(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】布地上への液体電子写真印刷
(51)【国際特許分類】
G03G 15/11 20060101AFI20220322BHJP
G03G 15/10 20060101ALI20220322BHJP
G03G 9/125 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
G03G15/11
G03G15/10
G03G9/125
(21)【出願番号】P 2020504005
(86)(22)【出願日】2017-10-13
(86)【国際出願番号】 US2017056519
(87)【国際公開番号】W WO2019074519
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】596097844
【氏名又は名称】エイチピー・インディゴ・ビー・ブイ
【氏名又は名称原語表記】HP Indigo B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】デサイ,ハーシュ,プラナヴ
(72)【発明者】
【氏名】コロル,エヴジェニー
(72)【発明者】
【氏名】ハルパーン,アヴィノアム
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-139900(JP,A)
【文献】特開2004-333633(JP,A)
【文献】特開2009-086347(JP,A)
【文献】特開昭52-056615(JP,A)
【文献】特開平07-311503(JP,A)
【文献】特開2008-233397(JP,A)
【文献】特開2007-139986(JP,A)
【文献】特開2002-311725(JP,A)
【文献】特開2001-060046(JP,A)
【文献】特開平05-297746(JP,A)
【文献】国際公開第2016/048343(WO,A1)
【文献】米国特許第05689761(US,A)
【文献】特開2006-243143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/11
G03G 15/10
G03G 9/125
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体電子写真(LEP)印刷装置であって:
液状印刷流体を受け取る光イメージングプレート(PIP)と、この液状印刷流体が;
樹脂中に取り込まれた顔料、
電荷コンダクタ、および
キャリア液体を含むことと、そして
キャリア液体がまだ印刷流体中に存在している間に液状印刷流体をPIPから布地基材へ
と転写する転写ローラーとを含み、
0から10パーセントを超えるキャリア液体の蒸発を防止するため、転写ローラーは70℃から95℃の温度に加熱される、LEP印刷装置。
【請求項2】
キャリア液体はイソパラフィン系炭化水素であり、そしてイソパラフィン系炭化水素の一部は印刷流体を布地上へと転写する間に蒸発しない、請求項
1のLEP印刷装置。
【請求項3】
転写ローラーおよび温度コントローラーと関連付けられた加熱装置をさらに含み、ここで温度コントローラーは、紙製印刷基材が印刷されるかまたは布地基材が印刷されるかに基づいて、転写ローラーの温度を少なくとも2つの異なる温度へと調節する、請求項1
または2のLEP印刷装置。
【請求項4】
紙製印刷基材が印刷される場合に加熱装置は転写ローラーを100℃から150℃の温度に加熱する、請求項3のLEP印刷装置。
【請求項5】
転写ローラーの下流側にアキュムレータをさらに含む、請求項1から4のいずれか1のLEP印刷装置。
【請求項6】
アキュムレータは布地基材上の湿潤液状印刷流体を乾燥させるための赤外線放出装置、電磁熱源、加熱ランプまたはエアナイフを含む、請求項5のLEP印刷装置。
【請求項7】
布地上に印刷するためのシステムであって:
印刷流体を含有する印刷流体源と、この印刷流体が少なくともキャリア
液体を含むことと;そして
光イメージングプレートから所定量の印刷流体を受け取り
、キャリア
液体がまだ印刷流体中に存在している間にその印刷流体を布地へと転写する加熱調節可能な転写ローラーを含み、
印刷流体が布地に転写される際に0から10パーセントを超えるキャリア液体の蒸発を防止するため加熱調節可能な転写ローラーは70℃から95℃の温度に加熱される、システム。
【請求項8】
所定量の布地を内部に蓄積する、転写ローラーの下流側のアキュムレータをさらに含み、ここでアキュムレータはさらに、布地を加熱するための熱源を含んでいる、請求項7のシステム。
【請求項9】
印刷流体はさらに、樹脂中に取り込まれた顔料および電荷コンダクタを含む、請求項7または8のシステム。
【請求項10】
キャリア液体はイソパラフィン系炭化水素であり、そしてイソパラフィン系炭化水素の一部は印刷流体を布地上へと転写する間に蒸発しない、請求項7から9のいずれか1のシステム。
【請求項11】
紙製印刷基材が印刷される場合に加熱調節可能な転写ローラーは100℃から150℃の温度に加熱される、請求項7から10のいずれか1のシステム。
【請求項12】
転写ローラーであって:
加熱装置を含み;
ここで転写ローラーは、所定量
の印刷流体を光イメージングプレート(PIP)から受け取り、そして
キャリア液体がまだ印刷流体中に存在している間にその印刷流体を布地へと転
写し、
0から10パーセントを超えるキャリア液体の蒸発を防止するため、加熱装置は転写ローラーを70℃から95℃の温度に加熱する、転写ローラー。
【請求項13】
印刷を行う印刷基材の種類に基づいて、加熱装置は転写ローラーを少なくとも2つの異なる温度に加熱する、請求項12の転写ローラー。
【請求項14】
印刷媒体が紙である場合、加熱装置は転写ローラーを100℃から150℃の温度に加熱する、請求項
13の転写ローラー。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
液体(湿式)電子写真印刷(LEP)装置は、いくつものバイナリインクデベロッパー(2値的インク現像部材)を含んでおり、これらは液体トナーのような印刷流体を、流体アプリケータに提供する。流体アプリケータは、帯電された液体トナーを光導電性部材上の潜像に提供して、流体イメージを形成する。光導電性部材は流体イメージを、イメージ転写部材および/または基材上へと転写する。
【図面の簡単な説明】
【0002】
添付の図面は、本願に記載された原理の種々の例を説明しており、明細書の一部をなしている。説明された例は単に例示のために与えられたものであり、特許請求の範囲を制限するものではない。
【0003】
図1は、本願に記載された原理の例に従う、液体電子写真(LEP)印刷装置のブロック図である。
【0004】
図2は、本願に記載された原理の例に従う、布地上に印刷するためのシステムのブロック図である。
【0005】
図3は、本願に記載された原理の例に従う、転写ローラーのブロック図である。
【0006】
図4は、本願に記載された原理の例に従う、液体電子写真(LEP)印刷装置のダイヤグラムである。
【0007】
図面を通じて、同一の参照番号は類似した、しかし必ずしも同一ではない要素を指定している。図面は必ずしも縮尺通りではなく、幾つかの部品の大きさは誇張されて、示された例をより明確に説明するようにされていてよい。さらにまた、図面は詳細な説明と矛盾のない例および/または実施態様を提示している;しかしながら、詳細な説明は図面に提示された例および/または実施態様に限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上述したように、LEP印刷装置は、ある量の印刷流体を帯電された光導電性プレートへと転写する、いくつもの印刷流体デベロッパーを実装している。帯電された光導電性プレートは印刷流体を転写ローラーへと転写してよく、転写ローラーは圧胴ローラーの助けを借りて、印刷流体を印刷基材へと転写する。
【0009】
上記の例における印刷基材は紙である。LEPの動作の間、転写ローラーは、100℃から150℃の範囲の温度に加熱される。このことは印刷流体からの、イソパラフィン系炭化水素のようなキャリア流体の蒸発を生じさせ、それによって印刷流体は紙の上に塗布またはその他により圧接されることができる。印刷流体のキャリア流体が蒸発されることから、印刷流体は粘稠になり、紙の上へと容易に転写されうる。
【0010】
しかしながらこのプロセスは、テキスタイル(繊維製品)上に印刷するためには使用できない。むしろ、印刷流体が布地(ファブリック)の上に圧接されると、印刷流体の粘稠さによって、印刷流体がテキスタイルの繊維内へと浸透することは許容されない。テキスタイルの繊維内へと吸収されることなしに、印刷流体はテキスタイルの外側表面上に残存して硬化され、クラック生成、剥離、およびテキスタイルからの印刷流体の剥落をもたらす。
【0011】
本明細書は、液状印刷流体を受け取る光イメージングプレート(PIP)を含む液体電子写真(LEP)印刷装置を説明するものであり、液状印刷流体は、樹脂中に取り込まれた顔料、電荷コンダクタ、およびキャリア液体を含み、そして転写ローラーが液状印刷流体をPIPから布地へと、湿潤状態で転写する。
【0012】
本明細書はまた、布地上に印刷するためのシステムを説明するものであり、このシステムは印刷流体を含有する印刷流体源を含んでおり、この印刷流体は少なくともキャリア流体を含み、そして加熱調節可能な転写ローラーが光イメージングプレートから所定量の印刷流体を受け取って、キャリア流体がまだ印刷流体中存在している間に、その印刷流体を布地へと転写する。
【0013】
本明細書はさらに、加熱装置を含んでいる転写ローラーを説明するものであり、ここで転写ローラーは所定量の印刷流体を光イメージングプレート(PIP)から受け取り、そしてその印刷流体を布地へと転写する一方で、印刷流体内のキャリア流体が蒸発することを防止する。
【0014】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用するところでは、用語「湿潤印刷流体」は、あるレベルのキャリア流体を含有し、かくして布地の繊維内へと吸収されてよい印刷流体として理解されることを意図している。
【0015】
以下の詳細な説明においては、説明上の目的で、本システムおよび方法の完全な理解を提供するため、数多くの具体的な詳細事項が記載される。しかしながら、本装置、システム、および方法は、そうした具体的な詳細事項なしに実施されてよいことが、当業者には明らかであろう。明細書中における「例」または類似の用語に対する参照は、その例に関して記載された具体的な特徴、構成、または特性が記載通りに含まれていること、しかし他の例には含まれていてもよく、含まれていなくともよいことを意味している。
【0016】
さて添付図面を参照すると、
図1は本願に記載された原理の例に従う、液体電子写真(LEP)印刷装置(100)のブロック図である。このLEP印刷装置(100)は少なくとも、液状印刷流体を受け取る光イメージングプレート(PIP)(105)およびPIP(105)からの液体を布地基材(115)へと転写する転写ローラー(110)を含んでいてよい。
【0017】
LEP印刷装置(100)はさらに、PIP(105)および転写ローラー(110)に加えて、多数の印刷流体現像器、PIP(105)上に潜像を形成するための帯電装置、およびローラーを含んでいてよい。動作の間に、印刷流体の供給源が多数の印刷流体現像器に与えられる。印刷流体現像器は、印刷流体をPIP(105)の表面に提供する。PIP(105)は前もって帯電装置によって帯電されており、PIP(105)上に潜像が形成される。印刷流体は多数の帯電粒子を含んでいるから、PIP(105)上に形成された帯電部分は、帯電粒子をそこに引き付け、それによって潜像をPIP(105)上の印刷流体イメージへと変化させる。このことは、PIP(105)上に形成されるイメージの一部として異なる色を含んでいてよい、印刷流体現像器のそれぞれについて行われてよい。PIP(105)は、PIP(105)上に生成されたイメージを転写ローラー(110)に転写してよい。転写ローラー(110)は次いで、圧胴ローラーの助けを借りて印刷流体を転写し、基材上にイメージを形成する。
【0018】
動作の間に、紙基材上にイメージを印刷するため、転写ローラー(110)は加熱される。この場合、転写ローラー(110)は100℃から150℃の範囲の温度に加熱される。これは、イソパラフィン系炭化水素のようなキャリア液体を蒸発させるために行われる。この方法は紙について有効であるが、その理由は、キャリア液体の蒸発が印刷流体を粘着性のものとし、そして紙のような比較的冷たい基材の表面にくっつくようにするからである。しかしながら、この方法は布地基材(115)については有効でない。むしろ、キャリア流体がない場合には、粘着性の印刷流体は布地の上部に置かれたままになる。布地が使用されまたはその他により取り扱われるに際し、印刷流体は剥落または剥離して、イメージのゆがみや、印刷製品に対する不満を生じうる。
【0019】
これを是正するために、転写ローラー(110)は100℃から150℃に加熱されるのではなく、代わりに単に70℃から95℃へと加熱される。この例において、キャリア流体またはキャリア流体の少なくとも大部分は残され、比較的湿潤状態で布地に適用される。この比較的より湿潤状態の印刷流体は布地の繊維内へと浸透してよく、それによって枚葉紙給紙式および連続紙給紙式のLEP印刷装置(100)上で、直接にテキスタイル印刷を行うことが可能となる。1つの例では、印刷流体を布地または他のテキスタイル基材へと転写する前に、0から10パーセントのキャリア流体が転写ローラー(110)上で蒸発される。幾つかの例においては、印刷流体中のキャリア流体の量は、いろいろの特徴の中でも、布地の多孔度、布地の材料の種類、および布地の吸収性といった、布地の特徴に基づいて変更されてよい。
【0020】
ある例においては、LEP印刷装置(100)は、印刷を行う基材の種類に基づいて、転写ローラー(110)の温度を調節してよい。従って、ユーザーが印刷を行う印刷基材の種類(すなわち、紙基材の一般的な種類、紙基材の特定の種類、布地基材(115)の一般的な種類、および/または布地基材(115)の特定の種類)を示すことができ、そして転写ローラー(110)の温度が印刷基材のその種類に適合するよう自動的に設定されうるように、ユーザーはLEP印刷装置(100)とインタフェース(相互作用)してよい。布地基材(115)の場合には、LEP印刷装置(100)はさらに、布地基材(115)内に最適なイメージを生成するため、加熱された転写ローラー(110)によって蒸発されないキャリア流体の量を調節しうるように、ユーザーが印刷を行う布地基材(115)の異なる種類を選択することを許容してよい。
【0021】
LEP印刷装置(100)は、ある例においては、他の周辺装置およびデバイスを含んでいてよい。ある例においては、LEP印刷装置(100)は少なくとも、印刷ジョブを記述しているデータを受け取り、その印刷ジョブを実行するためのプロセッサを含んでいてよい。ある例においては、LEP印刷装置(100)は少なくとも、本願に記載するLEP印刷装置(100)の機能性を成立させるために、印刷ジョブならびにプロセッサによって実行される他のコンピュータ使用可能なプログラムコードを記述しているデータを保持するための、データ記憶装置を含んでいてよい。
【0022】
ある例においては、LEP印刷装置(100)は、LEP印刷装置(100)によって実行される多数の印刷ジョブを少なくとも提供し保持する、コンピューティング装置と通信可能に結合されていてよい。電子デバイスの例には、数ある電子デバイスの中でも特に、サーバー、デスクトップコンピューター、ラップトップコンピューター、携帯情報端末(PDA)、モバイル端末、スマートフォン、ゲームシステム、およびタブレットが含まれる。
【0023】
LEP印刷装置(100)は、スタンドアロン型ハードウェア、モバイル用途、コンピューティングネットワーク経由、またはこれらの組み合わせを含む、任意のデータ処理の文脈において使用されてよい。また、LEP印刷装置(100)は、コンピューティングネットワーク、パブリッククラウドネイティブ、プライベートクラウドネットワーク、ハイブリッドクラウドネットワーク、他の形態のネットワーク、またはこれらの組み合わせにおいて使用されてよい。1つの例では、LEP印刷装置(100)によって提供される方法は、例えば第三者により、ネットワーク上のサービスとして提供される。この例においては、サービスは例えば、ネットワーク経由の印刷サービスを含んでいてよい。
【0024】
所望とする機能性を達成するために、LEP印刷装置(100)および/またはLEP印刷装置(100)に関連付けられたコンピューティングデバイスは、種々のハードウェア部品を含んでいる。そうしたハードウェア部品の中には、多数のプロセッサ、多数のデータ記憶装置、多数の周辺機器アダプター、および多数のネットワークアダプターがあってよい。これらのハードウェア部品は、多数のバスおよび/またはネットワーク接続の使用を通じて、相互接続してよい。1つの例では、プロセッサ、データ記憶装置、周辺機器アダプター、およびネットワークアダプターは、バスを経由して通信可能に結合されてよい。
【0025】
プロセッサは、データ記憶装置から実行可能なコードを読み出し、そして実行可能なコードを実行するための、ハードウェアアーキテクチャを含んでいてよい。実行可能なコードは、プロセッサによって実行された場合に、プロセッサが少なくとも、本願に記載の本明細書の方法に従って、転写ローラー(110)についての所定の温度を使用して布地基材(115)上に印刷を行うよう、LEP印刷装置(100)に指示する機能性を実施するようにさせてよい。コードを実行する過程において、プロセッサは残りの多数のハードウェアユニットから入力を受け取り、またそれらに出力を提供してよい。
【0026】
LEP印刷装置(100)内またはLEP印刷装置(100)と通信可能に結合されたコンピューティング装置のいずれかに配置されたデータ記憶装置は、プロセッサまたは他の処理装置によって実行される、実行可能なプログラムコードのようなデータを記憶していてよい。データ記憶装置は、少なくとも本願に記載の機能性を実施するために、プロセッサが実行する多数のアプリケーションを表すコンピュータコードを特定的に記憶していてよい。
【0027】
データ記憶装置は、揮発性メモリおよび不揮発性メモリを含む、様々な種類のメモリモジュールを含んでいてよい。例えば、この例のデータ記憶装置には、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、およびハードディスクドライブ(HDD)メモリが含まれる。多くの他の種類のメモリもまた使用されてよく、そして本明細書は、本願に記載の原理の特定の用例に適するように、データ記憶装置において多くの様々な種類(単数または複数)のメモリを使用することを考慮している。特定の例においては、データ記憶装置中の異なる種類のメモリを、異なるデータ記憶のニーズに対して使用してよい。例えば、特定の例において、プロセッサはリードオンリーメモリ(ROM)からブートされてよく、ハードディスクドライブ(HDD)メモリに不揮発性記憶を保持してよく、そしてランダムアクセスメモリ(RAM)に記憶されたプログラムコードを実行してよい。
【0028】
一般に、データ記憶装置は、特に、コンピュータ可読媒体、コンピュータ可読記憶媒体、または非一時的なコンピュータ可読媒体を含んでいてよい。例えば、データ記憶装置は、限定されるものではないが、電子的、磁気的、光学的、電磁的、赤外的、または半導体的なシステム、装置、またはデバイス、またはこれらの任意の適切な組み合わせであってよい。コンピュータ可読記憶媒体のより特定的な例には、例えば以下のものが含まれてよい:多数のワイヤを有する電気的接続、可搬性のコンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、消去可能なプログラマブルリードオンリーメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、可搬性コンパクトディスクリードオンリーメモリ(CD-ROM)、光学的記憶デバイス、磁気的記憶デバイス、またはこれらの任意の適切な組み合わせ。この文書の文脈においては、コンピュータ可読記憶媒体は、命令実行システム、装置、またはデバイスによって、またはそれと関連して使用するための、コンピュータで使用可能なプログラムコードを格納または記憶することのできる、任意の有形な媒体であってよい。別の例においては、コンピュータ可読記憶媒体は、命令実行システム、装置、またはデバイスによって、またはそれと関連して使用するためのプログラムを格納または記憶することのできる、任意の非一時的な媒体であってよい。
【0029】
LEP印刷装置(100)および/またはLEP印刷装置(100)と通信可能に結合されたコンピューティング装置にあるハードウェアアダプターは、プロセッサが、LEP印刷装置(100)および/またはLEP印刷装置(100)と通信可能に結合されたコンピューティング装置の内部および外部の種々の他のハードウェア要素とインタフェースすることを可能にする。例えば、周辺機器アダプターは、例えばディスプレイ装置、マウス、またはキーボードといった入力/出力デバイスに対するインタフェースを提供してよい。周辺機器アダプターはまた、外部記憶装置のような他の外部デバイス、例えばサーバー、スイッチおよびルーター、クライアントデバイス、他の種類のコンピューティング装置、およびこれらの組み合わせといった、多数のネットワークデバイスに対するアクセスを提供してよい。
【0030】
ディスプレイ装置は、LEP印刷装置(100)のユーザーが、布地基材(115)上への印刷を行う機能性と相互作用し、実施することを許容するように提供されてよい。周辺機器アダプターはまた、プロセッサと、ディスプレイ装置、プリンター、または他の基材出力装置との間にインタフェースを生成してよい。ネットワークアダプターは、例えばネットワーク内部において他のコンピューティング装置に対するインタフェースを提供してよく、それによってLEP印刷装置(100)とネットワーク内に位置する他のデバイスとの間でのデータ伝送を可能にする。
【0031】
LEP印刷装置(100)は、それ自体がディスプレイ装置を含んでいてよい。ディスプレイ装置はプロセッサによって実行された場合に、データ記憶装置に記憶された多数のアプリケーションを表す実行可能なプログラムコードに関連して、ディスプレイ装置上に多数のグラフィカルユーザーインタフェース(GUI)を表示する。GUIは例えば、印刷のための基材選択肢のような、印刷オプションを表示してよい。加えて、ディスプレイ装置のGUI上でいくつもの対話的ジェスチャーを行うことを介して、ユーザーは印刷オプションまたは選好を選択してよく、そしてそうした選択された印刷オプションまたは選好に従って、LEP印刷装置(100)が布地基材(115)上に印刷を行うようにしてよい。ディスプレイ装置の例には、数あるディスプレイ装置の中でも、コンピュータの画面、ラップトップの画面、モバイル端末の画面、携帯情報端末(PDA)の画面、およびタブレットの画面が含まれる。
【0032】
ある例においては、LEP印刷装置(100)はさらに、所定量の印刷された布地基材(115)を蓄積する、少なくとも1つのアキュムレータを含んでいてよい。アキュムレータは、印刷された布地基材(115)をアキュムレータ内に蓄積する前に加熱および/または乾燥する、加熱および/または他の乾燥装置を含んでいてよい。加熱および/または乾燥装置の例には、数ある他の印刷流体乾燥または加熱装置の中でも、赤外線放出装置、電磁熱源、加熱ランプ、エアナイフが含まれていてよい。アキュムレータは、布地基材(115)の印刷可能な側を反転させてそれを2つのLEP印刷装置(100)の2番目へと送出する前に、その中に所定量の布地基材(115)を蓄積するために、2つの別個のLEP印刷装置(100)の間に置かれていてよい。
【0033】
ある例においては、転写ローラー(110)は印刷流体を70℃から95℃の間の温度に加熱してよい。ある例においては、転写ローラー(110)は印刷流体を95℃の温度に加熱してよい。これらの例においては、任意の種類の加熱装置を転写ローラー(110)に関して使用してよい。ある例においては、加熱装置は転写ローラー(110)の内側にあってよく、転写ローラー(110)の外側にあってよく、またはこれらの組み合わせであってよい。しかしながら、本願において記載するように、LEP印刷装置(100)は布地基材(115)上に印刷を行うものであるから、温度は低減されてよい。
【0034】
図2は本願に記載された原理の例に従う、布地(230)上に印刷を行うためのシステム(200)のブロック図である。システム(200)は、印刷流体(210)を含有する印刷流体源(205)、少なくともキャリア流体(215)を含有する印刷流体(210)、および所定量の印刷流体(210)を光イメージングプレートPIP(220)から受け取り、そしてキャリア流体(215)がまだ印刷流体(210)中に存在している間にその印刷流体(210)を布地(230)へと転写するための、加熱調節可能な転写ローラー(225)を含んでいてよい。上述したように、このシステム(200)は、幾つかの例においては、多数の印刷流体現像器、およびシステム(200)を通る布地(230)の移動を容易にすると共に加熱調節可能な転写ローラー(225)およびPIP(220)のような他のローラーと相互作用する他のローラーをさらに含んでいる。
【0035】
ここでも、ある例においては、システム(200)はさらに、所定量の布地を内部に蓄積するために使用されるアキュムレータを含んでいてよい。ある例においては、アキュムレータはさらに、システム(200)によって行われる印刷プロセスから湿潤状態とされた、布地を加熱するための熱源を含んでいる。実際のところ、加熱調節可能な転写ローラー(225)は70℃から95℃の辺りの温度に加熱されるから、殆ど全部のキャリア流体(215)が、布地(230)に適用された印刷流体(210)中に残存する。アキュムレータ内部の加熱装置は印刷流体(210)中のキャリア流体(215)を乾燥させ、印刷流体(210)の残りの部分が布地(230)の繊維内部に浸透して残存することを許容する。この場合にも、アキュムレータはまた多数のローラーを含んでいてよく、それらは布地(230)を他の側に反転させて、アキュムレータの下流側にあるシステム(200)上で印刷されるようにする。
【0036】
本願に記載の印刷流体(210)は多数の異なる成分を含んでいてよく、その1つは本願で記載するキャリア流体(215)である。幾つかの例においては、印刷流体(210)はさらに、樹脂中に取り込まれた顔料および電荷コンダクタを含んでいてよい。印刷流体(210)は布地(230)に印刷され、その中に残存しているキャリア流体(215)で湿潤されており、そして少なくとも、樹脂中に取り込まれた顔料が布地(230)の繊維内へと染み込むことを許容する。印刷流体(210)がアキュムレータにある熱源によって乾燥された場合、キャリア流体(215)は蒸発によって除去され、少なくとも顔料および樹脂が、布地(230)の繊維内部に浸透されて残存される。その結果として、本願に記載の印刷プロセスによって画定されるイメージは、布地(230)から剥落または剥離することはない。
【0037】
図3は、本願に記載された原理の例に従う、転写ローラー(300)のブロック図である。転写ローラー(300)は、湿潤印刷流体(315)を布地(310)に適用する前に転写ローラー(300)を加熱するための、少なくとも1つの加熱装置(305)を含んでいてよい。本願に記載するように、湿潤印刷流体(315)はその中に、元々のキャリア流体のかなりの部分を含んでいる。湿潤印刷流体(315)中に残存しているキャリア流体のこの割合が、布地(310)の繊維内へと湿潤印刷流体(315)が吸収され、またはその他によって取り込まれることを許容する。転写ローラー(300)の温度は加熱装置(305)によって70℃から95℃の間に維持されてよく、キャリア流体の蒸発される割合が0から10パーセントを超えることを防止する。
【0038】
図4は、本願に記載された原理の例に従う、液体電子写真(LEP)印刷装置(400)のダイヤグラムである。上述したように、
図4は、PIP(407)の周囲に配向された多数の印刷流体現像器(405)のレイアウトを示している。印刷流体現像器(405)の各々は、PIP(407)の周囲に異なる配向をされていてよく、各々の印刷流体現像器(405)の向きは垂直から水平まで変化してよい。
【0039】
印刷流体現像器(405)に関して説明した他の要素と共に、システム(400)はさらに、PIP(407)、帯電装置(410)、光イメージング装置(415)、転写ローラー(420)、圧胴(525)、放電装置(530)、およびクリーニングステーション(435)を含んでいてよい。印刷流体現像器(405)はPIP(407)に隣接して配置され、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、およびその他といった、種々の色に対応していてよい。帯電装置(410)は静電電荷を、PIP(407)の外側表面のような光導電性の表面に印加する。レーザーのような光イメージング装置(415)は、PIP(407)上の選択された領域を、所望とする印刷イメージのパターンでもって露光し、露光されたPIP(407)の選択された領域上の電荷を消散させる。
【0040】
例えば、PIP(407)上の放電された領域は、印刷されるイメージに対応する静電イメージを形成する。印刷流体の薄い層が、その上に潜像が形成されるようにパターンを有するPIP(407)に対して、種々の印刷流体現像器(405)を使用して適用される。印刷流体はPIP(407)の放電された領域に対して、PIP(407)上の印刷流体の層として付着され、そして静電潜像をトナーイメージへと現像し、このトナーイメージは光導電性部材(505)から転写ローラー(420)へと転写される。次いで、トナーイメージは、布地(440)が転写ローラー(420)と圧胴(425)の間に形成された圧胴ニップ(445)を通って搬送されるに際して、転写ローラー(420)から布地(440)へと転写される。放電装置(430)は残存する電荷を光導電性部材(407)から取り除く。クリーニングステーション(435)は、新たなイメージを現像しまたは次のトナー色プレーンを適用するのに備えて、トナー残渣を除去する。
【0041】
また転写ローラー(420)を70℃から95℃の間に加熱するために、加熱要素(450)を転写ローラー(420)と関連させてもよい。上述したように、このレベルの加熱は印刷流体内のキャリア流体の大部分の蒸発を生じさせるものではなく、印刷流体が布地(440)へと湿潤状態で適用されるようにする。このことは印刷流体が布地(440)の繊維内へと浸透するようにし、それによって乾燥後にイメージが布地(440)に残存するようにする。
【0042】
本願では本システムおよび方法の側面について、本願に記載の原理の例に従う方法、装置(システム)およびコンピュータプログラム製品の流れ図の説明および/またはブロック図を参照して説明している。流れ図の説明およびブロック図の各々のブロック、および流れ図の説明およびブロック図のブロックの組み合わせは、コンピュータで利用可能なプログラムコードによって実施されてよい。コンピュータで利用可能なプログラムコードは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、またはマシンを生成する他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサに提供されて、コンピュータで利用可能なプログラムコードが、例えばLEP印刷装置または他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサを介して実行された場合に、流れ図および/または ブロック図の1つのブロックまたは複数のブロックに特定された機能または動作を実施するようにしてよい。1つの例では、コンピュータで利用可能なプログラムコードは、コンピュータ可読記憶媒体中に実施(具体化)されていてよく;このコンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータプログラム製品の一部である。1つの例では、コンピュータ可読記憶媒体は、非一時的なコンピュータ可読媒体である。
【0043】
明細書および図面では、約70℃から95℃に加熱される転写ローラーを使用して、布地基材上にイメージを印刷するLEP印刷装置を説明した。この低減された温度は、印刷流体中にある所定量のキャリア流体の蒸発を減少させ、印刷流体が、そして特に印刷流体中の顔料が、布地基材の繊維内へと浸透することを許容する。このことは、続いて乾燥される印刷流体が、布地基材から剥落または剥離することを低減または排除する。加えて、転写ローラーの温度の低減および/または増大は、LEPを紙基材または布地基材について選択的に使用することを可能にする。加えて、印刷流体が布地の繊維内へと浸透されることから、イメージが布地基材の表面上で硬化することはなく、布地における相対的により大きな可撓性が得られる。さらに、本願に記載のプロセスおよび装置は、布地基材へとイメージを固定するための事前転写媒体の使用を排除し、それによってコストが削減される。
【0044】
以上の説明は、記載した原理の例を説明および記述するために提示されている。この説明は徹底的であることを意図したものではなく、またこれらの原理を開示された任意の特定の形態に限定することを意図したものでもない。上記の教示に照らして、多くの修正および変形が可能である。