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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/22 20180101AFI20220322BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220322BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20220322BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
C09J7/22
C09J7/38
C09J133/14
C09J11/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019519853
(86)(22)【出願日】2017-05-23
(86)【国際出願番号】 JP2017019249
(87)【国際公開番号】W WO2018216114
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2019-11-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145079
【氏名又は名称】株式会社寺岡製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106138
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 政幸
(74)【代理人】
【識別番号】100181607
【弁理士】
【氏名又は名称】三原 史子
(72)【発明者】
【氏名】枝廣 隆志
【審査官】越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/133167(WO,A1)
【文献】特開2012-226992(JP,A)
【文献】国際公開第2014/069356(WO,A1)
【文献】特開2015-196832(JP,A)
【文献】特開2013-140765(JP,A)
【文献】特開2017-008189(JP,A)
【文献】特開2013-064086(JP,A)
【文献】特開2012-072362(JP,A)
【文献】特開2017-052835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の一方の面に設けられた粘着剤層を有する電池用粘着テープであって、基材の厚さが2~12μmであり、粘着剤層の厚さが0.1~5μmであり、粘着テープの厚さが17μm以下であり、粘着テープのJIS Z 0237:2000に準じた粘着力が0.50N/10mm以上であり、粘着テープの下記式で算出される部材反発強度が70MPa・mm以下であり、
前記粘着剤層が、炭素原子数が4~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A1)、カルボキシル基含有モノマー(A2)及び水酸基含有モノマー(A3)を構成成分として含むヒドロキシル基及びカルボキシル基を有するアクリル系重合体(A)、並びに、イソシアネート系架橋剤を含むことを特徴とする粘着テープ。
部材反発強度(MPa・mm)=粘着テープの引張弾性率(MPa)×粘着テープの厚さ(mm)
【請求項2】
基材が、プラスチックフィルムである請求項1記載の粘着テープ。
【請求項3】
幅方向の片端又は両端に粘着剤層が無い非粘着剤部分を有する請求項1記載の粘着テープ。
【請求項4】
以下の方法で測定される加熱寸法変化率が90%以上である請求項1記載の粘着テープ。
(加熱寸法変化率)
10mm×100mmのサイズの粘着テープをアルミ板に貼り付け圧着して得た試験片を120℃の乾燥機に2時間放置し、次いで室温で1時間以上放置し、MD(長さ)方向の寸法を測定し、以下の式により加熱寸法変化率を算出する。
加熱寸法変化率(%)=加熱後のMD方向寸法÷加熱前のMD方向寸法×100(%)
【請求項5】
基材の厚さが3.5~15μmである請求項1記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着テープに関し、より詳しくは薄型化された粘着テープであって、小型化が要求される様々な製品(例えば電池)に使用することによりその製品の小型化に貢献できる粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉛蓄電池、ニカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の二次電池には、コア止め、電極取り出し口の絶縁、端末止め、絶縁スペーサー等の様々な目的で粘着テープが使用されている。二次電池は、例えば、粘着テープによる素子止め後、電極群を電池ケースに挿入し、電解液を封入することにより製造される。
【0003】
特許文献1には、厚さ30~300μmのポリプロピレンフィルム基材上に、ポリイソブチレンゴム及び/又はブチルゴムからなるゴム成分と飽和炭化水素樹脂を主成分とする乾燥時厚さ10~50μmの粘着剤層を有する二次電池用粘着テープが記載されている。そしてこの粘着テープは、電解液に対して安定であり、長期間にわたって電池の出力を高水準に維持できると説明されている。
【0004】
特許文献2には、基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有し、特定の厚み変化率及び特定の粘着力を示す電池用粘着テープが記載され、その基材の厚さは8~100μm、粘着剤層の厚さは2~100μmであることが記載されている。そしてこの粘着テープは、電解液特性の低下を引き起こすことがなく、圧迫による正・負極活物質及びセパレータの破壊や集電体と活物質の密着性低下を引き起こすこともなく、さらに電池ケース内への電極の詰め込み適性を改善できると説明されている。
【0005】
特許文献3には、基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有し、特定の突き刺し耐性及び特定の加熱収縮率を示す極板保護用粘着テープが記載され、その基材の厚さは8~100μm、粘着剤層の厚さは2~20μmであることが記載されている。そしてこの粘着テープは、バリが接触しても破れることがなく、高温下においても極板から剥離せず短絡防止効果を維持できると説明されている。
【0006】
特許文献4には、基材の少なくとも一方の面に両側端縁部から0.5mm以上内側に積層された粘着剤層を有し、特定の粘着力及び特定のズレ距離を示す電池用粘着テープが記載され、その基材の厚さは8~100μm、粘着剤層の厚さは1~45μmであることが記載されている。そしてこの粘着テープは、基材から糊がはみ出すことにより引き起こされる電解液の劣化を抑制できると説明されている。
【0007】
特許文献5には、基材の少なくとも一方の面に特定のアクリル系粘着剤層を有する粘着テープが記載され、その基材の厚さは8~100μm、粘着剤層の厚さは1~45μmであることが記載されている。そしてこの粘着テープは、常温で電池構成部材に容易に貼着でき、非水系電池内部において優れた接着性を保持できると説明されている。
【0008】
特許文献6には、プラスチック系基材の少なくとも一方の面に厚さ1~15μmのアクリル系粘着剤層を有し、特定のゲル分率及び特定の吸水率を示す電気化学デバイス用粘着テープが記載され、その基材の厚さは8~100μmであることが記載されている。そしてこの粘着テープは、水分の含有量が極めて低く、糊はみ出しが生じ難く、電解液に接触しても剥がれることがないと説明されている。
【0009】
ところで近年、ドローンに代表される無人航空機やウェアラブル端末に代表される端末等の機器の小型化に伴い、電池の小型化が進み、電極群の表面や電池ケース内部のスペースも小さくなって来ている。したがって、電池に用いられる粘着テープにも安全性を維持しつつも薄型化が求められる。
【0010】
しかしながら、以上の特許文献1~6では、薄型化された粘着テープに生じる特有の問題は解決されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開平9-165557号公報
【文献】特開2013-140765号公報
【文献】特開2012-072362号公報
【文献】特開2013-064086号公報
【文献】国際公開第2013/133167号
【文献】特開2012-226992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らの知見によれば、薄型化された粘着テープは、例えば電池の電極板保護や電極群端末止めの目的で貼り付けられた場合、その貼り付け面に対して固定状態を十分に維持できずに、剥がれてしまうことがある。そして粘着テープが剥がれてしまうと、絶縁性を維持できず電池の安全性が低下する恐れがある。また、粘着テープを貼り付けた電極群はその後重ねたり、巻いたり、折り曲げたりするので、粘着テープの腰(剛性)が強過ぎると反発力により剥がれてしまう恐れもある。
【0013】
以上のとおり、本発明者らは薄型化された粘着テープに生じる特有の問題として、特に、部材に貼り付けられた粘着テープがその貼り付け面に対して十分固定された状態を維持する性能(部材固定性)と、粘着テープを貼り付けた部材を変形させた場合であっても粘着テープがその変形に柔軟に追従する性能(部材追従性)とのバランスの問題に着目した。すなわち本発明の目的は、部材固定性と部材追従性のバランスに優れる薄型の粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、基材及び粘着剤層の厚さを適切な範囲内で設定し、しかも粘着テープの粘着力及び部材反発強度を適切な範囲に調整すると、粘着テープを薄型化しても以上の各問題が生じにくいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち本発明は、基材と、該基材の一方の面に設けられた粘着剤層を有する電池用粘着テープであって、基材の厚さが2~15μmであり、粘着剤層の厚さが0.1~10μmであり、粘着テープの厚さが21μm以下であり、粘着テープのJIS Z 0237:2000に準じた粘着力が0.50N/10mm以上であり、粘着テープの下記式で算出される部材反発強度が70MPa・mm以下であることを特徴とする粘着テープである。
部材反発強度(MPa・mm)=粘着テープの引張弾性率(MPa)×粘着テープの厚さ(mm)
【発明の効果】
【0016】
本発明の粘着テープはその厚さが薄いので、小型化が要求される様々な製品(例えば電池)の小型化に貢献できる。しかも本発明においては、基材及び粘着剤層の厚さを適切な範囲内で設定し、しかも粘着テープの粘着力及び部材反発強度を適切な範囲に調整することによって、部材固定性と部材追従性のバランスを向上できる。したがって本発明の粘着テープは、両特性が要求される様々な製品(例えば電池)に対して非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[基材]
本発明の粘着テープの基材の厚さは2~25μmであり、好ましくは3.5~20μm、より好ましくは4~15μm、特に好ましくは6~12μmである。基材の厚さをこのように薄くすることにより、粘着テープの薄膜化が可能になる。しかも、粘着テープの部材反発強度を比較的低いレベルに調整できるので、部材追従性も向上する。
【0018】
基材の種類は特に限定されず、粘着テープに使用できることが知られる各種の基材を使用できる。特に、プラスチックフィルムが好ましい。具体例としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルムが挙げられる。中でも、ポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリイミドフィルムが好ましく、特に電池用途に適した耐熱性や耐薬品性を有する点から、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリイミドフィルムがより好ましい。基材には、必要に応じてコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、アンカー剤処理等の処理を施しても良い。
【0019】
たとえ同じ厚さの基材であっても、基材の材料が異なれば基材の腰(剛性)も異なる。したがって、基材の好ましい厚さは、材料の種類毎に若干異なっている。例えば、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム及びポリフェニレンサルファイドフィルムの好ましい厚さは2~25μmであり、ポリイミドフィルムの好ましい厚さは2~12μmである。
【0020】
[粘着剤層]
本発明の粘着テープの粘着剤層の厚さは0.1~10μmであり、好ましくは0.2~8μmであり、より好ましくは0.5~6μmである。粘着剤層の厚さをこのように薄くすることにより、粘着テープの薄膜化が可能になる。また本発明の粘着テープは、粘着剤層がこのように薄くても十分な粘着力(後に詳述する)を有するので、部材固定性における問題が生じにくい。
【0021】
粘着剤層を構成する粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤を使用できる。これらは二種以上を混合して使用してもよい。
【0022】
ゴム系粘着剤の種類は特に限定されず、ゴム成分を主成分とする各種の公知のゴム系粘着剤を使用できる。ゴム成分の具体例としては、ブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、イソプレンゴム、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体等の合成ゴム;及び、天然ゴムが挙げられる。二種以上のゴム成分を併用しても良い。特に耐熱性、耐薬品性、耐候性、絶縁性等の特性の点から、合成ゴムが好ましく、ブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、又はそれらの混合物がより好ましい。ブチルゴムとは、一般にイソブチレンと1~3質量%のイソプレンとの共重合体を主成分とするゴムである。
【0023】
粘着剤層にゴム系粘着剤を用いる場合、粘着剤層を構成する粘着剤組成物は、ゴム系粘着剤と共に飽和炭化水素樹脂を含むことが好ましい。飽和炭化水素樹脂は、不飽和結合を持たない炭化水素樹脂であり、粘着剤層の粘着性を向上する為の成分である。飽和炭化水素樹脂は飽和炭化水素のみで構成される樹脂なので、粘着テープを例えば二次電池内の電解液に浸漬される箇所又は電解液に接触する可能性のある箇所に使用した場合、充電・放電を繰り返す際の高電圧・高エネルギー下にあっても分解反応を生じ難く、優れた安定性を有する。
【0024】
飽和炭化水素樹脂の種類は特に限定されず、例えば、粘着付与剤として知られる各種の脂環族系又は脂肪族系の飽和炭化水素樹脂を使用できる。二種以上の飽和炭化水素樹脂を併用しても良い。特に、脂環族系の飽和炭化水素樹脂が好ましく、水素添加処理により不飽和結合を無くした炭化水素樹脂がより好ましい。飽和炭化水素樹脂の市販品として、水添石油樹脂がある。水添石油樹脂とは、石油樹脂(例えば芳香族系石油樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系成分と芳香族成分との共重合石油樹脂等)を水素添加処理することにより得られる樹脂である。中でも、芳香族系石油樹脂を水素添加処理して得られる水添石油樹脂(脂環族系の飽和炭化水素樹脂)が好ましい。好ましい水添石油樹脂は、市販品(例えば荒川化学工業(株)製、アルコン(登録商標)P-100)として入手可能である。飽和炭化水素樹脂の含有量は、粘着剤成分100質量部に対して好ましくは0.01~100質量部、より好ましくは0.01~80質量部、特に好ましくは0.01~50質量部である。飽和炭化水素樹脂の含有量が多ければ粘着性がより向上する。
【0025】
アクリル系粘着剤の種類は特に限定されず、アクリル系共重合体を主成分とする各種の公知のアクリル系粘着剤を使用できる。アクリル系共重合体としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシル基含有モノマー及び必要に応じてその他のモノマーを共重合して得られるアクリル系共重合体を使用できる。(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートが挙げられる。カルボキシル基含有モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、2-カルボキシ-1-ブテン、2-カルボキシ-1-ペンテン、2-カルボキシ-1-ヘキセン、2-カルボキシ-1-ヘプテンが挙げられる。その他のモノマーの具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー、アクリロニトリル、スチレン、2-メチロールエチルアクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロイルモルフォリンが挙げられる。
【0026】
アクリル系共重合体としては、特に、炭素原子数が4~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A1)、カルボキシル基含有モノマー(A2)、水酸基含有モノマー(A3)及び必要に応じてその他のモノマーを構成成分として含む、ヒドロキシル基及びカルボキシル基を有するアクリル系重合体(A)が好ましい。
【0027】
炭素原子数が4~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A1)の具体例としては、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A1)の含有量は、アクリル系共重合体(A)の構成成分(単量体単位)100質量%中、好ましくは85質量%以上、より好ましくは87.5質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0028】
カルボキシル基含有モノマー(A2)の具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、2-カルボキシ-1-ブテン、2-カルボキシ-1-ペンテン、2-カルボキシ-1-ヘキセン、2-カルボキシ-1-ヘプテンが挙げられる。カルボキシル基含有モノマー(A2)の含有量は、アクリル系共重合体(A)の構成成分(単量体単位)100質量%中、好ましくは0.5~10質量%、より好ましくは1~7質量%、特に好ましくは1~5質量%である。
【0029】
水酸基含有モノマー(A3)の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。水酸基含有モノマー(A3)の含有量は、アクリル系共重合体(A)の構成成分(単量体単位)100質量%中、好ましくは0.05~10質量%、より好ましくは0.07~7質量%、特に好ましくは0.1~5質量%である。
【0030】
その他のモノマーとしては、酢酸ビニル、アクリロイルモルフォリンが好ましい。酢酸ビニルの含有量は、アクリル系共重合体(A)の構成成分(単量体単位)100質量%中、好ましくは0.1~10質量%である。アクリロイルモルフォリンの含有量は、アクリル系共重合体(A)の構成成分(単量体単位)100質量%中、好ましくは0.1~10質量%である。さらに、その他のモノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート等の炭素原子数が1~3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A4)を用いても良い。
【0031】
アクリル系共重合体(A)は、以上例示した各モノマー以外のモノマーを構成成分として含んでいても良い。
【0032】
アクリル系粘着剤には、アクリル系共重合体の官能基との反応性を有する架橋剤を用いるのが一般的である。架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、酸無水物、アミン化合物、エポキシ化合物、金属キレート類、アジリジン化合物、メラミン化合物を使用できる。架橋剤の添加量は、アクリル系共重合体100質量部に対し、通常0.01~5質量部、好ましくは0.05~3質量部である。
【0033】
アクリル系粘着剤には、必要に応じてロジン系、テルペン系、石油系、クマロン・インデン系、ピュアモノマー系、フェノール系、キシレン系等の粘着付与剤樹脂;パラフィン系プロセスオイル等の鉱油、ポリエステル系可塑剤、植物性油等を含む軟化剤や、芳香族第二級アミン系、モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系、ベンイミダゾール系、亜燐酸系等の老化防止剤を添加してもよい。また、先に述べた飽和炭化水素樹脂を配合しても良い。
【0034】
シリコーン系粘着剤の種類は特に限定されず、シリコーン成分を主成分とする各種の公知のシリコーン系粘着剤を使用できる。シリコーン成分としては、例えば、オルガノポリシロキサンを主成分とするシリコーンゴム及びシリコーンレジンが挙げられる。このようなシリコーン成分に白金触媒等の触媒、シロキサン系架橋剤、過酸化物系架橋剤等の架橋剤を添加して架橋・重合すれば良い。また、先に述べた飽和炭化水素樹脂を配合しても良い。
【0035】
以上説明した各粘着剤は、必要に応じてさらに他の成分を含んでいても良い。具体例としては、トルエン等の溶剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤等の添加剤;カーボンブラック、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン等の充填剤又は顔料が挙げられる。
【0036】
粘着剤層は、例えば、基材上に粘着剤を塗布し、加熱により架橋反応を生じさせることにより形成できる。基材と粘着剤層との間に下塗剤層を設けても良い。下塗剤としては、例えば、酸変性により極性基が導入された重合体及び/又は酸成分を含む下塗剤を使用できる。具体例としては、カルボキシル基含有単量体(例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸モノメチルエステル等の不飽和ジカルボン酸モノエステル)、若しくは、酸無水物基含有単量体(例えば、無水マレイン酸)を用いたグラフト変性により極性基が導入された重合体が挙げられる。変性される重合体の種類は特に限定されないが、特にポリプロピレン系重合体、ポリエチレン系重合体等のポリオレフィン系重合体が好ましい。下塗剤層に用いる酸成分の具体例としては、有機スルホン酸、カルボン酸等の有機酸;硫酸、塩酸、リン酸等の無機酸が挙げられる。中でも、酸変性ポリオレフィン系重合体が好ましく、酸変性ポリプロピレン系重合体がより好ましい。下塗剤層の厚さは、好ましくは0.01~3μm、より好ましくは0.1~2μm、特に好ましくは0.2~1μmである。
【0037】
本発明の粘着テープの基材の一面(粘着剤層が設けられた面とは反対側の面)には、離型剤が塗布されていても良い。離型剤の種類は特に限定されず、公知の各種離型剤を使用できる。離型剤の具体例としては、長鎖アルキル系、シリコーン系離型剤が挙げられる。
【0038】
[粘着テープ]
本発明の粘着テープは、基材と、基材の一方の面に設けられた粘着剤層を有する。粘着テープの厚さは30μm以下であり、好ましくは2.1~30μm、より好ましくは3.0~25μm、特に好ましくは3.5~20μmである。粘着テープの厚さをこのように薄くすることにより、小型化が要求される様々な製品(例えば電池)の小型化に貢献できる。
【0039】
粘着テープのJIS Z 0237:2000に準じた粘着力は0.50N/10mm以上であり、好ましくは0.70~3.00N/10mm、より好ましくは0.90~2.00N/10mmである。本発明の粘着テープは、粘着剤層が薄くてもこのような十分な粘着力を有するので、部材固定性における問題が生じにくい。ゴム系粘着剤組成物により粘着剤層を形成する場合は、例えばゴム成分の種類、飽和炭化水素樹脂の種類、その他の配合成分の種類、及びこれら各成分の配合比により粘着力を調整できる。アクリル系粘着剤により粘着剤層を形成する場合は、例えばアクリル系共重合体の種類、架橋剤の種類、その他の配合成分の種類、及びこれら各成分の配合比により粘着力を調整できる。シリコーン系粘着剤により粘着剤層を形成する場合は、例えばシリコーンゴムの種類、シリコーンレジンの種類、触媒の種類、架橋剤の種類、その他の配合成分の種類、及びこれら各成分の配合比により粘着力を調整できる。
【0040】
粘着テープの下記式で算出される部材反発強度は70MPa・mm以下であり、好ましくは5~65MPa・mm、より好ましくは10~60MPa・mm、特に好ましくは15~50MPa・mmである。粘着テープの部材反発強度をこのように比較的低いレベルに調整することにより、部材追従性が向上する。
部材反発強度(MPa・mm)=粘着テープの引張弾性率(MPa)×粘着テープの厚さ(mm)
【0041】
上記式中、粘着テープの引張弾性率はJIS K 7161:2014に準じて測定する。その具体的な測定方法は、実施例の欄で詳述する。引張弾性率が比較的低くかつ比較的薄い基材を用いることにより、粘着テープの腰(剛性)が弱くなり、部材追従性が向上する傾向にある。
【0042】
粘着テープは、幅方向の片端又は両端に粘着剤層が無い非粘着剤部分を有する、いわゆるドライエッジタイプの粘着テープであっても良い。非粘着剤部分とは、基材上に粘着剤層が形成されていない部分である。この非粘着剤部分が設けられていると粘着剤のはみ出しが発生しにくいので、例えば電池用途に非常に適した粘着テープになる。また、この部分が粘着テープを剥がす際の掴み代となるので剥がし易くなる。非粘着剤部分の幅の長さは、基材の端部から好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1.0mm以上、特に好ましくは2.5mm以上である。
【0043】
粘着テープの粘着剤層は、粘着剤が存在する粘着剤部分と粘着剤が存在しない非粘着剤部分とが混在してなる層であっても良い。粘着剤部分と非粘着剤部分が混在するパターンは特に制限されないが、粘着剤部分が島状又は筋状であることが好ましい。ただし、粘着剤部分は規則正しく配列したパターンに限定されず、ランダムに混在させたものでも構わない。島状としては、例えば四角状、三角状、多角形状が挙げられるが、四角状が粘着剤部分の面積を一番効率的に確保でき、かつ筋状の粘着剤部分と比較して縦横の等方性の点からも好ましい。筋状の形状は直線的に配列されるものに限定されず、例えば波線状でも折れ線状でも良い。粘着剤層に粘着剤部分と非粘着剤部分が混在する場合、粘着剤部分の面積の割合は好ましくは40~95%であり、より好ましくは50~95%である。
【0044】
粘着テープは、加熱による寸法変化が小さい方が好ましい。加熱による寸法変化が小さいと、例えば充電と放電を繰り返すことで高温になる電池内部など、高温になる場合がある箇所に使用されても粘着テープが剥がれず、絶縁性を維持できる傾向にある。例えば、以下の方法で測定される加熱寸法変化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上である。
(加熱寸法変化率)
10mm×100mmのサイズの粘着テープをアルミ板に貼り付け圧着して得た試験片を120℃の乾燥機に2時間放置し、次いで室温で1時間以上放置し、MD(長さ)方向の寸法を測定し、以下の式により加熱寸法変化率を算出する。
加熱寸法変化率(%)=加熱後のMD方向寸法÷加熱前のMD方向寸法×100(%)
【0045】
本発明の粘着テープの製造方法は特に限定されない。アクリル系粘着剤を用いる場合は、例えば、まず基材の片面に粘着剤を塗布し、乾燥等の工程における加熱によって溶剤を除去して粘着剤層を形成する。さらに必要に応じて粘着剤層の上に、例えば剥離剤を塗布したPETフィルム等からなる離型フィルムを貼り合せても良い。
【0046】
粘着剤の塗布法は特に限定されず、例えば、ロールコーター、ダイコーター、リップコーター、マイヤーバーコーター、グラビアコーター等を用いる方法を使用できる。粘着剤の乾燥法も特に限定されず、例えば熱風乾燥法を使用できる。
【実施例
【0047】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0048】
<アクリル系粘着剤組成物の製造例>
表1に示す割合(質量%)を構成成分として含むアクリル系重合体100質量部に、表1に示す量(質量部)の架橋剤を添加して、アクリル系粘着剤組成物Aa~Adを得た。
【0049】
【表1】
【0050】
表1中の略称は、以下の通りである。
「コロネートL」:イソシアネート系架橋剤(東ソー(株)製、コロネート(登録商標)L)
「テトラッドC」:エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学(株)製、テトラッド(登録商標)C)
【0051】
<ゴム系粘着剤組成物の製造例>
ブチルゴム(エクソン化学(株)製、商品名ブチル365)100質量部及び水添石油樹脂(脂環族系の飽和炭化水素樹脂)(荒川化学工業(株)製、アルコン(登録商標)P-100)40質量部を主成分として含むゴム系粘着剤組成物Rを製造した。
【0052】
<実施例1~9及び比較例1~4>
表2及び3に示す厚さの基材の一方の面に、製造例で得た粘着剤組成物Aa~Ad及びRの何れか1つを塗布し、乾燥後の厚さが表2及び3に示す厚さになるよう粘着剤層を形成した。実施例1~3及び5~9においては、基材の一方の面の全面に粘着剤層を形成し、全面塗りタイプの粘着テープを得た。実施例4においては、基材の一方の面の両端から3.5mm内側の領域のみに粘着剤層を形成し、ドライエッジタイプの粘着テープを得た。
【0053】
実施例及び比較例で得た粘着テープの粘着力及び部材反発強度を、以下の方法により測定した。結果を表2及び3に示す。
【0054】
<粘着力>
JIS Z 0237(2000)に準じて、SUS板に対する角度180°の引き剥がし粘着力を測定した。
【0055】
<部材反発強度>
粘着テープの部材反発強度は、下記式で算出した。
部材反発強度(MPa・mm)=粘着テープの引張弾性率(MPa)×粘着テープの厚さ(mm)
【0056】
上記式中、引張弾性率は次のようにして求めた。まず粘着テープを幅(W)10mm、長さ100mmの短冊状(長辺がMD方向)に裁断し、これを試験片とした。そして、厚さを1/100ダイヤルゲージ(N=5)で測定し、5点の平均値を厚さ(t)とし、以下の式から試験片の断面積(S)を求めた。
断面積S(mm)=t×W
t:テープ厚さ(mm)
W:幅(mm)
【0057】
次に、JIS K7161 2014に準じ、市販の引張試験装置(東洋精機製作所社製、装置名ストログラフV-10C、フルスケール50N)のチャック間隔(L)を100mmに設定し、試験片の上端及び下端をチャックした。そして、引張速度300mm/分で引張り、引張荷重-変位曲線を得、この引張荷重-変位曲線の変位0.05mm及び0.25mmの引張荷重から直線式を求めた。この直線式から変位1mmの時の引張荷重Fを求め、下記式よりテープの腰の指標となる引張弾性率を求めた。
引張弾性率(MPa)=(F/S)/(x/L)
F:引張荷重=変位1mmの時の引張荷重(N)
S:断面積(m
x:変位=1(mm)
L:チャック間隔=100(mm)
【0058】
さらに、実施例及び比較例で得た粘着テープを以下の方法で評価した。結果を表2及び3に示す。
【0059】
<部材固定性>
耐水研磨紙#2000の研磨面に粘着テープを貼り付け、これを手で剥がし、以下の基準で部材固定性を評価した。
○:粘着テープは軽い力では剥がれなかった。
×:粘着テープの軽い力で容易に剥がれてしまった。
【0060】
<加熱寸法変化率>
粘着テープを10mm×100mmのサイズに切断し、アルミ板に貼り付け圧着し、これを試験片とした。この試験片を120℃の乾燥機に2時間放置し、その後室温で1時間以上放置してMD(長さ)方向の寸法を測定し、以下の式により加熱寸法変化率を算出した。
加熱寸法変化率(%)=加熱後寸法÷加熱前寸法×100
【0061】
<加熱後の収縮>
上記の加熱寸法変化率の測定後の基材を目視にて確認し、以下の基準で収縮の有無を評価した。
○:基材の状態に変化は無かった。
×:基材の上下端部(長さ100mmに切断した箇所)が部分的に溶融収縮して樹脂塊状の端部になってしまった。
【0062】
<部材追従性>
90°に折り曲げたアルミ板の外側の面に、角部を覆うようにして粘着テープを貼り付け隙間が無いように圧着し、これを試験片とした。ここで粘着テープのサイズは幅10mm、長さ100mmであり、殆どの部分(長さ99mm)は角部から一方の面、残りの端部(長さ1mm)のみを角部からもう一方の面に貼り付けた。この試験片を70℃の乾燥機に6時間放置し、その後室温で1時間以上放置した。そして目視にて、以下の基準で部材追従性を評価した。
○:アルミ板と粘着テープの間に隙間は生じなかった。
×:粘着テープの反発力により、アルミ板と粘着テープの間に隙間が生じてしまった。
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
表2及び3中の略号は、以下の通りである。
「OPP」:2軸延伸ポリプロピレンフィルム(東レ(株)製、トレファン(登録商標))
「PET」:ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、ルミラー(登録商標))
「PI」 :ポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、カプトン(登録商標))
「PPS」:ポリフェニレンサルファイドフィルム(東レ(株)製、トレリナ(登録商標))
「PE」 :低密度ポリエチレンフィルム(大倉工業(株)製、商品名PEフィルム透明)
【0066】
<評価結果>
表2及び3に示すように、実施例1~9の粘着テープはその厚さが薄く、粘着力が高く、部材反発強度が低いので、何れの評価項目も優れていた。
【0067】
一方、比較例1及び2の粘着テープはその厚さが厚過ぎ、部材反発強度が高いので、部材追従性が劣っていた。
【0068】
比較例3及び4の粘着テープは粘着力が低いので、部材固定性に劣っていた。また、比較例3の粘着テープは基材としてPE(ポリエチレンフィルム)を用いたので、加熱後に収縮してしまった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の粘着テープは厚さが薄く、部材固定性及び部材追従性にも優れるので、小型化が要求される様々な製品の部材固定の用途に有用であり、特に電池用テープとして非常に有用である。具体的には、二次電池(例えば鉛蓄電池、ニカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池)等の電池の製造工程において、コア止め、電極取り出し口の絶縁、端末止め、絶縁スペーサー等の種々の目的で使用できる。より具体的には、例えば、小型化又は薄型化した電池の電極群の表面又は電池ケース内部に使用して、絶縁性を維持することで電池の安全性を確保できる。