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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】ガラス象嵌製品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/00 20060101AFI20220322BHJP
   C03B 9/00 20060101ALI20220322BHJP
   B44B 9/00 20060101ALI20220322BHJP
   B65D 25/20 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
B65D1/00 111
C03B9/00
B44B9/00
B65D25/20 N
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020554343
(86)(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 CN2018107493
(87)【国際公開番号】W WO2019091237
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-06-24
(31)【優先権主張番号】201711085001.0
(32)【優先日】2017-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520229714
【氏名又は名称】広東介仁玻璃有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGDONG JIEREN GLASS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】XiGang Road Section 324 National Road QianDong Town,RaoPing County Chaozhou,Guangdong 515700 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】欧 介仁
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1521090(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/00
C03B 9/00
B44B 9/00
B65D 25/20
B44C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体を備え、前記基体は中空の空洞部を有し、前記空洞部の側壁には幾つかの透かし彫り穴が形成され、前記透かし彫り穴は中空の前記空洞部と貫通しているガラス象嵌製品であって、
基体に嵌着される吹きガラス装飾構造を更に備え、
前記吹きガラス装飾構造は、前記基体の前記空洞部の中に被覆形成される吹きガラスライニング及び前記基体の前記透かし彫り穴に嵌入されるガラス突起装飾部を備え、
前記ガラス突起装飾部と前記吹きガラスライニングは、一体にブロー成形される一体構造であり、
前記吹きガラスライニングと前記基体の前記空洞部の内壁との間には隙間が形成され、前記ガラス突起装飾部と前記透かし彫り穴の穴壁との間には隙間が形成され、
前記隙間は、ガラスブロー成形の前に前記基体の内壁の表面に形成される除去可能な保護接着層を含み、空洞部の中でガラスブロー成形を行う時に空洞部の内壁表面の保護接着層の内側に前記吹きガラスライニングを形成し、形成した吹きガラスライニングの外側面と基体の空洞部の内壁表面との間に一層の前記保護接着層を有し、前記吹きガラス装飾構造をブロー成形した後に前記保護接着層を除去することにより対応して形成される隙間である
ことを特徴とするガラス象嵌製品。
【請求項2】
前記吹きガラス装飾構造は、前記基体を内から外まで装飾しており、
前記ガラス突起装飾部は、前記基体の前記空洞部の内壁に近接した前記吹きガラスライニングの外側壁に形成され、且つ外に向かって突出されて、前記基体の前記透かし彫り穴の中に係合支持される一体型突起構造であり、
前記吹きガラスライニングは、透かし彫りした前記基体の中空である前記空洞部の内壁に近接し、且つ前記基体の前記空洞部の内壁とともに前記基体の前記空洞部の二層内壁構造を形成している
ことを特徴とする請求項1に記載のガラス象嵌製品。
【請求項3】
前記吹きガラスライニングと前記基体の前記空洞部の内壁は、平行に重合して前記基体の前記空洞部の二層内壁構造を形成し、
前記吹きガラスライニングと透かし彫りした前記基体における前記空洞部の内壁は、形状及び大きさが相互適合し、
前記基体の前記空洞部の内壁は環状に形成されており、
前記吹きガラスライニングは環状に形成されて、前記基体の前記空洞部の内壁とともに相互近接した二層環状壁を形成している
ことを特徴とする請求項2に記載のガラス象嵌製品。
【請求項4】
前記基体の前記空洞部は、その内部でガラスブロー成形が行われるように形成され、
前記ガラス突起装飾部と前記透かし彫り穴は、形状が相互適合し、
前記ガラス突起装飾部は、図形、図案又はパターンである
ことを特徴とする請求項1に記載のガラス象嵌製品。
【請求項5】
記隙間に、粘着層が更に注ぎ込み形成されている
ことを特徴とする請求項に記載のガラス象嵌製品。
【請求項6】
除去可能な前記保護接着層は、ボーングルー層である
ことを特徴とする請求項に記載のガラス象嵌製品。
【請求項7】
装飾しようとする基体を提供するステップ1と、装飾しようとする前記基体に除去可能な保護接着層を形成するステップ2と、前記基体の空洞部の中でガラス装飾構造をブロー成形するステップ3と、前記保護接着層を除去するステップ4とを有するガラス象嵌製品の製造方法であって、
前記ステップ1において、前記基体の内部に中空の空洞部を有し、前記空洞部の側壁には幾つかの透かし彫り穴が形成され、前記透かし彫り穴と中空の前記空洞部が貫通されており、
前記ステップ2において、前記基体の前記空洞部の内壁及び/又は前記透かし彫り穴の中に除去可能な保護接着剤を塗布し、或いは前記基体を前記保護接着剤の中に直接浸して、前記基体の前記空洞部の内壁及び/又は前記透かし彫り穴の内表面に所定厚みの除去可能な保護接着層を形成し、前記保護接着層の耐熱温度は、ガラス溶融温度より低くなく、
前記ステップ3において、前記空洞部の中において、溶融されたガラスをブロー成形することで、前記空洞部の内部に吹きガラスライニングを形成し、前記透かし彫り穴に溶融されたガラスを充填して、前記透かし彫り穴の中に象嵌されるガラス突起装飾部を形成し、前記ガラス突起装飾部と前記吹きガラスライニングは、一回のブロー成形により形成された一体構造であり、
前記ステップ4において、前記基体の前記空洞部の内壁及び/又は前記透かし彫り穴の中から前記保護接着層を除去し、前記保護接着層を除去したスペースが対応する隙間に形成される
ことを特徴とするガラス象嵌製品の製造方法。
【請求項8】
前記ステップ4において、洗浄方法により前記保護接着層を除去し、前記ガラス装飾構造がブロー成形されている前記基体に対し、洗浄剤又は溶剤を使って洗浄を行い、前記保護接着層は、対応する洗浄剤又は溶剤に溶解されて除去され、
前記隙間の中に注ぎ込みより粘着層を形成するステップ5を更に有する
ことを特徴とする請求項に記載のガラス象嵌製品の製造方法。
【請求項9】
除去可能な前記保護接着剤はボーングルーであり、
前記保護接着層はボーングルー層であり、
前記溶剤は水である
ことを特徴とする請求項に記載のガラス象嵌製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス装飾品に関し、特に、ガラス象嵌製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスは非晶質の一種として、脱型などの常用方法で成形することができない。文鎮、中空動物、中実動物、抽象動物模様、麻ひも工芸など、現在市場に出回っているガラス製品は、いずれも吹きガラス製法を元にしている。しかし、現在の吹きガラス製品は、形状及び材質が単一であり、装飾効果も単調なので、吹きガラス製品の象嵌装飾構造を得ることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このため、本発明の課題は、上記のようにガラス製品の形状及び材質が単一で、装飾効果が単調であるため、吹きガラス製品の象嵌装飾構造を得ることができないという、従来技術に存在する問題を解決することである。
【0004】
従って、本発明の目的は、従来技術の方法によっては吹きガラス製品の象嵌装飾構造を作ることができないという問題が解決できる、ガラス象嵌製品及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的を達成するために、本発明によるガラス象嵌製品は、基体を備え、前記基体は中空の空洞部を有し、前記空洞部の側壁には幾つかの透かし彫り穴が形成され、前記透かし彫り穴は中空の前記空洞部と貫通しており、
前記ガラス象嵌製品は、基体に嵌着される吹きガラス装飾構造を更に備え、前記吹きガラス装飾構造は、前記基体の前記空洞部の中に被覆形成される吹きガラスライニング及び前記基体の前記透かし彫り穴に嵌入されるガラス突起装飾部を備え、前記ガラス突起装飾部と前記吹きガラスライニングは、一体にブロー成形される一体構造となっている。
【0006】
好ましくは、前記吹きガラス装飾構造は、前記基体を内から外まで装飾しており、前記ガラス突起装飾部は、前記基体の前記空洞部の内壁に近接した前記吹きガラスライニングの外側壁に形成され、且つ外に向かって突出されて、前記基体の前記透かし彫り穴の中に係合支持される一体型突起構造であり、前記吹きガラスライニングは、透かし彫りした前記基体の前記空洞部の内壁に近接し、且つ前記基体の前記空洞部の内壁とともに前記基体の前記空洞部の二層内壁構造を形成している。
【0007】
好ましくは、前記吹きガラスライニングと前記基体の前記空洞部の内壁は、平行に重合して前記基体の前記空洞部の二層内壁構造を形成し、前記吹きガラスライニングと透かし彫りした前記基体における前記空洞部の内壁は、形状及び大きさが相互適合し、前記基体の前記空洞部の内壁は環状に形成され、前記吹きガラスライニングは環状に形成されて、前記基体の前記空洞部の内壁とともに相互近接した二層環状壁を形成している。
【0008】
好ましくは、前記基体の前記空洞部は、その内部でガラスブロー成形が行われるように形成され、前記ガラス突起装飾部と前記透かし彫り穴は、形状が相互適合し、前記ガラス突起装飾部は、図形、図案又はパターンである。
【0009】
好ましくは、前記吹きガラスライニングと前記基体の前記空洞部の内壁との間には隙間が形成されており、前記ガラス突起装飾部と前記透かし彫り穴の穴壁との間には隙間が形成されている。
【0010】
好ましくは、前記隙間には、ガラスブロー成形の前に前記基体の内壁の表面に形成される除去可能な保護接着層を、前記吹きガラス装飾構造をブロー成形した後に除去することにより対応して形成される隙間が含まれ、前記隙間に、粘着層が更に注ぎ込み形成されている。
【0011】
好ましくは、除去可能な前記保護接着層は、骨膠層である。
【0012】
本発明の目的を達成するために、本発明によるガラス象嵌製品の製造方法は下記ステップを有し、即ち、
ステップ1:装飾しようとする基体を提供すること、前記基体の内部に中空の空洞部を有し、前記空洞部の側壁には幾つかの透かし彫り穴が形成され、前記透かし彫り穴と中空の前記空洞部が貫通されており、
ステップ2:装飾しようとする前記基体に除去可能な保護接着層を形成すること、前記基体の前記空洞部の内壁及び/又は前記透かし彫り穴の中に除去可能な保護接着剤を塗布し、或いは前記基体を前記保護接着剤の中に直接浸して、前記基体の前記空洞部の内壁及び/又は前記透かし彫り穴の内表面に所定厚みの除去可能な保護接着層を形成し、前記保護接着層の耐熱温度は、ガラス溶融温度より低くなく、
ステップ3:前記基体の前記空洞部の中でガラス装飾構造をブロー成形すること、前記空洞部の中において、溶融されたガラスをブロー成形することで、前記空洞部の内部に吹きガラスライニングを形成し、前記透かし彫り穴に溶融されたガラスを充填して、前記透かし彫り穴の中に象嵌されるガラス突起装飾部を形成し、前記ガラス突起装飾部と前記吹きガラスライニングは、一回のブロー成形により形成された一体構造であり、
ステップ4:前記保護接着層を除去すること、前記基体の前記空洞部の内壁及び/又は前記透かし彫り穴の中から前記保護接着層を除去し、前記保護接着層を除去したスペースが対応する隙間に形成される。
【0013】
好ましくは、前記ステップ4において、洗浄方法により前記保護接着層を除去し、前記装飾構造がブロー成形されている前記基体に対し、洗浄剤又は溶剤を使って洗浄を行い、前記保護接着層は、対応する洗浄剤又は溶剤に溶解されて除去され、
前記ガラス象嵌製品の製造方法は、前記隙間の中に注ぎ込みより粘着層を形成するステップ5を更に有している。
【0014】
好ましくは、除去可能な前記保護接着剤は骨膠であり、前記保護接着層は骨膠層であり、前記溶剤は水である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、透かし彫りした基体の内部にガラス内層をブロー成形するとともに、ブロー成形時には液状ガラスが透かし彫り穴の外まで押出されて象嵌構造のガラス突起装飾部を形成するので、基体の表面にいろんな形状及び/又は大きさを有する造形を形成することができる。
【0016】
このように、吹きガラスと透かし彫りした基体の結合により形成されたガラス象嵌製品は、より美感を有し、構造も簡単で、装飾効果の多様化、製品の多様化を図ることができる。従って、高いコストをかけて固定模型を作る必要もなく、ブロー成形により多様な吹きガラス装飾構造を形成することができて、多種の基体の任意の空洞部及び透かし彫り穴の形状に適合し、適応性がより強くなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態による透かし彫りした基体の斜視図である。
図2】本発明の実施形態による内表面に骨膠保護層が形成された、透かし彫りした基体の斜視図である。
図3】本発明の実施形態による透かし彫りした基体にガラスをブロー成形した後の斜視図である。
図4】本発明の実施形態によるガラス象嵌製品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の具体的実施形態について説明する。本発明の実施形態、実施例における特徴の構成は、内容が相互矛盾しない限り、その組み合せも本発明の保護範囲に含まれる。
【0019】
本発明の実施形態によるガラス象嵌製品の製造方法は、吹きガラス工芸を利用して、各種の透かし彫りした基体に対し吹きガラス装飾を行い、且つ内から外まで基体を装飾して、基体の内部に吹きガラスライニングを形成し、基体外部の透かし彫り穴の中に吹きガラスライニングと一体成形されるガラス突起装飾部を形成する。これにより、装飾効果が優れ、様々な装飾図案を形成することができ、工芸方法も簡単である。
【0020】
図1~4に示すように、本発明の実施形態によるガラス象嵌製品100は、中空且つ透かし彫りされた基体10を備え、この基体10は、中空である空洞部1及び空洞部1の側壁に形成された幾つかの透かし彫り穴11を備えており、透かし彫り穴11と中空である空洞部1は貫通している。
【0021】
ガラス象嵌製品100は、基体10に嵌着された吹きガラス装飾構造20を更に備えている。吹きガラス装飾構造20は、基体10の空洞部1に被覆形成され且つガラスブロー成形により形成される吹きガラスライニング2、及び基体10の透かし彫り穴11に嵌入されるガラス突起装飾部21を備えている。ガラス突起装飾部21は、吹きガラスライニング2の外壁から一体に外に向いて突出して透かし彫り穴11の中まで形成された突出物であって、透かし彫り穴11の中に係合支持されている。また、ガラス突起装飾部21は、吹きガラスライニング2と一回のブロー成形により形成された一体のガラスブロー成形構造であって、その形状及び大きさが、透かし彫り穴11に適合している。ここで、ガラス突起装飾部21は、溶融のガラスをブロー成形するとき、液状ガラスが透かし彫り穴11に流れ込んで冷却後に自然形成された構成であるため、透かし彫り穴11との間に堅固で適合な象嵌結合が形成される。これにより、吹きガラスライニング2が基体1に係止されて、両者が脱離しないように固定される。
【0022】
一つの実施例として、液滴の表面張力の原理により、透かし彫り穴11の外部まで突出した一部又は全部のガラス突起装飾部21は、端面が球面、弧面、曲面又は他の形状である泡状物であって、端面の大きさが透かし彫り穴11の大きさより大きくなってもいい。従って、その泡状物が透かし彫り穴11の外部で係止されるの、透かし彫り穴11において、透かし彫り穴11を基体1に係合することができて、吹きガラスライニング2と基体10の更なる堅固な嵌着構造を形成することができる。
【0023】
透かし彫り穴11は一つでも複数でもよく、これに相応して、吹きガラスライニング2の外壁にも対応する一つ又は複数のガラス突起装飾部21を形成すればいい。吹きガラスライニング2の外壁は、基体10の空洞部1の内壁12における側壁に向かっており且つ近接している。
【0024】
吹きガラス装飾構造20は、透かし彫りされた基体10の中空である空洞部1の中で液状ガラスをブロー成形し、冷却して形成される構成である。
【0025】
図1をみると、本実施形態の透かし彫りした基体10は、様々な材質を多様な形状に作った装飾待ちの構成であって、金属や非金属により作られ、例えば、セラミック基体、金属基体又は木質基体であってもいいし、形状も様々に作られ、例えば、グラス、碗、瓶などの容器であってもいい。もちろん、その他の物品又は用品であってもいい。
【0026】
基体10は、ガラスブロー成形に適する内部の空洞部1を備えているので、ガラスブロー成形の際、ガラス吹き竿を空洞部1の内部まで挿入する。ここで、透かし彫り穴11を、ガラスブロー成形時のガラス吹き竿の挿入口として使ってもいいので、情況によって、基体10に別途開口を形成しなくてもいい。空洞部1の側壁には、貫通した一つ又は複数の透かし彫り穴11が形成されている。一つの実施例として、基体10の空洞部1の側壁は環形になって、対応して、基体10の空洞部1の内壁12も環形になっている。
【0027】
そして、図3,4を参照してみると、吹きガラスライニング2は、液状のガラスを透かし彫りした基体10の空洞部1の中に吹き込んで、冷却後に形成された構成である。一つの実施例として、吹きガラスライニング2は、透かし彫りした基体10の空洞部1の内壁12と形状が一致し且つ相互接合する。ガラス突起装飾部21は、吹きガラスライニング2の全体構造から分割できない一部であって、液状ガラスのブロー成形時に透かし彫り穴11に充填した液状ガラスが冷却されて形成された突起部である。
【0028】
一つのガラス突起装飾部21は、一つの透かし彫り穴11に嵌入され且つ係合支持されて、基体10の外表面から突出している。透かし彫り穴11の造形に合わせて、ガラス突起装飾部21は、単一のガラス玉象嵌であってもよく、基体10に対して装飾を形成する構造であれば、玉状でもその他の多様な図形でもよく、図案又はパターンでもいい。
【0029】
吹きガラスライニング2は、溶融されたガラスが基体10の空洞部1の中でブロー成形されてなされている。一つの実施形態として、吹きガラスライニング2は、透かし彫りした基体10の空洞部1の内壁12と形状が一致し、空洞部1の中に被覆形成されて空洞部1の二層内壁構造を形成する。他の実施形態として、吹きガラスライニング2と透かし彫りした基体10の内壁12は、平行に重合して空洞部1の二層内壁構造を形成する。本実施形態において、吹きガラスライニング2の側壁も対応して環形に形成されて、基体10の内壁と重合して空洞部1の二層環状壁を形成し、内部中心で空洞部1が囲まれるように形成される。
【0030】
吹きガラスライニング2の側壁の空洞部1に対応する一面が内壁(符号表記せず)であり、基体10の空洞部1の内壁と接合する側が外壁22(図4)であって、外壁22は基体10の空洞部1の内壁に近接し、外壁の表面に形成された一体のガラス突起装飾部21が透かし彫り穴11の中に嵌入されて、相互係合支持できるので、吹きガラスライニング2と基体1との配合を安定させる。同時に、ガラス突起装飾部21は、透かし彫り穴11に伸び出されて基体表面の装飾ための図形、図案又はパターンを形成し、さまざまな図案の装飾玉を形成することができて、美観の装飾効果があり、構造が簡単で堅固である。
【0031】
更に、吹きガラスライニング2と透かし彫りした基体10の内壁との間には、隙間3が形成されて、熱膨脹と冷収縮時に両者同士の体積変化差に適応して調節することができる。一つの実施形態として、隙間3は、吹きガラスライニング2をブロー成形する前に基体10の空洞部1の内壁表面に塗布した除去可能(例えば、水洗いで除去可能)な保護接着層4を、吹きガラスライニング2のブロー成形後に除去することにより形成される隙間を含んでいる。詳しくは、吹きガラスライニング2をブロー成形する前に、基体10を洗浄可能な保護接着剤の中に完全に浸すか、或いは、基体10の内壁(外壁及び透かし彫り穴の中にも同時に塗布してもいい)に除去可能な保護接着剤を直接塗布して保護接着層4を形成し、その後、空洞部1の中でガラスブロー成形を行って、空洞部1の内壁12の表面における保護接着層4の内側に吹きガラスライニング2を成形する。
【0032】
一つの実施例として、吹きガラスライニング2は、空洞部1の内壁12の保護接着層4に接合される。このため、吹きガラス装飾構造20を成形する際、形成された吹きガラスライニング2の外側面22と基体10の空洞部1の内壁12との間に一層の保護接着層4を有している。ガラスブロー成形が終了後、製品全体を洗浄することで、基体10の空洞部1の内壁12にある保護接着層4を洗浄して除去することができる。従って、除去された保護接着層4により、基体10の空洞部1の内壁12と吹きガラスライニング2との間に隙間3が形成される。
【0033】
同じく、ガラス突起装飾部21と基体10の透かし彫り穴11の穴壁との間にも隙間3’が形成されており、隙間3’は、吹きガラスライニング2をブロー成形する前に基体10の空洞部1の内壁表面及び透かし彫り穴11の中に塗布した除去可能な保護接着層4を、吹きガラスライニング2のブロー成形後に除去することにより形成された隙間である。或いは、ガラスブロー成形の前に、基体全体を除去可能な保護接着剤の中に浸すと、基体10の内外表面及び透かし彫り穴11の中に除去可能な保護接着層が覆われて、乾燥後に基体の内外壁と透かし彫り穴11の中には、いずれにも除去可能な保護接着層4が形成される。吹きガラス装飾構造20の成形終了後、相応の洗剤により製品全体を洗浄することで、保護接着層4が溶解除去されて、ガラス突起装飾部21と基体10の透かし彫り穴11の穴壁との間に隙間3’、及び基体10の空洞部1の内壁12と吹きガラスライニング2との間に隙間3が形成される。
【0034】
除去可能な保護接着剤は、洗浄剤又は溶剤に溶解される塗料又は接着剤であって、浸漬洗浄により除去することができる。これに対応して、形成された除去可能な保護接着層とは、相応の洗浄剤又は溶剤を使って溶解方式で保護接着層を溶解除去することができる。除去可能な保護接着剤は、水洗浄して除去可能な保護接着剤(即ち、塗料又は接着剤)であってもよく、対応して形成された保護接着層は、水洗浄して除去可能な保護接着層(即ち、水に溶解される)である。保護接着層4の耐熱温度は、ガラス溶融温度より低くないため、ガラスブロー成形の際、基体10は、保護接着層4により断熱され且つ液状ガラスの融解スラグから隔離することができて、基体10の表面層が焼損又は破壊されないようにする。ここで、除去可能な保護接着剤は骨膠であり、対応する保護接着層4は骨膠層であることが好ましい。
【0035】
使用時、吹きガラスライニング2をブロー成形する前に基体10の内壁(及び外壁)の表面及び透かし彫り穴11の中にいずれにも骨膠を塗布し、或いは、基体を直接骨膠に浸漬してから乾燥することで、基体の内(外)表面に、及び透かし彫り穴の中に骨膠層を形成する。吹きガラスライニング2のブロー成形後、製品を水に漬かして基体1から骨膠層を除去することができる。対応して、ガラス突起装飾部21と基体10の透かし彫り穴11の穴壁との間に隙間3’、及び基体10の空洞部1の内壁12と吹きガラスライニング2との間に隙間3が形成される。
【0036】
更に、ガラスブロー成形による吹きガラスライニング2と透かし彫りされた基体10との配合を安定させるために、隙間3,3’の中に再び膠質物を注ぎ込んで粘着層(図示せず)を形成してもいい。従来におけるガラス接合剤又は基体粘着が可能な接着剤を使ってもいい。
【0037】
粘着層は、吹きガラスライニング2と透かし彫りされた基体10の膨張係数に合わせて、基体10と吹きガラスライニング2に熱膨脹及び冷収縮が発生しても相互脱離しないように形成されているため、押し砕かれたり破砕されたりすることがない。
【0038】
もちろん、吹きガラスライニング2は多様な形状に形成されてもよく、基体10の空洞部1の中に成形されて、その外側壁のガラス突起装飾部21と一体構造となっている。吹きガラスライニング2と空洞部1の内壁との間の間隔が隙間3のみでもよく、各種の異なる間隔になってもいいので、装飾又は他の機能要求に適応できる。同じく、ガラス突起装飾部21もその形状又は図案が様々で、穴壁との間隔が隙間3’であってもよく、隙間3’と異なる間隔であってもいい。ガラス突起装飾部21の形状、大きさ及び高さは、相互同じでもいいし、異なってもいい。
【0039】
以下、本発明の実施形態によるガラス象嵌製品100の製造方法について説明する。本実施形態によるガラス象嵌製品100の製造方法は、下記ステップを有している。
【0040】
ステップ1:装飾しようとする基体10を提供する。図1に示すように、基体10の内部には中空の空洞部1が形成され、空洞部1の側壁には幾つかの透かし彫り穴11が形成されており、透かし彫り穴11と中空の空洞部1が貫通されている。基体10の内部の空洞部1は、溶融ガラスのブロー成形に適するように設計されている。
【0041】
ステップ2:装飾しようとする基体10に除去可能な保護接着層4を形成する。図2に示すように、基体10の空洞部1の内壁12に、同時に外壁にも、及び透かし彫り穴11の中に、除去可能(例えば、洗浄除去)な保護接着剤を塗布して、基体10の空洞部1の内壁12(又は外壁及び透かし彫り穴の中)に除去可能な保護接着層4を形成することができる。或いは、基体10を洗浄除去可能な保護接着剤の中に浸して、基体10の空洞部1の内壁12、外壁及び透かし彫り穴11の中に、一層の所定厚さを有する保護接着層4を形成することができる。本実施形態において、洗浄除去可能な保護接着剤は骨膠であり、例えば、動物性接着剤であって、水に溶解されて水洗浄することができる。これに対応して、保護接着層4は骨膠層であって、その保護接着層の耐熱温度が、ガラスブロー成形時の作業温度及びブローガラスの温度より低くない。
【0042】
保護接着層(又は骨膠層)4は、基体10が溶融ガラスによる破壊を受けず、熱変形しないように保護するもので、断熱もでき、基体10が溶融ガラスに接触しないように阻止することができる。
【0043】
ステップ3:基体10の空洞部1の中にガラス装飾構造20をブロー成形する。図3に示すように、ガラス吹き竿の一端を基体10の空洞部1の内部まで伸ばし、他の一端を溶融したガラスの中に挿入して、空洞部1の中でガラスブロー成形を行う。溶融したガラスを空洞部1の中に吹き込んでから冷却すると吹きガラスライニング2が形成され、同時に、溶融したガラスを透かし彫り穴11に充填してから冷却するとガラス突起装飾部21が形成される。ここで、ガラスブロー成形による吹きガラスライニング2とガラス突起装飾部21は、吹きガラス装飾構造20を構成する。
【0044】
一つの実施例として、吹きガラス装飾構造20は、基体1の内壁12に吹きガラスライニング2の平行二層壁構造を形成し、且つ基体表面の透かし彫り穴11の中にガラス突起装飾部21を形成し、空洞部1の内部に吹きガラスライニング2を形成して基体1の内壁12に近接し且つ骨膠層に粘着する。同時に、透かし彫り穴において、液状ガラスでガラス突起装飾部21が形成されて透かし彫り穴11の中に嵌入される。ガラス突起装飾部21は、吹きガラスライニング2の外壁に一体に突出形成した、全体が分割できないガラスブロー構造である。
【0045】
もちろん、基体10の空洞部1の中にガラスブロー成形された吹きガラスライニング2は、多様な形状、大きさを有し、空洞部1の内壁の形状と同じでも異なってもよく、空洞部1の内壁に付着されてもいいし、内壁から分離されてもいい。透かし彫り穴11に液状のガラスが充填されて形成した一体構造のガラス突起装飾部21は、その形状、大きさ及び構造が同じであっても異なってもよく、透かし彫り穴との間に異なる隙間が形成されて、異なる象嵌を形成してもいい。
【0046】
ステップ4:保護接着層を除去する。詳しくは、完成品を浸して洗浄することで、図4に示すようなガラス象嵌製品100を得る。ガラス装飾構造20がブロー成形された基体10を共に洗浄するが、適切な洗浄剤又は溶剤を選んで使い、本実施形態では水洗いをする。骨膠層は水に溶解されて完全に洗浄され、除去された骨膠層により、吹きガラスライニング2と基体1の内壁12との間に隙間3が形成され、透かし彫り穴11におけるガラス突起装飾部21と穴壁との間にも隙間3’が形成される。隙間3, 3’は、基体1とガラスの熱膨張係数の差を調節するために使われて、両者の熱膨脹と冷収縮時に発生する体積変化差に適応されるようにする。最後に得られたガラス象嵌製品100において、吹きガラス装飾構造20と基体は相互嵌合するため、構造が堅固で、基体を内から外に向かって装飾しているので、優れた装飾効果を加えるともに、工芸が簡単になる。
【0047】
本発明の実施形態では、基体の材質として、セラミック、金属又は透かし彫り可能な材質を選んでおり、基体の内部において、水洗いで除去可能な接着剤層を処理層とし、処理層の内部において、液状のガラスを使ってブロー成形を行う。そして、各透かし彫り穴にガラスを充填し、液状のガラスが冷却されると、基体の空洞部の内壁に、ガラスブロー成形による吹きガラスライニングが形成される。なお、基体の外部における透かし彫りされた箇所は、それぞれ異なる大きさ、多様な造形で形成されてもいい。
【0048】
以上のように、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱しない限り、その趣旨に基づいて変更、同等代替または改善することができ、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4