(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】時分割複信を用いるセルラ通信システムにおけるリソース割り当てを行う制御装置、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 28/06 20090101AFI20220322BHJP
H04W 72/04 20090101ALI20220322BHJP
H04W 36/06 20090101ALI20220322BHJP
【FI】
H04W28/06 130
H04W72/04 131
H04W72/04 110
H04W36/06
(21)【出願番号】P 2020095649
(22)【出願日】2020-06-01
【審査請求日】2020-11-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】櫨 紗也子
(72)【発明者】
【氏名】寺部 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】高相 一輝
【審査官】桑江 晃
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/229165(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/038590(WO,A1)
【文献】特表2009-516972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信サービスのそれぞれについて、当該通信サービスが実行される際に要求される上りリンクと下りリンクの無線リソースの使用量に関する情報を取得する取得手段と、
前記複数の通信サービスのそれぞれを実行する端末装置の数を特定する特定手段と、
前記端末装置の数と前記無線リソースの使用量に関する情報とに基づいて、
前記複数の通信サービスを提供するのに必要な上りリンクと下りリンクで使用される無線リソースの量を推定する推定手段と、
推定された無線リソースの量に基づいて、
前記複数の通信サービスを提供する基地局装置における時分割複信(TDD)
の上りリンク
のタイムスロットの数と下りリンク
のタイムスロットの数との比率の設定を変更するかを決定する決定手段と、
前記設定を変更すると決定された場合に、当該設定のための処理を実行する設定手段と、
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記特定手段は、開催されるイベントを特定し、当該特定されたイベントと、過去のイベントにおいて使用された通信サービスに関する統計に基づいて、前記複数の通信サービスのそれぞれを実行する前記端末装置の数を特定する、ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記設定が変更されると決定された場合、所定の通信サービスを実行中の端末装置を、当該変更が実行される前に異なるバンドへハンドオーバさせる制御手段をさらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記設定手段によって前記設定が変更された後に、前記異なるバンドへハンドオーバさせた端末装置を元のバンドにハンドオーバさせる、ことを特徴とする請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記決定手段による決定を行うか否かを判定する判定手段をさらに有する、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記基地局装置に接続している端末装置の数が所定数に達した場合に、前記決定手段による決定を行うと判定する、ことを特徴とする請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記判定手段は、前記基地局装置において上りリンクの無線リソースの使用率が所定値を超えた場合に、前記決定手段による決定を行うと判定する、ことを特徴とする請求項5に記載の制御装置。
【請求項8】
前記判定手段は、前記基地局装置において下りリンクの無線リソースの使用率が所定値を超えた場合に、前記決定手段による決定を行うと判定する、ことを特徴とする請求項5に記載の制御装置。
【請求項9】
前記判定手段は、前記基地局装置における前記設定における上りリンクと下りリンクに割り当てられている無線リソースの量と、上りリンクと下りリンクで使用されている無線リソースの量との差が所定値を超えた場合に、前記決定手段による決定を行うと判定する、ことを特徴とする請求項5に記載の制御装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記基地局装置に含まれる、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項11】
制御装置によって実行される制御方法であって、
複数の通信サービスのそれぞれについて、当該通信サービスが実行される際に要求される上りリンクと下りリンクの無線リソースの使用量に関する情報を取得することと、
前記複数の通信サービスのそれぞれを実行する端末装置の数を特定することと、
前記端末装置の数と前記無線リソースの使用量に関する情報とに基づいて、
前記複数の通信サービスを提供するのに必要な上りリンクと下りリンクで使用される無線リソースの量を推定することと、
推定された無線リソースの量に基づいて、
前記複数の通信サービスを提供する基地局装置における時分割複信(TDD)
の上りリンク
のタイムスロットの数と下りリンク
のタイムスロットの数との比率の設定を変更するかを決定することと、
前記設定を変更すると決定された場合に、当該設定のための処理を実行することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
制御装置に備えられたコンピュータに、
複数の通信サービスのそれぞれについて、当該通信サービスが実行される際に要求される上りリンクと下りリンクの無線リソースの使用量に関する情報を取得させ、
前記複数の通信サービスのそれぞれを実行する端末装置の数を特定させ、
前記端末装置の数と前記無線リソースの使用量に関する情報とに基づいて、
前記複数の通信サービスを提供するのに必要な上りリンクと下りリンクで使用される無線リソースの量を推定させ、
推定された無線リソースの量に基づいて、
前記複数の通信サービスを提供する基地局装置における時分割複信(TDD)
の上りリンク
のタイムスロットの数と下りリンク
のタイムスロットの数との比率の設定を変更するかを決定させ、
前記設定を変更すると決定された場合に、当該設定のための処理を実行させる、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時分割複信を用いるセルラ通信システムにおけるリソース割り当て技術に関する。
【背景技術】
【0002】
セルラ通信システムにおいて、上りリンク信号と下りリンク信号とが時分割で送信される時分割複信(TDD)が利用可能である。TDDシステムでは、トラフィック量などに応じて上りリンクと下りリンクとの割合やフレーム構成等を柔軟に設定することができる。すなわち、TDDシステムは、実際に上りリンク及び下りリンクで送受信されるデータの量と、上りリンクと下りリンクとに割り当てられるタイムスロットの比率を一致させることによって、無線リソースを有効に活用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
イベントなどにおいて、多数のユーザが一斉に同じアプリケーションを使用して、例えば上りリンクのトラフィックが急増することが想定されうる。一般的には下りリンクのトラフィックの量が多いこの場合、実際に上りリンクと下りリンクで送受信されるデータの量と、それぞれに割り当てられているタイムスロットの量がミスマッチを起こし、無線リソースの利用効率が著しく劣化してしまいうる。
【0004】
本発明は、TDDシステムにおける無線リソースの利用効率を改善する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様による制御装置は、複数の通信サービスのそれぞれについて、当該通信サービスが実行される際に要求される上りリンクと下りリンクの無線リソースの使用量に関する情報を取得する取得手段と、前記複数の通信サービスのそれぞれを実行する端末装置の数を特定する特定手段と、前記端末装置の数と前記無線リソースの使用量に関する情報とに基づいて、前記複数の通信サービスを提供するのに必要な上りリンクと下りリンクで使用される無線リソースの量を推定する推定手段と、推定された無線リソースの量に基づいて、前記複数の通信サービスを提供する基地局装置における時分割複信(TDD)の上りリンクのタイムスロットの数と下りリンクのタイムスロットの数との比率の設定を変更するかを決定する決定手段と、前記設定を変更すると決定された場合に、当該設定のための処理を実行する設定手段と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、TDDシステムにおける無線リソースの利用効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】制御装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図4】制御装置によって実行される処理の流れの例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち2つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
(システム構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。本無線通信システムは、セルラ無線通信システムであり、基地局装置101と端末装置102とを含んで構成される。基地局装置101および端末装置102は、例えばロングタームエボリューション(LTE)や第5世代(5G)の無線通信規格に準拠して動作可能な通信装置である。なお、
図1には、1台の基地局装置101と少数の端末装置102のみを示しているが、当然に
図1より多数の基地局装置と端末装置が存在しうる。
【0010】
本無線通信システムでは、基地局装置101から端末装置102へ信号を送信する下りリンクの通信と、端末装置102から基地局装置101へ信号を送信する上りリンクの通信とが時分割で実行される時分割複信(TDD)方式が用いられるものとする。TDDでは、下りリンクの通信量と上りリンクの通信量との比率に応じて、下りリンクに割り当てられるタイムスロットの数と上りリンクに割り当てられるタイムスロットの数との比率を柔軟に調整することにより、十分に高い周波数利用効率を得ることができる。LTEでは、例えば、1サブフレームに含まれる10個のタイムスロットのうちで2個のガードタイムスロットを除いた8個のタイムスロットが上りリンクと下りリンクとに割り当てられるように構成される。例えば、下りリンクのデータ量の方が多い傾向に応じて、2個のタイムスロットが上りリンクに割り当てられ、6個のタイムスロットが下りリンクに割り当てられうる。
【0011】
一方で、例えば、特定の場所やイベント時などの環境において、そのイベントに参加している多数のユーザが、自身が有する端末装置において、上りリンクの通信量が多く下りリンクの通信量が少ないアプリケーションを一斉に実行する環境などが想定される。このような場合、下りリンク用のタイムスロットが相対的に多く割り当てられている状態においては、下りリンク用のタイムスロットの一部が使用されず、一方で、上りリンク用のタイムスロットの量が、上りリンクで送信されるべきデータの全てを送信するには不十分となることが想定される。
【0012】
このため、本実施形態では、制御装置(
図1において不図示)が、上りリンクと下りリンクとのそれぞれに適切な量のタイムスロットを設定するようにする。なお、制御装置は、例えば基地局装置101の内部に含まれた装置であり、その基地局装置101における上りリンクと下りリンクのタイムスロットの割り当てを制御する。また、この制御装置は、他基地局装置と通信可能に構成され、その他基地局装置における上りリンクと下りリンクのタイムスロットの割り当てを制御してもよい。また、制御装置は、基地局装置101とは別個の装置であってもよい。そして、制御装置は、制御対象の1つ以上の基地局装置と接続され、その1つ以上の基地局装置における上りリンクと下りリンクのタイムスロットの割り当てを制御しうる。
【0013】
制御装置は、このような制御のために、まず、複数の通信サービスのそれぞれについて、その通信サービスが実行される際に要求される上りリンクと下りリンクの無線リソースの使用量に関する情報を取得する。制御装置は、例えば、複数の通信サービスのそれぞれについて、サービス品質を担保可能な最小限の上りリンク/下りリンクの無線リソースの使用量を示す情報を取得する。一例において、チャットサービス、動画ストリーミングサービス、および動画配信サービスについて、上りリンクの無線リソースの使用量が、それぞれ、1、10、および100(単位は例えばリソースブロック/1フレーム)、下りリンクの無線リソースの使用量が、それぞれ、5、200、および20(単位は例えばリソースブロック/1フレーム)のように取得される。この例では、チャットサービスは、上りリンクと下りリンクの無線リソースの使用比率が1:5であり、下りリンクの必要リソース量が多いが、他のサービスと比して、相対的に少量の無線リソースが必要であることになる。また、動画ストリーミングサービスは、上りリンクと下りリンクの無線リソースの使用比率が10:200であり、動画をダウンロードするために、下りリンクの必要リソース量が上りリンクの必要リソース量と比して大幅に多い。また、動画配信サービスは、上りリンクと下りリンクの無線リソースの使用比率が100:20であり、例えば撮影などによって取得した動画をアップロードするために、上りリンクの必要リソース量が下りリンクの必要リソース量と比して大幅に多い。ここでの必要リソース量は、例えば、各サービスにおける過去の統計に基づいて特定されうる。なお、所定のリソース量を基準として各通信サービスにおける必要リソース量を特定できる情報であれば任意の情報が特定されてもよい。すなわち、必要リソース量は、絶対的な量を示す値である必要はなく、相対的な量であってもよい。また、必要リソース量とインデクスが事前に対応付けられた表を保持しておき、各サービスに対応するインデクスの値を必要リソースに関する情報として取得してもよい。また、制御装置は、例えば自装置内のメモリ等の記憶装置から情報を読み出すことによって必要リソース量に関する情報を取得してもよく、外部から情報を取得する必要はない。
【0014】
また、制御装置は、複数の通信サービスのそれぞれを実行する端末装置の数を特定する。例えば、制御装置は、所定の通信サービスを利用するユーザが多く集まることが想定されるイベントの開催日程などの情報を取得して、そのイベントへの参加人数を過去の統計等に基づいて特定することにより、その所定の通信サービスがどのタイミングでどの程度の数の端末装置によって実行されるかを特定しうる。また、制御装置は、開催される予定のイベントと同種の過去のイベントにおいて、どのような通信サービスが実行されたか等の、使用された通信サービスに関する統計に基づいて、複数の通信サービスのそれぞれを実行する端末装置の数を特定(予測)してもよい。
【0015】
そして、制御装置は、端末装置の数と無線リソースの使用量に関する情報とに基づいて、上りリンクと下りリンクで使用される無線リソースの量を推定する。例えば、上述のチャットサービス、動画ストリーミングサービス、および動画配信サービスを使用する端末装置の数が、それぞれ、22、3、および5である第1の場合について検討する。なお、1つの端末装置が複数の通信サービスを実行する場合は、それぞれの通信サービスにおいてその端末装置をカウントしうる。すなわち、例えば、チャットサービスと動画ストリーミングサービスとを並行して実行する端末装置が存在する場合、その端末装置は、上述の22台のうちの1台であると共に、上述の3台のうちの1台であるとカウントされうる。この第1の場合では、各端末装置に対して適切に通信サービスを提供するのに必要な上りリンクの無線リソース量は、1×22+10×3+100×5=552となる。一方、それらの端末装置に対して適切に通信サービスを提供するのに必要な下りリンクの無線リソース量は、5×22+200×3+20×5=810となる。また、上述のチャットサービス、動画ストリーミングサービス、および動画配信サービスを使用する端末装置の数が、それぞれ、25、4、および1である第2の場合について検討する。この第2の場合では、各端末装置に対して適切に通信サービスを提供するのに必要な上りリンクの無線リソース量は、1×25+10×4+100×1=165となる。一方、それらの端末装置に対して適切に通信サービスを提供するのに必要な下りリンクの無線リソース量は、5×25+200×4+20×1=945となる。このように、各通信サービスを実行する端末装置の数と各通信サービスで必要となる無線リソースの量とに基づいて、あるタイミングで上りリンクと下りリンクとにおいて必要な無線リソースの量を特定することが可能となる。
【0016】
そして、制御装置は、上述のようにして推定された無線リソースの量に基づいて、上りリンクと下りリンクとのそれぞれに割り当てるタイムスロットの設定を変更するかを決定する。例えば、上述の第1の場合では、上りリンクの必要な無線リソースの量と下りリンクの必要な無線リソースの量との比率が概ね3:4となっている。このため、例えば、上りリンクと下りリンクとのそれぞれに割り当てるタイムスロットの比率が3:4となる(又は3:4に近い比率となる)ように、タイムスロットが設定されるべきである。このとき、制御装置は、制御対象の基地局装置における現在のタイムスロットの設定が適切であるか、すなわち、上りリンクと下りリンクとのそれぞれに割り当てるタイムスロットの比率が(概ね)3:4となっているか否かを判定する。そして、制御装置は、現在のタイムスロットの設定が適切であると判定した場合には設定を変更せず、現在のタイムスロットの設定が適切でないと判定した場合に設定を変更することを決定する。ここで、タイムスロットの設定は、例えば、複数のタイムスロットのそれぞれを上りリンクと下りリンクとのいずれに割り当てるかを指定する設定でありうるが、これに限られない。例えば、上りリンクと下りリンクのために設定されるべきタイムスロットの比率が、タイムスロットの設定として扱われてもよい。すなわち、複数のタイムスロットのそれぞれが上りリンクと下りリンクとのいずれで用いられるべきであるかの指定を伴わずに、タイムスロット数の比率のみが設定として考慮されてもよい。
【0017】
制御装置は、制御対象の基地局装置について、設定を変更すべきと決定した場合に、その基地局装置の設定のための処理を実行する。制御装置は、例えば、その基地局装置に対して設定値を出力して、設定変更を指示しうる。例えば、TDDのスロットフォーマットを変更すべきことを示す指示が、制御対象の基地局装置へ出力される。
【0018】
なお、上述の設定の変更がある場合、設定変更処理の実行中は通信ができなくなってしまう場合がある。このため、制御装置は、例えば重要度の高い所定の通信サービスを実行中の端末装置を、その設定変更処理の実行前に異なるバンド(設定変更の対象外の周波数帯)へハンドオーバさせる。これにより、その重要度の高い所定の通信サービスを実行中の端末装置が一時的に通信できなくなることや場合によっては接続が切断されることを防ぐことができる。なお、元のバンド(設定変更がされた周波数帯)は、ハンドオーバした端末装置にとって、無線品質が良いなど、通信に適したバンドであることが想定されうる。このため、制御装置は、重要な所定の通信サービスを実行中の端末装置を、設定変更中には一時的に通信できなくなることを防ぐために他のバンドに退避させて通信を継続させ、設定変更後にその端末装置を通信により適した元のバンドへ戻すようにしてもよい。すなわち、制御装置は、設定変更処理が終了した後に、設定変更に伴って異なるバンドへハンドオーバさせた端末装置を、元のバンドへハンドオーバさせてもよい。なお、制御装置は、ハンドオーバさせた端末装置のハンドオーバ先およびハンドオーバ元のバンドでの無線品質に基づいて、ハンドオーバ元のバンドにハンドオーバさせるか否かを判定してもよい。また、制御装置は、ハンドオーバさせた端末装置の各バンドでの無線品質と、その端末装置が実行中の通信サービスにおいて要求される無線品質とに基づいて、その端末装置が実行中の通信サービスの要求無線品質を満たすバンドを特定し、そのバンドのいずれかにハンドオーバさせるようにしてもよい。制御装置は、このときに、ハンドオーバ元のバンドにおける無線品質が、端末装置の実行中の通信サービスの要求無線品質を満たす場合にのみ、そのハンドオーバ元のバンドへハンドオーバさせてもよい。また、制御装置は、ハンドオーバ元のバンドと異なるバンドにおける無線品質が、端末装置の実行中の通信サービスを満たす場合に、そのハンドオーバ元のバンドと異なるバンドへハンドオーバさせてもよい。また、制御装置は、ハンドオーバ元のバンドと異なるバンドにおける無線品質が、端末装置の実行中の通信サービスの要求無線品質を満たす場合であっても、そのハンドオーバ元のバンドの無線品質が実行中の通信サービスの要求無線品質を満たす場合には、ハンドオーバ元のバンドを優先して、そのハンドオーバ元のバンドへハンドオーバさせてもよい。また、制御装置は、各バンドの使用されていないリソースの量に基づいて、端末装置が実行中の通信サービスで要求されるリソース量を確保可能なバンドの中から、実行中の通信サービスの要求無線品質を満たすバンドを選択して、その端末装置をハンドオーバさせてもよい。このときも、リソース量を十分確保可能で、要求無線品質を満たすバンドの中に、ハンドオーバ元のバンドが含まれる場合は、制御装置は、そのハンドオーバ元のバンドを優先して、ハンドオーバさせた端末装置をそのハンドオーバ元のバンドへハンドオーバさせうる。
【0019】
なお、制御装置は、上述のような設定変更の有無の決定や設定変更処理を定期的/継続的に実行してもよいし、所定の条件が満たされた場合に実行してもよい。制御装置は、このために、例えば、処理を実行するタイミングが到来したかの判定や、処理を実行すべき所定の条件が満たされたかの判定などを行うように構成されうる。また、制御装置は、例えば、所定周期ごとに処理を実行すべき所定の条件が満たされたかの判定を行ってもよい。これによれば、不必要に設定が変更されることを防ぎ、必要な場合に設定が変更されるようにすることができる。この結果、設定変更に伴う通信不可期間の発生や、不必要なシグナリングの発生を防ぐことが可能となる。
【0020】
ここで、所定の条件は、例えば、制御対象の基地局装置に接続している端末装置の数が所定数に達したことを含みうる。この場合、制御装置は、制御対象の基地局装置に接続している端末装置の数が所定数に達した場合に、上述のような設定変更の有無の決定や設定変更処理を実行する。これによれば、端末装置の数が少なく、上りリンク及び下りリンクに割り当てられた無線リソースの量の比率と、実際に使用されている無線リソースの量の比率とが乖離していても、その乖離によって周波数利用効率が劣化することが生じないことが予見される場合に、不必要に設定が変更されることを防ぐことができる。
【0021】
また、所定の条件は、例えば、制御対象の基地局装置において上りリンクの無線リソースの使用率が所定値を超えたことを含みうる。この場合、制御装置は、制御対象の基地局装置において上りリンクの無線リソースの使用率が所定値を超えた場合に、上述のような設定変更の有無の決定や設定変更処理を実行する。これによれば、上りリンクにおける実際の通信量が少なく、上りリンクに割り当てられた無線リソースの量と、実際に上りリンクで使用されている無線リソースの量とが乖離していても、その乖離によって周波数利用効率が劣化することが生じないことが予見される場合に、不必要に設定が変更されることを防ぐことができる。一例において、上りリンクに割り当てられた無線リソースの量が少ない場合に、この条件が使用されうる。
【0022】
また、所定の条件は、例えば、制御対象の基地局装置において下りリンクの無線リソースの使用率が所定値を超えたことを含みうる。この場合、制御装置は、制御対象の基地局装置において下りリンクの無線リソースの使用率が所定値を超えた場合に、上述のような設定変更の有無の決定や設定変更処理を実行する。これによれば、下りリンクにおける実際の通信量が少なく、下りリンクに割り当てられた無線リソースの量と、実際に下りリンクで使用されている無線リソースの量とが乖離していても、その乖離によって周波数利用効率が劣化することが生じないことが予見される場合に、不必要に設定が変更されることを防ぐことができる。一例において、下りリンクに割り当てられた無線リソースの量が少ない場合に、この条件が使用されうる。
【0023】
また、所定の条件は、制御対象の基地局装置において割り当てられている上りリンクと下りリンクとの無線リソースの量と、上りリンクと下りリンクで実際に使用されている無線リソースの量との差が所定値を超えたことを含みうる。この場合、制御装置は、制御対象の基地局装置において割り当てられている上りリンクと下りリンクとの無線リソースの量と、上りリンクと下りリンクで実際に使用されている無線リソースの量との差が所定値を超えた場合に、上述のような設定変更の有無の決定や設定変更処理を実行する。これによれば、上りリンクと下りリンクに割り当てられた無線リソースの量と、実際に使用されている無線リソースの量とが乖離した状況において、設定を適切に調整することが可能となる。一例において、例えばイベント等に応じて設定が変更され、そのイベントが終了した後などに、設定された無線リソースの量と実際の通信量との乖離が発生したことに応じて、設定をもとに戻すための処理を実行するためにこの所定の条件が使用されうる。
【0024】
(装置の構成)
続いて、上述のような処理を実行する制御装置のハードウェア構成例について
図2を用いて説明する。制御装置は、一例において、プロセッサ201、ROM202、RAM203、記憶装置204、及び通信回路205を含んで構成される。プロセッサ201は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、制御装置の全体の処理や、上述の各処理を実行する。ROM202は、制御装置が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM203は、プロセッサ201がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置204は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。通信回路205は、例えば、有線通信又は無線通信用の回路によって構成される。通信回路205は、例えば、制御装置が基地局装置に含まれる場合、基地局装置の無線通信機能との間の内部インタフェースでの通信用の回路を含んで構成される。また、通信回路205は、例えば、制御装置が基地局装置の外部に存在する場合は、基地局装置との間で有線又は無線の通信を行うための回路を含んで構成される。また、通信回路205は、例えば、他の制御装置や他のネットワークノードとの有線または無線での通信を行うための回路を含んでもよい。なお、
図2では、1つの通信回路205が図示されているが、制御装置は、複数の通信回路を有しうる。
【0025】
図3に、制御装置の機能構成例を示す。制御装置は、例えば、リソース使用量情報取得部301、サービス実行端末数特定部302、必要リソース量推定部303、設定変更要否決定部304、および設定制御部305を含んで構成される。また、制御装置は、オプションとして、ハンドオーバ制御部306や処理実行判定部307を含みうる。なお、これらの機能部は、例えばプロセッサ201が、ROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを実行することによって実現されうる。ただし、これは一例であり、これらの機能部を実現する専用のハードウェアが用意されてもよい。
【0026】
リソース使用量情報取得部301は、制御対象の基地局装置を介して端末装置に提供可能な複数の通信サービスのそれぞれについて、その通信サービスが実行される際に要求される上りリンクと下りリンクの無線リソースの使用量に関する情報を取得する。この情報は、例えば制御対象の基地局装置から取得されうる。各通信サービスについての無線リソースの使用量は、例えば、制御対象の基地局装置においてその通信サービスを過去に提供した際の実績値の統計に基づく量でありうる。また、制御対象の基地局装置が提供するサービスエリアを複数の領域に分割し、その領域ごとに無線リソースの使用量が特定されてもよい。サービス実行端末数特定部302は、制御対象の基地局装置を介して端末装置に提供可能な複数の通信サービスのそれぞれを実行する端末装置の数を特定する。サービス実行端末数特定部302は、例えば、開催予定のイベントを特定し、その特定されたイベントと、過去のイベントにおいて使用された通信サービスに関する統計に基づいて、各通信サービスを実行する端末装置の数を特定しうる。なお、複数の通信サービスを実行する端末装置が存在する場合は、各通信サービスにおいてその端末装置をカウントしうる。
【0027】
必要リソース量推定部303は、リソース使用量情報取得部301によって取得された無線リソースの使用量に関する情報と、サービス実行端末数特定部302によって特定された各通信サービスを実行する端末装置の数とに基づいて、上りリンクと下りリンクで使用される無線リソースの量を推定する。必要リソース量推定部303は、例えば、各通信サービスについて要求される無線リソース量にその通信サービスを実行する端末装置の数を乗じた値を特定し、全通信サービスについてのその値を加算することによって、上りリンクと下りリンクで使用される無線リソースの量を推定する。
【0028】
設定変更要否決定部304は、推定した上りリンクと下りリンクで使用される無線リソースの量に基づいて、制御対象の基地局装置における上りリンクと下りリンクとのそれぞれに割り当てるタイムスロットの設定を変更するかを決定する。設定変更要否決定部304は、例えば、現在のタイムスロットの設定における上りリンクと下りリンクのタイムスロットの数の比率と、推定した上りリンクと下りリンクで使用される無線リソースの量を達成するのに必要な上りリンクと下りリンクのタイムスロットの数の比率との乖離を特定し、その乖離が所定レベルを超える場合に、設定変更が必要であると決定しうる。設定制御部305は、設定変更要否決定部304によって設定を変更すると決定された場合に、その設定変更のための処理を実行する。例えば、設定制御部305は、制御対象の基地局装置に対して所定のメッセージを送信して、その基地局装置における上りリンクと下りリンクのタイムスロットの数の比率を変更しうる。
【0029】
ハンドオーバ制御部306は、設定制御部305が設定変更処理を実行する場合に、例えば切断が許されない所定の通信サービスを実行中の端末装置を、タイムスロットの設定の変更を行わない他のバンドにハンドオーバさせる。また、ハンドオーバ制御部306は、設定変更後に、必要に応じて、他のバンドにハンドオーバさせた端末装置を元のバンドにハンドオーバさせてもよい。処理実行判定部307は、設定変更要否決定部304による決定などの一連の処理を実行するか否かの判定を行う。処理実行判定部307は、例えば、所定の条件が満たされた場合に、その一連の処理を実行すると判定する。
【0030】
(処理の流れ)
続いて、
図4を用いて、制御装置によって実行される処理の流れの例について概説する。なお、各処理ステップにおける詳細な処理については、上述の通りであるため、ここでの説明については省略する。
【0031】
本処理では、制御装置は、まず、所定の条件を満たすか否かを判定して、タイムスロット設定の変更に関する各種処理を実行するか否かを判定する(S401)。そして、所定の条件が満たされない場合(S401でNO)は、その後の処理は実行されずに処理が終了する。一方、制御装置は、所定の条件を満たす場合(S401でYES)、処理をS402へ移す。なお、この判定は行われなくてもよく、この場合、処理はS402から開始されてもよい。また、この判定は、例えば後述のS405の判定の直前に実行されてもよい。すなわち、少なくとも設定変更が行われるか否かの決定の前にS401の判定がされていれば足り、そのタイミングは他のタイミングであってもよい。
【0032】
S402において、制御装置は、制御対象の基地局装置が提供可能な複数の通信サービスのそれぞれについて、上りリンク及び下りリンクのリソース使用量に関する情報を取得する。そして、制御装置は、その複数の通信サービスのそれぞれを実行する端末装置の数を特定する(S403)。そして、制御装置は、S402において取得された情報と、S403において特定された数とに基づいて、制御対象の基地局装置において各端末装置に対して所望の通信サービスを提供するのに必要な上りリンク及び下りリンクの無線リソースの量を推定する(S404)。その後、制御装置は、S404において推定された無線リソースの量に基づいて、制御対象の基地局装置においてタイムスロットの設定(例えば上りリンクと下りリンクに割り当てられるタイムスロットの数の比率の設定)を変更する必要があるか否かを決定する(S405)。例えば、制御装置は、S404で推定された無線リソースの量を、現在のタイムスロットの設定によって提供することができない場合に、設定変更が必要であると決定しうる。設定変更が必要でない場合(S405でNO)は、その後の処理は実行されずに処理が終了する。
【0033】
制御装置は、制御対象の基地局装置においてタイムスロットの設定を変更する必要があると判定した場合(S405でYES)、そのタイムスロット設定の変更処理を実行する(S408)。制御装置は、例えば、その基地局装置へ所定のメッセージを送信することにより、タイムスロットの設定を変更させる。なお、制御装置は、このタイムスロット設定の変更処理を実行するのに先立って、例えば接続の切断が許容されない所定の通信サービスを実行中の端末装置が、制御対象の基地局装置に接続されているか否かを判定し(S406)、そのような端末装置が存在する場合(S406でYES)に、その端末装置を他のバンドにハンドオーバさせてもよい(S407)。なお、制御装置は、場合によっては、設定変更処理の終了後に、その端末装置を元のバンドにハンドオーバさせてもよい。
【0034】
以上のようにして、制御装置は、制御対象の基地局装置において使用される上りリンクと下りリンクの無線リソースの量を、各通信サービスを実行する端末装置の数等に基づいて推定して、その推定値に基づいてタイムスロットの設定変更の要否を判定する。そして、制御装置は、必要に応じてタイムスロットの設定を変更することにより、TDDシステムにおける無線リソースの利用効率を改善することが可能となる。また、制御装置は、所定の条件を用いて設定変更要否の決定等の一連の処理を実行するか否かを判定することにより、不必要に設定変更が行われないようにし、通信が行うことのできない期間の発生や、不必要なシグナリングの発生を抑制することができる。さらに、制御装置は、設定変更が行われる際に、その設定変更に先立って、所定の通信サービスを実行中の端末装置を他のバンドにハンドオーバさせることにより、その端末装置に通信を維持させることができる。
【0035】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。