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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】ステント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/88 20060101AFI20220322BHJP
【FI】
A61F2/88
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020509899
(86)(22)【出願日】2019-03-14
(86)【国際出願番号】 JP2019010562
(87)【国際公開番号】W WO2019188345
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】P 2018068342
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】599045903
【氏名又は名称】学校法人 久留米大学
(73)【特許権者】
【識別番号】596183321
【氏名又は名称】メディキット株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000110147
【氏名又は名称】トクセン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】福本 義弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 保臣
(72)【発明者】
【氏名】梅田 政裕
(72)【発明者】
【氏名】南 広祐
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-055330(JP,A)
【文献】特表2006-521187(JP,A)
【文献】特表2002-521088(JP,A)
【文献】特表2005-522265(JP,A)
【文献】米国特許第05116365(US,A)
【文献】特開昭63-238872(JP,A)
【文献】国際公開第2010/032643(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/88
A61F 2/90
A61F 2/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の可撓管の内部を通して送達され、生体内管腔内に留置された状態で前記生体内管腔の内壁を内側からサポートする形状のステントであって、
長手方向に引っ張ることで前記可撓管の内部に沿った細長い形状をとり、放すことで前記生体内管腔の内壁を内側からサポート可能なサポート形状をとるように構成され、
回収用のフック部を備え、前記フック部を回収用スネアで引っ掛けて前記可撓管の内部へ引き込むことで、前記ステントは前記サポート形状から前記細長い形状に変形しながら前記可撓管の内部を後退し、生体外に回収可能であり、
前記フック部は、前記ステントの一端に形成されており、
前記サポート形状をとった状態で、
前記フック部から長手方向に第1のパルス形状で延びる、長手方向端部から見て略半円形状の第1のパルス形状部と、
前記第1のパルス形状部の、前記フック部と反対側の端に形成された折り返し部と、
前記折り返し部から前記フック部に向かって前記第1のパルス形状と略面対称な第2のパルス形状で延び、前記フック部に連結された第2のパルス形状部と、を備えた形状となり、
円周方向で近接するパルス形状部同士が、交差した状態で円周方向にスライド可能に係合していることを特徴とするステント。
【請求項2】
中空の可撓管の内部を通して送達され、生体内管腔内に留置された状態で前記生体内管腔の内壁を内側からサポートする形状のステントであって、
長手方向に引っ張ることで前記可撓管の内部に沿った細長い形状をとり、放すことで前記生体内管腔の内壁を内側からサポート可能なサポート形状をとるように構成され、
回収用のフック部を備え、前記フック部を回収用スネアで引っ掛けて前記可撓管の内部へ引き込むことで、前記ステントは前記サポート形状から前記細長い形状に変形しながら前記可撓管の内部を後退し、生体外に回収可能であり、
前記フック部は、前記ステントの一端に形成されており、
前記サポート形状をとった状態で、
前記フック部から長手方向に第1のジグザグ形状で延びる、長手方向端部から見て略半円形状の第1のジグザグ形状部と、
前記第1のジグザグ形状部の、前記フック部と反対側の端に形成された折り返し部と、
前記折り返し部から前記フック部に向かって前記第1のジグザグ形状と略面対称な第2のジグザグ形状で延び、前記フック部に連結された第2のジグザグ形状部と、を備えた形状となり、
円周方向で近接するジグザグ形状部同士が、交差した状態で円周方向にスライド可能に係合していることを特徴とするステント。
【請求項3】
1本の形状記憶合金製の線材からなり、
体温を下回る温度まで冷却されたときに前記可撓管の内部に沿った前記細長い形状をとり、体温まで加熱されたときに前記生体内管腔の内壁を内側からサポート可能な前記サポート形状をとるように構成された、請求項1又は2に記載のステント。
【請求項4】
前記フック部は、前記ステントが前記サポート形状となった際に、前記ステントの外周よりも径方向内側に位置する、請求項1~のいずれか1項に記載のステント。
【請求項5】
前記フック部は、2つの湾曲部を設けた形状であり、前記2つの湾曲部は、長手方向において互いに逆方向に湾曲している、請求項1~4のいずれか1項に記載のステント。
【請求項6】
前記サポート形状をとるときの前記ステントの外径が、前記生体内管腔である大動脈の内径とほぼ同じ、30~55mmであるとともに、長手方向で変化し、
前記線材の線径が0.3~0.7mmであり、
前記線材の引張り強さが900~1500MPaであり、
前記線材の材質が、ニッケルチタン合金、ステンレス鋼、チタン及びチタン合金のうちのいずれか一つである、請求項3に記載のステント。
【請求項7】
前記線材の表面に樹脂層を備える、請求項3又は6に記載のステント。
【請求項8】
前記樹脂層の厚みが0.01~3.00mmである、請求項に記載のステント。
【請求項9】
前記樹脂層の材質が、PU(ポリウレタン)、PA(ポリアミド)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)及びフッ素樹脂のうちのいずれか一つである、請求項又はに記載のステント。
【請求項10】
表面に薬剤が塗布される、請求項1~のいずれか1項に記載のステント。
【請求項11】
前記薬剤が、生理活性物質である、請求項10に記載のステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントに関する。さらに詳細には、本発明は、生体内管腔の治療に用いられる医療用のステントに関する。
【背景技術】
【0002】
大動脈解離は、突然死する疾患であり、病院までたどり着くことができた場合は、治療のほとんどが急を要する緊急手術となる。手術手技も高難度であり、緊急性が高いため、医師や患者にとってとてもストレスが大きい疾患である。従来、例えば大動脈解離等の治療方法として、血管等の生体内管腔内に金属製のステントを留置する方法が知られている(例えば、特許文献1等を参照)。ステントを用いた治療は、開腹手術が不要であるため、低侵襲であるというメリットがある。
しかし、ステントを血管内に長期間留置した場合には、ステントに血栓が付着し、それによって血栓閉塞を引き起こす虞がある。また、治療部位が完治した後にも、役目を終えたステントが異物として体内に残ってしまい、それによって異物反応を引き起こす虞もある。
【0003】
そこで、従来、例えば特許文献2等に開示されているような、生体内に留置した後に数年で溶けてなくなる生体吸収性ステントが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2008-514370号公報
【文献】特開2011-206114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、生体吸収性ステントは、金属製のステントと比べて、強度、厚み(太さ)等の点で課題がある。すなわち、厚み(太さ)が大きくなると、強度は保たれるが、血栓が付着しやすくなる。一方、厚み(太さ)が小さくなると、強度が弱くなり、破損の虞が生じる。そして、このように強度が弱くなると、生体内管腔の内壁を内側から十分にサポートすることができない。
【0006】
そこで、本発明は、大動脈解離等の治療として応急処置に最適な、生体内管腔の内壁を内側から十分にサポートすることができるステントであって、役目を終えた後に生体外に簡単に回収することが可能なステントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明に係るステントの第1の構成は、
(1)中空の可撓管の内部を通して送達され、生体内管腔内に留置された状態で前記生体内管腔の内壁を内側からサポートする形状のステントであって、
長手方向に引っ張ることで前記可撓管の内部に沿った細長い形状をとり、放すことで前記生体内管腔の内壁を内側からサポート可能なサポート形状をとるように構成され、
回収用のフック部を備え、前記フック部を回収用スネアで引っ掛けて前記可撓管の内部へ引き込むことで、前記ステントは前記サポート形状から前記細長い形状に変形しながら前記可撓管の内部を後退し、生体外に回収可能であり、
前記フック部は、前記ステントの一端に形成されており、
前記サポート形状をとった状態で、
前記フック部から長手方向に第1のパルス形状で延びる、長手方向端部から見て略半円形状の第1のパルス形状部と、
前記第1のパルス形状部の、前記フック部と反対側の端に形成された折り返し部と、
前記折り返し部から前記フック部に向かって前記第1のパルス形状と略面対称な第2のパルス形状で延び、前記フック部に連結された第2のパルス形状部と、を備えた形状となり、
円周方向で近接するパルス形状部同士が、交差した状態で円周方向にスライド可能に係合していることを特徴とする。
【0008】
本発明のステントの上記(1)の構成は、次のような作用効果を奏する。すなわち、長手方向に引っ張ることで可撓管の内部に沿った細長い形状をとるように構成されているため、可撓管の内部を通過しやすく、治療部位へ送達されやすい。また、治療部位へ送達された後、放すことで生体内管腔の内壁を内側からサポート可能なサポート形状をとるように構成されているため、血管内壁の内側からのサポート等、ステント本来の役割を果たすことができる。また、上記のように、長手方向に引っ張ることで可撓管の内部に沿った細長い形状をとるように構成されているため、生体内管腔内に留置された状態で生体内管腔の内壁を内側からサポートしているサポート形状のステントのフック部を回収用スネアで引っ掛けて可撓管の内部へ引き込むことで、生体外に簡単に回収することができる。
このように、本発明のステントの上記(1)の構成によれば、生体内管腔の内壁を内側から十分にサポートすることができ、かつ、役目を終えた後に生体外に簡単に回収することができる。
また、前記フック部は、前記ステントの一端に形成されており、
前記サポート形状をとった状態で、
前記フック部から長手方向に第1のパルス形状で延びる、長手方向端部から見て略半円形状の第1のパルス形状部と、
前記第1のパルス形状部の、前記フック部と反対側の端に形成された折り返し部と、
前記折り返し部から前記フック部に向かって前記第1のパルス形状と略面対称な第2のパルス形状で延び、前記フック部に連結された第2のパルス形状部と、を備えた形状となるため、生体内管腔内の治療部位に留置する際、あるいは留置した後に、長手方向に横倒れしにくい。また、ステントを構成する線材の方向が一方向ではないため、生体内管腔内で滑りにくく、位置ずれを起こしにくい。さらに、ステントを構成する線材の半円形状部が円周方向に延び、互いに平行であるため、外周からの圧力で潰れにくい。その結果、生体内管腔の内壁を内側から確実にサポートすることが可能となる。
さらに、円周方向で近接するパルス形状部同士が、交差した状態で円周方向にスライド可能に係合(交差係合)しているため、2つのパルス形状部が長手方向逆向きに互いにずれることを防止して、ステントを円筒形状に保持することができる。その結果、生体内管腔の内壁を内側からさらに確実にサポートすることが可能となる。そして、このように、円周方向で近接するパルス形状部同士を、溶着ではなく交差係合させることで、ステントの外径を生体内管腔の内径に合わせることができるので、生体内管腔の内壁を内側からしっかりとサポートすることが可能となる。特に、ステントの外径よりも生体内管腔の内径が小さい場合には、交差係合部が生体内管腔の内壁に食い込み気味となることでステントにテンションがかかり、生体内管腔の内壁を内側からしっかりとサポートすることができる。
【0009】
また、本発明に係るステントの第2の構成は、
(2)中空の可撓管の内部を通して送達され、生体内管腔内に留置された状態で前記生体内管腔の内壁を内側からサポートする形状のステントであって、
長手方向に引っ張ることで前記可撓管の内部に沿った細長い形状をとり、放すことで前記生体内管腔の内壁を内側からサポート可能なサポート形状をとるように構成され、
回収用のフック部を備え、前記フック部を回収用スネアで引っ掛けて前記可撓管の内部へ引き込むことで、前記ステントは前記サポート形状から前記細長い形状に変形しながら前記可撓管の内部を後退し、生体外に回収可能であり、
前記フック部は、前記ステントの一端に形成されており、
前記サポート形状をとった状態で、
前記フック部から長手方向に第1のジグザグ形状で延びる、長手方向端部から見て略半円形状の第1のジグザグ形状部と、
前記第1のジグザグ形状部の、前記フック部と反対側の端に形成された折り返し部と、
前記折り返し部から前記フック部に向かって前記第1のジグザグ形状と略面対称な第2のジグザグ形状で延び、前記フック部に連結された第2のジグザグ形状部と、を備えた形状となり、
円周方向で近接するジグザグ形状部同士が、交差した状態で円周方向にスライド可能に係合していることを特徴とする。
【0010】
本発明のステントの上記(2)の構成は、次のような作用効果を奏する。すなわち、長手方向に引っ張ることで可撓管の内部に沿った細長い形状をとるように構成されているため、可撓管の内部を通過しやすく、治療部位へ送達されやすい。また、治療部位へ送達された後、放すことで生体内管腔の内壁を内側からサポート可能なサポート形状をとるように構成されているため、血管内壁の内側からのサポート等、ステント本来の役割を果たすことができる。また、上記のように、長手方向に引っ張ることで可撓管の内部に沿った細長い形状をとるように構成されているため、生体内管腔内に留置された状態で生体内管腔の内壁を内側からサポートしているサポート形状のステントのフック部を回収用スネアで引っ掛けて可撓管の内部へ引き込むことで、生体外に簡単に回収することができる。
このように、本発明のステントの上記(1)の構成によれば、生体内管腔の内壁を内側から十分にサポートすることができ、かつ、役目を終えた後に生体外に簡単に回収することができる。
また、前記フック部は、前記ステントの一端に形成されており、
前記サポート形状をとった状態で、
前記フック部から長手方向に第1のジグザグ形状で延びる、長手方向端部から見て略半円形状の第1のジグザグ形状部と、
前記第1のジグザグ形状部の、前記フック部と反対側の端に形成された折り返し部と、
前記折り返し部から前記フック部に向かって前記第1のジグザグ形状と略面対称な第2のジグザグ形状で延び、前記フック部に連結された第2のジグザグ形状部と、を備えた形状となるため、コイル形状のものと比較して、生体内管腔内の治療部位に留置する際、あるいは留置した後に、長手方向に横倒れしにくい。また、ステントを構成する線材の方向が一方向ではないため、生体内管腔内で滑りにくく、位置ずれを起こしにくい。さらに、ステントが長手方向にジグザグ形状で延びているため、上記(1)の構成のものよりもさらに横倒れしにくい。その結果、生体内管腔の内壁を内側から確実にサポートすることが可能となる。
さらに、円周方向で近接するジグザグ形状部同士が、交差した状態で円周方向にスライド可能に係合(交差係合)しているため、2つのジグザグ形状部が長手方向逆向きに互いにずれることを防止して、ステントを円筒形状に保持することができる。その結果、生体内管腔の内壁を内側からさらに確実にサポートすることが可能となる。そして、このように、円周方向で近接するジグザグ形状部同士を、溶着ではなく交差係合させることで、ステントの外径を生体内管腔の内径に合わせることができるので、生体内管腔の内壁を内側からしっかりとサポートすることが可能となる。特に、ステントの外径よりも生体内管腔の内径が小さい場合には、交差係合部が生体内管腔の内壁に食い込み気味となることでステントにテンションがかかり、生体内管腔の内壁を内側からしっかりとサポートすることができる。
【0015】
本発明のステントの上記(1)又は(2)の構成においては、以下の(3)~(11)のような構成にすることが好ましい。
【0016】
(3)1本の形状記憶合金製の線材からなり、
体温を下回る温度まで冷却されたときに前記可撓管の内部に沿った前記細長い形状をとり、体温まで加熱されたときに前記生体内管腔の内壁を内側からサポート可能な前記サポート形状をとるように構成されている。上記(3)の好ましい構成によれば、形状記憶合金製であるため、厚み(太さ)を小さくしても、十分な強度を維持することができる。そして、このように厚み(太さ)を小さくすることにより、血栓が付着しにくくなる。また、体温を下回る温度まで冷却されたときに可撓管の内部に沿った細長い形状をとるように構成されているため、可撓管の内部を通過しやすく、治療部位へ送達されやすい。また、治療部位へ送達された後、体温まで加熱されたときに生体内管腔の内壁を内側からサポート可能なサポート形状をとるように構成されているため、血管内壁の内側からのサポート等、ステント本来の役割を果たすことができる。また、上記のように、体温を下回る温度まで冷却されたときに可撓管の内部に沿った細長い形状をとるように構成されているため、生体内管腔内に留置された状態で生体内管腔の内壁を内側からサポートしているサポート形状のステントのフック部を回収用スネアで引っ掛けて可撓管の内部へ引き込むことで、生体外に簡単に回収することができる。
【0017】
(4)前記フック部は、前記ステントが前記サポート形状となった際に、前記ステントの外周よりも径方向内側に位置する。上記(4)の好ましい構成によれば、ステントがサポート形状となった際に、フック部が径方向内側に位置するようにすることにより、治療中にフック部によって生体内管腔の内壁を傷つけてしまうことはない。
(5)前記フック部は、2つの湾曲部を設けた形状であり、前記2つの湾曲部は、長手方向において互いに逆方向に湾曲している。上記(5)の好ましい構成によれば、ステントを太もも側、鎖骨側のどちらの方向から回収する場合にも、容易に回収することができる。
【0018】
(6)前記サポート形状をとるときの前記ステントの外径が、前記生体内管腔である大動脈の内径とほぼ同じ、30~55mmであるとともに、長手方向で変化し、
前記線材の線径が0.3~0.7mmであり、
前記線材の引張り強さが900~1500MPaであり、
前記線材の材質が、ニッケルチタン合金、ステンレス鋼、チタン及びチタン合金のうちのいずれか一つである。上記(6)の好ましい構成によれば、サポート形状をとるときのステントの外径が、生体内管腔である大動脈の内径とほぼ同じ、30~55mmであることにより、大動脈解離の治療のために大動脈内に留置した際に、血管内壁に適切なテンションをかけることができ、過度なテンションがかかることはないので、大動脈解離のエントリー部の治癒を適切に促進させることができる。また、サポート形状をとるときのステントの外径が、長手方向で変化することにより、留置する部位の内径が長手方向で変化する場合にも、留置部位の内径の変化に合わせたステントの外径とすることができ、適切な治療を行うことができる。例えば、部分的に生体内管腔の内径が大きくなる場合にも、しっかりとステントでサポートできる。また、部分的に生体内管腔の内径が小さくなる場合にも、過度なテンションをかけないようにすることができる。また、線材の線径が0.3~0.7mmであることにより、ステントの強度を維持しつつ、血栓の付着を効果的に抑制することができる。また、線材の引張り強さが900~1500MPaであることにより、ステントの強度を維持しつつ、生体内管腔の内壁に適切なテンションをかけることができる。また、線材の材質が、ニッケルチタン合金、ステンレス鋼、チタン及びチタン合金のうちのいずれか一つであることにより、生体適合性の条件を満たし、細径な可撓管内を通過しても潰れや折り癖などの変形が生じ難いステントを実現することができる。
【0023】
(7)上記(3)又は(6)の構成において、前記線材の表面に樹脂層を備える。上記(7)の好ましい構成によれば、ステントの生体適合性を向上させることができる。また、ステント送達時のステントと生体内管腔の内壁との間の摩擦力を適切にし、ステント留置時のステントの長手方向のピッチを適切な値にし、生体内管腔の内壁を内側から適切にサポートすることができる。
【0024】
(8)上記(7)の構成において、前記樹脂層の厚みが0.01~3.00mmである。厚みを0.01mm以上とすることで、薄すぎることなく、破損の恐れを低減することができる。厚みを3.00mm以下とすることで、厚すぎることなく、血栓の付着を効果的に抑制することができる。
【0025】
(9)上記(7)又は(8)の構成において、前記樹脂層の材質が、PU(ポリウレタン)、PA(ポリアミド)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)及びフッ素樹脂のうちのいずれか一つである。上記(9)の好ましい構成によれば、生体適合性があって、生体内管腔に挿入された後、腐食せず人体への副作用を最少化できる。
【0026】
(10)表面に薬剤が塗布される。上記(10)の好ましい構成によれば、ステントの留置後の治療部位の治癒を効果的に促進することができる。
【0027】
(11)上記(10)の構成において、前記薬剤が、生理活性物質である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、生体内管腔の内壁を内側から十分にサポートすることができ、かつ、役目を終えた後に生体外に簡単に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明の実施形態1におけるステントの構成を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態1におけるステントの構成を示す側面図である。
図3図3は、本発明の実施形態1におけるステントの構成を示す、図1の矢印A方向から見た端面図である。
図4図4は、大動脈解離及びその治療方法を説明するための図である。
図5図5は、本発明の実施形態1におけるステントを生体内管腔内の治療部位に留置するために使用されるカテーテルイントロジューサを示す分解側面図である。
図6図6は、本発明の実施形態1におけるステントを生体内管腔内の治療部位に留置するために使用されるカテーテルイントロジューサを示す側面図である。
図7図7は、カテーテルの先端部を生体内管腔内の治療部位の近傍まで到達させた状態を示す側面斜視図である。
図8図8は、本発明の実施形態1におけるステントを、ステント挿入用鉗子を用いてカテーテルの先端部まで持って行っている状態を示す側面斜視図である。
図9図9は、本発明の実施形態1におけるステントを生体内管腔内の治療部位に留置した状態を示す側面斜視図である。
図10図10は、本発明の実施形態1におけるステントを生体内管腔内の治療部位に留置した後、カテーテルイントロジューサを抜去している状態を示す側面斜視図である。
図11図11は、本発明の実施形態1におけるステントを回収するために使用される回収用スネアの構成を示す側面斜視図である。
図12図12は、図11の回収用スネアの構成部材である操作ワイヤを、中空の可撓管であるカテーテルの内部に進退可能に挿通した状態を示す側面斜視図である。
図13図13は、図11の回収用スネアを、中空の可撓管であるカテーテルの内部に配置し、カテーテルの先端部を治療部位の近傍まで到達させた状態を示す側面斜視図である。
図14図14は、図11の回収用スネアの構成部材であるスネアワイヤを、図13の状態のカテーテルの先端から押し出した状態を示す側面斜視図である。
図15図15は、図11の回収用スネアの構成部材であるスネアワイヤを、本発明の実施形態1におけるステントに引っ掛けている状態を示す側面斜視図である。
図16図16は、図15における二点鎖線円部分Iを拡大して示した図である。
図17図17は、図11の回収用スネアを用いて、本発明の実施形態1におけるステントを中空の可撓管であるカテーテルの内部へ引き込んでいる状態を示す側面斜視図である。
図18図18は、図11の回収用スネアを用いて、本発明の実施形態1におけるステントを中空の可撓管であるカテーテルの内部へ引き込んだ後、カテーテルを抜去している状態を示す側面斜視図である。
図19図19は、本発明の実施形態1におけるステントの他の構成を示す斜視図である。
図20図20は、本発明の実施形態2におけるステントの構成を示す斜視図である。
図21図21は、本発明の実施形態3におけるステントの構成を示す斜視図である。
図22図22(a)~(d)は、本発明の実施形態3におけるステントのパルス形状を示す模式図、図22(e)は、本発明の実施形態3におけるステントの構成を示す側面図、図22(f)は、本発明の実施形態3におけるステントを長手方向端部から見た図である。
図23図23は、本発明の実施形態4におけるステントの構成を示す斜視図である。
図24図24は、本発明の実施形態5におけるステントの構成を示す斜視図である。
図25図25(a)~(d)は、本発明の実施形態5におけるステントのジグザグ形状を示す模式図、図25(e)は、本発明の実施形態5におけるステントの構成を示す側面図、図25(f)は、本発明の実施形態5におけるステントを長手方向端部から見た図である。
図26図26は、本発明の実施形態6におけるステントの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、好適な実施形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、下記の実施態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
[実施形態1]
(ステントの構成)
まず、本発明の実施形態1におけるステントの構成について、図1図3を参照しながら説明する。
【0033】
図1図3に示すステント1は、患者の切開した太ももの付け根等から中空の可撓管であるカテーテル2(図5図6を参照)の内部を通して送達される。ステント1は、生体内管腔内の治療部位に留置された状態で生体内管腔の内壁を内側からサポートするコイル形状(螺旋形状)の部材である(図4を参照)。ステント1は、長手方向に引っ張ることでカテーテル2の内部に沿った細長い形状をとり、長手方向の引張力を解放して放すことで生体内管腔の内壁を内側からサポート可能な巻回したコイル形状(サポート形状)をとるように構成されている。また、ステント1は、一端に回収用のフック部1bを備えている。すなわち、本実施形態のステント1は、フック部1bがステントの一端に形成されており、サポート形状をとった状態で、フック部1bを始点として巻回したコイル形状となるように構成されている。なお、フック部1bの位置は、ステント1の先端、基端のどちらでもよい。
そして、フック部1bを回収用スネア4(図11図12を参照)で引っ掛けてカテーテル2の内部へ引き込むことで、ステント1はコイル形状から細長い形状に変形しながらカテーテル2の内部を後退し、生体外に回収可能である。
【0034】
本実施形態のステント1の構成によれば、長手方向に引っ張ることでカテーテル2の内部に沿った細長い形状をとるように構成されているため、カテーテル2の内部を通過しやすく、治療部位へ送達されやすい。また、治療部位へ送達された後、放すことで生体内管腔の内壁を内側からサポート可能な巻回したコイル形状(サポート形状)をとるように構成されているため、血管内壁の内側からのサポート等、ステント本来の役割を果たすことができる。そして、この場合、サポート形状がコイル形状であるため、生体内管腔の内壁を内側からほぼ均等にサポートすることができる。また、上記のように、長手方向に引っ張ることでカテーテル2の内部に沿った細長い形状をとるように構成されているため、生体内管腔内に留置された状態で生体内管腔の内壁を内側からサポートしているコイル形状のステント1のフック部1bを回収用スネア4で引っ掛けてカテーテル2の内部へ引き込むことで、生体外に簡単に回収することができる。
このように、本実施形態のステント1の構成によれば、生体内管腔の内壁を内側から十分にサポートすることができ、かつ、役目を終えた後に生体外に簡単に回収することができる。
【0035】
以下、さらに詳細に説明する。図1図3に示すように、ステント1は、コイル形状のステント本体1aと、ステント本体1aの一端に備えられ、コイルの一端を折り曲げることにより形成されたフック部1bと、を有している。フック部1bは、ステント本体1aが生体内管腔の内壁を内側からサポート可能な巻回したコイル形状となった際に、ステント本体1aの外周よりも径方向内側に位置するようにされている。かかる構成によれば、治療中にフック部1bによって生体内管腔の内壁を傷つけてしまうことはない。なお、図2に示すように、フック部1bは、コイル形状のステント本体1aの先端に設けられ、先端から基端に向けて延びた状態で径方向内側に突出している。
なお、図1に示す「掴み部」は、ステント1を生体内管腔内の治療部位に留置する際に、後述するステント挿入用鉗子で掴む部分である。なお、掴み部の位置は図1の位置に限定するものではなく、ステント1の先端側であればよい。例えば、フック部1bを掴み部としてもよい。
【0036】
ステント1は、1本の形状記憶合金製の断面円形の線材からなり、体温を下回る温度まで冷却されたときにカテーテル2の内部に沿った細長い形状をとり、体温まで加熱されたときに生体内管腔の内壁を内側からサポート可能な巻回したコイル形状をとるように構成されている。かかる構成によれば、形状記憶合金製であるため、厚み(太さ)を小さくしても、十分な強度を維持することができる。そして、このように厚み(太さ)を小さくすることにより、血栓が付着しにくくなる。また、体温を下回る温度まで冷却されたときにカテーテル2の内部に沿った細長い形状をとるように構成されているため、カテーテル2の内部を通過しやすく、治療部位へ送達されやすい。また、治療部位へ送達された後、体温まで加熱されたときに生体内管腔の内壁を内側からサポート可能な巻回したコイル形状をとるように構成されているため、血管内壁の内側からのサポート等、ステント本来の役割を果たすことができる。また、上記のように、体温を下回る温度まで冷却されたときにカテーテル2の内部に沿った細長い形状をとるように構成されている。このため、生体内管腔内に留置された状態で生体内管腔の内壁を内側からサポートしているコイル形状のステント1のフック部1bを回収用スネア4で引っ掛けてカテーテル2の内部へ引き込むことで、生体外に簡単に回収することができる。
【0037】
ステント1がコイル形状をとるときのコイルの外径は、生体内管腔である大動脈の内径とほぼ同じ、30~55mmであることが好ましい。かかる好ましい構成によれば、大動脈解離の治療のために大動脈内に留置した際に、血管内壁に適切なテンションをかけることができ、過度なテンションがかかることはないので、大動脈解離のエントリー部の治癒を適切に促進させることができる。
また、この場合、ステント1がコイル形状をとるときのコイルの外径は、長手方向で変化することが好ましい。かかる好ましい構成によれば、留置する部位の内径が長手方向で変化する場合にも、留置部位の内径の変化に合わせたコイルの外径とすることができ、適切な治療を行うことができる。例えば、部分的に生体内管腔の内径が大きくなる場合にも、しっかりとコイルでサポートできる。また、部分的に生体内管腔の内径が小さくなる場合にも、過度なテンションをかけないようにすることができる。
【0038】
線材の線径は0.3~0.7mmであることが好ましく、特に0.4~0.6mmであることが好ましい。かかる好ましい構成によれば、ステント1の強度を維持しつつ、血栓の付着を効果的に抑制することができる。なお、線径が0.3mm未満であると、線材が動脈の内壁に食い込んで動脈を傷つけてしまう可能性がある。線径が0.7mmを超えると、細長い形状にしてカテーテルへ挿入することが困難となり、また、カテーテル内の摩擦が大きくなるなど取り扱いに難がある。
【0039】
線材の引張り強さは900~1500MPaであることが好ましく、特に1000~1200MPaであることが好ましい。かかる好ましい構成によれば、ステント1の強度を維持しつつ、生体内管腔の内壁に適切なテンションをかけることができる。なお、引張り強さが900MPa未満では、動脈の内壁を押す力が弱く、十分に解離部分を通常状態に回復させることができない。引張り強さが1500MPaを超えると、過度のテンションがかかり、血管形状に沿わない場合や、留置位置の調整ができない場合が出てくる。
【0040】
ステント1の材質は、例えば、ニッケルチタン合金、ステンレス鋼、チタン及びチタン合金のうちのいずれか一つであることが好ましい。かかる好ましい構成によれば、生体適合性の条件を満たし、細径なカテーテル2内を通過しても潰れや折り癖などの変形が生じ難いステントを実現することができる。ステンレス鋼としては、SUS304,SUS316Lが好ましい。SUS304は、入手が容易で比較的安価である。SUS316Lは、ステンレス鋼の中で最も耐食性が良好である。
【0041】
線材の表面に樹脂層を備えることが好ましい。かかる好ましい構成によれば、ステント1の生体適合性を向上させることができる。また、ステント送達時のステント1と生体内管腔の内壁との間の摩擦力を適切にし、ステント留置時のステント1のコイルピッチを適切な値にし、生体内管腔の内壁を内側から適切にサポートすることができる。
【0042】
樹脂層の厚みは0.01~3.00mmであることが好ましい。厚みを0.01mm以上とすることで、薄すぎることなく、破損の恐れを低減することができる。厚みを3.00mm以下とすることで、厚すぎることなく、血栓の付着を効果的に抑制することができる。
【0043】
樹脂層の材質は、例えば、PU(ポリウレタン)、PA(ポリアミド)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)及びフッ素樹脂のうちのいずれか一つであることが好ましい。かかる好ましい構成によれば、生体適合性があって、生体内管腔に挿入された後、腐食せず人体への副作用を最少化できる。
なお、樹脂層は、1種類に限定されるものではない。例えば、生体内管腔との摩擦力の大きなPU(ポリウレタン)等の樹脂で線材全体を覆い、さらに、生体内管腔との摩擦力が小さく、血栓の付着しにくいフッ素樹脂をコイル内側部分にのみコーティングしてもよい。これにより、ステント1を生体内管腔の適切な位置に留置しやすく、血栓の付着も効果的に抑制することができる。
【0044】
ステント1の表面に薬剤が塗布されることが好ましい。かかる好ましい構成によれば、ステント1の留置後の治療部位の治癒を効果的に促進することができる。
薬剤は、生理活性物質であることが好ましく、特に細胞修復剤、抗炎症剤又は抗癌剤であることが好ましい。具体的には、例えば、スタチン、ラパマイシン、アスピリン、ジピリダモール、ヘパリン、抗トロンビン製剤、魚油等の抗血小板薬、低分子ヘパリン、アンギオテンシン変換酵素阻害薬等の平滑筋増殖抑制薬、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンデシン、塩酸イリノテカン、パクリタキセル、ドセタキセル水和物、メトトレキサート、シクロフォスファミド等の抗癌剤、マイトマイシンC等の抗生物質、シロリムス、タクロリムス水和物等の免疫抑制剤、ステロイド等の抗炎症剤、アトルバスタチンカルシウム、ロバスタチン等の脂質改善薬、プラスミドDNA、遺伝子、siRNA、囮型核酸医薬(デコイ)、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、アプタマー、インターロイキン、細胞間情報伝達物質(サイトカイン)、グリベックやPTK787等が挙げられる。しかし、ステント1の表面に塗布される薬剤は、これらの物質に限定されるものではない。なお、上記生理活性物質のうちのいずれか1種のみを塗布してもよいが、効能や作用機序の異なる成分を複数種塗布しておけば、各成分の相乗効果によって薬効の促進が期待できる。
【0045】
(ステントの留置・回収方法)
次に、本発明の実施形態1におけるステントの留置・回収方法について、大動脈解離の治療に用いられるステントを留置・回収する場合を例に挙げて、図4図18を参照しながら説明する。
【0046】
大動脈は、外膜、中膜、内膜の3層構造となっており、十分な強さと弾力を持っている。しかし、なんらかの原因で内側にある内膜に裂け目(エントリー部)ができ、その外側の中膜の中に血液が流れ込んで長軸方向に大動脈が裂けることがある(図4(a),(b)を参照)。これを「大動脈解離」というが、大動脈解離の治療方法として、ステントを血管内に一時的に留置する手法が提案されている(図4(c)を参照)。
【0047】
〈ステントの留置方法〉
ステントの留置作業は、血管造影で確認しながら行われる。また、ステントの留置には、図5図6に示すカテーテルイントロジューサ、及び、ステント挿入用鉗子(図示せず)が使用される。
図5図6に示すカテーテルイントロジューサは、中空の可撓管であるカテーテル2と、カテーテル2の内部にその基端部から挿入されるダイレータ3と、からなっている。そして、ダイレータハブ3aがカテーテル2の基端面に当接したとき、ダイレータ3の先端部はカテーテル2の先端から突出するようにされている(図6の状態)。
なお、ステント挿入用鉗子は、カテーテルイントロジューサの構成部材であるカテーテル2と一緒に使用される。
【0048】
まず、図4(a),図7に示すように、患者の切開した太ももの付け根からカテーテル2を血管内に挿入し(図7の矢印Bを参照)、その先端部を大動脈の治療部位の近傍まで持って行く。
【0049】
次いで、図8に示すように、カテーテル2の基端部を左手で把持し、ステント1の掴み部(図1を参照)を、右手で持ったステント挿入用鉗子で掴んで、ステント1をカテーテル2の基端面から挿入していく。これにより、ステント1は、コイル形状から細長い形状に変形しながらカテーテル2の内部を前進し(図8の矢印Mを参照)、カテーテル2の先端部に到達する。ステント1がカテーテル2の先端部に到達したら、カテーテル2からステント挿入用鉗子を抜去する。
【0050】
次いで、図9に示すように、カテーテル2の基端部を左手で把持し、ダイレータハブ3aを右手で持って、カテーテル2の内部にその基端部からダイレータ3を挿入する(図9の矢印Cを参照)。そして、カテーテル2を、ステント1のコイルの巻き方向と同じ方向へ回転させながら少しずつ抜去しつつ、ダイレータ3でステント1をカテーテル2の先端から押し出す。この際、ステント1が体温まで加熱されてコイル形状となり、大動脈内の治療部位に留置された状態で生体内管腔の内壁を内側からサポートする。
【0051】
最後に、図10に示すように、カテーテルイントロジューサ(カテーテル2とダイレータ3)を、患者の切開した太ももの付け根から抜去する(図10の矢印Dを参照)。
以上により、大動脈解離の治療に用いられるステント1の留置作業が完了する。
【0052】
〈ステントの回収方法〉
治療部位が完治した後の、役目を終えたステント1は、以下のようにして回収される。この回収作業も、血管造影で確認しながら行われる。また、ステントの回収には、図11図12に示す回収用スネア4、中空の可撓管であるカテーテル2が使用される。
【0053】
図11図12に示すように、回収用スネア4は、操作ワイヤ5、スネアワイヤ6を備えている。
操作ワイヤ5は、中空の可撓管であるカテーテル2の内部に進退可能に挿通される(図12の両矢印Eを参照)。操作ワイヤ5の基端には操作リング5aが形成されており、操作リング5aを持って操作ワイヤ5をカテーテル2の内部で進退させたり回転させたりすることができる(図12の両矢印E,Fを参照)。
スネアワイヤ6は、操作ワイヤ5の先端に設けられている。スネアワイヤ6は、1本の線材からなり、外力がかからない自然状態において、基端側の第1ループ部6aと、先端側の第2ループ部6bと、第1ループ部6aと第2ループ部6bとの交点6cと、からなる二重ループ状に形成されている。スネアワイヤ6は、形状記憶合金製の線材からなり、内腔内でカテーテル2の先端から押し出されて体温まで加熱されたときに、第1ループ部6aと第2ループ部6bが近接してほぼ同心円状に配置される形状をとるようにすることができる。
操作ワイヤ5は、ステンレス鋼等の金属線材を複数撚り合わせた撚線からなっている。
【0054】
まず、図4(a),図13に示すように、回収用スネア4をカテーテル2の内部に配置した後、患者の切開した太ももの付け根からカテーテル2を血管内に挿入し(図13の矢印Gを参照)、その先端部を大動脈の治療部位の近傍まで持って行く。
【0055】
次いで、図13図14に示すように、カテーテル2の基端部を左手で把持し、操作ワイヤ5の基端の操作リング5aを右手で持って操作ワイヤ5を前進させることにより(図13図14の矢印Hを参照)、カテーテル2の先端からスネアワイヤ6を押し出す。このとき、スネアワイヤ6は、体温まで加熱されて、第1ループ部6aと第2ループ部6bが近接してほぼ同心円状に配置された形状となる。
【0056】
次いで、図14図16に示すように、操作ワイヤ5を進退させながら(図15の両矢印Jを参照)、スネアワイヤ6をステント1のフック部1b(図1図3を参照)に引っ掛ける。スネアワイヤ6は、1本の線材からなり、基端側の第1ループ部6aと、先端側の第2ループ部6bと、第1ループ部6aと第2ループ部6bとの交点6cと、からなる二重ループ状に形成されている。ステント1のフック部1bは第1及び第2ループ部6a,6bの少なくともどちらか一方に引っ掛かればよい。したがって、熟練した技術を要することなく、スネアワイヤ6をステント1のフック部1bに簡単に引っ掛けることができる。
【0057】
次いで、図15図18に示すように、カテーテル2の基端部を左手で把持し、操作ワイヤ5の基端の操作リング5aを右手で持って操作ワイヤ5を後退させることにより(図15図18の矢印Kを参照)、ステント1をカテーテル2の内部へ引き込む。これにより、ステント1は、コイル形状から細長い形状に変形しながらカテーテル2の内部を後退し、生体外に回収される。最後に、カテーテル2を、患者の切開した太ももの付け根から抜去する(図18の矢印Lを参照)。
以上により、大動脈解離の治療に用いられたステント1の回収作業が完了する。
【0058】
なお、本実施形態においては、中空の可撓管としてカテーテル2を用いる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。中空の可撓管としては、例えば、シースを用いることもできる。
【0059】
また、本実施形態においては、ステント1が形状記憶合金製の線材からなる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。本発明のステントは、例えば、ステンレス鋼(SUS304)やNi-Ti合金などの超弾性合金製の線材からなっていてもよい。かかる構成のステントによれば、温度に左右されることなく、長手方向に引っ張ることで可撓管の内部に沿った細長い形状をとり、放すことで生体内管腔の内壁を内側からサポート可能な巻回したコイル形状をとるようにすることができる。
【0060】
また、本実施形態においては、ステント1が断面円形の線材からなる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。線材は、平線などの異形断面のものであってもよい。
【0061】
また、本実施形態においては、フック部1bが、ステント本体1aが生体内管腔の内壁を内側からサポート可能な巻回したコイル形状となった際に、ステント本体1aの外周よりも径方向内側に位置するようにされている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。図19(a)に示すように、フック部1bは、例えば、ステント本体1aが生体内管腔の内壁を内側からサポート可能な巻回したコイル形状となった際に、長手方向外側に突出するようにされていてもよい。また、図19(b),図19(c)に示すように、フック部1bは、2つの湾曲部1b1,1b2を設けた形状であってもよい。2つの湾曲部1b1,1b2は、長手方向において逆方向に湾曲している。かかる形状とすることで、ステント1を太もも側、鎖骨側のどちらの方向から回収する場合にも、容易に回収することができる。
【0062】
また、本実施形態においては、ステント1が大動脈解離の治療に用いられる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明のステントは必ずしもこのような用途に限定されるものではない。本発明のステントは、例えば、冠動脈、末梢血管、頸動脈、脳動脈、静脈等の他の血管、気管、食道、大腸、小腸、十二指腸、尿管、尿道、胆管等にも挿入、留置して用いることができる。
【0063】
また、本実施形態においては、フック部1bがステントの一端に形成されており、サポート形状をとった状態で、フック部1bを始点として巻回したコイル形状となるステント1を例に挙げて説明した。しかし、本発明のステントは必ずしもこのような構成に限定されるものではない。
以下、本発明のステントの他の実施形態について、図20図26を参照しながら説明する。なお、下記実施形態では、上記実施形態1と比べて、サポート形状をとった状態のステントの構成だけが異なり、ステントの材質、線径等や留置・回収方法は上記実施形態1と同じである。このため、これら同じ事項についての詳細な説明は省略する。
【0064】
[実施形態2]
まず、本発明の実施形態2におけるステントの構成について、図20を参照しながら説明する。
【0065】
図20に示すステント7は、患者の切開した太ももの付け根等から中空の可撓管であるカテーテル2(図5図6を参照)の内部を通して送達される。ステント7は、生体内管腔内の治療部位に留置された状態で生体内管腔の内壁を内側からサポート可能なサポート形状をとる部材である(図4を参照)。ステント7は、長手方向に引っ張ることでカテーテル2の内部に沿った細長い形状をとり、長手方向の引張力を解放して放すことで生体内管腔の内壁を内側からサポート可能なサポート形状をとるように構成されている。また、ステント7は、一端に回収用のフック部7bを備えている。
【0066】
より詳細には、本実施形態のステント7は、一端にフック部7bが形成されており、サポート形状をとった状態で、第1の螺旋形状部7a1と折り返し部7cと第2の螺旋形状部7a2とを備えた形状となるように構成されている。第1の螺旋形状部7a1は、フック部7bから第1の螺旋形状で延びている。折り返し部7cは、第1の螺旋形状部7a1の、フック部7bと反対側の端に形成されている。第2の螺旋形状部7a2は、折り返し部7cから前記第1の螺旋形状と逆方向に巻回した第2の螺旋形状で延び、フック部7bに連結されている。フック部7bは、互いに逆方向に湾曲した2つの湾曲部7b1,7b2を備えた形状となっている。
そして、フック部7bを回収用スネア4(図11図12を参照)で引っ掛けてカテーテル2の内部へ引き込むことで、ステント7はサポート形状から細長い形状に変形しながらカテーテル2の内部を後退し、生体外に回収可能である。上記のように、フック部7bは、互いに逆方向に湾曲した2つの湾曲部7b1,7b2を備えた形状となっているので、ステント7を太もも側、鎖骨側のどちらの方向から回収する場合にも、容易に回収することができる。
【0067】
本実施形態のステント7の構成によれば、上記実施形態1のステント1の構成の場合と同様に、生体内管腔の内壁を内側から十分にサポートすることができ、かつ、役目を終えた後に生体外に簡単に回収することができる。さらに、本実施形態のステント7の構成によれば、2つの螺旋形状部7a1,7a2により、生体内管腔の内壁を内側からさらに均等にサポートすることが可能となる。
【0068】
なお、本実施形態においては、互いに逆方向に湾曲した2つの湾曲部7b1,7b2を備えた形状となったフック部7bを有する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。フック部は、一方向だけに湾曲した形状のものであってもよい。また、上記実施形態1の場合と同様に、フック部は、ステント7が生体内管腔の内壁を内側からサポート可能なサポート形状となった際に、ステント7の外周よりも径方向内側に位置するようにされていてもよい。
【0069】
[実施形態3]
次に、本発明の実施形態3におけるステントの構成について、図21図22を参照しながら説明する。
【0070】
図21図22(e),(f)に示すステント8は、患者の切開した太ももの付け根等から中空の可撓管であるカテーテル2(図5図6を参照)の内部を通して送達される。ステント8は、生体内管腔内の治療部位に留置された状態で生体内管腔の内壁を内側からサポート可能なサポート形状をとる部材である(図4を参照)。ステント8は、長手方向に引っ張ることでカテーテル2の内部に沿った細長い形状をとり、長手方向の引張力を解放して放すことで生体内管腔の内壁を内側からサポート可能なサポート形状をとるように構成されている。また、ステントは、一端に回収用のフック部8bを備えている。
【0071】
より詳細には、本実施形態のステント8は、一端にフック部8bが形成されており、サポート形状をとった状態で、第1のパルス形状部8a1と折り返し部8cと第2のパルス形状部8a2とを備えた形状となるように構成されている。第1のパルス形状部8a1は、フック部8bから長手方向に第1のパルス形状で延び、長手方向端部から見て略半円形状となっている。折り返し部8cは、第1のパルス形状部8a1の、フック部8bと反対側の端に形成されている。第2のパルス形状部8a2は、折り返し部8cからフック部8bに向かって前記第1のパルス形状と略面対称な第2のパルス形状で延び、フック部8bに連結されている。フック部8bは、一方向だけに湾曲した形状のものとなっている。
【0072】
さらに詳細には、第1のパルス形状部8a1は、第1の半円形状部9と第1の長手形状部10と第2の半円形状部11と第2の長手形状部12とからなる基本パルス形状部が4つ連続した構成となっている。第1の半円形状部9は、フック部8bから円周方向に半円形状で延びる。第1の長手形状部10は、第1の半円形状部9の、フック部8bと反対側の端から長手方向に延びる。第2の半円形状部11は、第1の長手形状部10の、第1の半円形状部9と反対側の端から第1の半円形状部9と略並行となる半円形状で延びる。第2の長手形状部12は、第2の半円形状部11の、第1の長手形状部10と反対側の端から長手方向に延びる。
第2のパルス形状部8a2は、第3の半円形状部13と第3の長手形状部14と第4の半円形状部15と第4の長手形状部16とからなる基本パルス形状部が4つ連続した構成となっている。第3の半円形状部13は、折り返し部8cから第2の半円形状部11と線対称となる半円形状で延びる。第3の長手形状部14は、第3の半円形状部13の、折り返し部8cと反対側の端から第1の長手形状部10と略並行に延びる。第4の半円形状部15は、第3の長手形状部14の、第3の半円形状部13と反対側の端から第1の半円形状部9と線対称となる半円形状で延びる。第4の長手形状部16は、第4の半円形状部15の、第3の長手形状部14と反対側の端から第2の長手形状部12と略並行に延びる。
なお、半円形状部と長手形状部の折り曲げ部分等の形状は、丸みを帯びたR形状となっており、治療中にステント8によって生体内管腔の内壁を傷つけてしまうことはない。
また、第1及び第2のパルス形状としては、図22(a)~(d)に示すような、いろいろな繰り返し形状のものを採用することができる。
【0073】
そして、フック部8bを回収用スネア4(図11図12を参照)で引っ掛けてカテーテル2の内部へ引き込むことで、ステント8はサポート形状から細長い形状に変形しながらカテーテル2の内部を後退し、生体外に回収可能である。
【0074】
本実施形態のステント8の構成によれば、コイル形状のものと比較して、生体内管腔内の治療部位に留置する際、あるいは留置した後に、長手方向に横倒れしにくい。また、ステント8を構成する線材の方向が一方向ではないため、生体内管腔内で滑りにくく、位置ずれを起こしにくい。さらに、ステント8を構成する線材の半円形状部が円周方向に延び、互いに平行であるため、外周からの圧力で潰れにくい。その結果、生体内管腔の内壁を内側から確実にサポートすることが可能となる。
【0075】
なお、本実施形態においては、一方向だけに湾曲した形状のフック部8bを備える場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。フック部は、例えば上記実施形態2の場合と同様に、互いに逆方向に湾曲した2つの湾曲部を備えた形状のものであってもよい。また、上記実施形態1の場合と同様に、フック部は、ステント8が生体内管腔の内壁を内側からサポート可能なサポート形状となった際に、ステント8の外周よりも径方向内側に位置するようにされていてもよい。
【0076】
[実施形態4]
次に、本発明の実施形態4におけるステントの構成について、図23を参照しながら説明する。なお、本実施形態のステントは、上記実施形態3と比べて、円周方向で近接するパルス形状部同士が、交差した状態で係合している点だけが異なり、その他の構成は上記実施形態3と同じである。このため、上記実施形態3と同一の部材には同一の参照符号を付し、それらの詳細な説明は省略する。
【0077】
図23に示すステント17は、円周方向で近接するパルス形状部同士が、交差した状態で係合している(交差係合)。すなわち、円周方向で近接する第1の長手形状部10と第3の長手形状部14とが交差した状態で係合している。また、円周方向で近接する第2の長手形状部12と第4の長手形状部16とが交差した状態で係合している。 この交差係合状態は、例えば、第2のパルス形状部8a2を折り曲げ形成する段階で、第2のパルス形状部8a2の第3の長手形状部14等を第1のパルス形状部8a1の第1の長手形状部10等に網み込むことにより、実現することができる。
【0078】
本実施形態のステント17の構成によれば、2つのパルス形状部8a1,8a2が長手方向逆向きに互いにずれることを防止して、ステント17を円筒形状に保持することができる。その結果、生体内管腔の内壁を内側からさらに確実にサポートすることが可能となる。そして、このように、円周方向で近接するパルス形状部同士を、溶着ではなく交差係合させることで、ステント17の外径を生体内管腔の内径に合わせることができるので、生体内管腔の内壁を内側からしっかりとサポートすることが可能となる。特に、ステント17の外径よりも生体内管腔の内径が小さい場合には、交差係合部が生体内管腔の内壁に食い込み気味となることでステント17にテンションがかかり、生体内管腔の内壁を内側からしっかりとサポートすることができる。
【0079】
[実施形態5]
次に、本発明の実施形態5におけるステントの構成について、図24図25を参照しながら説明する。
【0080】
図24図25(e),(f)に示すステント18は、患者の切開した太ももの付け根等から中空の可撓管であるカテーテル2(図5図6を参照)の内部を通して送達される。ステント18は、生体内管腔内の治療部位に留置された状態で生体内管腔の内壁を内側からサポート可能なサポート形状をとる部材である(図4を参照)。ステント18は、長手方向に引っ張ることでカテーテル2の内部に沿った細長い形状をとり、長手方向の引張力を解放して放すことで生体内管腔の内壁を内側からサポート可能なサポート形状をとるように構成されている。また、ステント18は、一端に回収用のフック部18bを備えている。
【0081】
より詳細には、本実施形態のステント18は、一端にフック部18bが形成されており、サポート形状をとった状態で、第1のジグザグ形状部18a1と折り返し部18cと第2のジグザグ形状部18a2とを備えた形状となるように構成されている。第1のジグザグ形状部18a1は、フック部18bから長手方向に第1のジグザグ形状で延び、長手方向端部から見て略半円形状となっている。折り返し部18cは、第1のジグザグ形状部18a1の、フック部18bと反対側の端に形成されている。第2のジグザグ形状部18a2は、折り返し部18cからフック部18bに向かって前記第1のジグザグ形状と略面対称な第2のジグザグ形状で延び、フック部18bに連結されている。フック部18bは、一方向だけに湾曲した形状のものとなっている。
【0082】
さらに詳細には、第1のジグザグ形状部18a1は、第1の半円形状部19と第1のR形状部20と第2の半円形状部21と第2のR形状部22と第3の半円形状部23と第3のR形状部24と第4の半円形状部25と第4のR形状部26と第5の半円形状部27とからなっている。第1の半円形状部19は、フック部18bから斜め円周方向に半円形状で延びる。第1のR形状部20は、第1の半円形状部19の、フック部18bと反対側の端から折り返される。第2の半円形状部21は、第1のR形状部20の、第1の半円形状部19と反対側の端から第1の半円形状部19と略面対称な半円形状で延びる。第2のR形状部22は、第2の半円形状部21の、第1のR形状部20と反対側の端から折り返される。第3の半円形状部23は、第2のR形状部22の、第2の半円形状部21と反対側の端から第1の半円形状部19と略並行となる半円形状で延びる。第3のR形状部24は、第3の半円形状部23の、第2のR形状部22と反対側の端から折り返される。第4の半円形状部25は、第3のR形状部24の、第3の半円形状部23と反対側の端から第2の半円形状部21と略並行となる半円形状で延びる。第4のR形状部26は、第4の半円形状部25の、第3のR形状部24と反対側の端から折り返される。第5の半円形状部27は、第4のR形状部26の、第4の半円形状部25と反対側の端から第3の半円形状部23と略並行となる半円形状で延びる。
【0083】
第2のジグザグ形状部18a2は、第6の半円形状部28と第6のR形状部29と第7の半円形状部30と第7のR形状部31と第8の半円形状部32と第8のR形状部33と第9の半円形状部34と第9のR形状部35と第10の半円形状部36とからなっている。第6の半円形状部28は、折り返し部18cから第5の半円形状部27と略面対称な半円形状で延びる。第6のR形状部29は、第6の半円形状部28の、折り返し部18cと反対側の端から折り返される。第7の半円形状部30は、第6のR形状部29の、第6の半円形状部28と反対側の端から第4の半円形状部25と略面対称な半円形状で延びる。第7のR形状部31は、第7の半円形状部30の、第6のR形状部29と反対側の端から折り返される。第8の半円形状部32は、第7のR形状部31の、第7の半円形状部30と反対側の端から第3の半円形状部23と略面対称な半円形状で延びる。第8のR形状部33は、第8の半円形状部32の、第7のR形状部31と反対側の端から折り返される。第9の半円形状部34は、第8のR形状部33の、第8の半円形状部32と反対側の端から第2の半円形状部21と略面対称な半円形状で延びる。第9のR形状部35は、第9の半円形状部34の、第8のR形状部33と反対側の端から折り返される。第10の半円形状部36は、第9のR形状部35の、第9の半円形状部34と反対側の端から第1の半円形状部19と略面対称な半円形状で延びる。
【0084】
本実施形態のステント18は、全体的に丸みを帯びた形状となっており、治療中にステント18によって生体内管腔の内壁を傷つけてしまうことはない。
また、第1及び第2のジグザグ形状としては、図25(a)~(d)に示すような、いろいろな繰り返し形状のものを採用することができる。
【0085】
そして、フック部18bを回収用スネア4(図11図12を参照)で引っ掛けてカテーテル2の内部へ引き込むことで、ステント8はサポート形状から細長い形状に変形しながらカテーテル2の内部を後退し、生体外に回収可能である。
【0086】
本実施形態のステント18の構成によれば、コイル形状のものと比較して、生体内管腔内の治療部位に留置する際、あるいは留置した後に、長手方向に横倒れしにくい。また、ステント18を構成する線材の方向が一方向ではないため、生体内管腔内で滑りにくく、位置ずれを起こしにくい。さらに、ステント18が長手方向にジグザグ形状で延びているため、上記実施形態3のステント8よりもさらに横倒れしにくい。その結果、生体内管腔の内壁を内側から確実にサポートすることが可能となる。
【0087】
なお、本実施形態においては、一方向だけに湾曲した形状のフック部8bを備える場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。フック部は、例えば上記実施形態2の場合と同様に、互いに逆方向に湾曲した2つの湾曲部を備えた形状のものであってもよい。また、上記実施形態1の場合と同様に、フック部は、ステント18が生体内管腔の内壁を内側からサポート可能なサポート形状となった際に、ステント18の外周よりも径方向内側に位置するようにされていてもよい。
【0088】
[実施形態6]
次に、本発明の実施形態6におけるステントの構成について、図26を参照しながら説明する。なお、本実施形態のステントは、上記実施形態5と比べて、円周方向で近接するジグザグ形状部同士が、交差した状態で係合している点だけが異なり、その他の構成は上記実施形態5と同じである。このため、上記実施形態5と同一の部材には同一の参照符号を付し、それらの詳細な説明は省略する。
【0089】
図26に示すステント37は、円周方向で近接するジグザグ形状部同士が、交差した状態で係合している(交差係合)。すなわち、円周方向で近接する第1のR形状部20と第9のR形状部35とが交差した状態で係合している。また、円周方向で近接する第2のR形状部22と第8のR形状部33とが交差した状態で係合している。また、円周方向で近接する第3のR形状部24と第7のR形状部31とが交差した状態で係合している。また、円周方向で近接する第4のR形状部26と第6のR形状部29とが交差した状態で係合している。 この交差係合状態は、例えば、第2のジグザグ形状部18a2を折り曲げ形成する段階で、第2のジグザグ形状部18a2の第6のR形状部29、第7のR形状部31、第8のR形状部33、第9のR形状部35を、それぞれ順番に第1のジグザグ形状部18a1の第4のR形状部26、第3のR形状部24、第2のR形状部22、第1のR形状部20に網み込むことにより、実現することができる。
【0090】
本実施形態のステント37の構成によれば、2つのジグザグ形状部18a1,18a2が長手方向逆向きに互いにずれることを防止して、ステント37を円筒形状に保持することができる。その結果、生体内管腔の内壁を内側からさらに確実にサポートすることが可能となる。そして、このように、円周方向で近接するジグザグ形状部同士を、溶着ではなく交差係合させることで、ステント37の外径を生体内管腔の内径に合わせることができるので、生体内管腔の内壁を内側からしっかりとサポートすることが可能となる。特に、ステント37の外径よりも生体内管腔の内径が小さい場合には、交差係合部が生体内管腔の内壁に食い込み気味となることでステント37にテンションがかかり、生体内管腔の内壁を内側からしっかりとサポートすることができる。
【符号の説明】
【0091】
1,7,8,17,18,37 ステント
1a ステント本体
1b,7b,8b、18b フック部
2 カテーテル
4 回収用スネア
7a1 第1の螺旋形状部
7a2 第2の螺旋形状部
7c,8c,18c 折り返し部
8a1 第1のパルス形状部
8a2 第2のパルス形状部
18a1 第1のジグザグ形状部
18a2 第2のジグザグ形状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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