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  • 特許-医療用の頭部冷却キャップセット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】医療用の頭部冷却キャップセット
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/10 20060101AFI20220322BHJP
   A42B 3/08 20060101ALI20220322BHJP
   A41D 13/12 20060101ALI20220322BHJP
   A41D 13/002 20060101ALI20220322BHJP
   A41D 13/005 20060101ALI20220322BHJP
   A42B 3/04 20060101ALI20220322BHJP
   A42B 1/008 20210101ALI20220322BHJP
【FI】
A61F7/10 321
A61F7/10 330A
A61F7/10 330R
A42B3/08
A41D13/12 145
A41D13/002
A41D13/005 103
A42B3/04
A42B1/008 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020032962
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021134458
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2020-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】305007551
【氏名又は名称】株式会社毛髪クリニックリーブ21
(74)【代理人】
【識別番号】100167416
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 佳男
(72)【発明者】
【氏名】岡村 勝正
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-158027(JP,A)
【文献】特開2002-209924(JP,A)
【文献】実開昭59-022131(JP,U)
【文献】実開昭62-001617(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 3/04
A42B 3/08
A42B 1/008
A41D 13/12
A41D 13/002
A41D 13/005
A61F 13/12
A61F 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の頭部を冷却するための頭部冷却キャップと、その内側に装着されるインナーキャップと、該頭部冷却キャップを固定するため、その外側に装着される固定具付きのアウターキャップの三点から構成され、
前記頭部冷却キャップは、内部に冷却媒体流路が形成されており、冷却媒体流路に冷却媒体を流通させることによって頭皮を冷却し、
前記インナーキャップは、人の頭部を覆うように形成された布帛体からなり、額を含む前頭部を覆う前頭部領域と、後頭部を覆う後頭部領域と、項を覆う項領域を備える本体と、それに接続される左側頭部材と右側頭部材とから構成され、さらに、前記本体に接続された前記左側頭部材、前記右側頭部材のそれぞれの部材は、後端にひれ状突出部を形成し、このひれ状突出部と前記項領域との間に切込みが形成され、さらに、前記前頭部領域の端部に取手を備え、
前記アウターキャップは、クロロプレンゴムを原料とする発泡ゴム弾性体と、該発泡ゴム弾性体の表面及び裏面に配置されている繊維層を含む弾性素材で構成され、両側開口部から引き出され外部に伸びた二本の第1のベルトが第1の止め具により連結可能で、該開口に頭部を通して着帽した後に、止め具により頸部前方でベルトを止めることができ、かつ、後部中央縁近傍から正面縁に向けて延びた二本の第2のベルトが第2の留め具により連結可能で、該開口に頭部を通して着帽した後に、留め具により額周りに第2のベルトを止めることができる、ことを特徴とする医療用の頭部冷却キャップセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部冷却キャップセット、すなわち、癌治療において頭皮を冷却する際に使用されるインナーキャップと頭部冷却キャップとアウターキャップの三点から構成される医療用の頭部冷却キャップセットに関する。
【背景技術】
【0002】
癌治療において用いられる化学療法では、脱毛を伴うことが多く、患者の心理的苦痛などQOLを著しく低下させることが問題となっている。こうした脱毛は、頭皮を低温に維持して毛根が化学療法のための治療薬を吸収することを抑制することにより、防止又は抑制できることが知られている。このため、化学療法による脱毛を防止することを目的とした頭部冷却装置が提案されている(特許文献1を参照)。このような頭部冷却装置では、使用者の頭部に装着されるヘルメット形状部材の内部に冷却媒体流路を形成し、冷却媒体流路内に冷却媒体を流通させて頭皮と冷却媒体との熱交換により頭皮を冷却している。
【0003】
使用者の頭部に装着されるヘルメット形状部材は、シリコーンゴムなどの合成樹脂から成形によって作製されることが多い。シリコーンゴムはある程度の柔軟性を有しているが、使用者の頭部の形状や大きさは様々であり、頭部全体にわたって密着させることは困難である。ヘルメット形状部材の内側表面は熱交換面として機能するので、使用者の頭皮とヘルメット形状部材の内側表面と頭皮との間に隙間が生じると、頭皮の一部がヘルメット形状部材の内側表面に接触しなくなり、頭皮の冷却が不均一になったり、冷却効率を低下させたりするという問題が生じる。このような隙間を減少させる方法として、使用者の頭部の形状や大きさに適合させやすくするために、ヘルメット形状部材と頭皮との間に柔軟性のある素材からなるインナー部材を装着することが行われている。
【0004】
以上に説明したとおり、癌患者の頭皮を冷却するために被る一般的な頭部冷却装置は、頭部冷却キャップと、該頭部冷却キャップと頭皮の間に着用するインナー部材とからなる。ここで、癌患者の頭皮の脱毛を有効に防ぐためには、頭皮と該インナー部材との密着性が問題となる。そうすると、使用者の頭の形や大きさは人それぞれであるため、インナー部材をオーダーメイドで作成せざるを得ず、インナー部材の価格は高くなり、患者の負担が大きいという問題が生じている。
また、冷却液が流れるシリコーンゴムのヘルメットは、長時間の着用中に脱げそうになることが多く、ヘルメットがずれると冷却効果も減ずることになる。市販されている製品としては、冷却ヘルメットに留め具があって、使用者の顎とヘルメットの開放口の一部とベルトで固定して、ヘルメットのずれを防止するように工夫している。しかし、このような固定方式でもヘルメットと頭皮との密着性を確実にすることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5133355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、このような問題に鑑み、使用者の頭部を冷却するための頭部冷却キャップと、その内側に装着されるインナーキャップと、頭部冷却キャップを固定するため、その外側に装着される固定具付きのアウターキャップの三点から構成され、装着に圧迫感がなくかつずれることがない医療用の頭部冷却キャップセットを提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、本発明に係る医療用の頭部冷却キャップセットは、使用者の頭部を冷却するための頭部冷却キャップと、その内側に装着されるインナーキャップと、頭部冷却キャップを固定するため、その外側に装着される固定具付きのアウターキャップの三点から構成され、
頭部冷却キャップは、内部に冷却媒体流路が形成されており、冷却媒体流路に冷却媒体を流通させることによって頭皮を冷却し、
インナーキャップは、人の頭部を覆うように形成された布帛体からなり、額を含む前頭部を覆う前頭部領域と、後頭部を覆う後頭部領域と、項を覆う項領域を備える本体と、それに接続される左側頭部材と右側頭部材とから構成され、さらに、本体に接続された左側頭部材、右側頭部材のそれぞれの部材は、後端にひれ状突出部を形成し、このひれ状突出部と前記項領域との間に切込みが形成されている。
アウターキャップは、両側開口部から引き出され外部に伸びた二本の第1のベルトが第1の止め具により連結可能で、該開口に頭部を通して着帽した後に、止め具により頸部前方でベルトを止めることができ、かつ、後部中央縁近傍から正面縁に向けて延びた二本の第2のベルトが第2の留め具により連結可能で、該開口に頭部を通して着帽した後に、留め具により額周りに第2のベルトを止めることができることを特徴とする。
なお、インナーキャップは、その前頭部領域の端部に取手を備えるようにしてもよい。
さらに、アウターキャップは、発泡ゴム弾性体と、該発泡ゴム弾性体の表面及び裏面に配置されている繊維層を含む弾性素材で構成されると好適である。なお、発泡ゴム弾性体の原料成分は、クロロプレンゴムやネオプレンゴム(登録商標)からなるようにすればさらによい。
【0008】
また、本発明に係る医療用の頭部冷却キャップセットの使用方法は、インナーキャップを水に漬け軽く搾り、使用者の頭部に装着し、次に使用者の頭部を冷却するための頭部冷却キャップをインナーキャップの上に被せ、さらに、固定具付きのアウターキャップを頭部冷却キャップの上に被せ、両側開口部から引き出され外部に伸びた二本の第1のベルトを前記使用者の頸部で連結させて固定し、かつ、後部中央縁近傍から正面縁に向けて延びた二本の第2のベルトを第2の留め具により連結させて額周りを締め付けることにより、頭部冷却キャップのずれを防止し、かつ、頭部冷却キャップと頭皮との隙間を低減させ冷却効果を向上させすることを特徴とする。なお、使用者にインナーキャップを装着する前に、使用者の髪を濡らしておくと好適である。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る医療用頭部冷却キャップセットは、アウターキャップの留め具により頭部冷却キャップのずれを防止することにより、使用者にとってかぶりやすく、インナーキャップは適度の断熱効果を有するだけでなく使用者にとっては手ごろな価格で入手でき、アウターキャップは、その留め具により頭部冷却キャップのずれを防止することができる。また、アウターキャップの素材に発泡ゴム弾性体と、該発泡ゴム弾性体の表面及び裏面に配置されている繊維層を含む弾性素材を採用すると、頭部冷却キャップをしっかりホールドして、頭部冷却キャップのずれをより防止することができる。また、インナーキャップの数種類のサイズから選択することにより、頭部の大きさの異なる人に適応させることができ、安定した装着状態が得られる。また、インナーキャップは、布、不織布等を素材としているため、変質し難く、人体に対しても、痒みやかぶれを生じる恐れが少ない。また、インナーキャップは、洗濯して再使用をしてもよいし、使い捨てにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る医療用頭部冷却キャップセット1の構成を示す図である。
図2】本発明に係るインナーキャップ100の右側面図である。
図3】本発明に係る頭部冷却キャップ200の右側面図である。
図4】本発明に係るアウターキャップ300を示す図である。
図5】本発明に係る医療用頭部冷却キャップセット1の使用方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。各図において、同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。また、図面は、本発明を理解するために誇張して表現している場合もあり、必ずしも縮尺どおり精緻に表したものではないことに留意されたい。なお、本発明は下記に示される実施例に限られるものではない。
【実施例1】
【0012】
実施例1を図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1を参照する。医療用頭部冷却キャップセット1の構成を示す図である。
【0014】
図2を参照する。図2は、本発明に係るインナーキャップ100の右側面図である。本体101は、前頭部領域111と、後頭部領域112と、項領域113とからなる。本体101は、左側頭部材102(図に示していない)とは縫製部分で、右側頭部材103と縫製部分(一点鎖線で示している)で縫い合わされ一体化される。なお、本体101と、左側頭部材102と、右側頭部材103との連結部は、縫製に限るものではない。左側頭部材102と右側頭部材103のそれぞれの部材は、後端にひれ状突出部120、130を形成し、このひれ状突出部120、130と項領域113との間に切込みが形成されている。
図2に示すとおり、本体101は、前端、すなわち、前頭部領域111の端部に取手104を取り付けてもよい。使用者はインナーキャップ100を着用して、頭部冷却キャップ200を装着した際に、取手104を引っ張ることにより、インナーキャップ100のずれを補正することができる。取手4は、使用者が把持して引っ張ることができる部材であればよく、ループ状部材でもよいし、舌片部材を前頭部領域111の前端に縫いつけてもよい。
なお、インナーキャップ100に用いる布帛体は、適度の断熱効果を有するものであればよい。すなわち、図1及び2に示すインナーキャップ100の形状に加工できる素材であればよい。例えば、布帛体として、ポリエステル等化学繊維でもよいし、綿、不織布、紙、その他の素材として絹や、薄い布のようなプラスチック等を選択することができる。
右側頭部材103は、上端で本体101に縫合されている。右側頭部材103は、後端にひれ状突出部130を形成し、このひれ状突出部130と項領域113との間に切込みが形成されている。このような切込みにより、頭部の大きさの異なる人に適応させることができ、安定した装着状態が得られる。右側頭部材103の下側ラインは耳に被らないように凹湾曲させるとよい
【0015】
本発明のインナーキャップ100は、適度の断熱効果を有することから、頭皮を冷却する頭部冷却キャップ200専用のインナーキャップとして好適であり、インナーキャップ100を着用して頭部冷却キャップ200を装着すると、頭部冷却キャップ200と頭皮との間の緩衝材となるため、使用者に快適な装着感をもたらす。
【0016】
図3を参照する。図3は、本発明に係る頭部冷却キャップ200の右側面図である。
頭部冷却キャップ200には、第1の冷却媒体ポート220と第2の冷却媒体ポート230が設けられており、これらのポートにそれぞれ冷却媒体を供給及び排出するための配管221、231が接続されている。
頭部冷却キャップ200の頭部冷却キャップ本体201内には、第1の冷却媒体ポート220と第2の冷却媒体ポート230との間に延びる冷却媒体流路210が形成されており、頭部冷却キャップ本体201内に供給される冷却媒体が冷却媒体流路210内を流通できるよう配置されている。冷却媒体が冷却媒体流路210内を流通することによって頭部冷却キャップ200が冷却され、その結果、頭部冷却キャップ200を装着する使用者の頭皮との熱交換によって使用者の頭皮が冷却される。
【0017】
図4を参照する。図4は、本発明に係るアウターキャップ300を示す図である。アウターキャップ300は、頭部冷却キャップ200の外側に装着される。アウターキャップ200は、ウレタンなどの断熱材料から形成されており、頭部冷却キャップ200内の冷却媒体の温度が外気温の影響によって上昇することを抑制する。なお、アウターキャップ300を頭部冷却キャップ200の上に被せ、使用者の頸部を顎ホルダ311に載せながら、両側開口部から引き出され外部に伸びた二本の第1のベルト310を連結させて固定する。そして、後部中央縁近傍から正面縁に向けて延びた第2のベルト320を第2の留め具により連結させて額周りを締め付ける。そうすると、頭部冷却キャップ200が頭皮に締めることにより、頭部冷却キャップ200と頭皮との隙間を低減させ冷却効果を向上させ、さらに頭部冷却キャップ200のズレを防止する効果も奏する。頭部冷却キャップ200がズレると、頭部における頭皮への冷却が行き届かない領域を生むため、頭部冷却キャップのズレは極力防止する必要がある。
なお、アウターキャップに使用する素材としては、ウレタン等の断熱材でもよいが、体温を逃さない素材、すなわち、保温性・断熱性を保持できる素材で、かつ、頭部冷却キャップ200にしっかりフィットしかつ柔軟性又は弾力性がある素材が好ましい。例えば、ネオプレン(登録商標)、クロロプレン等の発泡性ゴム材料であって、その表面及び裏面に織編物が貼り付けられたものや繊維が貼り付けられた素材で構成された材料が好ましい。このような素材は、入手の困難性も少なく、コスト面でも優位である。
【実施例2】
【0018】
実施例2を図面を参照して詳細に説明する。図5は、本発明に係る医療用頭部冷却キャップセット1の使用方法を示すフローチャートである。
【0019】
図5を参照して、本発明に係る医療用頭部冷却キャップセットの使用方法を説明する。まず、インナーキャップ100を水に漬け軽く搾り(S01)、使用者の頭部に装着し(S02)する。なお、インナーキャップ100を使用者の頭部に装着する前に、使用者の髪を濡らし(S00)、さらにスプレイ等で水が滴るくらいに濡らすとよい。また、インナーキャップ100を使用者の頭部に装着する際、例えば、頭頂部に脱毛が際立っている場合には、該頭頂部にガーゼを置いてインナーキャップ100を装着するとよい。また、前頭部や耳等に頭部冷却キャップ200が直接触れないように該箇所にガーゼを被せてインナーキャップ100を装着するとよい。次に、使用者の頭部を冷却するための頭部冷却キャップ200をインナーキャップ100の上に被せる(S03)。頭部冷却キャップ200はインナーキャップ100より前にならないようにする。直接、頭皮に頭部冷却キャップ200が触れると凍傷するおそれがあるからである。使用者に頭部冷却キャップ200を装着した後、頭部冷却キャップ200を頭に密着させるべく、使用者自身がまたは介助者が頭部冷却キャップ200を押さえるとよい。密着性が悪いと頭皮冷却の効果が薄まるからである。そして、固定具付きのアウターキャップ300を頭部冷却キャップ200の上に被せる(S04)。このとき、アウターキャップ300を裏返して額側を使用者のおでこに合わせて、アウターキャップ300の左右後ろを使用者の頭に沿って滑らせるとよい。頭部冷却キャップ200とアウターキャップ300との間に隙間がないようにする。次に、両側開口部から引き出され外部に伸びた二本の第1のベルトを前記使用者の頸部で連結させて固定し、かつ、後部中央縁近傍から正面縁に向けて延びた二本の第2のベルトを第2の留め具により連結させて額周りを締め付ける。なお、頭サイズの大きい使用者については、使用者自身または介助者がアウターキャップ300を頭に押さえるようにするとよい。アウターキャップ300の存在により、頭部冷却キャップ200のずれを防止する。
【実施例3】
【0020】
実施例3を表を参照しながら説明する。
【0021】
本願出願人は、本発明に係るアウターキャップの効果を確認するための試験を行った。試験については、堺市の大容工業株式会社(大阪府堺市中区東山682)本社工場内にて2020年1月16日に実施した。
実施要領としては、被験者が本発明に係るインナーキャップと頭部冷却キャップとアウターキャップを装着した上で、インナーキャップの内側(頭髪に接した部分)に温度センサを置き、該温度センサにより温度を計測した。他方、市販の下記ヘルメットを本発明に係る頭部冷却キャップの上から装着した上で該温度センサにより計測し、本発明に係るアウターキャップを装着した場合の温度と比較した。なお、アウターキャップはアゴあて、側面を締め付けるためのテープを装着している。なお、アウターキャップは、原料成分に発泡性ゴム材料のネオプレン(登録商標)を用い、その表面及び裏面に織編物が貼り付けられたものや繊維が貼り付けられた素材からなる。
計測手順としては、頭皮温度が略一定に達した時点(装着後冷却を開始してから概ね10分経過後)から、(1) 本発明に係るアウターキャップを装着した状態で約30分間の頭皮温度を計測した。(2) アウターキャップの代わりにヘルメットを装着した状態で 約30分間の頭皮温度を計測した。なお、温度計測は データロガーにより、データは1分毎に自動的にロギング(採取)した。(1)と(2)の温度及び温度差を示した表が表1である。
表1に示すとおり、本発明に係るアウターキャップとヘルメットでは、全体を通してアウターキャップを装着した温度が低く保持されていることがわかる。平均温度差として、前頭部では0.57℃、右頭部では1.51℃、アウターキャップ装着がヘルメット装着よりも低く維持されている。
以上の結果、本発明に係るアウターキャップに、頭部冷却キャップによる頭皮への冷却効果を保持する効果を見出すことができる。

計測日時 2020/01/16 13:00ごろ から 15:00ごろまで
室温 26.9℃
湿度 21 %
計測場所 大容工業株式会社( 大阪府堺市)

ヘルメット
発売元 ミドリ安全株式会社
型式 軽作業帽 SCL-100A
品番 L100N ホワイト
SCL 100N-03G-3
素材 PE(ポリエチレン)
なお、頭部冷却キャップの上から装着できるように、ヘルメットに付属しているアゴあては外して使用している。

計測点 前頭部と右頭部 2点
使用した温度計 株式会社佐藤商事 TM-947SD 2台(1台が4チャネル)
使用したセンサ K熱電対
時間の単位:分
【表1】
【0022】
以上、本発明に係る医療用頭部冷却キャップセットにおける好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明に係る医療用頭部冷却キャップセットは、アウターキャップの留め具により頭部冷却キャップのずれを防止することにより、使用者にとってかぶりやすく、インナーキャップは適度の断熱効果を有するだけでなく使用者にとっては手ごろな価格で入手できるため、医療現場のみならず、家庭での頭皮冷却を行う場合等広く利用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 医療用頭部冷却キャップセット
100 インナーキャップ
101 インナーキャップ本体
111 前頭部領域
112 後頭部領域
113 項領域
102 左側頭部材
103 右側頭部材
120 130 ひれ状突出部
104 取手
200 頭部冷却キャップ
201 頭部冷却キャップ本体
210 冷却媒体流路
220 第1の冷却媒体ポート
230 第2の冷却媒体ポート
221 配管
231 配管
300 アウターキャップ
301 アウターキャップ本体
310 顎ベルト
311 顎ホルダ
320 額ベルト
図1
図2
図3
図4
図5