(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】目直しツール及びこれを生産するための方法
(51)【国際特許分類】
B24B 53/075 20060101AFI20220322BHJP
B24B 53/00 20060101ALI20220322BHJP
B24B 53/053 20060101ALI20220322BHJP
B24B 53/12 20060101ALI20220322BHJP
B24D 3/00 20060101ALI20220322BHJP
B23F 21/02 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
B24B53/075
B24B53/00 Z
B24B53/053
B24B53/12 Z
B24D3/00 310C
B23F21/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019017688
(22)【出願日】2019-02-04
(62)【分割の表示】P 2016532297の分割
【原出願日】2014-07-18
【審査請求日】2019-02-04
(32)【優先日】2013-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】306026913
【氏名又は名称】ライスハウアー アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Reishauer AG
【住所又は居所原語表記】36 Industriestrasse, CH-8304 Wallisellen,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンニ,フロリアン
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/000831(WO,A1)
【文献】特表2008-515238(JP,A)
【文献】特開平05-337828(JP,A)
【文献】特開2007-044863(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0038234(US,A1)
【文献】国際公開第2008/101263(WO,A1)
【文献】独国実用新案第000029819006(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 53/075
B24B 53/00
B24B 53/053
B24B 53/12
B24D 3/00
B23F 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業面(6)を有する本体(2)と、この作業面にわたって分布する硬質材粒子(7)とを備えるウォーム砥石車用目直しツールであって、
互いに対して離れた距離で作り出される多数の凹部(8)が、前記本体(2)の中に組み込まれ、この凹部(8)の中に、硬質材粒子(7)が
接着剤により固定されて収容され、さらに、
前記凹部(8)は、ツールの中心軸に関連して、内側におけるよりも外側において高い分布密度を有し、単位面積当たり、より多くの硬質材粒子を備えるとともに、さらに、
前記多数の凹部(8)は水平
方向及び垂直方向
の両方においてむらがなく分布するよう配置され、所定の粒子高さまで該粒子を収容できるよう該凹部(8)の深さT、及び、粒子が突出する高さHを決定できるよう該多数の凹部(8)が形成されている
ことを特徴とする、目直しツール。
【請求項2】
前記凹部(8)の分布密度は区域から区域にわたって変化する、請求項1に記載の目直しツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は目直しツールに関し、この目直しツールは、作業面を有する本体と、この作業面にわたって分布する硬質材粒子とを備える。
【背景技術】
【0002】
このタイプのツールは、特許文献1に開示されている。ここで説明されるツールは、特に、歯車及び同様な部品を研削するための、目直し研削ディスク及びウォーム砥石車に対して使用される。このツールを生産する方法においては、先ず、規定の膜厚で生産されるように、接着剤がツールの作業面に塗布される。そして、その後、接着剤が施された作業面に、硬質材粒子が塗布される。そして、接着剤が硬化した後、硬質材粒子は、微粒子被覆として、作業面に永久に結合されたままとなる。
【0003】
この既知の方法では、この目的のために施された微粒子で、本体を素早く覆うことは可能であるが、しかし、ツールの作業面にわたって、完全に一様な分布密度の硬質材粒子を提供することは可能でない。このことは、該ツールによって達成され得る研削効果の品質に対して、負の影響を与え得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の根底にある目的は、目直しツール及びこれを生産するための方法を考案することである。ここで、このツールの本体は、改善された分布の硬質材粒子で覆われ、それ故に、このツールによって、研削効果に関するツール作業面の最適化が達成される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この目的は、硬質材粒子を収容するための、本体に形成された凹部によって達成され、この凹部の幾何形状は、硬質材粒子の幾何形状に適合している。このように、凹部に収容された粒子は、個々に正確に位置決めされ、即ち、ツールの作業面上の凹部についての配列及び分布に従って位置決めされる。硬質材粒子は、従って、硬質材粒子を収容する凹部によって、規定の分布密度で塗布されるが、この凹部は、ツールの作業面にわたって適切な分布で形成される。
【0007】
実際面で特に有利となる分布密度は、凹部の配列によって作り出されるが、この密度分布は、完成したツールにおける粒子サイズに関連して、凹部の内側に対する硬質材粒子の特定の間隔に帰着する。
【0008】
もし凹部が、ツールの中心軸に関連して、内側におけるよりも外側において、より高密度な分布で形成されるとすれば、そのことはまた、しばしば有利であり得る。
【0009】
本発明による凹部は、一般に、各々が1つの硬質材粒子を収容し得るように寸法取りされ、且つ構成される。しかしながら、本発明の枠内では、粒子サイズ及び/又は微粒子の形状に依存して、凹部の各々がちょうど1つよりも多くの粒子を収容するように、凹部を寸法取りし、且つ構成することもまた可能である。
【0010】
本発明によれば、凹部は、本体に穴をあけること、又は型押しすることによって、本体に形成される。本体は通常、金属製であるため、両方の生産方式は、装置に関連する大きな費用を伴うことなく、使用することが可能である。しかしながら、本体の構造に依存して、例えばレーザー操作方式のような、他の生産方式もまた、原則として使用することが可能である。
【0011】
更に、本発明が提供するものとして、本体に形成された凹部は、好ましくは電気伝導性の接着剤で充填され、過剰の接着剤は、本体全体にわたって除去され、且つ、その後、硬質材粒子が本体上に投入される。このように、凹部の中に位置する微粒子だけが、ツールの作業面に接着したままとなることが保証される。
【0012】
また、本発明が提供するものとして、作り出された微粒子被覆は、その後、直流電気でニッケルめっきされ、ニッケルの層は、接着剤上に堆積され、且つ硬質材粒子は、ニッケル結合によって囲まれる。硬質材粒子は、従って、特定の粒子高さまで、凹部の中で完全に取り囲まれたままとなり、例えば、ニッケル結合又はハンダ結合のような、物理結合及び/又は化学結合もまた、微粒子を望ましい方向に保持するのを支援する。この文脈の中で、もし本体中の凹部が、このように、好ましくは十二面体の形をした硬質材粒子のある一定の方位が、誘発されるように構成され、且つ寸法取りされるとすれば、それは有利なことである。
【0013】
有利なことに、凹部は、むらの無い粒子形状及び/又は粒子サイズを有する硬質材粒子を収容し得るように寸法取りされ、且つ構成される。
【0014】
以下では、本発明は、図面を参照しながら、代表的な実施形態を用いて、より詳細に説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本体を備えた目直しツールであり、この図は、単純化された形で、且つわずかに遠近法的に例示されている。
【
図2】
図2は、
図1による目直しツールの作業面の部分的領域の図である。
【
図3】
図3は、
図1による作業面の単一の硬質材粒子であり、遠近法的に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示す目直しツールは、ウォーム砥石車の縁部を目直しするのに役立つが、該ウォーム砥石車は、例えば、それに対応して形成された歯車を研削するために使用される。これらの目直しツールは、1つの本体2、又はこれら多数の本体2を有することが可能であり、これら多数の本体2は、対応する数の作業面6を有する。これらの作業面はまた、特別な輪郭形状を備えることが可能であり、且つ、加えて、目直しツールは、目直し歯車として生産することが可能である。
【0017】
目直しツール1は、円筒シャフト3を有する本体2から成るが、円筒シャフト3は、軸4の周りに回転し得る本体2を駆動するために、回転駆動装置に連結することが可能である。本体の縁部5は、ツールの作業面6を形成する。この目的のために、作業面6は、硬質材粒子7の被覆を備える。
【0018】
被覆の部分的領域は、
図2で大幅に拡大して示されている。説明する代表的な実施形態では、ニッケル結合9によって埋め込まれた硬質材粒子7は、例えば、400μmの粒子直径と、好ましくは十二面体の形とを有するダイヤモンド粒子として提供される。使用条件に依存して、他の粒子形状及び他のサイズ、並びに、超研磨性材料又は同様な高度に研磨性の材料のような、他の材料もまた、もちろん使用可能である。
【0019】
図3から
図5までの詳細において見ることができるように、本発明によれば、正確に規定した分布で配列された凹部8は本体2に形成され、凹部の形及び寸法は、硬質材粒子7の形及び寸法に適合し、その結果、凹部は、あらまし形に合った粒子を、ある一定の粒子高さまで収容することが可能である。自らの特別な構成に基づいて、凹部はまた、硬質材粒子7に、ツールのそれぞれの機能に対して最適である整列を与えることが可能である。従って、それぞれの凹部の深さT、及びまた、粒子が突出する高さHを決定することが可能であり、それ故に、パラメータは、ツールの最適な目直し及び最大寿命に対して、適切に構成することが可能である。
【0020】
金属製の本体2が、通常、どの材料から作り出されるかに依存して、凹部8は、好ましくは、本体2に穴をあける、型押しする、且つ/又はレーザー照射する、のいずれかによって形成される。ツールの作業面6にわたる凹部8の分布密度は、完成したツールでは、内側における粒子7間の距離が、例えば、粒子サイズDの約半分であるように選択される。説明する代表的な実施形態では、これらの距離は、水平方向及び垂直方向の両方において、むらが無い。
【0021】
粒子の構造及び/又はツールの機能に依存して、凹部の分布密度を変化させることはもちろん可能であり、それ故に、全表面にわたって、又は区域から区域にわたって、粒子被覆の分布密度を変化させることが可能である。後者の場合、凹部8は、ツールの中心軸4に関して、外側においては、内側に適用されるよりも、より高い密度で分布し、その結果、完成したツールでは、凹部8は、内側におけるよりも外側において、単位面積当たり、より多くの硬質材粒子を備える。この理由は、通常の場合、外側に存在する粒子は、最初に使用され、それ故に、より長い時間では、内側に存在する粒子よりも多いからである。
【0022】
本体の作業面6に凹部8を適用した後、凹部8は、電気伝導性の接着剤で充填され、且つ過剰の接着剤は、その後、例えばドクターブレードによって、本体2全体にわたって除去される。その後、ダイヤモンド粒子7が、作業面6上に投入され、粒子だけが、接着剤で充填された凹部8の中で接着されたままとなる。それに対応する凹部の配列を用いて、作業面6にわたる粒子分布は、多くの方法で変化させることが可能である。このように、ツールの作業面にわたる、正確に規定された粒子の分布が、常に作り出される。
【0023】
本発明によるツールの設計は、従って、基本的に利点を有するが、その利点は、この設計が、予め正確に指定され得るツールの作業面にわたって、硬質材粒子の位置決めを保証するということである。設計値を適切に指定することによって、ツールは改善することが可能であり、その結果、それぞれの応用に対して、ツールは最適なものとなる。
【0024】
作り出されるダイヤモンド被覆は、その後、直流電気でニッケルめっきされる。この場合、ダイヤモンド粒子用の接着剤は、続いて起こる直流電気プロセスの化学物質と両立するように選択される。使用される接着剤は電気伝導性であるため、ニッケル層は、何の問題もなく、接着材の上に堆積させることが可能であり、その結果、凹部の中に接着されたダイヤモンド粒子は、ニッケル結合によって適切に囲まれる。このように、凹部の縁部は封じられ、且つダイヤモンド粒子は、より良く保持される。
【0025】
上で説明した代表的な実施形態は、特にウォーム砥石車を目直しすることを意図した目直しツール用の本体に関する。本発明は、上記のように使用することが可能であるが、しかしまた、例えば研削ツール又は砥石ツールのような、同様な方法で動作するツールについても、明らかに使用可能である。