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特許7043491光偏向デバイス、採光デバイス、および光偏向デバイスまたは採光デバイスを使用する空間形成用構造要素または室内採光器具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】光偏向デバイス、採光デバイス、および光偏向デバイスまたは採光デバイスを使用する空間形成用構造要素または室内採光器具
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20220322BHJP
   F21S 11/00 20060101ALI20220322BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20220322BHJP
【FI】
F21S2/00 433
F21S2/00 431
F21S11/00 300
F21Y115:10
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019518936
(86)(22)【出願日】2017-10-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-09
(86)【国際出願番号】 EP2017075215
(87)【国際公開番号】W WO2018065463
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2019-05-31
(31)【優先権主張番号】102016118884.0
(32)【優先日】2016-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519120400
【氏名又は名称】テミコン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】temicon GmbH
【住所又は居所原語表記】Konrad-Adenauer-Allee 11,44263 Dortmund,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ナイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート フランク オットマー ミュラー
【審査官】小野 孝朗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0192742(US,A1)
【文献】特開平06-324331(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0049511(US,A1)
【文献】特表2011-515848(JP,A)
【文献】特許第3632208(JP,B2)
【文献】特表2001-504598(JP,A)
【文献】特開2009-043706(JP,A)
【文献】特開2010-050100(JP,A)
【文献】特表2004-527676(JP,A)
【文献】特開2001-093314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21S 8/00
F21S 11/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 平坦で透明な光ガイド(4、4’)と、
- 少なくとも部分的に平坦状に前記光ガイドに適用された透明な被覆層(6、6’)と、
を備える光偏向デバイスであって、
前記光ガイド(4、4’)と前記被覆層(6、6’)との間に、前記光ガイド(4、4’)に入力結合された光を出力結合するための微細構造(20、20’)が形成されており、前記微細構造(20)が、環状円筒形の隆起部(20a、20a’)として形成された複数の構造要素(20a、20a’)を含み、前記微細構造(20、20’)が、前記光ガイド(4)に面する前記被覆層(6)の表面上に形成されており、前記構造要素(20a、20a’)の高さ(h)および断面対角線(c)を含む角度が、前記光ガイド(4)および/または前記被覆層(6、6’)における全反射の臨界角以下であ前記構造要素(20a、20a’)が、前記光ガイド(4、4’)に結合された光が前記構造要素(20a、20a’)の円筒側面を介して実質的に出力結合されるような方法で設計されており、前記光ガイド(4、4’)が、少なくとも1mmの厚さ、および/または多くとも15mmの厚さを有し、前記環状円筒形の隆起部(20a、20a’)は各々、直径が20μm以上100μm以下であり、且つ、高さが20μm以上100μm以下である、光偏向デバイス。
【請求項2】
前記微細構造(20、20’)とは反対側の前記被覆層(6、6’)の表面が、実質的に平坦である、請求項1に記載の光偏向デバイス。
【請求項3】
前記光ガイド(4、4’)が、少なくとも部分的にガラスまたはプラスチックからなる、請求項1または2に記載の光偏向デバイス。
【請求項4】
前記被覆層(6、6’)が、フィルムとして形成されている、請求項1~3の何れか一項に記載の光偏向デバイス。
【請求項5】
前記被覆層(6、6’)が、少なくとも部分的にガラスまたはプラスチック材料からなる、請求項1~の何れか一項に記載の光偏向デバイス。
【請求項6】
前記被覆層(6、6’)が、多くとも1000μmの厚さ、および/または少なくとも50μmの厚さを有する、請求項1~の何れか一項に記載の光偏向デバイス。
【請求項7】
前記被覆層(6、6’)が、前記光ガイド(4、4’)に確実に接続されている、請求項1~の何れか一項に記載の光偏向デバイス。
【請求項8】
前記微細構造(20、20’)の前記構造要素(20a、20a’)が、実質的に一定の配置密度を有する、請求項1~の何れか一項に記載の光偏向デバイス。
【請求項9】
入力結合のために意図された前記光ガイド(4、4’)の縁部(14、14a、14b、14c、14d)が、表面改質(24a、24b、24c、24d、24e、24f)を有する、請求項1~の何れか一項に記載の光偏向デバイス。
【請求項10】
前記微細構造(20、20’)が、プロファイルローラによって生成される、請求項1~の何れか一項に記載の光偏向デバイス。
【請求項11】
- 請求項1~10の何れか一項に記載の光偏向デバイス(2、2’)と、
- 前記光ガイド(4、4’)の縁部(14、14a、14b、14c、14d)に配置された、前記光ガイド(4、4’)の前記縁部(14、14a、14b、14c、14d)を介して光を入力結合するための光源(8、8a、8b、8c、8d)と、
を備える、採光デバイス。
【請求項12】
前記微細構造(20、20’)の前記構造要素(20a、20a’)が、少なくとも1つの光源(8、8a、8b、8c、8d)からの距離が増加するにつれて実質的に増加する配置密度を少なくとも部分的に有する、請求項11に記載の採光デバイス。
【請求項13】
前記光源(8、8a、8b、8c、8d)が、前記光ガイド(4、4’)の前記縁部(14、14a、14b、14c、14d)に少なくとも部分的に適用されている、請求項11または12に記載の採光デバイス。
【請求項14】
- 前記光ガイド(4、4’)の第1の縁部(14、14a、14b、14c、14d)に配置された、前記光ガイド(4、4’)の前記第1の縁部(14、14a、14b、14c、14d)を介して光を入力結合するための第1の光源(8、8a、8b、8c、8d)と、
- 前記光ガイド(4、4’)の第2の縁部(14、14a、14b、14c、14d)に配置された、前記光ガイド(4、4’)の前記第2の縁部(14、14a、14b、14c、14d)を介して光を入力結合するための第2の光源(8、8a、8b、8c、8d)と、
を備える、請求項1113の何れか一項に記載の採光デバイス。
【請求項15】
請求項1~10の何れか一項に記載の光偏向デバイスあるいは請求項1114の何れか一項に記載の採光デバイスを使用する空間形成用構造要素または室内採光器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光偏向デバイス、採光デバイス、およびそれらの使用に関係する。
【背景技術】
【0002】
先行技術により、部屋の可能な限りぎらつきのない最善の室内採光を達成するように光を偏向するためのデバイスが知られている。例えば、特許文献1には、片側にプリズム形状のレンズプロファイルを有し、反対側に円筒形のレンズプロファイルを有する透明なプレートまたはフィルムからなる既知の光偏向デバイスが含まれている。この場合、光偏向デバイスの目的は、窓の表面に向けられる昼光の利用を最適化することである。これに関連して、かかるシステムの課題は、部屋の奥まった所のよりよい照明が達成されるような方法で、側面が露出された部屋(独:seitenbelichteten Raeumen,英:side-exposed room)に入射昼光を再度方向付けることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許第10 2008 055 857(B4)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかるデバイスは、確かに昼光の利用を改善し得る。しかしながら、十分な昼光が利用可能ではない場合、人工光源の使用が必要である。
【0005】
この目的のために、光を、例えば、窓の板ガラスまたはその一部とすることができる平坦で透明な光ガイドの縁部を介して入力結合(独:eingekoppelt,英:incoupled)することができ、次いで、特定の表面構造を介して平面状に再び出力結合(独:ausgekoppelt,英:outcoupled)することができる。この目的のために、特定の表面構造を提供しなければならない。透明度を(とりわけ、窓の板ガラスで)損なわないため、および均一な光の出力結合を同時に達成するために、その構造が微細構造として提供される。
【0006】
一方で、光ガイド自体の表面を改質することによって、表面構造を作り出すことができる。しかしながら、これは、既存の光ガイド(既存の窓の板ガラスなど)を交換するか、またはそれらの前に追加の光ガイド(追加の板ガラスなど)を配設する必要があろうことを意味する。代替的に、プレートまたはフィルムを既存の光ガイドに適用することが考えられる。
【0007】
しかしながら、繊細な微細構造を汚れや損傷から(例えば、表面洗浄によって)保護しなければならない。この目的のために、微細構造に適用されるさらなる保護層を提供することが必要であり得る。代替的に、微細構造を含む表面を有する光ガイドを複数のグレイジングの中間空間に挿入することによって、微細構造を保護することが考えられる。しかしながら、これは、設置中の追加の作業を伴う。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これに基づいて、本発明の課題うちの1つは、光偏向デバイスおよび採光デバイスであって、特に、高い透明度とともに高度の耐久性を有し、それにもかかわらず設置が可能な限り経済的である、光偏向デバイスおよび採光デバイスを提案することである。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、平坦で透明な光ガイドと、少なくとも部分的に平坦状に光ガイドに適用された透明な被覆層とを備える光偏向デバイスであって、光ガイドと被覆層との間に、光ガイドに結合された光を出力結合するための微細構造が形成されており、微細構造が、実質的に環状円筒形の隆起部の形態をした複数の構造要素を有する、光偏向デバイスが包括的に記載されている。
【0010】
微細構造は、特に、目標とする構造として理解され、その特徴的寸法は、マイクロメートル範囲、すなわち、1mm未満の範囲にある。微細構造が光の出力結合を招くということを考慮すると、微細構造を微細光学構造として記載することもできる。
【0011】
微細構造は、例えば、約50~500μmのサイズを有する。実質的に環状円筒形の隆起部が光を効果的に出力結合し得ることが示されている。構造要素は、好ましくは、各々が実質的に同一の幾何形状および/または寸法で設計されている。環状円筒形の隆起部は、特に、真っ直ぐな環状円筒の形状を有する。環状円筒形の隆起部の環状表面は、好ましくは、光ガイドまたは被覆層の反対側の表面と本質的に平行である。交差面は、光ガイドまたは被覆層の表面上に直接位置し得る。環状円筒形の隆起部は各々、少なくとも20μm、より好ましくは少なくとも40μmの直径、および/または多くとも200μm、より好ましくは多くとも100μmの直径、例えば、50μmの直径を有する。環状円筒形の隆起部は、好ましくは、各々、少なくとも20μm、より好ましくは少なくとも40μmの高さ、および/または多くとも200μm、より好ましくは多くとも100μmの高さ、例えば、50μmの高さを有する。例えば、構造要素は、少なくとも50μm、好ましくは少なくとも100μmの距離で離間されている。特に、かかる構造要素は、透明な光偏向デバイスが同時に効率的に光を出力結合することを可能にし得る。円錐形の構造要素と比較して、光の有利な対角線の出力結合を達成することができる。
【0012】
光ガイドの表面、被覆層の表面、または光ガイドおよび被覆層に面する表面によって、微細構造を一緒に形成することができる。
【0013】
平坦で透明な光ガイドは、ある特定の距離にわたって光を輸送し得る構成要素である。光ガイドは、光ガイドの境界面における反射、例えば、光ガイドを取り囲む媒体のより低い屈折率による全反射によって達成される。これに関連して、「光」という用語は、目に見える電磁放射の部分、すなわち、約380nm~780nmの範囲またはそれらの副範囲の波長を有する電磁放射を意味するように理解される。光ガイドは、例えば、窓の板ガラスまたは別のガラス板であり得る。例えば、光ガイドは、角度をなした、とりわけ、矩形の板ガラスとして設計されている。光ガイドを、例えば、被覆層のための基材として使用することができる。
【0014】
例えば、光ガイドに少なくとも部分的に平面状に適用された被覆層は、光ガイドに部分的にのみ適用されている。例えば、窓の板ガラスの場合、上部面積(例えば、上部面積の1mまたは2m)のみに被覆層が提供されている。被覆層は、好ましくは、光偏向デバイスの最も外側の層である。
【0015】
被覆層が光ガイドに適用されているため、(例えば、微細構造化された表面を有していない)既存の光ガイドを、特に、微細構造を用いて被覆層を適用することによって改造することができる。
【0016】
したがって、光偏向デバイスを使用して採光時に光を方向付けて偏向することができ、適切な光源と組み合わせて、自然の昼光が不十分である場合であっても間接的な広い面積の採光を可能にする。この点において、昼光の補助採光を作り出すことができる。
【0017】
第1の態様の好ましい実施形態に従って、微細構造は(好ましくは、排他的に)、光ガイドに面する被覆層の表面上に形成されている。したがって、光ガイドの表面は、微細構造を必要としない。ここで被覆層が、光ガイドに面する表面上に、光ガイドに結合された光を出力結合するための微細構造を有するという事実により、一方では、微細構造によって通常どおりに出力結合を達成することができるが、一方では、微細構造が外側ではなく、光ガイドに面する側に提供されているという事実によって、微細構造が保護されるということが達成される。これは、微細構造を外部の影響から保護する。被覆層自体が保護層としての役割を果たし得るため、追加の保護層は必要ない。この点において、被覆層を出力結合層として見なすこともできる。
【0018】
第1の態様の好ましい実施形態によれば、微細構造とは反対側の被覆層の表面は、本質的に平坦である。特に、平坦な表面は、平坦な光ガイドの表面に対して本質的に平行に延びる。被覆層の本質的に平坦な表面は、特に、光偏向デバイスの外側の代わりになり得、ひいては、外側保護層の代わりになり得るか、または追加の保護層を不要にし得る。
【0019】
第1の態様の好ましい実施形態によれば、光ガイドは、少なくとも部分的にガラスまたはプラスチックからなる。ガラス製の光ガイドは、高い硬度および耐久性を有する。加えて、ガラスは、いずれの場合も、窓またはショーケースなどの多くの建築物要素で既に使用されている。かかる光ガイドは、被覆層を適用することによって容易に微細構造を備えることができる。プラスチック製の光ガイドも高い耐久性を有し得る。プラスチックの例は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのポリシロキサン、ポリカーボネート(PC)、環状オレフィンコポリマー(COC)、またはポリウレタン(PU)である。
【0020】
特に、被覆層は、スラブまたはシートの形態であり得る。しかしながら、異なる態様の好ましい実施形態によれば、被覆層は、フィルムとして設計されている。特に、フィルムは、それぞれの材料(例えば、プラスチックまたは薄いガラス)の(特に、1mm未満の厚さを有する)薄いシートである。例えば、フィルムを巻き上げることができる。これは、被覆層をロールとして容易に輸送することができ、かつ例えば、現場でのみ適用することができるという特定の利点を有する。しかしながら、フィルムは、例えば、外層としての保護層の機能を満たすのに十分な強度の利点を依然として有する。
【0021】
第1の態様の好ましい実施形態によれば、光ガイドは、少なくとも1mm、好ましくは少なくとも2mm、より好ましくは少なくとも3mmの厚さ、および/または多くとも15mm、好ましくは多くとも10mm、より好ましくは多くとも8mmの厚さを有する。これらの最小厚さでは、光偏向デバイスの十分な安定性を達成することができ、光を入力結合することができる。
【0022】
第1の態様の好ましい実施形態によれば、被覆層は、少なくとも部分的にガラスまたはプラスチックからなる。本発明による被覆層の実施形態はガラスまたはプラスチックから有利に作製され得ることが示されている。プラスチックは、フィルムとして被覆層を形成する際に特に有利であることが証明されている。特に、プラスチックは透明な熱可塑性材料であり得る。プラスチックは、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのポリシロキサン、ポリカーボネート(PC)、環状オレフィンコポリマー(COC)、またはポリウレタン(PU)である。しかしながら、被覆層が透明なエポキシ樹脂またはアクリレートから作製されることも考えられる。しかしながら、被覆層をガラス、特に、薄いガラスから作製することもできる。
【0023】
第1の態様の好ましい実施形態によれば、被覆層は、多くとも1000μm、好ましくは多くとも500μm、より好ましくは多くとも300μmの厚さ、および/または少なくとも50μm、好ましくは少なくとも100μm、より好ましくは少なくとも150μmの厚さを有するものとする。
【0024】
被覆層の厚さは、特に、微細構造を含む厚さとして理解される。微細構造化された表面が光ガイドに適用された被覆層であっても、比較的薄くすることができ、また、十分な保護機能を果たすことが示されている。
【0025】
第1の態様の好ましい実施形態に従って、被覆層は、光ガイドにしっかりと接合されている。例えば、被覆層は、光ガイドに積層されているか、光ガイドにのり付けされているか、または光ガイドに溶接されている。接合する場合、可能な限り透明であり、光の散乱を可能な限り少なくさせる接着剤を使用することが好ましい。
【0026】
第1の態様の好ましい実施形態に従って、構造要素は、光ガイドに結合された光が構造要素の円筒側面を介して本質的に出力結合されるような方法で設計されている。このようにして、光をほとんどまたは全く損失することなく、可能な限り多くの光を制御された方法で光ガイドから出力結合することができる。
【0027】
第1の態様の好ましい実施形態によれば、構造要素の高さおよび対角線方向断面によって囲まれた角度は、光ガイドおよび/または被覆層における全反射の臨界角以下である。全反射の臨界角は、異なる伝播速度を有する2つの(理想的には非吸収性)媒体の界面で全反射が発生する入射角である。このようにして、環状円筒形の構造要素の側壁が光の出力結合のために効果的に使用されるため、可能な限り多くの光を制御された方法で光ガイドから出力結合することができる。
【0028】
第1の態様の好ましい実施形態によれば、微細構造の構造要素は、本質的に一定の配置密度を呈する。構造要素は、規則的または確率的に分布して配置され得る。微細構造は、本質的に一定の配置密度ゆえに、特に経済的に生成され得る。不正確な位置決めに関するエラーに対する感受性もまた、被覆層を光ガイドに適用するために低減される。
【0029】
第1の態様の好ましい実施形態に従って、目的が入力結合のためである光ガイドの1つの縁部は、表面改質を有する。光ガイドの1つの縁部の表面を改質することによって、光を光ガイドに入力結合する効率を増加させることができる。表面改質は、光ガイド自体の縁部によって、または縁部に適用された要素によって達成され得る。表面改質は、本質的に、光学特性が具体的に提供され得るような方法で表面が改質されることを意味するように理解される。
【0030】
表面改質は、例えば、縁部の表面構造化を含む。例えば、表面改質は、モスアイ構造を含む。例えば、表面改質は、特定の角度範囲から進入する光の偏向が達成されるように、(適用された)回折格子を含む。例えば、表面改質は、光ガイドの縁部の凸状またはプリズム状の形状を含む。例えば、表面改質は、円筒形レンズ配列またはプリズム配列を含む。
【0031】
その結果、光の効率的な入力結合が達成されるように、反射損失を個々の実施形態によって低減することができる。また、実施形態は、意図的でない全反射の臨界角の超過の低減を達成し得る。また、実施形態は、光ガイドの平坦な表面に平行な光の入力結合の低減を達成し得る。
【0032】
記載される構造化を、とりわけ、ミラーリングと組み合わせて、入力結合のための役割を果たす縁部とは反対側の光ガイドの縁部に提供することもできる。
【0033】
第1の態様の好ましい実施形態によれば、微細構造は、プロファイルローラによって、特に、エンボス加工ローラによるUVエンボス加工によって生成される。微細構造は、例えば、適切に形状決めされたローラによって、まだ柔らかいプラスチック材料内に成形され得る。エンボス加工ローラを使用するUVエンボス加工は、被覆層を比較的薄い層またはフィルムとして(とりわけ、およそ200μm以下で)確実に生成し得ることが示されている。エンボス加工ローラを使用する例示的なUVエンボス加工プロセスは、特に、「ロールツーロール」プロセスとして設計され得る。(構造化されていない)基材(フィルム基材)を、ロール上で利用可能にし、連続的なプロセスで微細構造を提供し、次いで、再び巻き上げることができる。エンボス加工ロールが生成される微細構造のネガ構造を有するように、エンボス加工ロールをフォトリソグラフィ法またはダイヤモンド切断プロセスによって構造化することができる。例えば、微細構造は、ローラを用いて基材上のラッカー層にエンボス加工され、同時にまたは後でUV硬化される。
【0034】
しかしながら、UVエンボス加工が剛性基材上で実施されることも考えられる。例えば、微細構造のネガ構造を有するマスターフィルムを使用して、剛性基材上のUVラッカー層上にエンボス加工する。
【0035】
さらに、適切にプロファイルされたノズルを使用する押出技術、ホットスタンピング技術(いわゆる、「プレートツープレート」プロセス)、または鋳造技術によって、プレートまたはフィルムの形態の微細構造を有する被覆層を生成することが考えられる。
【0036】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様による光偏向デバイスと、光ガイドの縁部に配置された、光ガイドの縁部を介して光を入力結合するための光源とを備える、採光デバイスが包括的に記載されている。
【0037】
採光デバイスは、例えば、透明なディスク形の採光要素として見なされ得る。光源は、少なくとも1つの光源を意味するように理解される。例えば、光源は、1つ以上の発光ダイオード(LED)などの1つ以上の光源を有し得る。例えば、いくつかの光源(例えば、いくつかのLED)のストリップを光ガイドの縁部に沿って配置することができる。例えば、発光ダイオードは、赤色、緑色、青色、および/または白色光用に提供される。例えば、少なくとも1つの光源は、5000K~6500K(冷白)および/または3000K~4000K(暖白)の色温度範囲を有する光を発生するように設計されている。例えば、少なくとも1つの光源は、500lx超、好ましくは1000lx超の照度を有する光を発生するように設計されている。この(高い)色温度および/または(高い)照度は、有利には、昼光をシミュレートし、かつ例えば、睡眠ホルモンのメラトニンを抑制し得る。
【0038】
光ガイドの1つの縁部に配置された光源によって放出される光は、特に、平坦な光ガイドに対して対角線のビーム方向(例えば、0度~90度、好ましくは20度~70度、より好ましくは30度~50度、例えば、約40度)を有する。光源が配置されている縁部および採光デバイスが室内にどのように配置されているかに応じて、放射の方向は、例えば、斜め下向き、斜め上向き、または斜め横向きに達成され得る。
【0039】
第2の態様の一実施形態によれば、微細構造の構造要素は、少なくとも一部において、少なくとも1つの光源からの距離が増加するにつれて本質的に増加する配置密度を示す。原則として、入力結合された光は、光ガイドの通過中に可能な限り離れて出力結合されるべきである。提案される実施形態は、出力結合された光の出力を増加させ、高い均一性の光放射を達成し得る。例えば、2つの対向する縁部の各々に1つの光源が提供されている場合、2つの光源の間の中央に最も高い配置密度を提供することが有利であろう。
【0040】
第2の態様の一実施形態によれば、光源は、少なくとも部分的に光ガイドの縁部に適用されている。特に、光源は、(少なくとも部分的に)光ガイドの縁部から離れていない。例えば、光源(例えば、発光ダイオード)は、材料の縁部に確実に接続されている。特に、これは、光が入力結合されるときの損失を低減し得る。代替的に、光源を縁部から距離を置いて(例えば、空隙を用いて)位置決めすることもできる。これは、目標とする光の屈折によってより高い入力結合効率を達成するために有利であり得る。
【0041】
第2の態様の一実施形態に従って、採光デバイスは、光ガイドの第1の縁部に配置された、光ガイドの第1の縁部を介して光を入力結合するための第1の光源と、光ガイドの第2の縁部に配置された、光ガイドの第2の縁部を介して光を入力結合するための第2の光源とを備える。
【0042】
異なる縁部への第1の光源および第2の光源の提供は、採光デバイスによる柔軟な室内採光を可能にする。例えば、第1の光源は、(例えば、光源の明るさおよび/または色温度に関して)第2の光源とは異なる放射特徴を有する。例えば、光ガイドの上部縁部に配置された光源は、5000K~6500K(冷白)または3000K~4000K(暖白)の色温度範囲、および高い照度(例えば、1000lx)を有する光を(例えば、テーブル採光のために)斜め下向きに放射し得る。代替的にまたは追加として、明るく冷たい光(5000K~6500K)は、光ガイドの下部縁部に配置された光源によって、(例えば、室内採光のために)斜め上向きに放出され得る。
【0043】
採光デバイスの適合性および柔軟性をさらに改善するために、採光デバイスは、好ましくは、光ガイドの第3の縁部に配置された、光ガイドの第3の縁部を介して光を入力結合するための第3の光源を有する。さらに、採光デバイスは、光ガイドの第4の縁部に配置された、光ガイドの第4の縁部を介して光を入力結合するための第4の光源を含み得る。これにより、例えば、窓の中またはその一部として使用される、とりわけ、矩形の光ガイドを用いて、採光の高い柔軟性を可能にする。
【0044】
本発明の第3の態様によれば、室内形成用構造要素、特に、窓、仕切り、欄干もしくは天井要素、または室内ランプのための、第1の態様による光偏向デバイスあるいは第2の態様による採光デバイスの使用も記載されている。
【0045】
かかる用途は概して経済的な設置と共に高いレベルの耐久性を必要とし、かつ採光の高い効率及び適合性も期待されるため、記載される光偏向デバイスおよび記載される採光デバイスは、記載される構造要素もしくは室内採光器具での使用に、または記載される構造要素もしくは室内採光器具として好適であることが示されている。
【0046】
複層断熱ガラス(MIG)(独:Mehrscheibenisolierglas,英:multiple-pane insulation glass)は、窓として特に好適である。そのうえ、光ガイドは、例えば、複層断熱ガラスの板ガラスのうちの1つであり得るか、または複層断熱ガラスの中間空間内に配置され得る。採光デバイスを窓の前に(例えば、内側から)、または窓の後ろに(例えば、外側から)設置することもできる。この点において、被覆層は、外側保護層としての役割を果たし得る。
【0047】
この説明の中で先に記載される本発明の例示的な実施形態も互いにあらゆる組み合わせで開示されているように理解されるべきである。特に、様々な態様に関する例示的な実施形態が開示されていると考えられるべきである。
【0048】
本発明のさらなる有利な例示的な実施形態を、特に、図面と組み合わせて、本発明のいくつかの例示的な実施形態の以下の詳細な説明から引き出すことができる。しかしながら、図面は、説明目的でのみ使用されることを意図するものであり、本発明の保護範囲を定義することを意図するものではない。図面は、縮尺どおりではなく、単に、例示的な形態で本発明の一般概念を反映することを意図するものである。特に、図面に含まれる特徴は、決して本発明の必要な要素として考慮されるべきではない。
【0049】
以下が図面に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明による光偏向デバイスの一実施形態を含む、本発明による採光デバイスの一実施形態の断面図である。
図2】本発明による光偏向デバイスの代替の実施形態の断面図である。
図3a-d】光ガイドへの異なる光結合を図示する異なる実施形態の断面図である。
図3e-h】光ガイドへの異なる光結合を図示する異なる実施形態の断面図である。
図4】本発明による微細構造の一実施形態の拡大断面図である。
図5図1による例示的な採光デバイスの一実施形態の斜視図である。
図6図1による例示的な採光デバイスの例示的な使用の図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
最初に、図1aは、本発明による光偏向デバイス2の一実施形態を含む、本発明による採光デバイス1の一実施形態の断面図を示す。光偏向デバイス2は、平坦で透明な光ガイド4と、光ガイド4の少なくとも一部に適用された透明な被覆層6とを備える。光ガイド4を、例えば、ガラスまたは透明なプラスチックから作製することができる。被覆層6もまた、例えば、ガラスまたは透明なプラスチックから作製することができる。採光デバイス1もまた、少なくとも1つの発光ダイオード10を含む光源8を有する。光源8は、光ガイド4の縁部14を介して光を入力結合するために、ホルダ12によって光ガイド4の縁部14に配置されている。光がホルダ12の面積内で出力結合されるのを防止するか、または出力結合された光が再び入力結合されることを確実にするために、ホルダ12の面積内にミラーリング16が提供されている。発光ダイオード10から光ガイド4に入力結合された光ビーム18の例示的なコースが一回、完全に反射され、次いで、被覆層6を介して出力結合されることも示されている。
【0052】
図1bは、図1aによる別個の被覆層6の面積の拡大断面図を示す。光ガイド4と、出力結合層としての役割を果たす被覆層6との間に微細構造が形成されている。この目的のために、被覆層6は、光ガイド4に面する表面上に、光ガイド4に結合された光を出力結合するための微細構造20を有する。微細構造20とは反対側の被覆層6の表面は、本質的に平坦である。被覆層6がフィルムとして設計されている場合、それを容易に輸送し、光ガイド4に適用することができる。被覆層6は、光ガイド4に接合、例えば、それに積層またはのり付けされている。
【0053】
微細構造20は、多数の構造要素20aを有し、構造要素20aは、特に、本質的に環状円筒形の隆起部として設計されている。隆起部20aの環状交差面の面積内で、被覆層6は光ガイド4の上に静止しているか、またはそれに接続されている。また、図1bに示されているのは、構造要素20aのうちの1つのために出力結合された例示的な光ビーム18である。この場合、微細構造20の構造要素20aは、本質的に一定の配置密度を呈する。しかしながら、微細構造20の構造要素20aは、少なくとも一部の面積において、光源8からの距離が増加するにつれて本質的に増加する配置密度を有し得る、すなわち、構造要素間の距離は、光源8からの距離が増加するにつれて小さくなることも考えられる。微細構造20は、微細構造20とは反対側の被覆層6の平坦な表面だけが環境に露出されるため、汚染または損傷のいかなるリスクにも露出されない。
【0054】
図2aは、本発明による光偏向デバイス2’の代替の実施形態の断面図を示すが、これは、光偏向デバイス2と同じ方法で使用および設計され得る。光偏向デバイス2’内の微細構造は、光ガイドに面する表面上に微細構造を有する被覆層によってではなく、光ガイド4’によって提供されている。
【0055】
光偏向デバイス2’の場合、隆起部20a’を有する微細構造20’は、光ガイド4’の表面によって提供される。微細構造を保護するために、環状交差面上に静止している別個の被覆層6が提供されている。
【0056】
図3は、光ガイドへの異なる光入力結合を図示する異なる実施形態の断面図を示す。
【0057】
図3aでは、最初に光ガイド4の縁部14が示され、光源8の発光ダイオード10は、縁部14から距離を置いている。例として示される光線は、光の一部が入力結合されているが、光の一部がまた望まないように反射されていることを図示している。
【0058】
図3bは、発光ダイオード10を有する光源8が少なくとも部分的に光ガイド4の縁部14上に直接装着されている一実施形態を示す。これにより、不要な反射を防止する。完全に反射されていない光は、例えば、図1aに示されるミラーリング16よって光ガイド4内に反射し返され得る。
【0059】
図3cは、縁部14上に配置されたモスアイ構造24aの形態の光ガイド4の縁部14の表面改質を示し、図3dは、縁部14上に配置された回折格子24bの形態の光ガイド4の縁部14の表面改質を示す。これにより、特に、不要な反射を防止または低減することができる。
【0060】
図3eは、光ガイド4の縁部14の凸状形状24cを示し、図3fは、円筒形レンズ配列24dとして形状決めされた縁部14を示す。図3eは、光ガイド4の縁部14のプリズム形成24eを示し、図3fは、プリズム配列24fとして形成された縁部14を示す。これにより、特に、光ガイドにおける入力結合された光の全反射の臨界角の超過を防止または低減することができる。
【0061】
図4は、図1または図2の実施形態で使用され得るような、本発明による微細構造の一実施形態の拡大断面図を示す。図4は、光ガイドに入力結合された光が微細構造20の環状円筒形構造要素20aからどのように出力結合されるかを図示している。この場合、微細構造20は、光ガイドの表面によって提供されている。しかしながら、本例を、図1bによる被覆層6を有する光偏向デバイス2に転換することもできる。一例として示される光ビーム18は、この例では臨界角αで最初に完全に反射される。次いで、光ビームは、微細構造の環状円筒形構造要素20aを通って伝播する。高さh、断面対角線c、および環状交差面によって形成された三角形の角度βは、構造要素20aの高さhおよび断面対角線cによって囲まれた、光ガイド内の全反射の臨界角α以下である。全反射および制御されない出力結合をもたらすであろう環状交差面への光ビームの衝突が回避される。この場合、光ビーム18は、断面対角線に沿って延び、次いで、出力結合される。
【0062】
図5は、例示的な採光デバイス1の一実施形態の斜視図を示す。見られるように、この場合、採光デバイス1は、光偏向デバイス2に加えて、合計4つの光源8a、8b、8c、8dを有する。光ガイド4の4つの縁部14a、14b、14c、14dの各々には、光ガイドのそれぞれの縁部を通って光を入力結合するための光源8a、8b、8c、8dが配置されている。これにより、光が光ガイドに対してある角度で4つの方向28a、28b、28c、および28dに互いに独立して出力結合されることを可能にする。したがって、採光デバイス1は、採光を提供することができ、同時にユーザ30は、採光デバイス1の光偏向デバイス2を通して見ることができる。
【0063】
最後に、図6は、例示的な採光デバイス1の例示的な使用の説明図を示す。採光デバイス1は、空間形成用構成要素、この場合は窓のために使用されている。採光デバイス1は、部屋34の窓32の上部部分に提供されている。採光デバイス1は、窓32の一部であり得るか、またはフレームによって窓32の前に配設され得る。採光デバイス1は、光ガイドの上部縁部に配置された光源を通って、暖白色の温度および高い照度(例えば、1000lx)を有する光を斜め下向きに放射する。加えて、光ガイドの下部縁部に配置された光源は、明るく冷たい光を斜め上向きに放出し得る。
図1
図2
図3a-d】
図3e-h】
図4
図5
図6