(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】放射性核種を含む溶液を予備浄化する方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/10 20060101AFI20220322BHJP
G21F 9/06 20060101ALI20220322BHJP
G21F 9/30 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
G21F9/10 B
G21F9/06 541
G21F9/30 531M
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019112631
(22)【出願日】2019-06-18
【審査請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】10 2018 114 550.0
(32)【優先日】2018-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516272375
【氏名又は名称】ヌケム・テヒノロギース・エンジニアリング・サービシーズ・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】NUKEM TECHNOLOGIES ENGINEERING SERVICES GMBH
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 13, 63755 Alzenau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ライナー・スラメシュカ
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルク・ブレーラー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・ズラウフ
【審査官】関口 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-036825(JP,A)
【文献】国際公開第2013/145237(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F9/00-9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水熱プロセス
で安定核種を沈殿させ、
その後沈殿した
固形物を分
離することにより
、放射性核種を含
む溶液を予備浄化する方法。
【請求項2】
Fe、Mn、Ni、Crの群に属する1つまたは複数の
安定核種
を水酸化物として沈殿させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶液の中に存在する有機物
質の固形物が破壊されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
放射性核種を含む核施設の蒸発濃縮物が予備浄化されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記溶液がCo-60から予備浄化されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶液が沈殿中にp≦1.8MP
aの圧力
pに暴露されることを特徴とする、請求項1から
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶液が沈殿中に1.0MPa≦p≦1.8MPaの圧力pに暴露されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶液が沈殿中に1.0MPa≦p≦1.6MPaの圧力pに暴露されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記溶液が圧力容器(10)の中でT≧150
℃の温度に合わせて調整されることを特徴とする、請求項1から
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記溶液が圧力容器(10)の中で150℃≦T≦220℃の温度Tに合わせて調整されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記溶液が圧力容器の中で時間tにわたって温度Tのもとで保持され、このときt≧5
分であることを特徴とする、請求項1から
10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記溶液が圧力容器の中で時間tにわたって温度Tのもとで保持され、このとき5分≦t≦20分であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記溶液が圧力容器の中で時間tにわたって温度Tのもとで保持され、このとき5分≦t≦15分であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記溶液が圧力容器の中で時間tにわたって温度Tのもとで保持され、このとき8分≦t≦12分であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記溶液がpH≧7のpH値に合わせて調整されることを特徴とする、請求項1から
14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
バッチ方式または連続方式で予備浄化が実施されることを特徴とする、請求項1から
15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも沈殿した核種がろ過および/または遠心分離によって除去されることを特徴とする、請求項1から
16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
安定核種の沈殿と除去の後に前記溶液から放射性核種が除去されることを特徴とする、請求項1から
17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
溶液からCo-60の放射性核種の錯体を除去する方法であって、次
のステップ、
すなわち、
少なくともCo-60の錯体の破壊を回避しながら水熱プロセスで少なくとも
安定核種を沈殿させ
ることによって前記溶液を予備浄化し、その後、前記予備浄化で沈殿した固形物を分離することと、
引き続き少なくともCo-60の錯体を破壊して、Co-60を
沈積させることと、
を備える方法。
【請求項20】
前記錯体が核施設の蒸発濃縮物から除去されることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記溶液の
前記予備浄化が請求項1から1
8のいずれか1項
に記載の方法に基づいて行われる、請求項
19又は20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Co-60などの放射性核種を含む核施設の蒸発濃縮物などの溶液を予備浄化する方法に関する
【背景技術】
【0002】
特に核施設に由来する蒸発濃縮物などの溶液の前処理では、錯結合された放射性核種を分離するさまざまな方法を適用することができる。これには超臨界水の中での処理、ダイヤモンド電極とイオン交換器を用いた処理、またはオゾンとイオン交換器を用いた処理などが含まれる。
【0003】
公知の方法の欠点は、基本的に、放射性核種とは等しくない高さの濃度で溶液中に存在する非活性核種も相応の方法で共に除去され、そのため、たとえばイオン交換器や吸着器を使用する際にイオン交換器材料ないし吸着器材料の頻繁な取替が必要となり、あるいは電極を使用する際にその更新が必要になることである。
【0004】
ここでは放射能の主要担体としてCo-60が挙げられ、そのEDTA(エチレンジアミン四酢酸)との錯体は非常な安定性を有する。特にイオン交換器ないし吸着器を利用する相応の方法によって、相応の錯体を破壊してCo-60を分離することができる。しかし、非活性核種とその他の放射性核種とが分離されることによって望ましくない負荷が生じ、そのために、上述した材料の頻繁な取替が必要となる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の課題は、溶液から放射性核種が分離されるべきときに、非活性核種の占める割合が低減されることを可能にする方法を提供することにある。
【0006】
本発明の課題を解決するために、本発明は、水熱プロセスで少なくとも非活性核種を沈殿させ、引き続き沈殿した核種を分別することによって、放射性核種を含む溶液を予備浄化する方法を意図し、このときにCo-60錯体の、特にEDTA錯体の破壊は基本的に起こらない。
【0007】
当然ながら、Co-60の分離との比較で適用される本発明の方法に基づき、マイルド水熱プロセスと呼ぶことができる本発明の方法により、放射性への寄与がわずかであるFe、Cr、Niなどの弱錯体の放射性核種も分離することができる。予備浄化の際に、弱錯体の相応の放射性核種も同じように沈積する。
【0008】
本発明の思想に基づき、溶液に含まれる非活性核種を何倍もの大きな規模で取り除くという可能性が得られ、それにより、引き続いての特に放射性核種Co-60の除去をいっそう低コストかつ効率的に構成可能となる。
【0009】
特に本発明では、Fe、Mn、NiおよびCrのクエン酸塩、シュウ酸塩、またはEDTA錯体が水熱プロセスの際に破壊されて水酸化物として沈殿し、次いで、これがたとえばろ過や遠心分離によって溶液から除去されることが意図される。
【0010】
水熱法は、特に、溶液が圧力容器の中で特に150℃≦T≦220℃の温度Tに時間tにわたって暴露されるように実施され、この時間は5分から15分の間であり、特に8分から12分の範囲内であり得る。
【0011】
圧力容器の中の調整される温度によって、同時に、非活性核種の錯体の破壊のため、およびこれを沈殿させるための圧力が約1.5MPaの値に合わせて生成される。
【0012】
相応の条件のもとでは、安定したCo-60/EDTA錯体は破壊されない。そして、水熱式の予備浄化プロセスが施された溶液がろ過の後に、安定したCo-60錯体を破壊して放射性核種を分別するために冒頭に述べた方法に暴露される。
【0013】
水熱式の予備浄化プロセスで分離能力を向上させるために、予備浄化が実施される容器の中で圧力を、温度によって得られる値を超えて上昇させるという選択肢がある。
【0014】
水熱プロセス中には、核種を沈殿させるために他の方策を講じる必要がなく、特に、普通であれば核種を分離するために利用される無機マトリクス材料や、過酸化水素などの酸化剤も使用する必要がない。
【0015】
特に、溶液が圧力容器の中でpH≧7のpH値に合わせて調整されることが意図される。これよりも高いpH値では、非活性核種の沈殿を改善することができる。
【0016】
非活性核種の沈殿は連続式に、またはバッチ方式で行うことができる。
【0017】
さらに水熱プロセスにより、特に木綿屑や紙粒子のような固形物などの有機含有物質を破壊するという可能性が与えられ、それによってTiO2のような酸化物床やイオン交換器材料などの補助剤の負荷が、後続する方法ステップでの放射性核種の除去の際に追加的に低減される。
【0018】
本発明のその他の具体的事項、利点、および構成要件は、特許請求の範囲と、これから読み取ることができる-単独および/または組み合わせとしての-構成要件ばかりでなく、以下の説明からも明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】核施設の蒸発濃縮物などの放射性核種を含む溶液を予備浄化する方法手順の原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ただ1つの図面には、核施設の蒸発濃縮物などの放射性核種を含む溶液を予備浄化する方法手順の原理図が示されている。本発明によると、蒸発濃縮物がオートクレーブ10すなわち圧力放棄に供給され、その中で溶液が約200℃の温度まで加熱され、この温度のもとで約10分の時間にわたって保持されることが意図される。このように200℃の温度によって、溶液の上方で約15バールの圧力が生じる。しかしながら、たとえば適当なポンプによってこの圧力を上昇させるという可能性もある。
【0021】
このような水熱プロセスにより、非活性核種が中に存在するたとえばクエン酸塩、シュウ酸塩、またはその錯体、たとえばEDTA錯体などが溶液中で破壊されて、核種が水酸化物の形態で沈殿し、これは特にFe、Mn、NiおよびCrの水酸化物である。木綿屑や紙粒子などの有機含有物質も破壊される。
【0022】
水熱プロセスによって生じる懸濁液は冷却後に、たとえば遠心分離器やフィルタである分離器12に供給される。分離された固形物が除去され、次いで、固形物が取り除かれた溶液を、放射性核種を除去するための次のプロセスに供給する。これは超臨界水を用いた処理、ダイヤモンド電極とイオン交換器を用いた処理、またはオゾンとイオン交換器を用いた処理であってよい。
【符号の説明】
【0023】
10 圧力容器
12 分離器
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 水熱プロセスで少なくとも非活性核種を沈殿させ、引き続き沈殿した核種を分別することによる、Co-60などの放射性核種を含む核施設の蒸発濃縮物などの溶液を予備浄化する方法。
[2] Fe、Mn、Ni、Crの群に属する1つまたは複数の核種を特に水酸化物として沈殿させることを特徴とする、
[1]に記載の方法。
[3] 前記溶液の中に存在する有機物質、特に木綿屑および/または紙粒子などの固形物が破壊されることを特徴とする、
[1]または[2]に記載の方法。
[4] 前記溶液が沈殿中にp≦1.8MPa、特に1.0MPa≦p≦1.8MPa、好ましくは1.0≦p≦1.6MPaの圧力に暴露されることを特徴とする、
[1]から[3]のいずれか1項に記載の方法。
[5] 前記溶液が圧力容器(10)の中でT≧150℃、特に150℃≦T≦220℃の温度に合わせて調整されることを特徴とする、
[1]から[4]のいずれか1項に記載の方法。
[6] 前記溶液が圧力容器の中で時間tにわたって温度Tのもとで保持され、このときt≧5分、特に5分≦t≦20分、特別に好ましくは5分≦t≦15分、有利には8分≦t≦12分であることを特徴とする、
[1]から[5]のいずれか1項に記載の方法。
[7] 前記溶液がpH≧7のpH値に合わせて調整されることを特徴とする、
[1]から[6]のいずれか1項に記載の方法。
[8] バッチ方式または連続方式で予備浄化が実施されることを特徴とする、
[1]から[7]のいずれか1項に記載の方法。
[9] 少なくとも沈殿した核種がろ過および/または遠心分離によって除去されることを特徴とする、
[1]から[8]のいずれか1項に記載の方法。
[10] 非活性核種の沈殿と除去の後に前記溶液から放射性核種が除去されることを特徴とする、
[1]から[9]のいずれか1項に記載の方法。
[11] 核施設の蒸発濃縮物などの溶液から特にCo-60のEDTA錯体などの放射性核種の錯体を除去する方法において、次の方法ステップを有し、
少なくともCo-60の錯体の破壊を回避しながら水熱プロセスで少なくとも非活性核種を沈殿させ、引き続き予備浄化で沈殿した固形物を分別し、
引き続き少なくともCo-60の錯体を破壊してCo-60を分離する方法。
[12] 容積の予備浄化が[1]から[10]のいずれか1項に基づいて行われる、[11]に記載の方法。