうち1125人(57.0%)の患者を低リスクと同定し;848人(43%)を高リスクと同定した。DRFSは、低リスク患者についてはより長く、MammaPrint-like高リスク患者についてはより短かった(HRhigh=3.63,95% CI 2.77~4.77,p=1.66×10-20,参照:図9)。
【0109】
[00123] Genomic Grade Index-likeリスクモデリング:Genomic Grade Indexの使用に従って患者を層別化した場合、995人の患者(50.4%)が低リスクと同定され、残り1018人の患者(49.6%)は高リスクとみなされた(HRhigh=3.12,95% CI 2.34~4.15,p=7.51×10-15)参照:図9)。
【0110】
[00124] IHC4-mRNAリスク評価:タンパク質ベースの残留リスク分類器に転換すると、コードセット内のER、PgR、Ki67およびHER2の発現値を用いるIHC4は、内分泌単独処置した患者内の569人(28.8%)の患者を低リスクと同定し、1404人(71.2%)の患者を高リスクと同定する結果になった。IHC4-mRNAによって低リスクとみなされた内分泌単独処置患者についてのDFRSは、高リスクとみなされた者より長かった(HRhigh=3.48,95% CI 2.35~5.15,p=5.11×10-10,参照:図9)。実際に、mRNAの使用は、HRにおいて元の報文に従った免疫組織化学的結果を用いるIHC4に匹敵した(HRhigh=2.4,95% CI 1.85~3.11,p=3.72×10-11,参照:図9)。
【0111】
95-遺伝子シグネチャーにおける薬物標的の同定および層別化プレシジョンメディシンの指示
[00125] シグネチャーにおける95遺伝子のうち52を含む機能性相互作用(FI)ツールを用いて、6つの重要なネットワークモジュールを同定した(参照:図3A,表10)。モジュール1、3および4は、有糸分裂(FDR<5.0×10-4)、細胞周期(FDR<3.33×10-4)、および細胞周期チェックポイント関連の経路(FDR=0.0001)に関与する遺伝子を含んでいた。モジュール2は、下記を含めた受容体-チロシンシグナル伝達に関与する遺伝子および経路を含んでいた:ERBB経路シグナル伝達(FDR<6.66×10-5)、PI3K-AKTシグナル伝達(FDR<8.33×10-5)、p53シグナル伝達(FDR<5.00×10-4)、およびアポトーシス(FDR=0.00479)。これらのモジュール内の個々の遺伝子について正規化した発現(表9)は、モジュール1、3および4内のすべての遺伝子が高リスクと分類された患者間で高度に発現していることを示した(表9;ウィルコクソンの順位和検定(Wilcoxon rank-sum test))。
【0112】
[00126] これらの差は統計学的に有意であることが認められた(表9)。個別モジュールとして、それらは統計学的に有意の転帰予測子であった(参照:図3B)。統計学的に有意ではないが、95遺伝子すべてを一緒に残留リスクシグネチャーセットとして用いた場合、より高いAUCがみられ、よって最終リストとして持ち越された(HRhigh=5.05,95% CI 3.53~7.22,p=7.51×10-19)。有糸分裂および細胞周期調節に大きく関連する遺伝子、たとえばBIRC5、BUB1B、CCNB1およびPTTG1からなるモジュール1(表10)は、検証コホートの患者を低リスクまたは高リスクとして分類することができた(HRhigh=3.01,95% CI,p=1.81×10-18)。同様に、AURKA、CDK1、CCND1、CCNE2、CDC6およびPLK1を含むモジュール3および4からの遺伝子も、患者を低リスクと高リスクのカテゴリーに分類した:それぞれ、HRhigh=3.3,95% CI 2.47~4.42,p=9.82×10-16、およびHRhigh=3.84,95% CI 2.83~5.21,p=5.12x10-18(参照:図3B)。モジュール2内の正規化したRNA存在量(表9)は混合しており、あるものは高リスク患者間で発現低下を示し(すなわち、TP53およびBCL2)、他のものは発現増大を示した(すなわち、CCNE1およびRRM2);しかし、グループとしてモデリングした場合、モジュール2もより劣悪な予後を伴なう患者を同定することができた(HRhigh=4.03,95% CI 2.98~5.45,p=1.03×10-19)。最後に、CDH3およびMMP9からなるモジュール5(HRhigh=1.33,95% CI 1.04~1.71,p=0.022)も、2つの遺伝子KPNA2およびKRT8を含むモジュール6(HRhigh=2.65,95% CI 2.01~3.49,p=5.43×10-12)と同様に、DRFSの有意の予測子であった。
【0113】
【表10-1】
【0114】
【表10-2】
【0115】
【表10-3】
【0116】
偽発見率(False Discovery Rate)(FDR)p<0.001で選択された経路
Thomson Reuters Integrity(サービスマーク)およびClinicalTrials.gov (https://clinicaltrials.gov/)を用いて検索した化合物
[00127] これらのモジュール内の遺伝子についてIntegrity Compound Search(Thomson Reuters)を用いて、臨床で乳癌または他の新生物の処置のために現在用いられている多数の標的化合物;あるいはフェーズIIおよび/またはフェーズIII開発中のもの(https://clinicaltrials.gov/)を同定した(参照:図3,表11)。これらの化合物のうち多数が、この試験で用いた分類器によって高リスクとみなされた者について、早期ルミナル乳癌(luminal breast cancer)セッティングにおいて層別化使用できる可能性をもつ(表10)。したがって、これらの化合物は標的療法薬を早期ルミナル乳癌のために再利用できる可能性をもつ(参照:図10)。
【0117】
[00128] ER+疾患の処置後に死亡する女性が他のいずれの乳癌サブタイプより多いので、内分泌処置後の再発は依然として臨床上の問題である。したがって、内分泌療法後に再発するリスクをもつ女性を同定するというニーズが現在ある。より重要なことに、同時に将来の療法介入のための標的および女性をそのような標的療法に効果的に層別化する手段を同定することにより、これらの患者の臨床管理が改善され、それらの過剰処置を低減でき、あるいは逆に現在は過少処置の可能性がある患者を同定できる。TEAM病態コホートからの3825人の患者を用いて、リスク層別化を有意に改善する、かつそれらに対して他の悪性疾患において現在使用中であるかまたは評価中である薬物がある遺伝子(https://clinicaltrials.gov/)を同定する、シグネチャーを誘導した。これらの患者はこの95-遺伝子シグネチャー内の特定の機能モジュールに一致する可能性がある(表10,表11)。個々のモジュールの予後判定能力により暗示されるように(参照:図3)、このアプローチは、患者をそれらの癌の分子ドライバーに基づく既存の標的療法に、および/またはインビトロ検証試験のための新規/推定標的に、より良好に層別化できる可能性をもつ(参照:図10)。市販のリスクスコアおよびサブタイプ分類はNanoString RNA存在量プロファイリングに基づいて誘導されたという事実にもかかわらず、この試験により、大部分の現在の乳癌マルチパラメトリックリスク検定はER+乳癌を伴なう女性集団についておおまかに同等なリスク情報を提供する(参照:図9)が、個々の患者レベルでの検定間では不一致を示す可能性がある(参照:図2,表5および6)という最近のUK-OPTIMA prelim試験17の所見が確認された。現在の標準細胞毒化学療法に対して感受性である可能性がある患者を同定するほかに、このシグネチャー中の遺伝子によって明らかになったこれらの高リスク患者の分子ドライバーに対する標的療法を考慮および同定すべきである。
【0118】
[00129] 現在のマルチパラメトリック検定は現在のアジュバント化学療法計画が有益な可能性がある者を同定できるが、これらの検定はいずれも薬物特異的化学療法に対する応答を予測しない。この問題は、包括的および個別の両方の化学療法応答の複雑さのほかに、ドライバー経路の同定によって妨げられている。このデータにより作成された情報を用いると、95-遺伝子シグネチャーを含む遺伝子モジュールをターゲティングする候補薬物を試験および検証するためのモデル(参照:図10,表11)を開発することができる。
【0119】
[00130] この方法で、モジュール1において同定したG2/Mチェックポイントに関連する遺伝子、たとえばBIRC5(サバイビン(Survivin))をターゲティングすることができた。YM155、すなわちサバイビン抑制薬が、転移乳癌セッティングでドセタキセル(docetaxel)と組み合わせて、フェーズII、多施設、オープンラベル、2アーム試験において評価された20。しかし、この試験において、YM155有益性について先立って患者層別化がなかったことは、それをドセタキセルに追加することに有意の有益性がないという所見に関与した可能性があり、よってこの経路をターゲティングすることの潜在有益性が不明瞭になる。乳癌において過剰発現することが知られてはいたが、高リスク患者にみられた相対的に高いBIRC5発現(p=7.23×10-180)(表9)は、高リスクをもたらすmRNA存在量の転換点があることを示唆する。モジュール1、3および4内のすべての遺伝子が統計学的に有意に再発のリスクがより高い患者においてより高い発現を示すことが観察され(表9)、これは乳癌発病における細胞周期および増殖の顕著な役割を反映している。
【0120】
[00131] モジュール3は後期有糸分裂事象を伴なう経路を特徴とする。CDK1の過剰発現はセラノスティクス標的(theranostic target)を提供し、現在、ディナシリブ(Dinacilib)または類似の分子を用いてフェーズIII試験で評価中である(表11)。細胞周期および有糸分裂チェックポイント制御の回復は指向型療法(directed therapy)のためのもうひとつの魅力的機序であり、セラノスティクス標的、たとえばPLK1(参照:図3)について前臨床および臨床セッティングにおいて阻害薬で処置が行なわれている21,22。CCND1を含むモジュール4のS期およびDNA複製経路の調節は、患者をパルボシクリブ(Palbociclib)または他のCDK阻害薬に層別化できる可能性を支持する(表11)。PALOMA-1試験28についての所見により、転移性乳癌セッティングにおけるレトロゾール(Letrozole)との併用でパルボシクリブ(CDK4/6阻害薬)について承認が得られた;これは、PENELOPE-B試験において、ER+/HER2癌および残留疾患を伴なう高リスク患者のランダム化のための道を敷いた。CDK阻害薬の使用は後期および転移性セッティングにおいては有望であるが、早期乳癌セッティングにおいてはまだ適切に評価されておらず、この処置が最も有益であると思われる患者を層別化するための検証された方法も無い。興味深いことに、最近のパルボシクリブとタモキシフェンの相乗作用のインビトロ証拠は、ER耐性細胞株におけるタモキシフェンに対する再感受性化を示し24、これはER耐性の可能性がある者の同定には内分泌療法とCDK阻害薬の併用がより大きな有益性を示す可能性があることを示唆する。モジュール2の遺伝子は、受容体型チロシンキナーゼシグナル伝達、アポトーシスおよび細胞周期の制御を特徴とし、ERBBファミリーの遺伝子のメンバー中に薬物標的をもつ。抗HER療法はERBB2/HER2陽性患者に効果的であるが、EGFR/ERBBファミリーの他のメンバー間の相互干渉は、ERBB2/HER2とは別のメンバーの異常発現がHER2増幅の存在しない状態で抗HER療法を使用することを正当化できることを示唆する。EGFR阻害薬、たとえばゲフィチニブ(Gefitinib)およびラプチニブ(Laptinib)は他の悪性疾患において有効性を示したが、乳癌においては中等度の成功を示したにすぎず、これは最も有益性を受けるであろう者を同定するためには改良された患者選択方法が必要であることを示唆する。興味深いことに、296/342人(86.5%)のHER2 enriched-likeの患者が、この試験に用いた分類器によって高リスクと同定された。
【0121】
[00132] しかし、確認されたHER2遺伝子増幅またはタンパク質過剰発現をもつHER2 enriched-likeの患者の33.8%について、これらの結果はある患者にはERBBファミリーおよび関連経路をターゲティングする療法が有益である可能性があることを示唆する。事実、抗-ERBB2/HER2療法の使用に先立つ95-遺伝子シグネチャーは、ERBB2/HER2状態に関係なくこの患者集団においてなお予後判定能力がある(参照:図8)。さらに、ERBB3およびERBB4は一変量で予後判定能力をもち最終シグネチャーの一部であることが認められたが、ERBB2/HER2発現はそうではなかった(表4)。このデータは、現在の臨床実施において多数のERBB2/HER2陽性、低リスク患者が抗-ERBB2/HER2療法を受けており、その結果、ERBB2/HER2陰性患者より良好ではない転帰を生じている可能性があることを示唆するであろう。同様にERBB2/HER2陽性である高リスク患者に関して抗-ERBB2/HER2処置はこのグループのサブセットに対して若干の有益性をもつであろうが、この高リスク集団に再発の他の分子ドライバーがあることは明らかである。ERBBの下流経路、たとえば本発明の解析によって有意経路として同定されたPIK3/AKT/mTORは、高リスクと同定された患者におけるエベロリムス(Everolimus)使用の可能性を支持する25,26。興味深いことに、Basal-likeと同定された278/352人(78.9%)の患者が、ER+と臨床分類されているにもかかわらず遺伝子シグネチャーによって高リスクとして分類された;これにより、ホルモン受容体陽性癌における分子不均質性の重要さを認識する必要性、および新規処置の意義が強調された。
【0122】
[00133] 結節状態を統合する95-遺伝子 残留リスクシグネチャーは、早期再発について現在利用されているマルチパラメトリック検定より有意に良好な臨床有用性をもつことが立証された。このシグネチャーは後期再発について予後判定能力を維持すると思われる。これらのマルチパラメトリック検定とは異なり、このシグネチャー中の遺伝子のモジュール解析は高リスク患者における療法介入に適した幾つかの遺伝子および経路を同定した。将来の臨床試験設計には希望参加者全員のランダム化より、むしろ新規療法に適した患者のターゲティッド選択における著しい改善が必要である。
【0123】
[00134] ホルモン受容体陽性癌は分子的に不均質であり、よって新たな処置戦略が要求される(参照:図2Aおよび表5,表11)。マルチパラメトリック遺伝子シグネチャーは選択の一手段ではあるが、改良された層別化は遺伝子の変異状態とコピー数状態の統合も含まなければならない。したがって、早期のホルモン受容体陽性乳癌を伴なう女性の臨床管理を改善するためには、将来の臨床試験設計は、高リスク患者の同定を改善するだけでなく、そのシグネチャーの根底にある鍵となる遺伝子/経路をターゲティングする既存の療法薬への患者の選択をも改善するマルチパラメトリック検定を必要とする。
【0124】
[00135] 本発明の好ましい態様を本明細書に記載したが、本発明の精神および特許請求の範囲の範囲から逸脱することなくそれらを変更できることは当業者に理解されるであろう。後記の参考文献リストを含めて本明細書に開示するすべての文献を援用する。
【0125】
【表4-1】
【0126】
【表4-2】
【0127】
【表4-3】
【0128】
【表4-4】
【0129】
【表4-5】
【0130】
【表4-6】
【0131】
【表4-7】
【0132】
【表9-1】
【0133】
【表9-2】
【0134】
【表9-3】
【0135】
【表9-4】
【0136】
【表11-1】
【0137】
【表11-2】
【0138】
【表11-3】
【0139】
【表11-4】
【0140】
【表11-5】
【0141】
【表11-6】
【0142】
【表11-7】
【0143】
【表11-8】
【0144】
【表11-9】
【0145】
【表11-10】
【0146】
【表11-11】
【0147】
【表11-12】
【0148】
【表11-13】
【0149】
【表11-14】
【0150】
【表11-15】
【0151】
【表11-16】
【0152】
【表11-17】
【0153】
【表11-18】
【0154】
【表11-19】
【0155】
【表11-20】
【0156】
【表11-21】
【0157】
【表11-22】
【0158】
【表11-23】
【0159】
【表11-24】
【0160】
【表11-25】
【0161】
【表11-26】
【0162】
【表11-27】
【0163】
【表11-28】
【0164】
【表11-29】
【0165】
【表11-30】
【0166】
【表11-31】
【0167】
【表11-32】
【0168】
【表11-33】
【0169】
【表11-34】
【0170】
【表11-35】
【0171】
【表11-36】
【0172】
【表11-37】
【0173】
【表11-38】
【0174】
【表11-39】
【0175】
【表11-40】
【0176】
【表11-41】
【0177】
【表11-42】
【0178】
参考文献
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図1-1】
図1-2】
図2-A】
図2-B】
図3-A】
図3-B】
図3-C】
図3-D】
図3-E】
図3-F】
図3-G】
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図9-4】
図10
図11-A】
図11-B】
図11-C】
図12