IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インターチップ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-LPHCSL伝送方式におけるドライバ 図1
  • 特許-LPHCSL伝送方式におけるドライバ 図2
  • 特許-LPHCSL伝送方式におけるドライバ 図3
  • 特許-LPHCSL伝送方式におけるドライバ 図4
  • 特許-LPHCSL伝送方式におけるドライバ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】LPHCSL伝送方式におけるドライバ
(51)【国際特許分類】
   H03K 19/0175 20060101AFI20220322BHJP
   H04L 25/02 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
H03K19/0175 220
H04L25/02 V
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020081228
(22)【出願日】2020-05-01
(65)【公開番号】P2021176216
(43)【公開日】2021-11-04
【審査請求日】2021-07-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398069894
【氏名又は名称】インターチップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128532
【弁理士】
【氏名又は名称】村中 克年
(72)【発明者】
【氏名】有吉 竜司
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第9692394(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0066354(US,A1)
【文献】特開2006-191482(JP,A)
【文献】特開2002-237748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K19/0175-19/0185
H04L25/02-25/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LPHCSL伝送方式におけるドライバであって、
電源となる電圧レギュレータと、
ソース側が前記電圧レギュレータに接続されたPMOSトランジスタである第1のトランジスタのドレイン側、ソース側がグランドに接続されたNMOSトランジスタである第2のトランジスタのドレイン側が第1の接続点を介して直列に接続されたスイッチング素子である第1のCMOS型トランジスタと、
前記第1の接続点に接続されるとともに、第1の伝送線路の一端が接続される第1の出力端子と、
他のソース側が前記電圧レギュレータに接続された他のPMOSトランジスタである第3のトランジスタのドレイン側、他のソース側が前記グランドに接続されたNMOSトランジスタである第4のトランジスタのドレイン側が第2の接続点を介して直列に接続されたスイッチング素子である第2のCMOS型トランジスタと、
前記第2の接続点に接続されるとともに、第2の伝送線路の一端が接続される第2の出力端子と、
前記第1のトランジスタのゲートと前記第2のトランジスタのゲートとにスイッチングのための第1のスイッチング信号を供給する第1のプリバッファと、
前記第3のトランジスタのゲートと前記第4のトランジスタのゲートとにスイッチングのための前記第1のスイッチング信号と逆位相の第2のスイッチング信号を供給する第2のプリバッファと、
を有することを特徴とするLPHCSL伝送方式におけるドライバ。
【請求項2】
請求項1に記載するLPHCSL伝送方式におけるドライバにおいて、
前記第1の接続点と前記グランドとの間に第1の抵抗素子を接続するとともに、前記第2の接続点と前記グランドとの間に第2の抵抗素子を
接続したことを特徴とするLPHCSL伝送方式におけるドライバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はLPHCSL伝送方式におけるドライバに関する。
【背景技術】
【0002】
比較的長距離の高速な通信では、ノイズ耐性などにすぐれる差動信号を利用した差動伝送方式が汎用されている。差動伝送方式に用いる差動信号には各種規格があるが、その一種としてのHCSL(High-speed current steering logic)方式が古くから提案されている。これを、図4に示す。同図中、01はHCSL方式のドライバ、02は信号を受けるLSIで形成したレシーバで、これらドライバ01とレシーバ02との間を伝送線路(特性インピーダンスZ0=50Ω)03,04で接続している。
【0003】
ここで、HCSL伝送方式に用いるドライバ01は、基本的に電流ソース型、すなわち出力がハイ・インピーダンスであって、終端抵抗(ほとんどの場合は50Ω)R01,R02に対して約0.75Vの信号振幅が得られるような電流が交互に切替えて供給される。そして、終端抵抗R01,R02を、レシーバ02に近接したボード上に配設することで、不要な反射を可及的に抑制する構成となっている。それでも、リンギングなどが発生することがあるので、ドライバ出力の間近にも、20~30Ω程度のダンピング抵抗R03,R04を配設することが推奨されている。
【0004】
上述のHCSL方式に対し、LPHCSL(Low power high-speed current steering logic)方式では、図5に示すように、ドライバ01の出力側を、HCSL方式の電流ソース型から、線路03,04の特性インピーダンス(殆どの場合は50Ω)に出力抵抗が整合したプシュプルバッファに変更する一方、レシーバ02側には終端抵抗を配置せずハイ・インピーダンスとすることで敢えて信号反射を起こし、レシーバ02端に現れる電圧振幅が、ドライバ01から発射する出力振幅の2倍になるようにする。ここで、レシーバ02側からドライバ01側に戻る反射波は、ドライバ01の出力抵抗が線路03,04の特性インピーダンスZとインピーダンス整合しているので、そこで吸収される。この結果、ボード上では、終端抵抗やダンピング抵抗が不要となり、部品点数が削減される。また、HCSL方式における終端抵抗R03,R04(図01参照)でのDC的な電流消費が無い分、低消費電流化を図ることができる。
【0005】
LPHCSL方式を採用する従来技術に係る差動伝送方式を開示する文献として特許文献1が公知となっている。ここで、特許文献1に開示する伝送方式では、2個一組で交互にスイッチング動作する4個二組のトランジスタがいずれもnチャンネルのMOSトランジスタで形成してある。このため、2個づつ交互に各MOSトランジスタを動作させるための電圧を生成するには、一方の組および他方の組に独立にスイッチング電圧を供給する2個のプリバッファ回路が必要になる。
【0006】
この結果、2個のプリバッファ回路からは、2種類の動作信号が正確なタイミングで生成されるように、厳密なタイミング調整を行う必要がある。
【0007】
この結果、特許文献1等に開示する従来のLPHCSL方式では、2個のプリバッファ回路間のタイミング調整等に手間がかかり、またこれに伴う構成が複雑になるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許登録 7,830,177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術に鑑み、スイッチングのタイミング調整が不要になり、構造も簡素化できるLPHCSL伝送方式におけるドライバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、
LPHCSL伝送方式におけるドライバであって、
電源となる電圧レギュレータと、
ソース側が前記電圧レギュレータに接続されたPMOSトランジスタである第1のトランジスタのドレイン側、ソース側がグランドに接続されたNMOSトランジスタである第2のトランジスタのドレイン側が第1の接続点を介して直列に接続されたスイッチング素子である第1のCMOS型トランジスタと、
前記第1の接続点に接続されるとともに、第1の伝送線路の一端が接続される第1の出力端子と、
他のソース側が前記電圧レギュレータに接続された他のPMOSトランジスタである第3のトランジスタのドレイン側、他のソース側が前記グランドに接続されたNMOSトランジスタである第4のトランジスタのドレイン側が第2の接続点を介して直列に接続されたスイッチング素子である第2のCMOS型トランジスタと、
前記第2の接続点に接続されるとともに、第2の伝送線路の一端が接続される第2の出力端子と、
前記第1のトランジスタのゲートと前記第2のトランジスタのゲートとにスイッチングのための第1のスイッチング信号を供給する第1のプリバッファと、
前記第3のトランジスタのゲートと前記第4のトランジスタのゲートとにスイッチングのための前記第1のスイッチング信号と逆位相の第2のスイッチング信号を供給する第2のプリバッファと、
を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の態様は、
請求項1に記載するLPHCSL伝送方式におけるドライバにおいて、
前記第1の接続点と前記グランドとの間に第1の抵抗素子を接続するとともに、前記第2の接続点と前記グランドとの間に第2の抵抗素子を
接続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば所定の伝送信号を生成する2個一組のトランジスタをCMOS型トランジスタで形成したので、当該CMOS型トランジスタを形成するPMOSトランジスタとNMOSトランジスタを動作させるプリバッファは、1個で済む。この結果、プリバッファは、従来技術のように、2種類の動作信号が正確なタイミングで生成されるように、厳密なタイミング調整を行う必要はなく、これに伴う構成の簡素化も実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係るLPHCSL伝送方式におけるドライバを示すブロック図である。
図2図1に示すドライバのプリバッファ部分を抽出し、その具体例を示すブロック図である。
図3図1に示すドライバのプリバッファ部分を抽出し、その他の具体例を示すブロック図である。
図4】従来技術に係るHCSL(High-speed current steering logic)方式の伝送系を概念的に示す説明図である。
図5】従来技術に係るLPHCSL(Low power high-speed current steering logic)方式の伝送系を概念的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係るLPHCSL伝送方式におけるドライバを示すブロック図である。同図に示すように、本形態に係るドライバは、調整電圧VREGが所定電圧(例えば、1.5v)に調整された電圧レギュレータ1、逆論理の2種類の2値信号を生成する信号生成部2、第1および第2のプリバッファ3,4、第1および第2のCMOS型トランジスタ5,6、第1および第2の出力端子OUT1,OUT2を有している。そして、電圧レギュレータ1から供給する調整電圧VREGを第1および第2のCMOS型トランジスタ5,6のスイッチング動作によりオン、オフさせて逆位相の2種類の伝送信号を生成し、第1および第2の出力端子OUT1,OUT2に接続する第1および第2の伝送線路(いずれも図示せず;以下同じ)を介し受信端に向けて差動伝送する。
【0019】
さらに詳言すると、第1のCMOS型トランジスタ5は、PMOSトランジスタである第1のトランジスタTr1とNMOSトランジスタである第2のトランジスタTr2からなるスイッチング素子であり、直列に接続された第1のトランジスタTr1と第2のトランジスタTr2との接続点には第1の出力端子OUT1を介して第1の伝送線路が接続される。また、第2のCMOS型トランジスタ6は、PMOSトランジスタである第3のトランジスタTr3とNMOSトランジスタである第4のトランジスタTr4からなるスイッチング素子であり、直列に接続された第3のトランジスタTr3と第4のトランジスタTr4との接続点には第2の出力端子OUT2を介して第2の伝送線路が接続される
【0020】
ここで、第1および第3のPMOSトランジスタTr1,Tr3のオン抵抗は、第1および第3のPMOSトランジスタTr1,Tr3のトランジスタサイズと、これらにそれぞれ直列に接続された調整抵抗素子R3,R5により100オームになるように調整されている。同様に、第2および第4のNMOSトランジスタTr2,Tr4のオン抵抗は、第2および第4のNMOSトランジスタTr2,Tr4のトランジスタサイズと、これらにそれぞれ直列接続された調整抵抗素子R4,R6により100オームになるように調整されている。
【0021】
さらに、第1および第2のCMOS型トランジスタ5,6と第1および第2の出力端子OUT1,OUT2との間には所定抵抗値(本例では100オーム)の第1の抵抗素子R1および第2の抵抗素子R2がそれぞれ並列に接続してある。
【0022】
本形態において、第1の抵抗素子R1および第2の抵抗素子R2を並列に接続することは必須ではない。出力インピーダンスの整合および波形振幅の調整を適切に実現することができれば、第1および第2の抵抗素子R1,R2を省略することができる場合がある。すなわち、次の条件が成立する場合である。
【0023】
第1および第2の抵抗素子R1,R2の抵抗値(R1,R2)=Z・(VREG-Vswing)(オーム)・・・(式1)、として決定される。
ここで、
;第1および第2の出力端子OUT1,OUT2に接続される第1および第2の伝送線路の特性インピーダンス、
REG;電圧レギュレータ1から供給する調整電圧、
swing;第1および第2の伝送線路のレシーバ側で要求される信号電圧振幅である。
【0024】
第1および第2の抵抗素子R1,R2が不要な場合とは、この部分の抵抗値が無限大、すなわち前記式(1)において、(VREG=Vswing)となる場合である。かかる条件は、本形態(特性インピーダンスZ=50(オーム))の場合、第1および第2の抵抗素子R1,R2の抵抗値がそれぞれ50(オーム)のときに成立する。
【0025】
本形態は、Z=50(オーム)、VREG=1.5(v)、Vswing=0.75(v)の場合であるが、同様の場合で、Z=50(オーム)、Vswing=0.75(v)に対して、例えばVREG=1.2(v)と設定すると、PMOSトランジスタTr1,Tr3およびNMOSトランジスタTr2,Tr4のオン抵抗は80オーム、第1および第2の抵抗素子R1,R2の抵抗は約133(オーム)となるように設計する。このとき、消費電流は前述の場合よりも最大で約2(mA)削減される。このようにVREGを削減すると、電流は削減し得るが、第1および第3のPMOSトランジスタTr1,Tr3ならびに第2および第4のNMOSトランジスタTr2,Tr4のスイッチングスピードが遅くなり波形が鈍るとともに、特に第1および第3のPMOSトランジスタTr1、Tr3側で所定のオン抵抗を得ることが困難になってくるので、VREG=1.2~1.5(v)程度が好適である。
【0026】
同様に、特性インピーダンスZ=75(オーム)の伝送線路の系統に適用する場合の例としては、Z0=75(オーム)、VREG=1.5V、Vswing=0.75Vとすると、PMOSトランジスタTr1,Tr3およびNMOSトランジスタTr2,Tr4のオン抵抗は150(オーム)、第1および第2の抵抗素子R1,R2の抵抗は約150(オーム)となるように設計すれば良い。
【0027】
次に、第1および第2のプリバッファ3,4の具体例に関して説明する。図2は、図1に示すドライバのプリバッファ部分を抽出し、その具体例を示すブロック図である。なお、本図では第1の出力端子OUT1側(プリバッファ3側)のみを示す。出力端子OUT2側(プリバッファ4側)は同構成であるので説明を省略する。
【0028】
本例に示す第1のプリバッファ3は、第3のCMOS型トランジスタ7で形成してある。かかる第1のプリバッファ3は、PMOSトランジスタTr5およびNMOSトランジスタ6のそれぞれのドレインにオン抵抗調整用の抵抗素子が付いているが、出力バッファ形式としては単純なCMOS型出力バッファとして構成してある。このため、プリバッファとしても非常に単純なCMOS型出力バッファ用のもので済んでしまう。最も単純なものは、インバータである。
【0029】
図3は、図1に示すドライバのプリバッファ部分を抽出し、その他の具体例を示すブロック図である。なお、本図でも第1の出力端子OUT1側(プリバッファ3側)のみを示す。
【0030】
本例は、出力端子OUT1に得られる出力をトライステート(Hi‐Z)とする場合である。本例におけるバッファ3は、ナンド回路3Aおよびノア回路3Bを有している。ここで、ナンド回路3Aは、一方の入力端子にイネーブルライン8の出力を入力し、他方の入力端子に伝送信号Sを入力する。そして、第1のトランジスタTr1のゲートにナンド回路3Aの出力であるスイッチング信号を供給する。
【0031】
一方、ノア回路3Cは、一方の入力端子にイネーブルライン8の出力をインバータ3Bで反転させて入力し、他方の入力端子に伝送信号Sを入力する。そして、第2のトランジスタTr2のゲートにノア回路3Cの出力であるスイッチング信号を供給する。
【0032】
本形態において、所望のトライステートは、第1の抵抗素子R1に直列にn型のMOSトランジスタTr7を接続し、このMOSトランジスタTr7のゲートにイネーブルライン8の出力を入力するように構成することでも実現できる。
【符号の説明】
【0033】
1 電圧レギュレータ
3 第1のプリバッファ
3A ナンド回路
3B インバータ
3C NOR回路
4 第2のプリバッファ
5 第1のCMOS型トランジスタ
6 第2のCMOS型トランジスタ
7 第3のCMOS型トランジスタ
8 イネーブルライン
S 伝送信号
Tr1 PMOSトランジスタ
Tr2 NMOSトランジスタ
Tr7 NMOSトランジスタ
OUT1 第1の出力端子
OUT2 第2の出力端子
R1 第1の抵抗素子
R2 第2の抵抗素子
図1
図2
図3
図4
図5