(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】ヒンジ
(51)【国際特許分類】
F16C 11/04 20060101AFI20220322BHJP
F16C 11/10 20060101ALI20220322BHJP
E05D 3/18 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
F16C11/04 F
F16C11/10 A
E05D3/18 Z
(21)【出願番号】P 2019127342
(22)【出願日】2019-07-09
【審査請求日】2019-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000176833
【氏名又は名称】三菱製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】光井 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】広兼 徹
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-052181(JP,U)
【文献】実開平06-028156(JP,U)
【文献】特開2015-194242(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第1857624(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/04
F16C 11/10
E05D 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材及び第2部材を仮想回転軸について互いに回転可能に支持するヒンジであって、
前記第1部材を取り付ける第1ケースであって、前記仮想回転軸に平行な第1ヒンジシャフトを挿通する挿通孔及び前記仮想回転軸に平行な第1リンクシャフトを案内する案内溝を有する第1ケースと、
前記第2部材を取り付ける第2ケースであって、前記仮想回転軸に平行な第2ヒンジシャフトを挿通する挿通孔及び前記仮想回転軸に平行な第2リンクシャフトを案内する案内溝を有する第2ケースと、
前記第1ヒンジシャフトと前記第2リンクシャフトと前記仮想回転軸に平行なセンターシャフトとのそれぞれの間隔、前記第2ヒンジシャフトと前記第1リンクシャフトと前記センターシャフトとのそれぞれの間隔を維持するリンク機構と
を含み、前記第1ケース、前記第2ケース及び前記リンク機構は、前記第1及び第2ヒンジシャフト、前記第1及び第2リンクシャフト並びに前記センターシャフトによって連結され、
前記第2ケースは、前記仮想回転軸に平行な第3ヒンジシャフトを挿通する前記第2ヒンジシャフトと同軸上にある第2挿通孔をさらに有し、
前記リンク機構は、前記第3ヒンジシャフトと前記第1リンクシャフトと前記センターシャフトとのそれぞれの間隔を維持する第3プレートと、前記第2リンクシャフトと前記センターシャフトとの間隔を維持する第4プレートとをさらに含むヒンジ。
【請求項2】
前記第1及び第2ケースの案内溝は、前記仮想回転軸及び前記センターシャフトの軸を通る平面について対称な形状を有する請求項1に記載のヒンジ。
【請求項3】
前記第1ヒンジシャフトの軸、前記第2ヒンジシャフトの軸、第1リンクシャフトの軸、第2リンクシャフトの軸及び前記センターシャフトの軸は、前記仮想回転軸及び前記センターシャフトの軸を通る平面について対称に配置された請求項1に記載のヒンジ。
【請求項4】
前記第1及び第2ケースの案内溝は、前記仮想回転軸に直交する平面において、前記第1及び第2リンクシャフトを所定の経路に沿ってそれぞれ案内することにより、前記第1及び第2ケースが前記仮想回転軸を中心として回転するようにする請求項1から3のいずれか一項に記載のヒンジ。
【請求項5】
前記第1及び第2ケースは、回転角度にかかわらず、前記仮想回転軸及び前記センターシャフトの軸を通る平面について対称になるように同期している請求項1から4のいずれか一項に記載のヒンジ。
【請求項6】
前記リンク機構は、
前記第1ヒンジシャフトと前記第2リンクシャフトと前記センターシャフトとのそれぞれの間隔を維持する第1プレートと、
前記第2ヒンジシャフトと前記第1リンクシャフトと前記センターシャフトとのそれぞれの間隔を維持する第2プレートと
を含む請求項1から5のいずれか一項に記載のヒンジ。
【請求項7】
前記第1ケースは、前記第
2ケースの挿通孔に挿通された前記第
2ヒンジシャフトの周りの前記第
2プレートの回転角度を所定範囲に制限するストッパをさらに含み、
前記第2ケースは、前記第
1ケースの挿通孔に挿通された前記第
1ヒンジシャフトの周りの前記第
1プレートの回転角度を所定範囲に制限するストッパをさらに含む
請求項6に記載のヒンジ。
【請求項8】
前記第1ヒンジシャフトについて前記第1ケースと前記第1プレートとの間の回転に対してトルクを発生する第1トルク発生機構と、
前記第2ヒンジシャフトについて前記第2ケースと前記第2プレートとの間の回転に対してトルクを発生する第2トルク発生機構と
をさらに含む請求項6又は7に記載のヒンジ。
【請求項9】
前記第1及び第2トルク発生機構は、付勢手段として板ばね又は皿ばねを含む請求項8に記載のヒンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、第1部材と第2部材とを仮想回転軸について互いに回転可能に支持するヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機やノート型パソコンのように、二つの筐体を互いに折り畳み可能に連結し、一方の筐体の内側の面にLCDなどのディスプレイを設け、他方の筐体の内側の面には押しボタンやキーボードのような操作部を設けた電子機器が提供されている。このような折り畳み式の電子機器においては、連結部分に設けられたヒンジの回転軸のシャフトが筐体の内側の面に突出していることがあった。一方、電子機器において、回転軸にシャフトを設けることなく第1部材と第2部材とを互いに回転可能に連結するヒンジが提案されている(特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2015-518190号公報
【文献】特表2016-516952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
折り畳み式の電子機器においては、連結部分に設けられたヒンジのシャフトが筐体の内側の面に突出し、筐体の内側の面の有効面積が減少したり、デザインに制限が生じたりすることがあった。特許文献1、2に記載された回転軸にシャフトを設けないヒンジには、回転軸を横切る断面内でC字状の枢動部又はヒンジリングが円弧状の溝又はヒンジフレームに対して摺動して回転する構造を有するため、所定の回転角度においてクリックを発生させることが困難であった。
【0005】
この発明は、上述の実情に鑑みて提案されるものであって、折り畳み式の筐体の連結部分の内側の面からシャフトが突出することがなく、所定の回転角度で十分な強さのクリックを発生させることができるようなヒンジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、この出願に係るヒンジは、第1部材及び第2部材を仮想回転軸について互いに回転可能に支持するヒンジであって、第1部材を取り付ける第1ケースであって、仮想回転軸に平行な第1ヒンジシャフトを挿通する挿通孔及び仮想回転軸に平行な第1リンクシャフトを案内する案内溝を有する第1ケースと、第2部材を取り付ける第2ケースであって、仮想回転軸に平行な第2ヒンジシャフトを挿通する挿通孔及び仮想回転軸に平行な第2リンクシャフトを案内する案内溝を有する第2ケースと、第1ヒンジシャフトと第2リンクシャフトと仮想回転軸に平行なセンターシャフトとのそれぞれの間隔、第2ヒンジシャフトと第1リンクシャフトとセンターシャフトとのそれぞれの間隔を維持するリンク機構とを含み、第1ケース、第2ケース及びリンク機構は、第1及び第2ヒンジシャフト、第1及び第2リンクシャフト並びにセンターシャフトによって連結されたものである。
【0007】
第1及び第2ケースの案内溝は、仮想回転軸及びセンターシャフトの軸を通る平面について対称な形状を有してもよい。第1ヒンジシャフトの軸、第2ヒンジシャフトの軸、第1リンクシャフトの軸、第2リンクシャフトの軸及びセンターシャフトの軸は、仮想回転軸及びセンターシャフトの軸を通る平面について対称に配置されてもよい。
【0008】
第1及び第2ケースの案内溝は、仮想回転軸に直交する平面において、第1及び第2リンクシャフトを所定の経路に沿ってそれぞれ案内することにより、第1及び第2ケースが仮想回転軸を中心として回転するようにしてもよい。第1及び第2ケースは、回転角度にかかわらず、仮想回転軸及びセンターシャフトの軸を通る平面について対称になるように同期してもよい。
【0009】
リンク機構は、第1ヒンジシャフトと第2リンクシャフトとセンターシャフトとのそれぞれの間隔を維持する第1プレートと、第2ヒンジシャフトと第1リンクシャフトとセンターシャフトとのそれぞれの間隔を維持する第2プレートとを含んでもよい。
【0010】
第1ケースは、第1ケースの挿通孔に挿通された第1ヒンジシャフトの周りの第1プレートの回転角度をそれぞれ所定範囲に制限するストッパをさらに含み、第2ケースは、第2ケースの挿通孔に挿通された第2ヒンジシャフトの周りの第2プレートの回転角度を所定範囲に制限するストッパをさらに含んでもよい。
【0011】
第1ヒンジシャフトについて第1ケースと第1プレートとの間の回転に対してトルクを発生する第1トルク発生機構と、第2ヒンジシャフトについて第2ケースと第2プレートとの間の回転に対してトルクを発生する第2トルク発生機構とをさらに含んでもよい。第1及び第2トルク発生機構は、付勢手段として板ばね又は皿ばねを含んでもよい。
【0012】
第2ケースは、仮想回転軸に平行な第3ヒンジシャフトを挿通する第2ヒンジシャフトと同軸上にある第2挿通孔をさらに有し、リンク機構は、第3ヒンジシャフトと第1リンクシャフトとセンターシャフトとのそれぞれの間隔を維持する第3プレートと、第2リンクシャフトとセンターシャフトとの間隔を維持する第4プレートとをさらに含んでもよい。
【0013】
リンク機構は、第1リンクシャフトとセンターシャフトとの間隔を維持する第3プレートと、第2リンクシャフトとセンターシャフトとの間隔を維持する第4プレートとをさらに含んでもよい。
【0014】
リンク機構は、第1ヒンジシャフト、第2リンクシャフト及びセンターシャフトとの間隔を維持する第3プレートと、第2ヒンジシャフト、第1リンクシャフト及びセンターシャフトとの間隔を維持する第4プレートとをさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0015】
この発明によると、折り畳み式の筐体の連結部分の内側の面からシャフトが突出することがなく、所定の回転角度で十分な強さのクリックを発生させることができる。したがって、折り畳み式の筐体の電子機器などにおいて内側の面の有効面積が増加し、多様なデザインを可能にするとともに、筐体を開閉する使用者に所定の回転角度で十分な強さのクリックを与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4】本実施の形態のヒンジのリンク機構の動作を示す要部正面図である。
【
図5】本実施の形態のヒンジのトルク発生機構を説明する図である。
【
図7】第1ケースの回転角度とトルクとの関係を示すグラフである。
【
図8】本実施の形態のヒンジの動作を示す側面図である。
【
図9】本実施の形態のヒンジの動作を示す斜視図である。
【
図10】本実施の形態のヒンジを適用した電子機器を示す図である。
【
図11】本実施の形態のヒンジを適用した他の電子機器を示す図である。
【
図12】本実施の形態のヒンジを適用した他の電子機器を示す図である。
【
図13】本実施の形態のヒンジを適用した他の電子機器を示す図である。
【
図17】第2変形例のヒンジのリンク機構の動作を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本実施の形態のヒンジについて、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態のヒンジの四面図である。
図1(a)は上面図、
図1(b)は正面図、
図1(c)は底面図、
図1(d)は右側面図である。
図2は、本実施の形態のヒンジの斜視図である。
図2(a)及び
図2(b)は、異なる方向から見た斜視図である。
【0018】
図1及び
図2に示すように、本実施の形態のヒンジ10は、図示しない第1部材及び第2部材を仮想回転軸について互いに回転可能に支持するものであって、第1部材を取り付ける第1ケース11と、第2部材を取り付ける第2ケース12とを有している。第1ケース11は、仮想回転軸に平行な第1ヒンジシャフト17を挿通する挿通孔と、仮想回転軸に平行な第1リンクシャフト23を案内する案内溝と有している。第2ケース12は、仮想回転軸に平行な第2ヒンジシャフト19及び第3ヒンジシャフト21をそれぞれ挿通する第1及び第2挿通孔と、仮想回転軸に平行な第2リンクシャフト25を案内する案内溝とを有している。
【0019】
さらに、ヒンジ10は、第1ヒンジシャフト17と第2リンクシャフト25と仮想回転軸に平行なセンターシャフト27とのそれぞれの間隔、第2ヒンジシャフト19と第1リンクシャフト23とセンターシャフト27とのそれぞれの間隔、第3ヒンジシャフト21と第1リンクシャフト23とセンターシャフト27とのそれぞれの間隔を維持し、第1ケース11及び第2ケース12が仮想回転軸について回転可能するように連結するリンク機構を有している。そして、第1ケース11、第2ケース12及びリンク機構は、第1ヒンジシャフト17、第2ヒンジシャフト19、第3ヒンジシャフト21、第1リンクシャフト23、第2リンクシャフト25及びセンターシャフト27によって連結されている。
【0020】
リンク機構は、第1ヒンジシャフト17と第2リンクシャフト25とセンターシャフト27とのそれぞれの間隔を維持する第1プレートである第2センタープレート14、第2ヒンジシャフト19と第1リンクシャフト23とセンターシャフト27とのそれぞれの間隔を維持する第2プレートである第1サイドプレート15、第3ヒンジシャフト21と第1リンクシャフト23とセンターシャフト27とのそれぞれの間隔を維持する第3プレートである第2サイドプレート16を有している。
【0021】
図3は、本実施の形態のヒンジ10の分解図である。第1ケース11は、仮想回転軸に略平行な四辺を有する略直方体の形状の本体11aを有している。本体11aの側面の一つからは、本体11aの底面を延長するように、第1部材を取り付けるための所定の厚さの台座11bが所定の長さにわたって突出し、台座11bには第1部材を取り付けるためのねじ穴11cが形成されている。本体11aにおいて台座11bが形成された側面と対向する側面の上面近くの略中央には、仮想回転軸と平行な第1ヒンジシャフト17を回転可能に挿通する挿通孔11dが形成された所定の厚さの耳11eが突出し、挿通孔11dの周囲の耳11eの図中手前側の表面には挿通孔11dを挟んで径方向に延びる溝11fが形成されている。
【0022】
本体11aにおいて、台座11b又は耳11eが形成されていない対向する一対の側面には、仮想回転軸に平行な第1リンクシャフト23を仮想回転軸に直交する図示しない平面内で所定の経路に沿って案内する曲線状又は直線状の所定の形状の案内溝11gが形成されている。本体11aの上面には耳11eに隣接して、耳11eに形成された挿通孔11dに挿通された第1ヒンジシャフト17を軸として回転する後述する第1サイドプレート15及び第2サイドプレート16の回転角度の範囲を制限するストッパ11hが形成されている。このような構造を有する第1ケース11は、ステンレス鋼又は鉄を材料として、金属粉末射出成型又はダイキャストにより作製してもよい。
【0023】
第2ケース12は、仮想回転軸に略平行な四辺を有する略直方体の形状を有し、内部に所定の空洞が形成された本体12aを有している。本体12aの側面の一つからは、本体12aの底面を延長するように、第2部材を取り付けるための所定の厚さの台座12bが所定の長さにわたって突出し、台座12bには第2部材を取り付けるためのねじ穴12cが形成されている。本体12aにおいて台座12bが形成された側面と対向する側面の上面近くの一端及び他端には、仮想回転軸と平行で同軸上にある第2ヒンジシャフト19及び第3ヒンジシャフト21を挿通する第1挿通孔12d及び第2挿通孔12fが形成された所定の厚さの第1耳12e及び第2耳12gがそれぞれ突出している。第1挿通孔12d及び第2挿通孔12fは、二面取りされた第2ヒンジシャフト19及び第3ヒンジシャフト21と係合する形状を有し、第2ヒンジシャフト19及び第3ヒンジシャフト21が第2ケース12とともに回転するように拘束している。
【0024】
本体12aにおいて、台座12b又は第1耳12e及び第2耳12gが形成されていない対向する一対の側面には、仮想回転軸に平行な第2リンクシャフト25を仮想回転軸に直交する図示しない平面内で所定の経路に沿って案内する曲線状又は直線状の所定の形状の案内溝12hが形成されている。案内溝12hの形状は、仮想回転軸とセンターシャフト27の軸を通る平面とについて、第1ケース11の案内溝11gと対称である。
【0025】
本体12aの上面には第1耳12e及び第2耳12gに隣接して、第1耳12e及び第2耳12gに形成された第1挿通孔12d及び第2挿通孔12fにそれぞれ挿通された第2ヒンジシャフト19及び第3ヒンジシャフト21を軸として回転する後述する第1センタープレート13及び第2センタープレート14の回転角度の範囲を制限するストッパ12iが形成されている。このような構造を有する第2ケース12は、第1ケース11と同様に、ステンレス鋼又は鉄を材料として、金属粉末射出成型又はダイキャストにより作製してもよい。
【0026】
第1センタープレート13は、一方向に延びた形状で所定の厚さを有し、一端の近くに仮想回転軸に平行なセンターシャフト27を回転可能に挿通する第1挿通孔13aが形成され、他端の近くに第2リンクシャフト25を回転可能に挿通する第2挿通孔13bが形成され、第1挿通孔13aに挿通されたセンターシャフト27と第2挿通孔13bに挿通された第2リンクシャフト25とを所定の間隔に維持している。第1センタープレート13は、ステンレス鋼又は鉄をプレス加工して作製してもよい。
【0027】
第2センタープレート14は、二方向に延びた形状で所定の厚さを有し、短辺の端部近くに第1ヒンジシャフト17を挿通する第1挿通孔14aが形成され、短辺及び長辺が交わる頂点の近くにはセンターシャフト27を回転可能に挿通する第2挿通孔14bが形成され、長辺の端部近くに第2リンクシャフト25を回転可能に挿通する第3挿通孔14cが形成されている。第1挿通孔14aは、二面取りされた第1ヒンジシャフト17と係合する形状を有し、第1ヒンジシャフト17が第2センタープレート14とともに回転するように拘束している。第2センタープレート14は、第1挿通孔14aに挿通された第1ヒンジシャフト17、第2挿通孔14bに挿通されたセンターシャフト27及び第3挿通孔14cに挿通された第2リンクシャフト25の間をそれぞれ所定の間隔に維持している。第2センタープレート14は、第1センタープレート13と同様に、ステンレス鋼又は鉄をプレス加工して作製してもよい。
【0028】
第1サイドプレート15は、二方向に延びた形状で所定の厚さを有し、短辺の端部近くに第2ヒンジシャフト19を回転可能に挿通する第1挿通孔15aが形成され、短辺及び長辺が交わる頂点の近くにはセンターシャフト27を回転可能に挿通する第2挿通孔15cが形成され、長辺の端部近くに第1リンクシャフト23を回転可能に挿通する第3挿通孔15dが形成されている。第1挿通孔15aの周囲の図中手前側の表面には、第1挿通孔15aを挟んで径方向に延びる溝15bが形成されている。第1サイドプレート15は、第1挿通孔15aに挿通された第2ヒンジシャフト19、第2挿通孔15cに挿通されたセンターシャフト27及び第3挿通孔15dに挿通された第1リンクシャフト23の間をそれぞれ所定の間隔に維持している。第1サイドプレート15は、ステンレス鋼又は鉄をプレス加工して作製してもよい。
【0029】
第2サイドプレート16は、二方向に延びた形状で所定の厚さを有し、短辺の端部近くに第3ヒンジシャフト21を回転可能に挿通する第1挿通孔16aが形成され、短辺及び長辺が交わる頂点の近くにはセンターシャフト27を回転可能に挿通する第2挿通孔16bが形成され、長辺の端部近くに第1リンクシャフト23を回転可能に挿通する第3挿通孔16cが形成されている。第1挿通孔16aの周囲の図中奥側の表面には、第1挿通孔16aを挟んで径方向に延びる図示しない溝が形成されている。第2サイドプレート16は、第1挿通孔16aに挿通された第3ヒンジシャフト21、第2挿通孔16bに挿通されたセンターシャフト27及び第3挿通孔16cに挿通された第1リンクシャフト23の間をそれぞれ所定の間隔に維持している。第2サイドプレート16は、第1サイドプレート15と同様に、ステンレス鋼又は鉄をプレス加工して作製してもよい。
【0030】
第1ヒンジシャフト17は、所定の径を有して二面取りされ、図中奥側から手前側に順に、第2センタープレート14の第1挿通孔14a、第1ケース11の挿通孔11dを挿通され、端部には第1クリックプレート24がカシメ加工により取り付けられている。なお、以下では特に断る場合を除いて、各シャフトは図中奥側から手前側に順に挿通されているものとする。二面取りされた第1ヒンジシャフト17には、第1挿通孔14aで係合された第2センタープレート14と、カシメ加工された第1クリックプレート24とがともに回転するように拘束されている。一方、第1ケース11は、挿通孔11dに第1ヒンジシャフト17が回転可能なように挿通している。第1ヒンジシャフト17は、ステンレス鋼又は鉄を切削加工又はヘッダー加工して作製してもよい。第1クリックプレート24は、ステンレス鋼又は鉄をプレス加工して作製してもよい。
【0031】
第2ヒンジシャフト19は、所定の径を有して二面取りされ、第2ケース12の第1挿通孔12d、第1サイドプレート15の第1挿通孔15aを順に挿通され、端部には第2クリックプレート26がカシメ加工により取り付けられている。二面取りされた第2ヒンジシャフト19には、第1挿通孔12dで係合された第2ケース12と、カシメ加工された第2クリックプレート26とがともに回転するように拘束されている。一方、第1サイドプレート15は、第1挿通孔15aに第2ヒンジシャフト19が回転可能なように挿通している。第2ヒンジシャフト19は、第1ヒンジシャフト17と同様に、ステンレス鋼又は鉄を切削加工又はヘッダー加工して作製してもよい。第2クリックプレート26は、第1クリックプレート24と同様に、ステンレス鋼又は鉄をプレス加工して作製してもよい。
【0032】
第3ヒンジシャフト21は、図中手前側から奥側の順に、所定の径を有して二面取りされ、第2ケース12の第2挿通孔12f、第2サイドプレート16の第1挿通孔16aを挿通され、端部には第3クリックプレート28がカシメ加工により取り付けられている。二面取りされた第3ヒンジシャフト21には、第2挿通孔12fで係合された第2ケース12と、カシメ加工された第3クリックプレート28とがともに回転するように拘束されている。一方、第2サイドプレート16は、第1挿通孔16aに第2ヒンジシャフト19が回転可能なように挿通している。第3ヒンジシャフト21は、第1ヒンジシャフト17及び第2ヒンジシャフト19と同様に、ステンレス鋼又は鉄を切削加工又はヘッダー加工して作製してもよい。第3クリックプレート28は、第1クリックプレート24及び第2クリックプレート26と同様に、ステンレス鋼又は鉄をプレス加工して作製してもよい。
【0033】
第1リンクシャフト23は、所定の径を有し、第2サイドプレート16の第3挿通孔16c、第1ケース11の側面に形成された一対の案内溝11g及び第1サイドプレート15の第3挿通孔15dを順に挿通され、端部には第1リベットプレート18がカシメ加工により取り付けられている。第1リンクシャフト23は、第1ケース11の内部を通って延び、第1ケース11の案内溝11gに沿って移動することができる。第1リンクシャフト23は、ステンレス鋼又は鉄を切削加工又はヘッダー加工して作製してもよい。第1リベットプレート18は、ステンレス鋼又は鉄をプレス加工して作製してもよい。
【0034】
第2リンクシャフト25は、所定の径を有し、第2ケース12の側面に形成された一対の案内溝12hのうち図中奥側の案内溝12h、第2センタープレート14の第3挿通孔14c、第1センタープレート13の第2挿通孔13b及び第2ケース12の一対の案内溝12hのうち図中手前側の案内溝12hを順に挿通され、端部には第2リベットプレート20がカシメ加工により取り付けられている。第2リンクシャフト25は、第2ケース12の内部の空洞を通って延び、第2ケース12の一対の案内溝12hに沿って移動することができる。第1センタープレート13及び第2センタープレート14も、第2ケース12の内部の空洞に延びている。第2リンクシャフト25は、第1リンクシャフト23と同様に、ステンレス鋼又は鉄を切削加工又はヘッダー加工して作製してもよい。第2リベットプレート20は、第1リベットプレート18と同様に、ステンレス鋼又は鉄をプレス加工して作製してもよい。
【0035】
センターシャフト27は、所定の径を有し、第2サイドプレート16の第2挿通孔16b、第2センタープレート14の第2挿通孔14b、第1センタープレート13の第1挿通孔13a及び第1サイドプレート15の第2挿通孔15cを順に挿通され、端部には第3リベットプレート22がカシメ加工により取り付けられている。センターシャフト27は、ステンレス鋼又は鉄を切削加工又はヘッダー加工して作製してもよい。第3リベットプレート22は、第1リベットプレート18及び第2リベットプレート20と同様に、ステンレス鋼又は鉄をプレス加工して作製してもよい。
【0036】
図4は、本実施の形態のヒンジ10のリンク機構の動作を示す要部正面図である。本実施の形態のヒンジ10は、第1部材を取り付ける第1ケース11と、第2部材を取り付ける第2ケース12とが、仮想回転軸Aについて回転可能なようにリンク機構により連結されている構成されている。
図4において、第1ケース11の上面に所定の厚さを有する板状の第1部材101が取り付けられ、第2ケース12の上面にも第1部材101と同様の厚さを有する第2部材102が取り付けられている。第1部材101及び第2部材は、それぞれ第1ケース11のストッパ11h及び第2ケース12のストッパ12iを超えて仮想回転軸Aに向かって延び、それぞれの上面の端部が中心回転軸Aを挟んで対向している。ヒンジ10の開閉の状態は、この板状の第1部材101及び第2部材102の開閉の状態に従うものとする。
【0037】
図4(a)は、ヒンジ10が完全に開いた状態を示している。この状態において、第1ケース11及び第2ケース12の上面及び底面はそれぞれ同一の平面を形成している。第1部材101及び第2部材102も完全に開いた状態にあり、第1部材101の上面と第2部材102の上面も同一の平面を形成している。第1ケース11の案内溝11gに案内される第1リンクシャフト23は、第1ヒンジシャフト17から最も遠い案内溝11gの一端に位置している。第2ケース12の案内溝12hに案内される第2リンクシャフト25も、第2ヒンジシャフト19から最も遠い案内溝12hの一端に位置している。
【0038】
図4(b)は、
図4(a)に示したヒンジ10が完全に開いた状態から少し閉じた状態を示している。この状態において、第1ケース11及び第2ケース12の上面及び底面はそれぞれ少し閉じた状態にある。第1部材101及び第2部材102も少し閉じた状態にある。第1ケース11の案内溝11gに案内される第1リンクシャフト23は、第1ヒンジシャフト17から最も遠い案内溝11gの一端から第1ヒンジシャフト17に最も近い案内溝11gの他端に向けて少し進んで位置している。第2ケース12の案内溝12hに案内される第2リンクシャフト25も、第2ヒンジシャフト19から最も遠い案内溝12hの一端から第2ヒンジシャフト19に最も近い案内溝12hの他端に向けて少し進んで位置している。
【0039】
図4(c)は、
図4(b)に示したヒンジ10が少し閉じた状態からさらに閉じた状態を示している。この状態において、第1ケース11及び第2ケース12の上面及び底面はそれぞれさらに閉じた状態にある。第1部材101及び第2部材102もさらに閉じた状態にある。第1ケース11の案内溝11gに案内される第1リンクシャフト23は、第1ヒンジシャフト17から最も遠い案内溝11gの一端から第1ヒンジシャフト17に最も近い案内溝11gの他端に向けてさらに進んで位置している。第2ケース12の案内溝12hに案内される第2リンクシャフト25も、第2ヒンジシャフト19から最も遠い案内溝12hの一端から第2ヒンジシャフト19に最も近い案内溝12hの他端に向けてさらに進んで位置している。
【0040】
図4(d)は、ヒンジ10が完全に閉じた状態を示している。この状態において、第1ケース11及び第2ケース12の上面及び底面はそれぞれ対向して平行な状態にある。第1部材101及び第2部材102も完全に閉じた状態にある。第1ケース11の案内溝11gに案内される第1リンクシャフト23は、第1ヒンジシャフト17に最も近い案内溝11gの他端に位置している。第2ケース12の案内溝12hに案内される第2リンクシャフト25も、第2ヒンジシャフト19に最も近い案内溝12hの他端に位置している。第2センタープレート14の長辺は第2ケース12のストッパ12iに当たり、第1サイドプレート15及び図示しない第2サイドプレート16の長辺は第1ケース11のストッパ11hに当たり、それぞれヒンジ10が閉じる方向への回転が阻止されている。
【0041】
図4(a)から
図4(d)に示したヒンジ10の開閉の動作において、第1ケース11及び第2ケース12は、第1ケース11に取り付けられた第1部材101の上面の端部と第2ケース12に取り付けられた第2部材102の上面の端部との略中央に位置する仮想回転軸Aを中心として互いに回転している。また、第1部材101の上面の端部と第2部材102の上面の端面とが仮想回転軸Aを挟んで対向する間隔は略一定である。このような仮想回転軸Aを中心とする回転は、第1ケース11及び第2ケース12を連結する第2センタープレート14、第1サイドプレート15及び第2サイドプレート16を含むリンク機構によって実現されている。
【0042】
本実施の形態のリンク機構のうち、第1ヒンジシャフト17の軸、第2ヒンジシャフト19及び第3ヒンジシャフト21の軸、第1リンクシャフト23の軸、第2リンクシャフト25の軸及びセンターシャフト27の軸については、仮想回転軸Aとセンターシャフト27の軸とを通る平面について鏡映対称な構造を有している。第1ケース11の案内溝11gと第2ケース12の案内溝12hもこの平面について対称な形状を有している。したがって、
図4(a)から
図4(d)に至るヒンジ10の開閉の動作のいずれの状態においても、リンク機構の主要な軸はこの平面について対称であり、リンク機構によって支持される第1ケース11及び第2ケース12もこの平面について対称なように、この平面との間に形成する角度が同じになるように同期して開閉する。
【0043】
第1ケース11の案内溝11gと第2ケース12の案内溝12hは、ヒンジ10が開閉動作するときに、第1リンクシャフト23及び第2リンクシャフト25が仮想回転軸Aに直交する平面内で案内される経路を規定している。したがって、これら案内溝11g及び案内溝12hの形状によって、第1部材101の上面の端部と第2部材102の上面の端部とが仮想回転軸Aを挟んで対向する間隔が、ヒンジ10の開閉の角度についてどのように変化するかを設定することができる。本実施の形態においては、案内溝11g及び案内溝12hは、ヒンジ10の開閉動作にかかわらず前記間隔が略一定であるように、適切な形状に形成されている。なお、設定できる間隔はこれに限られず、第1ケース11と第2ケース12とが仮想回転軸Aを挟んで対向する間隔が、ヒンジ10の開閉の角度についてどのように変化するかを設定することもできる。
【0044】
本実施の形態のヒンジ10においては、第1ケース11及び第2ケース12の仮想回転軸Aを中心とした回転は、第1センタープレート13、第2センタープレート14、第1サイドプレート15及び第2サイドプレート16を含むリンク機構によって実現されている。したがって、本実施の形態のヒンジ10は、堅牢であり、多くの回数にわたる開閉動作にも耐久性を有し、長期にわたって安定して動作することができる。
【0045】
図5は、本実施の形態のヒンジ10のトルク発生機構を説明する図である。
図5には、挿通孔11dが形成された耳11eを有する第1ケース11と、挿通孔11dに挿通される第1ヒンジシャフト17と、挿通孔11dに挿通された第1ヒンジシャフト17の端部にカシメ加工により取り付けられた第1クリックプレート24とによって構成される第1トルク発生機構の構成が示されている。第1ヒンジシャフト17は、所定の径を有して二面取りされ、図中奥側から手前側に順に、図示しない第2センタープレート14の第1挿通孔14a、第1ケース11の挿通孔11d及び第1クリックプレート24を挿通されている。二面取りされた第1ヒンジシャフト17によって、第1挿通孔14aで係合された第2センタープレート14と、カシメ加工により取り付けられた第1クリックプレート24とは、ともに回転するように拘束されている。第1トルク発生機構においては、溝11fが形成された耳11eの表面と、表面に第1ヒンジシャフト17を挟んで一対の凸部24aが形成された第1クリックプレート24とが対向して接し、第1クリックプレート24が板ばねの付勢手段として耳11eの表面を押圧し、第1ヒンジシャフト17の回転に従い耳11eの表面を摺動して回転することにより、第1ヒンジシャフト17に回転に対するトルクを発生している。
【0046】
図6は、トルク発生を説明する図である。
図6(a)は、
図5に示した第1トルク発生機構の要部を示している。第1ケース11の耳11eの表面には、第1クリックプレート24の凸部24aを有する側の面が対向して接している。第1クリックプレート24は、二面取りされた第1ヒンジシャフト17に係合し、第1ヒンジシャフト17に従って回転する。
図6(b)は、
図6における切断面VI-VIにおける断面図である。第1ケース11の耳11eの表面に挿通孔11dから径方向に延びるように形成されたV字状の溝11fに、第1クリックプレート24の凸部24aが嵌まり込んだ状態が示されている。
【0047】
図7は、第1ケース11の回転角度とトルクとの関係を示すグラフである。
図7のグラフは、
図6に示したように、第1ケース11の耳11eの表面の溝11fに第1クリックプレート24の凸部24aが嵌まり込んだ状態を第1ケース11の回転角度が0°として、第1ケース11の回転角度の増加に従い第1トルク発生機構により生じたトルクの変化を示している。第1ケース11の回転角度が0°はヒンジ10の第1ケース11及び第2ケース12が完全に開いた状態に相当している。
【0048】
図7に示すように、第1ケース11の回転に従い、耳11eの表面の溝11fに嵌まり込んだ第1クリックプレート24の凸部24aが溝11fから脱出するときに最大のトルクT1が発生する。このため、第1ケース11が完全に開いた状態を維持する付勢力を提供することができる。その後は、第1ケース11の回転に従い第1クリックプレート24が耳11eの表面を摺動することにより略一定のトルクT2が維持される。
【0049】
なお、耳11eの表面において挿通孔11dを挟んで所定方向に延びる他の溝を形成することにより、所定の回転角度でクリックを発生させることができる。第1ケース11が当該回転角度を超えるように回転させると、略一定のトルクT2は第1クリックプレート24の凸部24aが他の溝に落ち込むときに最小トルクT3まで落ち込み、凸部24aが他の溝から脱出するときに略一定のトルクT2まで増加する。このため、第1ケース11の回転操作において引き込みと抵抗が続いて感じられるクリックが提供される。本実施の形態のヒンジ10においては、第1クリックプレート24によって第1ヒンジシャフト17の軸方向に板ばねの強い弾性力を提供することができるため、十分な強さのクリックを提供することができる。
【0050】
本実施の形態のヒンジ10は、第1トルク発生機構の他にも、第2ヒンジシャフト19、第1サイドプレート15及び第2クリックプレート26によって構成された第2トルク発生機構と、第3ヒンジシャフト21、第2サイドプレート16及び第3クリックプレート28によって構成された第3トルク発生機構とを有している。第2及び第3トルク発生機構は、第1トルク発生機構と同様に、第2ケース12の回転に対するトルクを発生する。第2ケース12についても、第2クリックプレート26及び第3クリックプレート28によって第2ヒンジシャフト19及び第3ヒンジシャフト21の軸方向にそれぞれ板ばねの強い弾性力を提供することができるため、十分な強さのクリックを提供することができる。
【0051】
本実施の形態のヒンジ10においては、第1乃至第3トルク発生機構によって、第1ケース11及び第2ケース12が完全に開いた状態又は完全に閉じた状態から回転を始めるときに最大のトルクが発生するようにすることにより、付勢力を与えることができる。また、第1ケース11及び第2ケース12の特定の回転角度について、この回転角度を超えて回転させるときにトルクの減少に増加が続くクリックを提供することができる。
【0052】
図8は、本実施の形態のヒンジ10の動作を説明する側面図である。
図9は、本実施の形態のヒンジ10の動作を説明する斜視図である。
図8及び
図9において、対向する端面の間に所定の間隙が形成された板状の第1部材51と第2部材52とについて、本実施の形態のヒンジ10が第1部材51と第2部材52とを互いに回転可能に支持するように連結している。第1部材51の底面には、ヒンジ10の第1ケース11が台座11bのねじ穴11cを通るねじ55によってスペーサ53を介して取り付けられ、第2部材52の底面には、第2ケース12が台座12bのねじ穴12cを通るねじ56によってスペーサ54を介して取り付けられている。ここで、第1部材51及び第2部材52の対向する端面から所定範囲には、第1ケース11の本体11aよりも高いストッパ11h及び第2ケース12の本体12aよりも高いストッパ12iを収容するために所定の深さのくぼみが形成されている。
【0053】
図8(a)及び
図9(a)は、第1ケース11に取り付けられた第1部材51の天面と、第2ケース12に取り付けられた第2部材52との天面とが、略同一平面上にあり、ヒンジ10の第1ケース11及び第2ケース12が完全に開いた状態を示している。
図8(b)及び
図9(b)は、第1ケース11に取り付けられた第1部材51の天面と、第2ケース12に取り付けられた第2部材52の天面とも、直角近くまで閉じ、ヒンジ10の第1ケース11及び第2ケース12が直角近くまで閉じた状態を示している。
図8(c)及び
図9(c)は、第1ケース11に取り付けられた第1部材51の天面と、第2ケース12に取り付けられた第2部材52の天面とも、直角を超えて閉じヒンジ10の第1ケース11及び第2ケース12が直角を超えて閉じた状態を示している。これらいずれの状態においても、第1部材51の天面と第2部材52の天面との対向する端部の間隔は一定である。ヒンジ10は、第1部材51の天面と第2部材52の天面との対向する端部の中央を仮想回転軸Aとして、第1部材51と第2部材52との回転を実現している。
【0054】
本実施の形態のヒンジ10は、第1部材51の天面と第2部材52の天面との対向する端部の中央を仮想回転軸Aとして回転可能なように第1部材51及び第2部材52を支持し、第1部材51の天面又は第2部材52の天面から回転軸のシャフトが突出することがない。したがって、本実施の形態のヒンジ10は、第1部材51の天面及び第2部材52の天面の有効面積を確保して有効に利用するとともに、多様なデザインを可能にすることができる。また、本実施の形態のヒンジ10は、第1部材51及び第2部材52の所定の回転角度について、十分な強さのクリックを与えるができ、第1部材51及び第2部材52の回転操作の際に利便を提供する。さらに、本実施の形態のヒンジ10は、多くの回数にわたる開閉動作にも耐久性を有し、長期にわたって安定して動作することができる。
【0055】
図10は、本実施の形態のヒンジ10を適用した電子機器60を示す図である。電子機器60は、同様の寸法を有するやや平坦な直方体状の第1筐体61及び第2筐体62が、折り畳みできるようにヒンジ10によって互いに回転可能に連結されて構成されている。この電子機器60は、第1筐体61及び第2筐体62の一方の内面にLCDなどのディスプレイが設けられ、他方の内面に押しボタンやキーボードのような操作部が設けられた携帯電話機やノート型パソコンなどであってもよい。
図10(a)及び
図10(b)は電子機器60を完全に閉じた状態における正面図及び斜視図であり、
図10(c)は電子機器60を完全開いた状態における斜視図である。
【0056】
本実施の形態のヒンジ10によって、第1筐体61及び第2筐体62の内側の面の端部の中央を仮想回転軸Aとして、第1筐体61及び第2筐体62の対向する内側の面の端部の間隔を一定に保つように、第1筐体61及び第2筐体62の回転が実現される。本実施の形態のヒンジ10は、第1筐体61及び第2筐体62が完全に開いた状態において、回転軸のシャフトが内側の面から突出することがない。したがって、第1筐体61及び第2筐体62の内側の面の有効面積を確保するとともに、多様なデザインを可能にすることができる。また、本実施の形態のヒンジ10は、第1筐体61及び第2筐体62の所定の回転角度について、十分な強さのクリックを与えるができ、第1筐体61及び第2筐体62の回転操作の際に利便を提供する。さらに、本実施の形態のヒンジ10は、多くの回数にわたる開閉動作にも耐久性を有し、長期にわたって安定して動作することができる。
【0057】
図11から
図13は、本実施の形態のヒンジ10を適用した他の電子機器70を示す図である。電子機器70は、略矩形の板状の形状を有する筐体71と、筐体71の背面の略中央に長手方向に背面を略二分するように延びる連結部分において本実施の形態のヒンジ10によって回転可能に連結された当該略二分された背面と略同寸法を有する筐体71より薄い板状の支持板72とを有している。この電子機器70は、前面にLCDなどのディスプレイやタッチパネルが設けられたタブレット型コンピュータであってもよい。
【0058】
図11は、支持板72を畳み、筐体71の背面に対して支持板72が閉じた状態の電子機器70を示している。
図11(a)は斜視図であり、
図11(b)は左側面図である。
図11においては、便宜上、電子機器70の筐体71の背面が上側に、前面が下側になるように描かれている。
図12においても同様である。
図12は、支持板72を使用するために、筐体71の背面から支持板72を所定角度まで開いた状態の電子機器70を示している。
図12(a)は斜視図であり、
図12(b)は左側面図である。
図13は、電子機器70の筐体71の背面に対して支持板72を所定角度まで開き、電子機器70が筐体71の側面の一縁と支持板72の一縁とによって支持されるように、電子機器70を机上のような水平面に設置した状態を示す右側面図である。このように電子機器70を設置することによって、例えば机に向かう使用者に筐体71の前面が向くようにして、使用者が電子機器70を使用するための利便を提供することができる。
【0059】
本実施の形態のヒンジ10によって、電子機器70の筐体71の背面の長手方向に延びる連結部分において、筐体71の背面と支持板72とが対向する端部の中央を仮想回転軸Aとして、筐体71の背面と支持板72との対向する端部の間隔を一定に保つように、筐体71に対する支持板72の回転が実現される。
図11に示したように、本実施の形態のヒンジ10は、支持板72が筐体71の背面を覆うように完全に畳まれた状態において、回転軸のシャフトが筐体71の背面又は支持板72から突出することがない。したがって、筐体71の背面及び支持板72の有効面積を確保するとともに、多様なデザインを可能にすることができる。また、本実施の形態のヒンジ10は、筐体71及び支持板72の所定の回転角度について、十分な強さのクリックを与えるができ、筐体71及び支持板72の回転操作の際に利便を提供する。また、本実施のヒンジ10は、多くの回数にわたる開閉動作にも耐久性を有し、長期にわたって安定して動作することができる。
【0060】
なお、
図10から
図13においては、本実施の形態のヒンジ10を電子機器に適用した例を示したが、本実施の形態のヒンジ10の適用範囲はこれに限られない。例えば、キャビネットのような家具の扉、譜面台など、第1部材と第2部材とを仮想回転軸について互いに回転可能に連結する構造を有する対象に適用することができる。
【0061】
図14は、第1変形例のヒンジ90を示す斜視図である。
図15は、第1変形例のヒンジ90の分解図である。第1変形例のヒンジ90において、本実施の形態のヒンジ10の構成要素と共通であるものには、同様の符号を付して説明を省略することにする。
【0062】
第1ケース11は、本体11a内部に所定の空洞を有し、本体11aの一側面の図中手前側の一端に第1ヒンジシャフト17を挿通する挿通孔11dを有する耳11eが形成されている。第2ケース12は、本体12aの一側面の図中奥側の他端に第3ヒンジシャフト21を挿通する第2挿通孔12fを有する第2耳12gが形成されている。本実施の形態のヒンジ10における第2ヒンジシャフト19、第2ヒンジシャフト19を挿通する第1挿通孔12dを有する第1耳12eは存在しない。また、第1ケース11の耳11eの表面に溝15bは形成されていない。第1変形例のヒンジ90における第3ヒンジシャフト21は、第2ケース12を支持する唯一のヒンジシャフトであり、本実施の形態の第2ヒンジシャフト19に相当している。
【0063】
第2センタープレート14は、一方向に延びた形状で、一端の近くにセンターシャフト27を挿通する第1挿通孔14aが形成され、他端の近くに第1リンクシャフト23を挿通する第2挿通孔14bが形成されている。第1サイドプレート15は、短辺の端部近くの第1挿通孔15aに第1ヒンジシャフト17が挿通され、長辺の端部近くの第3挿通孔15dには第2リンクシャフト25が挿通されている。
【0064】
第1変形例のヒンジ90のリンク機構においては、第3プレートである第1センタープレート13は第2リンクシャフト25とセンターシャフト27を連結し、第4プレートである第2センタープレート14は第1リンクシャフト23とセンターシャフト27とを連結している。また、第1プレートである第1サイドプレート15は第1ヒンジシャフト17と第2リンクシャフト25とセンターシャフト27とを連結し、第2プレートである第2サイドプレート16は第3ヒンジシャフト21と第1リンクシャフト23とセンターシャフト27とを連結している。
【0065】
第1変形例のヒンジ90においても、リンク機構によって、第1ケース11及び第2ケース12の仮想回転軸を中心とした回転が実現されている。また、第1変形例のヒンジ90においても、二面取りされた第1ヒンジシャフト17、第1ヒンジシャフト17に係合する挿通孔11dを有する第1ケース11、第1挿通孔15aを挟む図中手前側の表面に溝15bが形成された第1サイドプレート15、第1ヒンジシャフト17に係合する第1クリックプレート24によって、第1ケース11の回転に対するトルクを発生する第1トルク発生機構が実現されている。同様に、第3ヒンジシャフト21、第2ケース12、第1挿通孔16aを挟む図中奥側の表面に図示しない溝が形成された第2サイドプレート16及び第3クリックプレート28によって第2ケース12の回転に対するトルクを発生する第3トルク発生機構が実現されている。第1変形例90のヒンジにおいても、第1クリックプレート24及び第3クリックプレート28により第1ヒンジシャフト17及び第3ヒンジシャフト21の軸方向に板ばねの強い弾性力を提供することができるため、第1ケース11及び第2ケースの特定の回転角度について十分な強さのクリックを提供することができる。
【0066】
図16は、第2変形例のヒンジ80を示す斜視図である。
図16(a)及び
図16(b)は、異なる方向から見た斜視図である。第2変形例のヒンジ80を本実施の形態のヒンジ10と対比すると、トルク発生機構の付勢手段が第1クリックプレート24、第2クリックプレート26及び第3クリックプレート28から皿ばね81、82に、本実施の形態の板ばねから代わった点において相違している。また、本実施の形態のヒンジ10で同軸上にあった第2ヒンジシャフト19及び第3ヒンジシャフト21が単一の第2ヒンジシャフト19に代えられ、第1センタープレート13及び第2センタープレート14が第3サイドプレート83及び第4サイドプレート84によって代えられた点も相違している。第1ケース11及び第2ケース12において第1リンクシャフト23及び第2リンクシャフト25をそれぞれ案内する案内溝の形状も相違している。他の構成については、本実施の形態のヒンジ10と同様であるので、図中において本実施の形態10のヒンジと共通する構成要素については同様の符号で示している。
【0067】
第2変形例のヒンジ80においても、本実施の形態のヒンジ10と同様に、第1部材及び第2部材を仮想回転軸について互いに回転可能に支持することができる。また、皿ばね81、82によって、第1ヒンジシャフト17及び第2ヒンジシャフト19の軸方向にそれぞれ皿ばねの強い弾性力を提供することができるため、本実施の形態のヒンジ10と同様に、十分な強さのクリックを提供することができる。
【0068】
図17は、第2変形例のヒンジ80のリンク機構の動作を示す正面図である。第2変形例のヒンジ80の開閉も、本実施の形態のヒンジ10の開閉と同様に、第1ケース11の上面及び第2ケース12の上面にそれぞれ取り付けられる第1部材及び第2部材(図示なし)の開閉に従うものとする。第2変形例のリンク機構の動作も、
図4に示した本実施の形態のヒンジ10のリンク機構の動作と同様である。
【0069】
図17(a)は第2変形例のヒンジ80が完全に開いた状態を示し、
図17(b)は第2変形例のヒンジ80が少し閉じた状態を示し、
図17(c)は第2変形例のヒンジ80がさらに閉じた状態を示し、
図17(d)は第2変形例のヒンジ80が完全に少し閉じた状態を示している。
図17(a)から
図17(d)を通じて、第1ケース11と第2ケース12とは、仮想回転軸Aを中心として回転している。第1ケース11と第2ケース12とが仮想回転軸Aを挟んで対向する間隔は、
図17(a)の完全に開いた状態におけるaから
図17(d)に示した完全に閉じた状態におけるbまで第1ケース11及び第2ケース12の回転角度に応じて次第に増加している。
【0070】
第1ケース11及び第2ケース12の回転角度と、第1ケース11及び第2ケース12が仮想回転軸Aを挟んで対向する間隔との関係は、第1ケース11の案内溝11g及び第2ケース12の案内溝12hとの形状によって設定することができる。第2変形例においては、ヒンジ80が開くにつれて第1ケース11と第2ケース12が仮想回転軸Aを挟んで対向する間隔が増加するように設定されている。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本実施の形態のヒンジは、例えば折り畳み式の携帯電話機やノート型パソコンのように、第1筐体と第2筐体とを互いに回転可能に連結して構成された電子機器に利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
11 第1ケース
12 第2ケース
13 第1センタープレート
14 第2センタープレート
15 第1サイドプレート
16 第2サイドプレート
17 第1ヒンジシャフト
19 第2ヒンジシャフト
21 第3ヒンジシャフト
23 第1リンクシャフト
25 第2リンクシャフト
27 センターシャフト