(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】三次元計測装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20220322BHJP
G01B 11/02 20060101ALI20220322BHJP
G01B 9/02 20220101ALI20220322BHJP
【FI】
G01B11/24 D
G01B11/02 G
G01B9/02
(21)【出願番号】P 2020149129
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2021-10-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】石垣 裕之
(72)【発明者】
【氏名】二村 伊久雄
(72)【発明者】
【氏名】間宮 高弘
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-100961(JP,A)
【文献】特表2009-516171(JP,A)
【文献】特開2016-070851(JP,A)
【文献】国際公開第2014/185133(WO,A1)
【文献】特開昭59-058305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01B 9/00-9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射する所定の光を2つの光に分割し、一方の光を計測光として被計測物に照射可能としかつ他方の光を参照光として参照面に照射可能とすると共に、これらを再び合成して出射可能な所定の光学系と、
前記所定の光学系に対し入射させる所定の光を出射可能な照射手段と、
前記所定の光学系から出射される出力光を撮像可能な撮像手段と、
前記計測光を前記被計測物へ向け照射させる計測光用の対物レンズと、
前記参照光を前記参照面へ向け照射させる参照光用の対物レンズと、
前記出力光を前記撮像手段へ結像させる結像レンズと、
前記撮像手段により撮像し得られた干渉縞画像を基に前記被計測物の所定の計測領域に係る三次元計測を実行可能な画像処理手段とを備えた三次元計測装置であって、
前記画像処理手段は、
前記撮像手段により撮像し得られた前記計測領域に係る干渉縞画像を基に、再生により、前記計測領域の各座標位置における光軸方向所定位置の強度画像データを取得可能な画像データ取得手段と、
前記撮像手段により撮像し得られた前記計測領域に係る干渉縞画像を基に、再生により、前記計測領域の各座標位置における光軸方向所定位置の光の位相情報を取得可能な位相情報取得手段と、
前記画像データ取得手段により取得された前記計測領域の所定座標位置における光軸方向所定位置の強度画像データを基に、該強度画像データが所定条件を満たす合焦状態にあるか否かを判定する合焦判定手段と、
前記合焦判定手段の判定結果に基づき、前記所定座標位置における光軸方向所定位置の強度画像データが前記合焦状態にあると判定された場合に、光軸方向に所定の計測レンジ間隔で定められる次数のうち、前記光軸方向所定位置に対応する次数を前記所定座標位置に係る次数として特定する次数特定手段と、
前記位相情報取得手段により取得された前記所定座標位置に係る位相情報と、前記次数特定手段により特定された前記所定座標位置に係る次数とを基に、前記所定座標位置に係る三次元計測を実行可能な三次元計測手段とを備え
、
前記対物レンズは、その開口数NAが下記式を満たすものであることを特徴とする三次元計測装置。
NA > a/√((dz)
2
+a
2
)
a:画素サイズ、dz:再生間隔。
【請求項2】
入射する所定の光を2つの光に分割し、一方の光を計測光として被計測物に照射可能としかつ他方の光を参照光として参照面に照射可能とすると共に、これらを再び合成して出射可能な所定の光学系と、
前記所定の光学系に対し入射させる所定の光を出射可能な照射手段と、
前記所定の光学系から出射される出力光を撮像可能な撮像手段と、
前記計測光を前記被計測物へ向け照射させる計測光用の対物レンズと、
前記参照光を前記参照面へ向け照射させる参照光用の対物レンズと、
前記出力光を前記撮像手段へ結像させる結像レンズと、
前記撮像手段により撮像し得られた干渉縞画像を基に前記被計測物の所定の計測領域に係る三次元計測を実行可能な画像処理手段とを備えた三次元計測装置であって、
前記画像処理手段は、
前記撮像手段により撮像し得られた前記計測領域に係る干渉縞画像を基に、再生により、前記計測領域の各座標位置における光軸方向所定位置の強度画像データを、少なくとも光軸方向所定範囲において、所定間隔で複数通り取得可能な画像データ取得手段と、
前記画像データ取得手段により取得された前記計測領域の所定座標位置に係る前記複数通りの強度画像データを基に、該所定座標位置における所定の光軸方向合焦位置を決定する合焦位置決定手段と、
光軸方向に所定の計測レンジ間隔で定められる次数のうち、前記合焦位置決定手段により決定された前記所定座標位置の前記光軸方向合焦位置に対応する次数を、該所定座標位置に係る次数として特定する次数特定手段と、
前記撮像手段により撮像し得られた前記計測領域に係る干渉縞画像を基に、再生により、前記計測領域の各座標位置における光軸方向所定位置の光の位相情報を取得可能な位相情報取得手段と、
前記位相情報取得手段により取得された前記所定座標位置に係る位相情報と、前記次数特定手段により特定された前記所定座標位置に係る次数とを基に、前記所定座標位置に係る三次元計測を実行可能な三次元計測手段とを備え
前記対物レンズは、その開口数NAが下記式を満たすものであることを特徴とする三次元計測装置。
NA > a/√((dz)
2
+a
2
)
a:画素サイズ、dz:再生間隔。
【請求項3】
入射する所定の光を2つの光に分割し、一方の光を計測光として被計測物に照射可能としかつ他方の光を参照光として参照面に照射可能とすると共に、これらを再び合成して出射可能な所定の光学系と、
前記所定の光学系に対し入射させる所定の光を出射可能な照射手段と、
前記所定の光学系から出射される出力光を撮像可能な撮像手段と、
前記計測光を前記被計測物へ向け照射させる計測光用の対物レンズと、
前記参照光を前記参照面へ向け照射させる参照光用の対物レンズと、
前記出力光を前記撮像手段へ結像させる結像レンズと、
前記撮像手段により撮像し得られた干渉縞画像を基に前記被計測物の所定の計測領域に係る三次元計測を実行可能な画像処理手段とを備えた三次元計測装置であって、
前記画像処理手段は、
前記撮像手段により撮像し得られた干渉縞画像を基に、再生により、前記計測領域内に予め設定した一部の特定領域における光軸方向所定位置の強度画像データを、少なくとも光軸方向第1範囲において、所定間隔で複数通り取得可能な第1画像データ取得手段と、
前記第1画像データ取得手段により取得された前記特定領域に係る前記複数通りの強度画像データを基に、該特定領域における所定の光軸方向合焦位置を決定する第1合焦位置決定手段と、
前記撮像手段により撮像し得られた前記計測領域に係る干渉縞画像を基に、再生により、前記計測領域の各座標位置における光軸方向所定位置の強度画像データを、前記特定領域における光軸方向合焦位置を基準に設定される少なくとも光軸方向第2範囲において、所定間隔で複数通り取得可能な第2画像データ取得手段と、
前記第2画像データ取得手段により取得された前記計測領域の所定座標位置に係る前記複数通りの強度画像データを基に、該所定座標位置における所定の光軸方向合焦位置を決定する第2合焦位置決定手段と、
光軸方向に所定の計測レンジ間隔で定められる次数のうち、前記第2合焦位置決定手段により決定された前記所定座標位置の前記光軸方向合焦位置に対応する次数を、該所定座標位置に係る次数として特定する次数特定手段と、
前記撮像手段により撮像し得られた前記計測領域に係る干渉縞画像を基に、再生により、前記計測領域の各座標位置における光軸方向所定位置の光の位相情報を取得可能な位相情報取得手段と、
前記位相情報取得手段により取得された前記所定座標位置に係る位相情報と、前記次数特定手段により特定された前記所定座標位置に係る次数とを基に、前記所定座標位置に係る三次元計測を実行可能な三次元計測手段とを備え
前記対物レンズは、その開口数NAが下記式を満たすものであることを特徴とする三次元計測装置。
NA > a/√((dz)
2
+a
2
)
a:画素サイズ、dz:再生間隔。
【請求項4】
前記照射手段は、
前記所定の光学系に対し入射させる、第1波長の偏光を含む第1光を出射可能な第1照射手段と、
前記所定の光学系に対し入射させる、第2波長の偏光を含む第2光を出射可能な第2照射手段とを備え、
前記所定の光学系と前記第1照射手段との間に配置され、前記第1光を前記対物レンズへ向け集光させる第1光用の投光レンズと、
前記所定の光学系と前記第2照射手段との間に配置され、前記第2光を前記対物レンズへ向け集光させる第2光用の投光レンズとを備え、
前記撮像手段は、
前記所定の光学系に対し前記第1光を入射することにより前記所定の光学系から出射される前記第1光に係る出力光を撮像可能な第1撮像手段と、
前記所定の光学系に対し前記第2光を入射することにより前記所定の光学系から出射される前記第2光に係る出力光を撮像可能な第2撮像手段とを備え、
前記結像レンズとして、
前記第1光に係る出力光を前記第1撮像手段へ結像させる第1撮像用の結像レンズと、
前記第2光に係る出力光を前記第2撮像手段へ結像させる第2撮像用の結像レンズとを備えていることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれかに記載の三次元計測装置。
【請求項5】
前記被計測物は、バンプが形成されたウエハ基板であることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれかに記載の三次元計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被計測物の形状を計測する三次元計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被計測物の形状を計測する三次元計測装置として、例えばディジタルホログラフィの技術を利用して半導体ウエハのバンプの高さ計測を行う干渉式の三次元計測装置などが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる三次元計測装置によれば、参照面の移動機構やガルバノ機構等を必要とせず、1 ショット撮像により、計測レンジを超えたバンプの高さ計測が実現可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ディジタルホログラフィの技術を利用する三次元計測では、複数の再生画像(高さ方向複数位置について再生した強度画像データ)の中から合焦状態にある再生画像を特定する必要があるため、計測点の輝度検出が重要となる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に係る構成では、複数の再生画像の輝度に大きな差がなく、どの再生位置が合焦位置であるか(又は高さ方向で最もピントが合う最適合焦位置であるか)を特定し難くなるおそれがあり、結果として計測精度が低下するおそれがあった。
【0007】
特に上記バンプなどのように、被計測物の一部が湾曲している場合には、該湾曲部については、照射された光が拡散してしまい、検出される反射光の量が少なくなるため、上記不具合がより顕著となるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記事情等に鑑みてなされたものであり、その目的は、計測精度の向上を図ると共に、計測効率の向上を図ることのできる三次元計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0010】
手段1.入射する所定の光を2つの光に分割し、一方の光を計測光として被計測物(例えばウエハ基板)に照射可能としかつ他方の光を参照光として参照面に照射可能とすると共に、これらを再び合成して出射可能な所定の光学系(特定光学系)と、
前記所定の光学系に対し入射させる所定の光を出射可能な照射手段と、
前記所定の光学系から出射される出力光を撮像可能な撮像手段と、
前記計測光を前記被計測物へ向け照射させる計測光用の対物レンズと、
前記参照光を前記参照面へ向け照射させる参照光用の対物レンズと、
前記出力光を前記撮像手段(撮像素子)へ結像させる結像レンズと、
前記撮像手段により撮像し得られた干渉縞画像(ホログラム)を基に前記被計測物の所定の計測領域(被計測物の全域又はその一部)に係る三次元計測を実行可能な画像処理手段とを備えた三次元計測装置であって、
前記画像処理手段は、
前記撮像手段により撮像し得られた前記計測領域に係る干渉縞画像を基に、再生(reconstruction)により、前記計測領域の各座標位置における光軸方向所定位置の強度画像データを取得可能な画像データ取得手段と、
前記撮像手段により撮像し得られた前記計測領域に係る干渉縞画像を基に、再生により、前記計測領域の各座標位置における光軸方向所定位置の光の位相情報を取得可能な位相情報取得手段と、
前記画像データ取得手段により取得された前記計測領域の所定座標位置における光軸方向所定位置の強度画像データを基に、該強度画像データが所定条件(例えば所定の閾値以上の輝度を有する場合など)を満たす合焦状態にあるか否かを判定する合焦判定手段と、
前記合焦判定手段の判定結果に基づき、前記所定座標位置における光軸方向所定位置の強度画像データが前記合焦状態にあると判定された場合に、光軸方向に所定の計測レンジ間隔で定められる次数のうち、前記光軸方向所定位置に対応する次数を前記所定座標位置に係る次数として特定する次数特定手段と、
前記位相情報取得手段により取得された前記所定座標位置に係る位相情報と、前記次数特定手段により特定された前記所定座標位置に係る次数とを基に、前記所定座標位置に係る三次元計測(高さ計測)を実行可能な三次元計測手段とを備えていることを特徴とする三次元計測装置。
【0011】
尚、「所定の光学系」には、「参照光及び計測光を内部で干渉させた上で干渉光として出力する光学系」のみならず、「参照光及び計測光を内部で干渉させることなく、単に合成光として出力する光学系」も含まれる。但し、「所定の光学系」から出力される「出力光」が「合成光」の場合には、「干渉縞画像」を撮像するために、少なくとも「撮像手段」により撮像される前段階において、所定の干渉手段を介して「干渉光」に変換することとなる。
【0012】
つまり、光の干渉を生じさせること(干渉縞画像を撮像すること)を目的として、入射する所定の光を2つの光に分割し、一方の光を計測光として被計測物に照射可能としかつ他方の光を参照光として参照面に照射可能とすると共に、これらを再び合成して出射可能な光学系を「干渉光学系」と称することができる。従って、上記手段1において(以下の各手段においても同様)、「所定の光学系(特定光学系)」を「干渉光学系」と換言してもよい。
【0013】
上記手段1によれば、ディジタルホログラフィの技術により、計測領域の各座標位置ごとに、計測レンジを超えた高さ計測が可能となる。また、被計測物を移動させるような大掛かりな移動機構を必要とせず、構成の簡素化を図ることができると共に、その振動等の影響を受けることもないため、計測精度の向上を図ることができる。
【0014】
さらに、より少ない撮像回数で、計測に必要なすべての干渉縞画像を取得することができ、計測効率の向上を図ることができる。
【0015】
加えて、本手段1によれば、計測光用の対物レンズ及び参照光用の対物レンズ、並びに、出力光を撮像手段へ結像させる結像レンズを備えることにより、さらなる計測精度の向上を図ることができる。
【0016】
以下、対物レンズ及び結像レンズを備えた本手段1の特徴部分の作用効果について詳しく説明する。
図16は、本手段1に係る対物レンズ及び結像レンズの光学関係を説明するための図であり、対物レンズ701及び結像レンズ702を介して、被計測物700の像を撮像手段703へ結像させる光学系を模式的に示している。
【0017】
同図に示すように、ディジタルホログラフィの技術を利用する三次元計測においては、光軸J1(高さz)方向の複数位置z1~znについて強度画像データを再生し、これら複数の強度画像データ(再生画像)の中から、光軸J1方向でピントが合う合焦位置zp(又は光軸J1方向で最もピントが合う最適合焦位置zp)の再生画像を特定する。
【0018】
この際、複数の再生画像の中から合焦状態にある再生画像を特定するためには、上記「発明が解決しようとする課題」で述べたように、計測点の輝度検出が重要となる。
【0019】
ここで、再生画像の所定位置の画素の輝度に基づき、該所定位置の画素について該再生画像が合焦位置(又は最適合焦位置)のものであるか否かを判断する原理について説明する。
【0020】
合焦位置の再生画像と、合焦位置にない再生画像において、輝度の総量に差は無いため、仮に同一画素(xy座標系同一位置の1つの画素)の中で光が集中したり、ボケたりしても、該画素の輝度(輝度総量)として変化は表れない。
【0021】
例えば
図17(a)に示すように、微小な計測点PAを撮像した時に、合焦位置の再生画像800において、計測点PAが再生画像800の所定の画素800aの中心にあれば、仮に
図17(b)に示すように、合焦位置から光軸方向(高さz方向)に第1所定量ずれた位置の再生画像801において、計測点PAがぼけて、x方向及びy方向へそれぞれ0.5画素分(画素801aの1辺の長さの半分)ずつ滲んだとしても、該計測点PAを含む画素801aの輝度(輝度総量)は変化しないため、合焦位置からずれていると判断することはできない。
【0022】
一方、
図17(c)に示すように、合焦位置から光軸方向(高さz方向)に第2所定量ずれた位置の再生画像802において、計測点PAがぼけて、x方向及びy方向へそれぞれ0.5画素(画素802aの1辺の長さの半分)の大きさを超えて滲むと、該計測点PAを含む画素802aの輝度(輝度総量)が減少するため、その変化を検出することで、合焦位置からずれていると判断することができる。又は、計測点PAを含む画素802aの周辺の画素の輝度が増加するため、この変化を検出することによって、合焦位置からずれていると判断することができる。
【0023】
また、例えば
図18(a)に示すように、微小な計測点PAを撮像した時に、合焦位置の再生画像800において、計測点PAが4つの画素800aに跨っていれば、仮に
図18(b)に示すように、合焦位置から光軸方向(高さz方向)に第1所定量ずれた位置の再生画像801において、計測点PAがぼけて、x方向及びy方向へそれぞれ1画素分(画素801aの1辺の長さ)ずつ滲んだとしても、該計測点PAを含む4つの画素801aそれぞれの輝度(輝度総量)は変化しないため、合焦位置からずれていると判断することはできない。
【0024】
一方、
図18(c)に示すように、合焦位置から光軸方向(高さz方向)に第2所定量ずれた位置の再生画像802において、計測点PAがぼけて、x方向及びy方向へそれぞれ1画素(画素802aの1辺の長さ)の大きさを超えて滲むと、該計測点PAを含む4つの画素802aの輝度(輝度総量)がそれぞれ減少するため、その変化を検出することで、合焦位置からずれていると判断することができる。又は、計測点PAを含む4つの画素802aの周辺の画素の輝度が増加するため、この変化を検出することによって、合焦位置からずれていると判断することができる。
【0025】
但し、実際には
図19に示すように、再生位置PSが合焦位置POから光軸方向(高さz方向)に所定量dzずれている場合、計測点PAは、直径εの円形にぼけることとなる。また、合焦位置POとの相対距離dzが広がれば広がるほど、再生位置PSの再生画像では、計測点PAのボケ具合(再生態様)が大きくなる。
【0026】
さらに、
図19に示すように対物レンズ900等を使用することで、対物レンズ900等を使用しない従来構成(
図19中の二点鎖線部参照)に比べ、合焦位置POとの相対距離dzが同じ再生位置PSであっても、計測点PAのボケ具合は大きくなる。
【0027】
次に、対物レンズ等を有しない「従来」の構成の下で取得した複数の再生画像の所定計測点に係る輝度値と、対物レンズ等を有した「本発明(手段1)」の構成の下で取得した複数の再生画像の所定計測点に係る輝度値とを比較しつつ、本発明(手段1)の作用効果について説明する。
【0028】
図21は、「従来」及び「本発明(手段1)」に係る構成の下、光軸方向(高さz方向)に「30μm」間隔の再生間隔で設定した高さ位置、具体的には「3次(+90μm)」,「2次(+60μm)」,「1次(+30μm)」,「0次(0μm)」,「-1次(-30μm)」,「-2次(-60μm)」,「-3次(-90μm)」において再生した複数の再生画像の所定計測点に係る輝度値を例示した表である。
【0029】
図21に示すように、「従来」では、「0次(0μm)」の高さ位置にて再生した再生画像の所定計測点に係る輝度値が「128」で最大となり、「1次(+30μm)」及び「-1次(-30μm)」の高さ位置にて再生した再生画像の所定計測点に係る輝度値はそれぞれ「120」、「2次(+60μm)」及び「-2次(-60μm)」の高さ位置にて再生した再生画像の所定計測点に係る輝度値はそれぞれ「112」、「3次(+90μm)」及び「-3次(-90μm)」の高さ位置にて再生した再生画像の所定計測点に係る輝度値はそれぞれ「104」となっている。
【0030】
これらのデータに基づき、
図21に例示したケースにおいて、「従来」では、「0次(0μm)」の高さ位置を合焦位置として特定することができる。
【0031】
一方、「本発明」では、「0次(0μm)」の高さ位置にて再生した再生画像の所定計測点に係る輝度値が「128」で最大となり、「1次(+30μm)」及び「-1次(-30μm)」の高さ位置にて再生した再生画像の所定計測点に係る輝度値はそれぞれ「100」、「2次(+60μm)」及び「-2次(-60μm)」の高さ位置にて再生した再生画像の所定計測点に係る輝度値はそれぞれ「72」、「3次(+90μm)」及び「-3次(-90μm)」の高さ位置にて再生した再生画像の所定計測点に係る輝度値はそれぞれ「44」となっている。
【0032】
これらのデータに基づき、
図21に例示したケースにおいて、「本発明」では、「0次(0μm)」の高さ位置を合焦位置として特定することができる。
【0033】
但し、上記「従来」では、ピークである「0次(0μm)」の高さ位置にて再生した再生画像の所定計測点に係る輝度値が「128」であるのに対し、「±1次(±30μm)」の高さ位置にて再生した再生画像の所定計測点に係る輝度値はそれぞれ「120」で、ピークとの輝度差は「8」となっている。同様に、「±2次(±60μm)」の高さ位置にて再生した再生画像の所定計測点に係る輝度値はそれぞれ「112」で、ピークとの輝度差が「16」となっている。また、「±3次(±90μm)」の高さ位置にて再生した再生画像の所定計測点に係る輝度値はそれぞれ「104」で、ピークとの輝度差が「24」となっている。
【0034】
これに対し、上記「本発明」では、ピークである「0次(0μm)」の高さ位置にて再生した再生画像の所定計測点に係る輝度値が「128」であるのに対し、「±1次(±30μm)」の高さ位置にて再生した再生画像の所定計測点に係る輝度値はそれぞれ「100」で、ピークとの輝度差は「28」となっている。同様に、「±2次(±60μm)」の高さ位置にて再生した再生画像の所定計測点に係る輝度値はそれぞれ「72」で、ピークとの輝度差が「56」となっている。また、「±3次(±90μm)」の高さ位置にて再生した再生画像の所定計測点に係る輝度値はそれぞれ「44」で、ピークとの輝度差が「84」となっている。
【0035】
つまり、対物レンズ等を使用する「本発明(手段1)」の方が、対物レンズ等を使用しない「従来」に比べ、合焦位置との相対距離(再生距離)が同じ再生位置であっても、計測点の輝度値の変化が大きくなるため、合焦位置を特定しやすくなると共に、ノイズ等の影響を受けにくくなる。結果として、計測精度の向上を図ることができる。
【0036】
手段2.入射する所定の光を2つの光に分割し、一方の光を計測光として被計測物(例えばウエハ基板)に照射可能としかつ他方の光を参照光として参照面に照射可能とすると共に、これらを再び合成して出射可能な所定の光学系(特定光学系)と、
前記所定の光学系に対し入射させる所定の光を出射可能な照射手段と、
前記所定の光学系から出射される出力光を撮像可能な撮像手段と、
前記計測光を前記被計測物へ向け照射させる計測光用の対物レンズと、
前記参照光を前記参照面へ向け照射させる参照光用の対物レンズと、
前記出力光を前記撮像手段(撮像素子)へ結像させる結像レンズと、
前記撮像手段により撮像し得られた干渉縞画像(ホログラム)を基に前記被計測物の所定の計測領域(被計測物の全域又はその一部)に係る三次元計測を実行可能な画像処理手段とを備えた三次元計測装置であって、
前記画像処理手段は、
前記撮像手段により撮像し得られた前記計測領域に係る干渉縞画像を基に、再生(reconstruction)により、前記計測領域の各座標位置における光軸方向所定位置の強度画像データを、少なくとも光軸方向所定範囲において、所定間隔で複数通り取得可能な画像データ取得手段と、
前記画像データ取得手段により取得された前記計測領域の所定座標位置に係る前記複数通りの強度画像データを基に、該所定座標位置における所定の光軸方向合焦位置(例えば最も焦点の合う強度画像データが得られた光軸方向位置)を決定する合焦位置決定手段と、
光軸方向に所定の計測レンジ間隔で定められる次数のうち、前記合焦位置決定手段により決定された前記所定座標位置の前記光軸方向合焦位置に対応する次数を、該所定座標位置に係る次数として特定する次数特定手段と、
前記撮像手段により撮像し得られた前記計測領域に係る干渉縞画像を基に、再生により、前記計測領域の各座標位置における光軸方向所定位置の光の位相情報を取得可能な位相情報取得手段と、
前記位相情報取得手段により取得された前記所定座標位置に係る位相情報と、前記次数特定手段により特定された前記所定座標位置に係る次数とを基に、前記所定座標位置に係る三次元計測(高さ計測)を実行可能な三次元計測手段とを備えていることを特徴とする三次元計測装置。
【0037】
上記手段2によれば、上記手段1と同様の作用効果が奏される。
【0038】
手段3.入射する所定の光を2つの光に分割し、一方の光を計測光として被計測物(例えばウエハ基板)に照射可能としかつ他方の光を参照光として参照面に照射可能とすると共に、これらを再び合成して出射可能な所定の光学系(特定光学系)と、
前記所定の光学系に対し入射させる所定の光を出射可能な照射手段と、
前記所定の光学系から出射される出力光を撮像可能な撮像手段と、
前記計測光を前記被計測物へ向け照射させる計測光用の対物レンズと、
前記参照光を前記参照面へ向け照射させる参照光用の対物レンズと、
前記出力光を前記撮像手段(撮像素子)へ結像させる結像レンズと、
前記撮像手段により撮像し得られた干渉縞画像(ホログラム)を基に前記被計測物の所定の計測領域(被計測物の全域又はその一部)に係る三次元計測を実行可能な画像処理手段とを備えた三次元計測装置であって、
前記画像処理手段は、
前記撮像手段により撮像し得られた干渉縞画像を基に、再生(reconstruction)により、前記計測領域内に予め設定した一部の特定領域における光軸方向所定位置の強度画像データを、少なくとも光軸方向第1範囲において、所定間隔で複数通り取得可能な第1画像データ取得手段と、
前記第1画像データ取得手段により取得された前記特定領域に係る前記複数通りの強度画像データを基に、該特定領域における所定の光軸方向合焦位置を決定する第1合焦位置決定手段と、
前記撮像手段により撮像し得られた前記計測領域に係る干渉縞画像を基に、再生により、前記計測領域の各座標位置における光軸方向所定位置の強度画像データを、前記特定領域における光軸方向合焦位置を基準に設定される少なくとも光軸方向第2範囲において、所定間隔で複数通り取得可能な第2画像データ取得手段と、
前記第2画像データ取得手段により取得された前記計測領域の所定座標位置に係る前記複数通りの強度画像データを基に、該所定座標位置における所定の光軸方向合焦位置を決定する第2合焦位置決定手段と、
光軸方向に所定の計測レンジ間隔で定められる次数のうち、前記第2合焦位置決定手段により決定された前記所定座標位置の前記光軸方向合焦位置に対応する次数を、該所定座標位置に係る次数として特定する次数特定手段と、
前記撮像手段により撮像し得られた前記計測領域に係る干渉縞画像を基に、再生により、前記計測領域の各座標位置における光軸方向所定位置の光の位相情報を取得可能な位相情報取得手段と、
前記位相情報取得手段により取得された前記所定座標位置に係る位相情報と、前記次数特定手段により特定された前記所定座標位置に係る次数とを基に、前記所定座標位置に係る三次元計測(高さ計測)を実行可能な三次元計測手段とを備えていることを特徴とする三次元計測装置。
【0039】
上記手段3によれば、上記手段1,2と同様の作用効果が奏される。特に本手段によれば、まず最初に計測領域全体ではなく、計測領域内に予め設定した一部の特定領域(限られた狭い範囲)についてのみ、光軸方向複数位置における強度画像データを取得し、その合焦状況から、光軸方向における被計測物の位置を特定する。
【0040】
その後、計測領域全体の各座標位置について、特定領域に係る合焦位置を基準に、光軸方向複数位置における強度画像データを取得する。
【0041】
これにより、計測領域に係る三次元計測を行う上で必要なデータを取得するための処理にかかる負荷を軽減すると共に、該処理に要する時間を短縮することができる。結果として、計測精度の向上を図ると共に、計測効率の向上を図ることができる。
【0042】
手段4.前記対物レンズは、その開口数NAが下記式を満たすものであることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の三次元計測装置。
【0043】
NA > a/√((dz)2+a2)
a:画素サイズ、dz:再生間隔。
【0044】
仮に開口数NAが比較的小さい対物レンズを用いた場合には、再生間隔(合焦位置との相対距離)dzが比較的大きい場合でも、計測点のボケ具合が小さく、合焦位置を特定し難くなるおそれがある。
【0045】
一方、上記手段4に係る対物レンズのように、開口数NAが比較的大きい対物レンズを用いた場合には、バンプの頂部など被計測物の湾曲部から広範囲に反射した反射光が対物レンズに取り込まれやすくなると共に、再生間隔dzが小さい場合でも、計測点のボケ具合が大きくなり、合焦位置を特定しやすくなる。結果として、上記手段4によれば、上記手段1等の作用効果をより高めることができる。
【0046】
以下、本手段4の特徴部分の作用効果についてより詳しく説明する。例えば
図20に示すように、半球状のバンプ101を被計測物(計測対象)とした場合、バンプ101の頂点付近に照射された照射光K1の反射光K2は拡散する。かかる状況下で、開口数NAの大きい対物レンズ901を用いた場合には、開口数NAの小さい対物レンズ902(
図20の二点鎖線部参照)を用いた場合よりも、バンプ101からの反射光K2を広範囲で取り込むことができる。
【0047】
つまり、開口数NAの小さい対物レンズ902を用いた場合の計測可能範囲G2よりも、開口数NAの大きい対物レンズ901を用いた場合の計測可能範囲G1を大きくすることができる。
【0048】
また、上述したように、合焦位置からずれているか否かを確実に検出するためには、
図17,
図18に示すように、所定の計測点PAのボケによる滲みが、全体として少なくとも画素サイズ2つ分より大きくなっていればよい。
【0049】
具体的に、計測点PAのボケによる滲みを画素サイズ2つ分より大きくするためには、下記式(1)の関係を満たす必要がある。つまり、計測点PAがぼけてできる円の直径εが、画素サイズaの2倍より大きくなければならない(
図19参照)。
【0050】
ε>2a ・・・(1)
図19に示すように、開口数NAは、計測点PAから対物レンズ900に入射する光線の光軸J1に対する最大角度をθ、計測点PAと対物レンズ900の間の媒質の屈折率をnとした場合(空気中であれば、n≒1)、下記式(2)で表すことができる。
【0051】
NA=n×sinθ ・・・(2)
また、再生間隔(合焦位置との相対距離)をdzとした場合、下記式(3)の関係が成り立つ(
図19参照)。
【0052】
ε=2×dz×tanθ ・・・(3)
さらに、上記式(1),(3)より、下記式(4)を導き出すことができる。
【0053】
2×dz×tanθ>2a ・・・(4)
ここで、tanθ=sinθ/√(1-sin2θ)であるため、上記式(4)は、下記式(5)となる。
【0054】
2×dz×{sinθ/√(1-sin2θ)}>2a ・・・(5)
次に、屈折率n=1とした上記式(2)を、上記式(5)に代入すると、下記式(6)が得られる。
【0055】
2×dz×{(NA)/√(1-(NA)2)}>2a ・・・(6)
そして、上記式(6)を開口数NAについて解くと、下記式(7)が得られる。
【0056】
NA > a/√((dz)2+a2) ・・・(7)
但し、再生間隔dzは、0以上で、かつ、計測レンジ間隔Rを超えないことが好ましい(0≦dz≦R)。尚、計測レンジRは、三次元計測装置の計測レンジであり、例えば1種類の波長の光のみを利用して計測を行う場合には、その波長によって決まる計測レンジがこれに相当し、波長の異なる2種類の光を利用して計測を行う場合には2波長の合成波長によって決まる計測レンジがこれに相当する。
【0057】
また、開口数NAは、できる限り大きい方が好ましいが、液浸等の特別な技術を採用しない限り、開口数NAの上限は1となるため(屈折率n=1とした場合の上記式(2)参照)、開口数NAが1以下となることが好ましい(NA≦1)。
【0058】
手段5.前記照射手段は、
前記所定の光学系に対し入射させる、第1波長の偏光を含む第1光を出射可能な第1照射手段と、
前記所定の光学系に対し入射させる、第2波長の偏光を含む第2光を出射可能な第2照射手段とを備え、
前記所定の光学系と前記第1照射手段との間に配置され、前記第1光を前記対物レンズへ向け集光させる第1光用の投光レンズと、
前記所定の光学系と前記第2照射手段との間に配置され、前記第2光を前記対物レンズへ向け集光させる第2光用の投光レンズとを備え、
前記撮像手段は、
前記所定の光学系に対し前記第1光を入射することにより前記所定の光学系から出射される前記第1光に係る出力光を撮像可能な第1撮像手段と、
前記所定の光学系に対し前記第2光を入射することにより前記所定の光学系から出射される前記第2光に係る出力光を撮像可能な第2撮像手段とを備え、
前記結像レンズとして、
前記第1光に係る出力光を前記第1撮像手段へ結像させる第1撮像用の結像レンズと、
前記第2光に係る出力光を前記第2撮像手段へ結像させる第2撮像用の結像レンズとを備えていることを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の三次元計測装置。
【0059】
尚、「第1照射手段」から照射される「第1光」は、少なくとも「第1波長の偏光(第1偏光)」を含んだ光であればよく、その後「所定の光学系」においてカットされる他の余分な成分を含んだ光(例えば「無偏光」や「円偏光」)であってもよい。
【0060】
同様に、「第2照射手段」から照射される「第2光」は、少なくとも「第2波長の偏光(第2偏光)」を含んだ光であればよく、その後「所定の光学系」においてカットされる他の余分な成分を含んだ光(例えば「無偏光」や「円偏光」)であってもよい。
【0061】
また、「所定の光学系(特定光学系)」から出力される「第1光に係る出力光」には「第1光に係る参照光及び計測光の合成光、又は、該合成光を干渉させた干渉光」が含まれ、「第2光に係る出力光」には「第2光に係る参照光及び計測光の合成光、又は、該合成光を干渉させた干渉光」が含まれる。
【0062】
上記手段5によれば、波長の異なる2種類の光を利用することにより、計測レンジを広げることができると共に、2つの撮像手段を備えることにより、計測効率の向上を図ることができる。
【0063】
尚、上記手段1等のように、対物レンズを備えた構成においては、被計測物に対し照射される光が計測領域の1点(狭い範囲)に集まってしまうため、1回の計測で計測可能な計測領域が狭くなってしまうおそれがある。
【0064】
これに対し、本手段5のように、照射手段から出射された光を対物レンズへ向け集光させる投光レンズを備えることで、被計測物のより広い範囲に均一な平行光を照射可能となる。結果として、1回の計測でより広範囲を計測可能となる。
【0065】
手段6.前記被計測物は、バンプが形成されたウエハ基板であることを特徴とする手段1乃至5のいずれかに記載の三次元計測装置。
【0066】
上記手段6によれば、ウエハ基板に形成されたバンプの計測を行うことができる。ひいては、バンプの検査において、その計測値に基づいてバンプの良否判定を行うことができる。従って、かかる検査において、上記各手段の作用効果が奏されることとなり、精度よく良否判定を行うことができる。結果として、バンプ検査装置における検査精度及び検査効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図2】三次元計測装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】計測処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】ワークと撮像素子との位置関係などを説明するための説明図である。
【
図7】ワークと撮像素子との位置関係などを説明するための説明図である。
【
図8】ウエハ基板の三次元計測について説明するための模式図である。
【
図9】バンプの三次元計測について説明するための模式図である。
【
図10】バンプの二次元計測について説明するための模式図である。
【
図11】計測レンジ、位相、次数、高さ計測値などの関係を1つの具体例で示す図である。
【
図12】別の実施形態に係る計測レンジ、位相、次数、高さ計測値などの関係を1つの具体例で示す図である。
【
図13】別の実施形態に係るカメラの概略構成図である。
【
図14】別の実施形態に係る計測処理の流れを示すフローチャートである。
【
図15】別の実施形態に係る三次元計測装置の概略構成図である。
【
図16】対物レンズ及び結像レンズの光学関係を説明するための図である。
【
図17】(a)は、合焦位置における計測点の再生態様を示す図であり、(b)は、合焦位置から第1所定量ずれた位置における計測点の再生態様を示す図であり、(c)は、合焦位置から第2所定量ずれた位置における計測点の再生態様を示す図である。
【
図18】(a)は、合焦位置における計測点の再生態様を示す図であり、(b)は、合焦位置から第1所定量ずれた位置における計測点の再生態様を示す図であり、(c)は、合焦位置から第2所定量ずれた位置における計測点の再生態様を示す図である。
【
図19】計測点の合焦位置、合焦位置と再生位置との相対距離、再生位置における計測点のボケ具合(再生態様)、計測点から対物レンズに入射する光の角度などの対応関係を説明するための模式図である。
【
図20】開口数の大きい対物レンズを用いた場合の計測可能範囲と、開口数の小さい対物レンズを用いた場合の計測可能範囲の違いを説明するための模式図である。
【
図21】従来及び本発明に係る構成の下、複数の高さ位置において再生した複数の再生画像の所定計測点に係る輝度値を例示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下、三次元計測装置の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る三次元計測装置は、ディジタルホログラフィを用いて三次元計測を行う計測装置である。ここで「ディジタルホログラフィ」とは、干渉縞画像(ホログラム)を取得し、そこから画像を再生する(reconstruct)技術をいう。
【0069】
図1は本実施形態に係る三次元計測装置1の概略構成を示す模式図であり、
図2は三次元計測装置1の電気的構成を示すブロック図である。以下、便宜上、
図1の紙面前後方向を「X軸方向」とし、紙面上下方向を「Y軸方向」とし、紙面左右方向を「Z軸方向」として説明する。
【0070】
三次元計測装置1は、マイケルソン干渉計の原理に基づき構成されたものであり、特定波長の光を出力可能な照射手段としての2つの投光系2A,2B(第1投光系2A,第2投光系2B)と、該投光系2A,2Bからそれぞれ出射される光が入射される干渉光学系3と、該干渉光学系3から出射される光を撮像可能な撮像手段としての2つの撮像系4A,4B(第1撮像系4A,第2撮像系4B)と、投光系2A,2Bや干渉光学系3、撮像系4A,4Bなどに係る各種制御や画像処理、演算処理等を行う制御装置5とを備えている。
【0071】
ここで、「制御装置5」が本実施形態における「画像処理手段」を構成し、「干渉光学系3」が本実施形態における「所定の光学系(特定光学系)」を構成する。尚、本実施形態においては、光の干渉を生じさせること(干渉縞画像を撮像すること)を目的として、入射する所定の光を2つの光(計測光及び参照光)に分割し、該2つの光に光路差を生じさせた上で、再度合成して出力する光学系を「干渉光学系」という。つまり、2つの光を内部で干渉させた上で干渉光として出力する光学系のみならず、2つの光を内部で干渉させることなく、単に合成光として出力する光学系についても「干渉光学系」と称している。従って、本実施形態にて後述するように、「干渉光学系」から、2つの光(計測光及び参照光)が干渉することなく合成光として出力される場合には、少なくとも撮像される前段階(例えば撮像系の内部など)において、所定の干渉手段を介して干渉光を得ることとなる。
【0072】
まず、2つの投光系2A,2B(第1投光系2A,第2投光系2B)の構成について詳しく説明する。第1投光系2Aは、第1発光部11A、第1光アイソレータ12A、第1無偏光ビームスプリッタ13Aなどを備えている。ここで「第1発光部11A」が本実施形態における「第1照射手段」を構成する。
【0073】
図示は省略するが、第1発光部11Aは、特定波長λ1の直線偏光を出力可能なレーザ光源や、該レーザ光源から出力される直線偏光を拡大し平行光として出射するビームエキスパンダ、強度調整を行うための偏光板、偏光方向を調整するための1/2波長板などを備えている。
【0074】
かかる構成の下、本実施形態では、第1発光部11Aから、X軸方向及びY軸方向に対し45°傾斜した方向を偏光方向とする波長λ1(例えばλ1=1500nm)の直線偏光がZ軸方向左向きに出射される。ここで「波長λ1」が本実施形態における「第1波長」に相当する。以降、第1発光部11Aから出射される波長λ1の光を「第1光」という。
【0075】
第1光アイソレータ12Aは、一方向(本実施形態ではZ軸方向左向き)に進む光のみを透過し逆方向(本実施形態ではZ軸方向右向き)の光を遮断する光学素子である。これにより、第1発光部11Aから出射された第1光のみを透過することとなり、戻り光による第1発光部11Aの損傷や不安定化などを防止することができる。
【0076】
第1無偏光ビームスプリッタ13Aは、直角プリズム(直角二等辺三角形を底面とする三角柱状のプリズム。以下同様。)を貼り合せて一体としたキューブ型の公知の光学部材であって、その接合面13Ahには例えば金属膜などのコーティングが施されている。「第1無偏光ビームスプリッタ13A」が本実施形態における「第1導光手段」を構成する。
【0077】
以下同様であるが、無偏光ビームスプリッタは、偏光状態も含め、入射光を所定の比率で透過光と反射光とに分割するものである。本実施形態では、1:1の分割比を持った所謂ハーフミラーを採用している。つまり、透過光のP偏光成分及びS偏光成分、並びに、反射光のP偏光成分及びS偏光成分が全て同じ比率で分割されると共に、透過光と反射光の各偏光状態は入射光の偏光状態と同じとなる。
【0078】
尚、本実施形態では、
図1の紙面に平行な方向(Y軸方向又はZ軸方向)を偏光方向とする直線偏光をP偏光(P偏光成分)といい、
図1の紙面に垂直なX軸方向を偏光方向とする直線偏光をS偏光(S偏光成分)という。
【0079】
また、第1無偏光ビームスプリッタ13Aは、その接合面13Ahを挟んで隣り合う2面のうちの一方がY軸方向と直交しかつ他方がZ軸方向と直交するように配置されている。つまり、第1無偏光ビームスプリッタ13Aの接合面13AhがY軸方向及びZ軸方向に対し45°傾斜するように配置されている。より詳しくは、第1光アイソレータ12Aを介して、第1発光部11AからZ軸方向左向きに入射する第1光の一部(半分)をZ軸方向左向きに透過させ、残り(半分)をY軸方向下向きに反射させるように配置されている。
【0080】
第2投光系2Bは、上記第1投光系2Aと同様、第2発光部11B、第2光アイソレータ12B、第2無偏光ビームスプリッタ13Bなどを備えている。ここで「第2発光部11B」が本実施形態における「第2照射手段」を構成する。
【0081】
第2発光部11Bは、上記第1発光部11Aと同様、特定波長λ2の直線偏光を出力可能なレーザ光源や、該レーザ光源から出力される直線偏光を拡大し平行光として出射するビームエキスパンダ、強度調整を行うための偏光板、偏光方向を調整するための1/2波長板などを備えている。
【0082】
かかる構成の下、本実施形態では、第2発光部11Bから、X軸方向及びZ軸方向に対し45°傾斜した方向を偏光方向とする波長λ2(例えばλ2=1503nm)の直線偏光がY軸方向上向きに出射される。ここで「波長λ2」が本実施形態における「第2波長」に相当する。以降、第2発光部11Bから出射される波長λ2の光を「第2光」という。
【0083】
第2光アイソレータ12Bは、第1光アイソレータ12Aと同様、一方向(本実施形態ではY軸方向上向き)に進む光のみを透過し逆方向(本実施形態ではY軸方向下向き)の光を遮断する光学素子である。これにより、第2発光部11Bから出射された第2光のみを透過することとなり、戻り光による第2発光部11Bの損傷や不安定化などを防止することができる。
【0084】
第2無偏光ビームスプリッタ13Bは、第1無偏光ビームスプリッタ13Aと同様、直角プリズムを貼り合せて一体としたキューブ型の公知の光学部材であって、その接合面13Bhには例えば金属膜などのコーティングが施されている。「第2無偏光ビームスプリッタ13B」が本実施形態における「第2導光手段」を構成する。
【0085】
また、第2無偏光ビームスプリッタ13Bは、その接合面13Bhを挟んで隣り合う2面のうちの一方がY軸方向と直交しかつ他方がZ軸方向と直交するように配置されている。つまり、第2無偏光ビームスプリッタ13Bの接合面13BhがY軸方向及びZ軸方向に対し45°傾斜するように配置されている。より詳しくは、第2光アイソレータ12Bを介して、第2発光部11BからY軸方向上向きに入射する第2光の一部(半分)をY軸方向上向きに透過させ、残り(半分)をZ軸方向右向きに反射させるように配置されている。
【0086】
次に干渉光学系3の構成について詳しく説明する。干渉光学系3は、偏光ビームスプリッタ(PBS)20、対物レンズ21,22、1/4波長板23,24、参照面25、設置部26などを備えている。
【0087】
偏光ビームスプリッタ20は、直角プリズムを貼り合せて一体としたキューブ型の公知の光学部材であって、その接合面(境界面)20hには例えば誘電体多層膜などのコーティングが施されている。
【0088】
偏光ビームスプリッタ20は、入射される直線偏光を偏光方向が互いに直交する2つの偏光成分(P偏光成分とS偏光成分)に分割するものである。本実施形態における偏光ビームスプリッタ20は、P偏光成分を透過させ、S偏光成分を反射する構成となっている。
【0089】
偏光ビームスプリッタ20は、その接合面20hを挟んで隣り合う2面のうちの一方がY軸方向と直交しかつ他方がZ軸方向と直交するように配置されている。つまり、偏光ビームスプリッタ20の接合面20hがY軸方向及びZ軸方向に対し45°傾斜するように配置されている。
【0090】
より詳しくは、上記第1無偏光ビームスプリッタ13AからY軸方向下向きに反射した第1光が入射する偏光ビームスプリッタ20の第1面(Y軸方向上側面)20a、並びに、該第1面20aと相対向する第3面(Y軸方向下側面)20cがY軸方向と直交するように配置されている。「偏光ビームスプリッタ20の第1面20a」が本実施形態における「第1入出力部」に相当する。
【0091】
一方、第1面20aと接合面20hを挟んで隣り合う面であって、上記第2無偏光ビームスプリッタ13BからZ軸方向右向きに反射した第2光が入射する偏光ビームスプリッタ20の第2面(Z軸方向左側面)20b、並びに、該第2面20bと相対向する第4面(Z軸方向右側面)20dがZ軸方向と直交するように配置されている。「偏光ビームスプリッタ20の第2面20b」が本実施形態における「第2入出力部」に相当する。
【0092】
また、偏光ビームスプリッタ20の第3面20cとY軸方向に相対向するように対物レンズ21が配置され、該対物レンズ21とY軸方向に相対向するように1/4波長板23が配置され、該1/4波長板23とY軸方向に相対向するように参照面25が配置されている。
【0093】
対物レンズ21は、一方側の焦点位置が参照面25に位置合わせされ、かつ、他方側(第1撮像系4A側及び第2撮像系4B側)の焦点位置が、後述する結像レンズ30Aの他方側(干渉光学系3側)の焦点位置、及び、後述する結像レンズ30Bの他方側(干渉光学系3側)の焦点位置とそれぞれ重なるように配置されている。
【0094】
つまり、対物レンズ21は、偏光ビームスプリッタ20の第3面20cから出射される光(参照光)を参照面25へ向け照射させる機能を有する。尚、対物レンズ21は、複数のレンズからなるレンズユニットにより構成されていてもよい。勿論、1枚のレンズにより構成されていてもよい。
【0095】
1/4波長板23は、直線偏光を円偏光に変換しかつ円偏光を直線偏光に変換する機能を有する。つまり、偏光ビームスプリッタ20の第3面20cから出射され対物レンズ21を通過した直線偏光(参照光)は1/4波長板23を介して円偏光に変換された上で参照面25に対し照射される。また、参照面25で反射した参照光は、再度、1/4波長板23を介して円偏光から直線偏光に変換された上で対物レンズ21を通って偏光ビームスプリッタ20の第3面20cに入射する。
【0096】
一方、偏光ビームスプリッタ20の第4面20dとZ軸方向に相対向するように対物レンズ22が配置され、該対物レンズ22とZ軸方向に相対向するように1/4波長板24が配置され、該1/4波長板24とZ軸方向に相対向するように設置部26が配置されている。
【0097】
対物レンズ22は、一方側の焦点位置が設置部26に位置合わせされ、かつ、他方側(第1撮像系4A側及び第2撮像系4B側)の焦点位置が、後述する結像レンズ30Aの他方側(干渉光学系3側)の焦点位置、及び、後述する結像レンズ30Bの他方側(干渉光学系3側)の焦点位置とそれぞれ重なるように配置されている。
【0098】
つまり、対物レンズ22は、偏光ビームスプリッタ20の第4面20dから出射される光(計測光)を、設置部26に置かれた被計測物としてのワークWへ向け照射させる機能を有する。尚、対物レンズ22は、複数のレンズからなるレンズユニットにより構成されていてもよい。勿論、1枚のレンズにより構成されていてもよい。
【0099】
1/4波長板24は、直線偏光を円偏光に変換しかつ円偏光を直線偏光に変換する機能を有する。つまり、偏光ビームスプリッタ20の第4面20dから出射され対物レンズ22を通過した直線偏光(計測光)は1/4波長板24を介して円偏光に変換された上で設置部26に置かれた被計測物としてのワークWに対し照射される。また、ワークWにて反射した計測光は、再度、1/4波長板24を介して円偏光から直線偏光に変換された上で対物レンズ22を通って偏光ビームスプリッタ20の第4面20dに入射する。
【0100】
次に2つの撮像系4A,4B(第1撮像系4A,第2撮像系4B)の構成について詳しく説明する。第1撮像系4Aは、結像レンズ30A、1/4波長板31A、第1偏光板32A、第1撮像手段を構成する第1カメラ33Aなどを備えている。
【0101】
結像レンズ30Aは、一方側(第1カメラ33A側)の焦点位置が後述する撮像素子33Aaに位置合わせされ、かつ、他方側(干渉光学系3側)の焦点位置が、参照光用の対物レンズ21の第1撮像系4A側の焦点位置、及び、計測光用の対物レンズ22の第1撮像系4A側の焦点位置とそれぞれ重なるように位置合わせされている。
【0102】
つまり、結像レンズ30Aは、偏光ビームスプリッタ20の第2面20bから出射され第2無偏光ビームスプリッタ13BをZ軸方向左向きに透過してきた直線偏光(第1光の参照光成分及び計測光成分)を第1カメラ33A(撮像素子33Aa)へ結像させる機能を有する。尚、結像レンズ30Aは、複数のレンズからなるレンズユニットにより構成されていてもよい。勿論、1枚のレンズにより構成されていてもよい。
【0103】
1/4波長板31Aは、第2無偏光ビームスプリッタ13BをZ軸方向左向きに透過し結像レンズ30Aを通過してきた直線偏光(第1光の参照光成分及び計測光成分)をそれぞれ円偏光に変換するためのものである。
【0104】
第1偏光板32Aは、1/4波長板31Aにより円偏光に変換された第1光の各成分を選択的に透過させるものである。これにより、回転方向の異なる第1光の参照光成分と計測光成分とを特定の位相について干渉させることができる。「第1偏光板32A」が本実施形態における「位相シフト手段」及び「干渉手段」を構成する。
【0105】
本実施形態に係る第1偏光板32Aは、Z軸方向を軸心として回転可能に構成されると共に、その透過軸方向が45°ずつ変化するように制御される。具体的には、透過軸方向がY軸方向に対し「0°」、「45°」、「90°」、「135°」となるように変化する。
【0106】
これにより、第1偏光板32Aを透過する第1光の参照光成分及び計測光成分を4通りの位相で干渉させることができる。つまり、位相が90°ずつ異なる干渉光を生成することができる。具体的には、位相が「0°」の干渉光、位相が「90°」の干渉光、位相が「180°」の干渉光、位相が「270°」の干渉光を生成することができる。
【0107】
第1カメラ33Aは、撮像素子33Aa(
図6参照)等を備えてなる公知のものである。本実施形態では、第1カメラ33Aの撮像素子33Aaとして、CCDエリアセンサを採用している。勿論、撮像素子33Aaは、これに限定されるものではなく、例えばCMOSエリアセンサ等を採用してもよい。
【0108】
第1カメラ33Aによって撮像された画像データは、第1カメラ33A内部においてデジタル信号に変換された上で、デジタル信号の形で制御装置5(画像データ記憶装置54)に入力されるようになっている。
【0109】
具体的には、第1光に係る位相「0°」の干渉縞画像、位相「90°」の干渉縞画像、位相「180°」の干渉縞画像、位相「270°」の干渉縞画像が第1カメラ33Aにより撮像されることとなる。
【0110】
第2撮像系4Bは、第1撮像系4Aと同様、結像レンズ30B、1/4波長板31B、第2偏光板32B、第2撮像手段を構成する第2カメラ33Bなどを備えている。
【0111】
結像レンズ30Bは、一方側(第2カメラ33B側)の焦点位置が後述する撮像素子33Baに位置合わせされ、かつ、他方側(干渉光学系3側)の焦点位置が、参照光用の対物レンズ21の第2撮像系4B側の焦点位置、及び、計測光用の対物レンズ22の第2撮像系4B側の焦点位置とそれぞれ重なるように位置合わせされている。
【0112】
つまり、結像レンズ30Bは、偏光ビームスプリッタ20の第1面20aから出射され第1無偏光ビームスプリッタ13AをY軸方向上向きに透過してきた直線偏光(第2光の参照光成分及び計測光成分)を第2カメラ33B(撮像素子33Ba)へ結像させる機能を有する。尚、結像レンズ30Bは、複数のレンズからなるレンズユニットにより構成されていてもよい。勿論、1枚のレンズにより構成されていてもよい。
【0113】
1/4波長板31Bは、第1無偏光ビームスプリッタ13AをY軸方向上向きに透過し結像レンズ30Bを通過してきた直線偏光(第2光の参照光成分及び計測光成分)をそれぞれ円偏光に変換するためのものである。
【0114】
第2偏光板32Bは、第1偏光板32Aと同様、1/4波長板31Bにより円偏光に変換された第2光の各成分を選択的に透過させるものである。これにより、回転方向の異なる第2光の参照光成分と計測光成分とを特定の位相について干渉させることができる。「第2偏光板32B」が本実施形態における「位相シフト手段」及び「干渉手段」を構成する。
【0115】
本実施形態に係る第2偏光板32Bは、Y軸方向を軸心として回転可能に構成されると共に、その透過軸方向が45°ずつ変化するように制御される。具体的には、透過軸方向がX軸方向に対し「0°」、「45°」、「90°」、「135°」となるように変化する。
【0116】
これにより、第2偏光板32Bを透過する第2光の参照光成分及び計測光成分を4通りの位相で干渉させることができる。つまり、位相が90°ずつ異なる干渉光を生成することができる。具体的には、位相が「0°」の干渉光、位相が「90°」の干渉光、位相が「180°」の干渉光、位相が「270°」の干渉光を生成することができる。
【0117】
第2カメラ33Bは、第1カメラ33Aと同様、撮像素子33Ba(
図6参照)等を備えてなる公知のものである。本実施形態では、第1カメラ33Aと同様、第2カメラ33Bの撮像素子33Baとして、CCDエリアセンサを採用している。勿論、撮像素子33Baは、これに限定されるものではなく、例えばCMOSエリアセンサ等を採用してもよい。
【0118】
第1カメラ33Aと同様、第2カメラ33Bによって撮像された画像データは、第2カメラ33B内部においてデジタル信号に変換された上で、デジタル信号の形で制御装置5(画像データ記憶装置54)に入力されるようになっている。
【0119】
具体的には、第2光に係る位相「0°」の干渉縞画像、位相「90°」の干渉縞画像、位相「180°」の干渉縞画像、位相「270°」の干渉縞画像が第2カメラ33Bにより撮像されることとなる。
【0120】
ここで制御装置5の電気的構成について説明する。
図2に示すように、制御装置5は、三次元計測装置1全体の制御を司るマイクロコンピュータ51、キーボードやマウス、あるいは、タッチパネルで構成される「入力手段」としての入力装置52、液晶画面などの表示画面を有する「表示手段」としての表示装置53、カメラ33A,33Bにより撮像された画像データ等を順次記憶するための画像データ記憶装置54、各種演算結果を記憶するための演算結果記憶装置55、各種情報を予め記憶しておく設定データ記憶装置56を備えている。
【0121】
尚、マイクロコンピュータ51は、演算手段としてのCPU51aや、各種プログラムを記憶するROM51b、演算データや入出力データなどの各種データを一時的に記憶するRAM51cなどを備え、上記各種装置52~56と電気的に接続されている。
【0122】
次に三次元計測装置1の作用について説明する。尚、後述するように、本実施形態における第1光及び第2光の照射は同時に行われるものであり、第1光の光路と第2光の光路が一部で重なることとなるが、ここでは、より分かりやすくするため、第1光及び第2光の光路ごとに異なる図面を用いて個別に説明する。
【0123】
まず第1光の光路について
図3を参照して説明する。
図3に示すように、波長λ
1の第1光(偏光方向がX軸方向及びY軸方向に対し45°傾斜した直線偏光)が第1発光部11AからZ軸方向左向きに出射される。
【0124】
第1発光部11Aから出射された第1光は、第1光アイソレータ12Aを通過し、第1無偏光ビームスプリッタ13Aに入射する。第1無偏光ビームスプリッタ13Aに入射した第1光の一部はZ軸方向左向きに透過し、残りはY軸方向下向きに反射する。
【0125】
このうち、Y軸方向下向きに反射した第1光(偏光方向がX軸方向及びZ軸方向に対し45°傾斜した直線偏光)は、偏光ビームスプリッタ20の第1面20aに入射する。一方、Z軸方向左向きに透過した第1光は、何らかの光学系等に入射することなく、捨て光となる。
【0126】
ここで、捨て光となる光を、必要に応じて波長計測あるいは光のパワー計測に利用すれば、光源を安定化させ如いては計測精度の向上を図ることができる。
【0127】
偏光ビームスプリッタ20の第1面20aからY軸方向下向きに入射した第1光は、そのP偏光成分がY軸方向下向きに透過して第3面20cから参照光として出射される一方、そのS偏光成分がZ軸方向右向きに反射して第4面20dから計測光として出射される。
【0128】
偏光ビームスプリッタ20の第3面20cから出射され対物レンズ21を通過した第1光に係る参照光(P偏光)は、1/4波長板23を通過することにより右回りの円偏光に変換された後、参照面25で反射する。ここで、光の進行方向に対する回転方向は維持される。その後、第1光に係る参照光は、再度、1/4波長板23を通過することで、右回りの円偏光からS偏光に変換された上で対物レンズ21を通って偏光ビームスプリッタ20の第3面20cに再入射する。
【0129】
一方、偏光ビームスプリッタ20の第4面20dから出射され対物レンズ22を通過した第1光に係る計測光(S偏光)は、1/4波長板24を通過することにより左回りの円偏光に変換された後、ワークWで反射する。ここで、光の進行方向に対する回転方向は維持される。その後、第1光に係る計測光は、再度、1/4波長板24を通過することで、左回りの円偏光からP偏光に変換された上で対物レンズ22を通って偏光ビームスプリッタ20の第4面20dに再入射する。
【0130】
ここで、偏光ビームスプリッタ20の第3面20cから再入射した第1光に係る参照光(S偏光)が接合面20hにてZ軸方向左向きに反射する一方、第4面20dから再入射した第1光に係る計測光(P偏光)は接合面20hをZ軸方向左向きに透過する。そして、第1光に係る参照光及び計測光が合成された状態の合成光が出力光として偏光ビームスプリッタ20の第2面20bから出射される。
【0131】
偏光ビームスプリッタ20の第2面20bから出射された第1光に係る合成光(参照光及び計測光)は、第2無偏光ビームスプリッタ13Bに入射する。第2無偏光ビームスプリッタ13Bに対しZ軸方向左向きに入射した第1光に係る合成光は、その一部がZ軸方向左向きに透過し、残りがY軸方向下向きに反射する。このうち、Z軸方向左向きに透過した合成光(参照光及び計測光)は結像レンズ30Aを通って第1撮像系4Aに入射することとなる。一方、Y軸方向下向きに反射した合成光は、第2光アイソレータ12Bによりその進行を遮断され、捨て光となる。
【0132】
結像レンズ30Aを通って第1撮像系4Aに入射した第1光に係る合成光(参照光及び計測光)は、まず1/4波長板31Aにより、その参照光成分(S偏光成分)が左回りの円偏光に変換され、その計測光成分(P偏光成分)が右回りの円偏光に変換される。ここで、左回りの円偏光と右回りの円偏光は回転方向が異なるので干渉しない。
【0133】
第1光に係る合成光は、続いて第1偏光板32Aを通過することにより、その参照光成分と計測光成分とが第1偏光板32Aの角度に応じた位相で干渉する。そして、かかる第1光に係る干渉光が第1カメラ33Aにより撮像される。
【0134】
次に第2光の光路について
図4を参照して説明する。
図4に示すように、波長λ
2の第2光(偏光方向がX軸方向及びZ軸方向に対し45°傾斜した直線偏光)が第2発光部11BからY軸方向上向きに出射される。
【0135】
第2発光部11Bから出射された第2光は、第2光アイソレータ12Bを通過し、第2無偏光ビームスプリッタ13Bに入射する。第2無偏光ビームスプリッタ13Bに入射した第2光の一部はY軸方向上向きに透過し、残りはZ軸方向右向きに反射する。
【0136】
このうち、Z軸方向右向きに反射した第2光(偏光方向がX軸方向及びY軸方向に対し45°傾斜した直線偏光)は、偏光ビームスプリッタ20の第2面20bに入射する。一方、Y軸方向上向きに透過した第2光は、何らかの光学系等に入射することなく、捨て光となる。
【0137】
ここで、捨て光となる光を、必要に応じて波長計測あるいは光のパワー計測に利用すれば、光源を安定化させ如いては計測精度の向上を図ることができる。
【0138】
偏光ビームスプリッタ20の第2面20bからZ軸方向右向きに入射した第2光は、そのS偏光成分がY軸方向下向きに反射して第3面20cから参照光として出射される一方、そのP偏光成分がZ軸方向右向きに透過して第4面20dから計測光として出射される。
【0139】
偏光ビームスプリッタ20の第3面20cから出射され対物レンズ21を通過した第2光に係る参照光(S偏光)は、1/4波長板23を通過することにより左回りの円偏光に変換された後、参照面25で反射する。ここで、光の進行方向に対する回転方向は維持される。その後、第2光に係る参照光は、再度、1/4波長板23を通過することで、左回りの円偏光からP偏光に変換された上で対物レンズ21を通って偏光ビームスプリッタ20の第3面20cに再入射する。
【0140】
一方、偏光ビームスプリッタ20の第4面20dから出射され対物レンズ22を通過した第2光に係る計測光(P偏光)は、1/4波長板24を通過することにより右回りの円偏光に変換された後、ワークWで反射する。ここで、光の進行方向に対する回転方向は維持される。その後、第2光に係る計測光は、再度、1/4波長板24を通過することで、右回りの円偏光からS偏光に変換された上で対物レンズ22を通って偏光ビームスプリッタ20の第4面20dに再入射する。
【0141】
ここで、偏光ビームスプリッタ20の第3面20cから再入射した第2光に係る参照光(P偏光)は接合面20hをY軸方向上向きに透過する一方、第4面20dから再入射した第2光に係る計測光(S偏光)は接合面20hにてY軸方向上向きに反射する。そして、第2光に係る参照光及び計測光が合成された状態の合成光が出力光として偏光ビームスプリッタ20の第1面20aから出射される。
【0142】
偏光ビームスプリッタ20の第1面20aから出射された第2光に係る合成光(参照光及び計測光)は、第1無偏光ビームスプリッタ13Aに入射する。第1無偏光ビームスプリッタ13Aに対しY軸方向上向きに入射した第2光に係る合成光は、その一部がY軸方向上向きに透過し、残りがZ軸方向右向きに反射する。このうち、Y軸方向上向きに透過した合成光(参照光及び計測光)は結像レンズ30Bを通って第2撮像系4Bに入射することとなる。一方、Z軸方向右向きに反射した合成光は、第1光アイソレータ12Aによりその進行を遮断され、捨て光となる。
【0143】
結像レンズ30Bを通って第2撮像系4Bに入射した第2光に係る合成光(参照光及び計測光)は、まず1/4波長板31Bにより、その参照光成分(P偏光成分)が右回りの円偏光に変換され、その計測光成分(S偏光成分)が左回りの円偏光に変換される。ここで、左回りの円偏光と右回りの円偏光は回転方向が異なるので干渉しない。
【0144】
第2光に係る合成光は、続いて第2偏光板32Bを通過することにより、その参照光成分と計測光成分とが第2偏光板32Bの角度に応じた位相で干渉する。そして、かかる第2光に係る干渉光が第2カメラ33Bにより撮像される。
【0145】
次に、制御装置5によって実行される計測処理の手順について
図5のフローチャート等を参照しつつ詳しく説明する。以下、この計測処理について説明する際には、第1カメラ33Aの撮像素子33Aa面、又は、第2カメラ33Bの撮像素子33Ba面をx-y平面とし、これに直交する光軸方向をz方向として説明する。勿論、この座標系(x,y,z)と、三次元計測装置1全体を説明するための座標系(X,Y,Z)は異なる座標系である。
【0146】
先ずステップS1において、ワークWの所定の計測領域(ワークWの全域又はその一部)に係る干渉縞画像を取得する処理を実行する。本実施形態では、ここで第1光に係る位相の異なる4通りの干渉縞画像、及び、第2光に係る位相の異なる4通りの干渉縞画像を取得する。以下、詳しく説明する。
【0147】
ワークWを設置部26へ設置した後、第1撮像系4Aの第1偏光板32Aの透過軸方向を所定の基準位置(例えば「0°」)に設定すると共に、第2撮像系4Bの第2偏光板32Bの透過軸方向を所定の基準位置(例えば「0°」)に設定する。
【0148】
続いて、第1投光系2Aから第1光を照射すると同時に、第2投光系2Bから第2光を照射する。その結果、干渉光学系3の偏光ビームスプリッタ20の第2面20bから第1光に係る合成光(参照光及び計測光)が出射されると同時に、偏光ビームスプリッタ20の第1面20aから第2光に係る合成光(参照光及び計測光)が出射される。
【0149】
そして、偏光ビームスプリッタ20の第2面20bから出射された第1光に係る合成光を第1撮像系4Aにより撮像すると同時に、偏光ビームスプリッタ20の第1面20aから出射された第2光に係る合成光を第2撮像系4Bにより撮像する。
【0150】
尚、ここでは第1偏光板32A及び第2偏光板32Bの透過軸方向がそれぞれ「0°」に設定されているため、第1カメラ33Aでは第1光に係る位相「0°」の干渉縞画像が撮像され、第2カメラ33Bでは第2光に係る位相「0°」の干渉縞画像が撮像されることとなる。
【0151】
そして、各カメラ33A,33Bからそれぞれ撮像された画像データが制御装置5へ出力される。制御装置5は、入力した画像データを画像データ記憶装置54に記憶する。
【0152】
次に制御装置5は、第1撮像系4Aの第1偏光板32A、及び、第2撮像系4Bの第2偏光板32Bの切替処理を行う。具体的には、第1偏光板32A及び第2偏光板32Bをそれぞれ透過軸方向が「45°」となる位置まで回動変位させる。
【0153】
該切替処理が終了すると、制御装置5は、上記一連の1回目の撮像処理と同様の2回目の撮像処理を行う。つまり、制御装置5は、第1投光系2Aから第1光を照射すると同時に、第2投光系2Bから第2光を照射し、偏光ビームスプリッタ20の第2面20bから出射された第1光に係る合成光を第1撮像系4Aにより撮像すると同時に、偏光ビームスプリッタ20の第1面20aから出射された第2光に係る合成光を第2撮像系4Bにより撮像する。これにより、第1光に係る位相「90°」の干渉縞画像が取得されると共に、第2光に係る位相「90°」の干渉縞画像が撮像されることとなる。
【0154】
以降、上記1回目及び2回目の撮像処理と同様の撮像処理が2回繰り返し行われる。つまり、第1偏光板32A及び第2偏光板32Bの透過軸方向を「90°」に設定した状態で3回目の撮像処理を行い、第1光に係る位相「180°」の干渉縞画像を取得すると共に、第2光に係る位相「180°」の干渉縞画像を取得する。
【0155】
その後、第1偏光板32A及び第2偏光板32Bの透過軸方向を「135°」に設定した状態で4回目の撮像処理を行い、第1光に係る位相「270°」の干渉縞画像を取得すると共に、第2光に係る位相「270°」の干渉縞画像を取得する。
【0156】
このように、4回の撮像処理を行うことにより、ワークWの所定の計測領域に係る計測を行う上で必要な全ての画像データ(第1光に係る4通りの干渉縞画像、及び、第2光に係る4通りの干渉縞画像からなる計8つの干渉縞画像)を取得することができる。
【0157】
続くステップS2において、制御装置5は、撮像素子33Aa,33Ba面における光の複素振幅データを取得する処理を実行する。
【0158】
本実施形態では、画像データ記憶装置54に記憶された第1光に係る4通りの干渉縞画像、及び、第2光に係る4通りの干渉縞画像を基に、第1光及び第2光それぞれに係る撮像素子33Aa,33Ba面での光の複素振幅データEo(x,y)を取得する。
【0159】
第1光又は第2光に係る4通りの干渉縞画像の同一座標位置(x,y)における干渉縞強度、すなわち輝度I1(x,y)、I2(x,y)、I3(x,y)、I4(x,y)は、下記[数1]の関係式で表すことができる。
【0160】
【0161】
ここで、Δφ(x,y)は、座標(x,y)における計測光と参照光との光路差に基づく位相差を表している。また、A(x,y)は干渉光の振幅、B(x,y)はバイアスを表している。但し、参照光は均一であるため、これを基準として見ると、Δφ(x,y)は「計測光の位相」を表し、A(x,y)は「計測光の振幅」を表すこととなる。
【0162】
従って、撮像素子33Aa,33Ba面に到達した計測光の位相Δφ(x,y)は、上記[数1]の関係式を基に、下記[数2]の関係式で求めることができる。
【0163】
【0164】
また、撮像素子33Aa,33Ba面に到達した計測光の振幅A(x,y)は、上記[数1]の関係式を基に、下記[数3]の関係式で求めることができる。
【0165】
【0166】
そして、上記位相Δφ(x,y)と振幅A(x,y)から、下記[数4]の関係式を基に撮像素子33Aa,33Ba面における複素振幅データEo(x,y)を算出することができる。ここで、iは虚数単位を表している。
【0167】
【0168】
続くステップS3において、制御装置5は、ワークW上の計測領域内に予め設定した一部の特定領域V(
図7参照)について、z方向複数位置の複素振幅データを取得する処理を実行する。
【0169】
本実施形態では、三次元計測装置1における高さ計測の基準となる装置原点を基準に、ワークWが存在し得るz方向所定範囲(光軸方向第1範囲)Q1内において、所定の計測レンジ間隔ごとに、特定領域Vに係る複素振幅データを取得する。
【0170】
ここで「特定領域V」は、z方向におけるワークWの位置を事前に把握するために任意に設定された領域である。例えばワークWが
図8,9に示すようなウエハ基板100である場合には、バンプ101の高さ計測の基準面となり得るパターン部102が特定領域Vとして設定される。
【0171】
また、
図8に示すウエハ基板100の計測例では、三次元計測装置1における高さ計測の基準となる装置原点H
0を中心にして上下方向にそれぞれ計測レンジ間隔Rごとに設定された高さ位置H
3,H
2,H
1,H
0,H
-1,H
-2,H
-3それぞれにおける複素振幅データを取得するように設定されている。
【0172】
以下、ステップS3における複素振幅データの取得方法について詳しく説明する。まずz方向の所定位置における既知の複素振幅データから、z方向の異なる位置における未知の複素振幅データを取得する方法について説明する。
【0173】
ここでは、z方向に距離d離れた2つの座標系(x-y座標系とξ-η座標系)を考える。そして、x-y座標系をz=0とし、x-y座標系での既知の光の複素振幅データをEo(x,y)で表し、x-y平面から距離d離れたξ-η平面での未知の光の複素振幅データをEo(ξ,η)と表すと、下記[数5]に示す関係となる。ここで、λは波長を表す。
【0174】
【0175】
これをEo(ξ,η)について解くと、下記[数6]のようになる。
【0176】
【0177】
従って、ステップS3においては、
図6,7に示すように、上記ステップS2で取得した撮像素子33Aa,33Ba面における複素振幅データEo(x,y)を基に、撮像素子33Aa,33Ba面からz方向への距離LがL0,L1,L2・・・Ln離れた位置(z=L0,L1,・・・,Ln)それぞれにおける複素振幅データEoL0(ξ,η),EoL1(ξ,η),・・・,EoLn(ξ,η)を取得することとなる。
【0178】
続くステップS4において、制御装置5は、特定領域Vについて、z方向複数位置の強度画像(輝度画像)データを取得する処理を実行する。
【0179】
詳しくは、上記ステップS3において取得した特定領域Vに係るz方向複数位置の複素振幅データEoL0(ξ,η),EoL1(ξ,η),・・・,EoLn(ξ,η)からそれぞれ強度画像データを取得する。従って、上記ステップS2~S4に係る一連の再生処理を実行する機能により、本実施形態における第1画像データ取得手段が構成されることとなる。
【0180】
尚、ξ-η平面における複素振幅データがEo(ξ,η)で表されるとき、ξ-η平面における強度画像データI(ξ,η)は下記[数7]の関係式で求めることができる。
【0181】
【0182】
続くステップS5において、制御装置5は、特定領域Vに係る最適合焦位置(光軸方向合焦位置)を決定する処理を実行する。かかるステップS5の処理を実行する機能により、本実施形態における第1合焦位置決定手段が構成される。
【0183】
詳しくは、上記ステップS4にて取得した特定領域Vに係るz方向複数位置の強度画像データを基に、特定領域Vのz方向における最適合焦位置を決定する。以下、強度画像データのコントラストから特定領域Vの最適合焦位置を決定する方法について説明する。
【0184】
まず撮像素子33Aa,33Ba面からz方向への距離LがL0,L1,L2,・・・,Ln離れたz方向各位置(z=L0,L1,・・・,Ln)における特定領域Vの強度画像データについて「特定座標位置」と「その他の座標位置」との輝度のコントラストを求める。続いて、この中で最もコントラストが高い強度画像データが得られた位置(z=Lm)を最適合焦位置として抽出する。
【0185】
尚、特定領域Vの最適合焦位置を決定する方法としては、上述した強度画像データのコントラストから求める方法のみならず、他の方法を採用してもよい。例えば強度画像データの輝度から求める方法を採用してもよい。
【0186】
かかる方法では、強度画像データは実際に物体がある面で最も強くなるという性質を利用する。具体的には、z方向各位置(z=L0,L1,・・・,Ln)における特定領域Vの強度画像データにおいて、特定領域Vの各座標位置の平均輝度を求める。続いて、この中で最も平均輝度が高い強度画像データが得られた位置(z=Lm)を最適合焦位置として抽出する。
【0187】
例えば
図8に示すウエハ基板100の計測例では、高さ位置H
3,H
2,H
1,H
0,H
-1,H
-2,H
-3におけるパターン部102の強度画像データについてコントラスト又は平均輝度が求められると共に、この中で最もコントラスト又は平均輝度が高い強度画像データが得られる位置(例えば高さ位置H
-1)が最適合焦位置として抽出される。
【0188】
続くステップS6において、制御装置5は、ワークWの所定の計測領域全体の各座標位置について、z方向複数位置の複素振幅データを取得する処理を実行する。
【0189】
本実施形態では、上記ステップS5において決定した特定領域Vの最適合焦位置を基準に、ワークW上の所定の計測対象(例えばウエハ基板100上のバンプ101)が存在し得るz方向所定範囲(光軸方向第2範囲)Q2内において、所定の計測レンジ間隔ごとに、計測領域の各座標位置に係る複素振幅データを取得する。
【0190】
例えば
図8に示すウエハ基板100の計測例では、特定領域Vの最適合焦位置(高さ位置H
-1)を基準として上方向に計測レンジ間隔Rごとに設定された高さ位置H
1,H
0,H
-1それぞれにおける複素振幅データを取得するように設定されている。
【0191】
また、
図8に示す例では、z方向所定範囲Q2がz方向所定範囲Q1よりも狭くなるように設定されているが、これに限らず、両者が同一間隔に、又は、z方向所定範囲Q2がz方向所定範囲Q1よりも広くなるように設定される構成としてもよい。但し、計測領域全体の各座標位置に係る三次元計測を行う上で必要なデータを取得するための処理にかかる負荷を軽減すると共に、該処理に要する時間を短縮できる点においては、z方向所定範囲Q2がz方向所定範囲Q1よりも狭く設定されることが好ましい。
【0192】
尚、ステップS6における複素振幅データの取得方法は、上記ステップS3における複素振幅データの取得方法と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0193】
続くステップS7において、制御装置5は、ワークW上の計測領域の各座標位置について、z方向複数位置の強度画像データを取得する処理を実行する。従って、上記ステップS6,7に係る一連の処理を実行する機能により、本実施形態における第2画像データ取得手段が構成されることとなる。
【0194】
詳しくは、上記ステップS6において取得した複素振幅データを基に、ワークW上の計測領域の各座標位置について、z方向複数位置の強度画像データを取得する。尚、ステップS7において複素振幅データから強度画像データを取得する方法は、上記ステップS4における強度画像データの取得方法と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0195】
続くステップS8において、制御装置5は、ワークW上の計測領域の各座標位置について最適合焦位置(光軸方向合焦位置)を決定する処理を実行する。かかるステップS8の処理を実行する機能により本実施形態における第2合焦位置決定手段が構成される。
【0196】
詳しくは、上記ステップS7にて取得した計測領域の各座標位置に係るz方向複数位置の強度画像データを基に、計測領域の各座標位置のz方向における最適合焦位置を決定する。尚、ステップS8においてz方向複数位置の強度画像データから最適合焦位置を決定する方法は、上記ステップS5における最適合焦位置の決定方法と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0197】
続くステップS9において、制御装置5は、ステップS8において決定したワークW上の計測領域の各座標位置に係る最適合焦位置に対応する次数を、該各座標位置に係る計測レンジの次数として特定する処理を実行する。かかるステップS9の処理を実行する機能により、本実施形態における次数特定手段が構成される。
【0198】
ここで、計測レンジの次数の特定方法について
図11に例示した具体例を基に説明する。
図11に示す例は、
図8に示すウエハ基板100を、計測レンジ(位相シフト法における正弦波の1周期分[-180°~180°])が1000nmとなる光(本実施形態では2波長の合成波長光)を使用して、「-3500(nm)」~「3500(nm)」の範囲の高さ計測を行った場合の例である。
【0199】
図11に示す「ケース1」では、所定座標位置について、高さ位置H
3,H
2,H
1,H
0,H
-1,H
-2,H
-3において再生した強度画像データ(再生画像[1]~[7])のうち、高さ位置H
2にて再生した強度画像データ(再生画像[2])に係る輝度値が「250」で最大となっている。このため、該座標位置について、高さ位置H
2が最適合焦位置となり、これに対応する次数[2]が、該座標位置に係る計測レンジの次数として特定される。
【0200】
図11に示す「ケース2」では、所定座標位置について、高さ位置H
3,H
2,H
1,H
0,H
-1,H
-2,H
-3において再生した強度画像データ(再生画像[1]~[7])のうち、高さ位置H
2にて再生した強度画像データ(再生画像[2])及び高さ位置H
1にて再生した強度画像データ(再生画像[1])に係る輝度値が共に「128」で最大となっている。
【0201】
かかる場合、該座標位置に係る実際の高さは、次数[2]の計測レンジと、次数[1]の計測レンジとの境界部付近に相当する高さであると想定されるため、この時点においては、2つの次数[2]、[1]を該座標位置に係る計測レンジの次数として特定しておく。
【0202】
続くステップS10において、制御装置5は、三次元計測処理を実行する。かかるステップ10の処理を実行する機能により、本実施形態における三次元計測手段が構成される。
【0203】
ここで、まず制御装置5は、ステップS8において決定した計測領域の各座標位置における最適合焦位置の複素振幅データEo(ξ,η)から、下記[数8]の関係式を基に、計測光の位相φ(ξ,η)と、計測光の振幅A(ξ,η)を算出する。
【0204】
【0205】
計測光の位相φ(ξ,η)は、下記[数9]の関係式により求めることができる。ここで、計測光の位相情報である位相φ(ξ,η)を算出する一連の再生処理を実行する機能により、本実施形態における位相情報取得手段が構成されることとなる。
【0206】
【0207】
計測光の振幅A(ξ,η)は、下記[数10]の関係式により求めることができる。
【0208】
【0209】
その後、位相-高さ変換処理を行い、ワークWの表面の凹凸形状を3次元的に示す計測レンジ内の高さ情報z(ξ,η)を算出する。
【0210】
計測レンジ内の高さ情報z(ξ,η)は、下記[数11]の関係式により算出することができる。
【0211】
【0212】
そして、上記のように算出した計測レンジ内の高さ情報z(ξ,η)と、ステップS9にて特定した各座標位置に係る計測レンジの次数とを基に、該座標位置に係る真の高さデータ(実際の高さ)を取得する。
【0213】
例えば
図11に示す例において、所定座標位置について、上記のように算出した計測レンジ内の高さ情報z(ξ,η)が例えば位相「+90°」に相当するものであった場合には、該座標位置の真の高さデータの候補は、次数[3]の「3250(nm)」、次数[2]の「2250(nm)」、次数[1]の「1250(nm)」、次数[0]の「250(nm)」、次数[-1]の「-750(nm)」、次数[-2]の「-1750(nm)」、次数[-3]の「-2750(nm)」となる。
【0214】
ここで、例えば「ケース1」のように、該座標位置について、高さ位置H2が最適合焦位置となり、これに対応する次数[2]が、該座標位置に係る計測レンジの次数として特定された場合には、該座標位置の真の高さデータは、次数[2]の位相[90°]に対応する「2250(nm)」と特定することができる。
【0215】
また、
図11に示す例において、所定座標位置について、上記のように算出した計測レンジ内の高さ情報z(ξ,η)が例えば位相「-180°」に相当するものであった場合には、該座標位置の真の高さデータの候補は、次数[3]の「2500(nm)」、次数[2]の「1500(nm)」、次数[1]の「500(nm)」、次数[0]の「-500(nm)」、次数[-1]の「-1500(nm)」、次数[-2]の「-2500(nm)」、次数[-3]の「-3500(nm)」となる。
【0216】
ここで、例えば「ケース2」のように、該座標位置について、高さ位置H2及び高さ位置H1が最適合焦位置となり、これに対応する次数[2]及び次数[1]が、該座標位置に係る計測レンジの次数として特定されている場合には、該座標位置の真の高さデータは、次数[2]の位相「-180°」に対応する「1500(nm)」と特定することができる。
【0217】
さて、ワークWがウエハ基板100(
図9参照)でバンプ101が計測対象となっている場合、計測基準面であるパターン部102に対するバンプ101の高さHBは、バンプ101の絶対高さHA1から、該バンプ101周辺のパターン部102の絶対高さHA2を減算することにより求めることができる〔HB=HA1-HA2〕。
【0218】
ここで、パターン部102の絶対高さHA2としては、例えばパターン部102上の任意の1点の絶対高さや、パターン部102上の所定範囲の絶対高さの平均値などを用いることができる。また、「バンプ101の絶対高さHA1」や、「パターン部102の絶対高さHA2」は、高さ情報z(ξ,η)及び計測レンジの次数により求めることができる。
【0219】
そして、このように求められたワークWの計測結果は、制御装置5の演算結果記憶装置55に格納される。
【0220】
尚、波長の異なる2種類の光(波長λ1,λ2)を用いて計測を行った場合には、その合成波長λ0の光で計測を行ったことと同じこととなる。そして、その計測レンジはλ0/2に拡大することとなる。合成波長λ0は、下記式(M1)で表すことができる。
【0221】
λ0=(λ1×λ2)/(λ2-λ1) ・・・(M1)
但し、λ2>λ1とする。
【0222】
例えばλ1=1500nm、λ2=1503nmとすると、上記式(M1)から、λ0=751.500μmとなり、計測レンジはλ0/2=375.750μmとなる。
【0223】
より詳しく説明すると、本実施形態では、まず波長λ1の第1光に係る4通りの干渉縞画像の輝度I1(x,y)、I2(x,y)、I3(x,y)、I4(x,y)を基に(上記[数1]参照)、ワークW面上の座標(ξ,η)における第1光に係る計測光の位相φ1(ξ,η)を算出することができる(上記[数9]参照)。
【0224】
第1光に係る計測の下、座標(ξ,η)における高さ情報z(ξ,η)は、下記式(M2)で表すことができる。
【0225】
z(ξ,η)=d1(ξ,η)/2
={λ1×φ1(ξ,η)/4π}+{m1(ξ,η)×λ1/2} ・・・(M2)
但し、d1(ξ,η)は、第1光に係る計測光と参照光との光路差を表し、m1(ξ,η)は、第1光に係る縞次数を表す。
【0226】
よって、位相φ1(ξ,η)は下記式(M2´)で表すことができる。
【0227】
φ1(ξ,η)=(4π/λ1)×z(ξ,η)-2πm1(ξ,η) ・・・(M2´)
同様に、波長λ2の第2光に係る4通りの干渉縞画像の輝度I1(x,y)、I2(x,y)、I3(x,y)、I4(x,y)を基に(上記[数1]参照)、ワークW面上の座標(ξ,η)における第2光に係る計測光の位相φ2(ξ,η)を算出することができる(上記[数9]参照)。
【0228】
第2光に係る計測の下、座標(ξ,η)における高さ情報z(ξ,η)は、下記式(M3)で表すことができる。
【0229】
z(ξ,η)=d2(ξ,η)/2
={λ2×φ2(ξ,η)/4π}+{m2(ξ,η)×λ2/2} ・・・(M3)
但し、d2(ξ,η)は、第2光に係る計測光と参照光との光路差を表し、m2(ξ,η)は、第2光に係る縞次数を表す。
【0230】
よって、位相φ2(ξ,η)は下記式(M3´)で表すことができる。
【0231】
φ2(ξ,η)=(4π/λ2)×z(ξ,η)-2πm2(ξ,η) ・・・(M3´)
ここで、波長λ1の第1光に係る縞次数m1(ξ,η)、及び、波長λ2の第2光に係る縞次数m2(ξ,η)は、2種類の光(波長λ1,λ2)の光路差Δd及び波長差Δλを基に求めることができる。光路差Δd及び波長差Δλは、それぞれ下記式(M4),(M5)のように表すことができる。
【0232】
Δd=(λ1×φ1-λ2×φ2)/2π ・・・(M4)
Δλ=λ2-λ1 ・・・(M5)
但し、λ2>λ1とする。
【0233】
尚、2波長の合成波長λ0の計測レンジ内において、縞次数m1,m2の関係は、以下の3つの場合に分けられ、各場合ごとに縞次数m1(ξ,η)、m2(ξ,η)を決定する計算式が異なる。ここで、例えば縞次数m1(ξ,η)を決定する場合について説明する。勿論、縞次数m2(ξ,η)についても、同様の手法により求めることができる。
【0234】
例えば「φ1-φ2<-π」の場合には「m1-m2=-1」となり、かかる場合、m1は下記式(M6)のように表すことができる。
【0235】
m1=(Δd/Δλ)-(λ2/Δλ)
=(λ1×φ1-λ2×φ2)/2π(λ2-λ1)-λ2/(λ2-λ1)・・・(M6)
「-π<φ1-φ2<π」の場合には「m1-m2=0」となり、かかる場合、m1は下記式(M7)のように表すことができる。
【0236】
m1=Δd/Δλ
=(λ1×φ1-λ2×φ2)/2π(λ2-λ1)・・・(M7)
「φ1-φ2>π」の場合には「m1-m2=+1」となり、かかる場合、m1は下記式(M8)のように表すことができる。
【0237】
m1=(Δd/Δλ)+(λ2/Δλ)
=(λ1×φ1-λ2×φ2)/2π(λ2-λ1)+λ2/(λ2-λ1)・・・(M8)
このようにして得られた縞次数m1(ξ,η)又はm2(ξ,η)を基に、上記式(M2),(M3)から高さ情報z(ξ,η)を得ることができる。
【0238】
以上詳述したように、本実施形態では、ワークW上の計測領域の各座標位置ごとに、計測レンジを超えた高さ計測が可能となる。また、ワークWを移動させるような大掛かりな移動機構を必要とせず、構成の簡素化を図ることができると共に、その振動等の影響を受けることもないため、計測精度の向上を図ることができる。
【0239】
さらに、より少ない撮像回数で、計測に必要なすべての干渉縞画像を取得することができ、計測効率の向上を図ることができる。
【0240】
加えて、本実施形態では、まず最初にワークWの計測領域全体ではなく、計測領域内に予め設定した一部の特定領域Vについてのみ、z方向複数位置における強度画像データを取得し、その合焦状況からワークWのz方向位置を特定した後、かかる位置を基準にして計測領域全体の各座標位置について、z方向複数位置における強度画像データを取得して計測を行う構成となっている。
【0241】
これにより、計測領域に係る三次元計測を行う上で必要なデータを取得するための処理にかかる負荷を軽減すると共に、該処理に要する時間を短縮することができる。結果として、計測精度の向上を図ると共に、計測効率の向上を図ることができる。
【0242】
また、本実施形態では、波長λ1の第1光を偏光ビームスプリッタ20の第1面20aから入射させると共に、波長λ2の第2光を偏光ビームスプリッタ20の第2面20bから入射させることにより、第1光に係る参照光及び計測光と、第2光に係る参照光及び計測光がそれぞれ異なる偏光成分(P偏光又はS偏光)に分割されるため、偏光ビームスプリッタ20に入射した第1光と第2光は互いに干渉することなく、別々に偏光ビームスプリッタ20から出射されることとなる。つまり、偏光ビームスプリッタ20から出射される光を所定の分離手段を用いて第1光と第2光とに分離する必要がない。
【0243】
その結果、第1光及び第2光として波長の近い2種類の光を用いることができ、三次元計測に係る計測レンジをより広げることができる。加えて、第1光に係る出力光の撮像と、第2光に係る出力光の撮像を同時に行うことができるため、総体的な撮像時間を短縮でき、計測効率の向上を図ることができる。
【0244】
加えて、本実施形態では、偏光ビームスプリッタ20の第3面20cから出射される光(参照光)を参照面25へ向け照射させる対物レンズ21、及び、偏光ビームスプリッタ20の第4面20dから出射される光(計測光)をワークWへ向け照射させる対物レンズ22を備えると共に、偏光ビームスプリッタ20の第2面20bから出射された直線偏光(第1光の参照光成分及び計測光成分)を第1カメラ33Aへ結像させる結像レンズ30A、及び、偏光ビームスプリッタ20の第1面20aから出射された直線偏光(第2光の参照光成分及び計測光成分)を第2カメラ33Bへ結像させる結像レンズ30Bを備えた構成となっている。
【0245】
これにより、対物レンズ等を使用しない従来構成に比べ、上記ステップS5の処理(特定領域Vに係る最適合焦位置を決定する処理)や、上記ステップS8の処理(ワークW上の計測領域の各座標位置について最適合焦位置を決定する処理)を実行する際、
図21の表に示したように、最適合焦位置との相対距離(再生距離)が同じ再生位置であっても、輝度値の変化が大きくなる。
【0246】
結果として、最適合焦位置を特定しやすくなると共に、ノイズ等の影響を受けにくくなり、計測精度の向上を図ることができる。
【0247】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0248】
(a)被計測物としてのワークWは、上記実施形態に例示したウエハ基板100に限定されるものではない。例えばクリーム半田が印刷されたプリント基板などをワークW(被計測物)としてもよい。
【0249】
また、予め設定された良否の判定基準に従い、計測対象となるバンプやクリーム半田の良否を検査する検査手段を設けたバンプ検査装置や半田印刷検査装置において、三次元計測装置1を備えた構成としても良い。
【0250】
(b)上記実施形態では、干渉縞画像から再生を行う方法(複素振幅データを得る方法)として、複数枚の画像データを用いる位相シフト法を採用しているが、これに限らず、他の方法を採用してもよい。例えば1枚の画像データを用いて行うフーリエ変換法を採用してもよい。
【0251】
また、再生に関しても、複素振幅データを用いて再生する方法に限定されず、他の再生方法を採用してもよい。
【0252】
さらに、光伝搬計算に関しても、上記実施形態において例示したコンボリューション法に限らず、例えば角スペクトル法など他の方法を採用してもよい。
【0253】
(c)干渉光学系(所定の光学系)の構成は上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、干渉光学系として、マイケルソン干渉計の光学構成を採用しているが、これに限らず、例えばマッハ・ツェンダー干渉計やフィゾー干渉計の光学構成など、入射光を参照光と計測光に分割してワークWの計測を行う構成であれば、他の光学構成を採用してもよい。
【0254】
(d)上記実施形態では、波長の異なる2種類の光を利用してワークWの計測を行う構成となっているが、これに限らず、1種類の光のみを利用してワークWの計測を行う構成としてもよい。
【0255】
また、波長の異なる2種類の光を利用する場合においては、上記実施形態に係る構成に限らず、従来の三次元計測装置と同様に、第1波長光と第2波長光を合成した状態で干渉光学系へ入射させ、ここから出射される干渉光を所定の光学分離手段(ダイクロイックミラー等)により波長分離し、第1波長光に係る干渉光と、第2波長光に係る干渉光とを得て、各波長光に係る干渉光を個別に撮像した干渉縞画像を基にワークWの計測を行う構成としてもよい。
【0256】
また、2つの光源から出射される波長の異なる2種類の光を重ね合わせた状態で干渉光学系へ入射させ、ここから出射される光を光学分離手段により波長分離し、上記各波長の光に係る干渉光を個別に撮像する構成を上記実施形態に組み合わせ、波長の異なる3種類以上の光を利用してワークWの計測を行う構成としてもよい。
【0257】
(e)投光系2A,2Bの構成は上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、第1投光系2Aから波長λ1=1500nmの光が照射され、第2投光系2Bから波長λ2=1503nmの光が照射される構成を例示しているが、各光の波長はこれに限定されるものではない。但し、計測レンジを広げるためには、2つの光の波長差をより小さくすることが好ましい。
【0258】
また、上記実施形態に係る発光部11A,11Bは、レーザ光源を採用し、レーザ光を出射する構成となっているが、これに限らず、他の構成を採用してもよい。少なくとも干渉を生じさせることができるコヒーレンスの高い光(コヒーレント光)を出射可能な構成となっていればよい。
【0259】
例えばLED光源などのインコヒーレント光源と、特定の波長のみを透過させるバンドパスフィルタやスペイシャルフィルタなどを組み合わせてコヒーレンスを高め、コヒーレント光を出射可能な構成としてもよい。
【0260】
(f)上記実施形態では、第1光及び第2光について、それぞれ位相が90°ずつ異なる4通りの干渉縞画像を取得する構成となっているが、位相シフト回数及び位相シフト量は、これらに限定されるものではない。例えば位相が120°(又は90°)ずつ異なる3通りの干渉縞画像を取得してワークWの計測を行う構成としてもよい。
【0261】
(g)上記実施形態では、位相シフト手段として、透過軸方向を変更可能に構成された偏光板32A,32Bを採用しているが、位相シフト手段の構成は、これに限定されるものではない。
【0262】
例えばピエゾ素子等により参照面25を光軸に沿って移動させることで物理的に光路長を変化させる構成を採用してもよい。
【0263】
但し、かかる構成や上記実施形態では、計測に必要なすべての干渉縞画像を取得するまでに一定時間を要するため、計測時間が長くなるばかりでなく、その空気の揺らぎや振動等の影響を受けるため、計測精度が低下するおそれがある。
【0264】
これに対し、例えば第1撮像系4Aにおいて、1/4波長板31Aを透過した第1光に係る合成光(参照光成分及び計測光成分)を4つの光に分割する分光手段(プリズム等)を備えると共に、位相シフト手段として、第1偏光板32Aに代えて、前記分光手段から出射された4つの光に対してそれぞれ異なる位相差を付与するフィルタ手段を備え、該フィルタ手段を透過した4つの光を第1カメラ33A(又は複数のカメラ)により同時撮像する構成としてもよい。勿論、第2撮像系4Bについても同様の構成としてもよい。
【0265】
これに代えて、撮像素子の画素ごとに異なる角度の偏光板が設置されている特殊なカメラを用いても良い。
【0266】
例えば
図13に示すように、各画素の集光効率を向上させるためのマイクロレンズ401がマトリクス状に配列されたレンズユニット402と、各レンズ401から出射された光の所定成分を選択的に透過させる偏光板403がマトリクス状に配列されたフィルタ手段としてのフィルタユニット404と、各偏光板403を透過した光をそれぞれ受光する複数の画素405がマトリクス状に配列された撮像素子406とを有したカメラを用いても良い。
【0267】
ここで、フィルタユニット404を構成する偏光板403は、透過軸方向が45°ずつ異なる4種類の偏光板403a,403b,403c,403dからなる。より詳しくは、透過軸方向が0°の第1偏光板403a、透過軸方向が45°の第2偏光板403b、透過軸方向が90°の第3偏光板403c、透過軸方向が135°の第4偏光板403dにより構成されている。
【0268】
そして、フィルタユニット404においては、これら4種類の偏光板403a,403b,403c,403dが所定順序で2行2列のマトリクス状に並んだ偏光板組(
図13の太枠部分参照)がマトリクス状に配置された構成となっている。
【0269】
このようなカメラを用いることにより、隣接する4つの画素で位相シフト計算が可能となる。隣接画素を用いなくても、0°、45°、90°、135°の画像に分解し、元のサイズに拡大してから4枚の画像を作り、画素ごとに位相シフト計算する方法でもよい。拡大の方法はバイリニアやバイキュービック法による補間方法が用いられるが、これだけに限定されるものではない。
【0270】
かかる構成とすれば、計測に必要なすべての干渉縞画像を同時に取得することができる。つまり、2種類の光に係る計8通りの干渉縞画像を同時に取得することができる。結果として、計測精度の向上を図ると共に、総体的な撮像時間を大幅に短縮でき、計測効率の飛躍的な向上を図ることができる。
【0271】
(h)上記実施形態では、z方向におけるワークWの位置(特定領域Vの最適合焦位置)を決定する過程において、高さ計測の計測レンジ間隔で複素振幅データ等を取得する構成となっているが、これに限らず、例えば合焦範囲間隔で複素振幅データ等を取得する構成としてもよい。
【0272】
(i)上記実施形態では、ステップS6において得られた計測領域全体の複素振幅データを基に、ステップS10において三次元計測を行う構成となっている。これに加えて、ステップS6において得られた計測領域全体の複素振幅データを基に、計測領域全体の強度画像を取得し、二次元計測を行う構成としてもよい。
【0273】
計測領域全体の強度画像を取得する場合において、例えば計測領域のうち第1の領域については、光軸方向における第1位置におけるデータを用い、第2の領域については、光軸方向における第2位置におけるデータを用いるといったように、計測領域の各座標位置における光軸方向の合焦位置の違いに応じて用いるデータを異ならせることにより、仮に被計測物が反っていたり、傾いた状態となっている等して、計測領域に高低差が生じているような場合であっても、計測領域全体に焦点の合った強度画像を取得することが可能となる。
【0274】
二次元計測を行う場合には、その計測結果を基に、例えば計測対象となったバンプ101(
図10参照)の位置ズレΔx,Δyや、外径D、面積Sなどを、予め設定した基準値と比較判定し、この比較結果が許容範囲内にあるか否かによって、バンプ101の良否を判定する二次元検査を行うことができる。
【0275】
また、ステップS10において二次元計測及び三次元計測の両方を行う場合には、二次元計測(二次元検査)の結果を基にして、計測対象となるバンプ101が存在する場所を特定してから三次元検査を行ったり、三次元計測により得られた三次元データに対し強度画像をマッピングするなど、複数種類の計測を組み合せた総合的な検査を行うことができる。
【0276】
(j)上記実施形態では、偏光ビームスプリッタ20(第3面20c)と1/4波長板23との間に対物レンズ21が配置され、偏光ビームスプリッタ20(第4面20d)と1/4波長板24との間に対物レンズ22が配置された構成となっているが、対物レンズ21,22の配置構成は、これに限定されるものではない。
【0277】
上記実施形態に代えて、例えば1/4波長板23と参照面25との間に対物レンズ21が配置された構成としてもよい。同様に、1/4波長板24と設置部26(ワークW)との間に対物レンズ22が配置された構成としてもよい。
【0278】
また、上記実施形態では、第2無偏光ビームスプリッタ13Bと1/4波長板31Aとの間に結像レンズ30Aが配置され、第1無偏光ビームスプリッタ13Aと1/4波長板31Bとの間に結像レンズ30Bが配置された構成となっているが、結像レンズ30A,30Bの配置構成は、これに限定されるものではない。
【0279】
上記実施形態に代えて、例えば1/4波長板31Aと第1偏光板32Aとの間、又は、第1偏光板32Aと第1カメラ33Aとの間に結像レンズ30Aが配置された構成としてもよい。同様に、1/4波長板31Bと第2偏光板32Bとの間、又は、第2偏光板32Bと第2カメラ33Bとの間に結像レンズ30Bが配置された構成としてもよい。
【0280】
(k)上記実施形態では、ワークWの計測領域内に予め設定した一部の特定領域Vに係る最適合焦位置、すなわちワークWのz方向位置を特定した後、かかる位置を基準にして計測領域全体のz方向複数位置における複素振幅データ及び強度画像データを取得して計測を行う構成となっている。
【0281】
これに限らず、特定領域Vに係る最適合焦位置を特定する工程を省略し、三次元計測装置1の装置原点を基準に直接、ワークWの計測領域全体の各座標位置に係るz方向複数位置の複素振幅データ及び強度画像データを取得して計測を行う構成としてもよい。
【0282】
以下、かかる構成の一実施形態について
図14を参照して詳しく説明する。
図14は、本実施形態における計測処理の流れを示すフローチャートである。尚、上記実施形態と重複する部分については、同一の部材名称、同一の符号を用いる等してその詳細な説明を省略するとともに、以下には上記実施形態と相違する部分を中心として説明することとする。
【0283】
先ずステップT1において、ワークWの所定の計測領域に係る干渉縞画像を取得する処理を実行する。ここでは、ワークWの所定の計測領域に係る計測を行う上で必要な全ての画像データ(第1光に係る位相の異なる4通りの干渉縞画像、及び、第2光に係る位相の異なる4通りの干渉縞画像からなる計8つの干渉縞画像)を取得する。尚、ステップT1の処理は、上記実施形態のステップS1と同様の処理であるため、詳細な説明は省略する。
【0284】
続くステップT2において、制御装置5は、撮像素子33Aa,33Ba面における光の複素振幅データを取得する処理を実行する。
【0285】
ここでは、画像データ記憶装置54に記憶された第1光に係る4通りの干渉縞画像、及び、第2光に係る4通りの干渉縞画像を基に、第1光及び第2光それぞれに係る撮像素子33Aa,33Ba面での光の複素振幅データEo(x,y)を取得する。尚、ステップT2の処理は、上記実施形態のステップS2と同様の処理であるため、詳細な説明は省略する。
【0286】
続くステップT3において、制御装置5は、三次元計測装置1における高さ計測の基準となる装置原点を基準に、ワークW上の所定の計測対象(例えばウエハ基板100上のバンプ101)が存在し得るz方向所定範囲内において、所定の計測レンジ間隔ごとに、ワークW上における所定の計測領域及び所定の基準領域に係る各座標位置について、z方向複数位置の複素振幅データを取得する処理を実行する。ここで、z方向複数位置の複素振幅データを取得方法は、上記実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0287】
尚、「基準領域」とは、所定の計測対象の高さ計測の基準面を含む領域を指す。例えばワークWが
図8に示すようなウエハ基板100である場合においては、計測対象となる所定のバンプ101の高さ計測の基準面となり得る基板上面(又はパターン部102の上面)を含む領域が基準領域となる。
【0288】
続くステップT4において、制御装置5は、上記ステップT3において取得した複素振幅データを基に、ワークW上における所定の計測領域及び所定の基準領域に係る各座標位置について、z方向複数位置の強度画像(輝度画像)データを取得する処理を実行する。従って、上記ステップT3,T4に係る一連の処理を実行する機能により、本実施形態における画像データ取得手段が構成されることとなる。ここで、複素振幅データから強度画像データを取得する方法は、上記実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0289】
続くステップT5において、制御装置5は、上記ステップT4にて取得したz方向複数位置の強度画像データを基に、ワークW上における所定の計測領域及び所定の基準領域に係る各座標位置について、最適合焦位置(光軸方向合焦位置)を決定する処理を実行する。かかるステップT5の処理を実行する機能により、本実施形態における合焦位置決定手段が構成される。ここで、z方向複数位置の強度画像データから最適合焦位置を決定する方法は、上記実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0290】
続くステップT6において、制御装置5は、ステップT5において決定したワークW上における所定の計測領域及び所定の基準領域に係る各座標位置の最適合焦位置に対応する次数を、該各座標位置に係る計測レンジの次数として特定する処理を実行する。かかるステップT6の処理を実行する機能により、本実施形態における次数特定手段が構成される。ここで、計測レンジの次数の特定方法は、上記実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0291】
続くステップT7において、制御装置5は、三次元計測処理を実行する。かかるステップT7の処理を実行する機能により、本実施形態における三次元計測手段が構成される。
【0292】
上記実施形態の三次元計測処理と同様に、制御装置5は、まずステップT5において決定した計測領域及び所定の基準領域の各座標位置における最適合焦位置の複素振幅データEo(ξ,η)から、計測光の位相φ(ξ,η)と、計測光の振幅A(ξ,η)を算出する。ここで、計測光の位相情報である位相φ(ξ,η)を算出する一連の再生処理を実行する機能により、本実施形態における位相情報取得手段が構成されることとなる。
【0293】
その後、位相-高さ変換処理を行い、ワークW(計測領域及び基準領域)の表面の凹凸形状を3次元的に示す計測レンジ内の高さ情報z(ξ,η)を算出する。
【0294】
そして、上記のように算出した計測レンジ内の高さ情報z(ξ,η)と、ステップT6にて特定した各座標位置に係る計測レンジの次数とを基に、該座標位置に係る真の高さデータ(実際の高さ)を取得する。
【0295】
この際、本実施形態では、1つの計測対象(例えば1つのバンプ101)毎に、該計測対象の周囲に存在する基準領域(例えば基板上面の複数箇所又は複数のパターン部102の上面)の高さの平均値を算出し、これを基準にして計測対象の高さを算出する。
【0296】
また、これに代えて、例えば複数の計測対象(例えば複数のバンプ101)が含まれるワークW(例えばウエハ基板100)上の所定範囲における基準領域(例えば基板上面又はパターン部102の上面)の高さマップを作成した上で、所定の計測対象の絶対高さから、該計測対象の位置における基準領域の絶対高さを減算することにより、基準面(基準領域)に対する計測対象の高さを算出する構成としても良い。
【0297】
かかる構成により、ワークWが反ったり、設置部26(設置面)が傾く等して、基準面や計測領域が傾いているような場合であっても、計測対象の高さ計測をより適切に行うことができる。
【0298】
(l)上記実施形態では、計測レンジ1周期分の間隔ごとに、z方向複数位置における強度画像データを取得して合焦状況を判断する構成となっている。これに代えて、計測レンジn周期分(nは2以上の自然数)間隔ごとに、z方向複数位置における強度画像データを取得して合焦状況を判断する構成としてもよい。
【0299】
例えば
図12に示す具体例のように、計測レンジ2周期分間隔ごとに、z方向複数位置における強度画像データを取得して合焦状況を判断する構成としてもよい。
【0300】
図12に示す「ケース1」では、所定座標位置について、高さ位置H
3,H
1,H
-1,H
-3において再生した強度画像データ(再生画像[1]~[4])のうち、高さ位置H
3にて再生した強度画像データ(再生画像[1])に係る輝度値が「135」で最大となっている。これにより、該座標位置について、高さ位置H
3を最適合焦位置として特定することができる。
【0301】
同様に、
図12に示す「ケース2」では、所定座標位置について、高さ位置H
3,H
1,H
-1,H
-3において再生した強度画像データ(再生画像[1]~[4])のうち、高さ位置H
1にて再生した強度画像データ(再生画像[2])に係る輝度値が「128」で最大となっている。これにより、該座標位置について、高さ位置H
3を最適合焦位置として特定することができる。
【0302】
尚、ここで高さ位置H3,H1,H-1,H-3において再生した強度画像データ(再生画像[1]~[4])を基に、高さ位置H2,H0,H-2に係る補間データを求め、これを含めて、最適合焦位置を特定する構成としてもよい。
【0303】
また、計測レンジ1周期分よりも短い再生間隔で、z方向複数位置における強度画像データを取得して合焦状況を判断する構成としてもよい(再生間隔dz<計測レンジ間隔R)。
【0304】
(m)上記実施形態では、計測領域の各座標位置についてz方向複数位置における強度画像データを取得し、その合焦状況を判断して計測を行う構成となっている。これに限らず、計測領域の各座標位置についてz方向所定位置1箇所で強度画像データを取得し、その合焦状況を判断し(合焦判定手段)、所定条件を満たす所定の合焦状態にある場合(例えば所定の閾値以上の輝度を有する場合等)には、該z方向所定位置に係る複素振幅データから求められる光の位相情報と、該z方向所定位置に対応する次数とを基に、該座標位置に係る三次元計測を実行する構成としてもよい。
【0305】
(n)上記実施形態に加えて、投光レンズを備えた構成としてもよい。例えば
図15に示すように、第1投光系2Aにおける第1光アイソレータ12Aと第1無偏光ビームスプリッタ13Aとの間に投光レンズ500Aを備えると共に、第2投光系2Bにおける第2光アイソレータ12Bと第2無偏光ビームスプリッタ13Bとの間に投光レンズ500Bを備えた構成としてもよい。
【0306】
上記実施形態のように、対物レンズ21,22を備えた構成においては、ワークWに対し照射される光(計測光)が計測領域の1点(狭い範囲)に集まってしまうため、1回の計測で計測可能な計測領域が狭くなってしまうおそれがある。
【0307】
これに対し、上記投光レンズ500A,500Bを備え、発光部11A,11Bから出射される光を対物レンズ21,22へ向け集光させることにより、ワークWのより広い範囲に対し均一な平行光を照射することができる。これにより、1回の計測でより広範囲をより均一に計測することができる。
【0308】
結果として、さらなる計測精度の向上、及び、さらなる計測効率の向上を図ることができる。
【0309】
勿論、投光レンズ500A,500Bの配置構成は上記構成に限定されるものではない。例えば上記構成に代えて、第1発光部11Aと第1光アイソレータ12Aの間、又は、第1無偏光ビームスプリッタ13Aと偏光ビームスプリッタ20(第1面20a)の間に、投光レンズ500Aを配置した構成としてもよい。
【0310】
同様に、第2発光部11Bと第2光アイソレータ12Bの間、又は、第2無偏光ビームスプリッタ13Bと偏光ビームスプリッタ20(第2面20b)の間に、投光レンズ500Bを配置した構成としてもよい。
【0311】
(o)上記実施形態では、特に言及していないが、上記対物レンズ21,22として、その開口数NAが下記式(O1)を満たすものを採用してもよい。
【0312】
NA > a/√((dz)2+a2) ・・・(O1)
a:画素サイズ、dz:再生間隔。
【0313】
例えば画素サイズa=2[μm]である場合において、再生間隔dz=3[μm]で再生位置が最適合焦位置からずれていることを特定したい場合には、開口数NA>0.5547となる対物レンズ21,22を用いることが好ましい。
【0314】
但し、再生間隔dzは、0以上で、かつ、計測レンジ間隔Rを超えないことが好ましい(0≦dz≦R)。また、開口数NAは、できる限り大きい方が好ましいが、液浸等の特別な技術を採用しない限り、開口数NAの上限は1となるため(屈折率n=1とした場合の上記式(2)参照)、開口数NAが1以下となることが好ましい(NA≦1)。
【0315】
仮に対物レンズ21,22として、開口数NAが比較的小さいものを用いた場合には、再生間隔(最適合焦位置との相対距離)dzが比較的大きい場合でも、計測点のボケ具合が小さく、最適合焦位置を特定し難くなるおそれがある。
【0316】
一方、上記のように、開口数NAが比較的大きい対物レンズ21,22を用いた場合には、バンプ101の頂部など広範囲に反射した反射光が対物レンズ22に取り込まれやすくなると共に、再生間隔dzが小さい場合でも、計測点のボケ具合が大きくなり、最適合焦位置を特定しやすくなる。
【符号の説明】
【0317】
1…三次元計測装置、2A…第1投光系、2B…第2投光系、3…干渉光学系、4A…第1撮像系、4B…第2撮像系、5…制御装置、11A…第1発光部、11B…第2発光部、12A…第1光アイソレータ、12B…第2光アイソレータ、13A…第1無偏光ビームスプリッタ、13B…第2無偏光ビームスプリッタ、20…偏光ビームスプリッタ、20a…第1面、20c…第3面、20b…第2面、20d…第4面、21,22…対物レンズ、23,24…1/4波長板、25…参照面、26…設置部、30A,30B…結像レンズ、31A…1/4波長板、31B…1/4波長板、32A…第1偏光板、32B…第2偏光板、33A…第1カメラ、33B…第2カメラ、33Aa,33Ba…撮像素子、100…ウエハ基板、101…バンプ、102…パターン部、R…計測レンジ間隔、V…特定領域、W…ワーク。