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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】カソード及び絶縁性材料
(51)【国際特許分類】
   C25C 7/02 20060101AFI20220322BHJP
【FI】
C25C7/02 303
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019047640
(22)【出願日】2019-03-14
(65)【公開番号】P2020147815
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2020-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】500483219
【氏名又は名称】パンパシフィック・カッパー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 邦男
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 潤
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-001002(JP,U)
【文献】特開2001-303287(JP,A)
【文献】特開昭54-002205(JP,A)
【文献】中国実用新案第202401145(CN,U)
【文献】特開2005-029843(JP,A)
【文献】特開昭63-033590(JP,A)
【文献】実開昭54-050005(JP,U)
【文献】米国特許第06017429(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25C 1/00- 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解精錬に使用されるカソードであって、
前記カソードは、導電性板材と絶縁性材料とを備え、
前記絶縁性材料は、前記導電性板材の下端側から延在し、且つ前記導電性板材と略同一平面となるように延在し、
前記導電性板材の底部は溝をカソードの幅方向に沿って備え、
入口から奥に進むにつれて、溝の幅が増加する領域を少なくとも備え、
前記溝の入口から奥に進むにつれて、前記溝の幅が増加する領域に到達する前に、溝の幅が漸次減少する領域を備える、
該カソード。
【請求項2】
請求項1のカソードであって、前記導電性板材の面と、前記絶縁材料の面とが形成する角度が180°±5°である、該カソード。
【請求項3】
請求項1又は2のカソードであって、前記絶縁材料において、前記導電性板材との境界部から前記絶縁材料の下端までの寸法が、6mm以上である、該カソード。
【請求項4】
電解精錬用カソードの導電性板材の下端に装着するための絶縁性材料であって、
前記絶縁性材料は、本体部と、前記導電性板材の底部の溝に装着するための係合部とを備え、
前記底部の溝は前記導電性板材の幅方向に沿って設けられ、
前記本体部は対向する2つの略平行な面を備え、
前記係合部の基部から先端にかけて幅が増加する領域を少なくとも備え、
前記係合部の基部から先端にかけて、前記幅が増加する領域に到達する前は、幅が漸次減少する領域を備える、
該絶縁性材料。
【請求項5】
請求項4の絶縁性材料であって、前記絶縁性材料の厚みが前記導電性板材と略同じである、該絶縁性材料。
【請求項6】
請求項4又は5の絶縁性材料であって、前記本体部の上端から下端までの寸法が、6mm以上である、該絶縁性材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カソード及び絶縁性材料に関する。より具体的には、本開示は、電解精錬に使用するためのカソード及び絶縁性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
電気銅は、電解精錬によって製造される銅材料である。例えば、粗銅をアノード側に設置し、ステンレス板をカソード側に設置する。そして、電流を供給することにより、アノードから銅が溶解し、溶解した銅がカソード側に析出する。一定量以上析出した後、カソード側の板を電解槽から引き上げる。次に、カソード側の板表面に析出した銅をスクレイパーによって剥ぎとる。剥ぎとった後の銅板に対して、検査が行われ、その後、製品として出荷される。
【0003】
カソードに析出した銅を剥ぎとる際に問題となるのが、カソードの両面それぞれに析出した2枚の銅板が部分的に接合してしまう点があげられる。カソードを電解槽に設置している間、カソードの底辺側及び側辺側が電解液に浸漬される。従って、2枚の銅板が、カソードの底辺側及び/又は側辺側を通して部分的に連結する可能性がある。
【0004】
特許文献1では、側辺側での連結を防止するため、塩化ビニール等の絶縁部材からなる帯板をカソードの側辺部分に設けることを開示している。絶縁性材料の表面上では、通常銅が析出しないので、側辺部分において、2枚の銅板を隔てた状態を維持できる。また、特許文献1では、カソードの底辺部分に、V字形状の溝を設けることを開示している。これにより、2枚の銅板との間に、境界面が形成される。この境界面を形成する目的は、剥ぎとった2枚の銅板を互いに逆方向になるように引っ張ることで、前記境界面で分離させることにある。
【0005】
特許文献2では、図4などに示すように、カソードの底辺部分に溝を設けて、当該溝に嵌め込む形で、絶縁性材料のエッジストリップを取り付けることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-036415号公報
【文献】特表2001-519479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、カソードの底部の境界面で、両面に析出した2枚の銅板(且つカソード底部で部分的に接合した2枚の銅板)が割れることを狙って、カソードの底部にV字形状の溝を設けている。
【0008】
しかし、V字形状の溝を設けても、2枚の銅板が境界面で割れにくくなる事象がしばしば発生していた。この原因として、電解精製中に停電が発生するとラミネーションと呼ばれる現象が発生することがあげられる。「ラミネーション」とは、停電前に析出した層と停電後に析出した層との間で分離がおこり、銅板をカソードから機械的に剥ぎ取る際に、境界面に発生する亀裂が、再電着銅層にまで進展しにくくなる現象をいう。従って、境界面を設ける方法では、2枚の銅板が部分的に接合する問題を解決するにも限界があった。
【0009】
また、特許文献2に開示した方法では、両側の角部の間の距離(例えば、図4に示す2つの部分(24)の間の距離)が短いため、析出した2枚の銅板の端部同士が成長して接合してしまうという問題がある。
【0010】
以上の事情にかんがみ、本開示では、カソードの両面に析出する2枚の銅板が、カソードの底部にて接合することを回避する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らが検討した結果、2枚の銅板の下端同士の物理的な距離を延ばすことで、接合が起こる可能性を低減できると考えた。そのため、物理的な距離を大きくする構造となる絶縁材をカソードの底部側に設けることにした。
【0012】
本開示は、上記知見に基づいて完成され、一側面において、以下の発明を包含する。
(発明1)
電解精錬に使用されるカソードであって、
前記カソードは、導電性板材と絶縁性材料とを備え、
前記絶縁性材料は、前記導電性板材の下端側から延在し、且つ前記導電性板材と略同一平面となるように延在する、
該カソード。
(発明2)
発明1のカソードであって、前記導電性板材の面と、前記絶縁材料の面とが形成する角度が180°±5°である、該カソード。
(発明3)
発明1又は2のカソードであって、前記絶縁材料において、前記導電性板材との境界部から前記絶縁材料の下端までの寸法が、6mm以上である、該カソード。
(発明4)
発明1~3のカソードであって、前記導電性板材の底部は溝を備え、
入口から奥に進むにつれて、溝の幅が増加する領域を少なくとも備える、該カソード。
(発明5)
発明4のカソードであって、前記溝の入口から奥に進むにつれて、前記溝の幅が増加する領域に到達する前に、溝の幅が漸次減少する領域を備える、該カソード。
(発明6)
電解精錬用カソードの導電性板材の下端に装着するための絶縁性材料であって、
前記絶縁性材料は、本体部と、前記導電性板材の下端に装着するための係合部とを備え、
前記本体部は対向する2つの略平行な面を備える、
該絶縁性材料。
(発明7)
発明6の絶縁性材料であって、前記絶縁性材料の厚みが前記導電性板材と略同じである、該絶縁性材料。
(発明8)
発明6又は7の絶縁性材料であって、前記本体部の上端から下端までの寸法が、6mm以上である、該絶縁性材料。
(発明9)
発明6~8のいずれか1つに記載の絶縁性材料であって、前記係合部の基部から先端にかけて幅が増加する領域を少なくとも備える、該絶縁性材料。
(発明10)
発明9の絶縁性材料であって、前記係合部の基部から先端にかけて、前記幅が増加する領域に到達する前は、幅が漸次減少する領域を備える、該絶縁性材料。
【発明の効果】
【0013】
一側面において、絶縁性材料は、導電性板材の下端側から延在し、且つ導電性板材と略同一平面となるように延在する。これにより、導電性板材の両面に析出した銅板が、導電性板材の下端で接合することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態における導電性板材の形状を表す。それぞれ斜視図(A)、正面図(B)、背面図(C)、平面図(D)、底面図(E)、右側面図(F)及び左側面図(G)を表す。
図2】一実施形態における導電性板材の溝部の形状を表す。
図3】一実施形態における導電性板材の寸法を表す。
図4】一実施形態における絶縁性材料の形状を表す。それぞれ斜視図(A)、正面図(B)、背面図(C)、右側面図(D)、左側面図(E)、平面図(F)、及び底面図(G)を表す。
図5】一実施形態における絶縁性材料を表す。
図6】一実施形態において、導電性板材に絶縁性材料が装着された状態を表す。
図7】一実施形態における絶縁性材料の寸法を表す。
図8】一実施形態における絶縁性材料の下端の形状を表す。
図9】導電性板材に絶縁性材料が装着された状態を表す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の具体的な実施形態について説明する。以下の説明は、発明の理解を促進するためのものである。即ち、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0016】
1. カソード
一実施形態において、本開示は、電気銅を製造するために使用されるカソードに関する。前記カソードは、導電性板材と絶縁性材料とを備える。以下では、カソードが備える構成要件について説明する。無論、銅に限定されず、当分野で電解精錬の対象となる他の金属(例えば、亜鉛、アルミニウムなど)に、本開示の実施形態を適用することも可能である。
【0017】
1-1.導電性板材
導電性板材は、電極としての役割、特にカソードとしての役割を果たし、電解液中に存在する銅が、導電性板材の表面上に析出することを促進することができる。
【0018】
導電性板材の材質については、特に限定されず、電気を良好に通す材質であればよい。例示的な材料としては、ステンレス、チタン及び銅などがあげられる。
【0019】
図1に一実施形態における導電性板材を示す。
【0020】
銅が析出したときに板状になるようにする目的から、導電性板材の形状については、板状であることが好ましい。
【0021】
導電性板材の下端部は、後述する絶縁性材料を取り付けるための溝部を設けてもよい。なお、本明細書において、導電性板材の上下方向については、電解槽に設置した時の状態を基準として言及する。
【0022】
溝部は、カソードの幅方向に沿って設けることができる。また、図2に示すように、溝部は、入口から奥に進むにつれて、溝の幅が増加する領域を少なくとも備える(図2(A))。また、入口から奥に進むにつれて、溝の幅が増加する領域に到達する前は、溝の幅が同一の状態が続いてもよく(図2(B))、又は溝の幅が漸次減少する状態が続いてもよい(図2(C))。好ましい溝部の構造としては、入口から奥に進むにつれて、溝の幅が増加する領域に到達する前に、溝の幅が漸次減少する領域を備える構造である(図2(C))。この理由として、既存の設備で利用されていたカソード(導電性板材)の底部にはV字形状の溝を設けられていることがあげられる。すなわち、V字形状の溝の底部を更に加工することで、図2(C)に示す構造を実現できる。従って、既存の設備で利用されていたカソードを再利用できる。
【0023】
いずれにしても、入口から奥に進むにつれて、溝の幅が増加する領域を備えることにより、絶縁性材料を取り付けたときに、外れにくくすることができる。
【0024】
導電性板材の寸法として、厚み、上下方向の長さ、及び幅などがあげられる(図3)。これらのサイズについては特に限定されない。
【0025】
ただし、厚みについては、薄すぎると上述した溝を設けるための加工が困難になる可能性がある。典型的な厚みサイズは、3.00mm以上、より好ましくは、3.10mm以上である。上限値ついては特に限定されず、3.25mm以下である。
【0026】
1-2.絶縁性材料
一実施形態において、本開示は、絶縁性材料に関する(図4)。絶縁性材料は、本体部と、導電性板材の下端に装着するための係合部とを備える(図5)。例えば、絶縁性材料は、導電性板材の下端側から延在し、且つ前記導電性板材と略同一平面となるように延在する略同一平面となるように設けることができる(図6)。例えば、導電性板材の面と、絶縁材料の面とが形成する角度が180°±5°、好ましくは、180°±3°、最も好ましくは180°±0°であってもよい。
【0027】
本体部は対向する2つの略平行な面を備えることができる。ここで、2つの略平行な面は、完全に平行である必要はない(図6(B)(C))。例えば、±5°以内、より好ましくは、±3°以内のずれを許容することができる。しかし、最も好ましいのは完全な平行(±0°)である。
【0028】
絶縁性材料の材質については特に限定されず、電気を通さない材質であればよい。例示的な材料としては、アクリロニトリル(Acrylonitrile)、ブタジエン(Butadiene)、スチレン(Styrene)共重合合成樹脂(ABS樹脂)、ポリプロピレン(PP)、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE樹脂)などがあげられる。
【0029】
絶縁性材料の寸法(特に、本体部)については、厚み、上下方向の長さ、及び幅などがあげられる(図7)。これらのサイズは、取り付ける導電性板材に適合するサイズであることが好ましい。
【0030】
例えば、絶縁性材料の幅は、導電性板材の幅と略同一の幅となることが好ましい。あるいは、導電性板材の側面に別途絶縁性材料を取り付ける場合には、側面の絶縁性材料の分を考慮して、下端側の絶縁性材料の幅を減らしてもよい。
【0031】
例えば、絶縁性材料の厚みは、一定である必要はないものの、少なくとも導電性板材と接する部分においては、導電性板材の厚みと略同一の厚みとなることが好ましい。これにより、絶縁性材料と導電性板材とが連続した面を形成することができる。両者の厚みは完全に同一である必要はなく、例えば、導電性板材の厚みに対する±6%以内、より好ましくは、±3%以内のずれを許容することができる。
【0032】
絶縁性材料の厚みを、導電性板材の厚みと略同一にすることで、殿物が絶縁性材料のところに蓄積することを防止できる。単純に、2枚の銅板の下端の距離を増加させるのであれば、例えば、図9に示すように、絶縁性材料の厚みを、導電性板材の厚みより大きくすることで実現することもできる。しかし、厚みの差分に該当する部分に、電解液中に存在する殿物が蓄積する。そして、析出する銅板の純度に影響を及ぼす。従って、絶縁性材料の厚みを導電性板材の厚みと略同一にすることで、殿物の蓄積の低減と、析出する銅板の下端側での接合の防止を両立することができる。また、図9に示すように絶縁性材料の厚みを、導電性板材の厚みより大きくした場合、析出した銅板をはがす既存設備に適合しなくなる可能性がある。これは、当該既存の設備が、導電性板材の厚みを前提として設計されているからである。
【0033】
例えば、絶縁性材料の本体の上端から下端までの寸法は、特に限定されず、銅板が導電性板材の下端をはみ出して成長する速度、絶縁性材料の厚さ等の要素を考慮して適宜決定すればよい。好ましくは、絶縁性材料の上下方向の長さが長ければ長いほど、下端側において、2枚の銅板を隔てる距離が大きくなり、これにより、下端側において、2枚の銅板が接合する可能性を低減できる。
【0034】
絶縁性材料の本体の上端から下端までの寸法(或いは、導電性板材との境界部から絶縁材料の下端までの寸法)は、典型的には、6mm以上であってもよい(より好ましくは、10mm以上)。この理由として、カソード側面部に絶縁材料を取り付けた場合に両面の銅板を当該絶縁材料が隔てる距離を参考にして、底面部に絶縁材料を取り付けた場合に換算することで導かれる。上限は、銅板を剥ぎとる機械の構造上、15mm以下であることが好ましい。
【0035】
絶縁性材料の下端部分の形状については特に限定されず、直線状でも、曲線状でも、又はV字形状であってもよい(図8)。
【0036】
一方、係合部の形状については、導電性板材の溝部に適合する形状であることが好ましい。例えば、係合部の基部から先端にかけて幅が増加する領域を少なくとも備えることが好ましい(図5(A))。また、係合部の基部から先端にかけて、幅が増加する領域に到達する前は、幅が同一の状態が続いてもよく(図5(B))、又は幅が漸次減少する状態(図5(C))が続いてもよい。係合部の形状として特に好ましいのは、前記係合部の基部から先端にかけて、前記幅が増加する領域に到達する前は、幅が漸次減少する領域を備えることである(図5(C))。この理由としては、上述したように、V字形状の溝部を備える導電性板材の再利用が可能になるからである。
【0037】
2.カソードの使用方法
以下では、上述したカソードの使用方法について説明する。上記カソードは、電気銅を製造するために用いることができる。より具体的には、電解槽中にカソードとして設置することができる。アノード側には粗銅を設置し、電解槽中には所与の電解液を入れることができる。そして、アノード及びカソードに電気を供給し、アノード側の粗銅を電解液中に溶解させることができる。溶解した銅は、カソードの両面にて、銅板の形状で析出することができる。
【0038】
所定量析出した後は、カソードを電解槽から引き揚げ、所定の操作により、銅板を、カソードから引きはがすことができる。
【0039】
上述したカソードを使用することで、カソードの両面に析出した銅板が互いに、カソードの下部で接合することを防止することができる。従って、銅板をカソードから引き剥がす作業をスムーズに実施できる。また、引き剥がした後の銅板の形状不良を低減することができる。
【0040】
好ましい実施形態においては、生産性を上げる目的で、カソード及びアノードに電気を供給する際の電流密度を高くすることができる。例えば、電流密度は、280A/m2以上、より好ましくは、300A/m2以上、更に好ましくは320A/m2以上であってもよい。電流密度の上限値は特に限定されないが、典型的には、350A/m2以下であってもよい。
【0041】
電流密度が高くなると、析出した銅板の下端側が更に絶縁性材料の表面領域まで成長する。しかし、上述したカソードの場合には、所定の絶縁性材料の存在により、接合した2枚の銅板の下端部同士を隔てる距離が十分に大きくなっている。従って、例えば、銅板の下端側が成長したとしても、銅板同士が接合することを回避できる。
【0042】
好ましい実施形態においては、上述したカソードは、停電対策にも適している。上述したような導電性板材の下端部分にV字形状の溝を設ける手段では、停電が起こった時に、接合した2枚の銅板を分離しにくい。しかし、上述したカソードの場合には、そもそも接合が起こりにくいため、V字形状の溝を設ける手段のときのような問題は生じない。
【0043】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明してきた。上記実施形態は、本発明の具体例に過ぎず、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上述の実施形態の1つに開示された技術的特徴は、他の実施形態に適用することができる。また、特記しない限り、特定の方法については、一部の工程を他の工程の順序と入れ替えることも可能であり、特定の2つの工程の間に更なる工程を追加してもよい。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって規定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9