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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20220322BHJP
   G02B 17/00 20060101ALI20220322BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
G02B27/01
G02B17/00 A
B60K35/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021046093
(22)【出願日】2021-03-19
(62)【分割の表示】P 2016231027の分割
【原出願日】2016-11-29
(65)【公開番号】P2021107930
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】517080957
【氏名又は名称】デュアリタス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(72)【発明者】
【氏名】村松 雄一
(72)【発明者】
【氏名】酒井 重史
(72)【発明者】
【氏名】松尾 栄樹
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-197493(JP,A)
【文献】特開2012-058294(JP,A)
【文献】特開平08-197981(JP,A)
【文献】特開2009-199020(JP,A)
【文献】特開2010-134050(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0232853(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間画像が形成される中間画像表示体と、
前記中間画像に対応した画像を表示領域に投影する投影光学系と、
前記中間画像表示体と前記投影光学系との間の所定位置に配置され、前記中間画像表示体からの出射光を補正する補正光学系とを備え、
前記表示領域に投影された前記画像に基づいて対象者が視認可能な虚像が形成され、
前記補正光学系は、補正レンズを有し、
前記補正レンズは、取り換え位置まで移動可能であり、前記表示領域に関する条件に応じて選択されることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記表示領域に関する条件は、前記表示領域と前記投影光学系との距離、及び、前記表示領域の設置角度のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記補正レンズは、前記中間画像表示体の近傍に配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記画像表示装置は車両内に搭載され、
前記対象者は前記車両の運転者であり、
前記表示領域は、前記車両のウインドシールド、又は、前記ウインドシールドの内側に配置されたコンバイナに設定され、
前記虚像は前記ウインドシールドの前方に形成され、
前記表示領域に関する条件は、前記車両の種類に応じて定められることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記投影光学系は、入射光を拡大して反射する投影ミラーを少なくとも2枚有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の画像表示装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間画像に対応した画像を投影光学系によって表示領域に投影し、これによって投影画像に基づいた虚像が形成される画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の車載用ヘッドアップディスプレイは、表示情報源に表示された画像を車両のフロントガラスに向けて投射するための投影光学系を有し、フロントガラスからの反射光を観察者の眼球内に導くものであり、フロントガラスと表示情報源との間の光路中に、フロントガラスを反射することにより生ずる像の歪みや傾きを補正するための補正光学部材を選択配置可能に備えて構成される。これにより、フロントガラスの形状の違いに影響されることなく、良好な像が観察可能な汎用性の高い車載用ヘッドアップディスプレイの提供を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-202145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の車載用ヘッドアップディスプレイにおいては、補正光学部材は投影光学系の一部を構成しており、実施形態に示された構成では、投影光学部材を構成する複数の光学部材に挟まれる位置に配置されている。このような位置に補正光学部材を配置すると、画像の表示領域との距離やフロントガラスの角度などに対応して補正光学部材の寸法を大きくしなければならず、この寸法によっては、補正光学部材の一部がダッシュボードから露出してしまい、この露出部分による反射光が運転者側へ到達してしまうといった問題があった。
【0005】
そこで本発明は、表示領域と投影光学系の距離などが変わっても、補正光学系のサイズの変化を抑えつつ、同一の投影光学系を用いて一定の品質の画像を表示できる画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の画像表示装置は、中間画像が形成される中間画像表示体と、中間画像に対応した画像を表示領域に投影する投影光学系と、中間画像表示体と投影光学系との間の所定位置に配置され、中間画像表示体からの出射光を補正する補正光学系とを備え、表示領域に投影された画像に基づいて対象者が視認可能な虚像が形成され、補正光学系は、表示領域に関する条件に応じて選択されることを特徴としている。
これにより、画像表示装置を設置する環境の違い、例えば設置する車両の種類、によって表示領域と投影光学系の距離や表示領域の設置角度などの条件が変わっても、同一の投影光学系を用いることができ、かつ、補正光学系が大型化することを抑えて一定の品質の画像を表示することができる。
【0007】
本発明の画像表示装置において、表示領域に関する条件は、表示領域と投影光学系との距離、及び、表示領域の設置角度のうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
これにより、画像表示装置を設置する環境の違いによって表示領域と投影光学系の距離や表示領域の設置角度が変わっても、同一の投影光学系を用いることができ、かつ、補正光学系が大型化することを抑えて一定の品質の画像を表示することができる。
【0008】
本発明の画像表示装置において、補正光学系は、中間画像表示体の近傍に配置されることが好ましい。
これにより、投影された画像を見る者の眼や顔の位置が変わって視点や視線が変わっても、投影画像の歪みを、前方正面を向いた場合と同程度に抑えることができる。
【0009】
本発明の画像表示装置において、画像表示装置は車両内に搭載され、対象者は車両の運転者であり、表示領域は、車両のウインドシールド、又は、ウインドシールドの内側に配置されたコンバイナに設定され、虚像はウインドシールドの前方に形成され、表示領域に関する条件は、車両の種類に応じて定められることが好ましい。
これにより、画像表示装置を設置する車両の種類によって表示領域と投影光学系の距離や表示領域の設置角度などの条件が変わっても、同一の投影光学系を用いることができ、かつ、補正光学系が大型化することを抑えて一定の品質の画像を表示することができる。
【0010】
本発明の画像表示装置において、補正光学系はホルダに保持され、ホルダを装着することによって、表示領域に関する条件に応じた補正光学系が、中間画像表示体と投影光学系との間の所定位置に配置されることが好ましい。
これにより、画像表示装置の設置環境に対応した補正光学系を容易かつ迅速に選択することができる。
【0011】
本発明の画像表示装置において、投影光学系は、入射光を拡大して反射する投影ミラーを少なくとも2枚有することが好ましい。
これにより、投影光学系において、光路を折り曲げつつイメージ光を拡大できるため、小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、表示領域と投影光学系の距離などが変わっても、補正光学系のサイズの変化を抑えつつ、同一の投影光学系を用いて一定の品質の画像を表示できる画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の概略構成を示す側面図である。
図2】(A)は図1に示す補正レンズの構成を示す斜視図、(B)はホルダが対向位置にあるときのディフューザと補正レンズの配置を示す側面図である。
図3】(A)は実施例2における補正レンズの構成を示す斜視図、(B)は(A)に示す補正レンズの構成を示す側面図である。
図4】(A)は実施例3における補正レンズの構成を示す斜視図、(B)は(A)に示す補正レンズの構成を示す側面図である。
図5】比較例1に係るヘッドアップディスプレイ装置の概略構成を示す側面図である。
図6】(A)は比較例1における補正レンズの構成を示す斜視図、(B)は(A)に示す補正レンズの構成を示す側面図である。
図7】実施例1において、ディフューザ上で長方形とした中間画像を運転者の顔の位置に投影したときの画像の歪みを示す図である。
図8】実施例2において、ディフューザ上で長方形とした中間画像を運転者の顔の位置に投影したときの画像の歪みを示す図である。
図9】実施例3において、ディフューザ上で長方形とした中間画像を運転者の顔の位置に投影したときの画像の歪みを示す図である。
図10】比較例1において、ディフューザ上で長方形とした中間画像を運転者の顔の位置に投影したときの画像の歪みを示す図である。
図11】比較例2において、ディフューザ上で長方形とした中間画像を運転者の顔の位置に投影したときの画像の歪みを示す図である。
図12】比較例3において、ディフューザ上で長方形とした中間画像を運転者の顔の位置に投影したときの画像の歪みを示す図である。
図13】比較例4において、ディフューザ上で長方形とした中間画像を運転者の顔の位置に投影したときの画像の歪みを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の画像表示装置の実施形態としてのヘッドアップディスプレイ装置について図面を参照しつつ詳しく説明する。本実施形態では、車載用のヘッドアップディスプレイ装置を例に挙げているが、本発明の画像表示装置はこれに限定されず、スクリーン等に画像を投影する装置にも適用可能である。
【0015】
図1は、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置10の概略構成を示す側面図である。図2(A)は図1に示す補正レンズ13の構成を示す斜視図、図2(B)はホルダ14が対向位置P1にあるときのディフューザ12と補正レンズ13の配置を示す側面図である。
図1に示すヘッドアップディスプレイ装置10は、光学エンジン11と、中間画像表示体としてのディフューザ12と、補正光学系としての補正レンズ13と、補正レンズ13
を保持するホルダ14と、投影光学系20とを備える。
【0016】
光学エンジン11は、ディフューザ12上に中間画像を形成するユニットである。光学エンジン11は、光源としての可視光レーザーやLEDと、光源からの出射光を反射する走査ミラーと、この走査ミラーからの反射光をディフューザ12の光軸12cに平行な光としてディフューザ12に入射させるコリメータレンズと、前記光源及び走査ミラーを駆動する駆動回路と、記憶回路とからなる。例えば、光学エンジンはDLP(Digital Light Processing)で構成される。DLPの場合、走査ミラーはDMD(Digital Mirror Device)である。
【0017】
中間画像表示体としてのディフューザ12は、例えば、マイクロレンズアレイ、拡散板、ランダム位相板、回折格子である。
また、光学エンジン11は、ディフューザ12上に形成される中間画像に対応する、予め記憶回路に保存された制御データにしたがって駆動される。
【0018】
光学エンジン11の走査ミラーは、2次元スキャナとして、互いに直交する2つの回動軸を中心として反射面が回動する。この走査ミラーにおいては、第1の回動軸を中心とした回動によって1ライン分の光がコリメータレンズに入射し、第2の回動軸を中心とした所定量の回動の後に、第1の回動軸を中心とする回動を行うことによって次の1ライン分の光がコリメータレンズに入射し、これらを繰り返すことによって1フレーム分の光がコリメータレンズ上に照射される。コリメータレンズに照射された光はディフューザ12へ出射され、ディフューザ12上に中間画像が形成される。
【0019】
また、走査ミラーに代えて、前記DMDやLCOS(商標、Liquid crystal on silicon)を用いることもできる。DMDを用いる場合は、光源からの入射光をマトリックス状に配列した複数のマイクロミラーのそれぞれで反射させ、ディフューザ12上に中間画像を形成する。LCOSは、透過型と反射型のいずれを用いることができ、LCOSでの透過光又は反射光によってディフューザ12上に中間画像を形成する。
【0020】
さらにまた、光学エンジン11とディフューザ12に代えて、自発光デバイス、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)やEL素子(エレクトロルミネッセンス素子)を用いることもできる。
【0021】
図1又は図2(B)に示すように、ディフューザ12の光軸12cの延長線上であって、ディフューザ12の出射面12aから方向Tに沿って投影光学系20へ向かう光路上には、ホルダ14に保持された補正レンズ13が配置されている。すなわち、補正レンズ13は、ディフューザ12と投影光学系20との間に配置されている。この補正レンズ13は、投影光学系20側に凸面を向けた平凸正レンズであって、その光軸13cがディフューザ12の光軸12cの延長線に重なるように配置されている。より具体的には、図2に示すように、ディフューザ12からの出射光が入射する入射面13aは、入射方向Tに直交する平面からなり、出射面13bは投影ミラー21側に突出する凸面であり、凸面の形状は補正レンズ13が有する補正機能と集光機能に合わせて、単一の球面、非球面、自由曲面、又は、これらを組み合わせて構成している。補正レンズ13は、ディフューザ12からの出射光を集光し、光軸13cの延長線上に位置する投影ミラー21側へ出射する。補正レンズ13が集光機能を有することにより、ディフューザ12から投影光学系20へ向かうイメージ光の光路を絞ることができ、イメージ光の損失を抑えることができる。
ここで、図1に示す方向Tは、ディフューザ12の光軸12c及び補正レンズ13の光軸13cに沿った方向であり、補正レンズ13から投影ミラー21側へ向かう方向である。
【0022】
ホルダ14は、ディフューザ12から補正レンズ13へ入射した光が投影光学系20側へ出射するのを妨げないように補正レンズ13を保持し、駆動機構(不図示)によってディフューザ12の光軸12cに垂直な方向D(図1に示す矢印の方向)に沿って移動可能である。ホルダ14は、移動方向Dにおいて、ディフューザ12と補正レンズ13が互いに対向する対向位置P1と、ディフューザ12の前方から退避してディフューザ12と補正レンズ13が対向しない退避位置P2と、のいずれか一方に位置するように移動する。退避位置P2においては、別の補正レンズを保持した別のホルダとの交換が可能である。なお、この態様に限らず、別の補正レンズに交換が可能な構成であればよい。
【0023】
補正レンズ13は、ウインドシールドWの表示領域WAに関する条件、例えば、投影光学系20の投影レンズ22と表示領域WAとの距離L(図1)、表示領域WAの設置角度S、表示領域WAと運転者の顔や眼との距離、表示領域WAの平面積、及び、投影倍率のうちの少なくとも1つに応じて選択され、特に、少なくとも上記距離Lと設置角度Sのいずれか1つに応じて選択される。これにより、ヘッドアップディスプレイ装置10を搭載する車両の種類に応じて、構成や光学特性の異なる補正光学系を保持したホルダを装着することが可能となる。より具体的には、車種によって、ヘッドアップディスプレイ装置10と、ウインドシールドWや運転者の眼との距離や方向が異なることに対応して、ディフューザ12で形成された中間画像表示体からの出射光を補正レンズ13で補正する。ここで、補正レンズ13による補正には、中間画像表示体からの出射光の光路や光学特性の補正を含む。これによって、光学エンジン11、ディフューザ12、及び、投影光学系20の配置関係を変えることなく、ディフューザ12で形成された中間画像に精度よく対応する画像をウインドシールドW上に投影でき、さらに、この投影画像に対応する虚像をウインドシールドWの前方に形成することが可能となる。
【0024】
図2(B)に示すように、ホルダ14が対向位置P1にあるとき、補正レンズ13はディフューザ12の近傍に位置している。すなわち、ディフューザ12の出射面12aからの出射光の一定以上の割合、例えば98%以上が補正レンズ13に入射するような距離で、ディフューザ12の出射面12aと補正レンズ13の入射面13aが互いに対向している。これにより、補正レンズ13の光軸13cに直交する面内のサイズを大きくすることなく、ディフューザ12からの出射光である散乱光をもれなく補正レンズ13へ入射させることが可能となり、かつ、搭載する車両の種類に応じて画像の歪みを補正でき、よって、ディフューザ12に形成された中間画像の画質を落とさずに投影ミラー21側へ与えることができる。
【0025】
なお、補正光学系としては、上記補正レンズ13のような1枚のレンズではなく、複数枚のレンズで構成してもよい。この場合、集光機能と歪み補正機能を別のレンズにそれぞれ持たせてもよい。さらに、拡大や縮小の機能を有したレンズが含まれていてもよい。
【0026】
ディフューザ12に結像され、さらに補正レンズ13で補正された画像を含むイメージ光は、投影光学系20の投影ミラー21に入射する。投影光学系20は、2枚の投影ミラー21、22からなる。投影光学系として投影ミラーを用いることにより、レンズを用いた拡大投影光学系と比べて、各種の光学収差を抑えやすくなる。また、2枚の投影ミラーを用いて光路を折り曲げつつイメージ光を拡大するため、投影光学系を配置するサイズを小さくする抑えることができる。
【0027】
投影ミラー21は、図1に示すように、補正レンズ13側に反射面21rを有する凹面鏡(拡大鏡)である。補正レンズ13で補正された画像を含むイメージ光は、投影ミラー21で拡大・反射される。投影ミラー22は、図1に示すように、投影ミラー21側に反射面22rを有する凹面鏡(拡大鏡)である。投影ミラー21で反射された画像を含むイ
メージ光は、投影ミラー22で拡大・反射される。
【0028】
投影ミラー22の反射光は、被投影体としての、車両のウインドシールドWの表示領域WAに投影される。このウインドシールドWは半反射面として機能するため、入射したイメージ光は、対象者としての運転者に向けて反射されるとともに、ウインドシールドWの前方位置Pに虚像が形成され、運転者の目Eには、ステアリングホイールの前方に、ディフューザ12に結像された中間画像に対応する情報が表示されているように見える。
ここで、図1に示すように、表示領域WAは、重力方向に直交する水平面Hに対して、上側へ傾斜角度Sをなしている。また、表示領域WAは矩形状の平面形状を有し、その中心位置から投影ミラー22の反射面22rの中心位置までの距離をLとしている。
【0029】
なお、投影光学系としては、図1に示す構成の投影光学系20のような2枚の凹面鏡ではなく、凹面鏡や反射鏡を複数組み合わせて構成してもよい。例えば1枚の反射鏡と1枚の凹面鏡で構成した場合、補正レンズ13からの出射光が反射鏡で反射されてその進行方向が変更され、反射鏡からの光が凹面鏡で拡大・反射されてウインドシールドWに投影される。これによって各部材の配置の自由度が高められ、装置のサイズや形状を設計しやすくなる。
【0030】
また、上記実施形態では、投影ミラー22からの反射光を、被投影体としてのウインドシールドWに投影させていたが、被投影体としてウインドシールドWの内側にコンバイナを配置し、投影ミラー22からの反射光をコンバイナに投影する構成も可能である。この構成においては、コンバイナが半反射面として機能するため、入射したイメージ光は、対象者としての運転者に向けて反射されるとともに、ウインドシールドWの前方位置Pに虚像が形成される。
【0031】
以下、実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1においてディフューザ12と投影ミラー21の間に配置する補正レンズは、図1及び図2(A)、(B)に示す補正レンズ13である。この補正レンズ13は、以下の条件でSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)に設置することを想定されている。
(1)ウインドシールドWの表示領域WAの水平面Hに対する傾斜角度S:36度
(2)投影倍率:6.0倍
(3)表示領域WAの中心位置から投影ミラー22の反射面22rの中心位置までの距離L:173.7mm
ここで、投影倍率は、ディフューザ12に形成された画像の対角線の長さに対する、ウインドシールドWの表示領域WAに形成される画像の対角線の比である。
【0032】
(実施例2)
図3(A)は、実施例2における補正レンズ33の構成を示す斜視図、図3(B)は図3(A)に示す補正レンズ33の構成を示す側面図である。
実施例2における補正レンズは、図3(A)、(B)に示す補正レンズ33である。この補正レンズ33は、実施例1の補正レンズ13と同様に、ディフューザ12の出射面12aから方向Tに沿って投影光学系20へ向かう光路上に配置された平凸正レンズである。補正レンズ33において、ディフューザ12側からの入射面33aは平面であり、投影光学系20側への出射面33bは投影光学系20側に凸面を向けており、その光軸33cはディフューザ12の光軸12cの延長線に重なるように配置されている。補正レンズ33は、以下の条件でセダンに設置することを想定されている。
(1)ウインドシールドWの表示領域WAの水平面Hに対する傾斜角度S:34度
(2)投影倍率:5.96倍
(3)表示領域WAの中心位置から投影ミラー22の反射面22rの中心位置までの距離L:170.3mm
【0033】
(実施例3)
図4(A)は、実施例3における補正レンズ43の構成を示す斜視図、図4(B)は図4(A)に示す補正レンズ43の構成を示す側面図である。
実施例3における補正レンズは、図4(A)、(B)に示す補正レンズ43である。この補正レンズ43は、実施例1の補正レンズ13と同様に、ディフューザ12の出射面12aから方向Tに沿って投影光学系20へ向かう光路上に配置された平凸正レンズである。補正レンズ43において、ディフューザ12側からの入射面43aは平面であり、投影光学系20側への出射面43bは投影光学系20側に凸面を向けており、その光軸43cはディフューザ12の光軸12cの延長線に重なるように配置されている。補正レンズ43は、以下の条件でスポーツカーに設置することを想定されている。
(1)ウインドシールドWの表示領域WAの水平面Hに対する傾斜角度S:30度
(2)投影倍率:5.5倍
(3)表示領域WAの中心位置から投影ミラー22の反射面22rの中心位置までの距離L:155.4mm
【0034】
(比較例1)
図5は、比較例1に係るヘッドアップディスプレイ装置100の概略構成を示す側面図である。図6(A)は、比較例1における補正レンズ103の構成を示す斜視図、図6(B)は図6(A)に示す補正レンズ103の構成を示す側面図である。
図5に示すように、比較例1のヘッドアップディスプレイ装置100は、図1に示すヘッドアップディスプレイ装置10に対して、補正レンズ13及びホルダ14を設けていない点、及び、投影ミラー22からウインドシールドWへの光路上に補正レンズ103を設けている点を除いて同様の構成を有する。また、図5に示す方向Rは、投影ミラー22の反射面22rの中心位置から表示領域WAの中心位置へ向かう光路に沿った方向である。
【0035】
比較例1の補正レンズ103は、実施例1と同一となる以下の条件でSUVに設置することを想定されている。
(1)ウインドシールドWの表示領域WAの水平面Hに対する傾斜角度S:36度
(2)投影倍率:6.0倍
(3)表示領域WAの中心位置から投影ミラー22の反射面22rの中心位置までの距離L:173.7mm
【0036】
比較例1における補正レンズ103は、投影ミラー22の反射面22rからの反射光がウインドシールドWへ向かう光路上に配置された平板状のレンズである。補正レンズ103において、投影ミラー22側からの入射面103a及びウインドシールドW側への出射面103bのいずれも平面であり、その光軸103cは、上記方向Rに沿うように配置されている。
【0037】
(比較例2~4)
比較例2は、実施例1に対して、補正レンズ13を設けない構成としている。
比較例3は、実施例2に対して、補正レンズ33を設けない構成としている。
比較例4は、実施例3に対して、補正レンズ43を設けない構成としている。
【0038】
図7図13は、ディフューザ12上で長方形状に形成した中間画像を運転者の顔の位置に投影したときの画像の歪みを示す図であって、それぞれ実施例1~3及び比較例1~4に対応する。各図の(E)(図7(E)、図8(E)、図9(E)、図10(E)、図11(E)、図12(E)、図13(E))は、顔が前方正面を向いており、眼の位置(
Eyepoint)が基準座標(X=0、Y=0)にある場合を示している。ここで、X座標は水平方向の座標、Y方向は鉛直方向の座標である。
【0039】
これに対して、各図の(A)、(D)、(E)では、Y座標が+31.5であって、運転者の眼の位置は基準座標よりも上側にあり、(C)、(F)、(I)では、Y座標が-31.5であって、運転者の眼の位置は基準座標よりも下側にある。
また、各図の(A)、(B)、(C)では、X座標が+66.5であって、運転者の眼の位置は基準座標よりも左側にあり、(G)、(H)、(I)では、X座標が-66.5であって、運転者の眼の位置は基準座標よりも右側にある。
【0040】
実施例1~3にそれぞれ対応する図7図9を見ると、いずれも歪みが少なく、補正レンズが高い補正効果を示していることが分かる。さらに、各図の(E)と、それ以外の(A)~(D)及び(F)~(I)とを比較すると、運転者の眼の位置が異なっても、基準座標における画像と同程度の歪みに抑えることができていることが分かる。また、図7(A)~(I)のそれぞれと、図8(A)~(I)のそれぞれと、図9(A)~(I)とを互いに比較すると、補正の効果は同等であり、表示領域WAの傾斜角度Sと、表示領域WAから投影ミラー22の反射面22rまでの距離Lに応じて補正レンズを選択することによって、最適な補正効果を得られることが分かる。
【0041】
これに対して、実施例1に対応する図7と、比較例1に対応する図10とを比較すると、図7に示す画像に比べて、図10に示す画像はいずれも面積が小さく、かつ、歪みが多くなっている。したがって、補正レンズの位置は、投影ミラー22とウインドシールドWの間よりも、ディフューザ12と投影ミラー21の間の方が好ましいことが分かる。
【0042】
また、図7図11図8図12図9図13をそれぞれ比較すると、比較例2~4に対応する図11図13に示す画像はいずれも実施例1~3に対応する画像よりも面積が小さく、かつ、歪みが多くなっている。したがって、補正レンズを配置することによって、歪みを抑えた画像が得られることが分かる。
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のように、本発明に係る画像表示装置は、表示領域と投影光学系の距離などが変わっても、補正光学系のサイズの変化を抑えつつ、同一の投影光学系を用いて一定の品質の画像を表示できる点で有用である。
【符号の説明】
【0044】
10 ヘッドアップディスプレイ装置(画像表示装置)
11 光学エンジン
12 ディフューザ(中間画像表示体)
12a 出射面
12c 光軸
13 補正レンズ(補正光学系)
13a 入射面
13b 出射面
13c 光軸
14 ホルダ
20 投影光学系
21、22 投影ミラー
21r、22r 反射面
33、43 補正レンズ
33a、43a 入射面
33b、43b 出射面
33c、43c 光軸
H 水平面
L 距離
P 前方位置
P1 対向位置
P2 退避位置
S 傾斜角度
W ウインドシールド
WA 表示領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図12
図13