(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】医療用ロボットシステム、データ解析装置、および、医療用ロボットの監視方法
(51)【国際特許分類】
A61B 34/30 20160101AFI20220322BHJP
B25J 3/00 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
A61B34/30
B25J3/00 Z
(21)【出願番号】P 2020194722
(22)【出願日】2020-11-24
(62)【分割の表示】P 2019213047の分割
【原出願日】2015-12-11
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514063179
【氏名又は名称】株式会社メディカロイド
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 薫
(72)【発明者】
【氏名】高地 泰浩
(72)【発明者】
【氏名】平塚 充一
(72)【発明者】
【氏名】中西 徹弥
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/187002(WO,A1)
【文献】特開2002-092183(JP,A)
【文献】登録実用新案第3185040(JP,U)
【文献】特開2001-265432(JP,A)
【文献】特開2005-111085(JP,A)
【文献】特開2012-061195(JP,A)
【文献】特開2014-000117(JP,A)
【文献】特開2002-272758(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0365235(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/00 - 34/37
B25J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる手術室に配置された複数の医療用ロボットと、前記複数の医療用ロボットと外部ネットワークを介して通信可能なデータ解析装置とを備える医療用ロボットシステムにおいて、
前記複数の医療用ロボットの各々は、前記医療用ロボットの動作状況に関するデータを前記データ解析装置に前記外部ネットワークを介して送信するコントローラを有し、
前記データ解析装置は、前記複数の医療用ロボットの各々の前記コントローラから送信された前記データに基づいて、前記医療用ロボットの
故障の予兆を判定するための基準値を生成するデータ解析部を有する、医療用ロボットシステム。
【請求項2】
前記データ解析部は、前記基準値を所定の周期で更新する、請求項1に記載の医療用ロボットシステム。
【請求項3】
前記データ解析部は、前記基準値に基づいて、前記医療用ロボットの故障の予兆を検知する、請求項1または2に記載の医療用ロボットシステム。
【請求項4】
前記医療用ロボットの各々は、消耗品を取付けるためのマニピュレータアームを有し、
前記コントローラは、前記消耗品の動作状況に関する前記データを前記データ解析装置に送信する、請求項1~
3のいずれか1項に記載の医療用ロボットシステム。
【請求項5】
前記消耗品は、内視鏡アセンブリまたはインストゥルメントである、請求項
4に記載の医療用ロボットシステム。
【請求項6】
前記データ解析部は、前記医療用ロボットの各々の前記コントローラから送信された前記データと前記基準値とのずれを監視する、請求項1~
5のいずれか1項に記載の医療用ロボットシステム。
【請求項7】
異なる手術室に配置された複数の医療用ロボットと外部ネットワークを介して通信可能なデータ解析装置であって、
前記複数の医療用ロボットの各々の動作状況に関するデータを蓄積するデータベースと、
前記複数の医療用ロボットから送信された前記データに基づいて、前記医療用ロボットの
故障の予兆を判定するための基準値を生成するデータ解析部と、を有する、データ解析装置。
【請求項8】
前記データ解析部は、前記基準値を所定の周期で更新する、請求項
7に記載のデータ解析装置。
【請求項9】
前記データ解析部は、前記基準値に基づいて、前記医療用ロボットの故障の予兆を検知する、請求項
7または
8に記載のデータ解析装置。
【請求項10】
前記データベースは、前記複数の医療用ロボットの各々が有するマニピュレータアームに取付けられた消耗品の動作状況に関する前記データを蓄積する、請求項
7~
9のいずれか1項に記載のデータ解析装置。
【請求項11】
前記消耗品は、内視鏡アセンブリまたはインストゥルメントである、請求項
10に記載のデータ解析装置。
【請求項12】
前記データ解析部は、前記医療用ロボットから送信された前記データと前記基準値とのずれを監視する、請求項
7~
11のいずれか1項に記載のデータ解析装置。
【請求項13】
異なる手術室に配置された複数の医療用ロボットの各々の動作状況に関するデータをデータ解析装置が受信し、
前記複数の医療用ロボットの各々から送信された前記データに基づいて、前記医療用ロボットの
故障の予兆を判定するための基準値を生成する、医療用ロボットの監視方法。
【請求項14】
前記基準値を所定の周期で更新する、請求項
13に記載の、医療用ロボットの監視方法。
【請求項15】
前記基準値に基づいて、前記医療用ロボットの故障の予兆を検知する、請求項
13または
14に記載の医療用ロボットの監視方法。
【請求項16】
前記医療用ロボットの各々が有するマニピュレータアームに取付けられた消耗品の動作状況に関する前記データを前記データ解析装置が受信する、請求項
13~
15のいずれか1項に記載の医療用ロボットの監視方法。
【請求項17】
前記消耗品は、内視鏡アセンブリまたはインストゥルメントである、請求項
16に記載の医療用ロボットの監視方法。
【請求項18】
前記医療用ロボットから送信された前記データと前記基準値のずれを監視する、請求項
13~
17のいずれか1項に記載の医療用ロボットの監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科手術に用いられるロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、手術が手術支援ロボットを用いて行われるケースも増加し、手術支援ロボットに対して、より緻密な支援(以下、「サポート」という)を提供する必要性が増している。
【0003】
手術支援ロボットに対するサポートに関し、先行技術1~3がある。
【0004】
先行技術1は、手術室で用いられる機器の設定情報を、手術室の遠隔地に設けられた支援室に送信する技術を開示する。支援室は、受信した設定情報が適正な範囲内にあるか否かを監視し、適正な範囲内にない場合には警告情報を手術室に通知する(特許文献1参照)。
【0005】
先行技術2は、手術室で使用される装置に関し、手術前に動作チェックを行う遠隔手術支援システムを開示する。このシステムでは、手術前に動作チェックを行い、遠隔での修理や、サポート員の派遣をしている(特許文献2参照)。
【0006】
先行技術3は、ロボットアーム動作時の駆動モータのトルク値を一定周期で保存し、トルク変動値から異常を検知する技術を開示する(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-111080号公報
【文献】特開2007-7040号公報
【文献】特開2006-281421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
複数の手術室において稼働する医療用ロボットから、医療用ロボットに関するより多くの情報を収集すれば、医療用ロボットに対するより緻密なサポートの提供が可能になると考えられる。
【0009】
しかし、先行技術1~3のいずれにも、複数の医療用ロボットから情報を収集する技術について開示がない。
【0010】
そこで、本発明は、複数の医療用ロボットから収集した情報に基づいて医療用ロボットをサポートする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る医療用ロボットシステムは、異なる手術室に配置された複数の医療用ロボットと、前記複数の医療用ロボットと外部ネットワークを介して通信可能なデータ解析装置とを備える医療用ロボットシステムにおいて、前記複数の医療用ロボットの各々は、前記医療用ロボットの動作状況に関するデータを前記データ解析装置に前記外部ネットワークを介して送信するコントローラを有し、前記データ解析装置は、前記複数の医療用ロボットの各々の前記コントローラから送信された前記データに基づいて、前記医療用ロボットの動作状況を判定するための基準値を生成するデータ解析部を有する。
【0012】
また、前記データ解析部は、前記基準値を所定の周期で更新するようにしてもよい。
【0013】
また、前記データ解析部は、前記基準値に基づいて、前記医療用ロボットの故障の予兆を検知するようにしてもよい。
【0014】
また、前記データ解析部は、前記基準値に基づいて、前記医療用ロボットの異常を検知するようにしてもよい。
【0015】
また、前記医療用ロボットの各々は、消耗品を取付けるためのマニピュレータアームを有し、前記コントローラは、前記消耗品の動作状況に関する前記データを前記データ解析装置に送信するようにしてもよい。
【0016】
また、前記消耗品は、内視鏡アセンブリまたはインストゥルメントであってもよい。
【0017】
また、前記データ解析部は、前記医療用ロボットの各々の前記コントローラから送信された前記データと前記基準値とのずれを監視するようにしてもよい。
【0018】
また、本発明に係るデータ解析装置は、異なる手術室に配置された複数の医療用ロボットと外部ネットワークを介して通信可能なデータ解析装置であって、前記複数の医療用ロボットの各々の動作状況に関するデータを蓄積するデータベースと、前記複数の医療用ロボットから送信された前記データに基づいて、前記医療用ロボットの動作状況を判定するための基準値を生成するデータ解析部と、を有する。
【0019】
また、前記データ解析部は、前記基準値を所定の周期で更新するようにしてもよい。
【0020】
また、前記データ解析部は、前記基準値に基づいて、前記医療用ロボットの故障の予兆を検知するようにしてもよい。
【0021】
また、前記データ解析部は、前記基準値に基づいて、前記医療用ロボットの異常を検知するようにしてもよい。
【0022】
また、前記データベースは、前記複数の医療用ロボットの各々が有するマニピュレータアームに取付けられた消耗品の動作状況に関する前記データを蓄積するようにしてもよい。
【0023】
また、前記消耗品は、内視鏡アセンブリまたはインストゥルメントであってもよい。
【0024】
また、前記データ解析部は、前記医療用ロボットから送信された前記データと前記基準値とのずれを監視するようにしてもよい。
【0025】
また、本発明に係る医療用ロボットの監視方法は、異なる手術室に配置された複数の医療用ロボットの各々の動作状況に関するデータをデータ解析装置が受信し、前記複数の医療用ロボットの各々から送信された前記データに基づいて、前記医療用ロボットの動作状況を判定するための基準値を生成する。
【0026】
また、前記基準値を所定の周期で更新するようにしてもよい。
【0027】
また、前記基準値に基づいて、前記医療用ロボットの故障の予兆を検知するようにしてもよい。
【0028】
また、前記基準値に基づいて、前記医療用ロボットの異常を検知するようにしてもよい。
【0029】
また、前記医療用ロボットの各々が有するマニピュレータアームに取付けられた消耗品の動作状況に関する前記データを前記データ解析装置が受信するようにしてもよい。
【0030】
また、前記消耗品は、内視鏡アセンブリまたはインストゥルメントであってもよい。
【0031】
また、前記医療用ロボットから送信された前記データと前記基準値のずれを監視するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、複数の医療用ロボットから収集した情報に基づいて、医療用ロボットに対してより緻密なサポートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施形態を示すシステムの構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態を示すシステムの構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る外科手術システムの構成を示す概略図である。
【
図4】ポジショナの全体的な構成を示す側面図である。
【
図5】ポジショナの制御系統の概略構成を示すブロック図である
【
図6】揺動アームを垂直から傾けたポジショナの全体的な構成を示す側面図である。
【
図7】プラットホームを水平から傾けたポジショナの全体的な構成を示す側面図である。
【
図9】アーム本体の制御系統の概略構成を示すブロック図である。
【
図10】アーム本体の駆動系統のレイアウトを示すアーム本体の部分断面図である。
【
図11】プラットホームと患者側マニピュレータアームとの連結構造を示す平面図である。
【
図13】プラットホームに取り付けた患者側マニピュレータアームを管理するための構成を示すブロック図である。
【
図14】本発明の一実施形態を示すデータセンタの構成図である。
【
図15】本発明の一実施形態を示すデータベースのデータ構造を示す図である。
【
図16】本発明の一実施形態を示すデータベースのデータ構造を示す図である。
【
図17】本発明の一実施形態を示すデータベースのデータ構造を示す図である。
【
図18】本発明の一実施形態を示すデータベースのデータ構造を示す図である。
【
図19】本発明の一実施形態を示すデータベースのデータ構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態では、外科手術用ロボットを備えた外科手術システム100を例に説明する。
【0035】
[システム構成]
図1は、本実施形態のシステム構成の他の例を示す。
図1のシステム200では、複数の外科手術システム100とデータセンタ201(この実施形態では、データ解析装置を含む)が、研究機関や医療機関等の施設204の外部に設けられた外部ネットワーク203を介して互いに接続される(通信可能)。データセンタ201は、複数の外科手術システム100を集中管理する。外部ネットワーク203は、例えば、インターネットである。各外科手術システム100は、外部ネットワーク203を介して、データセンタ201と外科手術システム100の動作状況に関するデータの送受信を行う。データセンタ201は、外部ネットワーク203を介して、サポートセンタ205と通信できる。
【0036】
図2は、本実施形態のシステム構成を示す。システム200では、複数の外科手術システム100とデータセンタ201(この実施形態では、データ解析装置を含む)とが、ネットワークを介して互いに接続される(通信可能)。
図2は、複数の外科手術システム100とデータセンタ201が、研究機関や医療機関等の施設内に設けられた施設内ネットワーク202を介して互いに接続されたシステムを示す。データセンタ201は、施設内の複数の外科手術システム100を集中管理する。各外科手術システム100は、施設内ネットワーク202を介して、データセンタ201と外科手術システム100の動作状況に関するデータの送受信を行う。外科手術システム100の詳細は後述する。
【0037】
図1および
図2の例において、各外科手術システム100およびデータセンタ201は、それぞれに固有の識別情報を有する。各外科手術システム100とデータセンタ201との通信の際、各識別情報は、データの宛先若しくは送信元を示す情報として用いられる。
【0038】
図1および
図2の例において、それぞれの外科手術システム100は、互いに異なる手術室に設置されている。
【0039】
[外科手術システムの概要]
図3は、本発明の一実施形態に係る外科手術システム100の全体的な構成を示す概略図である。
図3に示すように、外科手術システム100は、ロボット支援手術やロボット遠隔手術などのように、医師などの術者Oが患者側システム1を用いて患者Pに内視鏡外科手術を施すシステムである。
【0040】
外科手術システム100は、患者側システム1と、この患者側システム1を操る操作装置2とを備えている。操作装置2は患者側システム1から離れて配置され、患者側システム1は操作装置2によって遠隔操作される。術者Oは患者側システム1に行わせる動作を操作装置2に入力し、操作装置2はその動作指令を患者側システム1に送信する。そして、患者側システム1は、操作装置2から送信された動作指令を受け取り、この動作指令に基づいて患者側システム1が具備する内視鏡アセンブリ41やインストゥルメント42などを動作させる。以下、外科手術システム100の各構成要素について詳細に説明する。以下の説明において、外科手術システム100における患者側システム1と操作装置2の総称を「外科手術ロボット」という。
【0041】
[操作装置の構成例]
操作装置2は、外科手術システム100と術者Oのインターフェースを構成し、患者側システム1を操作するための装置である。操作装置2は、手術室内において手術台111の傍らに又は手術台111から離れて、或いは、手術室外に設置されている。操作装置2は、術者Oが動作指令を入力するための操作用マニピュレータアーム51や操作ペダル52などの操作入力部50と、内視鏡アセンブリ41で撮影された画像を表示するモニタ53とを含む。術者Oは、モニタ53で患部を視認しながら、操作入力部50を操作して操作装置2に動作指令を入力する。操作装置2に入力された動作指令は、有線又は無線により患者側システム1の後述するコントローラ6に伝達される。
【0042】
[患者側システムの構成例]
患者側システム1は、外科手術システム100と患者Pとのインターフェースを構成する。患者側システム1は、手術室内において患者Pが横たわる手術台111の傍らに配置されている。手術室内は滅菌された滅菌野である。
【0043】
患者側システム1は、ポジショナ7と、ポジショナ7の先端部に取り付けられたプラットホーム5と、プラットホーム5に着脱可能に取り付けられた複数の患者側マニピュレータアーム(以下、単に「アーム3」という(複数の可動部))と、複数のアーム3のうち1本のアーム3Aの先端部に取り付けられた内視鏡アセンブリ41と、複数のアーム3のうち余のアーム3Bの先端部に着脱可能に取り付けられたインストゥルメント42と、ポジショナ7及びプラットホーム5を滅菌野から遮蔽する滅菌ドレープ9と、患者側システム1の動作を司るコントローラ6とを備えている。以下、内視鏡アセンブリ41が取り付けられたアーム3を「カメラアーム3A」ということがあり、インストゥルメント42が取り付けられたアーム3を「インストゥルメントアーム3B」ということがある。本実施形態に係る患者側システム1は、1本のカメラアーム3Aと3本のインストゥルメントアーム3Bとの、併せて4本のアーム3を備えている。
【0044】
上記の患者側システム1では、ポジショナ7から内視鏡アセンブリ41又は各インストゥルメント42まで、要素が一連に繋がっている。この明細書では、上記一連の要素において、ポジショナ7(より詳細には、ポジショナ7の手術室の床との接触部)へ向かう側の端部を「基端部」といい、その反対側の端部を「先端部」ということとする。また、基端部を「近位端部」ということがあり、先端部を「遠位端部」ということがある。
【0045】
インストゥルメント42は、その基端部に設けられた駆動ユニット45と、その先端部に設けられたエンドエフェクタ44と、駆動ユニット45とエンドエフェクタ44の間を繋ぐ細長いシャフト43とで構成されている(いずれも、
図8参照)。インストゥルメント42には基準方向Dが規定されており、駆動ユニット45、シャフト43、及びエンドエフェクタ44は基準方向Dと平行に並ぶ。インストゥルメント42のエンドエフェクタ44は、動作する関節を有する器具(例えば、鉗子、ハサミ、グラスパー、ニードルホルダ、マイクロジセクター、ステープルアプライヤー、タッカー、吸引洗浄ツール、スネアワイヤ、及び、クリップアプライヤーなど)や、関節を有しない器具(例えば、切断刃、焼灼プローブ、洗浄器、カテーテル、及び、吸引オリフィスなど)からなる群より選択される。
【0046】
上記構成の患者側システム1では、操作装置2から動作指令を受けたコントローラ6が、先ず、プラットホーム5と手術台111又は患者Pとが所定の位置関係となるように、ポジショナ7を動作させてプラットホーム5の位置決めを行う。次に、コントローラ6が、患者Pの体表に留置されたスリーブ(カニューレスリーブ)110と内視鏡アセンブリ41及び各インストゥルメント42が所定の初期位置関係となるように、各アーム3を動作させて内視鏡アセンブリ41及び各インストゥルメント42の位置決めを行う。なお、ポジショナ7と各アーム3の上記の位置決め動作は同時に行われてもよい。そして、コントローラ6は、原則としてポジショナ7を静止させた状態で、操作装置2からの動作指令に応じて、各アーム3を動作させて内視鏡アセンブリ41及び各インストゥルメント42を適宜変位及び姿勢変化させつつ、各インストゥルメント42を動作させて施術する。
【0047】
[ポジショナの構成例]
ここで、ポジショナ7の構成について詳細に説明する。
図4は、ポジショナ7の全体的な構成を示す側面図である。
【0048】
図4に示すように、ポジショナ7は、水平多関節形ロボットを基調としており、手術室の床に載置されたベース70と、昇降軸72と、ベース70と昇降軸72の基端部とを連結する揺動アーム71と、昇降軸72の先端部に連結された水平アーム73とを含む。水平アーム73の先端部には、プラットホーム5が連結されている。
【0049】
ベース70は、例えば、ブレーキ付台車であって、所望の位置へ移動させて、そこで静止させることができる。このベース70に、揺動アーム71の基端部が回転関節J71を介して連結されている。この回転関節J71の動作により、揺動アーム71は、ベース70に規定された水平な回転軸(揺動軸)を中心として回動(揺動)する。また、揺動アーム71の先端部は、回転関節J72を介して昇降軸72の基端部と連結されている。この回転関節J72の動作により、揺動アーム71は、昇降軸72の基端部に規定された水平な回転軸を中心として回動(揺動)する。
【0050】
昇降軸72は、垂直に延在し、垂直方向に伸縮可能である。本実施形態の昇降軸72は、筒部材72a、この筒部材72aに垂直方向へ進退可能に挿入された中空の軸部材72b、及び、筒部材72aと軸部材72bとを連結する並進関節J73を含む。この並進関節J73の動作により、軸部材72bは筒部材72aに対して垂直方向へ進退移動する。
【0051】
水平アーム73は、水平に延びる第1リンク74及び第2リンク75と、第2リンク75の先端部に連結された手首リンク76とを含む。手首リンク76の先端部には、プラットホーム5が接続されている。
【0052】
第1リンク74の基端部は、回転関節J74を介して昇降軸72の先端部と連結されている。第1リンク74と昇降軸72とは直角を成している。上記回転関節J74の動作により、第1リンク74は昇降軸72の先端部に規定された垂直な回転軸を中心として回動する。第1リンク74の先端部は、回転関節J75を介して第2リンク75の基端部と連結されている。この回転関節J75の動作により、第2リンク75は、第1リンク74の先端部に規定された垂直な回転軸を中心として回動する。
【0053】
第2リンク75の先端部は、回転関節J76を介して手首リンク76の基端部と連結されている。この回転関節J76の動作により、手首リンク76は、第2リンク75の先端部に規定された水平な回転軸を中心として回動する。定常時の手首リンク76は垂直に延びており、この手首リンク76の先端部に接続されたプラットホーム5は水平な姿勢である。
【0054】
ここで、ポジショナ7の制御系統の構成について説明する。
図5は、ポジショナ7の制御系統の概略構成を示すブロック図である。
図5に示すように、ポジショナ7は、各関節J71~J76に対応して、駆動用のサーボモータM71~M76、及び、サーボモータM71~M76の回転角を検出するエンコーダE71~E76を備えている。サーボモータM71~M76には、それぞれ、温度センサが設けられている。なお、この図では、関節J71~J76のうち、回転関節J71と回転関節J76との駆動系統が代表的に示され、余の関節J73~J75の駆動系統は省略されている。
【0055】
コントローラ6は、ポジショナ7の動作を司るポジショナ制御部601を含む。ポジショナ制御部601にはサーボ制御部C71~C76が電気的に接続され、サーボ制御部C71~C76には図示されない増幅回路などを介してサーボモータM71~M76が電気的に接続されている。コントローラ6は、施設内ネットワーク202もしくは外部ネットワーク203を介して、データセンタ201と通信できる。
【0056】
上記構成において、操作装置2に入力された動作指令に基づいて、ポジショナ制御部601にプラットホーム5の位置姿勢指令が入力される。ポジショナ制御部601は、位置姿勢指令とエンコーダE71~E76で検出された回転角とに基づいて、位置指令値を生成して出力する。この位置指令値を取得したサーボ制御部C71~C76は、エンコーダE71~E76で検出された回転角及び位置指令値に基づいて駆動指令値(トルク指令値)を生成して出力する。この駆動指令値を取得した増幅回路は、駆動指令値に対応した駆動電流をサーボモータM71~M76へ供給する。このようにして、プラットホーム5が、位置姿勢指令と対応する位置及び姿勢に到達するように、各サーボモータM71~M76がサーボ制御される。
【0057】
コントローラ6は、ポジショナ7の可動部となる各コンポーネント(例えば、各関節J71~J76)に関するデータをデータセンタ201に送信する。コントローラ6は、施設内ネットワーク202若しくは外部ネットワーク203を介して、例えば以下のデータをデータセンタ201に送信する。
【0058】
・各サーボ制御部C71~C76に出力された位置指令値
・各サーボ制御部C71~C76から出力された駆動指令値(トルク指令値)
・増幅回路から供給された駆動電流の電流値
・サーボモータM71~M76にそれぞれ配置された温度センサで採取された温度
・駆動電流に対応するエンコーダE71~E76のエンコーダ値
・各エンコーダE71~E76用のバックアップバッテリの電圧値
・各関節J71~J76内に設けられたハーネスの電気抵抗値
コントローラ6は、外科手術システム100に設けられた少なくとも1つのカメラ(図示せず)によって撮影されたポジショナ7の画像データをデータセンタ201に送信できる。コントローラ6は、カメラから画像データを取得し、取得してデータをデータセンタ201に送信する。カメラはポジショナ7の静止画を撮影し、コントローラ6は、撮影された静止画データをデータセンタ201に送信できる。また、カメラはポジショナ7の動作を動画として撮影し、コントローラ6は、撮影された動画データをデータセンタ201に送信できる。
【0059】
コントローラ6は、手術室の状況を示す情報をデータセンタ201に送信してもよい。
【0060】
コントローラ6は、上述の情報のそれぞれと、ポジショナ7の可動部となる各コンポーネント(例えば、各関節J71~J76)の識別情報(コンポーネントID)とを関連付けて、データセンタ201に送信する。
【0061】
コントローラ6がデータセンタ201に送信するデータは、上述の例に限らない。コントローラ6は、操作装置2から動作指令が入力される度に、上述のデータをデータセンタ201に送信できる。
【0062】
上記の通り、ポジショナ7は、プラットホーム5の位置姿勢指令に応じて態様を変化させることができる。ここで、
図2に示すように、ポジショナ7の基本姿勢を、揺動アーム71及び昇降軸72が垂直に延在し、水平アーム73が水平に延在し、且つ、手首リンク76に接続されたプラットホーム5が水平な状態とする。
【0063】
図6に示すように、上記基本姿勢から揺動アーム71を垂直から傾ける場合に、ポジショナ制御部601は、回転関節J71を動作させて揺動アーム71を垂直から傾けるとともに、回転関節J72を動作させて昇降軸72の垂直な姿勢を維持する。このようにして、揺動アーム71の垂直からの傾きにかかわらず、昇降軸72の垂直及び水平アーム73の水平が維持される。
【0064】
上記のように揺動アーム71が垂直から傾くと、ポジショナ7は全体としてC字形状を呈する。これにより、ポジショナ7は、ベース70が手術台111の下方に位置し、昇降軸72が手術台111の側方に位置し、且つ、水平アーム73が手術台111の上方に位置する態様を取ることができる。このように、ベース70が手術台111の下方に収められることにより、手術中に手術台111の周囲で手術を補助する補助者の動線を確保することができる。
【0065】
更に、
図7に示すように、手首リンク76を垂直から傾けるように回転関節J76を駆動すると、プラットホーム5が水平から傾く。プラットホーム5が水平から傾くと、プラットホーム5に取り付けられたアーム3の基本軸線(旋回軸線)Lpが一斉に垂直から傾くこととなる。その結果、インストゥルメント42に規定された基準方向Dの角度範囲が拡張され、インストゥルメント42を垂直からより大きく傾けて患者Pへ挿入することが可能となる。このようにして、患者Pの臥位や手術位置に応じて、患者Pに対するインストゥルメント42の挿入方向を適切に調整することができる。
【0066】
[アームの構成例]
ここで、アーム3の構成について詳細に説明する。
図8では、患者側システム1が備える複数のアーム3のうちの1本の概略構成が示されている。
図8に示すように、アーム3は、アーム本体30と、アーム本体30の先端部に連結された並進アーム35とを備え、基端部に対し先端部を3次元空間内で移動させることができるように構成されている。なお、本実施形態では、患者側システム1が具備する複数のアーム3はいずれも同様又は類似の構成を有するが、複数のアーム3のうち少なくとも1本が余と異なる構成を有してもよい。
【0067】
アーム3がインストゥルメントアーム3Bの場合には、並進アーム35の先端にインストゥルメント42を保持するホルダ(器具保持部)36が設けられる。ホルダ36には、インストゥルメント42が着脱可能に保持されている。ホルダ36に保持されたインストゥルメント42のシャフト43は、基準方向Dと平行に延在する。
【0068】
また、アーム3がカメラアーム3Aの場合には、上記インストゥルメントアーム3Bと同様に、並進アーム35の先端部にホルダ36が設けられ、このホルダ36に内視鏡アセンブリ41が着脱可能に保持される。ここで、カメラアーム3Aに設けるホルダ36は、インストゥルメントアーム3Bに設けるホルダ36から態様が異なっていてもよい。或いは、手術中に内視鏡アセンブリ41を交換することは稀であるので、カメラアーム3Aに内視鏡アセンブリ41が固定されていてもよい。
【0069】
アーム3は、プラットホーム5に対し着脱自在(すなわち、取り付けたり取り外したりが容易)である。アーム3は、洗浄処理及び滅菌処理のための耐水性、耐熱性、及び耐薬品性を備えている。アーム3の滅菌処理には様々な方法があるが、例えば、高圧蒸気滅菌法、EOG滅菌法、消毒薬による化学滅菌法などが選択的に用いられてよい。高圧蒸気滅菌法では、オートクレーブなどの高圧容器にアーム3を封入し、所定圧力の飽和水蒸気に所定時間(例えば、115℃で30分間、121℃で20分間、又は、126℃で15分間)晒す。EOG滅菌法では、容器にアーム3を封入し、この容器に450~1000mg/Lの酸化エチレンガスを流通させる。化学滅菌法では、例えば、グルタラールなどの消毒薬にアーム3を浸漬する。
【0070】
[アーム本体の構成例]
アーム本体30は、プラットホーム5に着脱可能に取り付けられるベース80と、ベース80から先端部に向けて順次連結された第1リンク81~第6リンク86とを含む。より詳細には、ベース80の先端部に、捩り関節J31を介して第1リンク81の基端部が連結されている。第1リンク81の先端部に、捩り関節J32を介して第2リンク82の基端部が連結されている。第2リンク82の先端部に、曲げ関節J33を介して第3リンク83の基端部が連結されている。第3リンク83の先端部に、捩り関節J34を介して第4リンク84の基端部が連結されている。第4リンク84の先端部に、曲げ関節J35を介して第5リンク85の基端部が連結されている。第5リンク85の先端部に、捩り関節J36を介して第6リンク86の基端部が連結されている。第6リンク86の先端部に、並進アーム35の基端部が連結されている。
【0071】
アーム本体30の外殻は、主にステンレスなどの耐熱性及び耐薬品性を有する部材で形成されている。また、リンク同士の連結部には、耐水性を備えるためのシール(図示せず)が設けられている。このシールは、高圧蒸気滅菌法に対応する耐熱性や、消毒薬に対する耐薬品性を備えている。なお、リンク同士の連結部において、連結される一方のリンクの端部の内側に他方のリンクの端部が挿入されており、これらのリンクの端部同士の間を埋めるようにシールが配置されることによって、シールが外観から隠蔽されている。これにより、シールとリンクとの間から水、薬液、蒸気の浸入が抑制されている。
【0072】
ここで、
図9及び
図10を用いて、アーム本体30の駆動系統及び制御系統の構成について説明する。
図9は、アーム本体30の制御系統の概略構成を示すブロック図であり、
図10は、アーム本体30の駆動系統のレイアウトを示すアーム本体30の概略断面図である。
【0073】
上記構成のアーム本体30には、各関節J31~J36に対応して、駆動用のサーボモータM31~M36、サーボモータM31~M36の回転角を検出するエンコーダE31~E36、及び、サーボモータM31~M36の出力を減速させてトルクを増大させる減速機R31~R36が設けられる。なお、
図9では、関節J31~J36のうち、捩り関節J31と捩り関節J36との制御系統が代表的に示され、余の関節J33~J35の制御系統は省略されている。なお、エンコーダE31~E36は、サーボモータM31~M3の回転位置(回転角)を検出する回転位置検出手段の一例として設けられており、エンコーダE31~E36に代えてレゾルバなどの回転位置検出手段が用いられてもよい。また、アーム本体30の駆動系統の上記の各要素及びこれらのための配線並びに制御部は耐高温材料で構成されて、滅菌処理のための耐熱性が備えられている。
【0074】
ベース80と第1リンク81とを連結する捩り関節J31において、第1リンク81の基端部にサーボモータM31が設けられ、ベース80の先端部に減速機R31が設けられる。本実施形態に係る減速機R31は、入力された動力の回転速度を減じるギア及びその出力を受ける出力ギアを含むユニットタイプのものである。サーボモータM31は、その出力軸が捩り関節J31の回転軸と平行となるように配置されている。エンコーダE31はサーボモータM31に付設されている。サーボモータM31の出力は、減速機R31に入力される。減速機R31の出力ギアは第1リンク81に固定されているので、減速機R31からの出力によって第1リンク81がベース80に対して回転する。
【0075】
第1リンク81と第2リンク82とを連結する捩り関節J32において、第1リンク81の先端部にサーボモータM32が設けられ、第2リンク82の基端部に減速機R32が設けられている。サーボモータM32は、その出力軸が捩り関節J32の回転軸と平行となるように配置されている。エンコーダE32はサーボモータM32に付設されている。
【0076】
第2リンク82と第3リンク83とを連結する曲げ関節J33において、第2リンク82の先端部に減速機R33が設けられ、第3リンク83の基端部にサーボモータM33が設けられている。サーボモータM33は、その出力軸が曲げ関節J33の回転軸と平行となるように配置されている。エンコーダE33はサーボモータM33に付設されている。
【0077】
上記に倣って、余の関節J34~J36にもサーボモータM34~M36、エンコーダE34~E36、及び、減速機R34~R36が配置されている。
【0078】
サーボモータM31~M36は、出力が小さく(例えば、80W程度)、軽量且つ小型のものが採用されている。また、減速機R31~R36は、軸心方向の寸法の小さい扁平な形状であって、高減速比(例えば、100以上)で高トルクを得られるものが採用されている。患者側システム1のアーム3には、一般的な産業用マニピュレータのような高速動作が求められないことから、出力の大きなサーボモータは必要とされない。そこで、比較的出力の小さいサーボモータM31~M36と比較的高減速比の減速機R31~R36とを組み合わせて用いることによって、必要なトルクを確保しつつアーム3の軽量化及び小型化を実現している。
【0079】
加えて、一般的な産業用マニピュレータではサーボモータの出力は出力ギア、減速機、負荷の順に伝達されるところ、本実施形態に係るアーム3ではサーボモータの出力は減速機、出力ギア、負荷の順に伝達される。このように、出力ギアに対し入力側に減速機をレイアウトすることによっても、アーム3の軽量化及び小型化を実現している。
【0080】
コントローラ6は、アーム本体30の動作を司るアーム本体制御部602を含む。アーム本体制御部602にはサーボ制御部C31~C36が電気的に接続され、サーボ制御部79には図示されない増幅回路などを介してサーボモータM31~M36が電気的に接続されている。コントローラ6は、施設内ネットワーク202もしくは外部ネットワーク203を介して、データセンタ201と通信できる。
【0081】
上記構成において、操作装置2に入力された動作指令に基づいて、アーム本体制御部602にアーム本体30の先端部の位置姿勢指令が入力される。アーム本体制御部602は、位置姿勢指令とエンコーダE31~E36で検出された回転角とに基づいて、位置指令値を生成して出力する。この位置指令値を取得したサーボ制御部C31~C36は、エンコーダE31~E36で検出された回転角及び位置指令値に基づいて駆動指令値(トルク指令値)を生成して出力する。この駆動指令値を取得した増幅回路は、駆動指令値に対応した駆動電流をサーボモータM31~M36へ供給する。このようにして、アーム本体30の先端部が、位置姿勢指令と対応する位置及び姿勢に到達するように、各サーボモータM31~M36がサーボ制御される。
【0082】
コントローラ6は、アーム3の可動部となる各コンポーネント(例えば、各捩り関節J31~J36)に関するデータをデータセンタ201に送信する。コントローラ6は、施設内ネットワーク202若しくは外部ネットワーク203を介して、例えば以下のデータをデータセンタ201に送信する。
【0083】
・各サーボ制御部C31~C36に出力された位置指令値
・各サーボ制御部C31~C36から出力された駆動指令値(トルク指令値)
・増幅回路から供給された駆動電流の電流値
・サーボモータM71~M76にそれぞれ配置された温度センサで採取された温度
・駆動電流に対応するエンコーダE71~E76のエンコーダ値
・各エンコーダE71~E76用のバックアップバッテリの電圧値
・各関節J71~J76内に設けられたハーネスの電気抵抗値
コントローラ6は、内視鏡アセンブリ41によって撮影された画像データを、データセンタ201に送信できる。コントローラ6は、内視鏡アセンブリ41によって撮影された静止画データをデータセンタ201に送信してもよい。コントローラ6は、内視鏡アセンブリ41によって撮影された動画データを、ストリーミングデータとしてデータセンタ201に送信してもよい。
【0084】
コントローラ6は、外科手術システム100に設けられた少なくとも1つのカメラ(図示せず)によって撮影されたアーム3の画像データをデータセンタ201に送信できる。コントローラ6は、カメラから画像データを取得し、取得してデータをデータセンタ201に送信する。カメラはアーム3の静止画を撮影し、コントローラ6は、撮影された静止画データをデータセンタ201に送信できる。また、カメラはアーム3の動作を動画として撮影し、コントローラ6は、撮影された動画データをデータセンタ201に送信できる。
【0085】
コントローラ6は、上述の情報のそれぞれと、アーム3の可動部となる各コンポーネント(例えば、各捩り関節J31~J36)の識別情報(コンポーネントID)とを関連付けて、データセンタ201に送信する。
【0086】
コントローラ6がデータセンタ201に送信するデータは、上述の例に限らない。コントローラ6がデータセンタ201に送信するデータは、上述の例に限らない。コントローラ6は、操作装置2から動作指令が入力される度に、上述のデータをデータセンタ201に送信できる。
【0087】
[アームとプラットホームとの連結構造]
プラットホーム5とアーム3との連結構造について説明する。
【0088】
アーム3のベース80は、プラットホーム5に対し着脱自在である。換言すれば、患者側システム1から、アーム3を丸ごと取り外したり、取り付けたりすることが容易である。本実施形態では、4本のアーム3がプラットホーム5に対し着脱可能であるが、患者側システム1が具備するアーム3のうち少なくとも1本がプラットホーム5に対し着脱可能であればよい。
【0089】
患者側システム1から取り外されたアーム3は、洗浄処理及び滅菌処理が施されたのち、制限された回数内で再利用される。このようにして、アーム3を手術の度に滅菌された清浄なものに取り換えられる。したがって、アーム3は従来のように滅菌ドレープで覆われず、滅菌野に曝されてよい。
【0090】
図11は、プラットホーム5とアーム3との連結構造を示す平面図であり、
図12は
図11におけるXII-XII矢視断面図である。
図11及び
図12に示すように、アーム3のベース80の基端部は円筒形状を呈し、その周囲又は基端面に少なくとも1つのインターフェース部(以下、「I/F部801」と示すことがある)を有する。本実施形態に係るI/F部801は、ベース80の外周面に形成された突起であるが、I/F部801の態様はこれに限定されない。
【0091】
I/F部801には、アーム3に識別情報などを付帯させるためのICタグ91が埋め込まれている。ICタグ91は、ICチップやアンテナを含み、ICチップはマイクロコンピュータやEEPROM、RAMなどを含む(いずれも図示略)。ICタグ91には、アーム3の固体識別情報、型番、使用回数などが記憶される。
【0092】
I/F部801には、1以上のコネクタ92が設けられる。1以上のコネクタ92は、アーム3へ電気を供給する電線のコネクタ、アーム3と信号を送受信する通信配線のコネクタなどを含む。
【0093】
本実施形態では、プラットホーム5に4本のアーム3が着脱可能に取り付けられるので、プラットホーム5には少なくとも4つの取付ポート55が設けられている。プラットホーム5は、平面視において四角形の隣接する2つの角を面取りしたような6角形を呈し、そのうち連続する3つの側面は同一の方向に向かう成分を有する。この3つの側面の各々に1つずつの取付ポート55が設けられている。また、プラットホーム5の下部が一部切り欠かれることによって側方を向いた壁59が形成されており、この壁59にも上記の上段の3つの取付ポート55と同様に、下段の3つの取付ポート55が設けられている。本実施形態では、下段の3つの取付ポート55のうちの1つが使用され、余の2つは空いている。このようにプラットホーム5に複数の取付ポート55が設けられており、手術ごとに使用する取付ポート55を選択することができる。
【0094】
上記のようにアーム3のベース80に設けられたI/F部801と、プラットホーム5に設けられた取付ポート55とにより、アーム3とプラットホーム5とを連結するカップリング機構が構成されている。そして、プラットホーム5の取付ポート55にベース80のI/F部801が嵌め込まれることによって、プラットホーム5にベース80(即ち、アーム3)が取り付けられる。
【0095】
プラットホーム5の取付ポート55には、I/F部801に設けられたコネクタ92と対応する位置にソケット56が設けられる。I/F部801と取付ポート55との連結に伴い、コネクタ92とソケット56とが自動的に接続される。ソケット56には、プラットホーム5及びポジショナ7を構成している中空状の要素(軸やリンクなど)の内部空間を通じて電線及び/又は通信配線が接続されている。なお、コネクタ92はアーム3の表面に露出しておりソケット56と接触可能であるが、コネクタ92がアーム3の表面近傍に埋め込まれて、電磁誘導などによってソケット56とコネクタ92とが非接触で電気的に接続される構成が採用されてもよい。
【0096】
プラットホーム5には、アーム3に埋め込まれたICタグ91の情報の読み出しと書き込み(記憶)を行うリーダーライター93が設けられている。このリーダーライター93は、プラットホーム5の各取付ポート55に対応して設けられており、後述するコントローラ6へ、ICタグ91から読み出した情報を出力する。このリーダーライター93は、プラットホーム5に取り付けられた各アーム3のICタグ91を個別に読み取るものであってもよい、プラットホーム5に取り付けられた全部のアーム3のICタグ91を一度に読み取るものであってもよい。
【0097】
プラットホーム5とベース80には、プラットホーム5からベース80が落脱しないように、プラットホーム5に取り付けられたアーム3の取付ロック(保持)及び取付ロック解除(保持解除)が可能な1組以上の取付ロック機構94が設けられている。なお、取付ロックとは、プラットホーム5の取付ポート55に取り付けられたアーム3のI/F部801を当該取付ポート55に固定することをいい、取付ロック解除とは、その固定を解除することをいう。
【0098】
取付ロック機構94は、プラットホーム5の取付ポート55又はその近傍に設けられた部材と、アーム3のI/F部801又はその近傍に設けられた部材との協働により構成されている。このような取付ロック機構94は、例えば、プラットホーム5とベース80の両者のうち一方に設けられた突起と他方に設けられた掛金付レバー、両者のうち一方に設けられた凹部と他方に設けられた係合爪、両者のうち一方に設けられた凹部と他方に設けられたボールプランジャ、からなる群より選択される。或いは、取付ロック機構94は、他の公知の取付ロック機構であってもよい。但し、取付ロック機構94は、ボルト・ナットなど取付ロック/取付ロック解除に工具を使用するものではなく、ワンタッチ操作で取付ロック/取付ロック解除できるものが望ましい。
【0099】
図13は、プラットホーム5に取り付けたアーム3を管理するための構成を示すブロック図である。
図13に示すように、コントローラ6は、プラットホーム5に取り付けたアーム3を管理するためのアーム管理部(管理装置)603を含む。アーム管理部603には、リーダーライター93が電気的に接続されている。コントローラ6は、施設内ネットワーク202もしくは外部ネットワーク203を介して、データセンタ201と通信できる。
【0100】
アーム管理部603は、プラットホーム5からアーム3への給電に基づいて、コネクタ92とソケット56とが接続されたことを検出する。プラットホーム5からアーム3への給電は、例えば、ソケット56までの電線又は通信配線に設けた電流検出センサ(検出センサ57)からの検出信号に基づいて検出することができる。コネクタ92とソケット56との接続は、即ち、取付ポート55にI/F部801が正常に取り付けられていることを意味する。つまり、プラットホーム5からアーム3への給電の有無に基づいて、取付ポート55に取り付けられたアーム3の有無を検出することができる。このようにして、アーム管理部603は、プラットホーム5が具備する各取付ポート55についてアーム3が取り付けられたことを検知することができる。
【0101】
但し、取付ポート55に取り付けられたアーム3の有無を検出するために、接触式又は非接触式の物体検出センサ(図示せず)をプラットホーム5に設けてもよい。この場合、アーム管理部603は、この検出センサからの検出信号に基づいて取付ポート55にアーム3が取り付けられたことを検出する。
【0102】
アーム管理部603は、取付ポート55にアーム3が取り付けられたことを検出すると、リーダーライター93に読み出し動作をさせ、リーダーライター93がICタグ91から読み取った情報に基づいて、プラットホーム5に接続されている各アーム3の、個体識別情報、型番情報(種類)、使用回数情報などを取得する。アーム管理部603は、取得した各情報を、そのアーム3が取り付けられたプラットホーム5上の取付位置情報(即ち、取付ポート55)に関連づけて一時的に記憶する。なお、複数の取付ポート55は各々識別されている。ICタグ91には、アーム3に取り付けられ内視鏡アセンブリ41やインストゥルメント42の消耗品に関する情報が記憶されてもよい。例えば、ICタグ91には、内視鏡アセンブリ41における内視鏡ランプの使用時間、インストゥルメント42である鉗子の使用時間等が記憶されてもよい。
【0103】
コントローラ6は、アーム管理部603がICタグ91から読み取った情報を、データセンタ201に送信する。コントローラ6は、例えば、各アーム3の個体識別情報、型番情報(種類)、使用回数情報を、データセンタ201に送信する。コントローラ6は、各アーム3の個体識別情報、型番情報(種類)、使用回数情報のそれぞれと、外科手術システム100の識別情報とを関連付けて、データセンタ201に送信する。コントローラ6は、内視鏡アセンブリ41やインストゥルメント42の消耗品に関する情報をデータセンタ201に送信してもよい。例えば、コントローラ6は、内視鏡アセンブリ41のランプの使用時間や、インストゥルメント42である鉗子の使用時間を、データセンタ201に送信する。
【0104】
また、操作装置2を介して、コントローラ6には予め手術情報が入力されて設定(記憶)されている。この手術情報には、手術で使用される複数のアーム3の組合せが含まれている。
【0105】
アーム管理部603は、リーダーライター93から取得した情報に含まれる固体識別情報の組合わせが、上記手術情報として設定されたものと対応しているか否かを判断する。アーム管理部603は、組合せが手術情報として設定されたものと対応していなければ、コントローラ6に接続された警告器605を通じて警告を出力する。なお、警告器605は、光、音、及び画像のうち1つ以上によって術者Oに対し警告するものである。このようにして、アーム管理部603は、適切なアーム3が取り付けられるように、プラットホーム5に取り付けられるアーム3を管理している。
【0106】
上記手術情報には、手術で使用されるアーム3の個体識別情報と当該アーム3が取り付けられるべきプラットホーム5の取付位置(即ち、取付ポート55)との組合せに係る情報が含まれていてもよい。
【0107】
この場合、アーム管理部603は、リーダーライター93から取得した情報に含まれる個体識別情報と、それに関連付けられて記憶されたプラットホーム5上の取付位置情報(即ち、取付ポート55)との組合せが、上記手術情報として設定されたものと対応しているか否かを判断する。アーム管理部603は、組合せが手術情報として設定されたものと対応していなければ、コントローラ6に接続された警告器605を通じて警告を出力する。このようにして、アーム管理部603は、アーム3がプラットホーム5上の適切な位置に取り付けられるように、且つ、各取付ポート55に適切なアーム3が取り付けられるように、プラットホーム5に取り付けられるアーム3を管理している。
【0108】
また、手術情報には、手術で使用されるアーム3の型番情報と、そのアーム3が取り付けられるべきプラットホーム5上の取付位置(即ち、取付ポート55)との組合せに係る情報が含まれていてもよい。
【0109】
この場合、アーム管理部603は、リーダーライター93から取得した情報に含まれる型番情報と、それに関連付けられた取付位置(取付ポート55)との組合せが、上記手術情報として設定されたものと対応しているか否かを判断し、組合せが手術情報として設定されたものと対応していなければ、コントローラ6に接続された警告器605を通じて警告を出力するように構成されていてよい。
【0110】
アーム3は型番により種類(カメラアーム3A、インストゥルメントアーム3B)や構造(リンクの長さ、自由度など)などが異なる。上記ではICタグ91に型番情報が記憶されているが、記憶装置604が個体識別情報に関連付けられて型番情報が記憶された型番記憶部を含み、アーム管理部603が個体識別情報に基づいて型番記憶部から対応する型番情報を読み出し、この型番情報が上記処理においてICタグ91から読み出した型番情報に代えて使用されてもよい。
【0111】
コントローラ6は、データセンタ201から上記手術情報を受信してもよい。コントローラ6は、データセンタ201から受信した手術情報に基づいて、上述の制御を実行してもよい。
【0112】
コントローラ6の記憶装置604は、固体識別情報に関連付けられた使用制限回数が記憶された使用制限回数記憶部を含んでいる。アーム管理部603は、ICタグ91から取得した固体識別情報に基づいて、これに対応する使用制限回数を記憶装置604から読み出し、使用制限回数と取得した使用回数情報と比較する。アーム管理部603は、使用回数情報が使用制限回数を超えていれば、コントローラ6に接続された警告器605を通じて警告を出力する。このようにして、アーム管理部603は、アーム3がその使用制限回数を超えて使用されることのないようにアームの使用回数を管理する。なお、アーム3は消耗品であり、使用制限回数の使用を終えたアーム3は廃棄される。
【0113】
アーム管理部603は、ICタグ91から取得した使用回数情報に1を加えた新たな使用回数情報をICタグ91に書き込むように、リーダーライター93を動作させる。この結果、アーム3のICタグ91は自身の使用回数に係る情報を保持する。よって、アーム3を、他の患者側システム1との間で共用することが可能である。
【0114】
上記では、アーム3の使用回数情報をアーム3自身が保持しているが、アーム3の使用回数情報が、コントローラ6の記憶装置604に記憶されていてもよい。この場合、リーダーライター93に代えて、読み出しの機能のみを有するリーダーが用いられてよい。そして、アーム管理部603は、リーダーがICタグ91から読み出した個体識別情報に基づいて記憶装置604から対応する使用回数情報を読み出して、上記の処理に利用してよい。
【0115】
以上に、プラットホーム5とアーム3の連結構造の好適な実施形態を説明したが、上記のプラットホーム5とアーム3の連結構造は例えば以下のように変更することができる。
【0116】
例えば、上記実施形態ではプラットホーム5には6つの取付ポート55が設けられ、これらの取付ポート55のうち4つにアーム3が連結されている。このように、複数の取付ポート55のうち空きの取付ポート55があってもよい。また、プラットホーム5には、5つ以上の取付ポート55が設けられ、手術の内容に対応した適切な位置の取付ポート55が選択的に使用されてもよい。
【0117】
例えば、上記実施形態ではアーム3自身に情報を保有させるために、アーム3にICタグ91を設けている。但し、ICタグ91は、アーム3に設けられた情報保持手段の一例であって、ICタグ91に代えて又は加えて他の情報保持手段を用いてもよい。例えば、アーム3にバーコードを設け、プラットホーム5にバーコードリーダーを設けてもよい。また、例えば、アーム3に凹凸などの形状記号を設け、プラットホーム5に形状記号を読み取るリーダーを設けてもよい。
【0118】
上記実施形態では、アーム3のベース80のI/F部801にコネクタ92が設けられ、プラットホーム5の取付ポート55にソケット56が設けられるが、コネクタ92及びソケット56が省かれてもよい。この場合、アーム3には、I/F部801以外の場所に電力供給のための電線及び/又は通信のための配線が接続される。
【0119】
[データセンタの構成例]
図14は、データセンタ201の構成例を示す。データセンタ201は、コンピュータ210、データベース213を含む。コンピュータ210は、データ管理部211、データ解析部212を含む。データ管理部211は、施設内ネットワーク202若しくは外部ネットワーク203を介して、外科手術システム100の外科手術ロボットと通信する。コンピュータ210が、データ解析装置となっている。
【0120】
データ管理部211は、外科手術ロボットから受信したデータをデータベース213に記憶する。データ管理部211は、データベース213から読み出したデータを、外科手術ロボットに送信する。
【0121】
データ解析部212は、データベース213に格納されたデータを統計的に解析することで、動作中の外科手術ロボットを監視する。解析動作の詳細は後述する。データ解析部212は、外部ネットワーク203を介して、監視結果をサポートセンタ205に通知する。データ解析部212は、施設内ネットワーク202を介して、例えば操作装置2に監視結果を通知してもよい。
【0122】
データ解析部212には、ロボットの技術者の知見に基づく対応策を予めプログラムしておいてもよい。
【0123】
図15は、外科手術ロボットとデータセンタ201との間で送受信されるデータのフォーマットの例を示す。
【0124】
図15(a)の例では、データフォーマットは、外科手術システム100における外科手術ロボットの識別情報であるシステムID220、アーム3若しくはポジショナ7の可動部の識別情報であるコンポーネントID221、アーム3若しくはポジショナ7の可動部に関するモニタデータ222、モニタデータ222が採取された時刻に対応するタイムスタンプ223を含む。モニタデータ222は、上述したように、エンコード値やサーボモータの電流値等である。
【0125】
ひとつの可動部に対して複数種類のデータが採取される場合、データフォーマットは、
図15(b)の例に示すように、データの種別を示すデータID224を含んでもよい。
【0126】
図16は、アーム3のICタグ91から採取された情報を、外科手術ロボットとデータセンタ201間で送受信する際のデータフォーマットを示す。
【0127】
データフォーマットは、システムID220、アーム3の個体識別情報230、アームの種類に対応する型番情報231、アーム3の使用回数232、アーム3が取り付けられた取付ポート55を示す取付ポートID233を含む。
【0128】
[データ解析の例(1)]
データ解析部212は、データベース213に格納されたデータを用いて、外科手術システム100の異常や故障等の予防措置のためのデータ解析を実行できる。データ解析部212は、手術中に逐次データベース213に格納されたデータを用いて、術中のバックアップサポートのためのデータ解析も実行できる。
【0129】
異常や故障等の予防措置は、データベース213に格納された情報をもとに、故障を検知してからではなく、故障に繋がる可能性を発見した時点で、素早く対応をとり、高い安全性を確保しようとするものである。
【0130】
データ解析部212は、アーム3若しくはポジショナ7の可動部である各コンポーネントのモニタデータ222を監視し、アーム3やポジショナ7の異常や故障の予兆を検知できる。データ解析部212は、例えば、アーム3やポジショナ7に関する以下のモニタデータ222を監視する。
【0131】
・各サーボ制御部に出力された位置指令値
・各サーボ制御部から出力された駆動指令値(トルク指令値)
・増幅回路から供給された駆動電流の電流値
・サーボモータにそれぞれ配置された温度センサで採取された温度
・駆動電流に対応するエンコーダのエンコーダ値
・各エンコーダ用のバックアップバッテリの電圧値
・各関節内に設けられたハーネスの電気抵抗値
・内視鏡アセンブリ41による画像や動画データ(内視鏡による内部の機器の状態画像)
・外科手術システム100に設置されたカメラで撮影された画像や動画データ
・消耗品に関する情報(使用回数や使用時間)
・レーザセンサで計測した距離
データ解析部212は、各コンポーネントのモニタデータ222と正常値とのずれが所定の閾値を超えた場合に、アーム3若しくはポジショナ7に異常や故障の予兆があると判断できる。例えば、データ解析部212は、サーボモータの温度データと正常値とを比較し、温度データと正常値とのずれが所定の閾値を超えた場合に、アーム3に異常や故障の予兆があると判断する。
【0132】
データ解析部212は、各コンポーネントのモニタデータ222と正常値とのずれが所定の閾値を超えた回数に基づいて、アーム3若しくはポジショナ7に異常や故障の予兆があると判断できる。データ解析部212は、各コンポーネントのモニタデータと正常値とのずれが所定の閾値を超えた回数が所定回数以上となった場合に、アーム3若しくはポジショナ7に異常や故障の予兆があると判断できる。例えば、データ解析部212は、ハーネスの電気抵抗値と正常値とのずれが所定の閾値を超えた回数を監視し、当該回数が所定回数以上となった場合に、アーム3やポジショナ7に異常や故障の予兆があると判断する。
【0133】
データ解析部212は、各コンポーネントのモニタデータ222と正常値とのずれが所定の閾値を超えた期間に基づいて、アーム3若しくはポジショナ7に異常や故障の予兆があると判断できる。データ解析部212は、データベース213に記憶されたタイムスタンプ223を用いて、各コンポーネントのモニタデータと正常値とのずれが所定の閾値を超えた期間を監視する。データ解析部212は、モニタデータと正常値とのずれが所定の閾値を超えた期間が所定期間以上継続した場合、アーム3若しくはポジショナ7に異常や故障の予兆があると判断できる。例えば、データ解析部212は、サーボモータの電流値と正常値とのずれが所定の閾値を超えた期間を監視し、当該期間が所定期間以上継続した場合に、アーム3やポジショナ7に異常や故障の予兆があると判断できる。
【0134】
データ解析部212は、同種の可動部に対して取得された複数のモニタデータ222に基づいて、アーム3やポジショナ7の異常や故障の予兆を検知できる。データ解析部212は、例えば、サーボモータの電流値と、当該電流値に対応するエンコーダ値とを監視する。データ解析部212は、電流値に対して期待されるエンコーダ値(期待値)と、モニタされたエンコーダ値とのずれを監視する。データ解析部212は、ずれが所定の閾値を超えた場合に、アーム3若しくはポジショナ7に異常や故障の予兆があると判断する。データ解析部212は、ずれが所定の閾値を超えた回数、若しくは、ずれが所定の閾値を超えた期間に基づいて、アーム3若しくはポジショナ7に異常や故障の予兆を判断してもよい。
【0135】
データ解析部212は、複数のモニタデータ222に基づいて、アーム3やポジショナ7の異常や故障の予兆検知に用いる基準を動的に生成できる。例えば、データ解析部212は、エンコーダ値から算出されるアーム3やポジショナ7の3次元的位置に応じて、サーボモータに供給される電流値の異常や故障の予兆検知の基準を変更する。例えば、データ解析部212は、アーム3が手術台111が設置された床に対してほぼ水平に位置している場合、アーム3の先端部が床方向を向いている場合よりも、電流値の異常や故障の予兆検知の基準値を高く設定する。
【0136】
データ解析部212は、複数の外科手術ロボットから取得されたモニタデータ222に基づいて、アーム3やポジショナ7の異常や故障の予兆を検知できる。
【0137】
例えば、データ解析部212は、複数の外科手術ロボットから取得された、同種の可動部(例えば、各外科手術ロボットのアーム3の捩り関節や、各外科手術ロボットのアーム3の曲げ関節)に関するモニタデータ222の統計的解析に基づいて、アーム3やポジショナ7の異常や故障の予兆を検知できる。データ解析部212は、同種の可動部に関するモニタデータ222の集団の平均値(M)と標準偏差(σ)を算出する。データ解析部212は、同種の可動部の集団毎に、平均値と標準偏差を算出する。データ解析部212は、アーム3やポジショナ7の異常や故障の予兆を検知する基準として、例えば以下の式を用いる。
【0138】
|X-M|>3σ
【0139】
上記式において、Xは、可動中のアーム3やポジショナ7から取得されたモニタデータ222である。データ解析部212は、上記式に基づいて、モニタデータ222と平均値(M)との差分の絶対値が、3σより大きい場合に、当該モニタデータ222に対応するアーム3やポジショナ7に異常や故障の予兆があると判断する。データ解析部212は、モニタデータ222と平均値(M)との差分の絶対値が、2σや4σより大きい場合に、当該モニタデータ222に対応するアーム3やポジショナ7に異常や故障の予兆があると判断してもよい。データ解析部212は、例えば、所定の周期で上記基準を更新する。
【0140】
データ解析部212は、複数の外科手術ロボットから取得された、同一の可動部(例えば、各外科手術ロボットのアーム3の捩り関節J31や、各外科手術ロボットのアーム3の曲げ関節J33)に関するモニタデータ222の統計的解析に基づいて、上記基準を算出してもよい。
【0141】
上述のように、データ解析部212は、複数の外科手術ロボットから取得された多数のモニタデータ222に基づいて、異常や故障の予兆検知の基準を動的に生成できる。多数のモニタデータ222に基づいて生成された基準によって異常や故障の予兆を検知できるので、単一の外科手術ロボットのモニタデータ222を監視するよりも精密な判断が可能となる。
【0142】
データ解析部212は、異なるモニタデータ222間の相関に基づいて、アーム3やポジショナ7の異常や故障の予兆を検知してもよい。
【0143】
データ解析部212は、アーム3同士の干渉に起因する異常を検知できる。アーム3同士が干渉すると、操作装置2による指示に基づかない動作がアーム3に生じる。外科手術ロボットは、操作装置2による位置指令値に基づくエンコード値と、原点位置とを比較することで、アーム3の挙動を把握する。アーム3同士の干渉によって生じたアーム3に不測動作はエンコーダ値には反映されず、エンコーダ値に対応するアーム3の位置と実際のアーム3の位置に相違が生じる。この場合、アーム3を原点に戻そうとしても、エンコーダ値に対応するアーム3の位置と実際のアーム3の位置に相違が生じているため、アーム3を正しい原点位置に戻すことができない。データ解析部212は、例えば、画像や動画データを解析して、干渉によって変動したアーム3の位置を把握し、原点ずれを補正する。データ解析部212は、例えば、画像や動画データを解析して干渉によって変動したアーム3の位置を把握し、エンコーダ値に対応するアーム3の位置とのずれを計算する。データ解析部212は、計算されたずれに対応するエンコード値を算出し、算出したエンコード値に基づいて原点ずれの補正値を計算する。データ解析部212は、計算された補正値を、サポートセンタ205若しくは外科手術ロボットに通知する。
【0144】
データ解析部212は、アーム3やポジショナ7の異常や故障の予兆を検知した場合、警告情報をサポートセンタ205に通知する。データ解析部212からの警告情報の通知は、例えば、サポートセンタ205のサービス員が使用する端末のモニタに表示される。サービス員は、モニタに表示された通知に基づいて、異常や故障の予兆が検知された外科手術ロボットに対して、警報や動作停止指示を通知する。サービス員は、モニタに表示された通知に基づいて、外科手術ロボットの使用者への電話サポートや、保守員の派遣を行ってもよい。サービス員は、端末のモニタと、外科手術ロボットのモニタ53とを接続し、端末のモニタに外科手術ロボットの操作画面を表示できる。サービス員は、端末のモニタに表示された操作画面を介して、外科手術ロボットを遠隔操作できる。
【0145】
データ解析部212は、モニタデータ222の監視結果を、サポートセンタ205に常時送信してもよい。監視結果は、サポートセンタ205のサービス員が使用する端末のモニタに逐次表示される。例えば、データ解析部212は、手術中の外科手術ロボットから取得したモニタデータ222と正常値とのずれを、常時サポートセンタ205に送信する。サービス員は、データ解析部212から送信された情報を監視し、アーム3やポジショナ7の異常や故障の予兆の有無を判断する。サービス員は、端末のモニタと、外科手術ロボットのモニタ53とを接続し、端末のモニタに外科手術ロボットの操作画面を表示できる。サービス員は、端末のモニタに表示された操作画面を介して、外科手術システムを遠隔操作できる。
【0146】
データ解析部212は、アーム3やポジショナ7の異常や故障の予兆を検知した場合に、サポートセンタ205を介さずに、外科手術ロボットに直接警告情報を通知してもよい。データ解析部212は、例えば、異常や故障の予兆が検知された外科手術ロボットに対して、警報や動作停止指示を通知する。
【0147】
データ解析部212は、サービス員が使用する端末のモニタに、対応策を提示してもよい。
【0148】
データ解析部212は、消耗品に関する情報(アーム3の使用回数や内視鏡アセンブリ41のランプの使用時間等)を、データベース213から取得できる。データ解析部212は、消耗品交換の基準値とデータベース213から取得した情報とを比較する。データ解析部212は、例えば、データベース213から取得した使用回数や使用時間が基準値を超過していることを、サポートセンタ205に通知する。サポートセンタ205のサービス員は、通知に基づいて、外科手術ロボットに対して、消耗品の交換時期が近づいていることを通知する。サービス員は、通知に基づいて、保守員に消耗品の補充や交換を指示してもよい。
【0149】
[データ解析の例(2)]
データ解析部212は、データベース213に格納されたデータを用いて、術前の外科手術ロボットの点検やセットアップのための解析を実行する。
【0150】
術前の点検やセットアップのサポートは、外科手術ロボットの使用前に各部の動作を確認する手術前セットアップ情報の点検を自動化できる。このサポートにより、外科手術ロボットを、ロボットの技術者による判断で遠隔地から点検することが可能となる。
【0151】
データ解析部212は、アーム3やポジショナ7の動作チェックを実行できる。データ解析部212は、操作装置2、内視鏡アセンブリ41やインストゥルメント42の動作チェックも実行できる。
【0152】
データ解析部212は、各サーボ制御部に出力された位置指令値と、当該位置指令値に対応するエンコーダ値とのずれを解析する。データ解析部212は、例えば、位置指令値に対して期待されるエンコーダ値(期待値)と、実際のエンコーダ値とのずれを解析する。データ解析部212は、例えば、位置指令値に対して期待される電流値(期待値)と、実際の電流値とのずれを解析し、アーム3やポジショナ7のトルク状態を点検できる。データ解析部212は、例えば、アーム3のブレーキをONにした状態でサーボモータを回転させ、サーボモータが回転を開始した電流値を解析し、ブレーキトルクを点検することもできる。
【0153】
データ解析部212は、解析結果をサポートセンタ205に通知する。データ解析部212からの通知は、例えば、サポートセンタ205のサービス員が使用する端末のモニタに表示される。サービス員は、モニタに表示された通知に基づいて、外科手術ロボットに対してずれの補正を指示する。例えば、サービス員は、ずれを補正するための補正値を外科手術ロボットに送信する。
【0154】
データ解析部212は、解析結果を、サポートセンタ205を介さずに、直接外科手術ロボットに通知してもよい。データ解析部212は、ずれを補正するための補正値を算出し、算出された補正値を外科手術ロボットに送信してもよい。
【0155】
データ解析部212は、内視鏡アセンブリ41又は外科手術システム100に設置されたカメラによって撮影された画像や動画データに基づいて、アーム3やポジショナ7の位置決め精度を点検できる。データ解析部212は、画像や動画データを解析し、アーム3やポジショナ7が、位置指令値に対応する位置に移動しているか否かを解析する。データ解析部212は、位置指令値に対応する位置を画像データ上に仮想的に設定し、アーム3やポジショナ7が当該位置に到達したか否かを解析する。データ解析部212は、位置指令値に対応するアーム3やポジショナ7の移動量を計算する。データ解析部212は、画像や動画データを解析し、アーム3やポジショナ7が、計算された移動量だけ移動しているか否かを判定する。データ解析部212は、画像や動画データを解析し、アーム3間の相対位置を点検することもできる。
【0156】
データ解析部212は、内視鏡アセンブリ41又は外科手術システム100に設置されたカメラによって撮影された画像や動画データに基づいて、アーム3やポジショナ7のバックラッシを点検できる。バックラッシは、アーム3やポジショナ7に設けられたギアの間に、意図的に設けられた隙間を意味する。ギアの磨耗や劣化によって、バックラッシにずれが発生することが想定される。データ解析部212は、バックラッシのずれを解析できる。
【0157】
バックラッシのずれが発生した場合、位置指令値が入力されてからアーム3やポジショナ7の関節が動作するまでの間のタイムラグが発生する。データ解析部212は、動画データを解析し、位置指令値が入力されてからアーム3やポジショナ7の関節が動作するまでの間のタイムラグを算出する。
【0158】
データ解析部212は、解析結果をサポートセンタ205に通知する。データ解析部212は、解析結果を示す画像や動画データ、又は、解析結果を示すデータをサポートセンタ205に通知する。データ解析部212からの通知は、例えば、サポートセンタ205のサービス員が使用する端末のモニタに表示される。サービス員は、モニタに表示された画像や動画データに基づいて、外科手術ロボットに対して位置決めのずれやバックラッシのずれの補正を指示する。例えば、サービス員は、ずれを補正するための補正値を外科手術ロボットに送信する。
【0159】
データ解析部212は、解析結果を、サポートセンタ205を介さずに、直接外科手術ロボットに通知してもよい。データ解析部212は、ずれを補正するための補正値を算出し、算出された補正値を外科手術ロボットに送信してもよい。
【0160】
データ解析部212は、操作ペダル52、内視鏡アセンブリ41、インストゥルメント42(例えば、電気メス(エネルギーデバイス)、鉗子等)、モニタ53、レコーダ等が正常に外科手術ロボットに接続されているかをチェックすることもできる。データ解析部212は、電気メスやバイポーラ等のエネルギーデバイスの動作をチェックすることもできる。これらのチェックで、例えば、機具に曲がりがないかなどをチェックできる。また、各機器に正規品が使用されているかをチェックできる。このチェックは、手術機具の取付け部にセンサ等を設けることでチェック可能とできる。エネルギーデバイスのチェックとしては、バイポーラ(先端が2本のメス:1本のメス先から高周波電流を流し、反対側のメス先から回収する)などの動作チェックがある(出力不良など)。
【0161】
データ解析部212は、アーム3のコンフィグレーション情報を生成することができる。データ解析部212は、サポートセンタ205を介して、生成したコンフィグレーション情報を外科手術ロボットに通知することで、外科手術ロボットの使用者を支援できる。データ解析部212は、生成したコンフィグレーション情報を、直接外科手術ロボットに通知してもよい。外科手術ロボットに通知されたコンフィグレーション情報は、上述した手術情報として、アーム3やポジショナ7のコントローラ6に記憶される。データ解析部212は、コンフィグレーション情報をデータベース213に保存し、当該情報を再利用することもできる。
【0162】
図17は、データ解析部212により生成されるコンフィグレーション情報の例を示す。データ解析部212は、例えば、外科手術ロボットによって実施される術式に応じて、当該術式に適したコンフィグレーション情報を生成する。術式に関する情報は、例えば、外科手術ロボットの操作装置2を介して、データ解析部212に通知される。術式に関する情報は、例えば、患者の体の留置されるスリーブ(カニューレスリーブ)の位置情報や、患者とベッドとの相対位置に関する情報を含む。データ解析部212は、外科手術ロボットを使用する医師の特性(例えば、身長や座高等)に基づいて、コンフィグレーション情報を生成することもできる。データ解析部212は、術式と医師の特性との組み合わせや、他の情報に基づいて、コンフィグレーション情報を生成してもよい。
【0163】
コンフィグレーション情報には、例えば、システムID220毎に、アーム3のコンフィグレーションと、ポジショナ7のコンフィグレーションとが設定される。
【0164】
アーム3のコンフィグレーションは、アームの個体識別情報230毎に設定される。アーム3のコンフィグレーションは、例えば、取付ポートID233、コンポーネントID221毎の動作指令値240を含む。
【0165】
ポジショナ7のコンフィグレーションは、アーム3のコンフィグレーションと同様である。
【0166】
[データ解析の例(3)]
データ解析部212は、データベース213に格納されたデータを用いて、内視鏡アセンブリ41やインストゥルメント42の使用履歴、消耗品の使用状況を解析できる。
【0167】
データベース213は、外科手術ロボットから取得した情報を元に、顧客毎のデータを管理できる。
【0168】
図18は、データベース213の顧客管理データの例を示す。顧客管理データは、顧客に納品済みの外科手術ロボット、顧客に納品済みのアーム3、顧客に納品済みの消耗品のそれぞれに関する情報を含む。
【0169】
データベース213は、顧客を識別するための顧客ID250と、当該顧客に納入済みの外科手術ロボットのシステムID220とを対応付けて管理する。データベース213は、アーム3に関する情報や内視鏡アセンブリ41およびインストゥルメント42の消耗品に関する情報と、システムID220とを関連付けて管理する。
【0170】
データ解析部212は、
図18に例示された顧客管理データを参照し、アーム3の使用回数や、消耗品の使用時間等を把握する。また、データ解析部212は、
図18に例示された顧客管理データを参照し、アーム3や消耗品のストック状況を顧客毎に把握できる。データ解析部212は、例えば、アーム3の使用回数、消耗品の使用時間、およびそれらのストック状況をサポートセンタ205に通知する。
【0171】
サポートセンタ205のサービス員は、例えば、使用回数や使用時間の制限と、現状の使用回数や使用時間の差分を確認する。サービス員は、例えば、差分が所定値以上であるアーム3や消耗品の個数がストック量以上である場合に、保守員にアーム3や消耗品の補充を指示する。サービス員は、差分が所定値以上であるアーム3や消耗品の個数がストック量以上である場合に、アーム3や消耗品の生産拠点に対して、アーム3や消耗品の出荷を指示してもよい。
【0172】
データ解析部212は、サポートセンタ205を介さずに、保守員や生産拠点に対して、アーム3や消耗品の補充を指定してもよい。データ解析部212は、使用回数や使用時間の制限と、現状の使用回数や使用時間の差分を確認する。データ解析部212は、例えば、差分が所定値以上であるアーム3や消耗品の個数がストック量以上である場合に、保守員や生産拠点にアーム3や消耗品の補充を指示する。
【0173】
サポートセンタ205のサービス員は、外科手術ロボットによる手術を行った稼動時間、外科手術ロボットの動作時間、動作量などのデータを蓄積し、効率的なシステム運用方法を提案することもできる。
【0174】
[データ解析の例(4)]
データ解析部212は、外科手術ロボットから取得したデータに基づいて、外科手術ロボット用のシミュレーションデータを作成できる。作成されたシミュレーションデータは、例えば、外科手術ロボットのユーザに対する教育や、医療機関や大学等の研究等に利用される。
【0175】
外科手術ロボットは、手術中のアーム3やポジショナ7の動作に関するモニタデータ222を逐次データセンタ201に送信する。外科手術ロボットは、例えば、手術の術式を示す情報と関連付けてモニタデータ222をデータセンタ201に送信する。
【0176】
図19は、データベース213のデータフォームの例を示す。データセンタ201のデータ管理部211は、外科手術ロボットから送信されたデータ(
図15で例示したデータ)を、手術の術式を示す術式ID250と関連付けてデータベース213に記憶する。
【0177】
データ管理部211は、システムID220毎に、コンポーネントID221、モニタデータ222、タイムスタンプ223をデータベース213に記憶する。データ解析部212は、術式ID250とシステムID220とをキーにして検索されたデータを時系列に並べることによって、外科手術ロボットで実施された特定の術式のシミュレーションデータを作成できる。データ解析部212は、ある術式に関する特定の動作に関するデータのみに基づいてシミュレーションデータを作成してもよい。
【0178】
サポートセンタ205のサービス員は、顧客の教育用の外科手術ロボットにシミュレーションデータをインストールすることで、外科手術ロボットの使用方法について顧客を教育できる。
【0179】
[総括]
以上のように、上記システム200によれば、外科手術ロボットが正常に動作するためのサポートを、ロボットの技術者による判断でネットワークを通じて遠隔で行うことが可能となる。
【0180】
また、大量のデータをデータセンタ201に集め、そのビッグデータの解析から、外科手術ロボットの動作の組み合わせによる異常の頻度、故障の傾向など、解析することが可能となる。この解析により、異常、故障の前兆などを導き出していくこともでき、予め対策を導き出すことが可能となる。
【0181】
なお、上記した実施形態では、サポートセンタ205にてサービス員が対応する例を説明したが、予防措置サポートなど、サービス員を介さずにデータセンタ201のコンピュータ210にてプログラムで対応することも可能であり、データセンタ201に記憶されるデータに対する解析、動作指示は、サポートセンタ205を介する応答以外も含む。
【0182】
また、上記した実施形態では、複数の外科手術用ロボットを備えた外科手術システム100を例に説明したが、本発明は外科手術用ロボットを備えた外科手術システム100に限らず医療用ロボットを備えた医療用ロボットシステムの全般に適用できる。
【0183】
さらに、上記した実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0184】
100 :外科手術システム
1 :患者側システム
2 :操作装置
3 :患者側マニピュレータアーム(アーム:可動部)
3A :カメラアーム
3B :インストゥルメントアーム
5 :プラットホーム(支持体)
6 :コントローラ
7 :ポジショナ
9 :滅菌ドレープ
30 :アーム本体
35 :並進アーム
36 :ホルダ
41 :内視鏡アセンブリ
42 :インストゥルメント
55 :取付ポート(マニピュレータアーム取付部の一例)
56 :ソケット
57 :検出センサ
91 :ICタグ(情報保持手段の一例)
92 :コネクタ
93 :リーダーライター(リーダー)
94 :取付ロック機構
95 :入力軸
96 :出力軸
97 :軸継手
O :術者
P :患者
200 :システム
201 :データセンタ
202 :施設内ネットワーク
203 :外部ネットワーク
204 :施設
205 :サポートセンタ
210 :コンピュータ
211 :データ管理部
212 :データ解析部
213 :データベース
220 :システムID
221 :コンポーネントID
222 :モニタデータ
223 :タイムスタンプ
224 :データID
230 :アームの個体識別番号
231 :アームの型番情報
232 :使用回数
233 :取付ポートID
240 :動作指令値
250 :顧客ID