(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】接地電極埋設方法
(51)【国際特許分類】
H01R 43/00 20060101AFI20220322BHJP
【FI】
H01R43/00 D
(21)【出願番号】P 2019168978
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2022-01-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000242644
【氏名又は名称】北陸電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391003406
【氏名又は名称】大阪電具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪田 崇
(72)【発明者】
【氏名】山本 龍弥
(72)【発明者】
【氏名】梅木 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】西垣 貴夫
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特公昭45-022674(JP,B1)
【文献】実開昭55-127380(JP,U)
【文献】特開2005-317300(JP,A)
【文献】特開昭57-034681(JP,A)
【文献】特開昭54-144952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/00
H01R 4/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地電極を地中に差し込む工程と、
前記接地電極の後端部に打ち込み棒を配置し、前記接地電極が所定の埋設深さとなるように、前記打ち込み棒と前記接地電極とを地中に向けて埋め込む工程と、
前記打ち込み棒を抜き取る工程と、
前記抜き取る工程の後に、前記打ち込み棒を抜き取った後の空間にリード線を差し込み、前記リード線と前記接地電極とを電気的に接続する工程と、
を含
み、
前記埋め込む工程において、内部に前記打ち込み棒が通された筒状のガイド部材を、前記打ち込み棒と前記接地電極とともに地中に埋め込む、接地電極埋設方法。
【請求項2】
前記リード線の先端に接続されたリード端子が、前記接地電極に形成された接続穴に押し込まれることで、前記リード線と前記接地電極が電気的に接続される請求項
1に記載の接地電極埋設方法。
【請求項3】
前記電気的に接続する工程において、前記リード線は筒状のリード端子挿入棒の内部に通され、前記リード端子挿入棒とともに前記リード線が差し込まれる、請求項1または
2に記載の接地電極埋設方法。
【請求項4】
前記電気的に接続する工程の後に、前記リード端子挿入棒を抜き取る工程を含む請求項
3に記載の接地電極埋設方法。
【請求項5】
前記リード端子挿入棒は前記打ち込み棒を兼ねる、請求項
3または
4に記載の接地電極埋設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接地電極埋設方法に関し、詳しくは、穴を掘らずに接地電極を埋設する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電柱には、変圧器、避雷器、高圧機器等の電気設備が取付けられており、この電気設備を落雷や漏電から保護するために、省令により、電気設備を接地することが義務付けられている。接地は、電柱の近傍の地中に埋設された接地電極と、電気設備に設けられた接地用端子とを電線で接続することで行われる(例えば、特許文献1)。
【0003】
上記の省令によれば、接地電極は地表から75cm以上の深さに埋設しなければならないとされている。このため、接地電極の地中への埋め込みは、例えば以下の手順で行われる。まず、地表Sから深さ80cm程度の穴1を掘り、穴1の底部に棒状の接地電極2を差し込む(
図12)。次いで、接地電極2の後端部に電線4が取付けられたリード端子3を接続する。そして、電線4の後端側を地表に出し、穴1を埋め戻し、電線4を電柱Pの電気設備に設けられた接地用端子と接続する。これにより、電気設備が接地電極と接続されて接地される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の接地電極埋設方法においては、少なくとも接地電極の埋設深さを有する穴を掘らなくてはならず、工事に手間と時間がかかるという問題がある。
【0006】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、穴を掘る必要がない接地電極埋設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による接地電極埋設方法は、接地電極を地中に差し込む工程と、前記接地電極の後端部に打ち込み棒を配置し、前記接地電極が所定の埋設深さとなるように、前記打ち込み棒と前記接地電極とを地中に向けて埋め込む工程と、前記打ち込み棒を抜き取る工程と、前記抜き取る工程の後に、前記打ち込み棒を抜き取った後の空間にリード線を差し込み、前記リード線と前記接地電極とを電気的に接続する工程と、を含む。
【0008】
上記の構成によれば、穴を掘らずに接地電極を所定の埋設深さまで埋め込むことができる。
【0009】
好ましい実施形態においては、前記埋め込む工程において、内部に前記打ち込み棒が通された筒状のガイド部材を、前記打ち込み棒と前記接地電極とともに地中に埋め込む。
【0010】
好ましい実施形態においては、前記リード線の先端に接続されたリード端子が、前記接地電極に形成された接続穴に押し込まれることで、前記リード線と前記接地電極が電気的に接続される。
【0011】
好ましい実施形態においては、前記電気的に接続する工程において、前記リード線は筒状のリード端子挿入棒の内部に通され、前記リード端子挿入棒とともに前記リード線が差し込まれる。
【0012】
好ましい実施形態においては、前記電気的に接続する工程の後に、前記リード端子挿入棒を抜き取る工程を含む。
【0013】
前記リード端子挿入棒は前記打ち込み棒を兼ねてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、穴を掘らずに接地電極を所定の埋設深さまで埋め込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る接地電極埋設方法により接地電極が埋設された状態を示す説明図である。
【
図2】接地電極が地中に差し込まれた状態を示す説明図である。
【
図3】埋め込む工程を示す説明図であり、ガイド部材が地表に立てられた状態を示す図である。
【
図4】埋め込む工程を示す説明図であり、打ち込み棒が通された状態を示す図である。
【
図5】埋め込む工程を示す説明図であり、打ち込み棒と接地電極とが地中に埋め込まれた状態を示す図である。
【
図6】打ち込み棒が抜き取られた状態を示す説明図である。
【
図7】リード線と接地電極とを電気的に接続する工程を示す図であり、(A)はリード線が差し込まれた状態を示す説明図、(B)は要部拡大図である。
【
図8】リード線と接地電極とを電気的に接続する工程を示す要部拡大図である。
【
図9】リード端子挿入棒が抜き取られた状態を示す図である。
【
図10】リード線に被膜パイプが通された状態を示す図である。
【
図11】(A)はリード端子が接続されたリード線を示す図であり、(B)はリード線とリード端子の接続構造を示す断面図であり、(C)はリード線にリード端子挿入棒が通された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。本実施形態の接地電極埋設方法は、
図1に示すように、電柱Pに取付けられた電気設備を接地するための接地電極10を、電柱Pの周囲の地表Sの所定箇所において、所定の埋設深さL1に埋設する方法である。なお、以下の説明では、地表Sから地中に向かう方向を前側、前側と反対方向を後側といい、接地電極10の埋設深さL1とは、地表Sから接地電極10の後端までの長さをいう。なお、
図1~
図10において、接地電極10、ガイド部材30、打ち込み棒20、リード端子挿入棒60は断面で示されている。また、
図10においては、被膜パイプ42は断面で示されている。
【0017】
図1、
図2に示すように、埋設される接地電極10は、スラストパイプとも呼ばれ、金属等の導電性を有する素材からなる長尺状の丸棒である。接地電極10は、地中に挿入しやすいように先端部11が先細り形状となっており、後端部12の後端面12aにリード端子50が連結されるための接続穴12bが形成されている。接地電極10は全長が700mm以上、1000mm以下のものが用いられ、本実施形態では全長が780mm、先端部11の長さが300mm、後端部12の外径が14mmに設定されている。
【0018】
本実施形態の接地電極埋設方法においては、まず、
図2に示すように、接地電極10の少なくとも先端部11を地中に差し込む工程を行う。具体的には、電柱Pの周囲の地表Sの所定箇所に接地電極10の先端部11を突き立て、接地電極10の後端面12aが地表Sから所定の高さh1となるように、電動ハンマー100や金槌により接地電極10の後端部12を叩いて地中に差し込む。本実施形態では、高さh1を50mmとしている。
【0019】
次に、
図3~
図5に示す埋め込む工程を行う。接地電極10の後端部12に打ち込み棒20を配置し、接地電極10の後端部12が所定の埋設深さL1となるように、打ち込み棒20の後端側からの押圧により打ち込み棒20と接地電極10とを地中に向けて埋め込む。この際、内部に打ち込み棒20が通された円筒状のガイド部材30を、打ち込み棒20と接地電極10とともに地中に埋め込む。
【0020】
詳細には、
図3に示すように、円筒状のガイド部材30を、接地電極10の地表Sから突出した後端部12に被せるように地表Sに立てる。ガイド部材30は、全長が接地電極10の埋設深さL1よりも長く設定されており、本実施形態では、接地電極10の埋設深さL1を950mm、ガイド部材30の全長を1200mmと設定している。ガイド部材30の中空部31の内径は、接地電極10の後端部12の外径よりも若干大きく設定されており、本実施形態では20mmとしている。ガイド部材30は、その素材は問わず、金属、合成樹脂など任意の素材から構成されるが、電動ハンマー100による衝撃に耐えられる素材であることが好ましく、また、
図1に示すように接地電極10とともに地中に埋設されるため、腐食しにくい素材であることが好ましい。
【0021】
次に、
図4に示すように、ガイド部材30の中空部31に打ち込み棒20を通す。打ち込み棒20は円柱の棒体であり、その外径は、ガイド部材30の中空部31に挿入可能であって、接地電極10の後端部12の外径と同じか接地電極10の後端部12の外径よりもわずかに大きく設定されている。打ち込み棒20は、電動ハンマー100による衝撃に耐えられる素材であれば、金属、合成樹脂など任意の素材から構成される。ガイド部材30に通された打ち込み棒20の先端面21aが接地電極10の後端面12aに当接した状態で、打ち込み棒20の後端部22は、ガイド部材30の後端から突出している。打ち込み棒20の全長はガイド部材30と同じ長さに設定されており、打ち込み棒20の後端部22の突出長さh2は、地表Sから接地電極10の後端面12aまでの高さh1と同じになる。
【0022】
そして、
図5に示すように、電動ハンマー100により打ち込み棒20の後端面22aとガイド部材30の後端面32aとに押圧力を加えることで、ガイド部材30と打ち込み棒20とが地中に向けて押し込まれ、打ち込み棒20に押されて接地電極10が地中に向けて埋め込まれる。
【0023】
具体的には、電動ハンマー100にはホルダー部材101が取付けられており、ホルダー部材101の前端面101aには、凹穴101bが設けられている。凹穴101bに打ち込み棒20の突出部が差し込まれてその底面に打ち込み棒20の後端面22aが当接し、ホルダー部材101の前端面101aにガイド部材30の後端面32aが当接することで、電動ハンマー100の押圧力がホルダー部材101を介してガイド部材30と打ち込み棒20とに伝わる。
【0024】
本実施形態では、ホルダー部材101の凹穴101bの深さを打ち込み棒20の後端部22の突出長さh2と同じとしている。これにより、ガイド部材30に対して打ち込み棒20の後端部22の突出長さh2を50mmに保った状態で、ガイド部材30と打ち込み棒20とが地中に押し込まれる。ガイド部材30の後端面32aが地表Sから所定の高さh3となるまでガイド部材30と打ち込み棒20とを押し込むことで、接地電極10は所定の埋設深さL1に埋設される。本実施形態では、ガイド部材30の後端面32aの地表Sから所定の高さh3を200mmとすることで、接地電極10の埋設深さL1は約950mmとなる。
【0025】
次に、打ち込み棒20を抜き取る工程を行う。
図6は打ち込み棒20が抜き取られた状態を示している。
【0026】
そして、打ち込み棒20を抜き取った後のガイド部材30の内部の空間にリード線40を差し込み、リード線40と接地電極10とを電気的に接続する工程を行う。
【0027】
図11(A)に示すように、リード線40の先端にはリード端子50が接続されている。リード端子50は、金属等の導電性を有する素材からなり、先端部51が先細り形状となった棒状体である。
図11(B)に示すように、リード線40は金属等の素材からなる導線が撚り合わされた撚り線40aに絶縁被覆40bを施したものであり、リード端子50の後端部52には、穴52bに通されたリード線40の撚り線40aの先端を固定するための圧着固定部分52cが形成されており、これによりリード端子50にリード線40が電気的に接続される。なお、リード端子50のリード線40との接続は本実施形態に限定されず、リード線40と電気的に接続できればいずれの構造であってもよく、例えば半田付けにより接続されていてもよい。本実施形態では、リード端子50の全長は50mm程度に設定され、リード端子50の後端部52の外径は、接地電極10の後端面12aに設けられた接続穴12bに挿入されたときに、接続穴12bの内周面とリード端子50の後端部52の外周面とが接触可能な径に設定されており、接続穴12bの内径と同一か、わずかに大きい径である。
【0028】
図11(C)に示すように、リード線40は、リード端子挿入棒60の長さ方向に沿って形成された貫通孔60aに通される。本実施形態では、リード端子挿入棒60は、打ち込み棒20と同じ長さ及び外径に設定されている。なお、リード端子挿入棒60を打ち込み棒20と兼用してもよい。すなわち、打ち込み棒20にリード線40が貫通可能な程度の挿入孔が設けられていてもよい。
【0029】
後述するように、リード端子挿入棒60の後端側から電動ハンマー100等で押圧力が加えられるが、この際に邪魔にならないように、リード線40のリード端子挿入棒60の後端面62aから飛び出る部分は切断される。このとき、リード端子挿入棒60の挿入孔に位置するリード線40の後端がリード端子挿入棒60の貫通孔60aの内部に落下せず、リード線40が貫通孔60aに通された状態を保つように、リード線40は撓みにくい撚り線から構成される。
【0030】
リード線40と接地電極10とを電気的に接続するには、まず、
図7(A)に示すように、リード端子挿入棒60に通されたリード線40を、ガイド部材30の内部の空間に挿入する。リード端子50の後端部52の外径は接地電極10の接続穴12bとほぼ同じであるため、
図7(B)に示すように、リード端子50の後端部52が接地電極10の接続穴12bの上端と当接する。さらに、リード端子挿入棒60の先端面61aがリード端子50の後端面52aと当接する。このとき、リード端子挿入棒60の後端部62はガイド部材30の後端から突出している。
【0031】
そして、リード端子挿入棒60の後端側から電動ハンマー100等により押圧力を加えると、
図8に示すように、リード端子50の後端部52が接地電極10の接続穴12bに押し込まれ、接地電極10の接続穴12bの内周面にリード端子50の後端部52の外周面が接触して、接地電極10とリード端子50及びリード線40が電気的に接続される。なお、リード端子50と接地電極10との接続の構成は本実施形態に限定されず、リード端子50と接地電極10とが電気的に接続できればいずれの構造であってもよい。なお、電動ハンマー100でリード端子挿入棒60を押し込む際に、ガイド部材30が同時に押し込まれてもよい。
【0032】
次に、リード端子挿入棒60を抜き取る工程を行う。
図9は、リード端子挿入棒60が抜き取られた状態を示す。
【0033】
そして、
図10に示すように、電柱Pの電気設備と接続するための接続リード線41をリード線40の後端と半田付けや圧着端子等により接続する。そして、接続リード線41の後端側から、接続リード線41とリード線40と保護するための被膜パイプ42を通す。これにより、
図1に示すように、接地電極10が地中に埋め込まれ、接地電極10と電気設備とが被膜パイプ42内のリード線40、41により接続された状態となる。
【0034】
本実施形態によれば、従来技術のように接地電極10を埋設するために穴を掘る必要がない。このように穴を掘らずに接地電極10を埋設できるため、穴を掘るための土木工事に係る時間やコストを削減できる。
【0035】
また、ガイド部材30、打ち込み棒20、リード端子挿入棒60の全長を調節することで、接地電極10を所望の埋設深さに埋め込むことができる。
【0036】
さらに、打ち込み棒20をリード端子挿入棒60として用いる場合には、本実施形態に係る方法を実施するために用意する部品点数が少なくてすむ。
【0037】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0038】
10 接地電極
11 先端部
12 後端部
12b 接続穴
20 打ち込み棒
30 ガイド部材
40 リード線
50 リード端子
60 リード端子挿入棒