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特許7043451船舶ナビゲーションシステム及びそのナビゲーション方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】船舶ナビゲーションシステム及びそのナビゲーション方法
(51)【国際特許分類】
   B63H 25/04 20060101AFI20220322BHJP
   G01C 21/22 20060101ALI20220322BHJP
   G08G 3/00 20060101ALI20220322BHJP
   B63H 25/00 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
B63H25/04 C
G01C21/22
G08G3/00 A
B63H25/04 E
B63H25/00 B
B63H25/04 D
B63H25/04 F
【請求項の数】 26
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019068207
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020158093
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2019-06-27
(31)【優先権主張番号】108110812
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】513185951
【氏名又は名称】財團法人船舶▲曁▼▲海▼洋▲産▼▲業▼研發中心
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鍾 豐仰
(72)【発明者】
【氏名】塗 景欽
(72)【発明者】
【氏名】朱 俊翰
(72)【発明者】
【氏名】許 閔翔
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106959698(CN,A)
【文献】特開2002-178990(JP,A)
【文献】特開2004-355105(JP,A)
【文献】特開2004-042884(JP,A)
【文献】特開2017-154734(JP,A)
【文献】特開2003-187399(JP,A)
【文献】特開平11-272999(JP,A)
【文献】特開昭61-278912(JP,A)
【文献】特開平01-280807(JP,A)
【文献】特開2014-098948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 25/04
G01C 21/22
G08G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶が、少なくとも2つのノードを含む航行経路に沿って航行し、前記少なくとも2つのノードは第1ノードと第2ノードとを含み、また前記第1ノードと前記第2ノードのリンクを第1線分とするステップ(a)と、
前記船舶が、前記第1ノードとの距離が第1長さより短いところまで航行した時、前記第1線分上に第1トラッキングポイントを生成させ、かつ前記第1トラッキングポイントから前記第1ノードまでの距離は第2長さであり、前記船舶が前記第1トラッキングポイントに追従して航行するステップ(b)と、
前記船舶が、前記第1トラッキングポイントとの距離が前記第1長さより短いところまで航行した時、前記第1線分上に第2トラッキングポイントを生成させ、かつ前記第2トラッキングポイントから前記第1トラッキングポイントまでの距離は前記第2長さであり、前記船舶が前記第2トラッキングポイントに追従して航行するステップ(c)と、
前記船舶が全てのノードを通過するまで上記ステップ(b)~(c)を繰り返すステップ(d)と、を含むことを特徴とする、船舶ナビゲーション方法。
【請求項2】
さらに第3ノードを含み、前記第2ノードと前記第3ノードとのリンクを第2線分とするステップ(e)と、
前記船舶が、前記第1トラッキングポイントとの距離が前記第1長さより短く、かつ前記第1トラッキングポイントから前記第2ノードまでの距離が第2長さより短いところまで航行した時、前記第2線分上に第2トラッキングポイントを生成させ、かつ前記第2トラッキングポイントから前記第1トラッキングポイントまでの距離は第2長さであり、前記船舶が前記第2トラッキングポイントに追従して航行するステップ(g)と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の船舶ナビゲーション方法。
【請求項3】
前記第1長さは、垂線間長(Length between perpendiculars、LPP)の2倍であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の船舶ナビゲーション方法。
【請求項4】
前記第2長さは、垂線間長(Length between perpendiculars、LPP)の3倍であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の船舶ナビゲーション方法。
【請求項5】
前記船舶が前記第1線分に沿って航行していても外部要因の干渉を受けて前記航行経路から逸脱させるステップを更に含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の船舶ナビゲーション方法。
【請求項6】
前記外部要因は、風力、波浪、海流、障害物又はそれらの組み合わせであることを特徴とする、請求項5に記載の船舶ナビゲーション方法。
【請求項7】
航行経路を受信するデータ送受信モジュールと、
前記データ送受信モジュールと接続され、経路ナビゲーションモジュールを含み、前記経路ナビゲーションモジュールが前記航行経路に基づきナビゲーション方法と結合し、針路制御命令及び船速制御命令を生成する中央処理装置と、
前記中央処理装置と接続され、前記針路制御命令に基づき前記船舶の方向を制御する方向制御モジュールと、
前記中央処理装置と接続され、前記船速制御命令に基づき前記船舶の速度を制御する動力推進モジュールと、
を含む船舶ナビゲーションシステムであって、
前記ナビゲーション方法は、請求項1又は2に記載の船舶ナビゲーション方法であることを特徴とする、船舶ナビゲーションシステム。
【請求項8】
前記中央処理装置と接続される測位モジュールを更に含み、前記測位モジュールは前記船舶の現在地の座標を取得することを特徴とする、請求項7に記載の船舶ナビゲーションシステム。
【請求項9】
前記中央処理装置と接続されるセンサーモジュールを更に含み、前記センサーモジュールは、少なくとも1つの外部環境データを検出することを特徴とする、請求項7に記載の船舶ナビゲーションシステム。
【請求項10】
前記外部環境データとしては、風力データ、波浪データ、海流データ、障害物データ或いはそれらの組み合わせが挙げられることを特徴とする、請求項9に記載の船舶ナビゲーションシステム。
【請求項11】
前記データ送受信モジュールと接続される無線通信モジュールを更に含み、前記無線通信モジュールは、遠隔地で前記航行経路を受信することを特徴とする、請求項7に記載の船舶ナビゲーションシステム。
【請求項12】
前記無線通信モジュールの通信方式としては、ブルートゥース、Wi-Fi、セルラーネットワーク、無線電波、衛星通信或いはそれらの組み合わせが挙げられることを特徴とする、請求項11に記載の船舶ナビゲーションシステム。
【請求項13】
前記中央処理装置が前記経路ナビゲーションモジュールと接続される電子海図データベースを更に含み、前記電子海図データベースは、過去の航行経路を保存するために用いられることを特徴とする、請求項7に記載の船舶ナビゲーションシステム。
【請求項14】
前記中央処理装置、前記センサーモジュール及び測位モジュールと接続される自動障害物回避モジュールを更に含むことを特徴とする、請求項9に記載の船舶ナビゲーションシステム。
【請求項15】
前記中央処理装置及び前記無線通信モジュールと接続される情報セキュリティモジュールを更に含むことを特徴とする、請求項11に記載の船舶ナビゲーションシステム。
【請求項16】
前記データ送受信モジュールは、産業用コンピュータ(IPC)、ヒューマンマシンインターフェース(HMI)、シングルチップ或いはそれらの組み合わせが挙げられることを特徴とする、請求項7に記載の船舶ナビゲーションシステム。
【請求項17】
前記中央処理装置としては、プログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller、PLC)、マイクロコントローラユニット(Microcontroller Unit、MCU)或いはそれらの組み合わせが挙げられることを特徴とする、請求項7に記載の船舶ナビゲーションシステム。
【請求項18】
前記方向制御モジュールとしては、方向舵、電子操舵システム或いはそれらの組み合わせが挙げられることを特徴とする、請求項7に記載の船舶ナビゲーションシステム。
【請求項19】
前記動力推進モジュールは、発電機、エンジン、サイドスラスター、スロットル、バッテリー、モータ或いはそれらの組み合わせが挙げられることを特徴とする、請求項7に記載の船舶ナビゲーションシステム。
【請求項20】
前記測位モジュールとしては、グローバル・ポジショニング・システム(Global Positioning System、GPS)、全地球航法衛星システム(GLONASS)、北斗衛星測位システム或いはそれらの組み合わせが挙げられることを特徴とする、請求項8に記載の船舶ナビゲーションシステム。
【請求項21】
前記センサーモジュールは、少なくとも1つの環境センサーモジュールと少なくとも1つの船舶センサーモジュールとを含むことを特徴とする、請求項9に記載の船舶ナビゲーションシステム。
【請求項22】
前記少なくとも1つの環境センサーモジュールとしては、気圧センサー、温度センサー、風向センサー、湿度センサー、光学センサー、音響センサー、レーダーセンサー、ライダーセンサー、撮像装置、船舶自動識別システム(Automatic Identification System、AIS)或いはそれらの組み合わせが挙げられることを特徴とする、請求項21に記載の船舶ナビゲーションシステム。
【請求項23】
前記少なくとも1つの船舶センサーモジュールとしては、燃料センサー、電力量センサー、ジャイロスコープ、速度センサー、方向舵センサー、傾斜角度センサー或いはそれらの組み合わせ等が挙げられることを特徴とする、請求項21に記載の船舶ナビゲーションシステム。
【請求項24】
前記無線通信モジュールとしては、アンテナ、ブルートゥース通信モジュール、Wi-Fi通信モジュール、セルラーネットワーク通信モジュール、無線通信モジュール、衛星通信モジュール或いはそれらの組み合わせが挙げられることを特徴とする、請求項11に記載の船舶ナビゲーションシステム。
【請求項25】
前記電子海図データベースは、海図、地理情報システム(Geographic Information System、GIS)、航海情報記録(Voyage Data)、海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約(COLREGS)或いはそれらの組み合わせを含むデータを保存していることを特徴とする、請求項13に記載の船舶ナビゲーションシステム。
【請求項26】
前記情報セキュリティモジュールは、侵入検知システム(Intrusion-detection system,IDS)、身分認証システム(Authentication)、権限と暗号化システム、ファイアウォールシステム(Firewall)、ホワイトリストシステム(Whitelisting)或いはそれらの組み合わせが挙げられることを特徴とする、請求項15に記載の船舶ナビゲーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶ナビゲーションシステム及びそのナビゲーション方法に関し、特に、磁力の反発しあうことをシミュレーションする船舶ナビゲーションシステム及びそのナビゲーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
造船科学技術の進歩に伴い、船舶は海上輸送の主要輸送手段であり、一般船舶であるか近年積極的に発展してきた自動運航船(無人船)であるかを問わず、そのナビゲーションの制御或いは経路の補正は海上輸送の航行過程で極めて重要な役割を担い、いかにして船舶の輸送によってもたらされる経済的利益をより大き運航コストを削減するかが重要な設計目標となっている。
【0003】
現行の船舶経路のナビゲーションの多くは、見通し線法(Line of Sight、LOS)或いは平行補正ナビゲーション法(Parallel Correction、PC)を船舶の主要航行の拠り所としているが、見通し線法及び平行補正ナビゲーション法はいずれも船舶の現在位置のナビゲーション経路ノード間の相対位置関係のみによって参考針路を生成し、船舶をターゲットノード現在位置へ前進するよう誘導する。ただし、風力、波浪或いは海流等の外力干渉で生じた航行経路からの偏位については、それらの方法でもあらかじめ針路を補正できない。
【0004】
また、見通し線法であるか平行補正ナビゲーション法であるかを問わず、複数のウェイポイント・ノードのナビゲーションに対し、変針点において補正の必要により舵を切り過ぎてオーバーシュート(Overshoot)現象(図11)を容易に引き起こしてしまい、設定した航行経路内に複数の変針点を有することで、船舶に複数回のオーバーシュートの状況を生じさせた場合、航行時間の増加、航行燃料の無駄及び船舶設備の損耗等の問題が派生してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、背景技術で言及した問題点を解決するため、ナビゲーション過程で、変針点において舵を切ることで引き起こされるオーバーシュート(Overshoot)現象をいかにして効果的に防止するか、或いは環境要因の干渉を受けてあらかじめ設定された航行経路からの偏位を補正するかについて、船舶のナビゲーション方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る船舶ナビゲーション方法は、船舶が航行経路(少なくとも2つのノードを含み、前記少なくとも2つのノードは第1ノードと第2ノードとを含み、また前記第1ノードと前記第2ノードのリンクを第1線分とする。)に沿って航行するステップ(a)と、前記船舶が、前記第1ノード或いは原トラッキングポイントとの距離が第1長さより短いところまで航行した時、前記第1線分上に第1トラッキングポイントを生成させ、かつ前記船舶が前記第1トラッキングポイントに追従して航行(前記第1トラッキングポイントから前記第1ノードまでの距離が第2長さ)するステップ(b)と、前記船舶が、前記第1トラッキングポイントとの距離が前記第1長さより短いところまで航行した時、前記第1線分上に第2トラッキングポイントを生成させ、かつ前記船舶が前記第2トラッキングポイントに追従して航行(前記第2トラッキングポイントから前記第1トラッキングポイントまでの距離が第2長さ)するステップ(c)と、前記船舶が各ノードを通過するまで上記ステップ(b)~(c)を繰り返すステップ(d)と、を含む。
【0007】
本発明は、別の船舶ナビゲーション方法を更に提供し、前記方法は船舶が航行経路(少なくとも2つのノードを含み、前記少なくとも2つのノードは第1ノードと第2ノードと第3ノードとを含み、また前記第1ノードと前記第2ノードのリンクを第1線分とし、前記第2ノードと前記第3ノードのリンクを第2線分とする。)に沿って航行するステップ(e)と、前記船舶が、前記第1ノード或いは原トラッキングポイントとの距離が第1長さより短いところまで航行した時、前記第1線分上に第1トラッキングポイントを生成させ、かつ前記船舶が前記第1トラッキングポイントに追従して航行(前記第1トラッキングポイントから前記第1ノードまでの距離が第2長さ)するステップ(f)と、前記船舶が、前記第1トラッキングポイントとの距離が前記第1長さより短く、かつ前記第1トラッキングポイントから前記第2ノードまでの距離が第2長さより短いところまで航行した時、前記第2線分上に第2トラッキングポイントを生成させ、かつ前記船舶が前記第2トラッキングポイントに追従して航行(前記第2トラッキングポイントから前記第1トラッキングポイントまでの距離が第2長さ)するステップ(g)と、前記船舶が各ノードを通過するまで上記ステップ(f)~(g)を繰り返すステップ(h)と、を含む。
【0008】
また、本発明は、船舶ナビゲーションシステムで、特に、船舶に用いられるナビゲーションシステムに関するものを提供する。前記船舶ナビゲーションシステムは、航行経路を受信するデータ送受信モジュールと、前記データ送受信モジュールと接続され、経路ナビゲーションモジュールを含み、前記経路ナビゲーションモジュールは前記航行経路に基づきナビゲーション方法と結合し、針路制御命令及び船速制御命令を生成する中央処理装置と、前記中央処理装置と接続され、前記針路制御命令に基づき前記船舶の方向を制御する方向制御モジュールと、前記中央処理装置と接続され、前記船速制御命令に基づき前記船舶の速度を制御する動力推進モジュールとを含む。
【0009】
以上の本発明に対する概略は、本発明の幾つか態様及び技術的特徴に対し基本的な説明を行うことを目的とする。発明の概略は、本発明に対する詳細な記述ではないため、その目的は特別に本発明のキーとなる或いは重要要素を列挙することではなく、本発明の範囲を特定するために用いられることはなく、簡明な方式でのみ本発明の数種の概念を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の好ましい実施例に係る船舶ナビゲーションシステムを示す模式図である。
図2A】本発明の好ましい実施例に係る船舶ナビゲーション方法のフローチャートである。
図2B】本発明の好ましい実施例に係る船舶ナビゲーション方法のフローチャートである。
図3】本発明の好ましい実施例に係るナビゲーション方法の流れを示す模式図である。
図4】本発明の好ましい実施例に係るナビゲーション方法の流れを示す模式図である。
図5】本発明の好ましい実施例に係るナビゲーション方法の流れを示す模式図である。
図6】本発明の好ましい実施例に係るナビゲーション方法の流れを示す模式図である。
図7】本発明の好ましい実施例に係るナビゲーション方法の流れを示す模式図である。
図8A】本発明の好ましい実施例に係る別の船舶ナビゲーション方法のフローチャートである。
図8B】本発明の好ましい実施例に係る別の船舶ナビゲーション方法のフローチャートである。
図9】本発明の好ましい実施例に係る別の船舶ナビゲーション方法の流れを示す模式図である。
図10】本発明の好ましい実施例に係る別の船舶ナビゲーション方法の流れを示す模式図である。
図11】従来のナビゲーション方法で引き起こされるオーバーシュート(Overshoot)を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の技術的特徴及び実用的効果を理解し、明細書の内容に基づいて実施できるようにするため、更に図面に示す好ましい実施例で次の通り詳細に説明する。
【0012】
本発明は、船舶に用いることのできるナビゲーションシステム、及び船舶ナビゲーション方法を提供する。図1を参照すると、本発明の好ましい実施例に係る船舶ナビゲーションシステムである。なお、前記船舶は船上で航行を制御する船員を有する一般船舶以外に、無人運航船であってもよく、例えば、自動運航船、自律運航船、無人水上航走体及び無人艇等(本明細書では、総称して「無人船」という。)であり、船舶或いは航走体の航行経路の自動制御に関する場合は、均しくその範囲に属すべきである。また、前記船舶の外形は、流線型の低抵抗船型として設計することで、船舶操舵の安定性を増すことができる。
【0013】
図1に示すように、本発明の船舶ナビゲーションシステム10は、データ送受信モジュール100と、前記データ送受信モジュール100と接続されかつ経路ナビゲーションモジュール210を含む中央処理装置200と、前記中央処理装置200と接続される方向制御モジュール300と、前記中央処理装置200と接続される動力推進モジュール400とを含む。これ以外に、前記ナビゲーションシステム10は、前記中央処理装置200と接続されるセンサーモジュール500と、測位モジュール600と、前記データ送受信モジュール100と接続される無線通信モジュール700と、を更に含む。前記中央処理装置200は、前記経路ナビゲーションモジュール210と接続される電子海図データベース220を更に含む。
【0014】
なお、前記船舶は、運航船員を有する一般船舶以外に、さらに国際海事機関(International Maritime Organization、IMO)が定める「海上自律運航船(Maritime Autonomous Surface Ships、MASS)」を指し、本明細書では総称して「無人船」という。
【0015】
以下、本発明のナビゲーションシステムについて更なる説明を行う。まず、前記データ送受信モジュール100は、外部を経由して航行経路を受信でき、前記受信方式は直接前記航行経路を船舶内に入力して前記船舶を前記経路に従って航行させ、前記データ送受信モジュールと接続される無線通信モジュール700を通じて、(海岸局)制御センター、他の船或いは衛星等の外部装置800から遠隔地で無線伝送された航行経路を受信することもできる。前記通信方式としては、ブルートゥース(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、セルラーネットワーク(例えば、GSM(登録商標)、CDMA、GPRS或いは4G/5G無線ネットワーク)、無線電波(RF、短波HF、超短波VHF或いは極超短波UHF)或いは衛星通信が挙げられ、無線方式によってデータを設定されたターゲットに伝送するものがその範囲に属するが、本発明はこれに限定されない。
【0016】
前記中央処理装置200は、前記データ送受信モジュール100と接続され、前記航行経路を受信すると共に中央処理装置200内の経路ナビゲーションモジュール210を通じて、航行経路に基づきナビゲーション方法と結合して針路制御命令及び船速制御命令を生成する。前記ナビゲーション方法については、図2乃至図7で更なる説明を行う。
【0017】
また、経路ナビゲーションモジュールの計算精度を向上させるため、前記中央処理装置200と接続される測位モジュール600を通じてリアルタイムで船舶或いは無人船の現在位置座標(即ち経緯度)を取得することもできる。前記測位モジュール600は、グローバル・ポジショニング・システム(Global Positioning System、GPS)、全地球航法衛星システム(GLONASS)、北斗衛星測位システム或いはそれらの組み合わせ等とすることができ、船舶或いは無人船の現在地の座標を取得できるものがその範囲に属するが、本発明はこれに限定されない。また、前記船舶或いは無人船の航行過程においても多くの外部要因(例えば、風力、波浪及び海流等)及び内部要因(例えば、船舶の操縦)により運航経路に影響を及ぼすことがある。よって、本発明のナビゲーションシステム10は、前記中央処理装置200と接続されるセンサーモジュール500(少なくとも1つの環境センサーモジュール及び少なくとも1つの船舶センサーモジュールを含む)を通じてリアルタイムで少なくとも1つの外部環境データ(例えば、風力データ、波浪データ、海流データ、障害物データ或いはそれらの組み合わせ等)及び少なくとも1つの内部船舶データ(例えば、エンジンの回転速度、船速、舵角方向或いは船体温度等)を検出できる。
【0018】
さらに、前記経路ナビゲーションモジュール210は、航行経路、船舶の現在地の座標及び外部環境データ(及び内部船舶データ)に基づき、同時に別のナビゲーション方法と結合することで針路制御命令及び船速制御命令も生成できる。前記ナビゲーション方法については図8乃至図11で更なる説明を行う。
【0019】
前記中央処理装置200と接続される方向制御モジュール300は、経路ナビゲーションモジュール210が計算した針路制御命令に基づき前記船舶の針路を制御(舵角方向を変更)できる。また、前記中央処理装置200と接続される動力推進モジュール400は、経路ナビゲーションモジュール210が計算した船速制御命令に基づき前記船舶の船速を制御できる。これにより、前記船舶は、設定された航行経路の軌跡に追従して船舶経路ナビゲーションを完成させることができる。
【0020】
本実施例において、前記データ送受信モジュール100としては、産業用コンピュータ(IPC)、ヒューマンマシンインターフェース(HMI)、シングルチップ又はそれらの組み合わせ等が挙げられ、外部指令(本実施例では船舶経路)を受信できると共に船舶の関連データを送信できる装置がその保護範囲に属するが、本発明はこれに限定されない。前記中央処理装置200としては、プログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller、PLC)、マイクロコントローラユニット(Microcontroller Unit、MCU)或いはそれらの組み合わせ等が挙げられ、システムモジュール間の情報伝達を受けると共に演算処理を行った後で制御命令を送信できる装置がその保護範囲に属するが、本発明はこれに限定されない。
【0021】
本実施例において、前記方向制御モジュール300としては、方向舵、電子操舵システム或いはそれらの組み合わせ等が挙げられ、前記中央処理装置200の命令を受信した後、方向舵の角度を調整することで、船舶の針路を制御することを目的とする。前記動力推進モジュール400として、発電機、エンジン、サイドスラスター(横方向推進装置)、スロットル、バッテリー、モータ或いはそれらの組み合わせ等が挙げられ、前記中央処理装置200の命令を受信した後、動力の出力の大きさを調整することで、船舶の船速を制御することを目的とする。さらに、前記バッテリーは、リチウムイオンバッテリ-、リチウムポリマーバッテリ-、鉄リン酸リチウムバッテリ-、燃料電池或いはそれらの組み合わせ等とすることができ、動力推進モジュールのニーズに応じて設計できる。前記動力推進モジュールは、ハイブリッド動力システムとしてもよく、船舶上に配置されたソーラーパネル、帆又は波動エネルギーの駆動装置によって太陽エネルギー、風力エネルギー及び波動エネルギー等の自然エネルギーを収集し、それらの自然エネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリー内に蓄積することで、動力推進モジュール400の動力源を補助する。
【0022】
本実施例において、前記センサーモジュール500は、少なくとも1つの環境センサーモジュール(図示せず)と少なくとも1つの船舶センサーモジュール(図示せず)とを含む。さらに、前記少なくとも1つの環境センサーモジュールとしては、気圧センサー、温度センサー、風向センサー、湿度センサー、光学センサー、音響センサー、レーダーセンサー、ライダーセンサー、撮像装置、船舶自動識別システム(Automatic Identification System、AIS)或いはそれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0023】
前記気圧センサー、温度センサー、風向センサー及び湿度センサーは、船舶の周辺環境の気圧、風向、温度及び湿度等の情報をセンシングでき、前記撮像装置は船舶内外部の実際の監視映像を撮影・録画するために用いられる。前記光学センサー、音響センサー、レーダーセンサーは、例えば、自動レーダー・プロッティング装置(Automatic Radar Plotting Aids、ARPA)及びライダーセンサーは、対応する電磁波、音波或いはビームを外部空間に発射して、反射してきた電磁波、音波或いはビームによって空間内の物体(例えば、岩礁、他の船或いは大型動物等の障害物)を検出する。船舶自動識別システムは、地理情報システム(Geographic Information System、GIS)を通じて統合でき、また海域地理情報システム(Marine Geographic Information System、MGIS)、海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約(International Regulations for Preventing Collisions at Sea、COLREGS)、レーダーシステム(Radar)及びインターネット(Internet)を結合し、自主的に問い合わせ或いは受動的な通知方式で、付近の水上交通区域の船舶の動的情報及び水文環境情報を把握し収集できる。
【0024】
前記少なくとも1つの船舶センサーモジュールとしては、燃料センサー、電力量センサー、ジャイロスコープ、速度センサー、方向舵センサー、傾斜角度センサー或いはそれらの組み合わせ等が挙げられる。前記燃料センサーは、船舶の燃料残量を監視し、前記電力量センサーは船舶のバッテリー残量を監視し、前記ジャイロスコープ及び速度センサーは船舶の船速を監視し、前記方向舵センサーは船舶の針路を監視し、前記傾斜角度センサーは船舶水面上の傾斜角度を監視する。上述のセンサーモジュールに含まれる各種センサーによって、船舶の多くのオリジナル情報を収集することで、その後の演算処理に当てることができる。
【0025】
本実施例において、前記無線通信モジュール700としては、アンテナ、ブルートゥース通信モジュール、Wi-Fi通信モジュール、セルラーネットワーク通信モジュール、無線通信モジュール、衛星通信モジュール或いはそれらの組み合わせ等が挙げられ、無線方式によってデータを設定されたターゲットに伝送する設備がその範囲に属するが、本発明はこれに限定されない。
【0026】
さらに、本発明のナビゲーションシステム10は、前記中央処理装置200、前記センサーモジュール500及び前記測位モジュール600と接続される自動障害物回避モジュール900を更に含み、前記自動障害物回避モジュール900は船舶を障害物回避に誘導する能力を持ち、前記センサーモジュール500及び前記測位モジュール600から提供された情報を介して航行経路と障害物の相対位置及び相対速度を自動的に判断して、リアルタイムで前記中央処理装置200に知らせることで、船舶を操縦して自動的に障害物を回避できる。前記自動障害物回避モジュール900は、レーダー分析ユニットと映像分析ユニットとジャイロスコープとを更に含み、前記レーダー分析ユニット(図示せず)は前記光学センサー、音響センサー及びレーダーセンサーのレーダーエコーを分析することで、前記船舶周囲の物体の大きさ、遠近等の情報を判断する。前記映像分析ユニット(図示せず)は、前記撮像装置の映像情報を分析し、同様に前記船舶周囲の状況を判断できる。前記ジャイロスコープ(図示せず)は、オリエンテーション機能を提供し、同時に測位モジュール900と結合して船舶の現在位置を取得し、適切な針路を自動的に計画して障害物から回避させる。
【0027】
さらに、本発明のナビゲーションシステム10は、前記中央処理装置200及び/又は無線通信モジュール700と接続される情報セキュリティモジュール1000を更に含み、前記情報セキュリティモジュール1000は前記中央処理装置200の受信した情報に間違いがあった時或いは無線通信モジュール700と外部リンクに問題が生じた時、前記船舶の安全防護メカニズムの提供の役目を果たす。無線通信モジュール700のリンク異常が生じて外部情報が送達できず、無線通信モジュール700で通信する時に干渉を受け、或いは第三者(例えば、悪意のあるプログラム又はウィルス等)が現れて中央処理装置200の作動を不正に操作した時、自動的に前記船舶をニュートラル位置に切り替え、同時に前記船舶の無線通信モジュールによる外部情報或いは命令の受信を禁止することで、衝突事故の発生を防止し、作業員を安全に前記船舶に乗って修理作業を行わせることができる。前記情報セキュリティモジュール1000は、侵入検知システム(Intrusion-detection system、IDS)を通じて無線通信の伝送を監視制御し、怪しい活動又は船舶の航行に関する規則違反の有無を検査でき、検出された時、警報を発し或いは自動反応措置を講じる。身分認証システム(Authentication)は、身分認証(例えば、共通鍵又は生体特徴認証)をパスしたユーザーのみに船舶との通信権限を付与する。ファイアウォールシステム(Firewall)は、外部装置と無線通信モジュールとの間に構築され、船舶のあらかじめ設定された保護内容に基づきやり取りを監視制御し、不正な外部情報を遮断し;又はホワイトリスト(Whitelisting)システム或いはアプリケーションホワイトリスト(Application Whitelisting)によってポジティブリストのモジュール若しくはアプリケーションプログラムを実行し、リスト以外のアプリケーションプログラムの実行を許容しない。言い換えると、情報セキュリティモジュール1000は、ナビゲーションシステム10内部の全てのモジュール又はアプリケーションプログラムの相互情報の伝達及び実行のみを許容し、リスト以外のモジュール或いはアプリケーションプログラムが現れた場合、システム10が実行せず、かつ直ちにアラームを鳴らして注意を喚起し、ホワイトリストによって第1線において遮断することで、悪意のあるプログラムが侵入して船舶の航行を妨害することに対抗する。
【0028】
最後に、本実施例において前記中央処理装置は、前記経路ナビゲーションモジュール210と接続される電子海図データベース220を更に含み、前記電子海図データベース220は過去の航行経路を保存し、今後前記船舶が同一の前記航行経路で航行する時、データベース220に保存されている過去の航行経路を使用して航行を補助でき、このようにして中央処理装置の再計算時間及びエネルギー消費を減少できる。また、前記電子海図データベースには、海図、地理情報システム(Geographic Information System、GIS)、航海情報記録(Voyage Data)、海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約(COLREGS)、海洋環境データ、海流データ、潮汐潮流データ、航行経路・航路データ、港湾施設データ、航行援助施設、航路標識データ、現況情報、港湾リアルタイム動的情報、海難データベース、気象予測データ、過去の気象データ、陸岸データベース、海図水深点データベース、重要道路データベース及び灯標・浮漂データベース等の少なくとも1種以上の関連データが更に保存される。
【0029】
次に、前記ナビゲーション方法について更なる説明を行う。
【0030】
まず、図2A図2B及び図3乃至図7を参照すると、図2Aは、本発明の好ましい実施例に係る船舶ナビゲーション方法のフローチャート(ノードを跨いでいない)であり、図2Bは本発明の好ましい実施例に係る船舶ナビゲーション方法のフローチャート(ノードを跨いでいる)である。図2Aに示すように、本発明の船舶ナビゲーション方法は、船舶が航行経路(少なくとも2つのノードを含み、前記少なくとも2つのノードは第1ノードと第2ノード[ノード数は、航行経路に基づいて自ら設定でき、本発明はこれを限定しない。]とを含み、また前記第1ノードと前記第2ノードのリンクを第1線分とする。)に沿って航行するステップ(a)と、前記船舶が、前記第1ノード或いは原トラッキングポイントとの距離が第1長さより短いところまで航行した時、前記第1線分上に第1トラッキングポイントを生成させ、かつ前記船舶が前記第1トラッキングポイントに追従して航行(前記第1トラッキングポイントから前記第1ノードまでの距離が第2長さ)するステップ(b)と、前記船舶が、前記第1トラッキングポイントとの距離が前記第1長さより短いところまで航行した時、前記第1線分上に第2トラッキングポイントを生成させ、かつ前記船舶が前記第2トラッキングポイントに追従して航行(前記第2トラッキングポイントから前記第1トラッキングポイントまでの距離が第2長さ)するステップ(c)と、前記船舶が各ノードを通過するまで上記ステップ(b)~(c)を繰り返すステップ(d)と、を含む。
【0031】
前記ステップ(a)の後には、前記船舶が前記第1線分に沿って航行していても外部要因の干渉を受けて前記航行経路から逸脱させるステップ(a1)を更に含み、終了後ステップ(f)を実行する。前記外部要因は、センサーモジュールが検出した(図1)風力、波浪、海流又はそれらの組み合わせ等とすることができ;或いはあらかじめ設定された船舶経路での航行過程において、センサーモジュールが前記経路に突発事象(例えば、他の船があらかじめ設定された航行経路まで航行し、又は航行経路内に岩礁或いは大型海洋生物等が出現する)があることを検出した時、航行過程で障害物回避により船舶を本来の航行経路から逸脱させることができる。
【0032】
図2Bに示すように、本発明の船舶ナビゲーション方法は、船舶が航行経路(少なくとも2つのノードを含み、前記少なくとも2つのノードは第1ノードと第2ノードと第3ノード[ノード数は、航行経路に基づいて自ら設定でき、本発明はこれを限定しない。]とを含み、また前記第1ノードと前記第2ノードのリンクを第1線分とし、前記第2ノードと前記第3ノードのリンクを第2線分とする。)に沿って航行するステップ(e)と、前記船舶が、前記第1ノード或いは原トラッキングポイントとの距離が第1長さより短いところまで航行した時、前記第1線分上に第1トラッキングポイントを生成させ、かつ前記船舶が前記第1トラッキングポイントに追従して航行(前記第1トラッキングポイントから前記第1ノードまでの距離が第2長さ)するステップ(f)と、前記船舶が、前記第1トラッキングポイントとの距離が前記第1長さより短く、かつ前記第1トラッキングポイントから前記第2ノードまでの距離が第2長さより短いところまで航行した時、前記第2線分上に第2トラッキングポイントを生成させ、かつ前記船舶が前記第2トラッキングポイントに追従して航行(前記第2トラッキングポイントから前記第1トラッキングポイントまでの距離が第2長さ)するステップ(g)と、前記船舶が各ノードを通過するまで上記ステップ(f)~(g)を繰り返すステップ(h)と、を含む。図2B図2Aの相違点は、原トラッキングポイントから次ノードまでの距離が第2長さより短い時、新しいトラッキングポイントが原ノードリンクの次ノードリンク上に位置しなければならないため、航行経路にノードを跨ぐ現象が現れることである。なお、船舶Vがトラッキングポイントに追従して航行する過程で、その経路において障害物が検出された場合、障害物を優先して回避してからトラッキングポイントに追従して航行し続ける。
【0033】
前記ステップ(e)の後には、前記船舶が前記第1線分に沿って航行していても外部要因の干渉を受けて前記航行経路から逸脱させるステップ(e1)を更に含み、終了後ステップ(f)を実行する。前記外部要因は、センサーモジュールが検出した(図1)風力、波浪、海流又はそれらの組み合わせ等とすることができ;或いはあらかじめ設定された船舶経路での航行過程において、センサーモジュールが前記経路に突発事象(例えば、他の船があらかじめ設定された航行経路まで航行し、又は航行経路内に岩礁或いは大型海洋生物等が出現する)があることを検出した時、航行過程で障害物回避により船舶を本来の航行経路から逸脱させることができる。
【0034】
図3乃至図7は、更に船舶ナビゲーション方法の流れを示す模式図である。まず図3において、船舶Vは、航行経路(ここでノードOABCの軌跡に沿う)に沿って航行し、ノードOは本図において船舶Vが通過した航行ポイントを表し、ノードA(ここでは第1ノード)、B(ここでは第2ノード)及びC(ここでは第3ノード)は船舶Vが向かう少なくとも1つのターゲット点を表し、また第1ノードAは本図における船舶Vの次のターゲット点である。また、本図においてノードO(ここで航行ポイント)と第1ノードAのリンクは第1線分OAで、第1ノードAと第2ノードBのリンクは第2線分ABで、第2ノードBと第3ノードCのリンクは第2線分BCである。
【0035】
船舶Vは、前記第1ノードAとの距離が第1長さD1より短いところまで航行した時、第1トラッキングポイント(新しいトラッキングポイント)P1を前記第2線分AB上に生成し、かつ前記船舶Vが本来第1ノードAに追従(自動トラッキング)して航行する経路を前記第1トラッキングポイントP1に追従(自動トラッキング)して航行(航行経路は、図中の太い破線の通り)することに変更し、前記第1トラッキングポイントP1から前記第1ノードAまでの距離は、第2長さD2とする。
【0036】
続いて図4において、船舶Vは前記第1トラッキングポイントP1にトラッキングして航行し、かつ前記第1トラッキングポイントP1との距離が前記第1長さD1より短いところに接近した時(この時船舶Vはすでに第1ノードAを通過している)に、第2トラッキングポイント(新しいトラッキングポイント)P2を前記第2線分AB上に生成し、かつ前記船舶Vが本来第1トラッキングポイントP1に追従(自動トラッキング)して航行する経路を前記第2トラッキングポイントP2(新しいトラッキングポイント)に追従(自動トラッキング)して航行(航行経路は、図中の太い破線の通り)することに変更し、前記第2トラッキングポイントP2から前記第1トラッキングポイントP1までの距離は、第2長さD2とする。
【0037】
図5において、船舶Vは図4の第2トラッキングポイントP2(本図においてトラッキングポイントP1)にトラッキングして航行し、かつ前記第1トラッキングポイントP1との距離が前記第1長さD1より短いところに接近した時に、新しいトラッキングポイントP2を前記第2線分AB上に生成し、かつ前記船舶Vが本来第1トラッキングポイントP1に追従(自動トラッキング)して航行する経路を前記第2トラッキングポイントP2(新しいトラッキングポイント)に追従(自動トラッキング)して航行(航行経路は、図中の太い破線の通り)することに変更し、前記第2トラッキングポイントP2から前記第1トラッキングポイントP1までの距離は、第2長さD2とする。
【0038】
さらに、図5図6を併せて参照すると、前記第2トラッキングポイントP2から前記第2ノードBまでの距離が前記第2長さD2より短い時、第3トラッキングポイントP3を前記第3線分BC上に生成し、かつ前記船舶Vは前記第3トラッキングポイントP3に追従(自動トラッキング)して航行する。具体的には、船舶Vは、図5の第2トラッキングポイントP2にトラッキングし、かつトラッキングポイントP2との距離が前記第1長さD1より短いところに接近した時、元々新しいトラッキングポイントを前記第2線分AB上に生成するはずなのに、前記第2トラッキングポイントP2から前記第2ノードBまでの距離が前記第2長さD2より短いことで、新しいトラッキングポイントを前記第2線分AB上に生成できなくなるため、新しいトラッキングポイント(すなわち、第3トラッキングポイントP3)が第2線分ABの次の線分(すなわち、第3線分BC)上に生成され、かつ前記船舶Vが本来第2トラッキングポイントP2に追従(自動トラッキング)して航行する経路を前記第3トラッキングポイントP3(新しいトラッキングポイント)に追従(自動トラッキング)して航行(航行経路は、図中の太い破線の通り)することに変更し、前記第3トラッキングポイントP3から前記第2トラッキングポイントP2までの距離は、第2長さD2とする。
【0039】
最後に、図7から分かるように、先行技術では変針点において舵を切り過ぎてオーバーシュート現象が引き起こされることと比較し、本発明に係るナビゲーション方法は新しいトラッキングポイントに追従(自動トラッキング)するため、自動的に舵角の方向を早めに補正することで、オーバーシュートによる航行時間の増加及び航行燃料の無駄等の問題を解消する。図7に示すように、本図中のナビゲーション方法は図4の状況に類似し、船舶Vは、図6の第3トラッキングポイントP3(本図ではトラッキングポイントP1)をトラッキングし、かつ第1トラッキングポイントP1との距離が前記第1長さD1より短いところに接近した時(この時船舶Vはすでに第2ノードBを通過している)に、新しいトラッキングポイントP2を前記第3線分BC上に生成し、かつ前記船舶Vが本来第1トラッキングポイントP1に追従(自動トラッキング)して航行する経路を前記第2トラッキングポイントP2(新しいトラッキングポイント)に追従(自動トラッキング)して航行(航行経路は、図中の太い破線の通り)することに変更し、前記第2トラッキングポイントP2から前記第1トラッキングポイントP1までの距離は、第2長さD2とする。
【0040】
本実施例の前述で言及した全ての第1長さD1は、垂線間長(Length between perpendiculars、LPP)の2倍であり、言及した全ての第2長さD2は垂線間長(Length between perpendiculars、LPP)の3倍である。この垂線間長とは、船舶の船首垂線(Forward Perpendicular/F.P.舵頭材と計画吃水線の交点を通る垂直線)から船尾垂線(After Perpendicular/A.P.舵柱と計画吃水線の交点を通る垂直線)までが満載喫水線にそって測量した水平距離を意味する。測定対象船体に舵柱がない時、舵軸の中心線を船尾マークとして垂線間長を測量できる。
【0041】
また、その他の可能な実施例において、第1長さD1及び第2長さD2は、使用者のニーズに応じて自ら設定でき、又は外部環境或いは航行経路から逸脱させる程度によって第1長さD1と第2長さD2の距離を自動的に調整できるが、本発明はこれに限定されない。例えば、センサーが検出した船舶の航行経路からの逸脱距離は、補正可能範囲(安全範囲)内にある場合、第1長さD1と第2長さD2が当初あらかじめ設定された長さ(すなわち、2倍の垂線間長及び3倍の垂線間長の場合)±20%内の誤差範囲とすることができる。船舶の航行経路からの逸脱距離が補正可能範囲を超えた場合、船舶のナビゲーションを本来の航行経路に補正するため、第1長さD1と第2長さD2の誤差を最小にまで下げなければならない。前記補正可能範囲は、垂線間長の20%以内である。
【0042】
図3乃至図7のナビゲーション方法を結合し、船舶が各ターゲット点(ノード)を通過するまで上記ステップを繰り返すことができる。言い換えると、使用者は航行経路の起点・終点及びその間のノードを設定するだけで、前記船舶が起点から各ノードの軌跡に追従して終点まで自動運航して前記航行経路のナビゲーションを完了させることができる。また、上記ナビゲーション方法は、均しく図1の船舶ナビゲーションシステムによって実現できる。
【0043】
具体的には、上記ナビゲーション方法は、磁力の反発しあう作用をシミュレーションし、船舶がノードリンク上にあるトラッキングポイントに近づいた時、前記トラッキングポイントは自動的に前方に「飛び出す」と共に新しいトラッキングポイント(依然ノードリンク上にある)を形成し、トラッキングポイントがいつも船舶の前方の一定距離(第2長さD2)に位置させ、かつ船舶が最後のノードまでトラッキングポイントの軌跡に引き続き追従している。なお、新しいトラッキングポイントと原トラッキングポイントの距離(すなわち、前記第2長さD2)が原トラッキングポイントから次ノードまでの距離より短い時、新しいトラッキングポイントの生成位置が次ノード線分上にあり、また前記次ノードの線分が変針点の場合(図5の状況を参照)、トラッキングポイントが変針後のノード線分内(すなわち、図5内のトラッキングポイントP3が線分BC上に位置)に早めに入り、船舶の舵切りの針路を新しいトラッキングポイントに向かって航行するよう早めに補正させ、これによって変針点のオーバーシュート現象を防止することができる。
【0044】
また、上記ナビゲーション方法は、船舶が外部要因の干渉により本来の航行経路から逸脱した時の補助方法にも運用でき、船舶を本来の計画航行経路に自動かつ安定して戻すことができる。まず、図8A図8B及び図9図10を参照すると、図8A図8Bは本発明の好ましい実施例に係る別の船舶ナビゲーション方法のフローチャートであり、図9及び図10は本発明の好ましい実施例に係る別の船舶ナビゲーション方法の流れを示す模式図である。
【0045】
図8Aに示すように、本発明の別の船舶ナビゲーション方法は、船舶が航行経路(少なくとも2つのノードを含み、前記少なくとも2つのノードは第1ノードと第2ノードとを含み、また前記第1ノードと前記第2ノードのリンクを第1線分とする。)に沿って航行するステップ(A)と、前記船舶が前記第1線分に沿って航行していても外部要因の干渉を受けて前記航行経路から逸脱させるステップ(B)と、前記船舶が、前記第1トラッキングポイントとの距離が前記第1長さより短いところまで航行した時、前記第1線分上に第2トラッキングポイントを生成させ、かつ前記船舶が前記第2トラッキングポイントに追従して航行(前記第2トラッキングポイントから前記第1トラッキングポイントまでの距離が第2長さ)するステップ(C)と、前記船舶が前記航行経路に戻ることで、軌跡ナビゲーション補正を完了させるステップ(D)と、を含む。
【0046】
図8Bに示すように、本発明の別の船舶ナビゲーション方法は、船舶が航行経路(少なくとも2つのノードを含み、前記少なくとも2つのノードは第1ノードと第2ノードと第3ノードとを含み、また前記第1ノードと前記第2ノードのリンクを第1線分とし、前記第2ノードと前記第3ノードのリンクを第2線分とする。)に沿って航行するステップ(E)と、前記船舶が前記第1線分に沿って航行していても外部要因の干渉を受けて前記航行経路から逸脱させるステップ(F)と、前記船舶が、前記第1トラッキングポイントとの距離が前記第1長さより短く、かつ前記第1トラッキングポイントから前記第2ノードまでの距離が第2長さより短いところまで航行した時、前記第2線分上に第2トラッキングポイントを生成させ、かつ前記船舶が前記第2トラッキングポイントに追従して航行(前記第2トラッキングポイントから前記第1トラッキングポイントまでの距離が第2長さ)するステップ(G)と、前記船舶が前記航行経路に戻ることで、軌跡ナビゲーション補正を完了させるステップ(H)と、を含む。図8B図8Aの相違点は、原トラッキングポイントから次ノードまでの距離が第2長さより短い時、新しいトラッキングポイントが原ノードリンクの次ノードリンク上に位置しなければならないため、航行経路にノードを跨ぐ現象が現れることである。
【0047】
また、本実施例のナビゲーション方法と図2A図2Bのナビゲーション方法と相違点は、前記船舶が航行過程で外部要因の干渉を受けて本来の航行経路から逸れることである。前記外部要因は、センサーモジュールが検出した(図1)風力、波浪、海流又はそれらの組み合わせ等とすることができ;或いはあらかじめ設定された船舶経路での航行過程において、センサーモジュールが前記経路に突発事象(例えば、他の船があらかじめ設定された航行経路まで航行し、又は航行経路内に岩礁或いは大型海洋生物等が出現する)があることを検出した時、航行過程で障害物回避により船舶を本来の航行経路から逸脱させることができる。
【0048】
図9及び図10は、船舶の別のナビゲーション方法の流れを示す模式図である。図9に示すように、船舶Vが航行過程で突然の外部要因Iの干渉を受けて当初設定された航行経路(ここで線分AB)から逸れた時、船舶Vはやはり原トラッキングポイントP1に追従して運航し、前記原トラッキングポイントP1との距離が第1長さより短いところまで航行した時、新しいトラッキングポイントP2を原線分(ここで線分AB)上に生成させ、かつ前記船舶Vが前記新しいトラッキングポイントP2に追従して航行(航行経路は、図中の太い破線の通り)し、前記新しいトラッキングポイントP2から前記原トラッキングポイントP1までの距離は、第2長さとする。
【0049】
また、図10に示すように、前記トラッキングポイントP2から前記ノードBまでの距離が前記第2長さD2より短い時、新しいトラッキングポイントP3を前記線分BC上に生成し、かつ前記船舶Vは前記新しいトラッキングポイントP3に追従(自動トラッキング)して航行する。具体的には、船舶Vは、図9のトラッキングポイントP2にトラッキングし、かつトラッキングポイントP2との距離が前記第1長さD1より短いところに接近した時、元々新しいトラッキングポイントを線分AB上に生成するはずなのに、トラッキングポイントP2からノードBまでの距離が前記第2長さD2より短いことで、新しいトラッキングポイントを原線分ABに生成できなくなるため、新しいトラッキングポイントP3が原線分ABの次の線分BC上に生成され、かつ前記船舶Vが本来トラッキングポイントP2に追従(自動トラッキング)して航行する経路を前記トラッキングポイントP3(新しいトラッキングポイント)に追従(自動トラッキング)して航行(航行経路は、図中の太い破線の通り)することに変更し、前記第3トラッキングポイントP3から前記第2トラッキングポイントP2までの距離は、第2長さD2とする。
【0050】
前述で言及した全ての第1長さD1は、垂線間長(Length between perpendiculars、LPP)の2倍であり、言及した全ての第2長さD2は垂線間長(Length between perpendiculars、LPP)の3倍である。
【0051】
上記ナビゲーション方法からも分かるように、外部要因の干渉を有する条件において、原線分を維持して航行する経路であるか変針点のある経路であるかを問わず、いずれも本発明のナビゲーション方法によって航行経路から逸れた船舶をノードリンクの線分上に自動ナビゲーションできることで、前記船舶を当初設定された航行経路に戻して運航させることができる。
【0052】
以上説明したのは、本発明の好ましい実施例であって、本発明の実施範囲は、そのような実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及び明細書の内容に基づいて均等の範囲内で各種の変更や修飾を加えるものは、本発明でカバーされる範囲に属する。
【符号の説明】
【0053】
10… ナビゲーションシステム
100… データ送受信モジュール
200… 中央処理装置
210… 経路ナビゲーションモジュール
220… データベース
300… 方向制御モジュール
400… 動力推進モジュール
500… センサーモジュール
600… 測位モジュール
700… 無線通信モジュール
800… 外部装置
900… 自動障害物回避モジュール
1000… 情報セキュリティモジュール
V… 船舶
O、A、B、C… ノード
P1、P2、P3… トラッキングポイント
D1… 第1長さ
D2… 第2長さ
I… 外部干渉
(a)~(d)… ステップ
(e)~(h)… ステップ
(A)~(D)… ステップ
(E)~(H)… ステップ
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11