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特許7043526生物学的物質をガラス化するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】生物学的物質をガラス化するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20220322BHJP
   A01N 1/02 20060101ALI20220322BHJP
   A61J 3/00 20060101ALI20220322BHJP
   C12N 1/04 20060101ALI20220322BHJP
   C12N 5/073 20100101ALI20220322BHJP
   C12N 5/075 20100101ALI20220322BHJP
【FI】
C12M1/00 A
A01N1/02
A61J3/00 301
C12N1/04
C12N5/073
C12N5/075
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019571113
(86)(22)【出願日】2018-03-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 FR2018050547
(87)【国際公開番号】W WO2018162862
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2020-12-18
(31)【優先権主張番号】1751987
(32)【優先日】2017-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519327478
【氏名又は名称】イエムべ テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】エリク シュミット
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン ボー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ クレーラ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ルイ ドゥエスネル
【審査官】田村 直寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-220059(JP,A)
【文献】特開平05-285163(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0220507(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0157798(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12N 1/04
C12N 5/075
C12N 5/073
A61J 3/00
A01N 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端部(13)に開口部(14)を有し前記第1の端部(13)とは反対側の端部である第2の端部(15)の近傍で閉止されている既定の寸法の細管(8)を含む包装用ケーシング(9)内に収容され、胎芽または卵母細胞などの保存すべき生物学的材料を含む物質の極低温ガラス化用システムにおいて、前記ケーシング(9)は、このケーシング(9)に加えて、既定量の前記物質を収容し前記細管(8)の内部に挿入されて、前記既定量の前記物質が前記細管(8)の前記開口部(14)から一定の距離のところに位置設定された前記細管(8)の収容用領域(12)内に位置設定されるように構成された収容用支持体(7)を含む前記物質用の包装セットの一部を成し、
前記システム(1)は、極低温作用物質浴(11)を格納するように構成された槽(10)および前記細管(8)を既定の配向で保持するようにかつ前記槽(10)上で第1の既定の位置に組付けられるように構成された少なくとも1つの支持用部材(80)を含み、この第1の既定の位置では、前記細管(8)は前記槽(10)内で直立して配向されており、前記細管(8)の前記収容用領域(12)は、極低温作用物質が液体状態にある前記極低温作用物質浴(11)の液体ゾーン(17)内に浸漬されており、前記細管(8)の前記開口部(14)は、前記極低温作用物質浴(11)の上にある周囲空気ゾーン(82)内で前記極低温作用物質浴(11)の上方に位置設定されて、前記物質の前記収容用支持体(7)の前記細管(8)内への前記挿入を可能にしており、
前記支持用部材(80)は、前記第1の既定の位置よりも低い少なくとも1つの第2の既定の位置で前記槽(10)上に組付けられるように構成されており、この第2の既定の位置では、前記細管(8)は、前記槽(10)内で直立して配向されており、前記細管(8)の前記収容用領域(12)は前記液体ゾーン(17)内に浸漬されており、前記細管(8)の前記開口部(14)は、前記液体ゾーン(17)の直上で、前記液体ゾーン(17)の上にあって前記極低温作用物質が気体状態にある前記極低温作用物質浴(11)の気体ゾーン(18)内、そして前記極低温作用物質浴(11)の上にある前記周囲空気ゾーン(82)の下方に位置設定されており、
さらに、前記支持用部材は、前記第2の既定の位置から前記第1の既定の位置まで持ち上げられるように構成されている、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記槽(10)に対して機械的に連結された少なくとも1つのガイドレール(81)を含み、前記支持用部材は、前記第2の既定の位置から前記第1の既定の位置までおよびその逆に移行するために実質的に垂直方向で前記ガイドレール上を移動可能であるように組付けられている、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記支持用部材(80)が少なくとも1つの位置付け用突出部(93)を含み、前記ガイドレール(81)が、各々前記少なくとも1つの第1の突出部を収容するように構成されかつそれぞれが前記第1の既定の位置および前記第2の既定の位置を画定する第1の位置付け用切欠き(113)および第2の位置付け用切欠き(114)を含む、ことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記支持用部材(80)が前記ガイドレール(81)上に摺動自在に組付けられている、ことを特徴とする請求項2または3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記支持用部材(80)が少なくとも1つの案内用突出部(94)を含み、前記ガイドレール(81)が、実質的に垂直方向にかつ少なくとも部分的に前記ガイドレールに沿って延在し、前記支持用部材がその第2の既定の位置からその第1の既定の位置まで移動させられた場合に前記少なくとも1つの案内用突出部を摺動自在に収容するように構成されている少なくとも1つの案内用切欠き(109)を含むこと、を特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記支持用部材(80)が、共に前記細管(8)および前記ケーシング(9)用のハウジング(83)を画定する背面(78)および対面する側方フランジ(77)を有するU字形本体(79)を含み、このハウジングが、前記ハウジング内への挿入のために直立配向された前記管を収容するように構成された側方開口部(88)を通して前記背面とは長手方向に反対側で開放している、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記支持用部材(80)には、下端部(85)に向かって、前記細管(8)を楔留め化するための少なくとも1つの部品(91、92)と、その下端部とは反対側の端部である上端部(84)に向かって、前記細管を保持するためのフック(90)が具備されていること、を特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記支持用部材(80)は、前記細管(8)が前記支持用部材上で所定の位置に閉じ込められ、前記少なくとも1つの楔留め化用部品(91、92、92A)と前記保持用フック(90)との間で少なくとも部分的に長手方向に湾曲しているように構成されている、ことを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記槽(10)のリム(44)上に組付けられ前記液体ゾーン(17)上に位置するように延在するカバー(41)を含み、前記支持用部材(80)が前記カバー上でこのカバーを通って移動可能に組付けられている、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記カバー(41)が前記極低温作用物質浴(11)の前記気体ゾーン(18)内に位置付けされている、ことを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記槽(10)には、前記極低温作用物質浴(11)のための内部収容用空間(22)を少なくとも部分的に画定する流体密封性内部壁(26)および断熱性外部壁(25)が具備され、前記断熱性外部壁が前記槽の上面に具備された内部肩部(27)を有し、前記流体密封性内部壁が前記槽の上面上に具備され前記外部壁の前記肩部上に担持された状態で配置された外部延長部(28)を有し、前記外部延長部は、上に前記カバーが位置付けされている前記槽の前記リムを形成している、ことを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
複数の前記包装用ケーシング(9)を輸送するように構成された多区画ゴブレット(60)、前記槽(10)内に少なくとも部分的に収納され、前記複数の前記包装用ケーシング各々の前記細管の少なくとも前記収容用領域(12)が前記極低温作用物質浴(11)の前記液体ゾーン(17)内に浸漬させられるように前記多区画ゴブレットを取外し可能に収容するように構成された収容用支持体(57)を含む、ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記多区画ゴブレット(60)の前記収容用支持体(57)は、前記多区画ゴブレットが実質的に垂直方向に位置している保管位置と、前記多区画ゴブレットが傾斜し前記極低温作用物質浴(11)の前記液体ゾーン(17)内に少なくとも部分的に浸漬している充填/排出位置との間で回転可能であり、こうして、前記システム(1)は、前記極低温作用物質浴内に大部分が浸漬した状態にとどまりながら少なくとも前記支持用部材(80)から前記多区画ゴブレットまで、第1および第2の端部(13;15)の各々において閉止されている前記包装用ケーシング(9)を移行させるように構成されている、ことを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1および第2の端部(13;15)の1つにおいて前記包装用ケーシング(9)の前記細管を切断するように構成され、かつ前記多区画ゴブレット(60)の近くで前記槽(10)上に組付けられている開放用装置(64)を含む、ことを特徴とする請求項12および13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記開放用装置(64)の近くで前記槽(10)上に組付けられかつ、直立位置で前記第1および第2の端部(13;15)のうちの一方で開放している前記包装用ケーシング(9)の細管(8)を保持するように各々構成されている複数の切欠き(69)を有するラック(68)を含み、前記ラックは、前記細管の前記収容用領域(12)が前記極低温作用物質浴(11)の前記液体ゾーン(17)内に浸漬させられるように構成されている、ことを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記槽(10)内の前記極低温作用物質浴(11)の前記液体ゾーン(17)のレベルを検査するための検査装置(70)を含む、ことを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載システム。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載のシステム(1)を用いて、胎芽または卵母細胞などの保存すべき生物学的材料を含む物質をガラス化する方法において、
第1の端部(13)に開口部(14)を有し前記第1の端部とは反対側の端部である第2の端部(15)の近傍で閉止されている既定の寸法の細管(8)を有する包装用ケーシング(9)および既定量の前記物質を収容し前記細管の内部に挿入されて、前記既定量の前記物質が前記細管の前記開口部から一定の距離のところに位置設定された前記細管の収容用領域(12)内に位置設定されるように構成された収容用支持体(7)を含む前記物質用の包装セットを提供するステップと、
極低温作用物質浴(11)を格納する槽(10)を提供するステップと、
前記槽上に組付けられ前記細管を既定の配向で保持するように構成された少なくとも1つの支持用部材(80)を提供するステップと、
前記支持用部材内に前記既定の配向で前記細管を設置するステップと、
前記支持用部材を、少なくとも1つの第2の既定の位置で前記槽上に組付けるステップであって、この第2の既定の位置では、前記細管は、前記槽内で直立して配向されており、前記細管の前記収容用領域は前記極低温作用物質が液体状態である前記極低温作用物質浴の液体ゾーン(17)内に浸漬されており、前記細管の前記開口部は、前記液体ゾーンの直上で、前記液体ゾーンの上にあり前記極低温作用物質が気体状態にある前記極低温作用物質浴の気体ゾーン(18)内、そして前記極低温作用物質浴の上にある周囲空気ゾーン(82)の下方に位置設定されている、ステップと、
前記第2の既定の位置から、前記第2の既定の位置よりも高い第1の既定の位置まで前記支持用部材を持ち上げるステップであって、この第1の既定の位置では、前記細管が前記槽内で直立して配向されており、前記細管の前記収容用領域が前記極低温作用物質浴の前記液体ゾーン内に浸漬されており、前記細管の前記開口部が、前記極低温作用物質浴の上にある周囲空気ゾーン内で前記極低温作用物質浴の上方に位置設定されて、前記物質の前記収容用支持体の前記細管内への前記挿入を可能にしている、ステップと、
前記支持体上に前記物質を被着させ、前記支持体を前記細管内に挿入するステップと、
前記細管をその第1の端部で封止するステップと、
を含む、ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、胚芽または卵母細胞などの生物学的材料を含む物質の極低温ガラス化による保存に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、一定量のこのような生物学的物質が事前に導入される包装用ケーシングを液体極低温作用物質内に沈めることによるガラス化用システムに関する。
【0003】
本発明は同様に、このようなシステムを用いてこのような生物学的物質をガラス化するための方法にも関する。
【背景技術】
【0004】
液体極低温作用物質中に沈めるように構成された生物学的材料のための包装用ケーシングは、従来、ケーシングに加えて、胚芽または卵母細胞などの生物学的材料を含む一定量の物質のための収容用ゾーンを含む支持体を含む包装セットの一部を成す。
【0005】
ケーシングは、既定の内径を有する細管を含み、支持体はこの細管の中に挿入されるように構成されている。細管は、概して、溶接が容易である一方で優れた封止を提供する能力を有するポリマ材料で形成されている。細管は、第1の端部に開口部を有する一方で、反対側の端部の近傍に溶接を有する。
【0006】
第1の公知のガラス化システムは、一定量の液体窒素を格納するように構成された槽を含む。
【0007】
既定量の生物学的物質を包装するためには、予め支持体上にこの生物学的物質を被着させ、次に支持体を細管内へその開口部を介して挿入する。その後、細管の第1の端部の近傍で溶接を行なって、ケーシングを密封する。両端部で溶接されたケーシングを最後に液体窒素内に完全に沈め、すなわち浸漬させて、生物学的物質をガラス化させる。
【0008】
第2の公知のガラス化システムは、同様に一定量の液体窒素を格納するように構成されている槽および、この槽上に設置されるように構成されかつ液体窒素上に位置するべく延在する壁を含むカバーを含む。カバーは、ケーシングの管を実質的に垂直な配向で切欠き内に係合させられた状態に保つように各々が構成されている、壁内に設けられた切欠きを有する。
【0009】
この第2のシステムは、例えば米国意匠特許第D642,697S号中で例示されている。
【0010】
生物学的物質の包装は、以下の要領で実施される。すなわち、ケーシングの細管は、ガラス化すべき生物学的物質を収容するこの細管の部分が液体窒素中に浸漬させられ、一方開口部を含むこの細管の端部部分は液体窒素中に浸漬させられずカバーの上方で周囲空気中に位置設定させられるように、カバーの切欠き内に係合される。
【0011】
生物学的物質は、支持体上に被着され、この支持体は周囲空気中でその開口部を介して細管内に挿入される。次に、ケーシングを密封するように、細管の第1の端部の近傍に溶接が施される。必要な場合には、両端部で溶接されたケーシングを液体窒素中に完全に沈め、すなわち浸漬させて、生物学的物質をガラス化することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述のものと同じ種類の、ただし単純かつ使用が便利でありながらより高い性能を提供するガラス化システムを提供することに向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的で、第1の態様によると、本発明は、第1の端部に開口部を有し前記第1の端部とは反対側の端部である第2の端部の近傍で閉止されている既定の寸法の細管を含む包装用ケーシング内に収容され、胎芽または卵母細胞などの保存すべき生物学的材料を含む物質の極低温ガラス化用システムにおいて、前記ケーシングは、このケーシングに加えて、既定量の前記物質を収容し前記細管の内部に挿入されて、前記既定量の前記物質が前記細管の前記開口部から一定の距離のところに位置設定された前記細管の収容用領域内に位置設定されるように構成された収容用支持体を含む前記物質用の包装セットの一部を成し;前記システムは、極低温作用物質浴を格納するように構成された槽および前記細管を既定の配向で保持するようにかつ前記槽上で第1の既定の位置に組付けられるように構成された少なくとも1つの支持用部材を含み、この第1の既定の位置では、前記細管は前記槽内で直立して配向されており、前記細管の前記収容用領域は、前記極低温作用物質が液体状態にある前記極低温作用物質浴の液体ゾーン内に浸漬されており、前記細管の前記開口部は前記極低温作用物質浴の上にある周囲空気ゾーン内で前記極低温作用物質浴の上方に位置設定されて、前記物質の前記収容用支持体の前記細管内への挿入を可能にしており;前記支持用部材は、前記第1の既定の位置よりも低い少なくとも1つの第2の既定の位置で前記槽上に組付けられるように構成されており、この第2の既定の位置では、前記細管は、前記槽内で直立して配向されており、前記細管の前記収容用領域は前記液体ゾーン内に浸漬されており、前記細管の前記開口部は、前記液体ゾーンの直上で、前記液体ゾーンの上にあり前記極低温作用物質が気体状態にある前記極低温作用物質浴の気体ゾーン内、そして前記極低温作用物質浴の上にある前記周囲空気ゾーンの下方に位置設定されており、さらに、前記支持用部材は、前記第2の既定の位置から前記第1の既定の位置まで持ち上げられるように構成されている、ことを特徴とするシステムを提供する。
【0014】
本発明に係るガラス化用システムにおいて、支持用部材は、槽上に取外し可能に組付けられ、極低温作用物質浴との関係において槽上の2つの異なる位置にケーシングの細管を設置して、細管内に包装された物質を保存する目的で細管および細管内に包装された物質の両方の特に優れた性能の冷却を保証することを可能にしている。
【0015】
詳細には、支持用部材は、第1に、いかなる物質も有していない細管を、部分的に浴の液体ゾーン内、部分的に浴の気体ゾーン内で、細管が極低温作用物質と完全に接触する第2の既定の位置に位置付けするように構成されている。
【0016】
こうして、細管は、物質の収容ゾーンからその開口部まで、その全長にわたって冷却される。
【0017】
細管の開口部が極低温作用物質浴の気体ゾーン内に位置設定されていることによって、(少なくとも部分的に該物質専用の)細管の内部容積に液体状態の作用物質を充填しないようにすることができる。反対に、周囲空気より低温である気体状態の極低温作用物質は、周囲空気を対流によって細管から外に駆出する。
【0018】
こうして、細管は、液体状態および気体状態の極低温作用物質と細管外側面との直接的接触によってのみならず、気体状態の極低温作用物質と細管内側面との直接的接触によっても、極低温作用物質により冷却される。
【0019】
冷却反応速度が絶対値で毎分約200℃超、場合によっては毎分500℃の勾配を有する場合に物質のガラス化が存在するとみなすことができる一方で、本発明に係るガラス化システムは、例えば10℃の初期温度と-150℃の最終温度の間で、例えばおよそ毎分2000~3000℃の冷却反応速度を達成することを可能にすることができる。
【0020】
本発明に係るシステムの単純で便利かつ経済的な特徴によると:
- 前記システムは、前記槽に対して機械的に連結された少なくとも1つのガイドレールを含み、前記支持用部材は、前記第2の既定の位置から前記第1の既定の位置までおよびその逆に移行するために実質的に垂直方向で前記ガイドレール上を移動可能であるように組付けられている;
- 前記支持用部材は、少なくとも1つの位置付け用突出部を含み、前記ガイドレールは、各々前記少なくとも1つの第1の突出部を収容するように構成されかつそれぞれが前記第1の既定の位置および前記第2の既定の位置を画定する第1の位置付け用切欠きおよび第2の位置付け用切欠きを含む;
- 前記支持用部材は、前記ガイドレール上に摺動自在に組付けられている;
- 前記支持用部材は、少なくとも1つの案内用突出部を含み、前記ガイドレールは、実質的に垂直方向にかつ少なくとも部分的に前記ガイドレールに沿って延在し、前記支持用部材がその第2の既定の位置からその第1の既定の位置まで移動させられた場合に前記少なくとも1つの案内用突出部を摺動自在に収容するように構成されている少なくとも1つの案内用切欠きを含む;
- 前記支持用部材は、共に前記細管および前記ケーシング用のハウジングを画定する背面および対面する側方フランジを有するU字形本体を含み、このハウジングは、前記ハウジング内への挿入のために直立配向された前記管を収容するように構成された側方開口部を通して前記背面とは長手方向に反対側で開放している;
- 前記支持用部材には、下端部に向かって、前記細管を楔留め化(wedging)するための少なくとも1つの部品と、その下端部とは反対側の端部である上端部に向かって、前記細管を保持するためのフックが具備されている;
- 前記支持用部材は、前記細管が前記支持用部材上で所定の位置に閉じ込められ、前記少なくとも1つの楔留め化用部品と前記保持用フックとの間で少なくとも部分的に長手方向に湾曲しているように構成されている;
- 前記システムは、前記槽のリム上に組付けられ前記液体ゾーン上に位置するように延在するカバーを含み、前記支持用部材は前記カバー上でこのカバーを通って移動可能に組付けられている;
- 前記カバーは、前記極低温作用物質浴の前記気体ゾーン内に位置付けされている;
- 前記槽には、前記極低温作用物質浴のための内部収容用空間を少なくとも部分的に画定する流体密封性内部壁および断熱性外部壁が具備され、前記断熱性外部壁は前記槽の上面に具備された内部肩部を有し、前記流体密封性内部壁は前記槽の上面上に具備され前記外部壁の前記肩部上に担持された状態で配置された外部延長部を有し、前記外部延長部は上に前記カバーが位置付けされている前記槽の前記リムを形成している;
- 前記システムは、複数の前記包装用ケーシングを輸送するように構成された多区画ゴブレット、前記槽内に少なくとも部分的に収納され、前記複数の前記包装用ケーシング各々の前記細管の少なくとも前記収容用領域が前記極低温作用物質浴の前記液体ゾーン内に浸漬させられるように前記多区画ゴブレットを取外し可能に収容するように構成された収容用支持体を含む;
- 前記多区画ゴブレットの前記収容用支持体は、前記多区画ゴブレットが実質的に垂直方向に位置している保管位置と、前記多区画ゴブレットが傾斜し前記極低温作用物質浴の前記液体ゾーン内に浸漬している充填/排出(filling/emptying)位置との間で回転可能であり;こうして、前記システムは、前記極低温作用物質浴内に大部分が浸漬した状態にとどまりながら少なくとも前記支持用部材から前記多区画ゴブレットまで、第1および第2の端部の各々において閉止されている前記包装用ケーシングを移行させるように構成されている;
- 前記システムは、前記第1および第2の端部の1つにおいて前記包装用ケーシングの前記細管を切断するように構成され、かつ前記多区画ゴブレットの近くで前記槽上に組付けられている開放用装置を含む;
- 前記システムは、前記開放用装置の近くで前記槽上に組付けられかつ、直立位置で前記第1および第2の端部のうちの一方で開放している前記包装用ケーシングの細管を保持するように各々構成されている複数の切欠きを有するラックを含み、前記ラックは、前記細管の収容用領域が前記極低温作用物質浴の液体ゾーン内に浸漬させられるように構成されている;および/または、
- 前記システムは、前記槽内の前記極低温作用物質浴の前記液体ゾーンのレベル用検査装置を含む。
【0021】
第2の態様によると、本発明は同様に、特に上述のシステムを用いて、胎芽または卵母細胞などの保存すべき生物学的材料を含む物質をガラス化する方法において、
- 第1の端部に開口部を有し前記第1の端部とは反対側の端部である第2の端部の近傍で閉止されている既定の寸法の細管を有する包装用ケーシングおよび既定量の前記物質を収容し前記細管の内部に挿入されて、前記既定量の前記物質が前記細管の前記開口部から一定の距離のところに位置設定された前記細管の収容用領域内に位置設定されるように構成された収容用支持体を含む前記物質用の包装セットを提供するステップと;
- 極低温作用物質浴を格納する槽を提供するステップと;
- 前記槽上に組付けられ前記細管を保持するように構成された少なくとも1つの支持用部材を提供するステップと;
- 前記支持用部材内に既定の配向で前記細管を設置するステップと;
- 前記支持用部材を、少なくとも1つの第2の既定の位置で前記槽上に組付けるステップであって、この第2の既定の位置では、前記細管は、前記槽内で直立して配向されており、前記細管の前記収容用領域は前記極低温作用物質が液体状態である前記極低温作用物質浴の液体ゾーン内に浸漬されており、前記細管の前記開口部は、前記液体ゾーンの直上で、前記液体ゾーンの上にあり前記極低温作用物質が気体状態にある前記極低温作用物質浴の気体ゾーン内、そして前記極低温作用物質浴の上にある周囲空気ゾーンの下方に位置設定されている、ステップと;
- 前記第2の既定の位置から、前記第2の既定の位置よりも高い第1の既定の位置まで前記支持用部材を持ち上げるステップであって、この第1の既定の位置では、前記細管が前記槽内で直立して配向されており、前記細管の前記収容用領域が前記液体ゾーン内に浸漬されており、前記細管の前記開口部が、前記極低温作用物質浴の上にある周囲空気ゾーン内で前記極低温作用物質浴の上方に位置設定されて、前記物質の前記収容用支持体の前記細管内への前記挿入を可能にしている、ステップと;
- 前記支持体上に前記物質を被着させ、前記支持体を前記細管内に挿入するステップと;
- 前記細管をその第2の端部で封止するステップと;
を含む方法にも向けられている。
【0022】
本発明に係る方法の単純で便利そして経済的な特徴によると:
- 該方法はさらに、複数の前記包装用ケーシングを輸送するように構成された多区画ゴブレットを提供するステップと、前記複数の前記包装用ケーシング各々の細管の少なくとも収容用領域が前記極低温作用物質浴の前記液体ゾーン内に浸漬させられるように、前記槽内に少なくとも部分的に収納されている収容用支持体上で前記多区画ゴブレットが実質的に垂直方向に位置している保管位置に前記多区画ゴブレットを取外し可能に組付けるステップと、前記保管位置から前記多区画ゴブレットが傾斜し前記極低温作用物質浴の前記液体ゾーン内に少なくとも部分的に浸漬している充填/排出位置まで、前記支持体上で前記多区画ゴブレットを回転させるステップと、前記極低温作用物質浴内に大部分が浸漬した状態にとどまりながら少なくとも前記支持用部材から前記多区画ゴブレットまで、第1および第2の端部の各々において閉止されている前記包装用ケーシングを移行させるステップと、を含む;および/または、
- 該方法はさらに、前記多区画ゴブレットの近くで前記槽上に組付けられ、前記第1および第2の端部の一方において前記包装用ケーシングの前記細管を切断するように構成された開放用装置を提供するステップと、前記第1および第2の端部のうちの一方で前記包装用ケーシングの前記細管を切断するステップと、前記開放用装置の近くで前記槽上に組付けられかつ、直立位置で前記第1および第2の端部のうちの一方で開放している前記包装用ケーシングの細管を保持するように各々構成されている複数の切欠きを有するラックを提供するステップであって、前記細管の収容用領域が前記極低温作用物質浴の液体ゾーン内に浸漬させられるように前記ラックが構成されているステップと、前記ラックの前記切欠きの中に前記切断された細管を組付けるステップと、を含む。
【0023】
本発明の開示は、ここで添付図面を参照して、非限定的例示として以下で示す実施形態の詳細な説明をもって続行されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ガラス化すべき生物学的材料を含む物質を包装するためのケーシングを、ここでは断面図で例示する。
図2】ここではガラス化/脱ガラス化構成と呼称される第1の構成にある、図1に示された包装用ケーシング内に格納された物質をガラス化するように構成された本発明に係るガラス化用システムの概略的斜視図である。
図3】ガラス化用システムがここでは充填/排出構成と呼称される第2の構成にある、図2のものに類似する図である。
図4図2でIV-IVによって識別されている断面において、ガラス化用システムを例示する。
図5】異なる角度から見た、図2に示されたガラス化用システムの支持用部材を、分離した斜視図で概略的に表現している。
図6】異なる角度から見た、図3に示されたガラス化用システムの支持用部材を、分離した斜視図で概略的に表現している。
図7】異なる角度から見た、図4に示されたガラス化用システムの支持用部材を、分離した斜視図で概略的に表現している。
図8】ここでは長手方向断面図で、図5~7に示された支持用部材の変形実施形態を示す。
図9図2~4に例示されたガラス化用システムの上面図の概略的な部分的表現である。
図10図9中でX-Xによって識別されている断面図である。
図11図9中でXI-XIによって識別されている断面図である。
図12図9中でXII-XIIによって識別されている断面図である。
図13図9中でXIII-XIIIによって識別されている断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、極低温ガラス化によって保存すべき生物学的材料を含む物質のための包装用ケーシングおよびこのケーシング内へ挿入されるように構成された物質のための収容用支持体を含む包装セットを例示する。
【0026】
物質が含む生物学的材料は、例えば、保管および保存が望まれる胚芽または卵母細胞である。
【0027】
生物学的材料に加えて、ここでガラス化すべき物質は、凍結保護剤を含んでおり、この凍結保護剤と生物学的材料は事前に混合されている。凍結保護剤は、特に氷晶の形成を通して、極低温処理中の生物学的材料の劣化を回避することを可能にする。
【0028】
包装用ケーシングはここでは、一定量の該物質がストロー9内に導入された後、例えば液体窒素などの極低温作用物質浴中に沈められるように構成されたガラス化ストロー9である。
【0029】
液体極低温作用物質はここでは液体窒素である。
【0030】
ストロー9は、既定の寸法の細管8を含む。細管8は、特に、既定の外径、内径および長さを有する。細管8は、第1の端部13に開口部14を有し、この第1の端部13とは反対側の端部である第2の端部15の近傍に、細管8を閉止する溶接16を有する。
【0031】
ここで細管8は、例えば、その優れた機械的強度特性、低温に対するその挙動および溶解が容易である一方で優れた封止を提供するその能力のため、イオノマ樹脂から選択されたポリマ材料製である。
【0032】
収容用支持体はここでは、ガラス化すべき既定量の物質を収容するように構成された溝形部材6を形成する端部部分を有するシャンク7を含んでいる。
【0033】
シャンク7は、溝形部材6ひいては溝形部材6内に収容された一定量の物質が開口部14から一定の距離をおいて位置設定された細管8の収容用領域12内に位置設定されている既定の位置を占有する目的で、ストロー9の細管8内に挿入されるように構成されている。
【0034】
収容用領域12は、ここでは管8の第2の端部15の近くで、開口部14と溶接16の間に位置設定される。
【0035】
ストロー9全体が垂直位置で示されている図1において、開口部14はストロー9の上部部分内に位置設定され、一方収容用領域12はストロー9の下部部分内に位置設定されていることが指摘される。
【0036】
ここで、図2~13を参照しながら、このようなストロー9のガラス化および脱ガラス化を可能にするように構成されたガラス化用システムについて説明する。
【0037】
ガラス化用システム1は、浴11、すなわち一定量の極低温作用物質を格納するように構成された槽10を含む。
【0038】
ここで、槽10は、実質的に平行六面体の形状を有し、底壁19、底壁19から互いに対面して延在する2つの横断方向壁20、および互いに対面して延在し底壁19および各横断方向壁20と遭遇する2つの長手方向壁21を含む。
【0039】
底壁19、横断方向壁20および長手方向壁21は共に、窒素浴11を収容するように構成された槽10の内部空間22を画定する。
【0040】
槽10はさらに、底壁19との関係において遠隔の縁部でありかつ内部空間22を開放させる開口部23を画定する上縁部24を有する。
【0041】
窒素浴11は、窒素が液体状態にある液体ゾーン17と、液体ゾーンの上にあって窒素が気体状態にある気体ゾーン17を有する。
【0042】
液体ゾーン17および気体ゾーン18が槽10内で到達し得る上位レベルは、図4でも図10~13でも鎖線で表現されている。
【0043】
気体ゾーン18内に存在する気体窒素は、窒素の液体ゾーンの温度とは周囲温度が著しく異なっているガラス化用システム1の使用環境内で発生する液体窒素の蒸発に由来する。この周囲温度は例えば、およそ10℃~25℃であってよい。
【0044】
気体ゾーン18内では、液体窒素から発生する一定量の気体窒素は、周囲空気を駆出し、次に、気体窒素が負の温度にありしたがって周囲空気よりも重いことから、上縁部24の上を通過することにより槽10から溢れ出して槽10のベースに向かって流出する傾向を有する。
【0045】
換言すると、槽10内の気体窒素のレベル、特に気体ゾーン18の上位および下位レベルは、それぞれ上縁部24の位置と液体ゾーン17の上位レベルによって決定される。
【0046】
その上、液体窒素の蒸発のため、液体ゾーン17内に存在する窒素の量は経時的に減少する傾向を有し、そのため、液体ゾーン17の上位レベルはこの動作中槽10の内部で降下する傾向を有することになる。
【0047】
槽10には、少なくとも部分的に内部空間22を画定する液体密封性内部壁26および断熱性外部壁25が具備されている。液体密封性内部壁26はここでは、断熱性外側壁25内への挿入によって嵌合されている。
【0048】
槽10の上面で、断熱性外部壁25は内部肩部27を有し、一方液体密封性内部壁26は外部延長部分を有する。外部延長部分28はここでは、断熱性外部壁25の内部肩部27に担持されて配置されている。
【0049】
槽10の底壁19および横断方向壁20および長手方向壁21の各々は、互いに沿って延在する液体密封性内部壁26のそれぞれの部分および断熱性外部壁26のそれぞれの部分によって形成されている。
【0050】
液体密封性内部壁26は、浴11の少なくとも液体ゾーン17を収容するために提供された内部空間22の一部分を画定する。こうして、液体窒素に対する流体密封性および非常に低い温度に対する耐性を有する材料から形成されている。
【0051】
断熱性外部壁25は、槽10の底壁19および横断方向壁20および長手方向壁21を通した液体窒素と槽10の外側の環境の間の熱交換を制限するために、絶縁材料から形成される。
【0052】
こうして、槽10は、横断方向壁20内に設けられた陥凹29によって形成された2つの把持用取っ手、ならびに開口部23を閉止するために槽の上縁部24上に組付けられるように構成された取外し可能なカバー30を有する。カバー30はここでは、上縁部24から取外され長手方向壁21の1つの上に一時的に組付けられた状態で示されている。
【0053】
さらに、槽10は、横断方向壁20の1つの中に設けられ上縁部24から底壁19に向かって延在する陥凹33、ならびに横断方向壁20上に組付けられ陥凹33の内部で延在するブラケット34を有する。
【0054】
ブラケット34には、試験管、フラスコまたはピペットなどの作業工具を担持するように構成された複数のアパーチャ35が具備されている。
【0055】
ガラス化用システム1はさらに、各々槽10の上縁部24上に組外し可能に引掛けられるように構成されたストロー9用の複数の個別ラック36を含む。
【0056】
各々の個別ラック36は、ストロー9を保持するための保持部分37、および保持部分37から突出し上縁部24上に引掛るように構成されたフック38を含む。
【0057】
保持用部分37は、複数の切欠き40が内部に設けられている湾曲面を周辺に有する半円盤の形状を有する。各切欠き40は、切欠き40内に強制的に係合させられたストロー9の細管8を直立位置で保持するように構成されている。
【0058】
ガラス化用システム1はさらに、槽10のリム44上に組付けられた、ここでは金属製のカバー41を含み、このリム44はここでは液体密封性内部壁26の外部延長部分によって形成されている。
【0059】
カバー41は、中央パネル42および、この中央パネル42の外側から中央パネル42まで横断方向に延在する折返しリム43を有する矩形金属シートの形を実質的に有している。
【0060】
折返し縁部43は、断熱性外部壁25の内部肩部27に担持された外部延長部分28の末端部分45に担持される。
【0061】
カバー41の中央パネル42の大部分は、底壁19に少なくとも部分的に対面して延在し、したがって、槽が窒素浴11を格納する場合液体ゾーン17全体にわたって延在する。
【0062】
カバー41はここでは、窒素浴11の気体ゾーン18内に位置付けされている。
【0063】
同様に、カバーが槽のリム上に組付けられ、極低温作用物質浴全体にわたり、気体ゾーンの上方かつ周囲空気ゾーンの下方に延在して、実質的に極低温作用物質浴の気体ゾーンと周囲空気の間に障壁を形成すると考えることもできると思われる。
【0064】
カバー41はさらに、中央パネル42内に設けられ、このパネルの両側で開放している開口部46を有する。
【0065】
カバー46は、ここでは、通過部分47、保管部分48、切断部分49、引抜き部分50および4つのガラス化部分51を含む。
【0066】
開口部46はさらに、通過部分47、切断部分49および引抜き部分50の内部を通過する経路形成部分52を含む。
【0067】
通過部分47は、第1の側53とこの第1の側53とは反対側である第2の側54との間で長手方向に延在する。
【0068】
カバー41はここでは、第1の側53が槽10の横断方向壁20の一方に向かって配向され、一方第2の側54は槽10の横断方向壁20のうちの他方のものに向かって配向されるように、槽10上に組付けられる。
【0069】
保管部分48は、第2の側54から通過部分47の延長部分として延在する。
【0070】
各ガラス化部分51は、通過部分47からこの通過部分に対して横断方向に延在する。各々のガラス化部分51は、保管部分48から一定の距離のところで、通過部分47内へと開放している。
【0071】
カバー41は、ガラス化部分51のそれぞれの相対する端部から通過部分47まで、通過部分47に向かって各ガラス化部分51内を延在する突起104を有する。
【0072】
各々のガラス化部分51はここでは、槽10の長手方向壁21のうちの1つに向かって延在する。ここでは、ガラス化部分51は全て通過部分47の同じ側に延在している。
【0073】
ガラス化部分51は、長手方向に整列され、互いに規則的に離隔されている。
【0074】
引抜き部分50および切断部分49は、ガラス化部分51と整列して配置され、保管部分48に向かって位置設定されている。ガラス化部分51、切断部分49および引抜き部分50は全て、ここでは、通過部分47との関係において同じ側に位置設定されている。
【0075】
切断部分49は、実質的に円形形状を有する。
【0076】
引抜き部分50は、実質的に矩形形状を有する。
【0077】
カバー41はさらに、内部空間22内で中央パネルから延在する間仕切り壁55を含み、こうして、開口部46内に設けられた切断、引抜きおよび搬送部分49、50、52の下で、槽10の内部空間内部で側方が実質的に閉鎖されている空間を形成する。
【0078】
間仕切り壁55は、この間仕切り壁55により画定された槽10の空間内へのストローの進入のため、実質的に垂直に配向された細長い条片56の形をした開口部46を有する。
【0079】
ガラス化用システム1はさらに、複数のストロー9を輸送するように構成された多区画ゴブレット60、およびカバー41上に組付けられゴブレット60を既定の配向で保持するように構成された収容用支持体57を含む。
【0080】
収容用支持体57は、少なくとも部分的に槽10内に収納されていながら、開口部46の保管部分48の場所でカバー41上に組付けられている。
【0081】
多区画ゴブレット60は、円筒形形状を有し、ストロー9のための収容ハウジングを各々画定する複数の小管61を内部に配置された状態で有する。
【0082】
収容用支持体57は、ドラム58の上面を貫通して開放する開口部63を通してゴブレット60を取外し可能に収容するように構成された円筒形ドラム58、およびこのドラム58が上に回転可能に組付けられている2つのレール59を含む。
【0083】
各レール59は、カバーの中央パネル42に対し1つの端部によって締結され、槽10の内部空間22の内部を長手方向にかつ実質的に垂直に延在する。
【0084】
収容用支持体57はさらに、円筒形ドラム58上に締結されたシャフトハンドル62を含む。
【0085】
図2では、収容用支持体57は、多区画ゴブレット60が実質的に垂直方向に位置している保管位置において例示されている。このとき、システムは、ストローガラス化または脱ガラス化構成と呼ばれる第1の構成にある。
【0086】
図3では、収容用支持体57は、多区画ゴブレット60が傾斜し窒素浴11の液体ゾーン17内に少なくとも部分的に浸漬している充填/排出位置において例示されている。この位置では、ドラム58の開口部63は、少なくとも部分的に槽10の内部空間22内へと開放する。このとき、システムは、ストロー充填または排出構成と呼ばれる第2の構成にある。
【0087】
収容用支持体57は、ユーザがシャフトハンドル62を握って、レール59上でドラム58を枢動させて充填/排出位置から保管位置までおよびその逆にこのドラムを移行させることができるように構成されている。
【0088】
換言すると、収容用支持体57は、充填/排出位置と保管位置との間で回転可能である。
【0089】
充填/排出位置および保管位置の各々において、多区画ゴブレット内に収容されたストロー9の細管8の収容用領域12は窒素浴11の液体ゾーン17内に浸漬されているということが指摘される。
【0090】
システム1はさらに、多区画ゴブレット60の近くのカバー上に組付けられた開放用装置64を含む。より具体的には、開放用装置64は、開口部46の切断部分49の場所でカバー上に組付けられている。
【0091】
開放用装置64は、第1の側にヒンジ66を有しこのヒンジによって本体65がカバー41上に枢動する形で組付けられる、ここでは実質的に平行6面体の形状を有する本体65、および第1の側とは反対側ひいてはヒンジ66の反対側である第2の側にある切断用部材67つまりカッター、を含む。
【0092】
開放用装置64は、本体65が実質的に垂直に配向され切断用部材67が切断部分49から一定の距離のところにある持上った位置、および本体65が実質的に水平に配向され切断用部材67が切断部分47に隣接して位置している横臥位置という2つの安定した位置を取るように構成されている。
【0093】
開放用装置64は、第1の端部13で切断部分49内に収容されたストロー9の細管8を切断するように構成されている。
【0094】
システム1はさらに、開放用装置64の近くでカバー41上に組付けられたラック68を含む。ラック68は、細管8の収容用領域12を窒素浴11の液体ゾーン17内に浸漬された状態に保ちながら、場合によってその第1の端部13で開放されているストロー9の細管8を直立位置に保持するように各々構成された複数の切欠き69を有する。
【0095】
システム1はさらに、窒素浴11の液体ゾーン17のレベルを検査するための装置70を含む。検査用装置70は、液体窒素内に部分的に浸漬させられるように構成されたフローティングロッド71および、カバー41上に組付けられかつ実質的に垂直方向に摺動するようにロッド71が内部に収容される案内用管(図では見えず)を含む。ロッド71には、槽10内の液体窒素の現在のレベルをユーザが推測できるようにする目視インジケータ72が具備されている。
【0096】
システム1はさらに、ストロー9の細管8を既定の配向に保持するように各々構成され、槽10上に組付けるための、ここでは4つある複数の支持用部材80を含む。
【0097】
ここで、これらの支持用部材80は、さらに、カバー41を介して槽10上に組付けられており、このカバー41にはこの目的で4つのガイドレール81が具備されている。
【0098】
各ガイドレール81は、1つの端部により中央パネル42に対し、開口部46のガラス化部分51の場所で締結され、槽10の内部空間22の内部で長手方向にかつ実質的に垂直方向またはわずかに傾斜して延在する。
【0099】
こうして各ガイドレールは、ここではカバー41を介して槽に対し機械的に連結されていることが指摘される。
【0100】
各支持用部材80は、それぞれ高位置と呼ばれる第1の既定の位置およびこの第1の既定の位置よりも低いつまりこれほど高くない低位置と呼ばれる第2の既定の位置という2つの異なる既定の位置で、ガイドレール81上に組付けられるように構成されている。
【0101】
各支持用部材80は、その低位置からその高位置まで持ち上げられるように構成されている。
【0102】
支持用部材80は、ガイドレール81上に摺動自在に組付けられるように構成されている。
【0103】
各々の支持用部材80は、こうして、カバー41上に、カバー41を通して移動可能に組付けられている。
【0104】
より具体的には、各々の支持用部材80は、低位置から高位置までおよびその逆に移行するために実質的に垂直な方向でガイドレール81上に移動可能に組付けられている。
【0105】
図5~8に例示されているように、各々の支持用部材80は、ストロー9の細管8のためのハウジングを共に画定する対面する側方フランジ77と後壁78を有するU字形の、ここでは金属製である本体79を含む。
【0106】
本体79は、上端部84と、この上端部84とは反対側の端部である下端部85との間で、長手方向に延在する。
【0107】
ハウジング83は、ハウジング83内への挿入のために細管8を収容するように構成された側方開口部88によって後壁78の反対側で長手方向に開放している。
【0108】
本体79、ひいては開口部88は、支持用部材80がガイドレール81上に組付けられた場合実質的に垂直に配向され、こうして細管8は、ここでは直立配向されている間にハウジング83内に挿入されかつ/またはハウジング83から引抜かれるようになっている。
【0109】
本体79はさらに、各々横断方向に延在し後壁78および各々の側方フランジ77と遭遇し、かつそれぞれ上端部84および下端部85に位置設定されている上端壁86および下端壁87を有する。
【0110】
各支持用部材80はさらに、ここでは本体79の上端壁86内に形成されたL字形切欠きによって形成されている保持用フック90を有する。
【0111】
本体79はさらに、本体79の下端部85に、後壁78に対面して延在し、側方フランジ77の各々と遭遇して、ハウジング83の一部分を画定する閉鎖用壁89を有する。
【0112】
本体79はさらに、閉鎖用壁89上に設けられハウジング83内に突出する第1のボス91、ならびに、後壁78上に設けられ、ハウジング83内に突出し、第1のボス91から離れて本体79の下端部および上端部のうちの一方の方に位置設定された第2のボス92を有する。
【0113】
図5~7に例示されている支持用部材80において、第2のボス92は、本体79の上端部84の方に位置設定されている。
【0114】
図8に例示されている支持用部材の変形実施形態において、第2のボス92Aは、本体79の下端部85の方に位置設定されている。
【0115】
ストロー9が支持用部材80内に挿入されると、細管8の下部部分がボス91と92の間に係合し、一方細管8の上部部分は保持用フック90内に係合する。
【0116】
細管8は、こうして、ボス91および92のうちの一方および/または他方と保持用フック90との間で長手方向に少なくとも部分的に曲げられながら、支持用部材80上の所定の位置に閉じ込められる。
【0117】
ボス91および92はこうして細管8を楔留め化するための2つの部品を形成し、そのうち一方の部品は管8の下端部の方に位置設定され、他方の部品は、この下端部とは反対側の端部である管8の上端部の方に位置設定されている。
【0118】
各々の支持用部材80はさらに、本体79の上端部84の近傍に位置設定された上部突出部93、および本体79の下端部85の近傍に位置設定された下部突出部94を有する。
【0119】
上部および下部突出部93および94は、全て、本体79の外側に具備されている。
【0120】
上部および下部突出部93および94は、ここでは、側方フランジ77上に具備され、本体79のどちらかの側に配置される。
【0121】
上部および下部突出部93および94は全てここでは円筒形形状を有している。
【0122】
各々の支持用部材80はさらに、本体79に締結されユーザが支持用部材80を操作できるようにするべく構成されているシャフトハンドル95を含む。
【0123】
シャフトハンドル95は、ここでは、互いに反対側に延在する2つのアーム102および突起を連結する接合部分103を有するU字形に整形された金属ロッドによって形成されている。
【0124】
シャフトハンドル95はここでは、後壁78の外側に締結されたL字形の第1の部分96、および部分79の上端部84と同じ側で第1の壁96を延長させるL字形の第2の部分97を有する。
【0125】
L字形の第1の部分96は、例えば溶接によって後壁78に締結され、この後壁に沿って延在する第1の分岐98および、後壁78から離れるように第1の分岐98を延長させる第2の分岐99を有する。
【0126】
第2のL字形部分97は、第1のL字形部分96の第2の分岐99を横断方向に延長させる第1の分岐100、および後壁78から離れるように第1の分岐100を横断方向に延長させる第2の分岐101を有する。
【0127】
図9~13に例示されているように、ガイドレール81はここでは全て同一であり、したがってガイドレール81についての以下の説明は、他のガイドレール81にもあてはまる。
【0128】
ガイドレール81は、それをカバー41の中央パネル42に締結する上端部107、および槽10の底壁19に対面して配置された下端部108の間で、長手方向に延在する。
【0129】
ガイドレール81はここでは金属製であり、中央パネル42に溶接されている。
【0130】
ガイドレール81は、互いに長手方向に対面して延在する2つの組付け用壁105によって形成される。組付け用壁105は各々、このレール81が下に締結されるガラス化部分51の相対する側で、中央パネルに締結される。
【0131】
ここでカバー41は、組付け用壁105の各々に対して機械的に連結された剛化棒材106を有し、こうしてこの棒材106と組付け用壁105で形成されたアセンブリを剛化させる。
【0132】
組付け用壁105は、ここでは互いに左右対称像となるように配設されている。
【0133】
ガイドレール81は、下端部108から延在するガイドレール81の下部部分117の中に各々設けられた下部切欠き109を有する。
【0134】
各々の下部切欠き109は、それぞれの組付け用壁105内に設けられ、もう一方の組付け用壁105の下部切欠き109とは反対側で、実質的に垂直方向に延在する。
【0135】
各々の下部切欠き109は、ガイドレール81の下端部108の近傍で開放している。
【0136】
各々の下部切欠き109は、支持用部材80がガイドレール81上に組付けられた場合に、支持用部材80の下部突出部94を摺動自在に収容するように構成されている。
【0137】
ガイドレール81はさらに、上端部107から下部部分117まで延在するガイドレール81の上部部分118内に各々設けられた上部切欠き110を有する。
【0138】
各上部切欠き110は、それぞれの組付け用壁105内に設けられ、もう一方の上部切欠き110とは反対側に延在する。
【0139】
各々の上部切欠き110は、実質的に垂直に延在する第1の部分113および、実質的に水平に延在しガイドレール81の上端部107の近傍で第1の部分113内に開放している第2の部分114を有する。
【0140】
第1の部分113では、上部切欠き110は、上端部107から一定の距離のところに位置設定された低い底面115を有する。
【0141】
第2の部分114では、上部切欠き110は、上端部107の近傍に位置設定された高い底面116を有する。第2の部分114は、ここでは、下向きに湾曲した形状を有する。
【0142】
各々の上部切欠き110はさらに、ガイドレール81の上端部107の近傍に位置設定され、第1の部分113を横断方向に延長させ、正面で内部空間内に開放する挿入部分111を有する。
【0143】
各々の上部切欠き110は、支持用部材80がガイドレール81上に組付けられた場合、支持用部材80の上部突出部93を摺動自在に収容するように構成される。
【0144】
この上部突出部93は、挿入部分111を介して上部切欠き110内に挿入される。
【0145】
各々の支持用部材80は、下部突出部94が下部切欠き109内に収容され上部突出部93が上部切欠き110内に収容され、本体79が組付け用壁105の間に収容された状態でガイドレール81上に組付けられるように構成されている。
【0146】
カバー41の突起104は、シャフトハンドル95のアーム102間に収容されるということが指摘される。
【0147】
図10および11では、支持用部材80は、ストロー9がこの支持用部材80内に収容されている状態で、ガイドレール81上の下部位置、つまり第2の位置に組付けられる。
【0148】
この低位置において、上部突出部93は各々上部切欠き110の低い底面115上に存在し、こうしてこの低い底面115は支持用部材80の底位置を画定することになる。
【0149】
換言すると、上部突出部110の各々の第1の部分113が、高い位置付け用突出部を収容するように構成され第2の既定の位置を画定する第1の低い位置付け用切欠きつまり当接部を形成する一方で、各々の上部突出部93は、低い位置付け用突出部を形成する。
【0150】
この低位置において、細管8は、槽10内で直立した全体的配向を有し、細管8の収容用領域12は、液体ゾーン17内に浸漬させられ、細管8の開口部14は、液体ゾーン17の直上、窒素浴11の気体ゾーン18内で、窒素浴11の上にある周囲空気ゾーン82の下方に位置設定されている。
【0151】
この低位置において、細管8は、直立した全体的配向を有するが、垂直線に対しわずかな傾斜を呈する。
【0152】
この低位置において、細管8は、部分的に浴11の液体ゾーン内に、そして部分的に浴11の気体ゾーン18内にあり、完全に窒素と接触した状態にある。
【0153】
こうして、細管8は、物質の収容用領域12からその開口部14まで、その長さ全体にわたり冷却される。
【0154】
細管8の開口部14が窒素浴11の気体ゾーン18内に位置設定されていることによって、(少なくとも部分的に該物質専用の)細管8の内部容積に液体状態の窒素を充填せずむしろ、周囲空気よりも低温である気体状態の窒素を充填することが可能になり、こうして気体状態の窒素は周囲空気を対流によって細管から外に駆出する。
【0155】
こうして、細管8は、液体状態および気体状態の窒素と細管8の外側面との直接的接触によってのみならず、気体状態の窒素と細管8の内側面との直接的接触によっても、窒素で冷却される。
【0156】
図12および13において、支持用部材80は、ユーザによって、その低位置(第2の位置)から持ち上げられて、上部位置つまり第1の位置に位置設定されている。
【0157】
この高位置において、上部突出部93は、上部切欠き110の高い底面116上に存在し、こうして、高い底面116は支持用部材80の高位置を画定することになる。
【0158】
換言すると、各々の上部突出部93はここでは、同様に高い位置付け用突出部を形成し、一方上部切欠き110の各々の第2の部分114は、高い位置付け用突出部を収容するように構成され第1の既定の位置を画定する第2の高い位置付け用切欠きを形成する。
【0159】
この高位置において、支持用部材80内に収容されたストロー9の細管8は、槽10内で上向きに配向され、細管8の収容用領域12は、窒素浴11の液体ゾーン17内に浸漬させられ、細管8の開口部14は、窒素浴11の上にある周囲空気ゾーン82内で窒素浴11の上方に位置設定されている。
【0160】
こうして、開口部14は、気体ゾーン18の上方に、ここではこのゾーン18よりおよそ20mm上方に位置設定される。
【0161】
この高位置においては、カバーより上方に位置設定されているため容易にアクセス可能であるその開口部14を通して、ガラス化すべき物質が備わったシャンク7を細管8内に挿入することが可能である。
【0162】
支持用部材80を低位置から高位置まで移行させるために、ユーザはここではシャフトハンドル95を握り、各上部突出部93が上部切欠き110の第2の部分114と対面するまで上向きに引張り、その後水平方向に引張って、上部突出部93をこの第2の部分114内に挿入する、ということが指摘される。
【0163】
この運動中、各々の上部突出部93および各々の下部突出部94は、それぞれに、上部突出部93が中に係合される上部切欠き110の第1の部分113によって、および下部突出部94が中に係合される下部切欠き109によって、摺動自在に案内される、ということが指摘される。
【0164】
こうして、上部突出部93および下部突出部94は、案内用突出部を形成し、一方、ガイドレール81の上部切欠き110および下部切欠き109の第1の部分113は、実質的に垂直にかつ少なくとも部分的にガイドレール81に沿って延在する案内用切欠きを形成し、さらに、支持用部材80がその第2の既定の位置からその第1の既定の位置まで移動させられた場合、案内用突出部を摺動自在に収容するように構成される。
【0165】
ここで、上述のシステム1を用いて、保存すべき生物学的材料を含む物質をガラス化し次に脱ガラス化させる方法について説明する。
【0166】
ストロー9の細管8を支持用部材80内に配置し、次にこの支持用部材は収容用領域12が窒素浴11の液体ゾーン17内に浸漬させられ、開口部14が窒素浴11の気体ゾーン18内で液体ゾーン17の直上に位置設定されている状態で、細管8が槽10内で直立に配向されるように、低位置で槽10のカバー41上に組付ける。
【0167】
細管8は、所望の温度まで冷却されるように、既定の時間この位置に放置される。
【0168】
細管8がひとたび所望の温度に達したならば、支持用部材80は、その収容用領域12がなおも窒素浴の液体ゾーン17内に浸漬させられ、その開口部14が窒素浴11の上方で窒素浴11の上にある周囲空気ゾーン内にある状態で、細管8が槽内で直立に配向されるように、低位置から高位置へと持ち上げられる。
【0169】
事前にその溝形部材6上に一定量のガラス化すべき物質が被着されたストロー9のシャンク7は、次に、溝形部材6およびこの溝形部材6内に収容された一定量の物質が細管8の収容用領域12内に位置設定されるように、その開口部14を通して細管8内に導入される。
【0170】
次に、細管8は、高位置で支持用部材80内になおも保持され、こうして管8の収容用領域12がなおも液体窒素内に浸漬させられている間に、溶接装置を用いてその第1の端部13で封止される。
【0171】
管8がひとたび封止されたならば、支持用部材80は、管8を再び、部分的に液体ゾーン17内で、かつ部分的に気体ゾーン18内で、窒素浴11内に完全に浸漬させるために、その低位置まで戻される。
【0172】
多区画ゴブレット60は次に、保管位置にある間に収容用支持体57のドラム58内に挿入される。こうして、多区画ゴブレット60は実質的に垂直方向に位置し、少なくとも部分的に槽10内に収納される、すなわち少なくとも部分的に窒素浴11内に浸漬させられる。
【0173】
収容用支持体57は次に、多区画ゴブレット60が傾斜し、液体窒素浴11の液体ゾーン17内に少なくとも部分的に浸漬させられるように、その保管位置からその充填/排出位置まで回転させられる。詳細には、この充填/排出位置において、ドラム58の開口部63は少なくとも部分的に浴11の液体ゾーン17内に浸漬させられている。
【0174】
ストロー9は、その細管8が第1および第2の端部13および15の各々において閉止されている状態で、次に、大部分が窒素浴11中、特に液体ゾーン17内にとどまっている間に、ストローが中に収容されている低位置にある支持用部材80から、多区画ゴブレット60まで移行させられる。
【0175】
収容用支持体57は次に、ゴブレット60が実質的に垂直に位置している保管位置まで傾動させられる。
【0176】
収容用支持体57およびゴブレット60は、この保管位置において、ゴブレット60内に収容されたストロー9各々の細管8の少なくとも収容用領域12が、窒素浴11の液体ゾーン17内に浸漬させられるようなに構成されている。
【0177】
次に、ガラス化された物質を伴うストロー9を、ゴブレット60と共に槽10から外へと輸送して、専用の場所で保管することができる。
【0178】
脱ガラス化を行なうために、ガラス化されたストロー9はその保管場所から取り出され、その後ゴブレット60の中に配置される。
【0179】
ゴブレット60は、システム1の前に運ばれ、その収容用支持体57内で槽10内に挿入される。
【0180】
収容用支持体57は、ゴブレット60が傾斜している充填/排出位置に到達するまで、枢動させられる。
【0181】
ストロー9は次に、ゴブレット60から引き抜かれ、次に、細長い条片56の形の開口部を通過して、間仕切壁55により画定された槽10の内部空間22の部分の中に運ばれる。
【0182】
ストロー9は、開放用装置64が持上った位置にある状態で、切断部分49に到達するまで経路52により搬送される。
【0183】
開放用装置は、その持上った位置から倒された位置へと移行させられて、第1の端部13の場所で切断用部材67を用いて細管8を切断し、シャンク7をアクセス可能な状態にする。
【0184】
開放用装置64は、その倒された位置から持上った位置まで移行させられ、切断された管8を伴うストロー9は次に、切断部分49から引抜き部分50まで搬送され、ここで細管8はラック68の収容用切欠き69内に係合させられて内部に保持される。したがって、シャンク7を管8から取外して、脱ガラス化させるべき物質を回収することが可能である。
【0185】
図示されていない変形形態において:
- 該システムは、より多くまたはより少ない数のガラス化部分を含み、これらの部分はカバー内にかつより一般的には槽内に異なるように位置設定されてよい;例えば、これらの部分は、通過部分の両側に位置設定されてもよい;
- 該システムは、例えば上述の第1および第2の既定の位置の間に位置設定された、または場合によっては、ストローが浴の液体ゾーン内に沈められないまたはほとんど沈められないと考えられる第1の位置よりも高い、さらには反対にストローが完全にまたはほとんど完全に浴の液体ゾーン内に沈めると考えられる第2の位置よりも低い、少なくとも1つの他の既定の位置内に、支持用部材ひいてはストローを位置付けするように構成され得る;
- 開放用装置および/またはラックは、カバーを介して槽上に組付けられるのではなく、その代り槽上に直接組付けられる;
- 支持用部材の本体の側方フランジの1つは、全く突出部を有していない;
- ガイドレールは、組付け用壁を1つしか有していない;
- 位置付け用突出部は、支持用部材の本体上ではなくむしろガイドレールの側方フランジ上に具備され、一方切欠きは、ガイドレールの側方フランジ内ではなく支持用部材の本体内に設けられる;
- 支持用部材はガイドレール上に摺動自在に組付けられず、例えばスライドを伴う機構を介して支持用部材が移動可能および取外し可能になるように構成された枢動継手を介して、ガイドレール上に組付けられる;
- 槽は、平行6面体形状を有しておらず、別の形状、例えば円筒形形状を有している;
- カバーは、槽上に異なるように配設されてよく、ガラス化、通過、引抜き、切断および保管部分も同様に、互いとの関係において異なるように配設されてよい;
- 該システムが使用される環境は、大気と同一視できる周囲空気を有する部屋、または温度および/または圧力が制御されている部屋であり得る。
【0186】
状況に応じて多くの他の変形形態が可能であり、これに関連して、本発明が、説明され図示された実施例に限定されないということを指摘しておかなければならない。
本明細書に開示される発明は以下の態様を含む。
〔態様1〕
第1の端部(13)に開口部(14)を有し前記第1の端部(13)とは反対側の端部である第2の端部(15)の近傍で閉止されている既定の寸法の細管(8)を含む包装用ケーシング(9)内に収容され、胎芽または卵母細胞などの保存すべき生物学的材料を含む物質の極低温ガラス化用システムにおいて、前記ケーシング(9)は、このケーシング(9)に加えて、既定量の前記物質を収容し前記細管(8)の内部に挿入されて、前記既定量の前記物質が前記細管(8)の前記開口部(14)から一定の距離のところに位置設定された前記細管(8)の収容用領域(12)内に位置設定されるように構成された収容用支持体(7)を含む前記物質用の包装セットの一部を成し、
前記システム(1)は、極低温作用物質浴(11)を格納するように構成された槽(10)および前記細管(8)を既定の配向で保持するようにかつ前記槽(10)上で第1の既定の位置に組付けられるように構成された少なくとも1つの支持用部材(80)を含み、この第1の既定の位置では、前記細管(8)は前記槽(10)内で直立して配向されており、前記細管(8)の前記収容用領域(12)は、極低温作用物質が液体状態にある前記極低温作用物質浴(11)の液体ゾーン(17)内に浸漬されており、前記細管(8)の前記開口部(14)は、前記極低温作用物質浴(11)の上にある周囲空気ゾーン(82)内で前記極低温作用物質浴(11)の上方に位置設定されて、前記物質の前記収容用支持体(7)の前記細管(8)内への前記挿入を可能にしており、
前記支持用部材(80)は、前記第1の既定の位置よりも低い少なくとも1つの第2の既定の位置で前記槽(10)上に組付けられるように構成されており、この第2の既定の位置では、前記細管(8)は、前記槽(10)内で直立して配向されており、前記細管(8)の前記収容用領域(12)は前記液体ゾーン(17)内に浸漬されており、前記細管(8)の前記開口部(14)は、前記液体ゾーン(17)の直上で、前記液体ゾーン(17)の上にあって前記極低温作用物質が気体状態にある前記極低温作用物質浴(11)の気体ゾーン(18)内、そして前記極低温作用物質浴(11)の上にある前記周囲空気ゾーン(82)の下方に位置設定されており、
さらに、前記支持用部材は、前記第2の既定の位置から前記第1の既定の位置まで持ち上げられるように構成されている、
ことを特徴とするシステム。
〔態様2〕
前記槽(10)に対して機械的に連結された少なくとも1つのガイドレール(81)を含み、前記支持用部材は、前記第2の既定の位置から前記第1の既定の位置までおよびその逆に移行するために実質的に垂直方向で前記ガイドレール上を移動可能であるように組付けられている、ことを特徴とする態様1に記載のシステム。
〔態様3〕
前記支持用部材(80)が少なくとも1つの位置付け用突出部(93)を含み、前記ガイドレール(81)が、各々前記少なくとも1つの第1の突出部を収容するように構成されかつそれぞれが前記第1の既定の位置および前記第2の既定の位置を画定する第1の位置付け用切欠き(113)および第2の位置付け用切欠き(114)を含む、ことを特徴とする態様2に記載のシステム。
〔態様4〕
前記支持用部材(80)が前記ガイドレール(81)上に摺動自在に組付けられている、ことを特徴とする態様2または3のいずれか1態様に記載のシステム。
〔態様5〕
前記支持用部材(80)が少なくとも1つの案内用突出部(94)を含み、前記ガイドレール(81)が、実質的に垂直方向にかつ少なくとも部分的に前記ガイドレールに沿って延在し、前記支持用部材がその第2の既定の位置からその第1の既定の位置まで移動させられた場合に前記少なくとも1つの案内用突出部を摺動自在に収容するように構成されている少なくとも1つの案内用切欠き(109)を含むこと、を特徴とする態様4に記載のシステム。
〔態様6〕
前記支持用部材(80)が、共に前記細管(8)および前記ケーシング(9)用のハウジング(83)を画定する背面(78)および対面する側方フランジ(77)を有するU字形本体(79)を含み、このハウジングが、前記ハウジング内への挿入のために直立配向された前記管を収容するように構成された側方開口部(88)を通して前記背面とは長手方向に反対側で開放している、ことを特徴とする態様1から5のいずれか1態様に記載のシステム。
〔態様7〕
前記支持用部材(80)には、下端部(85)に向かって、前記細管(8)を楔留め化するための少なくとも1つの部品(91、92)と、その下端部とは反対側の端部である上端部(84)に向かって、前記細管を保持するためのフック(90)が具備されていること、を特徴とする態様1から6のいずれか1態様に記載のシステム。
〔態様8〕
前記支持用部材(80)は、前記細管(8)が前記支持用部材上で所定の位置に閉じ込められ、前記少なくとも1つの楔留め化用部品(91、92、92A)と前記保持用フック(90)との間で少なくとも部分的に長手方向に湾曲しているように構成されている、ことを特徴とする態様7に記載のシステム。
〔態様9〕
前記槽(10)のリム(44)上に組付けられ前記液体ゾーン(17)上に位置するように延在するカバー(41)を含み、前記支持用部材(80)が前記カバー上でこのカバーを通って移動可能に組付けられている、ことを特徴とする態様1から8のいずれか1態様に記載のシステム。
〔態様10〕
前記カバー(41)が前記極低温作用物質浴(11)の前記気体ゾーン(18)内に位置付けされている、ことを特徴とする態様9に記載のシステム。
〔態様11〕
前記槽(10)には、前記極低温作用物質浴(11)のための内部収容用空間(22)を少なくとも部分的に画定する流体密封性内部壁(26)および断熱性外部壁(25)が具備され、前記断熱性外部壁が前記槽の上面に具備された内部肩部(27)を有し、前記流体密封性内部壁が前記槽の上面上に具備され前記外部壁の前記肩部上に担持された状態で配置された外部延長部(28)を有し、前記外部延長部は、上に前記カバーが位置付けされている前記槽の前記リムを形成している、ことを特徴とする態様10に記載のシステム。
〔態様12〕
複数の前記包装用ケーシング(9)を輸送するように構成された多区画ゴブレット(60)、前記槽(10)内に少なくとも部分的に収納され、前記複数の前記包装用ケーシング各々の前記細管の少なくとも前記収容用領域(12)が前記極低温作用物質浴(11)の前記液体ゾーン(17)内に浸漬させられるように前記多区画ゴブレットを取外し可能に収容するように構成された収容用支持体(57)を含む、ことを特徴とする態様1から11のいずれか1態様に記載のシステム。
〔態様13〕
前記多区画ゴブレット(60)の前記収容用支持体(57)は、前記多区画ゴブレットが実質的に垂直方向に位置している保管位置と、前記多区画ゴブレットが傾斜し前記極低温作用物質浴(11)の前記液体ゾーン(17)内に少なくとも部分的に浸漬している充填/排出位置との間で回転可能であり、こうして、前記システム(1)は、前記極低温作用物質浴内に大部分が浸漬した状態にとどまりながら少なくとも前記支持用部材(80)から前記多区画ゴブレットまで、第1および第2の端部(13;15)の各々において閉止されている前記包装用ケーシング(9)を移行させるように構成されている、ことを特徴とする態様12に記載のシステム。
〔態様14〕
前記第1および第2の端部(13;15)の1つにおいて前記包装用ケーシング(9)の前記細管を切断するように構成され、かつ前記多区画ゴブレット(60)の近くで前記槽(10)上に組付けられている開放用装置(64)を含む、ことを特徴とする態様12および13のいずれか1態様に記載のシステム。
〔態様15〕
前記開放用装置(64)の近くで前記槽(10)上に組付けられかつ、直立位置で前記第1および第2の端部(13;15)のうちの一方で開放している前記包装用ケーシング(9)の細管(8)を保持するように各々構成されている複数の切欠き(69)を有するラック(68)を含み、前記ラックは、前記細管の前記収容用領域(12)が前記極低温作用物質浴(11)の前記液体ゾーン(17)内に浸漬させられるように構成されている、ことを特徴とする態様14に記載のシステム。
〔態様16〕
前記槽(10)内の前記極低温作用物質浴(11)の前記液体ゾーン(17)のレベル用検査装置(70)を含む、ことを特徴とする態様1から15のいずれか1態様に記載システム。
〔態様17〕
態様1から16のいずれか1態様に記載のシステム(1)を用いて、胎芽または卵母細胞などの保存すべき生物学的材料を含む物質をガラス化する方法において、
第1の端部(13)に開口部(14)を有し前記第1の端部とは反対側の端部である第2の端部(15)の近傍で閉止されている既定の寸法の細管(8)を有する包装用ケーシング(9)および既定量の前記物質を収容し前記細管の内部に挿入されて、前記既定量の前記物質が前記細管の前記開口部から一定の距離のところに位置設定された前記細管の収容用領域(12)内に位置設定されるように構成された収容用支持体(7)を含む前記物質用の包装セットを提供するステップと、
極低温作用物質浴(11)を格納する槽(10)を提供するステップと、
前記槽上に組付けられ前記細管を既定の配向で保持するように構成された少なくとも1つの支持用部材(80)を提供するステップと、
前記支持用部材内に前記既定の配向で前記細管を設置するステップと、
前記支持用部材を、少なくとも1つの第2の既定の位置で前記槽上に組付けるステップであって、この第2の既定の位置では、前記細管は、前記槽内で直立して配向されており、前記細管の前記収容用領域は前記極低温作用物質が液体状態である前記極低温作用物質浴の液体ゾーン(17)内に浸漬されており、前記細管の前記開口部は、前記液体ゾーンの直上で、前記液体ゾーンの上にあり前記極低温作用物質が気体状態にある前記極低温作用物質浴の気体ゾーン(18)内、そして前記極低温作用物質浴の上にある周囲空気ゾーン(82)の下方に位置設定されている、ステップと、
前記第2の既定の位置から、前記第2の既定の位置よりも高い第1の既定の位置まで前記支持用部材を持ち上げるステップであって、この第1の既定の位置では、前記細管が前記槽内で直立して配向されており、前記細管の前記収容用領域が前記極低温作用物質浴の前記液体ゾーン内に浸漬されており、前記細管の前記開口部が、前記極低温作用物質浴の上にある周囲空気ゾーン内で前記極低温作用物質浴の上方に位置設定されて、前記物質の前記収容用支持体の前記細管内への前記挿入を可能にしている、ステップと、
前記支持体上に前記物質を被着させ、前記支持体を前記細管内に挿入するステップと、
前記細管をその第2の端部で封止するステップと、
を含む、ことを特徴とする方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13