(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】水耕栽培装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20220323BHJP
【FI】
A01G31/00 601C
(21)【出願番号】P 2019563006
(86)(22)【出願日】2018-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2018046213
(87)【国際公開番号】W WO2019131233
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2017252966
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508330696
【氏名又は名称】株式会社野菜工房
(74)【代理人】
【識別番号】100090413
【氏名又は名称】梶原 康稔
(72)【発明者】
【氏名】落合 祐介
(72)【発明者】
【氏名】周藤 一之
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-166956(JP,A)
【文献】実公平4-37419(JP,Y2)
【文献】米国特許出願公開第2017/0202156(US,A1)
【文献】特開2002-238382(JP,A)
【文献】特許第3924753(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培ベッドに植え付けられた植物に潅水を行って栽培する水耕栽培装置であって、
前記栽培ベッドのうち、前記植物の根側に噴霧槽を設けるとともに、
この噴霧槽の底側に、植物で吸収されずに残った霧の水溶液を排水する排水口が設けられており、
前記排水口から排水された水溶液から固形成分を取り除く前段フィルタと、
噴霧する水溶液が貯蔵された水溶液タンクと、
水溶液タンク内の水溶液を前記噴霧槽に送るポンプと、
水溶液中に含まれる虫の卵を除去する
後段フィルタと、
前記噴霧槽内において、前記植物の根に対して前記水溶液を噴霧する噴霧手段と、
を備えており、
前記前段フィルタを通過した水溶液を前記水溶液タンクに収容するとともに、該水溶液タンクの水溶液を、前記ポンプにより前記後段フィルタを通過させて、前記噴霧手段で噴霧槽に噴霧することで、水溶液を循環させる循環手段が構成されており、
前記
後段フィルタを、前記循環手段の循環経路のうち、最も噴霧手段に近い位置に配置するとともに、前記噴霧手段による水溶液の噴霧のみを行って、前記植物を栽培することを特徴とする水耕栽培装置。
【請求項2】
前記水溶液タンクに、水ないし肥料を供給する補充装置を設けたことを特徴とする請求項1記載の水耕栽培装置。
【請求項3】
前記噴霧手段が、
前記噴霧槽の底面側に沿って敷設された給水パイプに設けられており、前記後段フィルタを通過した水溶液が噴霧される複数の噴霧ノズルを備えていることを特徴とする請求項1記載の水耕栽培装置。
【請求項4】
前記噴霧
ノズルを、前記植物の植付面積0.08m
2~1.0m
2当たり1個の割合で設置したことを特徴とする請求項3記載の水耕栽培装置。
【請求項5】
前記噴霧
ノズルにおける異物通過径を、0.15mm~0.9mmとしたことを特徴とする請求項
3又は4記載の水耕栽培装置。
【請求項6】
前記後段フィルタのメッシュサイズを、200μm~55μmとしたことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の水耕栽培装置。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の水耕栽培装置を利用して植物に潅水を行って栽培する水耕栽培方法であって、
前記噴霧手段で前記水溶液を前記植物の根に噴霧する噴霧工程と、
前記循環手段で噴霧した水溶液を回収して再び噴霧する循環工程と、
前記循環手段の循環経路うち、最も噴霧手段に近い位置で、前記水溶液中の卵を除去する卵除去工程と、
を含み、
前記噴霧工程による水溶液の噴霧のみを行って、前記植物を栽培することを特徴とする水耕栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜などを水溶液(培養液)を利用して栽培する水耕栽培装置及びその方法の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の水耕栽培装置ないし方法としては、例えば、下記特許文献1記載の「水耕栽培装置及び水耕栽培方法」がある。これは、主根と側根とを有する植物体を育成する際に適用されるもので、主根に対しては霧状に液体を噴霧することにより潅水を行い、側根に対しては液体に浸すことにより潅水を行うようにするとともに、主根潅水部による噴霧間隔又は噴霧時間の少なくとも一方を調整して主根に対する液体の噴霧量を必要量に制限することで、適切量の液体を植物体に供給するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した背景技術では、水溶液が湛えられている室内に特に双翅目類のうち水中に卵を産卵する虫が入り込むと、湛液中に産卵し、これが孵化して増殖するといった恐れがあり、衛生管理上、好ましいとは言えない。
【0005】
本発明は、以上のような点に着目したもので、虫の発生を良好に低減することができる水耕栽培装置及びその方法を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水耕栽培装置は、栽培ベッドに植え付けられた植物に潅水を行って栽培する水耕栽培装置であって、前記栽培ベッドのうち、前記植物の根側に噴霧槽を設けるとともに、この噴霧槽の底側に、植物で吸収されずに残った霧の水溶液を排水する排水口が設けられており、
前記噴霧槽の排水口から排水された水溶液から固形成分を取り除く前段フィルタと、噴霧する水溶液が貯蔵された水溶液タンクと、水溶液タンク内の水溶液を前記噴霧槽に送るポンプと、水溶液中に含まれる虫の卵を除去する後段フィルタと、前記噴霧槽内において、前記植物の根に対して前記水溶液を噴霧する噴霧手段とを備えており、前記前段フィルタを通過した水溶液を前記水溶液タンクに収容するとともに、該水溶液タンクの水溶液を、前記ポンプにより前記後段フィルタを通過させて、前記噴霧手段で噴霧槽に噴霧することで、水溶液を循環させる循環手段が構成されており、前記後段フィルタを、前記循環手段の循環経路のうち、最も噴霧手段に近い位置に配置するとともに、前記噴霧手段による水溶液の噴霧のみを行って、前記植物を栽培することを特徴とする。
【0007】
主要な形態の一つによれば、前記水溶液タンクに、水ないし肥料を供給する補充装置を設けたことを特徴とする。他の形態によれば、前記噴霧手段が、前記噴霧槽の底面側に沿って敷設された給水パイプに設けられており、前記後段フィルタを通過した水溶液が噴霧される複数の噴霧ノズルを備えていることを特徴とする。
【0008】
更に他の形態によれば、前記噴霧ノズルを、前記植物の植付面積0.08m2~1.0m2当たり1個の割合で設置したことを特徴とする。もしくは、前記噴霧ノズルにおける異物通過径を、0.15mm~0.9mmとしたことを特徴とする。
【0009】
更に他の形態によれば、前記後段フィルタのメッシュサイズを、200μm~55μmとしたことを特徴とする。
【0010】
本発明の水耕栽培方法は、前記いずれかに記載の水耕栽培装置を利用して植物に潅水を行って栽培する水耕栽培方法であって、前記噴霧手段で前記水溶液を前記植物の根に噴霧する噴霧工程と、前記循環手段で噴霧した水溶液を回収して再び噴霧する循環工程と、前記循環手段の循環経路うち、最も噴霧手段に近い位置で、前記水溶液中の卵を除去する卵除去工程とを含み、前記噴霧工程による水溶液の噴霧のみを行って、前記植物を栽培することを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、植物の根に対する溶液の噴霧のみを行い、更には、虫の卵を除去するようにしたので、虫の発生を良好に低減することができ、更には菌の付着も低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施例における水耕栽培装置の全体を示す図である。(A)は平面から内部を見た図であり、(B)は側面から内部を見た図である。
【
図3】噴霧ノズル226の異物通過径の大小を比較して示す図である。
【
図4】噴霧ノズル226の他の配置形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1には本実施例にかかる水耕栽培装置の全体の様子が示されており、その主要部が
図2に示されている。これらの図において、水耕栽培装置100は、栽培ベッド200と、循環ユニット300を中心に構成されている。
【0015】
栽培ベッド200は、細長い枠体202の上部に、植付パネル210が多数配置されており、前記枠体202の下側に噴霧槽220を形成した構造となっている。植付パネル210は、例えば発泡スチロールなどによって形成されており、複数の植付穴212が形成されている。植付け対象の植物214は、ウレタンスポンジなどの柔軟性・通気性のある素材で作られた保持材216で茎部分が保持されて、前記植付穴212に植え付けられる。
【0016】
一方、噴霧槽220は、例えば塩化ビニールのシートによって構成されており、室内には、その底面側の長手方向に沿って両側に給水パイプ222,224がそれぞれ敷設されており、それらには適宜の間隔で噴霧ノズル226が設けられている。図示の例では、噴霧ノズル226は、噴霧槽220の長手方向に対して交互に給水パイプ222,224に設けられている。更に、噴霧槽220の中央付近には、排水口228が設けられている。
【0017】
噴霧ノズル226から噴霧された水溶液の霧は、上方に向かって放出され、植付パネル210に植え付けられている植物214の根に対して噴霧される。植物214で吸収されずに残った水溶液の霧は、噴霧槽220内で沈降し、あるいは壁面に付着して落下し、排水口228から排水されて回収される。このように、本実施例では、噴霧によって植物214に対する潅水が行われるようになっており、積極的に水溶液に浸す湛液による潅水は行われない。
【0018】
次に、循環ユニット300は、噴霧槽220から回収した水溶液を再び噴霧槽220に循環させるためのもので、
図2に詳細を示すように、前段フィルタ310,水溶液タンク320,補充装置330,ポンプ340,後段フィルタ350を中心に構成されている。これらのうち、前段フィルタ310は、配管302によって、上述した噴霧槽220の排水口228に接続されている。前段フィルタ310の出口側には水溶液タンク320が設けられており、噴霧する水溶液が貯蔵されている。この水溶液タンク320には、補充装置330が設けられており、タンク内の水溶液が一定量以下となったときは、水や肥料が適宜供給されるようになっている。水溶液タンク320内の水溶液は、ポンプ340によって後段フィルタ350に送り出されるようになっており、後段フィルタ350の出口側は、配管304によって、上述した噴霧槽220の給水パイプ222,224に接続されている。上述した前段フィルタ310としては、例えば液体から固形成分を取り除くために用いる網状の器具であるストレーナが使用され、後段フィルタ350としては、例えばディスクタイプのものが使用される。
【0019】
上述した噴霧槽220の排水口228から排出された水溶液は、配管302から前段フィルタ310に導入され、ここでゴミや根の断片などが除去されて水溶液タンク320に戻る。そして、再び、ポンプ340で送り出され、後段フィルタ350で噴霧ノズル226が詰まらないようにフィルタ処理が行われて、配管304から噴霧槽220に供される。
【0020】
ところで、後段フィルタ350については、従来は噴霧ノズル226が詰まらないようにするためのものであることから、メッシュサイズはノズル径以下となっている。これに対し、本実施例では、後段フィルタ350の目を更に細かくして、虫の卵が通過できないようにしている。具体的には、メッシュサイズ(目の径の大きさ)が400μm以下であれば、卵を除去できるが、あまり細かくすると、植物214の成長に必要な水溶液量を確保するためにポンプ340の送圧を高くする必要も生ずるので、200μm~55μm程度が好ましい。このようにすることで、異物による噴霧ノズル226の詰まりを防止するのみならず、水溶液中に含まれている虫の卵も除去するようになっている。
【0021】
次に、上述した噴霧ノズル226としては、ノズル本体内にクローザーが有るもの,又は無いものなど、公知の各種のものを適用してよい。ノズル自体の構造が同じであれば、霧の粒径と異物の通過径は、ほぼ比例関係にあるが、構造が異なる場合は、霧の発生方法も異なるため、霧の粒径が大きくても異物通過径は小さい(あるいはその逆)ということがあり得る。
図3には、同じ構造のノズル226における先端の断面を示しており、異物通過径は、同図(A)が最も狭く、同図(B)は中ぐらいで、同図(C)が最も大きくなっている。栽培する植物214には、適切に成長するためにどの程度の水分量を与えるとよいかといった目安が存在する。例えば、レンコンに水を少ししか与えなければ枯れてしまうし、逆にサボテンに水を与えすぎると根腐れ等を起こして生育しなくなる。前記噴霧ノズル226の異物通過径は、ノズルの構造が同じであれば、その大小が霧の粒径に影響し、植物214に与えられる水分量に直結する。従って、異物通過径を、栽培する植物214に対応して適切な大きさに設定することが望ましい。
【0022】
例えば、
図3(B)に示す状態を適切な異物通過径であるとする。これに対し、同図(A)に示すように、同じノズル構造で異物通過径を小さくすると、噴霧される霧の粒径も小さくなる。一方、同図(C)に示すように、同じノズル構造で異物通過径を逆に大きくすると、霧の粒径も大きくなるとともに、大量の水を流さなくてはいけなくなることから、ポンプやその他の付帯設備の製造コストが高くなってしまう。これらの点を考慮して実験を行ったところ、異物通過径は、0.15mm~0.9mm程度が好適であり、本実施例では、0.5mmのものを使用している。
【0023】
次に、噴霧槽220内における噴霧ノズル226の設置数であるが、栽培する植物214によって適宜設定してよいが、本実施例では、植付パネル210における植物214の植付面積0.3m2~0.6m2とに対して噴霧ノズル226を1個程度の割合で設置している。また、噴霧ノズル226の設置間隔は、本実施例では、600mm~700mmとしている。
【0024】
次に、本実施例の全体の動作を説明する。噴霧ノズル226から噴霧された水溶液の霧は、上方に向かって放出され、植付パネル210に植え付けられている植物214の根に対して噴霧される。植物214で吸収されずに残った霧は、噴霧槽220内で沈降し、あるいは壁面に付着して落下し、排水口228から排水される。このとき、植物214の葉側と噴霧槽220とが植付パネル210によって隔離されていることから、噴霧槽220内への虫500の侵入が低減されるようになる。なお、植付パネル210と植物214との隙間は、保持材216で保持されているので、この部分からの噴霧槽220への虫500の侵入は、ほとんどない。
【0025】
また、前記隔離により、噴霧槽220内で噴霧された水溶液の植物214の葉に対する付着も低減される。菌は水溶液に繁殖することから、水溶液の付着が低減されることで、植物214の菌の数も低減されるようになる。更に、前記隔離により、噴霧槽220内への外光の侵入も阻止されるようになる。このため、噴霧槽220内における藻などの発生も低減されるようになり、これによっても、菌の繁殖が抑制されるようになる。
【0026】
しかし、ごくまれに、噴霧槽220内に虫500が侵入し、水溶液中に産卵する可能性があり、排出して回収される水溶液中に卵が含まれることとなる。この卵504は、水溶液とともに、循環ユニット300の前段フィルタ310を通過し、水溶液タンク320に収容される。なお、水溶液タンク320は絶えず水溶液を貯蔵しており、タンク内の点検作業中に虫500が入り込んで卵504を産む可能性が少ないながらもある。
【0027】
水溶液タンク320内の水溶液は、ポンプ340によって、後段フィルタ350に送り出される。後段フィルタ350は、上述したように、卵504を除去することができるようにメッシュ値が設定されている。このため、虫500の卵504は、後段フィルタ350を通過することができず、卵504が含まれていない水溶液が配管304から給水パイプ222,224に供給される。このため、噴霧ノズル226からは、卵504が含まれていない水溶液が噴霧されるようになる。このとき、虫500の卵504のみならず、他の有機物なども除去される。菌の繁殖の要因となる有機物が除去されることでも、噴霧槽220内における菌の繁殖が抑制されるようになる。
【0028】
以上のように、本実施例によれば、以下のような効果が得られる。
a,噴霧による潅水のみが行われ、積極的に湛液による潅水は行われないため、湛液に虫による卵の産卵がないことから、虫の発生が低減されるようになる。
b,噴霧槽220や水溶液タンク320に虫が侵入して産卵したとしても、後段フィルタ350によって水溶液中から除去されるため、噴霧槽220内での虫の孵化が防止される。
c,植物214と噴霧槽220を植付パネル210によって隔離していることから、菌が繁殖する水溶液の植物214への付着が低減される。また、噴霧槽220内への外光の侵入が阻止され、あるいは、噴霧槽220内における藻などの発生も低減されるようになり、噴霧槽220内における菌の繁殖が抑制されるようになる。このため、植物214に付着する菌の数も低減されるようになり、全体として低細菌化を図ることができる。
【0029】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例では、水耕栽培装置100を細長い形状としたが、必要に応じて各種の形状としてよい。給水パイプ222,224や噴霧ノズル226,排水口228についても同様であり、配管形状や設置数は、必要に応じて適宜設定してよい。
(2)前記実施例では、前段・後段の2つのフィルタを設けたが、フィルタの数は、必要に応じて増減してよく、目の粗いフィルタと細かいフィルタを組み合わせて多段式とするといった公知の手法を適用してよい。
【0030】
(3)噴霧する水溶液としては、植物214によるが、例えば、レタスの場合、チッソ,カリウム,カルシウムを水に混合したものを使用する。具体的には、カネコ種苗株式会社製のファームエース1号,2号,3号などを使用する。水のみということもあり得る。
(4)前記実施例では、噴霧槽220や水溶液タンク320への虫500の侵入による水溶液への産卵を典型的な例として示したが、他の経路から虫500が侵入する恐れもある。しかし、水溶液の流路のうち、噴霧ノズル226に近い位置に後段フィルタ350を設けることで、他の経路から侵入した虫500が産卵した卵についても除去することができる。
(5)本発明では、水溶液の噴霧のみを行っており、植物214の根を水溶液に意図的ないし積極的に浸すことは行わないが、噴霧した水溶液が噴霧槽220内に多少溜まって、これに植物214の根が浸かることがある。このような場合も本発明における「水溶液の噴霧のみを行う」には含まれるものであり、意図的・積極的な湛液による潅水は行わない趣旨である。
【0031】
(6)前記実施例では、植付パネル210における植物214の植付面積0.18m2~0.42m2毎に噴霧ノズル226を1個程度の割合で設置したが、栽培する植物214に応じて、適宜増減してよい。しかし、噴霧ノズル226の設置数を必要以上に増やしてもコストがかさむことになり、逆に設置数を減らすと十分な噴霧を行うことができない。このような観点からすると、植付面積0.08m2~1.0m2当たり1個程度の割合が好適と考えられるが、上記実施例では、植付面積0.18m2~0.42m2にノズル1個としている。
【0032】
(7)前記実施例では、
図1(A)に示したように、噴霧槽220の長手方向の両側に交互に噴霧ノズル226を配置したが、
図4(A)に示すように、一方の側にのみ噴霧ノズル226を配置してもよい。また、必ずしも等間隔で配置する必要はなく、同図(B)に示すように、2つずつ寄せて配置し、噴霧方向を適宜設定するようにしてもよい。
(8)前記実施例では、噴霧槽220の両側に給水パイプ222,224を配置したが、噴霧槽220の中央に給水パイプを設置してもよいし、S字状,クランク状など、各種の配置としてよい。噴霧槽220についても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、植物の根に対する溶液の噴霧のみを行い、更には、虫の卵を除去するようにしたので、虫の発生を良好に低減することができ、更には菌の付着も低減することができ、野菜などの水耕栽培に好適である。
【符号の説明】
【0034】
100:水耕栽培装置
200:栽培ベッド
202:枠体
210:植付パネル
212:植付穴
214:植物
216:保持材
220:噴霧槽
222,224:給水パイプ
226:噴霧ノズル
228:排水口
300:循環ユニット
302:配管
304:配管
310:前段フィルタ
320:水溶液タンク
330:補充装置
340:ポンプ
350:後段フィルタ
500:虫
504:卵